特許第6200727号(P6200727)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6200727電流比に基づく熱センサシステムおよび方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6200727
(24)【登録日】2017年9月1日
(45)【発行日】2017年9月20日
(54)【発明の名称】電流比に基づく熱センサシステムおよび方法
(51)【国際特許分類】
   G01K 7/00 20060101AFI20170911BHJP
   G01K 7/01 20060101ALI20170911BHJP
【FI】
   G01K7/00 321J
   G01K7/01 C
【請求項の数】21
【全頁数】34
(21)【出願番号】特願2013-174166(P2013-174166)
(22)【出願日】2013年8月26日
(65)【公開番号】特開2014-71110(P2014-71110A)
(43)【公開日】2014年4月21日
【審査請求日】2016年8月24日
(31)【優先権主張番号】13/628,939
(32)【優先日】2012年9月27日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】504199127
【氏名又は名称】エヌエックスピー ユーエスエイ インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】NXP USA,Inc.
(74)【代理人】
【識別番号】100142907
【弁理士】
【氏名又は名称】本田 淳
(72)【発明者】
【氏名】リーポン カオ
(72)【発明者】
【氏名】トミー エム.ジョキナン
(72)【発明者】
【氏名】コイ マイ
(72)【発明者】
【氏名】ヘクター サンチェス
【審査官】 平野 真樹
(56)【参考文献】
【文献】 特開2007−47177(JP,A)
【文献】 特開2009−192507(JP,A)
【文献】 特開2001−124633(JP,A)
【文献】 特開2005−265521(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2006/0192597(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01K 7/00,7/01
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
熱センサシステムであって、
少なくとも1つの熱センサと、
基準電圧レベルおよび対応するデルタ電圧レベルを前記少なくとも1つの熱センサに印加する電圧制御ネットワークであって、前記少なくとも1つの熱センサは印加に応答して基準電流信号および対応するデルタ電流信号を生成する、電圧制御ネットワークと、
前記デルタ電流信号の利得を前記基準電流信号に対して調整するように構成される電流利得ネットワークと、
比較測度を提供するように構成される、前記基準電流信号および前記デルタ電流信号に応答する電流比較センサと、
複数の基準電圧レベルおよび対応する複数のデルタ電圧レベルの中から前記基準電圧レベルおよび前記デルタ電圧レベルを選択するように構成されるコントローラであって、前記選択される基準電圧レベルおよびデルタ電圧レベルは複数の温度サブレンジのうちの選択される温度サブレンジに対応する、コントローラとを備え、
前記基準電流信号と前記デルタ電流信号との電流比を示す差分利得値を決定するように前記比較測度を監視するに際し、前記コントローラは、前記デルタ電流信号の利得を調整するように前記電流利得ネットワークを制御するようにさらに構成されており、前記コントローラは前記差分利得値に基づいて温度値を決定する、熱センサシステム。
【請求項2】
前記コントローラは、有効な差分利得値が得られるまで、前記複数の温度サブレンジを最高温度サブレンジから最低温度サブレンジまで探索するように構成される、請求項1に記載の熱センサシステム。
【請求項3】
前記複数の温度サブレンジのうちの少なくとも1つについて、前記コントローラは、前記選択された基準電圧レベルを前記少なくとも1つの熱センサに印加し、基準比較測度を決定するように前記電流利得ネットワークに初期利得値をプログラムし、次いで、前記デルタ電圧レベルを前記少なくとも1つの熱センサに印加し、次いで、最終利得測度を提供するように前記比較測度が前記基準比較測度に実質的に一致するまで前記電流利得ネットワークの利得を調整し、次いで、前記差分利得値を前記最終利得値と前記初期利得値との間の差として決定するように構成される、請求項1に記載の熱センサシステム。
【請求項4】
前記電流利得ネットワークは、少なくとも1つのモード利得ブロックと少なくとも1つの探索利得ブロックとを備え、
前記コントローラは、前記複数の温度サブレンジのうちの前記選択された1つに基づいて前記少なくとも1つのモード利得ブロックをプログラムし、前記差分利得値を決定するために前記少なくとも1つの探索利得ブロックの利得をさらに調整するように構成される、請求項1に記載の熱センサシステム。
【請求項5】
前記少なくとも1つの熱センサは複数の異なるサイズの熱センサを含み、
前記コントローラは、前記複数の温度サブレンジのうちの前記選択された1つに対応する熱センサを選択するべく、前記複数の異なるサイズの熱センサの中から選択を行うように構成される、請求項1に記載の熱センサシステム。
【請求項6】
前記電流利得ネットワークは、少なくとも1つのモード利得ブロックと少なくとも1つの探索利得ブロックとを備え、
前記コントローラは、前記複数の温度サブレンジのうちの前記選択された1つに基づいて前記少なくとも1つのモード利得ブロックをプログラムし、前記差分利得値を決定するために前記少なくとも1つの探索利得ブロックの利得をさらに調整するようにさらに構成される、請求項5に記載の熱センサシステム。
【請求項7】
前記比較測度として発振器信号を提供するための、前記基準電流信号および前記デルタ電流信号に応答する電圧制御発振器を備える前記電流比較センサと、
前記発振器信号が発振しているか否かを検知し、前記発振器信号が発振しているか否かを示す周波数センス信号を提供する発振検出回路とをさらに備え、
前記コントローラは、有効な差分利得値が得られるまで前記複数の温度サブレンジを最高温度サブレンジから最低温度サブレンジまで探索し、前記周波数センス信号が前記発振器信号が発振していないことを示すときには次により低い温度サブレンジに進むように構成される、請求項1に記載の熱センサシステム。
【請求項8】
前記電流比較センサは、前記比較測度として発振器信号を提供するための、前記基準電流信号および前記デルタ電流信号に応答する電圧制御発振器を備え、
前記複数の温度サブレンジのうちの少なくとも1つについて、前記コントローラは、前記選択された基準電圧レベルを前記少なくとも1つの熱センサに印加し、前記発振器信号の基準周期を決定するように前記電流利得ネットワークに初期利得値をプログラムし、次いで、前記デルタ電圧レベルを前記少なくとも1つの熱センサに印加し、次いで、最終利得測度を提供するように前記発振器信号の更新された周期が前記基準周期に実質的に一致するまで前記電流利得ネットワークの利得を調整し、次いで、前記差分利得値を前記最終利得値と前記初期利得値との間の差として決定するように構成される、請求項1に記載の熱センサシステム。
【請求項9】
複数の利得値の各々に対する1つの温度値を含む複数の温度値を記憶するメモリをさらに備え、
前記コントローラは、対応する温度値を前記メモリから取り出すために前記差分利得値を使用するように構成される、請求項1に記載の熱センサシステム。
【請求項10】
複数の利得値の各々に対する1つの温度値を含む複数の温度値を記憶するメモリをさらに備え、
前記コントローラは、前記差分利得値に最も近い温度値の一対および対応する利得値の一対を前記メモリから取り出すように構成されており、
前記コントローラは、前記少なくとも1つの温度値および前記少なくとも1つの対応する利得値から測定された温度値を補間するように構成される、請求項1に記載の熱センサシステム。
【請求項11】
温度を測定する方法であって、
複数の温度サブレンジのうちの1つを選択する工程と、
前記選択された温度サブレンジに対応する基準電圧レベルおよびデルタ電圧レベルを選択する工程と、
前記選択された基準電圧レベルおよび前記選択されたデルタ電圧レベルを、熱センサの印加に応答して基準電流信号およびデルタ電流信号を生成する少なくとも1つの熱センサに印加する工程と、
前記基準電流信号と前記デルタ電流信号とを比較して比較測度を提供する工程と、
前記デルタ電流信号の利得を、前記比較測度によって示される前記基準電流信号と実質的に一致するまで調整し、差分利得を決定する工程と、
前記差分利得に基づいて温度値を決定する工程とを含む、方法。
【請求項12】
前記複数の温度サブレンジのうちの1つを選択する工程は、有効な差分利得が決定されるまで、最高温度サブレンジから最低温度サブレンジまで前記複数の温度サブレンジの中から選択する工程を含む、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
前記複数の温度サブレンジのうちの少なくとも1つについて、
前記選択された基準電圧レベルを印加することによって初期利得値を適用し、基準比較測度を決定する工程をさらに備え、
前記利得を調整する工程は、最終利得値を決定するために調整された比較測度が前記基準比較測度に実質的に一致するまで、前記選択されたデルタ電圧レベルを印加することによって前記初期利得値から利得を調整する工程を含み、
前記差分利得を決定する工程は、前記最終利得値と前記初期利得値との間の差を決定する工程を含む、請求項11に記載の方法。
【請求項14】
前記選択された温度サブレンジに対応するモード利得を選択する工程をさらに含み、
前記デルタ電流信号の利得を調整する工程は、探索利得を初期探索利得値に対して調整する工程を含む、請求項11に記載の方法。
【請求項15】
複数の熱センサから、前記選択された温度サブレンジに対応するサイズを有する熱センサを選択する工程をさらに含む、請求項11に記載の方法。
【請求項16】
前記選択された温度サブレンジに対応するサイズを有する熱センサを選択する工程と、
前記選択された温度サブレンジに対応するモード利得を選択する工程とをさらに含み、
前記デルタ電流信号の利得を前記調整する工程は、探索利得を初期探索利得値に対して調整する工程を含む、請求項11に記載の方法。
【請求項17】
前記複数の温度サブレンジのうちの1つを選択する工程は、有効な差分利得が決定されるまで、最高温度サブレンジから最低温度サブレンジまで前記複数の温度サブレンジの中から選択する工程を含み、
前記比較測度を提供する工程は、発振器信号を提供する工程を含み、前記方法は、
前記発振器信号が発振しているか否かを検出し、前記発振器信号が発振しているか否かを示す周波数センス信号を提供する工程と、
前記周波数センス信号が前記発振器信号が発振していないことを示すときには次により低い温度サブレンジに進む工程とをさらに含む、請求項11に記載の方法。
【請求項18】
前記複数の温度サブレンジのうちの少なくとも1つについて、
発振器信号を提供する工程を含む、前記比較測度を提供する工程と、
前記選択された基準電圧レベルを印加することによって初期利得値を適用し、前記発振器信号の基準周期を決定する工程とを備え、
前記利得を調整する工程は、最終利得値を決定するように前記発振器信号の調整された周期が前記基準周期に実質的に一致するまで、前記選択されたデルタ電圧レベルを印加することによって前記初期利得値から利得を調整する工程を含み、
前記差分利得を決定する工程は、前記最終利得値と前記初期利得値との間の差を決定する工程を含む、請求項11に記載の方法。
【請求項19】
前記温度値を決定する工程は、前記決定された差分利得に対応する温度値をメモリから取り出す工程を含む、請求項11に記載の方法。
【請求項20】
前記温度値を決定する工程は、複数の温度値および対応する利得値をメモリから取り出し、測定された温度値を補間する工程を含む、請求項11に記載の方法。
【請求項21】
熱センサシステムであって、
複数の異なるサイズの熱センサと、
複数の温度サブレンジのうちの選択される1つに対応するサイズを有する熱センサを選択するために、前記複数の異なるサイズの熱センサの中から選択するように構成されるコントローラと、
基準電圧レベルおよび対応するデルタ電圧レベルを前記選択された熱センサに印加する電圧制御ネットワークであって、前記選択された熱センサは熱センサの印加に応答して基準電流信号および対応するデルタ電流信号を生成する、電圧制御ネットワークと、
前記デルタ電流信号の利得を前記基準電流信号に対して調整するように構成される電流利得ネットワークと、
比較測度を提供するように構成される、前記基準電流信号および前記デルタ電流信号に応答する電流比較センサとを備え、
前記コントローラは、前記基準電流信号と前記デルタ電流信号との電流比を示す差分利得値を決定するように前記比較測度を監視するに際し、前記デルタ電流信号の利得を調整するために前記電流利得ネットワークを制御するようにさらに構成されており、前記コントローラは前記差分利得値に基づいて温度値を決定する、熱センサシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は概して熱センサに関し、より詳細には、温度を測定するために1つ以上のセンサを通じて電流比を求め、温度レンジを拡大するために1つ以上の動作パラメータを調整する熱センサシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来の熱(または温度)センサは、熱抵抗係数に応じ、部品ごとの較正を必要とし得る。いくつかのセンサは、温度変動の測度として固定電流における2つのセンサの間のアナログ電圧差を検知する。ほとんどのセンサはPTAT(絶対温度に比例する)電圧関係に応じ、一方で、他のセンサはPTATおよびCTAT(絶対温度に対して相補的)の比較に応じる。正確な温度監視は通常、大面積回路および/またはアナログコンポーネントの製造時に可能な較正(すなわち、トリミングまたはヒューズ制御)の使用のいずれかを必要とする。これらの解決策は、多大なダイ面積を必要とする、または、多大な追加のサポート(たとえば、テスト、PE、立ち上げなど)のいずれかに関して費用がかさむ傾向にある。
【0003】
なお、フィードバックセンサ回路について、特許文献1に記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】米国特許第5,546,041号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
広い温度レンジ内で温度を正確に測定することができる電流比に基づく熱センサシステムおよび方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前述の問題点を解決するために、請求項1に記載の発明は、熱センサシステムであって、少なくとも1つの熱センサと、基準電圧レベルおよび対応するデルタ電圧レベルを前記少なくとも1つの熱センサに印加する電圧制御ネットワークであって、前記少なくとも1つの熱センサは印加に応答して基準電流信号および対応するデルタ電流信号を生成する、電圧制御ネットワークと、前記デルタ電流信号の利得を前記基準電流信号に対して調整するように構成される電流利得ネットワークと、比較測度を提供するように構成される、前記基準電流信号および前記デルタ電流信号に応答する電流比較センサと、複数の基準電圧レベルおよび対応する複数のデルタ電圧レベルの中から前記基準電圧レベルおよび前記デルタ電圧レベルを選択するように構成されるコントローラであって、前記選択される基準電圧レベルおよびデルタ電圧レベルは複数の温度サブレンジのうちの選択される温度サブレンジに対応する、コントローラとを備え、前記基準電流信号と前記デルタ電流信号との電流比を示す差分利得値を決定するように前記比較測度を監視するに際し、前記コントローラは、前記デルタ電流信号の利得を調整するように前記電流利得ネットワークを制御するようにさらに構成されており、前記コントローラは前記差分利得値に基づいて温度値を決定する、ことを要旨とする。
【0007】
請求項11に記載の発明は、温度を測定する方法であって、複数の温度サブレンジのうちの1つを選択する工程と、前記選択された温度サブレンジに対応する基準電圧レベルおよびデルタ電圧レベルを選択する工程と、前記選択された基準電圧レベルおよび前記選択されたデルタ電圧レベルを、熱センサの印加に応答して基準電流信号およびデルタ電流信号を生成する少なくとも1つの熱センサに印加する工程と、前記基準電流信号と前記デルタ電流信号とを比較して比較測度を提供する工程と、前記デルタ電流信号の利得を、前記比較測度によって示される前記基準電流信号と実質的に一致するまで調整し、差分利得を決定する工程と、前記差分利得に基づいて温度値を決定する工程とを含む、ことを要旨とする。
【0008】
請求項21に記載の発明は、熱センサシステムであって、複数の異なるサイズの熱センサと、複数の温度サブレンジのうちの選択される1つに対応するサイズを有する熱センサを選択するために、前記複数の異なるサイズの熱センサの中から選択するように構成されるコントローラと、基準電圧レベルおよび対応するデルタ電圧レベルを前記選択された熱センサに印加する電圧制御ネットワークであって、前記選択された熱センサは熱センサの印加に応答して基準電流信号および対応するデルタ電流信号を生成する、電圧制御ネットワークと、前記デルタ電流信号の利得を前記基準電流信号に対して調整するように構成される電流利得ネットワークと、比較測度を提供するように構成される、前記基準電流信号および前記デルタ電流信号に応答する電流比較センサとを備え、前記コントローラは、前記基準電流信号と前記デルタ電流信号との電流比を示す差分利得値を決定するように前記比較測度を監視するに際し、前記デルタ電流信号の利得を調整するために前記電流利得ネットワークを制御するようにさらに構成されており、前記コントローラは前記差分利得値に基づいて温度値を決定する、ことを要旨とする。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】一実施形態に応じて実装される温度測定選択・制御ブロックおよび1つ以上の熱センサブロックを含む電子システムの簡略ブロック図。
図2】D1,...,DMと個別にラベリングされる「M」個のダイオードとして実装されて示される熱センサの1つ以上をインターフェースするための、一実施形態に応じて実装される図1の温度測定選択・制御ブロックのブロック図。
図3】N個の熱検知ダイオードに結合される図1の温度測定選択・制御ブロックとして使用されてもよい比較器を使用する、一実施形態に応じた温度測定選択・制御システムの概略ブロック図。
図4図1の温度測定選択・制御ブロックとして使用されてもよい、電圧制御発振器(VCO)の実施形態に応じた温度測定選択・制御システムの概略ブロック図。
図5図1の温度測定選択・制御ブロックとして使用されてもよい、一対のVCOを使用する別の実施形態に応じた温度測定選択・制御システムの概略ブロック図。
図6図1の温度測定選択・制御ブロックの一部が代わりに、中央温度制御ブロックに選択的に結合される熱センサの各々とともに配置される、代替的な実施形態に応じて実装される温度測定システムの概略ブロック図。
図7図1の温度測定選択・制御ブロックとして使用されてもよい、温度レンジを拡張するためのプログラム可能パラメータを用いる別の実施形態に応じた温度測定選択・制御システムの概略ブロック図。
図8】一実施形態に応じて実装される図7のプログラム可能電流ミラーブロックの例示的な実施形態の概略図。
図9図7のメモリ内に記憶されてもよい、複数の所定の温度サブレンジの各々についてモード選択を容易にするための値を含む温度レンジモード選択テーブルの図。
図10図7のメモリ内に記憶されてもよい、温度レンジ全体のうちの各温度サブレンジ内の選択される温度値に関するIDAC差分利得値をリストする温度対利得ルックアップテーブル。
図11】一実施形態に応じた図7の発振検出器の簡略ブロック図。
図12】温度値に対応する利得値を決定し記憶するための、図7のシステムによって実行されてもよい一実施形態に応じた較正手順のフローチャート。
図13】温度を測定するための、図7のシステムによって実行されてもよい一実施形態に応じた温度測定手順のフローチャート。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明は例として示されており、添付の図面によって限定されない。図面において、同様の参照符号は類似の要素を示す。図面内の要素は簡潔かつ明瞭にするために示されており、必ずしも原寸に比例して描かれてはいない。
【0011】
以下の説明は、当業者が本発明を、特定の用途およびその要件の文脈内で提供されるように作成および使用することを可能にするために提示される。しかしながら、好ましい実施形態に対するさまざまな改変が当業者には明らかであり、本明細書において定義される一般原則は他の実施形態にも適用され得る。それゆえ、本発明は、本明細書において示され説明される特定の実施形態に限定されることは意図されておらず、本明細書において開示される原則および新規な特徴と一致する最も広い範囲に従うべきである。
【0012】
本明細書に開示する熱センサシステムは、明示的な較正またはヒューズを必要とせず、プロセスおよびソース電圧に対して比較的影響されない、コンパクトでデジタル的に使い勝手のよい熱測定システムを提供する。当該熱センサシステムは、1つ以上の熱センサを通じて導出される電流を生成するネットワークを利用することによって達成される。しかしながら、温度を示すのは、熱センサに印加される1つの動作電圧における実際の測定電流ではなく、2つの異なる印加電圧に対する電流の比である。電圧は、同一のセンサに対して2つの異なる時点において連続して印加されてもよく、または、2つの異なるセンサに対して同時に印加されてもよい。一実施形態では、電流の比は、利得値を調整して、相対電流値を検知するために比較器などを使用することによって決定されてもよい。別の実施形態では、電流の比は、利得値を調整して、相対電流を検知するために電圧制御発振器(VCO)などを使用することによって決定されてもよい。概して、温度は、少なくとも1つの熱センサに印加される少なくとも2つの異なる電圧レベルを印加する結果としてもたらされる電流レベルおよび/または周期の比に基づいて導出される。比の因子は、プロセスおよび他の実施形態特有のパラメータを相殺する傾向にある。
【0013】
様々な実施形態において、1つ以上のダイオードが熱センサ(複数の場合もあり)として使用される。順方向バイアスダイオードの電流レベルは指数関数的に変化し、それによって、所与のサイズのダイオードを通じた全体の電流変化は対応する電流レンジに制限され得る。固定の構成において、電流レンジが制限されることによって、測定値は対応する温度レンジ内に制限される。製造後調整を可能にする機構などの、確度を達成するに際し温度レンジを拡大するための特別な技法が使用され得る。また、順方向バイアスダイオードの電流は桁単位で変化し、温度は前もって分からないため、1つ以上のデバイスまたは構成要素の機能不全、または破滅的な障害をさらに引き起こすおそれがある過電流状態を防止するために、回路信頼性の問題が解決されるべきである。
【0014】
少なくとも1つの実施形態は、確度および信頼性管理を提供するに際し温度レンジを拡大させるように、複数の構成モードを用いて動作する。各構成モードは、拡大された温度レンジ内の異なる温度サブレンジに対して全体として最適化される異なるデバイスサイズ、異なる「実効」デバイスサイズ、および異なるダイオード電圧を有する。論理制御部は、温度を示す検知パラメータに基づいてモード間の遷移を管理する。少なくとも2つの異なるサイズの熱センサがデバイスサイズを調整するのに使用されてもよい。実効デバイスサイズは、バイアス利得を調整することによってさらに調整されてもよい。さらに、基準およびデルタ電圧は両方とも、特定の温度サブレンジごとに調整されてもよい。たとえば、熱センサ電圧は、電流限界を最適な動作レベル内に維持するように、より低い温度サブレンジにおいては対応する熱センサ電流を増大させるために増大されてもよく、より高い温度サブレンジにおいては対応する熱センサ電流を低減するように低減されてもよい。任意の実現可能な量だけ温度レンジ全体を増大させるように、これらの方法のうちのいずれか1つ以上は、単独で使用されてもよいし、または、組み合わせて使用されてもよい。
【0015】
図1は、一実施形態に応じて実装される温度測定選択・制御ブロック102および1つ以上の熱センサブロック104を含む電子システム100の簡略ブロック図である。図示されるように、熱センサ1、熱センサ2,...熱センサNと個々にナンバリングされるN個の熱センサ104がシステム内に配置され、Nは0よりも大きい任意の正の整数である。各熱センサ104は、各熱センサのロケーションにおける温度を決定するための対応する「サイト」に位置し、温度測定選択・制御ブロック102に提供される、対応するセンス信号S1〜SNを生成する。温度測定選択・制御ブロック102は対応する1つ以上のサイトにおける温度を決定するために、熱センサ104のうちの選択される1つ以上にアクセスし、該熱センサ104のうちの選択される1つ以上を起動する。
【0016】
電子システム100は、たとえば、システム・オン・チップ(SOC)内、または、埋め込み処理システムの一部などの、集積回路(IC)またはチップ上に実装されてもよい。この場合、チップの対応するロケーションにおける温度を決定するために、複数の熱センサ104が設けられてもよい。代替的に、電子システム100は、別個に実装されてもよく、温度測定選択・制御ブロック102および1つ以上の熱センサ104は各々、別個の集積回路上に実装されてもよく、または1つ以上のICまたは半導体チップなどの任意の組み合わせを含んでもよい。電子システム100は、通信システム、コンピュータシステム、検知デバイスなどの任意のタイプの用途のために、および、消費者、産業、商用、コンピュータ、および/または自動車分野のいずれか1つ以上のために構成されてもよい。
【0017】
複数の熱センサ104が図示されるが、Nは、熱センサ104が1つのみである構成については1であってもよい。熱センサ104は各々、本明細書においてはダイオード(PN接合部)として示されるが、ダイオード結合PNPバイポーラ接合トランジスタ(BJT)またはNPNトランジスタなどの、代替的なセンサタイプまたは構成が可能であることを理解されたい。
【0018】
図2はD1,...,DMと個別にラベリングされる「M」個のダイオードとして実装されて示される熱センサ104の1つ以上とインターフェースするための、一実施形態に応じて実装される温度測定選択・制御ブロック102のブロック図である。本明細書に記載の熱検知ダイオードは、グランドまたはCOM(カソード結合)を参照して図示されており、アノードをVDDなどの上側ソース電圧に対して参照する、代替的な構成が企図されることを理解されたい。回路印加電圧は、同一または類似の結果を達成するために相応に改変されてもよい。数Mも0よりも大きい正の整数であり、Nと同一であってもよいし、または異なってもよい。一実施形態では、たとえば、各熱センサ104は複数の個々の熱検知デバイスを組み込み、MはNの倍数である。代替的に、M=Nであり、各熱センサ104は1つの熱検知デバイスを含む。電圧制御ブロック202は、電流利得制御ブロック204によって検知される、対応する基準およびオフセット電流I〜Iを生成するように、1つ以上の異なる基準およびオフセット電圧を、ダイオード(複数の場合もあり)D1〜DMの対応する1つ以上に印加する。
【0019】
電流利得制御ブロック204は、電流比較センサ206に対して対応する電流XI〜YIを生成するために、対応する利得(たとえば、X,...,Y)を電流I〜Iの各々に適用する。一実施形態では、X=Yであり、各電流に同じ利得値が適用される。別の実施形態では、各電流に異なる利得値が適用されてもよく、X,...,Yは対応する、および可能な異なる利得値を示す。電流比較センサ206は、適用された電流値を比較し、少なくとも1つの比較測度CMをコントローラ208に対して生成する。
【0020】
コントローラ208は、選択されたサイトにおいて熱測定を行うために比較測度CMを監視するに際し、電圧制御ブロック202および電流増幅制御ブロック204を制御する。一実施形態では、コントローラ208は、選択されたサイトまたはロケーションにあるダイオードを選択するようにサイト選択値SSELを適用する。コントローラ208は、選択されたダイオードに印加される電圧を選択するために電圧選択値VSELをアサートする。一実施形態では、コントローラ208は、基準電流とオフセット電流との比を示す、対応する差分利得値を提供するために、オフセット電流の利得を基準電流に対して調整するように、利得値Gを電流利得制御ブロック204に対してアサートする。本明細書に記載の「値」はデジタル値であってもよいが、アナログ値または信号も企図される。一実施形態では、比較測度CMは、閾値条件を示す比較器の出力である。代替的な実施形態では、比較測度CMは、VCOまたは電流制御発振器(ICO)などの、制御式発振器の周波数信号出力である。コントローラ208は、差分利得値を決定するように利得を調整するに際し比較測度を監視する。次いで、差分利得値は出力値Tとして提供される温度を決定するように使用されてもよい。
【0021】
温度測定選択・制御ブロック102は一般化された形態で図示されており複数の実施形態または構成のうちの任意の1つ以上に当てはまる。一実施形態では、たとえば1つのみのダイオードD1が設けられてもよく、電圧制御ブロック202は2つの異なる基準およびオフセット電圧レベルを同一のダイオードに順次印加し、電流比較センサ206はCMを提供するために対応する増幅電流値を比較する。代替的な実施形態では、一対のダイオード(たとえばD1およびD2)が各サイトに設けられてもよく、電圧制御ブロック202は基準およびオフセット電圧レベルを、同一場所に位置する2つの異なるダイオードに同時に印加し、電流比較センサ206はCMを提供するために対応する増幅電流値を比較する。
【0022】
一実施形態では、たとえば、サイトの各々における各熱センサ104は、ダイオードD1〜DMのうちの単一のダイオードなどの単一のセンサを含んでもよく、この場合、コントローラ208は、温度測定を行うために、電圧制御ブロック202を、基準電圧レベルおよびオフセット電圧レベルを単一のダイオードに順次印加するように制御する。別の実施形態では、サイトの各々における各熱センサ104は少なくとも一対の同等な(または整合された)ダイオードを含んでもよく、コントローラ208は、ダイオードのロケーションにおいて測定を行うために、電圧制御ブロック202を、基準およびオフセット電圧レベルを該一対のダイオードに印加するように制御する。また別の実施形態では、サイトの各々における各熱センサ104は、著しく異なるサイズを有する少なくとも一対のダイオードを含んでもよい。本明細書においてさらに説明されるように、順方向バイアスダイオードの電流レベルは指数関数的に変化するため、任意の所与のダイオードは、最大電流限界を超えることのない、対応する制限された温度レンジ内のみにおいて測定を可能にしてもよい。サイズの異なるダイオードは、異なる利得値および異なるダイオード電圧レベルとともに、異なる電流レンジ、したがって異なる温度サブレンジを可能にする。したがって、所与の構成について温度レンジ全体を拡大するために異なるサイズのダイオードが使用されてもよい。
【0023】
図3は、N個の熱検知ダイオードに結合される温度測定選択・制御ブロック102として使用されてもよい比較器を使用する、一実施形態に応じた温度測定選択・制御システム300の概略ブロック図である。電圧選択ブロック302は第1のダイオード電圧VD1を、第1の増幅器304の正入力に提供しており、該第1の増幅器304の負入力がノード306に結合される。ノード306は、基準ダイオードDRのアノードおよびN型電界効果トランジスタ(FET)N1のソースに結合される。DRのカソードは共通ノードCOMに結合され、COMは任意の共通の正、負、またはグランド基準電圧である。ラベリングされていない三角形のグランド記号は、別途指定されない限り、図面全体を通じてCOMを指すのに使用される。増幅器304の出力はバイアス電圧VB1をN1のゲートに対してアサートし、N1のドレインはノード309においてP型FET P1のドレインおよびゲートに結合される。P1のソースはVDDなどのソース電圧に結合される。VDDはCOMに対するソース電圧であり、図面においてプルアップの水平なライン(たとえば、P1のソースに結合される「VDD」とラベリングされる)によって表される。ラベリングされていないプルアップの水平なライン記号は、別途指定されない限り、VDDを参照するように意図される。
【0024】
ノード309は、P個のP型FETから成る第1のアレイ310およびP個のP型FETから成る第2のアレイ312を含む電流補償デジタル−アナログ変換器(IDAC)308にさらに結合される。アレイ310の各P型FETはそのドレインをノード314に結合されており、そのゲートをノード309に結合されている。アレイ312の各P型FETは各P型FETのドレインをアレイ310の対応するP型FETのソースに結合されており、該ソースはソース電圧VDDに結合される。アレイ312の各P型FETのゲートは、PビットO、O,...Oによってデジタルオフセット補償値Oを記憶する、オフセット補償レジスタ316の対応するビットに結合される。ノード314は、比較器318の正入力に結合されており、該比較器318は、分圧されたソース電圧(たとえばVDD/2)を受け取る負入力を有し、該比較器318の出力は、比較測度CXを提供する。
【0025】
電圧選択ブロック302は第2のダイオード電圧VD2を、第2の増幅器320の正入力に提供しており、該第2の増幅器320の負入力は、ノード322に結合される。ノード322は、アナログマルチプレクサ(MUX)324の出力およびN型FET N2のソースに結合される。MUX324の各入力は、各々がN個の熱センサ104のうちの1つに対応するN個のダイオードD1,D2,...,DNのうちの対応する1つのダイオードのアノードに結合される。ダイオードD1〜DNの各々のカソードはCOMに結合される。単一の熱センサ104のみ存在する代替的な実施形態では、MUX324は省かれてもよく、ダイオードはN2に直接結合される。
【0026】
増幅器320の出力はバイアス電圧VB2をN2のゲートに対してアサートし、N2のドレインはP型FET P2のドレインおよびゲートに結合される。P2のソースはソース電圧VDDに結合され、該P2のゲートは、一次IDAC325に結合されるノード321にさらに結合される。IDAC325は、Q個のP型FETから成る第1のアレイ326およびQ個のP型FETから成る第2のアレイ328を含む。アレイ326の各P型FETは該各P型FETのドレインをノード330に結合されており、該各P型FETのゲートをノード321に結合される。アレイ328の各P型FETは該各P型FETのドレインをアレイ326の対応するP型FETのソースに結合されており、該ソースはソース電圧VDDに結合される。アレイ328の各P型FETのゲートは、QビットG、G,...Gによって利得値Gを記憶するDAC利得レジスタ332の対応するビットに結合される。ノード330は、別のN型FET N3のドレインおよびゲートに結合されており、該N3のソースはCOMに結合される。N3のゲートは、別のN型FET N4のゲートに結合されており、該N4のソースはCOMに結合されており、該N4のドレインはノード314に結合される。
【0027】
比較器318のCX出力は比較測度としてコントローラ334の入力に提供され、当該コントローラは、ダイオード電圧VD1およびVD2のアサートを制御するために値VSELを電圧選択ブロック302に提供する第1の出力と、対応するロケーションに位置するダイオードD1〜DNのうちの1つを選択するようにロケーションまたは「サイト」選択値SSELをMUX324の制御入力に提供する第2の出力と、オフセット補償値Oを提供する第3の出力と、利得値Gを提供する第4の出力と、温度を示す決定された温度値Tを提供する第5の出力とを有する。一実施形態では、値VSEL、SSEL、G、OおよびTの各々は複数のビットデジタル制御値である。
【0028】
電圧選択ブロック302は、ダイオード電圧VD1およびVD2を提供するための1つ以上のプログラム可能電圧源または1つ以上の静的電圧基準ブロックを含んでもよい。一実施形態では、各プログラム可能電圧源または静的電圧基準ブロックは、温度測定確度を向上させるために温度から独立したソースまたは基準電圧を提供する少なくとも1つのバンドギャップ電圧基準ソース(プログラム可能または静的)を用いて実装される。
【0029】
一実施形態では、補償IDAC308は概して一次IDAC325と整合される。したがって、たとえば、アレイ310および312の各P型FETは概して、アレイ326および328内の対応するP型FETと整合される。一実施形態では、IDAC308および325は両方とも線形的に実装され、電流ミラーレッグは互いに整合され、それによって、各ビットはほぼ同じ量の電流に寄与する。別の実施形態では、IDAC308および325は両方とも、バイナリ加重されるように実装され、各連続する電流レッグは複数レベルの電流に寄与する。代替的な電流ミラー利得構成が企図され、これらのおよび他の方法の組み合わせが企図される。
【0030】
温度測定選択・制御システム300は、一方の電流分岐内に基準電流を生成し、第2の電流分岐内に「デルタ」電流を生成するように、第1の基準電圧を基準ダイオードDRに印加し、第2の「デルタ」電圧を選択されるサイトのダイオードに印加する。温度測定選択・制御システム300は、異なる分岐内の電流が実質的に互いに整合するまで利得をデルタ電流に適用することによって、差分利得値を決定する。したがって、差分利得値は、温度を示す温度値Tを決定するように使用され得る電流比を示す。
【0031】
電圧VD1(基準電圧として使用される)が、DRを通じて第1の電流ID1(基準電流)を誘起するために電圧フォロワ増幅器304を介して基準ダイオードDRに印加され、電圧VD2(デルタ電圧として使用される)が、選択される熱センサダイオードを通じて第2の電流ID2(デルタ電流)を誘起するために電圧フォロワ増幅器320を介してダイオードD1〜DNのうちの選択されるダイオードに印加される。P1、オフセット補償ネットワーク308およびN4は全体としてID1をノード314へとミラーリングおよび増幅するように動作する。同様に、P2、IDAC325、N3およびN4は全体としてID2をノード314へとミラーリングおよび増幅するように動作する。比較器318は増幅およびミラーリングされた電流の間の差に応答してCXをアサートする。下記にさらに説明するように、コントローラ334は、分岐間の相対利得を調整することによって電流ミラー分岐間の電流を整合させ、次いで、測定された差分利得値に基づいて温度値Tを決定するように少なくとも1つの手順を実行する。
【0032】
ダイオードDを通る電流IDは以下の式(1)に応じて決定される:
【0033】
【数1】
【0034】
式中、Iは逆バイアス飽和電流(またはスケール電流)であり、ADはダイオードの面積であり、VDはダイオードにわたって印加されるダイオード電圧であり、VTは熱電圧である。熱電圧VTはVT=k・T/q・∝として決定され、式中、kはボルツマン定数であり、Tは絶対温度であり、qは素電荷とも称される電子の電荷の大きさであり、∝は理想係数である。2つのダイオードD1(またはDR)とD2(またはダイオードD1〜DNのうちの選択されるもの)との電流比は、以下の式(2)に応じて決定され:
【0035】
【数2】
【0036】
式中、ID1はダイオードD1を通る電流であり、ID2はダイオードD2を通る電流であり、AD1はダイオードD1の面積であり、AD2はダイオードD2の面積であり、ΔVDはダイオード電圧の差であり、すなわち、ΔVD=VD1−VD2である。温度Tは以下の式(3)に応じて決定されることがさらに示され:
【0037】
【数3】
【0038】
式中、「ln」は自然対数を指す。このように、Tは電圧差およびダイオード面積AD1およびAD2ならびにダイオード電流ID1およびID2の比に比例する。
ダイオード面積AD1およびAD2ならびに電圧差ΔVDは所定のものであるか、または既知である。様々な実施形態において、複数の分岐間の電流は、利得値の差が2つのダイオード間の相対電流を示すように1つの分岐内の電流ミラー利得を調整することによって整合される。一実施形態では、利得値と温度値との間のマッピングが決定され、それによって、対応する利得値を使用して温度が決定されてもよい。一実施形態では、ルックアップテーブル(LUT)などが生成または他の様態で提供され、差分利得値が対応する温度値を取り出すためのインデックスとして使用される。代替的な実施形態では、温度は差分利得値に基づいて計算または導出されてもよい。
【0039】
IDAC308および325の両方について、「1」のビット値は対応するP型FETのゲートをハイに(たとえば、VDDに)引っ張って(プルして)対応する電流ミラーレッグをオフにし、一方で「0」のビット値はゲートをローに(たとえば、COMに)プルしてオフにする。各起動される電流ミラーレッグは共通ノード314に対して寄与される電流の利得を増大する。したがって、OおよびGのデジタル値が各電流ミラー分岐に関する電流利得を決定する。本明細書において使用される場合、「利得値」は対応するデジタル値とは反対の意味において考えられ、デジタル値が低減する(0がより多くなる)と利得値が増大し、またその逆に、デジタル値が増減する(1がより多くなる)と利得値が減少する。したがって、IDACデジタル値がすべて0を含むとき、各電流ミラーは最高の利得を有し、IDACデジタル値がすべて1を含むとき、最低の利得を有する(またはオフになる)。
【0040】
なお、少なくとも最小量の電流がノード314に流れることを可能にするために、電流ミラー分岐ごとに少なくとも1つの電流ミラーレッグが起動されるべきである。代替的な実施形態では、少なくとも1つのレッグが、その対応するゲート接続をローにプルされて各IDAC308および325の外部に配置され、それによって、レッグがオンになったままになって、各電流ミラー分岐について少なくとも最小の電流がノード314に流れることが保証される。
【0041】
温度測定選択・制御システム300の動作において、コントローラ334は、IDAC308と325との間の任意のオフセットを最小限に抑えるために、各温度測定の前にオフセット補償手順を実行してもよい。また、オフセット補償は、基準ダイオードと選択されるダイオードとが異なるロケーションにあるときに、該基準ダイオードと選択されるダイオードとの間の任意のオフセットも最小限に抑える。次に、コントローラ334は、電流ミラー利得を含む回路パラメータを調整することによって温度測定手順を実行する。次いで、コントローラ334は、差分利得値を含む測定されたパラメータを使用して、温度値Tを取り出し、決定し、または他の様態で計算する。
【0042】
コントローラ334は最初に、SSELをアサートして、サイトダイオードD1〜DNのうちの対応するものを選択する。コントローラ334は、VSELをアサートしてダイオード電圧VD1およびVD2を同じ電圧レベルにアサートし、またオフセット補償値Oおよび利得値Gの初期デジタル値を出力する。一実施形態では、OおよびGの値は各々、最初はオフセット較正手順を開始するように同一の「設定点」値に設定される。設定点値は、O値がオフセット補償のために上方または下方に調整されることを可能にするように各IDAC308および325の中間点であってもよい。代替的に、設定点値は、反対方向においてより大きいレベルの調整を可能にするように、IDAC308および325の各々の最小デジタル値と最大デジタル値との間の一方の末端により近い。たとえば、128ビット構成について、デジタル中間点値は、設定点として使用されてもよい64である。しかしながら、デジタル設定点は、十分なヘッドルームがOデジタルオフセット値をより高くまたはより低く調整することを可能にし、次いでより多くのヘッドルームの量がデジタルG値を低減して利得を増大することを可能にするために、より低い利得(たとえば100)に対する高い方の末端のように、デジタルレンジ全体の一方の末端により近く位置付けられてもよい。
【0043】
CXを監視するに際し、コントローラ334は、オフセット補償デジタル値Oを調整して、電流ミラー分岐の各々を通る実質的に同等な電流を示す比較器318の切り替え点を決定する(オフセット補償についてVD1=VD2という条件を所与とする)。デジタルG値は初期設定点のままである。CXがハイである場合、補償IDAC308の利得は高すぎ、IDAC308の利得はCXがローに切り替わるまで低減される。代替的に、CXがローである場合、補償IDAC308の利得は低すぎ、IDAC308の利得はCXがハイになるまで増大される。いずれの場合も、比較器318の切り替え点におけるオフセット補償値Oの調整値は、IDAC325が設定点にプログラムされている間は電流ミラー分岐間の任意のオフセットデルタを最小限に抑える。このように、オフセット補償値Oの調整値は電流分岐間の不一致を最小限に抑える。
【0044】
オフセット補償手順が実行された後、コントローラ334は、VSELを調整して、電圧選択ブロック302を、VD1を基準電圧レベルに駆動し、VD2をデルタ電圧レベルに駆動して2つの電圧の間の電圧差ΔVDを提供するように制御する。一実施形態では、オフセット補償手順中、VD2の電圧レベルは低減され、一方でVD1は同じレベルのままである。一実施形態では、基準電圧レベルは約0.5Vであり、デルタ電圧レベルは0.45Vであり、電圧差ΔVDは0.05Vになる。特定の電圧レベルは任意選択であり、種々の構成に対して調整されてもよい。CXを監視するに際し、コントローラ334は、次いで、CXが比較器318の切り替え点を示すまで利得値Gを調整することによってIDAC325を「ウォーク」する。
【0045】
一実施形態では、VD2の電圧は低減され、それによって、下側電流ミラーのIDAC325を通る電流が上側基準電流ミラーに対して低減され、CX値がハイにプルされる。この場合、比較器318がCXがローにプルされることによって指示されるように状態を切り替えるまで、利得値Gは初期設定点から一度に1ビット調整されて、利得を増分して増大させる。比較器318が状態を切り替えるときの初期設定点利得値と最終利得値との間の差は、基準ダイオードと選択されるダイオードとの間の電流比を示す。次いで、コントローラ334は、温度を示す対応する温度値Tを得るために差分利得値を使用する。
【0046】
一実施形態では、コントローラ334は、LUTなどのメモリ(たとえば、図10のLUT1000を参照)を使用して対応する温度値を取り出す。差分利得値はインデックスまたはアドレスなどとしてメモリに照会され、対応する温度値が取り出される。代替的な実施形態では、コントローラ334は差分利得値を電流比ID1/ID2に変換し、式(3)などを用いて温度値を計算するように構成される。前述されるように、ΔVDおよびAD2/AD1は両方とも既知であり(またはそうでなければ決定可能であり)、それによって、温度は相対的に単純な計算である。しかしながら、計算回路は単純かつ高速のLUT構成を優先すると不要な複雑性をもたらす場合があることに留意されたい。
【0047】
代替的な実施形態では、補償IDAC308は静的構成として構成される(またはそうでなければ静的構成によって置き換えられる)。1つの静的構成実施形態では、オフセット補償レジスタ316は初期設定点を予めプログラムされる。別の静的構成では、補償レジスタ316は設けられず、代わりに、アレイ312のP型FETのゲートが初期設定点に応じて配線接続される。静的構成では、アレイ310、312、326および328のP型FETは測定を改善するようにより精密に整合されたデバイスとして構成されてもよい。静的構成では、オフセット補償手順は回避され、または実行されなくてもよい。
【0048】
温度測定の後、コントローラ334はSSELを制御することによって同一のサイトまたは異なるサイトを選択し、別の温度測定を行うように上記のプロセスを反復してもよい。
【0049】
図4は、温度測定選択・制御ブロック102として使用されてもよい、VCOの実施形態に応じた温度測定選択・制御システム400の概略ブロック図である。温度測定選択・制御システム400はシステム300と類似しており、類似の構成要素は同じ参照符号を用いて図示される。電圧選択ブロック302、増幅器304および320、基準ダイオードDR、デバイスN1、N2、P1およびP2、IDAC308および325、ならびに、N個のダイオードD1〜DNのうちの1つを選択するためのMUX324が設けられ、同様に動作するように結合される。
【0050】
システム300の比較器318は、システム400においては、VDDに結合される上側電源ノードおよび周波数信号Fを提供する出力を有するVCO402に置き換えられる。この場合、N4はそのゲートをノード314においてそのドレインに結合されてダイオード結合され、追加のN型FET N5およびN6のゲートにさらに結合される。N5およびN6のドレインは両方ともVCO402の下側電源ノード404に結合される。N5のソースはCOMに結合され、N6のソースは別のN型FET SN1のドレインに結合され、別のN型FET SN1のソースはCOMに結合され、該SN1のゲートはスイッチ信号SW1を受信する。なお、同一または類似の結果を達成するために下側電源ノード(たとえば、404)をグランドまたはCOMに結合する、および、上側電源ノードを電流ミラー出力に結合するなどの、VCO402および本明細書に記載の他のVCOの代替的な構成が企図される。
【0051】
ノード330において結合されるダイオード結合N3のドレインおよびゲートは、追加のN型FET N7およびN8のゲートにさらに結合される。N7およびN8のドレインは両方ともVCO402の下側電源ノード404に結合される。N7のソースはCOMに結合され、N8のソースは別のN型FET SN2のドレインに結合され、別のN型FET SN2のソースはCOMに結合され、該SN2のゲートはスイッチ信号SW2を受信する。
【0052】
N5〜N8には、該N5〜N8のデバイスの各々が同一のサイズ値を有することを表す「X」がマーキングされており、Xは、起動されるとデバイスを通じて流れる電流のサイズまたは相対量を表す。SN1およびSN2は両方とも、その回路動作に対する影響を最小限に抑えるためにオンに切り替わるとドレイン−ソース電圧が実質的にゼロを有するように構成される、相対的に大きいデバイスである。
【0053】
コントローラ334は、VCO402から出力周波数信号Fを受信する類似のコントローラ412に置き換えられる。コントローラ412は同様にVSEL、SSEL、G、OおよびT値を提供し、さらにスイッチ信号SW1およびSW2を提供する。一実施形態では、コントローラ412は信号Fの周期を測定するためのカウンタ回路などを組み込み、周期はデジタルカウント値によって表される。別のVCO構成について図7にカウンタブロック724が図示されているが、用途は実質的に同様である。
【0054】
VCO402は、3つの直列結合インバータゲート406、408および410から成るアレイを含む「リング発振器」として実装されて示されており、最後のインバータ410の出力は最初のインバータ406の入力にフィードバックされる。各インバータはノードVDDに結合される正供給電圧ノード、および下側電源ノード404に結合される負電源ノードを有する。各インバータ406、408、410はその出力を次のインバータの入力(リングを形成する)、および対応するキャパシタC1、C2およびC3の一方の端部に結合されており、各キャパシタC1〜C3はその他方の端部をノード404に結合されている。キャパシタC1〜C3の各々は、温度から独立したキャパシタンス値を有する。一実施形態では、たとえば、キャパシタC1〜C3の各々は温度係数を有しない金属キャパシタとして実装される。
【0055】
VCO402は奇数のインバータを含み、それによって、インバータ406〜410の各々の構成、キャパシタC1〜C3のキャパシタンス、および、残りの電流ミラー構成によってVDDとノード404との間に提供される平均電流によって決定される周波数において発振する。一実施形態では、インバータおよびキャパシタは固定の構成にある。3つのインバータおよび対応するキャパシタが直列結合構成において図示されるが、特定の実施態様に応じて追加のインバータおよびキャパシタが含められてもよいことを理解されたい。
【0056】
上記で提供された式(3)はVCO構成のために調整されてもよい。VCO402の電流はVCO402のキャパシタンス、VCO402の両端の電圧、およびVCO402の発振周波数(または周期)によって決定される。キャパシタC1〜C3は温度係数を有しない金属型キャパシタなどであってもよい。下記にさらに説明するように、プロセスにおいてF信号の2つの異なる周期PER1およびPER2をもたらす2回の異なる測定が行われる。周期の比は電圧差の比、ダイオードの面積の比、電圧差ΔVDおよび熱電圧VTによって決定される。温度は以下の式(4)に応じて決定されてもよいことが示される。
【0057】
【数4】
【0058】
式中、β1およびβ2はVCO402のインバータ406、408および410のMOSデバイスのMOSトランジスタ利得係数である。「ベータ」係数またはトランジスタ利得係数は、トランジスタデバイスのチャネルキャリア移動度、ゲート絶縁膜誘電率、ゲート絶縁膜厚さ、およびチャネル寸法によって決定される。ベータ係数はプロセス依存であるが、2回の異なる測定に関して同一のVCOについて両方とも同じ係数である。さらに、式(4)における比において提供されるため、それらは互いに相殺しあう。
【0059】
本明細書にさらに説明されるように、VCO402を使用する温度測定選択・制御システム400の測定プロセスは、発振周波数、およびすなわち、周期を等しくするように2回の異なる測定の間で前述と同様に利得を調整する。このように、プロセス変動およびソース電圧を含む回路パラメータから独立した温度値を得るために、結果もたらされる差分利得値が前述と同様に使用されてもよい。温度値はLUTなどを使用して得られてもよく、または前述されるように計算されてもよい。
【0060】
温度測定選択・制御システム400の動作は、温度測定選択・制御システム300について記載された動作と同様である。コントローラ412は、IDAC308と325との間の任意のオフセットを最小限に抑えるように、各温度測定の前にオフセット補償手順を実行する。次に、コントローラ412は、電流ミラー利得を含む回路パラメータを調整することによって温度測定手順を実行する。次いで、コントローラ412は、温度を示す温度値Tを得るように差分利得値を使用する。ここでも、LUT1000に類似するLUTなどを使用してもよい。システム300と比較したシステム400の主な差異は、VCO402の出力周波数Fがダイオード対の間の電流の差を示すものとして使用されることである。
【0061】
コントローラ412は、SSELをアサートして対応するサイトにおけるダイオードを選択する。次いで、コントローラ412は、IDAC325のG値を初期設定点値にプログラムして、下側ミラー構成をオンにし、上側ミラー構成をオフにすることによってオフセット補償手順を開始する。特に、コントローラ412はVSELをアサートしてVD1を0Vに設定し、VD2を所定のより高い電圧レベル(たとえば0.5V)に設定する。さらに、コントローラ412はSW1をアサートしてSN1をオフにし、SW2をアサートしてSN2をオンにする。N8を通る追加の電流路は、下側電流ミラー構成のためにVCO402に印加される、N7を通る電流を実効的に倍増(×2)し、より正確でバランスのとれたオフセット補償値を達成する。コントローラ412は、Fが安定することを可能にし、次いで、Fの周期を測定して基本周期値PER1を得る。
【0062】
次いで、コントローラ412は、補償IDAC308のO値を初期設定点値にプログラムし、VSELをアサートしてVD2を0Vに設定しVD1を所定のより高い電圧レベルに設定することによって下側ミラー構成をオフにして上側ミラー構成をオンにする。G値は初期設定点値のままである。さらに、コントローラ412はSW1をアサートしてSN1をオンにし、SW2をアサートしてSN2をオフにする。ここでも、N6を通る追加の電流路は、上側電流ミラー構成のためにVCO402に印加される、N5を通る電流を実効的に倍増(×2)し、より正確でバランスのとれたオフセット補償値を達成する。次いで、コントローラ412は、Fの周期が実質的に基本周期値PER1に等しくなるまで補償IDAC308のデジタルO値を調整するに際しFの周期を監視する。一実施形態では、コントローラ412は、Oを一度に1ビットずつ調整し、Fが安定するのを待ち、Fの新たな周期を測定し、測定された周期をPER1と比較し、追加の調整が必要であるか否かを判定し、追加の調整が必要である場合には訂正の方向が上方または下方のいずれであるかを判定する。Fの新たな周期が基本周期PER1に実質的に等しいとき、オフセット補償は完了する。
【0063】
次いで、コントローラ412はSW1およびSW2をアサートして両方のスイッチSN1およびSN2をオフにし、VSELをアサートしてVD2をより低いデルタ電圧レベル(たとえば、0.45V)に調整してVD1とVD2との間の電圧差ΔVDをプログラムすることによって電流測定を開始する。したがって、VD1は基準電圧レベルにあり、VD2はデルタ電圧レベルにある。N6およびN8を通る電流はオフにされ、それによって、N5およびN6を通る集合的な電流はここでも、バランスのとれた測定値を得るために他に考えられる値の約2倍になる。コントローラ412は次いで、デジタルG値を初期設定点から、Fの新たな周期PER2が基準周期PER1に実質的に等しくなるまで調整する。一実施形態では、コントローラ412は、Gを一度に1ビットずつ調整し、Fが安定するのを待ち、Fの新たな周期を測定し、測定された周期PER2を基準周期PER1と比較し、追加の調整が必要であるか否かを判定する。VD2はVD1よりも小さいため、利得は一般的に増大されて整合する電流レベルが達成される。Fの新たな周期PER2が基本周期PER1と実質的に等しくなると、利得値Gの調整は完了し、最終差分利得値が得られる。
【0064】
コントローラ412は、次いで、最終利得値と初期設定点利得値との間の差を使用してダイオードを通じての電流比を示す差分利得値を決定する。次いで、差分利得値は前述と同様に温度値Tを得るために使用されてもよい。
【0065】
補償IDAC308は、前述と同様に予めプログラムまたは配線接続される静的IDACに置き換えられてもよい。静的構成について、オフセット補償手順は回避されてもよい。
【0066】
図5は、温度測定選択・制御ブロック102として使用されてもよい、一対のVCOを使用する別の実施形態に応じた温度測定選択・制御システム500の概略ブロック図である。温度測定選択・制御システム500はシステム300および400と類似するいくつかの部分を含み、類似の構成要素は同一の参照符号を用いて図示される。電圧選択ブロック302、増幅器304および320、デバイスN1、N2、P1およびP2、MUX324、ならびにダイオードD1〜DNは、実質的に同様に動作するように結合される。個別のVCO1および2として示される対応する対のVCO502を有する2つの別個の電流ミラー構成が形成されることを除いて、IDAC308および325も同様に含まれ結合される。VCO502の各々は、前述のVCO402と実質的に同様に構成され、各々VDDに結合される上側電源ノードを有してもよい。
【0067】
補償IDAC308はP1のドレインおよびゲートとN4のドレインおよびゲートとの間に結合され、利得値Oを受信する。N4は該N4のソースをCOMに結合され、該N4のドレインおよびゲートをさらにN型FET N6のゲートに結合されてダイオード結合される。N6のソースはCOMに結合され、該N6のドレインはVCO1の下側電源ノードに結合される。一次IDAC325はP2のドレインおよびゲートとN3のドレインおよびゲートとの間に結合され、利得値Gを受信する。N3は該N3のソースをCOMに結合され、該N3のドレインおよびゲートをさらにN型FET N5のゲートに結合されてダイオード結合される。N5のソースはCOMに結合され、該N5のドレインはVCO2の下側電源ノードに結合される。VCO1は第1の周波数信号F1を出力し、VCO2は第2の周波数信号F2を出力する。F1およびF2を受信し、選択値VSELおよびSSEL、利得値GおよびO、ならびに温度値Tを提供するコントローラ504が設けられる。
【0068】
システム500の示される実施形態では、基準ダイオードDRが、それぞれダイオードD1〜DNとともに配置されるN個の基準ダイオードDR1〜DRNに置き換えられる。したがって、DR1はD1と同一の場所に配置され、DR2はD2と同一の場所に配置され、以下同様である。測定ごとに対応する同一の場所の基準ダイオードを選択するように、別のMUX506がSSELを受信する。同一の場所の基準ダイオードを使用することによって、ダイオード対が同一のサイトに位置しない結果もたらされる場合がある任意の誤差がさらに低減される。システム300および400はそれに応じて変更されてもよく、単一の基準ダイオードDRがMUX506および同一の場所のダイオードDR1〜DRNに置き換えられる。
【0069】
コントローラ504は、前述と実質的に同じように、SSELをアサートしてダイオードD1〜DNのうちの1つおよび基準ダイオードDR1〜DRNのうちの対応する1つを選択し、VSELをアサートして、電圧選択ブロック302をVD1およびVD2の電圧を制御および印加するように制御し、OおよびG値をアサートしてIDAC308および325をプログラムする。しかしながら、この場合、上側基準電流ミラーは、電流ID1をミラーリングおよび増幅してVCO2を駆動し、下側デルタ電流ミラーは、電流ID2をミラーリングおよび増幅してVCO1を駆動して、コントローラ504に提供される第1の周波数信号F1および第2の周波数信号F2を生成する。
【0070】
温度測定選択・制御システム500の動作において、前述と同様にオフセット補償手順が最初に実行され、続いて温度測定手順が実行される。オフセット補償手順のために、コントローラ504はVSELをVD1=VD2になるように提供し、IDAC308および325の両方に所定設定点値をプログラムする。周波数信号F1およびF2は、電流ミラー分岐が実質的に同様に構成されたとするとほぼ同じ周波数レベルを有するべきである。コントローラ504は、F1およびF2の周期がオフセット補償のために、該F1およびF2が合理的に可能な程度に近くなるまで監視および比較するに際しオフセット補償値Oを調整する。オフセット補償は、2つの電流ミラーおよびVCO分岐の間の任意のオフセット不一致を調整する。
【0071】
次いで、コントローラ504は、VD2がより低いデルタ電圧レベルに変更されてVD1とVD2との間の電圧差ΔVDを生成するようにVSELを調整し、VD1は基準電圧レベルのままである。次いで、コントローラ504は、利得値Gを初期設定点値から、F1およびF2を監視するに際し、該F1およびF2が合理的に可能な程度に近くなるまで調整する。Gの初期設定点利得値と最終利得値との間の差が、次いで、温度を示す温度値Tを決定するのに使用されてもよい差分利得値を決定する。
【0072】
代替的な構成において、オフセット補償手順の後、コントローラ504は温度補償手順のために、VD2がより低いデルタ電圧レベルに変更されてVD1とVD2との間の電圧差ΔVDを生成するようにVDSELを調整する。Gをさらに調整するのではなく、コントローラ504は、電圧差ΔVDが印加されるときにF1とF2との間の周期を使用するように構成される。周期の間の差は、LUTなどから対応する温度値を取り出すのに使用されてもよく、または温度値は計算されてもよい。
【0073】
温度測定選択・制御システム400と500との間の差異は、システム500が測定を行うために2つの異なるVCOを使用することである。しかしながら、VCO502は実質的に同じように構成され、ベータ値の比に基づいてプロセス変動は実効的に相殺されることに留意されたい。また、同一の場所の基準ダイオードが、構成要素が追加されることを犠牲にして温度測定確度を向上させるために使用されてもよい。
図6は、温度測定選択・制御ブロック102の一部が代わりに、熱センサ104の各々とともに配置される、代替的な実施形態に応じて実装される温度測定システム600の概略ブロック図である。温度測定システム600は、中央温度制御ブロック602と、選択ロジック604と、温度が監視および測定されるべき各ロケーションに配置される1つ以上のローカル温度測定ネットワーク606とを含む。各々が実質的に同じように構成され、各々が選択ロジック604を介して中央温度制御ブロック602とインターフェースしている、1,...,NとナンバリングされるN個のローカル温度測定ネットワーク606が図示される。
【0074】
中央温度制御ブロック602は、選択ロジック604によって選択されるときのローカル温度測定ネットワーク606のうちのいずれか1つと共通の信号セットを共有する。一実施形態では、共通の信号セットは、IDACバイアス電圧VIDと、IDAC電圧レベルVDACと、バイアス電圧VBと、ダイオード電圧VDと、周波数信号Fとを含む。中央温度制御ブロック602は、サイト選択値SSELをアサートしてローカルネットワーク606のうちの1つを選択する。選択ロジック604は、中央温度制御ブロック602と選択されるローカルネットワーク606との間で共通信号をインターフェースするように、スイッチマトリックス、バス構造、マルチプレクサロジックなどを組み込むなどの、任意の適切な様式で構成されてもよい。
【0075】
中央温度制御ブロック602は、コントローラ610と、電圧選択ブロック612(前述の電圧選択ブロック302と実質的に同じように動作する)と、増幅器614と、IDAC616とを含む。コントローラ610は、ローカル温度測定ネットワーク606のうちの1つを選択するように、SSEL値を選択ロジック604の選択入力にアサートする。コントローラ610はVSELをアサートして、電圧選択ブロック612に、ダイオード電圧VDを増幅器614の正入力にアサートするように命令する。増幅器614の出力は、選択ロジック604の1つの端子にバイアス電圧VBを提供し、該増幅器614の負入力は、選択ロジック604の別の端子に結合されている。増幅器614は前述と同様に動作し、ローカル温度測定ブロック1 606のダイオードD1などの、選択されるサイトのセンサダイオードの両端のVD電圧を生成する。コントローラ610はデジタル利得値GをIDAC616にアサートし、IDACは、対応する電圧VDACを選択ロジック604の別の端子に提供する。IDAC616はバイアス電圧VIDもインターフェースし、当該電圧は選択ロジック604の別の端子に提供される。コントローラ610は選択ロジック604の別の端子における周波数信号Fを受信する。
【0076】
ローカル温度測定ネットワーク1 606のさらなる詳細が図示されており、ここで、ローカル温度測定ネットワーク606の各々は実質的に同様に構成されることを理解されたい。ローカル温度測定ネットワーク1は、N型FET N1〜N5と、P型FET P1〜P5と、ローカルダイオードD1と、ローカルVCO622とを含む。VCO622は、前述のVCO402と実質的に同様に構成されてもよい。D1のアノードおよびN1のソースに結合されるノード620に電圧VDが提供され、D1のカソードはCOMに結合される。N1のゲートはバイアス電圧VBを受け取り、該N1のドレインはP1のドレインおよびゲートに結合され、P1のソースはVDDに結合される。P1のゲートはP2およびP3のゲートにさらに結合され、P2およびP3のソースは各々VDDに結合される。P3のドレインはP4のドレイン、およびVCO622の上側電源ノードに結合される。P4のゲートはVDAC電圧を受け取り、P5のゲートにさらに結合される。P4およびP5のソースはVDDに結合される。P2のドレインはN2のドレインおよびゲート、ならびにN3のゲートに結合される。N3およびN4のドレインはともに結合され、VCO622の下側電源ノードに結合される。N4およびN5のゲートはともに結合され、N5およびP5のドレインに結合される。N2〜N5のソースはCOMに結合される。VCO622は周波数信号Fを生成する。
【0077】
温度測定システム600の動作において、ローカル温度測定ネットワーク1がコントローラ610によって選択されるとき、増幅器614はN1を、D1の両端のVD電圧を維持するように制御し、D1においてダイオード電流ID1が生成される。この実施形態では、一対のダイオードではなく、単一のダイオードが温度測定に採用される。この場合、第1の基準周期測定のための基準電流レベルを生成するように第1の選択される利得レベルにおいて基準電圧レベルが最初に印加され、次いで、デルタ電圧が印加される。新たな周期が基準周期と整合して差分利得値が決定されるまで、利得が調整される。P1〜P3およびN2〜N3は集合的にVCO622を通るダイオード電流を増幅およびミラーリングするように動作する。コントローラ610はGをIDAC616に提供し、IDACは、VDACの対応する電圧レベルをローカル温度測定ネットワーク1にアサートする。P4〜P5およびN4〜N5は集合的に、対応する電流をVCO622を通じて印加するように動作する。
【0078】
コントローラ610は、VDが第1の選択される基準電圧レベルにあるようにVSELをアサートし、また、IDAC616が対応する電圧レベルにおけるVDACをアサートするように、Gを選択されるレベルにおいてアサートする。一実施形態では、Gは最初は所定の設定点レベルにおいてアサートされ、コントローラ610は対応するFの周期を基準周期値PER1として測定する。次いで、コントローラ610は、VDをデルタ電圧レベル(たとえば、より低い電圧値)に変更するようにVSELをアサートする。Fの周期を監視するに際し、コントローラ610は次いで、Gを、Fの周期PER2が基準周期値PER1に実質的に等しくなるまで調整する。このように、Gの初期利得値と最終利得値との間の差は、同じダイオードに印加される2つの異なる電圧レベルに関する電流ID1の比を示す。次いで、コントローラ610は前述と同様に差分利得値を使用して温度を示す温度値Tを取り出し、または計算する。
【0079】
温度測定システム600は、同一のVCOが測定に使用される点においてシステム300および400と類似である。温度測定システム600は、2つの異なるダイオードではなく単一のダイオードが両方の測定に使用される点において異なる。また、示される温度測定システム600はオフセット補償を採用しない。なお、測定を行うために同一のVCO、電流ミラー構成およびダイオードが使用されているため、オフセット問題はシステム600において問題になることが少ない。
【0080】
図7は、温度測定選択・制御ブロック102として使用されてもよい、温度レンジ全体を拡張するためのプログラム可能パラメータを用いる別の実施形態に応じた温度測定選択・制御システム700の概略ブロック図である。電圧選択ブロック702が、前述と同様にVSELを受信し、ダイオード電圧VDを提供する。前述と同様に、VDは増幅器704の正入力に提供され、当該増幅器は、増幅器704の出力にバイアス電圧VBをN型FET N2のゲートに提供させ、増幅器704の負入力をノード705に結合され、当該ノードはN1のソースにさらに結合される。ノード705は、温度測定のためのサイトを選択するためにサイト選択値SSELを受信するサイト選択MUX706の出力に結合される。一実施形態では、各サイトは、高温レンジダイオードDHおよび低温レンジダイオードDLを含む少なくとも2つのダイオードを有する。レンジ選択MUX708はレンジ選択信号RSELに基づいてレンジダイオードの間で選択を行う。
【0081】
N1のドレインはノード707に結合され、当該ノードは第1のプログラム可能P型ミラーブロックPMIR710に結合される。PMIR710は、第2のプログラム可能P型ミラーブロックPMIR712にさらに結合される。PMIR710は利得値MAをプログラムされ、PMIR712は利得値MBをプログラムされる。PMIR712はノード709にさらに結合され、当該ノードはN型FET N2のドレインおよびゲートに結合される。IDAC714は利得値Gを受信し、ノード709に結合される。N2のソースはCOMに結合され、N2のゲートおよびドレインは別のN型FET N3のゲートにさらに結合される。N3はそのソースをCOMに結合され、N3のドレインをVCO716の下側電源ノードに結合される。VCO716の上側電源ノードはVDDに結合され、VCO716の出力は周波数信号Fを提供する。VCO716は、前述のVCO402と実質的に同様に構成されてもよい。
【0082】
温度測定選択・制御システム700はコントローラ720をさらに含み、当該コントローラは、発振検出器722と、カウンタブロック724と、温度制御ブロック726と、メモリ728とをさらに含む。発振検出器722は発振検出器722の入力においてFを受信し、発振検出器722の出力において周波数信号FRをカウンタブロック724の入力に提供する。カウンタブロック724は、周期値PERを温度制御ブロック726の入力に提供する出力を有する。温度制御ブロック726は、利得値MA、MBおよびGとともにVSEL、SSELおよびRSEL選択値をアサートし、Fの周期を示すPER信号を受信する。温度制御ブロック726は、温度値Tを決定および提供するために利得値(複数の場合もあり)Gおよび対応するPER値の1つ以上の各々を変換するように構成される。下記にさらに説明されるように、メモリ728は、モード選択に使用されるテーブル値を記憶し、デジタル利得値を対応する温度値Tに変換するための少なくとも1つのルックアップテーブル(LUT)を含む。
【0083】
前述の関係によって理解されるように、順方向バイアスPN接合部(たとえば、ダイオード)の電流は指数関数的に変化し、それによって、温度測定レンジは静的構成で30〜40度の温度レンジ内に制限される可能性があり得る。システム700は、相対的に広い温度レンジ内において温度を正確に測定するために複数の構成モードを有して構成される。各構成モードは、異なる温度レンジに対して全体として最適化される異なるデバイスサイズ、異なる「実効」デバイスサイズ、および異なるダイオード電圧を有する。論理制御部は、周囲温度を示す測定パラメータに基づいてモード間の遷移を管理する。
【0084】
起動されるダイオードのサイズまたは面積がデバイスサイズを決定する。ダイオードDHは、より高い温度レンジに関連付けられるサイズを有し、ダイオードDLは、より低い温度レンジに関連付けられる異なるサイズを有する。一実施形態では、たとえば、ダイオードDHは、より高い温度レンジに適切である所与の電圧レベルを印加するためにより低い電流を生成するようにより小さく、一方で、ダイオードDLは、より低い温度レンジに適切である同じ電圧レベルを印加するためにより高い電流を生成するようにより大きい。PMIR710およびPMIR712は、各モードが1つの温度サブレンジに対応するプログラム可能モード利得による電流ミラー構成の一部を形成する。したがって、利得値MAおよびMBの組み合わせが、電流ミラー構成のモード利得を決定し、それによって、実効デバイスサイズをプログラムする。一実施形態では、たとえば、利得値がより低くなる結果としてより高い温度レンジに適切なより低い電流レベルがもたらされ、利得値がより高くなる結果としてより低い温度レンジに適切なより高い電流レベルがもたらされる。
【0085】
2つのプログラム可能電流ミラーブロックPMIR710および712を使用することによって、各モードの温度測定に対する所望の温度レンジおよび確度レベルを達成するように柔軟性がもたらされる。代替的な実施形態では、これらのブロックのうちの一方のみがプログラム可能であり、このプログラム可能ブロックは所望のレンジおよび確度を提供するために増大されたサイズを有し、または、そうでなければレンジまたは確度が低減された構成に使用されてもよい。N2およびN3は電流ミラー構成のN型部分を提供する。代替的な実施形態では、N2およびN3デバイスのいずれかまたは両方が、レンジまたは確度の増大のためにPMIRブロックと同様に対応するプログラム可能利得ブロックに置き換えられてもよい。
【0086】
電圧選択ブロック702は、各温度サブレンジ内の温度を測定するように少なくとも2つの異なる電圧レベル(たとえば、VDHおよびVDL)を提供する。一実施形態では、たとえば、VDHおよびVDL値はより高い温度レンジについては低減された電流レベルを生成するようにより低く、一方でVDHおよびVDL値はより低い温度レンジについては増大された電流レベルを生成するようにより高い。一実施形態では、所与の温度サブレンジに対して、VDHは基準電圧レベルを提供し、VDLはデルタ電圧レンジを提供する。
【0087】
コントローラ720によって制御される温度測定選択・制御システム700の動作は、各温度サブレンジに関して代替的な実施形態について前述した動作と同様である。選択されるダイオードを通じて生成される電流はミラーリングおよび増幅されて、VCO716の対応する動作電圧を生成し、当該VCOは対応する周波数レベルにおけるFを出力する。利得値Gは、実際の温度を探索するようにFの周期を監視するに際し各温度レンジ内で調整される探索利得を提供する。温度制御ブロック726はSSELをアサートして温度測定のためのサイトを選択し、選択された温度レンジのためにRSEL値ならびにMAおよびMBモード利得値をさらにアサートする。温度制御ブロック726は次いで、対応するダイオード電圧に関するVSELをアサートし、選択されたレンジ内で温度を測定するようにIDAC714に提供される利得値Gを調整する。IDAC714の利得値Gが測定中にレンジ外に出る場合、実際の温度は選択されたレンジ内には存在せず、新たな温度レンジが選択される。
【0088】
一実施形態では、温度レンジ全体は約0℃(摂氏)〜約125℃であり、これは温度サブレンジ0〜40℃、40〜70℃、70〜100℃、および100〜125℃にさらに細分化される。なお、より低い温度サブレンジのために設定する結果として、実際の周囲温度が高い場合に電流が過剰に高くなる場合がある。したがって、実際の温度が著しく高いときにシステムパラメータが低い温度レンジの測定のために設定される場合、過剰な電流が過電流状態を引き起こすおそれがあり、渦電流状態によって、1つ以上のデバイスまたは構成要素の機能不全、または破滅的な障害をさらに引き起こされるおそれがある。このように、回路動作の信頼性を保証するようにより高い温度サブレンジからより低い温度サブレンジへと実行することによって温度測定探索は成功する。
【0089】
なお、温度測定探索がより高い温度サブレンジにおいて実行されるときに実際の温度が低い場合、結果として電流が低くなりすぎて、VCO716を動作させるのに十分な電圧を生成することができない場合がある。したがって、VCO716が発振することができない場合があり、発振できなければ、カウンタブロック724による読み誤りおよび/または読み出しの失敗が引き起こされるおそれがある。発振検出器722は、F信号が発振しているか否かを判定し、該判定に応じてFRをアサートする。発振検出器722がFが発振していると判定する場合、F信号を修正せずにFR信号として通す。しかしながら、発振検出器722がFが発振していないと判定する場合、発振検出器722は相対的に低い周波数のFRを生成してカウンタブロック724を駆動する。カウンタブロック724は、FRの周期を測定し、対応するカウント値PERを温度制御ブロック726に提供する。温度制御ブロック726が、Fが発振していないことを示す、予測されるレンジを上回るPERを検出する場合、温度制御ブロックは、次により低い温度サブレンジを測定のために選択する。
【0090】
図8は、一実施形態に応じた、PMIR712の例示的な実施形態に結合されるPMIR710の例示的な実施形態の概略図である。PMIR710は、整数J個のP型FETから成る第1のアレイ802と、J個のP型FETから成る第2のアレイ804とを含む。第1のアレイ802の各P型FETはそのゲートおよびドレインをノード707に結合されており、そのソースを第2のアレイ804のP型FETのうちの対応するもののドレインに結合されている。第2のアレイ804の各P型FETのソースはVDDに結合される。第2のアレイ804の各P型FETのゲートは、MA、MA,...,MAとして図示されるデジタルモード利得値MAの対応するビットを受信する。
【0091】
PMIR712は実質的に同様に構成される。PMIR712は、整数K個のP型FETから成る第1のアレイ806と、J個のP型FETから成る第2のアレイ808とを含む。第1のアレイ802の各P型FETはそのドレインをノード709に結合されており、そのゲートをノード707に結合されており、そのソースを第2のアレイ808のP型FETのうちの対応するP型FETのドレインに結合されている。第2のアレイ808の各P型FETのソースはVDDに結合される。第2のアレイ808の各P型FETのゲートは、MB、MB,...,MBとして図示されるデジタルモード利得値MBの対応するビットを受信する。
【0092】
利得値MAまたはMBの各ビットはP型FETのアレイの対応するレッグをオンまたはオフにして電流ミラーのモード利得を調整する。ハイにプルされると、電流ミラーレッグはオフにされて電流利得が低減し、ローにプルされると、電流ミラーレッグはオンにされて電流利得が増大する。PMIRブロック710および712の両方を使用することによって、より正確に温度サブレンジを選択するためにモード利得調整を精緻化することが可能になる。
【0093】
IDAC714は、PMIR712と同様に実装されてもよい。前述されるように、IDAC714は、プログラム可能であり、選択される温度レンジ内で実際の温度を探索するようSPに各温度測定探索の間に調整される探索利得を提供する。
【0094】
図9は、メモリ728内に記憶されてもよく、複数の所定の温度サブレンジの各々についてモード選択を容易にするための値を含む温度レンジモード選択テーブル900の図である。各温度サブレンジは、VDに対する対応する基準(たとえば、上側)およびデルタ(たとえば、下側)ダイオード電圧、温度レンジRSEL値によって決定されるダイオードDHおよびDLのうちの選択される一方、各温度サブレンジについてPMIR710および712をプログラムするためのMAおよびMBの対応するモード利得値、ならびに、IDAC714をプログラムするための初期利得値Gとしての少なくとも1つのIDAC基準(DAC_REF)値を有する。これらの値は、様々なファクタに基づいて決定され、さらに経験的に決定されてもよい。概して、これらの値は各温度サブレンジ内での温度探索の確度について回路を最適化するように選択される。
【0095】
100〜125℃の上側サブレンジについて、VD、RSEL、MA、MBおよびDAC_REF値はそれぞれ、VH1およびVL1、DH、MA1、MB1、ならびにSP1〜SP1である。次に高い70〜100℃のレンジについて、VD、RSEL、MA、MBおよびDAC_REF値はそれぞれ、VH2およびVL2、DH、MA2、MB2、ならびにSP2〜SP2である。次の40〜70℃の温度レンジについて、VD、RSEL、MA、MBおよびDAC_REF値はそれぞれ、VH3およびVL3、DL、MA3、MB3、ならびにSP3〜SP3である。最も低い0〜40℃の温度レンジについて、VD、RSEL、MA、MBおよびDAC_REF値はそれぞれ、VH4およびVL4、DL、MA4、MB4、ならびにSP4〜SP4である。
【0096】
DAC_REF値は温度測定中に初期基準値としてIDAC714にプログラムされるGの初期値である。示されている実施形態は、各温度サブレンジについて4つのDAC_REF値を図示している。この場合、各サブレンジは4つのより狭い温度ウィンドウにさらに分割されてもよく、各ウィンドウは複数の異なるDAC_REF基準値のうちの1つと対応する。DAC_REF値は較正手順中に決定されてもよく、温度測定手順中にさらに使用されてもよい。較正手順中、温度は既知であり、初期DAC_REF値がその温度の対応する利得値の基準点として使用される。実際の利得値が得られると、DAC_REF値は更新されてもよく、プロセスはより高い確度を達成するために反復されてもよい。
【0097】
温度測定手順中、温度は最初に既知でないため、デフォルト値または記憶されているDAC_REF値のうちの1つが初期温度測定に最初に使用される。初期温度値が決定されると、対応する温度ウィンドウレンジのDAC_REF値が選択されてもよく、温度手順はより正確な測定のために反復される。代替的な実施形態では、4つよりも多い、または少ないDAC_REF値が記憶される。一実施形態では、DAC_REF値は記憶されず、デフォルトDAC_REF値が使用される。
【0098】
図10は、メモリ728内に記憶されてもよく、温度レンジ全体のうちの各温度サブレンジ内の選択される温度値に関するIDAC差分利得値(または単純に利得値)をリストする温度対利得ルックアップテーブル(LUT)1000の図である。温度レンジ全体(たとえば、0〜125)が、サブレンジインデックスによって表される4つの異なる温度サブレンジに細分化される。図示されるように、インデックス1は温度サブレンジ100〜125℃に対応し、インデックス2は温度サブレンジ70〜100℃に対応し、インデックス3は温度サブレンジ40〜70℃に対応し、インデックス4は温度サブレンジ0〜40℃に対応する。示される実施形態では、各温度に対して利得値を提供するのではなく、各サブレンジ内の選択される温度は、4度増分ずつの間隔である。リストされる各温度値はGITEMPの形態のIDAC714の利得値と対応し、「I」はサブレンジインデックスを表し、「TEMP」は摂氏温度を表す。たとえば、利得値G270は2の温度サブレンジインデックス(70〜100)内の70℃と対応するIDAC利得値Gを表す。
【0099】
たとえば、1度または2度のみまたは5度以上ずつの間隔のように、間隔が4度よりも大きいまたは小さい代替的な実施形態が企図される。4度の間隔は、各温度度数に対して利得値を提供するのと比較してメモリ消費を低減するに際し十分な確度を提供する。本明細書においてさらに説明されるように、中間温度値が補間利得値によって補間されてもよい。さらに、可能性のある読み誤りを低減するように温度レンジは互いに重なりあってもよい。図示されるように、第1の温度サブレンジ(インデックス1)のの最も高い温度である128℃は目標温度レンジ最大値の125℃よりもわずかに高い。さらに、各後続の温度サブレンジは、6度(6℃)など、所定の重なり量だけ、先行する高い温度サブレンジに重なる。図示されるように、たとえば、第2の温度サブレンジ(インデックス2)の最高温度は106℃であり、該最高温度は第1の温度サブレンジ(インデックス1)の最低温度(100℃)よりも6℃だけ高い。
【0100】
本明細書においてさらに説明されるように、所与の構成のために各ルックアップテーブルをプログラムするように較正手順が実行され、当該ルックアップテーブルは、すべてのサイトに対する単一のルックアップテーブルであってもよく、または各サイトに対する別個のルックアップテーブルであってもよい。較正手順中、外部周囲温度がルックアップテーブルと対応する選択される温度に制御され、その温度に対する対応する利得値が決定されて記憶される。温度測定中、有効な最後の利得値が決定されるまで、所与のサイトについて各温度サブレンジがより高い温度サブレンジから最低温度サブレンジへと一度に1つずつ探索される。対応する温度を取り出すために、または、測定された利得値のいずれかの側の温度値および対応する利得値を取り出すために、対応するルックアップテーブルが参照される。次いで、取り出された利得および温度値に基づいて温度が補間されてもよい。
【0101】
図11は、一実施形態に応じた発振検出器722の簡略ブロック図である。自走発振器1102が、アナログMUX1104の一方の入力に低周波数信号LFを提供し、当該MUXはアナログMUX1104の他方の入力においてF信号を受信する。Fは発振検出ブロック1106の入力にも提供され、MUX1104の出力はFR信号を提供する。発振検出ブロック1106は選択信号SELをMUX1104の選択入力Sにアサートする。示される実施形態では、LFはMUX1104の「0」入力に提供され、FはMUX1104の「1」入力に提供され、「0」および「1」はSEL信号の論理値を反映する。
【0102】
発振検出ブロック1106は連続的にまたは周期的に、発振に関してFを監視する。Fが発振していることが検出されると、発振検出ブロック1106はSELをアサートしてFを出力FRとして選択する。Fが発振していないとき、発振検出ブロック1106はSELをアサートしてLFを出力FRとして選択する。前記のように、LFは、カウンタブロック724の出力においてカウント値PERを提供するようにカウンタブロック724を動作させるために十分なクロック信号を提供する。LFがFR信号として選択されるとき、PERはFが発振していないことを示す相対的に低い値を有する。
【0103】
図12は、温度値に対応する利得値を決定し記憶するための、システム700によって実行されてもよい一実施形態に応じた較正手順のフローチャートである。電子システム100は、温度制御された環境内に位置し、周囲温度は外部から制御される。第1のブロック1202において、温度(たとえば、周囲温度)が、LUT1000などの温度ルックアップテーブル内の温度値と対応する特定の温度値に制御される。一実施形態では、温度は、温度レンジ全体の一端(たとえば0℃の下端)に初期化されてもよく、次いで、選択される速度(たとえば、段階的な速度)で反対端へと調整(たとえば、増大)される。温度が対応する温度ルックアップテーブル内のエントリに対応する値に達すると、その温度レベルについて較正プロセスが実行されてもよい。
【0104】
次のブロック1204において、複数のサイトが提供されている場合にはSSEL値をアサートすることによってサイトが選択される。この工程はサイトが1つしかないときには省略または回避されてもよい。次のブロック1206において、実際の温度の温度サブレンジと対応するモードパラメータが適用される。一例として、温度測定選択・制御システム700について、温度センサ・デバイス・サイズ、実効デバイスサイズ、および初期ダイオード電圧が、実際の温度と対応する温度サブレンジについてプログラムされる。テーブル900内に示すように、たとえば、温度が第1のサブレンジ0〜40℃内の0℃であるとき、初期ダイオード電圧は、VSELによって制御されるVD=VH4(最低温度サブレンジの基準電圧値)であり、初期デバイスサイズはRSELによって選択されるDLであり、モード利得値MA4およびMB4が選択されてそれぞれPMIR710および712に適用される。
【0105】
次のブロック1208において、初期DAC基準値DAC_REFが利得値Gとして選択されて、IDAC714がそれに応じてプログラムされる。DAC_REF値はメモリ728内に記憶されてもよいし、または所定のデフォルト値などであってもよい。DAC_REFは基準探索利得値としての役割を果たす。次のブロック1210において、VCO716の出力周波数Fの周期が測定され、該周期は基準周期PER1と対応する。
【0106】
次いで、動作は次のブロック1212に進み、温度探索モードが開始され、ダイオード電圧が、より低いダイオード電圧VDなどのデルタ電圧値に変更される。テーブル900に示されるように、たとえば、温度が第1のサブレンジ0〜40℃内の0℃であるとき、ダイオード電圧はVSELによって選択されるVD=VL4(最低温度サブレンジのデルタ電圧値)に変更される。ダイオード電圧の変更によって、ダイオード電流がデルタ電流レベルに変更され、これに応じてVCO716の出力における信号Fの周波数が変更される。次のブロック1214において、探索利得値Gが温度探索のために初期探索値に変更され、IDAC714にプログラムされる。次のブロック1216において、VCO716の出力周波数Fの周期が測定され、測定されたデルタ周期PER2がそれに応じて更新される。次のブロック1218において、基準周期PER1とデルタ周期PER2とが等しいか否かが照会される。等しくない場合、動作はブロック1220に進み、追加の利得調整をIDAC714に対して行うべきか否かが判定され、行うべきである場合、動作はブロック1222に進み、IDAC714の利得が調整される。次いで、動作はブロック1216にループバックし、Fの周期が再び測定されてPER2が新たな値に更新される。動作は、PER1とPER2とが等しくなるまで、または、さらに利得調整が行われないと判定されるまでブロック1216〜1222をループする。
【0107】
ブロック1216〜1222のループによって表される利得調整および比較を実施するように様々な異なる方法が使用されてもよいことを諒解されたい。なお、実際の構成においては、IDAC714の分解能は、基準および値周期が互いに厳密に整合することを保証するほど十分に高くはない場合があり、それによって、ブロック1218の照会はよく偽を返す場合がある。ブロック1218は、周期値が互いの所定の許容範囲レベル内にあるか否かを照会するように変更されてもよい。代替的に、探索方法は、最も近い一致を提供する利得値を決定するように構成される。
【0108】
一実施形態では、最も近い一致を特定するために二分探索方法が実行される。ブロック1214において適用される初期探索値は、初期探索範囲のほぼ中央にある初期値を有してもよい。初期探索範囲は、たとえば、IDAC714の最小(MIN GAIN)利得値および最大(MAX GAIN)利得値であってもよく、初期探索値は、MID GAIN=(MIN GAIN+MAX GAIN)/2として決定される中央利得値MID GAINである。MID GAINを使用して周期値が一致しない場合、ブロック1220はFの周波数が増大されるべきかまたは低減されるべきかを照会し、新たな低減された探索範囲が決定される。たとえば、周波数が(MIN GAINをMID GAINに等しく設定することによって)増大されるべきである場合、新たな探索範囲は元の探索範囲の上半分であり、または、周波数が(MAX GAINをMID GAINに等しく設定することによって)低減されるべきである場合、新たな探索範囲は元の探索範囲の下半分である。それに応じてMIN GAINまたはMAX GAIN値が調整され、新たなMID GAIN値がブロック1222において同じ式MID GAIN=(MIN GAIN+MAX GAIN)/2を使用して決定され、ブロック1216において評価される。動作は、最終利得値がブロック1218(等しいとき)またはブロック1220(最も近い利得値が決定されるとき、または追加の調整を行わなくてもよいとき)のいずれかにおいて決定されるまで反復する。
【0109】
一例として、IDAC714は最小値が1で最大値が128の128ビットであり、第1のMID GAIN値は64であると仮定する。また、最も近い利得値が86であると仮定する。64において、PER1とPER2とは等しくなくPER1>PER2であり、それによって、新たな範囲は64〜128で、更新されたMID GAIN値は96である。96において、PER1とPER2とは等しくなくPER2<PER1であり、それによって、新たな範囲は64〜96で、更新されたMID GAIN値は80である。80において、PER1とPER2とは等しくなくPER2>PER1であり、それによって、新たな範囲は80〜96で、更新されたMID GAIN値は88である。88において、PER1とPER2とは等しくなくPER2<PER1であり、それによって、新たな範囲は80〜88で、更新されたMID GAIN値は84である。84において、PER1とPER2とは等しくなくPER2>PER1であり、それによって、新たな範囲は84〜88で、更新されたMID GAIN値は86である。PER1とPER2とがブロック1218において判定されるように等しい場合、最も近い利得値が86として決定される。
【0110】
86が最も近い値であるが、PER1およびPER2は1218において判定されるように等しくない可能性があり、さらにはその可能性が高い。この場合、PER1とPER2との間の比較に基づいて、最終MID GAIN値は87または85のいずれかである。この時点において、2つの値のみに絞りこまれているため、さらなる利得調整は必要ない。一実施形態では、1度に満たない誤差を見込み、87または85のいずれかの最終MID GAIN値が許容される。代替的には、決定されたPER2値に対応する周期値のうちの1つ以上が一時的に記憶され、この特定の例における86などの最も近い利得値を特定するために比較される。
【0111】
たとえば、最も近い利得値を特定するように各PER2周期値を比較するに際し、IDAC714をその最低利得値から最高利得値へ、または逆に最高利得値から最低利得値へと単純にウォークするなどの代替的な方法が企図される。
【0112】
PER1=PER2、またはテストするためのさらなる利得調整がないかのいずれかのとき、動作はブロック1224に進み、差分利得値が決定され、対応する温度サブレンジに対する対応する温度値の対応するルックアップテーブル(たとえば、LUT1000)内に記憶される。差分利得値はGの初期DAC_REF値と最終利得値との間の差として決定される。DAC_REF値が最小利得値(たとえば0または1の利得)に等価である場合、最終利得値が代わりに記憶されてもよい。動作は次いで、ブロック1226に進んでもよく、現在の温度に対して異なる温度サブレンジがテストされるべきか否かが照会される。LUT1000によって示されるように、たとえば、異なる温度サブレンジ内に重複する温度値が存在する場合がある(たとえば温度40℃は下側の温度サブレンジの両方に設けられている)。異なる温度サブレンジ内に重複する温度値が存在する場合、動作はブロック1206に戻り、異なる温度サブレンジに対するパラメータが適用され、動作は新たな温度サブレンジ内で現在の温度に関して反復する。
【0113】
異なる温度サブレンジ内に重複する温度値が存在しない場合、動作はブロック1228に進み、現在の温度について異なるサイトがテストされるべきか否かが照会される。複数のサイトがあるとき、各サイトが現在の温度においてテストされてもよい。複数のサイトがある場合、動作はブロック1204に戻って異なるサイトが選択される。
【0114】
複数のサイトがない場合、動作はブロック1230に進み、追加の温度をテストする必要があるか否かが判定される。追加の温度をテストする必要がある場合、動作はブロック1202に戻り、新たな温度が適用される。たとえば、温度0℃がテストされると、温度は4℃に増大されてもよく、対応する1つ以上のルックアップテーブルが完了するまでプロセス全体が新たな温度について反復される。追加の温度をテストする必要がない場合、動作は完了する。
【0115】
図12のフローチャートに示す較正手順は例示に過ぎず、異なる構成に対しては変更されてもよい。また、較正手順は、可能性としてより高い確度を達成するように、各温度サブレンジ内の温度ウィンドウレンジに関してより正確なDAC_REF値を決定するように変更されてもよい。
【0116】
図13は、温度を測定するための、システム700によって実行されてもよい一実施形態に応じた温度測定手順のフローチャートである。この場合、電子システム100は動作しており、1つ以上のサイトにおいて温度を測定および監視することが所望される。温度測定手順は、温度が制御されず、または既知でないことを除いて較正手順と実質的に類似である。第1のブロック1302において、複数のサイトが提供される場合にはSSEL値をアサートすることによってサイトが選択される。この工程はサイトが1つしかないときには省略または回避される。次のブロック1304において、「次の」温度サブレンジと対応するパラメータが適用される。失敗の可能性を回避するように、1回目の反復では最高温度サブレンジが仮定される。一例として、温度測定選択・制御システム700について、温度センサ・デバイス・サイズ、実効デバイスサイズ、および基準ダイオード電圧が、最高温度サブレンジについてプログラムされる。たとえば、テーブル900に示されるように、初期ダイオード電圧は、VSELによって選択されるVD=VH1(最高温度サブレンジの基準電圧値)であり、初期デバイスサイズはRSELによって選択されるDHであり、利得値MA1およびMB1が選択されてそれぞれPMIR710および712に適用される。
【0117】
次のブロック1306において、初期またはデフォルトDAC_REFが利得値Gとして選択されて、IDAC714がそれに応じてプログラムされる。初期またはデフォルトDAC_REFはメモリ728内に記憶されてもよく、または所定のデフォルト値などであってもよい。テーブル900からのDAC_REF値のうちの1つが使用されてもよいが、温度は1回目の反復ではまだ既知でなく、それによって1つは任意に選択されてもよい。最終温度値が決定されると、テーブル900からの対応するDAC_REF値が取り出されてもよく、温度測定手順は、可能性としてより正確な温度測定値を得るように取り出されたDAC_REF値を使用して反復されてもよい。
【0118】
次のブロック1308において、VCO716の出力周波数Fの周期が測定され、該周期は基準周期PER1と対応する。しかしながら、前記のように、温度が低く高温サブレンジが仮定されているときなど、駆動電流および電圧レベルが低すぎる場合には、VCO716が発振することが不可能である可能性がある。この場合、動作はブロック1310に進み、VCO716が発振しているか否かについて照会される。この判定は、周期が、発振検出器722が発振していないことを検出する高周期値PER_HIと対応するか否かを判定することによって行われてもよい。VCO716が発振していない場合、動作はブロック1304に戻り、次により低い温度サブレンジが選択される。
【0119】
ブロック1310において判定されるように発振している場合、動作はブロック1312に進み、温度探索モードが開始され、ダイオード電圧がデルタ(より低い)VDダイオード電圧などのデルタ値に変更される。たとえば、テーブル900に示されるように、最高温度サブレンジ100〜125℃について、ダイオード電圧はVSELによって選択されるVD=VL1(最高温度サブレンジのデルタ電圧値)に変更される。ダイオード電圧の変更によって、ダイオード電流が新たなレベルに変更され、これに応じてVCO716の出力における信号Fの周波数が変更される。
【0120】
次のブロック1314において、利得値Gが温度探索のために初期探索値に変更され、IDAC714にプログラムされる。次のブロック1316において、VCO716の出力周波数Fの周期が測定され、PER2が該周期に応じて更新される。次のブロック1318において、発振しているか否かが再び照会される。発振はブロック1310において検証されたが、限界条件下にあってパラメータが変化している場合がある。発振していない場合、動作はブロック1304に戻り、次により低い温度サブレンジに進む。発振している場合、動作はブロック1320に進み、基準周期PER1とデルタ周期PER2とが等しいか否かが照会される。等しくない場合、動作はブロック1322に進み、追加の利得調整をIDAC714に対して行うべきか否かが判定され、行うべきである場合、動作はブロック1324に進み、IDAC714の利得が調整される。次いで、動作はブロック1316にループバックし、Fの周期が再び測定されてPER2が新たな値に更新される。
【0121】
較正手順について上述したものと同様に、動作は、PER2とPER1とが等しくなるまで、または、さらに利得調整が行われないと判定されるまでブロック1316〜1324をループする。上記のように、二分探索または線形探索などの、様々な方法が利得調整および比較を実施するために使用されてもよい。二分探索方法は、実際の温度と対応する利得値に収束するための迅速で効率的な手段を提供する。PER1およびPER2が等しくなく、ブロック1322において判定されるように利得のさらなる調整が利用可能でない場合、動作はブロック1326に進み、IDAC714が、その最低限界値などのその限界の1つに達しているか否かが照会される。限界に達している場合、選択された温度レンジは高すぎ、動作はブロック1304に戻って、次により低い温度サブレンジ内での探索の反復に進む。
【0122】
PER2=PER1のとき、またはさらなる利得調整がなく、かつIDAC714が限界値に達していない場合、動作はブロック1328に進み、差分利得値が決定され、LUT1000などの対応するルックアップテーブルから対応する温度値を取り出すために使用される。差分利得値は最終利得値とDAC_REF値との間の差として決定された。選択されるダイオードに印加される基準電圧レベルを印加して、DAC_REFを利得として使用して基準周期PER1が決定され、熱センスダイオードに印加されるデルタ電圧レベルを印加して、新たな周期PER2がGの最終利得値を使用して決定された。したがって、差分利得値は、基準を適用する結果としてもたらされるダイオード電流対デルタ電圧レベルの比を示す。代替的に、DAC_REF値が最小利得値に等価である場合、最終利得値が差分利得値として使用されてもよい。
【0123】
なお、正確な利得値がルックアップテーブル内に直接リストされていない可能性があり、さらにはおそらくその可能性が高い。たとえば、LUT1000に示されるように、温度値は4℃ずつ増分した間隔にあり、それによって利得値はそれに応じて分散される。対応する温度は補間によって決定されてもよい。最初に、ルックアップテーブル内において、測定された利得値の上下の利得値が決定され、対応する温度値とともに取り出される。測定利得値が取り出された利得値の間に補間され、対応する取り出された温度値の間に温度が線形的に補間される。たとえば、取り出された温度値に重み値を適用して最終温度値を補間してもよい。
【0124】
次いで、動作はブロック1330に進み、サブレンジは、同一のサイトまたは異なるサイトにおいて続いて測定を行うように最高(または次により高い)温度サブレンジに戻る。温度は有意な温度分変化していない場合があるが、1つの手法は、任意の後続の測定のために最高サブレンジに戻ることである。代替的な実施形態では、温度が連続する測定の間で有意な量だけ変化している可能性は低いため、最高サブレンジに戻るのではなく、動作は次により高いサブレンジに戻る。たとえば、LUT1000を参照すると、温度が第3のサブレンジ内40〜70℃内の42℃と決定される場合、サブレンジは、より速い可能性がある温度探索のために次により高いサブレンジ70〜100℃に変更されてもよい。
【0125】
次いで、動作はブロック1332に進み、現在のサイト選択において別の測定を行うか否かが照会される。現在のサイトにおいて別の測定を行う場合、動作はブロック1304に戻り、選択された温度サブレンジ(たとえば、現在の、最高の、または次により高い)のパラメータおよび動作が別の測定のために継続する。現在のサイトにおいて別の測定を行うべきでない場合、動作はブロック1334に進み、異なるサイトにおいて測定を行うか否かが照会される。異なるサイトにおいて測定を行う場合、動作はブロック1302に戻って異なるサイトが選択される。異なるサイトにおいて測定を行わない場合、動作は完了する。
【0126】
基準およびデルタ電圧は、特定の工程技術、ならびに、他のファクタおよび変数の中でも目標温度レンジに対して構成されてもよい。非限定的な例のリストとして、90ナノメートル(nm)、40nm、28nm、20nm、14nmなどの、多くのタイプの工程技術が企図される。熱センササイズおよび印加されるバイアス電圧は、工程技術および他の回路パラメータに基づいて変更または他の様態で調整されてもよい。たとえば、28nm技術を使用する1つの非限定的な特定の実施形態では、電圧差が0.05V、すなわち50ミリボルト(mV)である約0.5Vの基準電圧および約0.45ボルトのデルタ電圧が最高温度サブレンジ100〜125℃に使用されてもよい。同じ特定の実施形態において、電圧は約0.8Vの基準電圧および約0.75Vのデルタ電圧まで上昇させて調整され、電圧差は50mVである。電圧差は同一であってもよく、または温度サブレンジごとに調整されてもよい。概して、基準およびデルタ温度は、特定の工程実施態様に応じて任意の適切な電圧レベルを有してもよい。既存の工程技術について、電圧レベルは約100mVから最大約1Vに及び、電圧差は数mV(たとえば20mV)から最大数百mV(たとえば、200mV)に及ぶ。
【0127】
本明細書において、具体的な実施形態を参照して本発明を説明したが、添付の特許請求の範囲に明記されているような本発明の範囲から逸脱することなくさまざまな改変および変更を為すことができる。代替的な構成では、たとえば、同一または類似の結果を達成するに際しソース電圧に対して逆のソース基準および/または回路が実装されてもよい。たとえば熱検知ダイオード(たとえば、DR、D1、D2、DNなど)はグランドまたはCOMを参照するカソードを有して示されるが、代わりにそれらのアノードはVDDなどのようなソース電圧に結合されてもよく、支持回路はそれに応じて類似の結果を達成するように変更される。同様に、VCO(たとえば、402、502、622、716)はVDDに結合される上側電源ノードを有して示されている一方で、下側電源ノードが代わりにグランドまたはCOMに対して参照され、類似の結果を達成するように電流ミラー構成がそれらの対応する上側電源ノード上で電圧を生成する代替的な構成が企図される。
【0128】
したがって、本明細書および図面は限定的な意味ではなく例示とみなされるべきであり、すべてのこのような改変が本発明の範囲内に含まれることが意図されている。本明細書において具体的な実施形態に関して記載されるいかなる利益、利点、または問題に対する解決策も、任意のまたはすべての請求項の重要な、必要とされる、または基本的な特徴または要素として解釈されるようには意図されていない。別途記載されない限り、「第1の」および「第2の」のような用語は、そのような用語が説明する要素間で適宜区別するように使用される。したがって、これらの用語は必ずしも、このような要素の時間的なまたは他の優先順位付けを示すようには意図されていない。
図1
図2
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図4
図5
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図10
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図12
図13