(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6200740
(24)【登録日】2017年9月1日
(45)【発行日】2017年9月20日
(54)【発明の名称】マイクロ・チャネル・コーティング堆積システムおよびその使用方法
(51)【国際特許分類】
F02C 7/00 20060101AFI20170911BHJP
F01D 25/00 20060101ALI20170911BHJP
F01D 5/18 20060101ALI20170911BHJP
F01D 9/02 20060101ALI20170911BHJP
C23C 4/12 20160101ALI20170911BHJP
【FI】
F02C7/00 D
F02C7/00 C
F01D25/00 X
F01D25/00 L
F01D5/18
F01D9/02 102
C23C4/12
【請求項の数】10
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2013-196385(P2013-196385)
(22)【出願日】2013年9月24日
(65)【公開番号】特開2014-111933(P2014-111933A)
(43)【公開日】2014年6月19日
【審査請求日】2016年9月16日
(31)【優先権主張番号】13/627,158
(32)【優先日】2012年9月26日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】390041542
【氏名又は名称】ゼネラル・エレクトリック・カンパニイ
(74)【代理人】
【識別番号】100137545
【弁理士】
【氏名又は名称】荒川 聡志
(74)【代理人】
【識別番号】100105588
【弁理士】
【氏名又は名称】小倉 博
(74)【代理人】
【識別番号】100129779
【弁理士】
【氏名又は名称】黒川 俊久
(74)【代理人】
【識別番号】100113974
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 拓人
(72)【発明者】
【氏名】ロナルド・スコット・バンカー
【審査官】
倉田 和博
(56)【参考文献】
【文献】
特開2008−069450(JP,A)
【文献】
特開2012−127343(JP,A)
【文献】
特開2012−072705(JP,A)
【文献】
特開2012−082518(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F02C 7/00
F01D 5/18,9/02,25/00
C23C 4/12
DWPI(Derwent Innovation)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
物品(76)の標的表面(48)を圧力コーティングをして1以上のマイクロ・チャネル(40)を形成する方法であって、
加圧マスキング流体(64)を含む圧力マスカ(74)を、物品(76)の第1のサイド(36)上の1以上の冷媒供給孔(62)であって、物品の対向する第2のサイド(34)上に形成された1以上の溝(52)と流体連絡する1以上の冷媒供給孔(62)に、流体的に結合するステップと、
第1の圧力の前記加圧マスキング流体(64)を、前記1以上の冷媒供給孔(62)と前記1以上の溝(52)とを通して、前記第1のサイド(36)から前記標的表面(48)を構成する前記第2のサイド(34)へ送るステップと、
コーティング材料(50)を前記標的表面(48)に向けて発射することによって前記標的表面(48)をコーティングするステップであって、前記加圧マスキング流体(64)を第1の圧力で前記1以上の溝(52)に通して前記コーティング材料(50)が前記1以上の冷媒供給孔(62)の断面積を実質的に変えないようにする、ステップと、
前記標的表面(48)のコーティングを続けながら、前記加圧マスキング流体(64)を前記第1の圧力に等しいか又はそれ以上の第2の圧力で前記1以上の冷媒供給孔(62)及び前記1以上の溝(52)を通して出口領域(53)に向けて送り、前記コーティング材料(50)が前記1以上の溝(52)の長さに沿って前記1以上の溝(52)に橋を架けて前記1以上のマイクロ・チャネル(40)を形成できるようにするステップであって、前記1以上の溝(52)が前記コーティング材料(50)によって橋を架けられるときに前記加圧マスキング流体(64)を強制的に前記1以上の溝(52)の前記長さに沿って流すステップと
を含む方法。
【請求項2】
前記加圧マスキング流体(64)を前記第2の圧力に等しいか又はそれ以上の第3の圧力で前記1以上のマイクロ・チャネル(40)を通して送って、拡大された冷媒出口孔(60)を維持することをさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記加圧マスキング流体(64)がガスを含む、請求項1又は請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記ガスが窒素を含む、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記加圧マスキング流体(64)が液体を含む、請求項1又は請求項2に記載の方法。
【請求項6】
前記コーティング材料(50)がMCrAlY(式中、MはNi又はCoである。)を含む、請求項1乃至請求項5のいずれか1項に記載の方法。
【請求項7】
前記コーティング材料(50)がイットリア安定化ジルコニアを含む、請求項1乃至請求項5のいずれか1項に記載の方法。
【請求項8】
前記標的表面(48)をコーティングするためのコーティング材料(50)を溶射ガンで発射する、請求項1乃至請求項7のいずれか1項に記載の方法。
【請求項9】
前記加圧マスキング流体(64)を、前記標的表面(48)のコーティングが終了した後に前記1以上の溝(52)の前記長さに流し続けて、存在し得る任意の緩く結合した障害物(66)を取り除く、請求項1乃至請求項8のいずれか1項に記載の方法。
【請求項10】
前記加圧マスキング流体(64)を前記1以上の溝(52)に通す際の前記第1の圧力が、前記コーティング材料(50)のコーティング圧力に等しいか又はそれ以上である、請求項1に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書で開示する主題は、コーティング堆積システムに関し、より具体的には、マイクロ冷却チャンネルを伴う物品をコーティングするためのマイクロ・チャネル・コーティング堆積システムに関する。
【背景技術】
【0002】
ガス・タービン・エンジンは、多くの用途で見出される場合がある。たとえば、工業用タービン、航空転用タービン、航空機タービンなどである。一例として、航空機で用いるガス・タービン・エンジンでは、空気が、エンジンの前方に引き出され、シャフトに取り付けられたロータリ式圧縮機によって圧縮されて、燃料と混合される。混合気は燃焼されて、高温排気ガスが、シャフト上に取り付けられたタービンを通過する。ガスの流れがタービンを回転させ、タービンによってシャフトが回転して圧縮機および送風機が駆動される。高温排気ガスはエンジンの背部から流れて、エンジンと航空機を推進する。
【0003】
ガス・タービン・エンジンの動作中に、燃焼ガスの温度は3,000°Fを超える場合がある。これは、これらのガスと接触しているエンジンの金属部品の融解温度よりもかなり高い。これらのエンジンが、金属部品の融解温度を超えるガス温度で動作することは、十分に確立されている技術であり、部分的に、冷却用空気を金属部品の外面に種々の方法で供給することに依存している。通常、高温ガス経路の構成部品は、圧縮機から空気を抜き取ることによって冷却される。これらのエンジンのうち、特に高温にさらされ、したがって冷却に関して特別な注意を必要とする金属部品は、燃焼器を形成する金属部品および燃焼器の後部に配置される金属部品である。当然のことながら、現在では金属部品が慣習であるが、将来を考えると、たとえばセラミック部品およびセラミック・マトリックス複合材料となる場合があり、これらは同様に冷却する必要がある。
【0004】
ガス・タービン・エンジン冷却技術は、成熟しており、種々の高温ガス経路構成部品における冷却回路および特徴物の種々の態様に対する多くの特許が含まれている。たとえば、航空業界では、燃焼器は通常、半径方向外側および内側のライナを備えており、これらは、動作中に冷却する必要がある。工業用タービンでは、より一般的に、環状筒形の燃焼器ライナまたはダンプ燃焼器を用いる場合がある。タービン・ノズルは、外部および内部バンド間に支持された中空のベーンを備えており、これらも冷却を必要とする。タービン・ローター・ブレードは中空で、通常、内部に冷却回路を備えている。ブレードはタービン・シュラウドに囲まれており、タービン・シュラウドも冷却する必要がある。高温燃焼ガスが排出されるときに通る排気管は、やはり裏打ちされて好適に冷却されている場合がある。
【0005】
すべての典型的なガス・タービン・エンジン構成部品において、通常は高強度超合金金属の薄い金属壁が用いられて、耐久性の強化が図られる一方で、それらを冷却する必要性が最小限にされている。種々の冷却回路および特徴物をこれらの個々の構成部品に対して適応させることが、エンジン内のその対応する環境において行なわれている。たとえば、一連の冷却通路または蛇行物が、高温ガス経路構成部品内に形成されている場合がある。冷却液がプレナムから蛇行物に供給される場合があり、冷却液が通路を通って流れることによって、高温ガス経路構成部品基板およびコーティングが冷却される場合がある。しかし、この冷却方法を行なうと通常、熱伝達率が比較的低くなり、構成部品の温度プロファイルが不均一になるという結果になる。
【0006】
マイクロ・チャネル表面を冷却する場合、冷却を加熱ゾーンのできるだけ近くに設けることによって冷却要求が著しく減る可能性があり、その結果、ある特定の熱伝達率に対して高温側と低温側との間の温度差が小さくなる。現在のマイクロチャネル形成技術では通常、特殊な技術が必要となる。たとえば、犠牲充填材、凹角溝、角度蒸着技術などを用いることである。犠牲充填材を用いることによって、コーティングがマイクロチャネル内に堆積されない一方で、コーティングが堆積中に支持される。コーティング・システムの堆積後に、犠牲充填材(散逸性)材料を除去する。チャネルに散逸性材料を充填して、後でその材料を除去することは、現在のマイクロ・チャネル処理技術に対する潜在的な問題を示している。犠牲充填材を除去することは、抽出エッチングの潜在的な損傷プロセスまたは蒸発が伴い、通常は長時間が必要である。残留する充填材料も懸念事項である。他のマイクロ・チャネル・コーティング堆積技術には、凹角溝の作製が含まれている。これは、表面における溝開口部が十分に小さいために、コーティング粒子が橋を形成して、溝内部に、したがって形成されたマイクロ・チャネル内に、堆積される堆積がほとんどないかまたはまったくないものである。加えて、角度蒸着技術がコーティング堆積に対して用いられているために、チャネル開口部内への見通し線が小さくなっている。これらの技術では、コーティング層の堆積が行なわれながら、不要なコーティング粒子がマイクロ・チャネルまたはチャネル開口部内に堆積されることが偶発的に可能になっている場合がある。
【0007】
さらなる因子、たとえばコーティング堆積表面におけるマイクロ・チャネルのサイズおよび成形によって、マイクロ・チャネル内に堆積されるコーティング量が影響されることが、たとえ見通し線が存在していても起こる。部分的に、この原因は、スプレイ方向に垂直でない任意の表面(たとえばマイクロ・チャネルの側壁)に対して堆積角度が増加することである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】米国特許第6,878,046号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
したがって、代替的なコーティング堆積システムおよび方法があれば、当該技術分野において歓迎されるであろう。
【課題を解決するための手段】
【0010】
一実施形態においては、物品の標的表面に圧力コーティングをして1または複数のマイクロ・チャネルを形成する方法が開示されている。本方法には、加圧マスキング流体を含む圧力マスカを、物品の表面上の1または複数の冷媒供給孔であって、その対向表面上に形成された1または複数の溝と流体連絡する1または複数の冷媒供給孔に流体的に結合することが含まれる。次に、本方法には、第1の圧力の加圧マスキング流体を、1または複数の冷媒供給孔と1または複数の溝とを通して、第1のサイドから標的表面を含む第2のサイドへ送ることが含まれる。標的表面を次に、コーティング材料を標的表面に向けて発射することによってコーティングし、第1の圧力の加圧マスキング流体が1または複数の溝を通ることによって、コーティング材料が1または複数の冷媒供給孔の断面積を実質的に変えることが防止される。次に、第1の圧力以上の第2の圧力の加圧マスキング流体を、1または複数の冷媒供給孔と1または複数の溝とを通して送り、標的表面のコーティングを続ける間に、コーティング材料が、1または複数の溝に1または複数の溝の長さに沿って出口領域に向かって橋を架けて、1または複数のマイクロ・チャネルを形成することが可能になる。加圧マスキング流体を、1または複数の溝がコーティング材料によって橋を架けられるときに、強制的に1または複数の溝の長さに沿って流す。
【0011】
別の実施形態においては、外面上に形成された1または複数の溝を備える物品の標的表面をコーティングするための加圧マスキング・システムが開示される。加圧マスキング・システムは、1または複数の溝と流体連絡する1または複数の冷媒供給孔に物品の第1のサイドにおいて流体的に接続された圧力マスカを備えている。圧力マスカは、可変圧力の加圧マスキング流体を1または複数の溝を通して第1のサイドから1または複数の溝の長さに沿って第2のサイドの出口領域に向けて送る。第2のサイドには標的表面が含まれている。システムはさらに、コーティング材料を標的表面に向けて発射する部分コーターを備えている。加圧マスキング流体によって、コーティング材料が1または複数の溝に、1または複数の溝の長さに沿って、出口領域に向かって橋を架けて、1または複数のマイクロ・チャネルを形成し、コーティング材料が1または複数の溝の断面積を永続的に変えることを防止することが可能になる。
【0012】
本明細書で説明する実施形態によって提供されるこれらのおよび付加的な特徴は、以下の詳細な説明とともに図面を考慮して、より十分に理解される。
【0013】
図面で説明する実施形態は、本質的に例示的かつ典型的なものであり、請求項によって規定される実施形態を限定することは意図されていない。以下の例示的な実施形態の詳細な説明は、以下の図面とともに読むことで理解することができる。図面では、同様の構造は同様の参照数字を用いて示されている。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】本明細書において示すかまたは説明する1または複数の実施形態によるガス・タービン・システムの概略図である。
【
図2】本明細書で示すかまたは説明する1または複数の実施形態による表面冷却チャネルを伴う翼構成例の概略的な断面である。
【
図3】本明細書で示すかまたは説明する1または複数の実施形態による圧力マスキング・システムの概略図である。
【
図4】本明細書で示すかまたは説明する1または複数の実施形態による圧力マスキング・システムの概略的な断面図である。
【
図5】本明細書で示すかまたは説明する1または複数の実施形態による
図4の圧力マスキング・システムの概略的な断面図である。
【
図6】本明細書で示すかまたは説明する1または複数の実施形態による圧力マスキング・システムの斜視図である。
【
図7】本明細書で示すかまたは説明する1または複数の実施形態による圧力マスキング・システムの概略的な断面図である。
【
図8】本明細書で示すかまたは説明する1または複数の実施形態による圧力マスキング・システムの概略的な断面図である。
【
図9】本明細書で示すかまたは説明する1または複数の実施形態による圧力マスキング・システムを用いて物品を圧力コーティングする方法のブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本開示の1または複数の特定の実施形態について説明する。これらの実施形態についての説明を簡潔に行なうために、本明細書では実際の実施のすべての特徴については説明しない場合がある。当然のことながら、任意のこのような実際の実施を起こす際には、任意のエンジニアリングまたはデザイン・プロジェクトの場合と同様に、開発者の具体的な目標(たとえばシステム関連およびビジネス関連の制約に適合すること)を実現するために、実施に固有の多くの決定を行なわなければならない。具体的な目標は実施ごとに違う場合がある。また当然のことながら、このような開発努力は、複雑で時間のかかる場合があるが、それでも、本開示の利益を受ける当業者にとってはデザイン、作製、および製造の日常的な取り組みであろう。
【0016】
本開示の種々の実施形態の要素を導入するとき、冠詞「a」、「an」、「the」、および「前記」は、要素の1つまたは複数が存在することを意味することが意図されている。用語「備える(comprising)」、「含む(including)」、および「有する(having)」は、包含的であることが意図されており、列記した要素以外のさらなる要素が存在する場合があることを意味している。
【0017】
本明細書で開示される加圧マスキング・システムは、大まかに、圧力マスカと、1または複数の溝を備える物品の標的表面をコーティングする部分コーターとを備えて、1または複数のマイクロ・チャネル(本明細書では表面冷却チャネルとも言う)を形成する。部分コーターからコーティング材料が標的表面に向けて発射される一方で、加圧マスキング流体が溝に冷媒供給孔を介して流体的に接続されてそこに溝を通して送られることで、コーティング材料によって、溝に橋が架かること、1または複数のマイクロ・チャネル(本明細書では表面冷却チャネルとも言う)が形成されること、および表面冷却チャネルと供給出口孔との断面積がコーティング材料によって永続的に変わることを防止することが、可能になる。加圧マスキング・システム、および物品の標的表面を圧力コーティングして1または複数の表面冷却チャネルを形成する方法について、本明細書でより詳細に説明する。
【0018】
図1はガス・タービン・システム10の概略図である。システム10は、1または複数の圧縮機12、燃焼器14、タービン16、および燃料ノズル20を備えていても良い。圧縮機12およびタービン16を、1または複数のシャフト18によって結合しても良い。シャフト18は、単一シャフトであっても良いし、または複数のシャフト・セグメントを互いに結合してシャフト18を形成するものであっても良い。
【0019】
ガス・タービン・システム10は複数の高温ガス経路構成部品を備えていても良い。高温ガス経路構成部品は、システム10のうちシステム10を通る高温のガス流れに少なくとも部分的にさらされる任意の構成部品である。たとえば、バケット・アセンブリ(ブレードまたはブレード・アセンブリとしても知られている)、ノズル・アセンブリ(ベーンまたはベーン・アセンブリとしても知られている)、シュラウド・アセンブリ、尾筒、止め輪、および圧縮機排気の構成部品はすべて、高温ガス経路構成部品である。しかし当然のことながら、本開示の高温ガス経路構成部品は、前述の例には限定されず、高温のガス流れに少なくとも部分的にさらされる任意の構成部品であっても良い。さらに、当然のことながら、本開示の高温ガス経路構成部品は、ガス・タービン・システム10内の構成部品には限定されず、高温流れにさらされる場合がある機械類の任意の部分またはその構成部品であっても良い。
【0020】
高温ガス経路構成部品が高温ガス流にさらされると、高温ガス経路構成部品は高温ガス流によって加熱されて、高温ガス経路構成部品が破損する温度に達する場合がある。したがって、システム10が高温の高温ガス流とともに動作することができるように、システム10の効率および性能の増加、高温ガス経路構成部品に対する冷却システムが必要となる。
【0021】
一般的に、本開示の冷却システムでは、一連の小さい冷却チャネル(またはマイクロチャネル)が、高温ガス経路構成部品の表面に形成されている。高温ガス経路構成部品は、1または複数の溝と、溝の上に橋を架けるコーティングとを備えて、マイクロ・チャネルを形成しても良い。冷却液をマイクロ・チャネルにプレナムから供給しても良く、冷却液がマイクロ・チャネルを通って流れてコーティングを冷却しても良い。
【0022】
次に
図2を参照して、翼構成を有する高温ガス構成部品30の実施例が例示されている。示したように、構成部品30は、外面34および内面36を伴う基板32を備えている。基板32の内面36によって少なくとも1つの中空の内部空間38が画定されている。代替的な実施形態では、中空の内部空間の代わりに、高温ガス構成部品30は供給キャビティを備えていても良い。基板32の外面34によって複数の表面冷却チャネル40が画定されている。各表面冷却チャネル40は、少なくとも部分的に基板32の外面34に沿って延びている。コーティング42が、基板32の外面34の少なくとも一部上に設けられている。一実施形態においては、高温ガス構成部品30は複数のコーティング42を備えていても良く、表面冷却チャネル40の形成を、基板32内に、部分的に基板32内およびコーティング42の1もしくは複数内に、または完全に1もしくは複数のコーティング42内に行なっても良い。
【0023】
図3〜9を参照して、加圧マスキング・システム、および構成部品30を作製する方法について説明する。たとえば
図4〜9に示したように、本方法には、1または複数の溝52を基板32の外面34内に形成することが含まれる。例示した実施例の場合、複数の溝52が基板32内に形成されている。一実施形態においては、たとえば
図5に示すように、各溝52は基部54および最上部56を有していても良い。ここで、基部54は最上部56よりも幅が広く、各溝52に凹角状溝58が含まれるようになっている。一実施形態においては、たとえば
図8に示すように、各溝52は基部54および最上部56を有していても良い。ここで、基部54および最上部56は実質的に等しい幅を有している。
図4、6、および7に例示されるように、溝52は1または複数の表面冷却チャネル40を形成している。表面冷却チャネル40は、流体を複数の退出フィルム孔60まで運ぶように構成されている。なお、退出フィルム孔は、
図6では丸く示され、
図7に示すようにコーティング42表面に対して角度をなしているが、これらは非限定的な実施例である。またフィルム孔は、非円形孔であっても良く、コーティング表面に対して実質的に垂直であるかまたは任意の角度インスタンスをなすように構成されていても良い。加えて、一実施形態においては、フィルム孔は、表面冷却チャネル当たり1つのフィルム孔に一致する別個の特徴物として形成されていなくても良い。このような実施形態では、複数の表面冷却チャネル出口を互いに接続して連続的な出口特徴部にする1または複数のフィルム溝が形成されていても良い。
【0024】
図3〜8に例示され、また前述したように、1または複数の流体入口(または冷却供給孔62)が、溝52の対応する1つの基部54を通して形成されて、溝52(より詳細には、最終的な表面冷却チャネル40)と少なくとも1つの中空の内部空間38との間の流体連絡が得られている。冷却供給孔62は通常は断面が円形または長円形であり、その形成を、たとえばレーザ加工(レーザ穿孔)、研磨液噴射、放電加工(EDM)、および電子ビーム穿孔のうちの1または複数を用いて行なっても良い。冷却供給孔62は、対応する溝52の基部54に対して垂直であっても良いし、または溝52の基部54に対して20〜90度の範囲の角度で穿孔されていても良い。
【0025】
さらに
図3〜9を参照して、加圧マスキング・システム70が例示されている。加圧マスキング・システム70は、部分コーター72と圧力マスカ74とを備えている。圧力マスカ74は、1または複数の溝52が内部に形成された物品76をコーティングするためのものである。1または複数の溝52はそれぞれ、冷媒供給孔62および出口領域53のうちの1つと流体連絡しており、その結果、冷媒が、物品76の中を、第1のサイド44から第2のサイド46へ、結果として生じる表面冷却チャネル40内を通って進むことができるようになっている。前述したように、物品76は種々の異なる部品を備えることができる。たとえば、燃焼器ライナ、またはガス・タービン・エンジンの他の構成部品である。いくつかの実施形態においては、物品76は、タービン部品、たとえば高温ガス経路構成部品または燃焼構成部品を備えることができる。
【0026】
図3〜8に例示するように、物品76の第2のサイド46には、コーティングすべき標的表面48が含まれている。標的表面48のコーティングを、最初に使用する前に、日常もしくは修理保守の間に、またはその他物品76の寿命に応じて必要により行なって、表面冷却チャネル40を形成または維持する。本明細書で用いる場合、「コーティングされる」は、新しい材料を少なくとも部分的に表面に施すことを、たとえば溶射ガンなどを用いて行なうことを指す。これについては本明細書において理解される。
【0027】
いくつかの実施形態においては、たとえば物品76が金属高温ガス経路構成部品を備えている場合には、物品76の標的表面48に遮熱コーティング(「TBC」)が、動作前にコーティングされていても良い。TBCとしては、金属および/またはセラミック・コーティング材料の1または複数の層であって、物品76の標的表面48に施されて熱が高温燃焼ガスから物品76に伝達することを妨げ、その結果、構成部品を高温燃焼ガスから遮断する層を挙げることができる。表面上にTBCがあることによって、燃焼ガスを、本来は構成部品の特定の材料および作製プロセスによって可能な値よりも高温にすることができる。TBCの任意の好適な組成物を適用しても良い。たとえば、いくつかの実施形態においては、TBCにはMCrAlYのボンド層を含めることができる。ここで、Mは、好ましくはNi、Co、またはそれらの組み合わせであり、それに続いて、イットリア安定化ジルコニア(YSZ)の層である。
【0028】
図3に最良に例示されるように、いくつかの実施形態においては、物品76を、本明細書で理解されるように、圧力コーティングの前にまたはその間に、支持スタンド80上に配置しても良い。支持スタンド80は、固定しても良いしまたは移動可能(たとえば、回転可能)としても良いし、また物品76の標的表面48をコーティングするときに、物品76を部分コーター72および圧力マスカ74に対して位置決めしても良い。
【0029】
さらに
図3〜8を参照して、加圧マスキング・システム70はさらに部分コーター72を備えている。部分コーター72には、コーティング42を形成するために物品76の標的表面44に向けてコーティング材料50を発射する任意の装置が含まれている。
【0030】
部分コーター72は、物品76に対して、標的表面44のコーティングを可能にする任意の位置に配置しても良い。たとえば、
図3に例示したように、いくつかの実施形態においては、物品76を、部分コーター72に隣接する支持スタンド80上に配置しても良い。そして支持スタンド80は、物品76を部分コーター72に対して回転させるかまたは別の方法で変位させることができても良く、および/または部分コーター72は物品76と噛み合い可能であっても良い。そして、部分コーター72を用いて、コーティング材料50を物品76の標的表面44に向けて発射しても良い。しかし、コーティング材料50が物品76の標的表面44に向けて発射される結果、コーティング材料50の一部が、表面冷却チャネル40の作製中に、溝52の1または複数に物品76の第2のサイド46から入る場合がある。したがって、コーティング材料50の一部によって、1または複数の表面冷却チャネル40内に、それらが対向しないでいると、障害物66(
図4)が潜在的に形成される場合がある。
【0031】
部分コーター72を、物品76の標的表面44をコーティングする種々の応用例に対して用いても良い。たとえば、いくつかの実施形態においては、部分コーター72を用いて、前述したように、標的表面48のコーティングをTBCによって行なっても良い。いくつかの実施形態においては、部分コーター72を用いてボンド・コートを標的表面48に施して、以後のTBCまたは他のコーティングの適用に備えても良い。いくつかの実施形態においては、部分コーター72を用いてペイント・コートを標的表面44に施しても良い。いくつかの実施形態においては、部分コーター72を用いて、他のコーティングを施しても良い。たとえば拡散コーティング、遮熱コーティング(TBC)、緻密な垂直亀裂(DVC)コーティング、高速フレーム溶射(HVOF)によって形成されたコーティング、または他の粘着結合コーティングである。本明細書において特定の実施形態について示してきたが、当然のことながら、これらは単に典型的であり、部分コーター72の加圧マスキング・システム70の一部としての他の任意の応用例を実現しても良い。
【0032】
さらに
図4〜8を参照して、加圧マスキング・システム70はさらに圧力マスカ74を備えている。圧力マスカ74は、流体接続部78を備えている。流体接続部78は、マスキング流体源(図示せず)を物品76の少なくとも1つの溝52に冷却供給孔62を介して流体的に接続するものである。本明細書で用いる場合、「流体接続部」が指しているのは、任意のタイプの接続部または構成であって、加圧マスキング流体64が圧力マスカ74から少なくとも1つの溝52まで通ることが外部環境への不注意な損失を伴って可能になる接続部または構成である。流体接続部78には、たとえば、加圧マスキング流体64の移動を1または複数の溝52へ向ける任意の形態の導管が含まれていても良い。当然のことながら、流体接続部78を圧力マスカ74と少なくとも1つの溝52との間に冷却供給孔62を介して設ける任意の構成を実現しても良い。たとえば、
図4に最良に例示されるように、一実施形態においては、流体接続部78には、物品76の内部通路として機能する少なくとも1つの中空の内部空間38が含まれていても良い。内部空間38は、加圧マスキング流体64を圧力マスカ74から受け取って、それを物品76の少なくとも1つの溝52に流体的に分配することができるものである。したがって、圧力マスカ74を、少なくとも1つの中空の内部空間38に直接取り付けて、加圧マスキング流体64を物品76の周りの広い領域に分配することができる。したがって、その領域内にあってその中空の内部空間38と流体連絡する任意の冷却供給孔62を、加圧マスキング流体64が流体的に通っている。一実施形態においては、少なくとも1つの中空の内部空間38が、エントリ・ポイント、たとえばバケット構成部品に対するダブテールを有しており、流体接続部78をそのエントリ・ポイントにおいて作製して、加圧マスキング流体64を中空の内部空間38の全体に供給しても良い。一実施形態においては、取り付け具(図示せず)として、このエントリ・ポイントにシール嵌合で取り付けられて加圧マスキング流体64の流れが測定できるようにするものを構築してしても良く、その条件(たとえば、限定することなく、圧力および温度など)は知られている。代替的な実施形態においては、流体接続部78を、各冷却供給孔62に直接接続するように構成しても良い。
【0033】
図7に例示される別の実施形態においては、たとえば露出端壁を伴う翼では、流体接続部78には、少なくとも1つの内部通路84を含む複数出口マニフォールド接続部82が含まれていても良い。内部通路84は、加圧マスキング流体64を圧力マスカ74から受け取って、1または複数の表面冷却チャネル40に流体入口62を介して流体的に分配することができるものである。複数出口マニフォールド接続部82を、物品76の第1のサイド44に直接取り付けて、加圧マスキング流体64を、物品76の周りの広い領域に分配しても良いし、または物品76内に露出するキャビティ(図示せず)に分配しても良い。したがって、その領域内にある任意の流体入口62、より詳細には表面冷却チャネル40を、加圧マスキング流体64が流体的に通っている。
図8に例示したさらに別の実施形態では、流体接続部78には、圧力マスカ74から出て単一または複数の冷媒供給孔62に少なくとも1つの中空の内部空間38を介して接続する複数の接続部が含まれていても良い。たとえば、流体接続部78には、2つ以上の冷媒供給孔62に接続する同様のまたは異なる加圧マスキング流体64の複数のチャネルが含まれていても良い。また、複数のチャネルには、異なる圧力、温度、方向、または混合状態の加圧マスキング流体64が含まれていても良い。当然のことながら、流体接続部78を圧力マスカ74と1または複数の溝52(および結果としての表面冷却チャネル40)との間に冷媒供給孔62を介して設ける任意の他の構成を、代替的にまたは付加的に実現しても良い。
【0034】
加圧マスキング流体64には、任意の媒体であって、1または複数の溝52(1または複数の表面冷却チャネル40を形成する)を正のエネルギーによって通ることができ、少なくとも1つの溝52の断面積が永続的に変わることをコーティング材料50(またはその粒子)によって防止することができる媒体が含まれていても良い。本明細書で用いる場合、「断面積が永続的に変わることを防止する」(およびその変形)が指すのは、1または複数の溝52に入る場合があるコーティング材料50の実質的にすべてを除去および/または防止することで、結果としてのチャネル40の断面積が障害物66(
図4)によって実質的に小さくなることはないということである。障害物66は、腐食、変形などに起因して永続的に接着または増加する。当然のことながら、物品76の第2のサイド46に直接隣接する内壁の薄いコーティングは、1または複数の表面冷却チャネル40の断面積を永続的に変えるとは考えられない。なぜならば、任意のこのような減少は、比較的最小であり、動作中に1または複数の表面冷却チャネル40を通る空気の流れに顕著には影響しないからである。最終的な1または複数の表面冷却チャネル40の断面積を永続的に変えるであろう障害物の例としては、たとえば、壁に付着した大きな粒子、コーティング材料50の凝集などが挙げられる。したがって、加圧マスキング流体64には、任意の材料であって、1または複数の溝52および結果として生じる1または複数の表面冷却チャネル40の中をマスキング圧力(後述する)で強制的に通すことができて、断面積を変えるであろうコーティング材料50の潜在的な障害物66または任意の緩く結合された障害物66を減らすかまたは防ぐことができる材料が含まれていても良い。
【0035】
たとえば、いくつかの実施形態においては、加圧マスキング流体64にはガスたとえば不活性ガスまたは窒素が含まれていても良い。いくつかの実施形態においては、加圧マスキング流体64には、水に研磨剤を分散させたものまたはさせていないものが含まれていても良い。本明細書では加圧マスキング流体64および部分コーターの特定の実施形態について示してきたが、当然のことながら、付加的および代替的な加圧マスキング流体および部分コーターを実現しても良い。
【0036】
加圧マスキング流体64は、マスキング圧力が、コーティング材料50のコーティング圧力より大きい場合も、等しい場合も、または小さい場合もある。これは、本明細書で説明したプロセスにおける段階に基づくものであり、加圧マスキング流体64のエネルギーが、永続的に接着される場合がある潜在的な障害物66または緩く結合された障害物66を1または複数の溝52から取り除くのに十分である限りは、1または複数の表面冷却チャネル40を作製する間に起こるものである。一実施形態においては、マスキング圧力には可変の陽圧が含まれていて、陽圧がマスキング処理の間に次第に増加して、加圧マスキング流体64が1または複数の溝52に沿って進むときに、加圧マスキング流体64を1または複数の溝の長さ52を通して押すようにしても良い。同様に、部分コーター72は、物品76の標的表面44のコーティングを、コーティング材料50を標的表面44に向けて発射することにより行なう。流れパターン分布の結果、コーティング材料50の一部が1または複数の溝52に入ることが、溝52をコーティング材料50で橋渡しする前に起こり、1または複数の障害物66が形成される場合がある。たとえば、障害物66としては、コーティング材料50からの粒子の集団を挙げても良い。これは、1または複数のチャネル40の断面積を小さくして、チャネルを通って流れることができる空気の量を減らすであろう。しかし、コーティング材料50(より詳細には、障害物66)が1または複数の表面冷却チャネル40を永続的に塞ぐ(およびその断面積を変える)ことを防ぐために、加圧マスキング流体64は、橋渡しプロセスの間に圧力を加えてコーティング材料50の橋渡しを助け、より詳細には、コーティング材料50に対する支持を与える。加えて、加圧マスキング流体64は、任意の潜在的な障害物66に接触して、それを溝52の長さに沿って出口領域53に向けて押し戻す。本明細書で説明した方法は、最初に、わずかな量のコーティング材料50を溝52の内部に堆積させて、次に、溝52上の橋渡しを開始させることができる。溝52の橋渡しがほぼ終了した時点、たとえば完全に橋が架けられた状態の0.005”〜0.01”以内で、加圧マスキング流体64は、ますます溝52の長さに沿って流れる。最終的に、橋が溝52上に完全に形成されたら、加圧マスキング流体64はすべて、溝52の全長に沿って出口領域53に向かって流れる。出口領域53において、加圧マスキング流体64は、任意の潜在的な障害物が1または複数の形成された表面冷却チャネル40内に入るかまたは堆積されることを、加圧マスキング流体64が溝52を物品76の第2のサイド46上の出口領域53から出ることによって防止する場合がある。
【0037】
動作時には、システムは、コーティング材料50を1または複数の溝52のそれぞれが有する長さに沿って堆積させるように構成されている。これは、冷媒供給孔62に実質的に隣接する点から始まり、溝52の長さに沿って連続的または不連続的に進む。コーティング材料50が溝52上に橋を架け始めると、表面冷却チャネル40が形成される。プロセスの開始時に、加圧マスキング流体64が、冷媒供給孔62を介して、流体64が冷媒供給孔62から「漏れる」ことができるような十分な圧力で供給され、その結果、部分コーター72が冷媒供給孔62と実質的に位置合わせされているときに、わずかでもコーティング材料50が冷媒供給孔62内に堆積することが防止される。加圧マスキング流体64をこの第1の圧力で加えることによって、加圧マスキング流体64は関連する溝52の長さに沿って流れることはできず、冷媒供給孔62から周囲に出ていく。
【0038】
堆積したコーティング材料50が1または複数の溝52上に橋を架け始めると、加圧マスキング流体64は強制的に、1または複数の溝の長さ52に沿って出口領域53に向かって流れる。この段階の間、加圧マスキング流体64は第2の圧力(第1の圧力以上である)で供給されて、加圧マスキング流体64がコーティング材料50を支持して1または複数の溝52上でのコーティング材料50の橋渡しプロセスを妨げないようになっている。加圧マスキング流体64を第2の圧力で送ることによって、わずかでもさらなるコーティング材料50が1または複数の溝52内に堆積することが防止される。コーティング・プロセスの間に重要なことは、冷媒出口孔55が、あらかじめ出口領域53に形成されているということである。たとえば溝深さから外面34に移行する表面内の機械加工された斜面である。
【0039】
十分なコーティング材料50が、1または複数の溝52の橋渡しを終了して、1または複数の表面冷却チャネル40を形成すると、加圧マスキング流体64が、全体として、溝52の長さに沿って出口領域53に向かって流れることが、コーティング堆積時間の残りの間に起こり、その結果、さらなるコーティング材料50が出口領域53内に堆積することが防止される。プロセスのこの段階では、加圧マスキング流体64の流量を、速度および/または圧力を増加させて、出口領域53における冷媒出口孔55にわずかなコーティング材料50もないことを保証するようにしても良い。
【0040】
したがって、その結果、圧力マスカ74は、加圧マスキング流体64を、1または複数の溝52を通して、流体連絡する冷媒供給孔62を介して、可変のマスキング圧力で、第1のサイド44から第2のサイド46へ送る(第2のサイド46には、コーティングすべき物品76の標的表面48が含まれている)。1または複数の溝52がプロセス中にコーティングされることは、加圧マスキング流体64が結果としてのチャネルを通って流れて、退出フィルム孔60における出口を「マスク」する時点まで行なわれる。
【0041】
特に
図9を参照して、1または複数の溝52を備える物品76の標的表面44を圧力コーティングするための方法100が例示されている。方法100には最初に、圧力マスカ74を、物品76の少なくとも1つの溝52の第1のサイド44に冷媒供給孔62を介して流体的に接続することが含まれている(ステップ110)。前述したように、流体接続部78は、種々の構成を備えていても良く、また任意のタイプの圧力マスカ74を任意の数の溝52に接続しても良い。圧力マスカ74は次に、加圧マスキング流体64を少なくとも1つの冷媒供給孔62を通して第1の圧力で送り、加圧マスキング流体64が冷媒供給孔62を出て周囲に入ることができるようにする。次に、部分コーター72は、物品76の第2のサイド44上の標的表面44のコーティングを、コーティング材料50を標的表面44に向けて発射することによって始める(ステップ114)。コーティング材料50を堆積させるステップと同時に、加圧マスキング流体64が冷媒供給孔62を通って1または複数の溝52内に入り出口領域53に向かうことが第2の圧力で起こる結果、コーティング材料50が1または複数の溝52に橋を架けて1または複数の表面冷却チャネル40を形成することが可能になる。なお、第2の圧力は第1の圧力以上である。プロセスを継続すること(ステップ116)が、1または複数の溝52に橋が架けられて1または複数の表面冷却チャネル40が形成されるときに行なわれる。加圧マスキング流体64は、強制的に1または複数の表面冷却チャネル40の長さに沿って流されて、出口領域53を冷却フィルム出口60から出る。
【0042】
当然のことながら、加圧マスキング流体64を少なくとも1つの溝52を通して送って標的表面44をコーティングすること(ステップ114)を、相対遅延内または相対遅延を伴って同時に開始および終了しても良い。前述したように、いくつかの実施形態においては、加圧マスキング流体64を第1の圧力で開始すること(ステップ112)を、標的表面44のコーティングを開始する(ステップ114)前に行なう。このような実施形態によって、圧力マスカ74が起動される前に障害物66の堆積が生じることが防止される場合がある。一実施形態においては、加圧マスキング流体64は、物品76がコーティングされた(ステップ114)後に、1または複数の形成された表面冷却チャネル40を通り続けること(ステップ116)をより高い圧力で行なって、1または複数の溝52に橋を架ける。このようなステップは、コーティングが終了した(ステップ114)後に、形成された1または複数の表面冷却チャネル40内に残る任意の緩く結合された障害物66が依然として加圧マスキング流体64によって除去されることを確実にすることに役立つ場合がある。
【0043】
ここで次のことを理解されたい。加圧マスキング・システムを用いて、物品の標的表面をコーティングし、より詳細には、標的表面内に形成された1または複数の溝をコーティングして、1または複数の表面冷却チャネルを形成する一方で、1または複数の溝、結果としてのチャネル、および/または出口領域の断面積が永続的に変わることを防止しても良い。圧力マスカと1または複数の溝との間で流体接続部を用いることによって、物理的なマスキング障壁たとえば散逸性充填材料などを必要とすることが回避されて、より効率的なコーティング・システムを潜在的に提供することができる。
【0044】
開示内容を限られた数の実施形態に関してのみ詳細に説明してきたが、開示内容はこのような開示された実施形態に限定されないことが容易に理解されるはずである。むしろ、これまで説明してはいないが開示内容の趣旨および範囲に見合う任意の数の変形、変更、置換、または均等な配置を取り入れるように、開示内容を変更することができる。さらに加えて、開示内容の種々の実施形態について説明してきたが、開示内容の態様には、説明した実施形態の一部のみが含まれる場合があることを理解されたい。したがって開示内容は、前述の説明によって限定されると考えるべきではなく、添付の請求項の範囲のみによって限定される。