特許第6200741号(P6200741)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ アイマー・プランニング株式会社の特許一覧 ▶ 日本ナショナル製罐株式会社の特許一覧

<>
  • 特許6200741-缶検査装置 図000002
  • 特許6200741-缶検査装置 図000003
  • 特許6200741-缶検査装置 図000004
  • 特許6200741-缶検査装置 図000005
  • 特許6200741-缶検査装置 図000006
  • 特許6200741-缶検査装置 図000007
  • 特許6200741-缶検査装置 図000008
  • 特許6200741-缶検査装置 図000009
  • 特許6200741-缶検査装置 図000010
  • 特許6200741-缶検査装置 図000011
  • 特許6200741-缶検査装置 図000012
  • 特許6200741-缶検査装置 図000013
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6200741
(24)【登録日】2017年9月1日
(45)【発行日】2017年9月20日
(54)【発明の名称】缶検査装置
(51)【国際特許分類】
   B41F 17/22 20060101AFI20170911BHJP
   B41F 33/00 20060101ALI20170911BHJP
   G01N 21/90 20060101ALI20170911BHJP
【FI】
   B41F17/22
   B41F33/00 280
   G01N21/90 C
【請求項の数】3
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2013-196878(P2013-196878)
(22)【出願日】2013年9月24日
(65)【公開番号】特開2015-64217(P2015-64217A)
(43)【公開日】2015年4月9日
【審査請求日】2016年7月21日
(73)【特許権者】
【識別番号】593073528
【氏名又は名称】アイマー・プランニング株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】509219925
【氏名又は名称】日本ナショナル製罐株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100106091
【弁理士】
【氏名又は名称】松村 直都
(74)【代理人】
【識別番号】100079038
【弁理士】
【氏名又は名称】渡邉 彰
(74)【代理人】
【識別番号】100060874
【弁理士】
【氏名又は名称】岸本 瑛之助
(72)【発明者】
【氏名】井爪 雅幸
【審査官】 藏田 敦之
(56)【参考文献】
【文献】 特表2013−544675(JP,A)
【文献】 特開平9−295396(JP,A)
【文献】 特開2011−73415(JP,A)
【文献】 特開平11−320838(JP,A)
【文献】 特開2004−251855(JP,A)
【文献】 特開平5−126762(JP,A)
【文献】 特開平7−186374(JP,A)
【文献】 特表2004−525340(JP,A)
【文献】 国際公開第2012/054655(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B41F 17/22
B41F 33/00 − 33/18
G01N 21/88
G01N 21/89
G01N 21/90
G01N 21/956
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
缶を回転させる回転装置と、回転する缶の画像を撮影する撮影装置と、撮影した画像を処理する画像処理装置とを備え、缶の印刷状態の検査を行う缶検査装置において、
撮影装置は、缶全体の画像を撮影する第1のカメラと、缶の開口側端部の画像を撮影する第2のカメラとを備えており、
画像処理装置は、第1のカメラで撮影された画像を使用して、マスター画像と比較して正しく印刷されているかを検査する画像検査手段と、第1のカメラで撮影された画像を使用して、各色ごとに指定された位置における濃度を測定する濃度測定手段と、第2のカメラで撮影された画像を使用して、各色ごとに缶の開口側端部に印刷された印刷ズレ検査用マークの設定位置に対するズレ値を測定する印刷ズレ値測定手段とを備えていることを特徴とする缶検査装置。
【請求項2】
回転装置は、モータで駆動される鉛直状の駆動側回転軸と、駆動側回転軸と一体で回転する鉛直状の従動側回転軸と、従動側回転軸に同心に取り付けられて缶を吸着保持する円柱状の保持部材と、駆動側回転軸の回転を検出するエンコーダとを備えており、駆動側回転軸と従動側回転軸とは、上下方向に位置決めされた状態で、軸方向に対向し、駆動側回転軸の下端部および従動側回転軸の上端部に、それぞれ吸引力を及ぼし合う磁石が設けられることで、駆動側回転軸と従動側回転軸とが一体で回転するようになされていることを特徴とする請求項1の缶検査装置。
【請求項3】
撮影装置による画像の取込み操作は、指定マークとこの指定マークから画像取込み開始位置までの角度とを予め設定しておくステップと、缶を回転させて指定マーク位置を見つけるステップと、見つけた指定マークを基準にして画像取込み開始位置を求めるステップと、画像取込み開始位置から1周分の画像を取り込むステップとを含んでいることを特徴とする請求項1または2の缶検査装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、缶検査装置、さらに詳しくは、缶の印刷状態の検査を行う検査装置に関する。
【背景技術】
【0002】
缶の印刷状態の検査を行う検査装置として、特許文献1には、缶を回転させる回転装置と、回転する缶の画像を撮影する撮影装置と、撮影した画像を処理する画像処理装置とを備えているものが開示されている。
【0003】
特許文献1のものでは、画像処理装置は、マスター画像と比較して正しく印刷されているかを検査する画像検査手段を有しており、画像検査手段において、印刷の欠落や外観上の汚れなどが検査されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平5−126762号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記の缶検査装置では、外観に関して良品か不良品かの検査は可能であるが、印刷機の印刷精度を向上させるのに必要な濃度や印刷ズレ値については検査することができないという問題があった。
【0006】
この発明の目的は、印刷機の印刷精度を向上させるのに必要な濃度や印刷ズレ値の測定が可能な缶検査装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
この発明による缶検査装置は、缶を回転させる回転装置と、回転する缶の画像を撮影する撮影装置と、撮影した画像を処理する画像処理装置とを備え、缶の印刷状態の検査を行う缶検査装置において、撮影装置は、缶全体の画像を撮影する第1のカメラと、缶の開口側端部の画像を撮影する第2のカメラとを備えており、画像処理装置は、第1のカメラで撮影された画像を使用して、マスター画像と比較して正しく印刷されているかを検査する画像検査手段と、第1のカメラで撮影された画像を使用して、各色ごとに指定された位置における濃度を測定する濃度測定手段と、第2のカメラで撮影された画像を使用して、各色ごとに缶の開口側端部に印刷された印刷ズレ検査用マークの設定位置に対するズレ値を測定する印刷ズレ値測定手段とを備えていることを特徴とするものである。
【0008】
第1のカメラは、画像検査を行うために従来から使用されているもので、画像検査および濃度測定は、この第1のカメラを使用することで実施することができる。第2のカメラは、缶の開口側端部だけを撮影するものとされる。
【0009】
画像検査手段による検査では、マスター画像と撮影画像とが1画素ごとに比較され、画像の部分的欠落やインキ飛散による汚れなどが検査される。
【0010】
濃度測定手段による検査では、各色ごとに指定された箇所(濃度測定箇所)における濃度が測定される。濃度測定結果は、印刷機にフィードバックされ、これにより、濃度不良品が出る前に濃度を修正することができ、良好な印刷状態を維持することができる。
【0011】
缶の開口側端部には、各色ごとに、印刷ズレ値検査用マークが印刷され、これが第2のカメラで撮影されて、印刷ズレ値測定手段によって印刷ズレ値が求められる。印刷ズレ値測定結果は、印刷機にフィードバックされ、これにより、印刷ズレ不良品が出る前に印刷ズレ値(印刷機の版胴の位置ずれ)を修正(見当合わせ)することができ、良好な印刷状態を維持することができる。
【0012】
回転装置は、モータで駆動される鉛直状の駆動側回転軸と、駆動側回転軸と一体で回転する鉛直状の従動側回転軸と、従動側回転軸に同心に取り付けられて缶を吸着保持する円柱状の保持部材と、駆動側回転軸の回転を検出するエンコーダとを備えており、駆動側回転軸と従動側回転軸とは、上下方向に位置決めされた状態で、軸方向に対向し、駆動側回転軸の下端部および従動側回転軸の上端部に、それぞれ吸引力を及ぼし合う磁石が設けられることで、駆動側回転軸と従動側回転軸とが一体で回転するようになされていることが好ましい。
【0013】
画像の撮影に際しては、缶を正確に1回転させる回転装置が必要である。上記の回転装置では、駆動側回転軸と従動側回転軸とが磁石同士の吸引力によって一体で回転するようになされることにより、缶を正確に1回転させることができる。駆動側回転軸と従動側回転軸との間には、わずかな隙間があってもよいが、吸着力を大きくするために、隙間は無い方が好ましい。
【発明の効果】
【0014】
この発明の缶検査装置によれば、上記のように、従来測定できていなかった濃度や印刷ズレ値の測定が可能となる。したがって、これを印刷機の印刷条件に反映させることで、印刷精度を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1図1は、この発明の缶検査装置を備えた印刷装置を示すブロック図である。
図2図2は、缶検査装置の概略構成を模式的に示す図である。
図3図3は、印刷機を示す側面図である。
図4図4は、印刷機のインキ供給装置の主要部の概略側面図である。
図5図5は、図4のインキ移しローラユニットの平面図である。
図6図6は、缶検査装置の正面図である。
図7図7は、図6の側面図である。
図8図8は、図6のVIII-VIII線に沿う断面図である。
図9図9は、缶検査装置の回転装置を示す縦断面図である。
図10図10は、缶検査装置による画像の取り込みステップを模式的に示す図である。
図11図11は、缶検査装置により得られる濃度データを示す図である。
図12図12は、缶検査装置により得られる印刷ズレデータを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、図面を参照して、この発明の実施形態について説明する。以下の説明において、図3および図4の右側(図5の下側)を前、図3および図4の左側(図5の上側)を後とし、前から見たときの左右を左右とする。
【0017】
図1は、この発明による缶検査装置(5)が使用されている缶印刷装置(1)を示している。図1において、缶印刷装置(1)は、缶(C)への印刷を行う印刷機(2)と、印刷後の缶(C)の印刷面を乾燥させる乾燥機(4)と、印刷面の印刷状態を検査する缶検査装置(5)と、缶(C)を搬送する搬送装置(50)とを備えている。(インキ供給装置が符号(3)、制御装置には、(34)が付されている。)
印刷機(2)は、頂部が開口している円筒状の缶本体(2ピース缶の本体で、以下では、これを単に缶(C)と称す)に製品名、会社名、成分、バーコードなどの情報を印刷するものである。
【0018】
缶(C)は、印刷機(2)で印刷された後、乾燥機(4)を経て、後流へと送られていく。乾燥機(4)を通過した多数の缶(C)の内の一部は、缶検査装置(5)において、その印刷状態が検査される。
【0019】
搬送装置(50)は、缶(C)を印刷機(2)に供給して、印刷された缶(C)を後流に送っていく主ライン(50a)と、乾燥機(4)を通過した多数の缶(C)の内の一部を缶検査装置(5)に送る抜き取りライン(50b)と、缶検査装置(5)において良品とされた缶(C)を主ライン(50a)に戻す戻しライン(50c)とを有している。
【0020】
缶検査装置(5)では、図2に模式的に示すように、回転装置(51)によって缶(C)が回転させられ、回転装置(51)の駆動側と従動側の缶(C)とがエンコーダ(60)を介して同期させられて、撮影装置(52)によって画像が撮影され、画像処理装置(53)において、画像が処理される。
【0021】
缶検査装置(5)には、撮影した画像を処理する画像処理装置(53)として、図1に示すように、画像検査手段(54)、濃度測定手段(55)および印刷ズレ値測定手段(56)が設けられている。缶検査装置(5)において良品とされた缶(C)は、上記のように、主ライン(50a)に戻され、缶検査装置(5)において検査不合格品とされた缶(C')は、検査不合格品保管部(57)に排出される。
【0022】
缶検査装置(5)における濃度測定手段(55)で得られた濃度および印刷ズレ値測定手段(56)で得られた印刷ズレ値は、印刷機(2)にフィードバックされる。印刷機(2)においては、濃度に応じて、制御装置(34)によってインキ供給量が調整される。具体的には、濃度測定手段(55)から出力された各濃度値に基づいて、各色ごとに対応するインキ呼び出しローラ(15)とインキ壺ローラ(41)との接触長が調整される。印刷ズレ値に対しては、自動見当合わせ装置(58)によって版胴(47)の位置が調整される。
【0023】
印刷機(2)は、図3に示すように、それぞれが異なる色を印刷するための版を備えた複数(図示は8つ)の版胴(47)と、版胴(47)からインキを転写されて缶に印刷を行うブランケット胴(48)と、各版胴(47)にインキを供給するためのインキ供給装置(3)と、版胴の位置調整を行う見当合わせ装置(58)と、複数の缶送りローラ(59a)および缶送りシュート(59b)からなる缶送り装置(59)とを有している。
【0024】
図4に拡大して示すように、インキ供給装置(3)においては、インキ壺部材(40)の後端部に近接するようにインキ壺ローラ(41)が配置されており、これらによりインキ壺(42)が構成され、インキ壺部材(40)の後端部とインキ壺ローラ(41)の表面との間に所定の隙間を有するインキ通路(43)が形成されている。
【0025】
インキ壺ローラ(41)の後方に、複数のインキ練りローラ(44)(46)のうちの最初のインキ練りローラ(44)が配置され、インキ壺ローラ(41)とこのインキ練りローラ(44)との間に、両者に近接して、インキ呼び出しローラユニット(45)が配置されている。ローラユニット(45)は、図5に示すように、ローラ(41)(44)の軸方向に分割された複数(図示は7つ)のインキ呼び出しローラ(15)の集合体であり、これらのインキ呼び出しローラ(15)が軸方向に小さい間隔をおいて配置されている。これらのローラ(15)(41)(44)の軸は互いに平行で、左右方向にのびている。インキ壺ローラ(41)とインキ練りローラ(44)は、印刷機のフレーム(7)に回転自在に支持され、図示しない駆動装置により、互いに同期した所定の回転速度で図4の矢印方向に連続回転させられる。たとえば、インキ壺ローラ(41)の回転速度は、インキ練りローラ(44)のそれの1/10程度である。
【0026】
インキ呼び出しローラ(15)は、圧縮空気源(切替え駆動源)(29)によって、インキ壺元ローラ(41)から離れてインキ練りローラ(44)に圧接する後端位置(非呼び出し位置)と、インキ練りローラ(44)から離れてインキ壺ローラ(41)に圧接する前端位置(呼び出し位置)とに切り換えられる。
【0027】
ローラユニット(45)は、各インキ呼出しローラ(15)ごとに位置の切替えを制御する制御装置(34)に接続されている。制御装置(34)で各呼出しローラ(15)ごとに呼出し位置に切替えられている割合を制御することにより、印刷面に供給されるインキ量がその幅方向の位置によって調節される。この際、ローラユニット(45) の全ての呼出しローラ(15)が同じ回転速度で回転するので、各呼出しローラ(15)について呼出し位置に切替えられている割合を制御するだけで、印刷面に供給されるインキ量を、呼出しローラ(15)ごとに、すなわち印刷面の幅方向の位置ごとに所望の値に正確に制御することができる。
【0028】
この発明による缶検査装置(5)の実施形態の機械的部分の具体的な構成を図6から図9までに示す。
【0029】
缶検査装置(5)は、検査用の缶(C)を順次搬入する搬入コンベア(61)と、搬入コンベア(61)の終端部に設けられて検査用の缶(C)を搬入コンベア(61)から取り出す取出し装置(62)と、取出し装置(62)で取り出された検査用の缶(C)を保持して回転させる缶回転装置(51)と、缶(C)の画像を撮影する撮影装置(52)と、画像処理装置(53)の論理演算を実行するCPU、制御プログラムを格納するROM、データ等を記憶するRAM、画像処理結果を表示するディスプレイなどを備えるコンピュータによって構成された制御部(図示略)と、良品の缶(C)を搬出する搬出コンベア(63)と、検査不合格品の缶(C')を排出する排出シュート(64)とを備えている。
【0030】
取出し装置(62)は、搬入コンベア(61)で送られてきて押し出された缶を吸着する吸着部(65)と、吸着部(65)を上方に移動させるシリンダ部(66)とを備えている。吸着部(65)は、缶(C)の中間部分が嵌められる半円柱状の凹部(65a)を有している。
【0031】
缶回転装置(51)は、モータ(72)によって回転させられる主軸(71)と、主軸(71)に取り付けられた回転盤(73)とを備えている。モータ(72)は、ハウジング(70)の頂壁上面に取り付けられており、主軸(71)は、ハウジング(70)の頂壁に回転可能に支持されている。
【0032】
回転盤(73)は、主軸(71)と同心であり、主軸(71)と一体で回転する。回転盤(73)の外周には、等間隔で複数のアーム(73a)が径方向外方に突出するように設けられている。回転盤(73)の各アーム(73a)には、鉛直状の従動側回転軸(74)が回転自在に支持されている。従動側回転軸(74)には、従動側回転軸(74)と同心に形成されて缶(C)を吸着保持する保持部材(75)が取り付けられている
従動側回転軸(74)は、回転盤(73)の回転に伴って、取出し装置(62)の設置位置、撮影装置(52)の設置位置、搬出コンベア(63)の設置位置および排出シュート(64)の設置位置を経て取出し装置(62)の設置位置に戻るように、主軸(71)の回りを公転する。
【0033】
撮影装置(52)の設置位置に位置する従動側回転軸(74)の上側には、従動側回転軸(74)を回転(自転)させる駆動装置(76)が配置されてハウジング(70)の頂壁に支持されている。駆動装置(76)は、鉛直状の駆動側回転軸(77)と、駆動側回転軸(77)と同心に設けられたモータ(78)とを備えている。
【0034】
撮影装置(52)としては、缶全体を撮影する第1のカメラ(79)と、缶の開口側端部を撮影する第2のカメラ(80)とが使用されている。第1のカメラ(79)で撮影された画像は、画像検査手段(54)および濃度測定手段(55)で使用される。第2のカメラ(80)で撮影された画像は、印刷ズレ値手段(56)で使用される。
【0035】
撮影装置(52)の設置位置において、駆動側回転軸(77)と従動側回転軸(74)とは、軸方向に対向し、駆動側回転軸(77)の下端部および従動側回転軸(74)の上端部に、それぞれ吸引力を及ぼし合う磁石(81)(82)が固定されている。これにより、駆動側回転軸(77)の下端に設けられた磁石(81)の下面と従動側回転軸(74)の上端に設けられた磁石(82)の上面とは、磁石(81)(82)同士の吸引力によって吸着(一体化)されている。
【0036】
従動側回転軸(74)は、回転盤(73)の各アーム(73a)に設けられた円筒状ケーシング(83)に回転可能にかつ軸方向移動不可能に支持されている。
【0037】
図9に示すように、駆動側回転軸(77)は、中実の軸部(85)と、軸部(85)と同心で軸部(85)とスプライン結合された外筒部(86)とからなる。軸部(85)の下端部は、外筒部(86)の下端よりもわずかに下方に突出しており、磁石(81)は、軸部(85)の下端部に取り付けられている。軸部(85)の上部は、外筒部(86)の上端よりも上方に突出しており、軸部(85)の上端には、駆動側回転軸(77)の回転数(回転角度)を検出するロータリエンコーダ(60)がカップリング(95)を介して取り付けられている。
【0038】
外筒部(86)の外周にはおねじが設けられており、外筒部(86)の下部にねじ合わされたねじ(87)と外筒部(86)の上部にねじ合わされたねじ(88)とが、外筒部(86)の外周に配置されたモータロータ(76a)を上下両側から挟持しており、これにより、外筒部(86)は、モータロータ(76a)と一体で回転する。これに伴い、外筒部(86)とスプライン結合された軸部(85)も一体で回転する。軸部(85)は、外筒部(86)に対して軸方向に相対移動可能とされている。
【0039】
従動側回転軸(74)は、ケーシング(83)に軸受(84)を介して支持されている。駆動側回転軸(77)と従動側回転軸(74)とは、磁石(81)(82)の吸引力によって結合(吸着)されており、駆動側回転軸(77)の回転に伴って、従動側回転軸(74)が一体で回転する。
【0040】
駆動側回転軸(77)の軸部(85)の上端部および外筒部(86)の上端部には、それぞれ環状のばね受け部(89)(90)が固定されており、両ばね受け(89)(90)間に圧縮コイルばね(91)が配置されている。したがって、軸部(85)が下方に移動すると、圧縮コイルばね(91)は、さらに圧縮されて、軸部(85)を上方に付勢し、これにより、軸部(85)の下方への移動が防止される。したがって、吸引力を及ぼし合う磁石(81)(82)同士が接触することはなく、磁石(81)(82)の摩耗が防止される。
【0041】
モータ(78)で駆動されることで、駆動側回転軸(77)が回転し、この回転に伴って、従動側回転軸(74)に保持された缶(C)が回転し、1回転分の画像が撮影装置(52)に取り込まれる。この際、誤差を無くすために、ロータリエンコーダ(60)の出力に合わせて、1画素分の時間が決定される。
【0042】
缶(C)の回転とロータリエンコーダ(60)の回転(駆動側回転軸(77)の回転)とは、誤差が無いように同期させて回転させられる。このようにすると、ロータリエンコーダ(60)の出力(パルス)と画像の1画素分の流れとが同期し、測定される缶(C)ごとに回転ムラが仮に発生したとしても、各缶の取込み画像が伸び縮みすることなく、安定した検査が行われる。
【0043】
従動側回転軸(74)には、一端が下端に開口し、他端が上端部近くの外周に開口するエア抜き通路(92)が設けられている。ケーシング(83)には、エア抜き通路(92)を真空引きするための真空引き用配管(93)が取り付けられている。
【0044】
保持部材(75)は、樹脂製で円柱状をなしており、保持部材(75)の下端部には、下方に開口する円柱状の吸引室(94)が設けられている。吸引室(94)には、従動側回転軸(74)のエア抜き通路(92)が通じている。真空引き用配管(93)を介して、図示省略した真空ポンプによって真空引きすることにより、吸引室(94)が負圧(真空)となり、保持部材(75)に缶(C)が吸着保持される。
【0045】
検査装置(5)においては、缶(C)の印刷面の画像は、缶(C)が任意のスピードで回転している状態で、缶(C)の任意の位置から撮り始めるものとされる。
【0046】
1周分の印刷において、印刷終了位置が印刷開始位置に突き合わされることで、ちょうど1周分の印刷となるが、印刷終了位置と印刷開始位置との突き合わせ部においては、印刷が缶ごとに微妙にずれるので、この突き合わせ部が画像取り込みの中間部にあると、缶ごとに大きなずれを生じる。したがって、指定マークから指定マークまでを1周分とすると、印刷の突き合わせ部が中間部に含まれることになり、好ましくない。そこで、画像を取り込むに際しては、印刷開始位置から印刷終了位置までの1周分の画像が取り込まれる。指定マークとしては、印刷されている画像のうちで見つけやすいもの、例えばバーコードが使用される。
【0047】
検査装置(5)に送られてきた缶(C)の位置は規定されていないので、缶(C)のカメラ(79)(80)に対向する位置は、ランダムとなる。したがって、1周分の画像を取り込むには、印刷開始位置を見つけることが必要となる。そこで、画像の取込み操作においては、図10において、指定マーク(M)から印刷開始位置(S1)(S2)までの距離(角度)は予め分かっているので、まず、指定マーク(M)を見つけ、指定マーク(M)が見つかった後は、この角度に対応する分だけ逆方向にa移動した位置を印刷開始位置(S1)すなわち画像取込み開始位置とすればよい。また、正方向にb移動した位置を印刷開始位置(S2)すなわち画像取込み開始位置としてもよい。これにより、L1またはL2で示す印刷開始位置(S1)(S2)から印刷終了位置(E1)(E2)までのちょうど1周分の画像を取り込むことができる。
【0048】
検査装置(5)の画像検査手段(54)による画像検査は、従来から行われているもので、画像検査手段(54)によって、マスター画像と撮影画像とが1画素ごとに比較され、画像の部分的欠落やインキ飛散による汚れなどが検査される。画像検査手段(54)では、所定の大きさを超えた欠陥が検査不合格品され、また、マスター画像に対するずれ許容値を超えたものも検査不合格品とされる。
【0049】
検査装置(5)の濃度測定手段(55)による検査は、単色ベタ部に対して行われる。すなわち、複数の色が重ね合わされる箇所では、濃度の測定が困難であるので、予め、各色ごとに、単色ベタ部がある箇所を指定しておき、指定された箇所(濃度測定箇所)における濃度を測定する。濃度値は、濃度測定箇所とされた画素のRGB成分の相加平均値として求めることができ、各箇所においてマスター画像の濃度との濃度差として得ることができる。単色ベタ部が例えば0.8mm×0.8mmの大きさがあれば、濃度測定は可能であり、この大きさが確保できない等の理由で正確な濃度測定が困難な場合は、マスター画像との濃度差が基準内かどうかだけが判定される。濃度は、図11に示すように、1つの色に対し、インキ呼び出しローラ(15)の数(7つ)分得られる。この実施形態では、色の数(版胴の数)が8つであるので、8×7の濃度測定値が得られる。図11に示す濃度測定結果は、検査装置(5)のディスプレイに表示される。濃度測定結果は、印刷機(2)にフィードバックされ、これにより、インキ供給装置(3)の制御装置(34)によって各インキ呼び出しローラ(15)の位置が制御されて供給されるインキ量が変化させられる。こうして、濃度不良品が出る前に濃度を修正することで、印刷機(2)において、良好な印刷状態が維持される。
【0050】
上記の画像検査手段(54)および濃度測定手段(55)が第1のカメラ(79)で撮影された缶全体の画像を使用して行われるのに対し、印刷ズレ値手段(56)は、缶の開口側端部を撮影する第2のカメラ(80)で得られた画像を使用して行われる。
【0051】
缶(C)の開口側端部は、蓋が被せられる部分で、従来の缶では、印刷が施されておらず、検査する必要がなかった箇所である。この実施形態の検査装置(5)で検査される缶(C)については、缶(C)の開口側端部に、各色ごとに、印刷ズレ値検査用マークが印刷される。すなわち、缶(C)の印刷面には、図12(a)に示すように、製品名、会社名、成分、バーコードなどの従来からある事項に加えて、Aで示す印刷ズレ値検査用マークが追加されている。
【0052】
印刷ズレ値検査用マーク(A)は、図12(b)に拡大して示すように、1から8までの全8色分設けられている。同図に実線で示す位置は基準位置(マスター画像における指定マークの位置)であり、同図に二点鎖線で示す位置が撮影画像から得られた各色の位置である。同図から、例えば、No.7の色については、印刷ズレが非常に小さく、No.3の色については、缶(C)の高さ方向の印刷ズレ値が大きく、No.6の色については、缶(C)の周方向への印刷ズレ値が大きいことが分かる。印刷ズレ値は、マスター画像における指定マークの位置と撮影画像における指定マークの位置とが何画素分(または何mm)ずれているかという値で求められ、この数値が図12(c)のようにして、検査装置(5)のディスプレイに表示される。ずれ量は、缶高さ方向(版胴(47)の軸方向)および缶円周方向(版胴(47)の周方向)のそれぞれについて求められる。印刷ズレ値測定結果は、手動および自動のいずれによっても印刷機(2)にフィードバックすることができる。
【0053】
見当合わせ装置(58)は、図3に示すように、版胴(47)を版胴(47)の軸方向に移動させる第1の回転駆動装置(96)と、版胴(47)を版胴(47)の周方向に移動させる第2の回転駆動装置(97)とを備えている。各回転駆動装置(96)(97)の詳細な構成の説明は省略するが、各回転駆動装置(96)(97)には、検査装置(5)の印刷ズレ値手段(56)で得られた印刷ズレ値がフィードバックされ、印刷ズレ値が所定の大きさを超えた場合には、各回転駆動装置(96)(97)によって版胴(47)の位置が修正される。
【0054】
こうして、印刷ズレ不良品が出る前に印刷ズレ値(印刷機の版胴の位置ずれ)を修正(見当合わせ)することができ、良好な印刷状態を維持することができる。
【符号の説明】
【0055】
(1) 缶印刷装置
(2) 印刷機
(3) インキ供給装置
(5) 缶検査装置
(51) 回転装置
(52) 撮影装置
(53) 画像処理装置
(54) 画像検査手段
(55) 濃度測定手段
(56) 印刷ズレ値測定手段
(74) 従動側回転軸
(75) 保持部材
(77) 駆動側回転軸
(78) モータ
(77)(78)磁石
(79) 第1のカメラ
(80) 第2のカメラ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12