(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6200764
(24)【登録日】2017年9月1日
(45)【発行日】2017年9月20日
(54)【発明の名称】セメントキルン排ガスの処理装置
(51)【国際特許分類】
B01D 53/64 20060101AFI20170911BHJP
C04B 7/60 20060101ALN20170911BHJP
F27D 17/00 20060101ALN20170911BHJP
B09B 5/00 20060101ALN20170911BHJP
【FI】
B01D53/64 100
!C04B7/60ZAB
!F27D17/00 105K
!B09B5/00 N
【請求項の数】3
【全頁数】6
(21)【出願番号】特願2013-218802(P2013-218802)
(22)【出願日】2013年10月22日
(65)【公開番号】特開2015-80741(P2015-80741A)
(43)【公開日】2015年4月27日
【審査請求日】2016年9月21日
(73)【特許権者】
【識別番号】000000240
【氏名又は名称】太平洋セメント株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100106563
【弁理士】
【氏名又は名称】中井 潤
(72)【発明者】
【氏名】輪達 仁司
【審査官】
佐々木 典子
(56)【参考文献】
【文献】
米国特許第05264013(US,A)
【文献】
特開2009−066491(JP,A)
【文献】
実開平05−076515(JP,U)
【文献】
特開平10−202031(JP,A)
【文献】
特開2015−017004(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B01D 53/34−53/85
B09B 1/00− 5/00
C04B 2/00−32/02
C04B 40/00−40/06
F27D 17/00−99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
セメントキルン排ガスから回収したダストを加熱し、該ダストに含まれる水銀を揮発させる加熱装置と、
該加熱装置から排出された揮発水銀を含むガスを、水銀含有ガスと水銀除去ダストとに分離する固気分離装置と、
該分離された水銀含有ガスに含まれる揮発水銀を回収する水銀回収装置とを備え、
前記加熱装置から排出された前記揮発水銀を含むガスを加熱するため、前記固気分離装置のケーシングを加熱することを特徴とするセメントキルン排ガスの処理装置。
【請求項2】
前記加熱装置は、外熱キルン又はUターンキルンであることを特徴とする請求項1に記載のセメントキルン排ガスの処理装置。
【請求項3】
前記外熱キルン又はUターンキルンにおいて間接加熱に使用した熱風を用いて前記固気分離装置のケーシングを加熱することを特徴とする請求項2に記載のセメントキルン排ガスの処理装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、セメントキルンから排出される燃焼排ガスから水銀を回収する装置に関する。
【背景技術】
【0002】
セメントの主原料である石灰石等の天然原料や、フライアッシュ等のリサイクル資源に水銀が含まれているため、セメントキルンの排ガスには、極微量の金属水銀(Hg)が含まれる。セメントキルン排ガス中の水銀が増加すると、大気汚染の原因となる虞があると共に、フライアッシュ等のリサイクル資源利用拡大の阻害要因となる虞もある。
【0003】
そこで、特許文献1には、
図2に示すように、空気A2を加熱する熱風炉12と、熱風炉12から排出されたガスG4に、セメントキルン排ガスに含まれる、水銀を含むキルンダストD4を投入する抽気ダクト13と、キルンダストD4を含む水銀含有ガスG5を集塵して水銀含有ガスG6と水銀除去ダストD5とに分離するサイクロン14と、サイクロン14から排出された水銀含有ガスG6を集塵して水銀含有ガスG7と水銀除去ダストD6とに分離するバグフィルタ15と、バグフィルタ15から排出された水銀含有ガスG7から熱回収するユングストローム型熱交換器16と、ユングストローム型熱交換器16からファン17を介して供給される水銀含有ガスG8に含まれる水銀を回収する活性炭吸着塔19と、ユングストローム型熱交換器16で生じた熱を熱風炉12に供給するファン18とを備えるセメントキルン排ガスの処理装置11が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2011−88770号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記特許文献1に記載の処理装置によれば、セメントキルン排ガスに含まれる水銀を効率よく回収することができる。しかし、キルンダストD4を加熱したガスG4によってキルンダストD4や水銀含有ガスG5を搬送するため、加熱に必要なガス量の10倍以上のガス量が必要となる。そのため、ユングストローム型熱交換器16での水銀含有ガスG7と空気A3との熱交換効率が低下すると共に、抽気ダクト13、サイクロン14やバグフィルタ15等の固気分離装置、活性炭吸着塔19等の関連設備も大型化せざるを得ず、設備コスト及び運転コストが高くなるという問題があった。
【0006】
そこで、本発明は、上記従来技術における問題点に鑑みてなされたものであって、低コストでセメントキルン排ガスから効率よく水銀を回収することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するため、本発明のセメントキルン排ガスの処理装置は、セメントキルン排ガスから回収したダストを加熱し、該ダストに含まれる水銀を揮発させる加熱装置と、該加熱装置から排出された揮発水銀を含むガスを、水銀含有ガスと水銀除去ダストとに分離する固気分離装置と、該分離された水銀含有ガスに含まれる揮発水銀を回収する水銀回収装置とを備え、
前記加熱装置から排出された前記揮発水銀を含むガスを加熱するため、前記固気分離装置のケーシングを加熱することを特徴とする。
【0008】
本発明に係るセメントキルン排ガスの処理装置によれば、固気分離装置のケーシングを加熱することで、固気分離装置においても加熱装置から排出された揮発水銀を含むガスを加熱することができる。これによって、加熱装置へ供給するガス量を少なくすることで、ダストに含まれる水銀の揮発に要する熱量が不足する虞がある場合でも、熱量不足を固気分離装置で補うことができ、セメントキルン排ガスから効率よく水銀を回収することができる。
【0009】
上記セメントキルン排ガスの処理装置において、前記加熱装置を外熱キルン又はUターンキルンとすることができる。これらの間接加熱式のキルンを用いることで、加熱装置から排出されるガス量を少なくすることができ、関連設備の小型化が可能となる。また、セメントキルン排ガスから回収したダストと加熱媒体との接触により加熱媒体に水銀が含まれることを防止して排ガス処理設備を簡易なものとすることができる。また、ダストを均一に加熱することができるため、ダストに含まれる水銀を効率よく揮発させることができる。
【0010】
また、前記外熱キルン又はUターンキルンにおいて間接加熱に使用した熱風を用いて前記固気分離装置のケーシングを加熱することができ、これにより、固気分離装置のケーシングを加熱するための新たな熱源を不要とし、設備コスト及び運転コストをさらに低減することができる。
【発明の効果】
【0011】
以上のように、本発明によれば、低コストでセメントキルン排ガスから効率よく水銀を回収することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】本発明に係るセメントキルン排ガスの処理装置の一実施の形態を示す全体構成図である。
【
図2】従来のセメントキルン排ガスの処理装置の一例を示す全体構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
図1は、本発明に係るセメントキルン排ガスの処理装置の一実施の形態を示し、この処理装置1は、セメントキルン排ガスに含まれる、水銀を含むキルンダストD1及び空気A1が供給され、キルンダストD1を加熱して水銀含有ガスG1と水銀除去ダストD2とに分離する外熱キルン2と、外熱キルン2に熱風H1を供給する熱風炉3と、外熱キルン2から排出される水銀含有ガスG1を集塵して水銀含有ガスG2と水銀除去ダストD3とに分離するバグフィルタ4と、バグフィルタ4から排出された水銀含有ガスG2に冷却用空気Cを導入する冷風取入部5と、ファン6を介して供給された水銀含有ガスG2から水銀を回収する活性炭吸着塔7とを備える。
【0014】
加熱装置としての外熱キルン2は、回転式のキルンであって、キルンを囲繞するジャケット(不図示)に、熱風炉3から熱風H1が供給されてキルン内部が加熱される。熱風炉3からの熱風H1は高温空気でも、燃焼ガスであってもよい。一方、外熱キルン2にキルンダストD1が供給され、外熱キルン2の内部で加熱される。加熱に用いられた熱風H2は、外熱キルン2から排出され、バグフィルタ4のケーシングの加熱に利用される。
【0015】
上述のような外熱キルン2に代えてUターンキルンを用いることもできる。Uターンキルンは、水平軸の周りに緩やかに回転する円筒と、傾斜する案内羽根を有する仕切壁とを備え、粉粒体の内筒内充填率(ホールドアップ)を従来の10%以下から30%〜40%と高めて上記円筒を小型化したものである。
【0016】
加熱装置としての熱風炉3は、外熱キルン2に熱風H1を吹き込むために備えられる。熱風H1によってキルンダストD1を加熱してキルンダストD1中の水銀を揮発させると共に、バグフィルタ4のケーシングを加熱する。
【0017】
バグフィルタ4は、900℃程度までの耐熱性を有する高耐熱型のバグフィルタであることが望ましい。このようなバグフィルタとしては、ハニカムセル化した棒状のセラミック管を複数配列したものや、シート状のセラミックフィルタを用いたものなど、様々なタイプのものが開発されている。本発明においては、水銀含有ガスG1に含まれる微細粒子を回収し得るものであれば、フィルタのタイプは特に限定されない。
【0018】
水銀回収装置としての活性炭吸着塔7は、ファン6によって導入された水銀含有ガスG2中の水銀を回収するために備えられる。ここで、冷風取入部5から導入された冷却用空気Cによって水銀含有ガスG2の温度を活性炭に通ガス可能な温度(例えば100℃程度)まで低下させる。活性炭吸着塔7で使用される活性炭としては、市販の活性炭の中で、水銀回収能力に特に優れる活性炭を選定することが望ましい。具体的には、水銀吸着用として調整された硫黄添着処理が施されている活性炭が好適である。
【0019】
次に、上記構成を有するセメントキルン排ガス処理装置1の動作について、
図1を参照しながら説明する。
【0020】
キルンダストD1及び空気A1を外熱キルン2に同時に供給する。また、外熱キルン2に熱風炉3から熱風H1を供給し、熱風H1によってキルンダストD1を380〜500℃に間接加熱し、キルンダストD1に含まれる水銀を揮発させる。外熱キルン2から排出される水銀含有ガスG1はバグフィルタ4に供給し、水銀除去ダストD2はセメント原料等に利用する。
【0021】
キルンダストD1を加熱した後の熱風H2を外熱キルン2から排出し、バグフィルタ4のケーシングを加熱する。これによって、キルンダストD1に含まれる水銀の揮発に要する熱量の不足を固気分離装置で補うことができる。熱風H2は400〜700℃とすることが好ましい。バグフィルタ4のケーシングを加熱した熱風H3は、適切な排ガス処理をした後大気に放出する。
【0022】
バグフィルタ4において、水銀含有ガスG1を水銀含有ガスG2と水銀除去ダストD3とに分離して水銀除去ダストD3を回収し、セメント原料等として利用する。350〜450℃の水銀含有ガスG2は、冷風取入部5から取り入れた冷却用空気Cによって100℃程度まで冷却し、ファン6を介して活性炭吸着塔7に供給する。活性炭吸着塔7において水銀含有ガスG2中の水銀を回収し、回収後の排ガスG3を適切な排ガス処理をした後大気に放出する。
【0023】
以上のように、本実施の形態では、外熱キルン2やUターンキルンを用いることで、外熱キルン2等へ供給するガス量を少なくした場合でも、バグフィルタ4のケーシングを加熱することで、熱量不足を補うことができ、低コストでセメントキルン排ガスから効率よく水銀を回収することが可能となる。
【0024】
尚、上記実施の形態では、加熱装置として外熱キルン2等を用いているが、キルンダストD1を加熱し、キルンダストD1に含まれる水銀を揮発させることができるものであれば、他の形式のキルンであってもよく、直接加熱式の加熱装置を用いることもできる。
【0025】
また、バグフィルタ4のケーシングを加熱する熱源は、外熱キルン2から排出された熱風H2以外にも、別途熱風炉を設けて熱風をバグフィルタ4のケーシングの加熱に用いてもよく、バグフィルタ4のケーシングに直接電気ヒータ等を設けて熱源とすることもできる。尚、バグフィルタ4以外の固気分離装置を用いることもでき、その際にも固気分離装置のケーシングを加熱する。
【0026】
さらに、外熱キルン2に空気A1を供給したが、セメントキルンに付設されるクリンカクーラからの排ガスを外熱キルン2に供給してキルンダストD1の間接加熱に利用してもよい。
【0027】
また、水銀回収装置として活性炭吸着塔7を用いたが、活性コークス等を用いた装置や、吸着剤により水銀を吸着除去するガス吸着装置等を使用することもできる。
【0028】
さらに、冷風取入部5からの冷却用空気Cで水銀含有ガスG2を冷却したが、水銀含有ガスG2を熱交換器に通すことで、水銀含有ガスG2から熱を回収しながらその温度を低下させることもできる。
【符号の説明】
【0029】
1 セメントキルン排ガス処理装置
2 外熱キルン
3 熱風炉
4 バグフィルタ
5 冷風取入部
6 ファン
7 活性炭吸着塔
A1 空気
C 冷却用空気
D1 キルンダスト
D2、D3 水銀除去ダスト
G1、G2 水銀含有ガス
G3 排ガス
H1〜H3 熱風