(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1-1】本発明の実施例1における昇圧装置の構成図である。
【
図1-2】本発明の実施例1における圧縮機内部の構成図である。
【
図1-3】本発明の実施例1における圧縮機内部の構成図である。
【
図1-4】本発明の実施例3における昇圧装置の構成図である。
【
図1-5】本発明の実施例5における昇圧装置の構成図である。
【
図1-6】本発明の実施例5における昇圧装置の構成図である。
【
図2-1】本発明の実施例1における制御部9の制御フロ−チャ−トである。
【
図2-2】本発明の実施例2における制御部9の制御フロ−チャ−トである。
【
図2-3】本発明の実施例3における制御部9の制御フロ−チャ−トである。
【
図2-4】本発明の実施例4における制御部9の制御フロ−チャ−トである。
【
図2-5】本発明の実施例4における制御部9の制御フロ−チャ−トである。
【
図3-1】従来の方法における第二の貯留タンク4内の圧力変化を示すグラフである。
【
図3-2】本発明の実施例における第二の貯留タンク4内の圧力変化を示すグラフである。
【
図3-3】本発明の実施例2における第二の貯留タンク4内の圧力の勾配dP1/dTの変化を示すグラフである。
【
図3-4】本発明の実施例3におけるバイパス配管中の流量Qの変化を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、実施例を図面を用いて説明する。
【実施例1】
【0011】
本発明の実施例1について
図1−1、1−2、1−3、2−1、3−1、3−2を用いて説明する。
【0012】
図1−1は、本実施例における昇圧装置の構成図である。
【0013】
本実施例における昇圧装置は、一次圧縮された空気を貯留する第一の貯留タンク1と、第一の貯留タンク1内の圧縮空気を吸い込み昇圧する圧縮機3と、その吐き出し空気を貯留する第二の貯留タンク4を有する。
【0014】
なお、圧縮機3の上流と下流にそれぞれ配置された第一の貯留タンク1と第二の貯留タンク4の間は、バイパス配管6で連結され、圧縮機3をバイパスして、圧縮機3の上流と下流が連通している。
【0015】
このバイパス配管6は、配管の開閉を行うための電磁弁7と、第二の貯留タンク4から第一の貯留タンク1への圧縮空気の逆流を防ぐための逆止弁8から構成されている。
【0016】
また、第一、第二の貯留タンク1,4には各々の内圧を検出するための第一、第二の圧力検出部2,5が設けられており、各々の圧力検出部の信号線は制御部9に接続されている。この制御部9は、第一、第二の圧力検出部2,5の信号をもとにバイパス配管6に設けられた電磁弁7の開閉および圧縮機3の運転・停止を制御する。
【0017】
次に、昇圧用圧縮機3の内部構造を説明する。
【0018】
昇圧用圧縮機は一次圧縮された空気等の流体を吸込み昇圧するため、圧縮機室内部は常に加圧状態にある。例えば昇圧用圧縮機3が往復動圧縮機である場合、ピストンには吸込み工程においても一次圧が作用しており、したがって圧縮機の起動時、負荷トルクが電動機の始動トルクを上回るために起動不良を生じることがある。
【0019】
通常の昇圧用圧縮機は、この問題を解決するために、圧縮機の吸込み流路あるいは吐出し流路に弁を設置し、起動時の負荷を軽減する制御を行っている。
図1−2および
図1−3は、このための構成および制御の例である。
【0020】
図1−2において、圧縮機本体13の吸込み流路には三方弁12が設けられており、その流路の一方は大気開放された放気サイレンサ11に、もう一方は外部の一次圧縮された空気の流路に接続されている。
【0021】
三方弁12は、圧縮機13が停止するとその吸込み口を放気サイレンサ11に連通させ、内部に残存していた圧縮空気を大気開放する。さらに起動時には一定時間大気吸込み運転となった後、一次圧縮された空気の流路に接続するように作動することで、負荷を軽減する機能を持つ。
【0022】
三方弁12は
図1−3に示すように圧縮機13の吐出し側に設けてもよく、この場合起動時に一定時間圧縮機13の吐出し口を大気開放することで負荷を軽減させる。ただしこの構成では、圧縮機13停止時において、吸込み流路の圧縮空気が圧縮機内部を通過し放気サイレンサ11から漏れるのを防止するため、吸込み流路に弁14を設置し、圧縮機停止と同時に流路を遮断することが行われる。
【0023】
図1−1の圧縮機3内部には、以上に述べたような起動負荷軽減機構が備えられているものとする。この機構の問題点は、圧縮機3の停止時においてその前後の流路を遮断してしまうことである。したがって例えば長期停止後の立ち上げ時など、第一の貯留タンク1内の圧力Psが第二の貯留タンク4内の圧力Pdより高い、Ps>Pdなる場合においても、圧縮機を運転させなければ下流へ圧縮空気を供給できず、消費電力を低減できないという問題が生じる。
【0024】
このような問題を解決するための、例えば、特許文献1に記載されるような従来の制御部9の制御内容について
図2−1のフロ−チャ−トを参照して説明する。制御の初期状態として、電磁弁7は閉状態、圧縮機3は停止状態となっている。
【0025】
圧縮機3の電源を入れると、制御部9は第一の貯留タンク1内の圧力Psが第二の貯留タンク4内の圧力Pd以下か否かを判定する(ステップS1)。Ps≦Pdである場合、制御部9は圧縮機3を運転開始し、圧縮機3は第一の貯留タンク1内の圧縮空気を吸い込み昇圧する。(ステップS5)
ステップS1においてPs>Pdであった場合、制御部9は圧縮機3を停止させたまま電磁弁7を開状態とし、バイパス配管6を介して第一の貯留タンク1内の圧縮空気を第二の貯留タンク4へ供給する(ステップS2)。
【0026】
この操作によって、圧縮機3が運転せずとも第一の貯留タンク1から第二の貯留タンク4へ圧縮空気が流れていくような圧力条件において、圧縮機3が無駄に運転され電力消費するのを防止できる。
【0027】
以上までは例えば、特許文献1等にk試合された従来のに制御内容である。この制御ではステップ2の後、PdがPsと等しくなった時点で圧縮機3を運転開始するものとしている。しかし、第二の貯留タンク4の容積が大きい場合など、実際にPdとPsが均圧化するまでは長時間を要する。
【0028】
ここで、
図3−1の曲線P1に示されるように、ステップS2にてバイパス配管6を介した圧縮空気供給が開始された後においてPdは変化する。このときPd = Psとなるまでに要する時間はT1である。
【0029】
この後、圧縮機3を運転開始した場合の圧力上昇は直線P2のようになる。Pdが必要とされる圧力Pnに達するまでにT2の時間を要することになる。
【0030】
このように、PdとPsが均圧化するまでは長時間を要するため、本実施例では、
図2のステップS1、S2のあと、Pd = Psとなるより前の時点、例えばPd = Ps’の時点で電磁弁7を閉状態とし、圧縮機3を運転開始するようにバイパス配管の開閉と圧縮機3の運転・停止を制御する。
【0031】
この後の圧力上昇は
図3−2のようになり、PdがPnに達するまでの時間T2は、
図3−1に示された従来の方法よりも短縮される。
【0032】
以上より、本実施例によれば、第一の貯留タンク1内の圧力Psが第二の貯留タンク4内の圧力Pdより高い場合に、圧縮機3を停止し、バイパス配管6を介して第一の貯留タンク1内の圧縮空気を第二の貯留タンク4へ供給することで、圧縮機3の消費電力を低減することができる。さらに、下流側の圧力Pdが上流側の圧力Psになる前に、バイパス配管を閉状態とし、圧縮機3の運転を開始するようにしたため、下流側の圧力Pdが必要とされる圧力であるPnに達するまでの時間を短縮することができる。
【実施例2】
【0033】
本発明の実施例2について、
図2−2、
図3−3を用いて説明する。実施例1と同一の構成については同一の符号を付し、その説明を省略する。
【0034】
本実施例以降では、実施例1における制御について、圧縮機3をどのタイミングで運転開始すれば効果的に時間・消費電力を削減可能かについて説明する。
【0035】
本実施例における制御のフロ−チャ−トを
図2−2に示す。このフロ−チャ−トは、
図2−1にて既に説明したもののうちステップS3の判定条件のみを変更したものである。
【0036】
本実施例では、ステップS3としてこのdP1/dTがある所定値A以下であるかどうかを判定する。そしてA以下となった時間T1において、制御部9によって電磁弁7を閉状態とし(ステップS4)、圧縮機3を運転開始する(ステップS5)。
【0037】
ここで、
図3−3は、
図3−2中の曲線P1の傾き、つまり、Pd の単位時間当たりの変化量dP1/dTを示している。dがPsに近付くにつれ、Pdの上昇のスピ−ドは減少するため、dP1/dTは時間とともに減少する。
【0038】
このときの判定値Aとしては、
図3−2におけるP2の時間に対する傾きdP2/dT、即ち圧縮機3を運転開始した後のPdの傾きの値を使用すると最適である。つまり、バイパス配管6と圧縮機3のどちらを介して圧縮空気を供給した方がPdの上昇が早いかを判定し、制御を行うというものである。
【0039】
本実施例によれば、dP1/dTを見てより適切なタイミングでバイパス配管(電磁弁7)と圧縮機3の制御を行うようにすることができ、圧縮機3の消費電力を低減と下流側の圧力Pdが必要とされる圧力であるPnに達するまでの時間の短縮を効率的に行うことができる。
【実施例3】
【0040】
本発明の実施例3について、
図1−4、
図2−3、
図3−5を用いて説明する。実施例1、2と同一の構成については同一の符号を付し、その説明を省略する。
【0041】
実施例2における判定の最適値Aを実際に求めるためには、圧縮機の吐出し空気量と、その吐出し側に接続された貯留タンクの容積の二つのデ−タを予め制御部にインプットしておくことが必要である。このため、例えば吐出し側の貯留タンク容積を変更した場合などは再度設定を変更する必要があり、設定作業が煩雑になる。
【0042】
そこで本実施例では、バイパス配管に圧縮空気の流量を検出する流量検出部10を設け、判定のための最適値算出において、圧縮機の吐出し空気量のデ−タ用いた点に特徴がある。
【0043】
図1−4は、本実施例に係る昇圧装置である。本実施例では実施例1に係る昇圧装置の構成において、バイパス配管に流量検出部10を挿入したものである。
【0044】
本実施例における制御のフロ−チャ−トを
図2−3に示す。このフロ−チャ−トは、
図2−1にて既に説明したもののうち判定条件(ステップS3)のみを変更したものである。
【0045】
図3−4はフロ−チャ−トのステップS2が終了した直後の状態における、流量検出部10によって得られるバイパス配管の流量Qを示している。このとき、時間とともにPdがPsに近付くに従い、流量Qは減少する。
【0046】
本実施例では、ステップS3として流量Qがある所定値B以下であるかどうかを判定する。そしてB以下となった時間T1において、制御部9によって電磁弁7を閉状態とし(ステップS4)、圧縮機3を運転開始する(ステップS5)。
【0047】
このときの判定値Bとしては、圧縮機3の吐き出し空気量の値を使用すると最適である。つまり、バイパス配管6と圧縮機3のどちらを介して圧縮空気を供給した方が第二の貯留タンク4に流れる流量が多いかを判定し、制御を行うというものである。
【0048】
本実施例によれば、最適判定値Bを求めるために必要な情報は、圧縮機3の吐き出し空気量のみであり、これは制御部9内に予め準備しておくことで自動処理可能である。したがって実施例2と比較すると、第二の貯留タンク4としてどのような容積の貯留タンクを使用しても判定値の書き換えが必要く、貯留タンク4を変更した場合も設定が容易という利点がある。
【実施例4】
【0049】
本発明の実施例4について、
図2−4を用いて説明する。実施例1〜3と同一の構成については同一の符号を付し、その説明を省略する。
【0050】
本実施例における圧縮装置の構成は
図1−1にて既に説明したものと同じである。制御のフロ−チャ−トを
図2−4に示す。このフロ−チャ−トは
図1−1にて既に説明したもののうち判定条件(ステップS3)のみを変更したものである。
【0051】
本実施例では、ステップS2が終了した後、ステップS3−1として実施例2と同様に、dP1/dTによる判定を行う。dP1/dT≦Aであった場合は、制御部9によって電磁弁7を閉状態とし(ステップS4)、圧縮機3を運転開始する(ステップS5)。
【0052】
dP1/dT>Aであった場合は、ステップS3−2にて時間Tがある所定時間Tlim経過したかどうかを判定する。Tlimが経過していれば、制御部9によって電磁弁7を閉状態とし(ステップS4)、圧縮機3を運転開始する(ステップS5)。Tlimが経過していなければ、処理はS3−1に戻る。
【0053】
実施例2にて説明した制御方法では、例えばステップS2が終了した直後に第二の貯留タンク4内の圧縮空気が消費され始めるなどするとPdの上昇が遅くなるため、ステップS3−1の判定を満足するのに長時間を要するという問題がある。
【0054】
本実施例では、このような場合においても時間Tlim後に強制的に処理を進めることで対応可能なため、さらに実用的な制御と言える。
【0055】
なお、本実施例ではステップS3−1における判定に実施例2と同様にdP1/dTを検出し、用いるものとしたが、実施例3と同様に昇圧装置の構成を
図1−4に示す通りとし、判定に流量Qを用いる方法にも応用可能である。
【0056】
本実施例によれば、実施例2、3と比較して、下流側の圧縮空気の使用状況に応じて下流側の圧力Pdが必要とされる圧力であるPnに達するまでの時間を効率的に短縮することができる。
【実施例5】
【0057】
本発明の実施例5について、
図1−5、2−5を用いて説明する。実施例1〜4と同一の構成については同一の符号を付し、その説明を省略する。
【0058】
図1−5に本実施例における構成を示す。本図は、
図1−1にて説明した昇圧装置からバイパス配管6を除去したものである。また、本実施例における制御のフロ−チャ−トを
図2−5に示す。
【0059】
なお、実施例1〜4にて使用した
図2−1のフロ−チャ−トでは、説明を簡単にするため実施例1にて説明した圧縮機3の上流側または下流側に配置された圧縮機3内部の三方弁12の作動についてはあえて記載していない。しかし本実施例では、三方弁12の制御が追加で必要となるため、その作動についてもフロ−チャ−トに記載している。
【0060】
本実施例において、制御の初期状態として、圧縮機3および内部の圧縮機本体13は停止状態、三方弁12は圧縮機本体13の吸込み口と放気サイレンサ11を連通させた状態にある。
【0061】
圧縮機3の電源を入れると、制御部9は第一の貯留タンク1内の圧力Psが第二の貯留タンク4内の圧力Pd以下か否かを判定する(ステップS1)。Ps≦Pdである場合は、これまでの実施例と同様に圧縮機3は第一の貯留タンク1内の圧縮空気を吸い込み昇圧する。ただしこのときの動作はステップS5−1,5−2のように2段階になる。これについては後述する。
【0062】
ステップS1においてPs>Pdであった場合、制御部9は圧縮機本体13を停止させたまま、三方弁12(
図1−2参照)を切り替え、吸込み流路と圧縮機本体13を連通する(ステップS2)。即ち、第一の貯留タンク1の圧縮空気を圧縮機本体13の内部を通過させて吐出し流路へ供給する。
【0063】
制御部9は実施例2と同様にPdの上昇の傾きdP1/dTを検出し、ある所定値Aに達したタイミングで三方弁12を切り替え、圧縮機本体13の吸込み口と放気サイレンサ11を連通させる(ステップS4)。この動作によって、一旦圧縮機本体13の吸い込み口が大気解放される。
【0064】
この後、圧縮機本体13の運転を開始し(ステップS5−1)、一定時間経過後に三方弁12を再度切り替えることで、吸込み流路と圧縮機本体13を連通させ、圧縮機本体13は第一の貯留タンク1内の圧縮空気を吸込み昇圧運転を開始する(ステップS5−2)。
【0065】
以上のような制御を行うことで、実施例1にて説明したようなバイパス配管を取り付ける必要なく、同様の働きをさせることが可能である。なお、本実施例の説明では代表例として圧縮機3の内部構成を
図1−2の通りとしたが、同様の制御は
図1−3に示す構成でも可能である。
【0066】
また、ステップ3は実施例2と同様にPdの上昇の傾きを検出し判定するものとしたが、
図1−6に示すように圧縮機3内部に流量検出部14を挿入し、実施例3と同様に流量検出により判定するようにしてもよいし、実施例4のように制限時間を加えた制御を行ってもよい。
【0067】
本実施例によれば、実施例1〜4における効果をより簡略化された構成によって得ることができる。
【0068】
なお、本発明は上記した実施例に限定されるものではなく、さまざまな変形例が含まれる。例えば、上記した実施例は本発明を分かり易く説明するために詳細に説明したものであり、必ずしも説明したすべての構成を備えるものに限定されるものではない。また、ある実施例の構成の一部を他の実施例の構成に置き換えることが可能であり、また、ある実施例の構成に他の実施例の構成を加えることも可能である。また、各実施例の構成の一部について、他の構成の追加・削除・置き換えをすることが可能である。
【0069】
また、上記の各処理部、処理手段等は、それらの一部又は全部を、例えば集積回路で設計する等によりハ−ドウェアで実現しても良い。また、上記の各構成、機能等は、プロセッサがそれぞれの機能を実現するプログラムを解釈し、実行することによりソフトウェアで実現してもよい。
【0070】
また、信号線は説明上必要と考えられるものを示しており、製品上必ずしもすべての信号線を示しているとは限らない。実際には殆どすべての構成が相互に接続されていると考えてもよい。