(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下本発明を、その好ましい実施形態に基づき説明する。本発明のPTO粒子は、その具体的な用途に応じ、該粒子の集合体である粉末の形態であり得る。あるいは、該粉末が水や有機溶媒等の媒体に分散した状態になっているゾル(分散液)の形態でもあり得る。
【0012】
本発明のPTO粒子には、該粒子の導電性を高める目的でリンが含まれている。本発明のPTO粒子は、酸化スズの結晶中において酸素原子の位置がリン原子で置換された構造を有していると考えられる。後述するPTO粒子の製造方法から明らかなように、本発明のPTO粒子においては、ドープ元素であるリンは、粒子の径方向にわたり均一に分布していると考えられる。このようなリンの分布状態が、本発明のPTO粒子の導電性の向上に寄与しているのではないかと、本発明者は考えている。すなわちPTO粒子全体としての抵抗値は、リンの少ない導電性の低い部分の比率が支配的な因子であるため、導電性を高めるリンの濃度が均一でない場合には、抵抗の高い部分の比率が上昇してしまう。このためリン濃度を粒子内の径方向に対して均一にしておく必要がある。これに対して、先に背景技術の項で述べた特許文献1に記載のPTO粒子は、その製造方法から見て、粒子の表面及びその近傍にリンが偏在していると考えられる。そのため、粒子内部の抵抗値が低下しないので、同文献に記載のPTO粒子は導電性が十分に高くならないと、本発明者は考えている。
【0013】
ところで、二価のスズのみからなる酸化物は、導電性は有するものの黒色となり、透明性が要求される用途、例えば電子部品の搬送工程に用いられる透明導電膜等に利用することができない。一方、四価のスズのみからなる酸化物は、二価のスズのみからなる酸化物に比べて導電性を高くすることができない。これに対して、本発明のPTO粒子は白色系であって、透明導電膜等に利用することができ、かつ四価のスズからなるため導電性が高いので、樹脂に混入させた透明導電膜としての導電性を高めることが可能となる。なお、本発明のPTO粒子は、これを粉末X線回折測定すると、四価のSnO
2と同様の回折ピークのみを呈する。したがって、本発明のPTO粒子におけるスズの価数は大部分が導電性の高い四価の状態であると考えられる。
【0014】
本発明のPTO粒子は、ドーパントとしてリンを含有し、他の公知のドーパント元素、例えばアンチモン、タンタル、ニオブ、タングステン等に関しては、含有割合が低いことが、導電性の向上の点から有利である。環境負荷や製造経費の観点からは、本発明のPTO粒子は、ドーパントとしてリンのみを含有し、他の公知のドーパントは含有していないことが好ましい。
【0015】
更に本発明のPTO粒子は、前記の公知のドーパント以外の他の不純物元素の含有量が少ないことが、導電性の向上の点から好ましい。特に、導電性の低下に及ぼす影響が大きい元素である炭素の含有割合が低いことが好ましい。尤も、PTOゾルの分散性を高める観点からは、該ゾルに分散剤の添加が必要であり、分散剤としてはアルキルアミン等の含炭素化合物が分散性の確保からより望ましい。このため、PTO粒子中には不可避的に炭素が混入する。したがって、PTO粒子中に含まれる炭素の割合を低くすることには限界がある。このように、炭素の含有割合について、PTO粒子の導電性と当該PTO粒子を含有したPTOゾルの分散性とは二律背反の関係にある。このような状況のもと、本発明者は鋭意検討した結果、意外にも、PTO粒子の粒径と炭素の含有割合との比率を特定の範囲に設定することで、PTO粒子の導電性と分散性とを両立させ得ることを見いだした。具体的には、動的光散乱方式で測定されたPTO粒子の累積体積50容量%における体積累積粒径D
50をX(nm)とし、該PTO粒子に含まれる炭素の割合をY(質量%)としたとき、X/Yの値が3〜50であると、PTO粒子の導電性と分散性とが両立したものとなる。この有利な効果を一層顕著なものとする観点から、X/Yの値は3〜30であることが好ましく、3〜20であることが一層好ましい。PTO粒子の粒径であるXの値及び炭素の含有割合であるYの値は、例えば後述する方法に従いPTO粒子を製造することでコントロールすることができる。
【0016】
X/Yの値によってPTO粒子の導電性と分散性とのバランスを図ることができることは、PTO粒子に含まれる炭素の割合が同じであっても、その粒径が異なることで、導電性の程度が異なることを意味している。具体的には、PTO粒子に含まれる炭素の割合が同じであっても、その粒径が小さいほど、該粒子の導電性が高くなる。このような知見はこれまで知られておらず、本発明者が初めて見いだした事項である。
【0017】
X及びYそれぞれの値については、以下のとおりであることが好ましい。Xの値は、X/Yの値が上述の範囲内であることを条件として、1〜50nm、中でも1〜20nm、特に1〜15nm、とりわけ1〜10nmであることが好ましい。つまり、本発明のPTO粒子は非常に微小なものである。一方、Yの値は、X/Yの値が上述の範囲内であることを条件として、5.0質量%、中でも4.0質量%以下、特に3.0質量%以下、とりわけ2.1質量%以下であることが好ましい。Yの値は0に近づくほど好ましいが、上述したX/Yの範囲との関係で、Yの下限値は1.3質量%であることが好ましく、1.5質量%であることが更に好ましい。X及びYの値の測定方法は、後述する実施例において詳述する。
【0018】
上述のXの値の好ましい範囲から明らかなように、本発明のPTO粒子は非常に微小なものであり、このことは該PTO粒子が高い比表面積を有するものであることを意味する。すなわち該PTO粒子は微粒で高分散であるため、粒子どうしの接触点が多くなり、電気抵抗が低下する。詳細には、本発明のPTO粒子のBET比表面積は、好ましくは100〜300m
2/g、更に好ましくは120〜250m
2/g、一層好ましくは150〜200m
2/gである。
【0019】
本発明のPTO粒子は、上述のとおり、不純物としての炭素の割合Yが低いものであるところ、その他の不純物元素の割合も低いことが、導電性の向上の点から有利である。具体的には、本発明のPTO粒子においては、リン、スズ、酸素及び炭素以外に含まれる元素の割合の総和が、好ましくは0.001〜1.0質量%であり、更に好ましくは0.001〜0.5質量%という低レベルのものになっている。
【0020】
本発明のPTO粒子には、リンが含まれているところ、該PTO粒子におけるリンと炭素との割合も、該PTO粒子の導電性に影響を及ぼすことが、本発明者の検討の結果判明した。詳細には、PTO粒子に含まれるリンの割合をZ(質量%)としたとき、このZと、PTO粒子に含まれる炭素の割合Y(質量%)との割合Z/Yが、好ましくは0.3〜0.7、更に好ましくは0.4〜0.6が好ましく、PTO粒子の導電性が一層高くなる。このZの値の測定方法は、後述する実施例において詳述する。
【0021】
PTO粒子に含まれるリンの割合Zの値は、Z/Yの値が上述の範囲内であることを条件として、好ましくは0.9〜5.0質量%、更に好ましくは0.9〜2.5質量%、一層好ましくは0.9〜2.0質量%、特に好ましくは0.9〜1.2質量%である。リンの割合Zをこの範囲、特に後述する実施例4と比較例5との対比から明らかな通り2.5質量%以下に設定することで、PTO粒子の導電性を更に一層高めることができ、また、透明性を更に一層高めることができる。Zの値は、後述するPTO粒子の製造方法において、反応系に添加するリン源の量や反応条件の調整によってコントロールすることができる。
【0022】
本発明のPTO粒子は、その形状が球状ないし角のとれた粒状のものであることが好ましい(後述する
図1参照)。このような形状を有することで、該PTO粒子を原料として導電膜を形成すると、該導電膜中でのPTO粒子の充填性が良好になり、該導電膜の導電性を高めることができる。これに対して、背景技術の項で述べた特許文献1に記載のPTO粒子は、本発明者の追試験によれば、角を有するごつごつとした形状のものであり(後述する
図2参照)、その形状に起因して粒子間の接触面積が小さく、導電膜の導電性を十分に高められないことが判明した。
【0023】
本発明のPTO粒子は、これを膜状に成形した場合に、透明性及び導電性の高いものである。例えば厚さ0.1〜1.0μmで、PTO粒子の含有量が95〜99質量%である樹脂による導電膜を製造した場合、この膜の可視光の全光線透過率は85%以上、特に90%以上という透明性の高いものとなる。ヘイズ値は好ましくは3以下、更に好ましくは1以下である。また、この条件で膜を製造した場合、表面抵抗値は、25℃、50%RHの測定条件で、2×10
8〜8×10
9Ωcmを示す。
【0024】
先に述べたとおり、本発明のPTO粒子は、ゾル(分散液)の形態でもあり得る。該ゾルの分散媒としては、水又は水溶性有機溶媒を含む水性液や、有機溶媒を用いることができる。かかるゾルは、例えば透明導電膜の製造に有用なものである。該ゾルにおけるPTO粒子の割合は、5〜45質量%、特に5〜30質量%であることが好ましい。
【0025】
本発明のPTO粒子を含むゾル(以下、「PTOゾル」とも言う。)は、分散質であるPTO粒子及び分散媒のみを含むものであってもよく、あるいは該分散媒に溶解可能な第三成分を含むものであってもよい。そのような第三成分としては、分散質であるPTO粒子の分散剤、スズ塩などの金属塩、リン含有化合物、アルカリなどが挙げられる。PTOゾルにおいて、該分散剤を含む第三成分の割合の総和は0〜1.0質量%であることが好ましく、0〜0.5質量%であることが更に好ましい。
【0026】
本発明のPTO粒子の粉末は、白色ないし透明なものなので、該粉末を含むゾルであるPTOゾルは、可視光の波長領域(400〜800nm)において透明性の高いものである。特に透明性の高い水性分散液を用いて塗膜を形成すると、乾燥後の塗膜の透明性が極めて高くなる。
【0027】
次に、本発明のPTO粒子を含むPTOゾルの好適な製造方法について説明する。本製造方法は、(1)リンを含む酸化スズゾルの調製工程、及び(2)水熱処理によるPTO粒子の生成工程に大別される。更に必要に応じ(3)PTO粒子の分散処理工程が行われる。以下、各工程について詳述する。
【0028】
(1)の工程においては、リン源を含む塩基性水溶液中に、二価又は四価のスズ源を含む水溶液を添加して、リンを含む酸化スズのゾルを調製する。リン源としては、水溶性のリン化合物を用いることができる。そのようなリン化合物の例としては、オルトリン酸及びそのアルカリ金属塩、リン酸化物などが挙げられるが、塩の方がより好ましい。塩基性水溶液に含まれるリン源の割合は、水に対して0.01〜1.0mol/L、特に0.02〜0.5mol/Lとすることが好ましい。
【0029】
塩基性水溶液としては、水酸化ナトリウム等のアルカリ金属の水溶液、アルカリ土類金属の水溶液、アンモニアなどを用いることができる。塩基性水溶液は、そのpHが、リン源を含んだ状態で、11以上、特に12以上であることが好ましい。この塩基性水溶液は、含炭素化合物を含有していないことが好ましい。
【0030】
リン源を含む塩基性水溶液に添加されるスズ源を含む水溶液においては、該スズ源として二価のスズ化合物又は四価のスズ化合物が用いられる。これらのスズ化合物としては、炭素非含有の化合物を用いることが好ましい。例えば第一塩化スズや第二塩化スズなどのスズのハロゲン化物、硫酸スズなどを用いることが好ましい。二価のスズ源と四価のスズ源とを比較すると、四価のスズ源を用いることが、着色されていないPTO粒子が容易に得られる点から好ましい。この観点から、スズ源として特に好ましく用いられる化合物は塩化第二スズである。スズ源を含む水溶液に含まれるスズ源の割合は、塩化第二スズとして15〜60質量%、特に20〜40質量%とすることが好ましい。スズ源を含む水溶液は、含炭素化合物を含有していないことが好ましい。
【0031】
本製造方法においては、リン源を含む塩基性水溶液に、スズ源を含む水溶液を添加することが重要である。この添加態様を採用することで、PTO粒子の生成の当初からリン源を反応系に存在させることができるので、得られるPTO粒子においては、その径方向にわたりリンの分布が均一なものとなる。なお、リン源を含む塩基性水溶液に、スズ源を含む水溶液を添加するのではなく、その逆にスズ源を含む水溶液に、リン源を含む塩基性水溶液を添加した場合や、リン源を含む水溶液、スズ源を含む水溶液、及び塩基性水溶液を、水に一括添加した場合には、反応当初からリン源が存在するものの、本発明の導電性を有するPTO粒子を得ることはできない。
【0032】
本製造方法に従いリン源を含む塩基性水溶液に、スズ源を含む水溶液を添加する場合、塩基性水溶液中に、局所的にスズ源を含む水溶液の高濃度部分が生じないようにするため、逐次添加を行うことが好ましい。添加を室温(20〜25℃)で行っても反応は速やかに進行するが、必要に応じてリン源を含む塩基性水溶液及び/又はスズ源を含む水溶液を加熱した状態下に添加を行ってもよい。
【0033】
リン源を含む塩基性水溶液に、スズ源を含む水溶液を添加することで、リンを含む酸化スズのゾルが得られる。この酸化スズは、組成分析の結果、四価のスズの酸化物を主成分とすることが確認された。また、X線回折測定の結果、ブロードな回折ピークを有する結晶性の低いものであることも確認された。
【0034】
このようにして得られたゾルを遠心分離や固液分離装置などによって水洗し、不純物を除去した後、(2)の工程を行う。本工程においては、ゾルにアルキルアミン又はアンモニアを添加し、これらの共存下に該ゾルをオートクレーブ中で自生圧力下に水熱処理する。アルキルアミンやアンモニアは、粒子の凝集を防止する目的で添加される。アルキルアミンとアンモニアは、いずれか一方を用いてもよく、あるいは両者を併用してもよい。最終的に得られるPTO粒子中の炭素の割合を低減させる観点からは、アンモニアを用いることが好ましい。アルキルアミンを用いる場合には、PTO粒子中の炭素の割合を低減させる観点から、第二級アミンや第三級アミンよりも、第一級アミンを用いることが好ましい。また、低級アルキル基のアミンを用いることも好ましい。これらを総合的に判断すると、炭素数が好ましくは1〜12、より好ましくは1〜10、更に好ましくは2〜6である第一級アミンを用いることが好ましい。
【0035】
アンモニアやアルキルアミンの添加量は、酸化スズに対して5〜50質量%とすることが好ましく、10〜30質量%とすることが更に好ましい。
【0036】
水熱処理においては、ゾルに含まれる固形分の割合を5〜30質量%、特に7〜20質量%にすることが好ましい。また水熱処理の温度は130〜200℃、特に150〜180℃に設定することが好ましい。処理時間は、温度がこの範囲内であることを条件として、2〜20時間、特に2〜10時間に設定することが好ましい。
【0037】
以上の水熱処理によってPTO粒子を含むゾルが得られる。次に必要に応じて(3)の分散処理工程を行う。本工程においては、(2)で得られたゾルを、必要に応じて水及び/又は水溶性有機溶剤によって希釈した後、分散処理に付すことが好ましい。分散処理に際しては分散剤を添加してもよい。分散剤としては炭素非含有化合物を用いることが好ましい。こうすることで、PTO粒子に炭素が混入することを防止することができる。これに対して、先に背景技術の項で述べた特許文献1に記載の方法では分散剤としてアルキルアミンを用いているので、得られるPTO粒子中に炭素が混入して炭素の割合が高くなる傾向にある。分散剤として用いられる炭素非含有化合物としては、例えばアンモニアが挙げられる。
【0038】
分散処理は、例えばホモジナイザーや攪拌機などによって行うことができる。このようにして得られたPTOゾルは、透明なものであり、しかも長期間保存しても沈殿が観察されない安定性の高いものとなる。このPTOゾルに、例えば水溶性透明樹脂を添加して塗料を調製し、該塗料を基材に塗布することで、透明導電膜を形成することができる。
【実施例】
【0039】
以下、実施例により本発明を更に詳細に説明する。しかしながら本発明の範囲は、かかる実施例に制限されない。特に断らない限り、「%」は「質量%」を意味する。
【0040】
〔実施例1〕
(1)リンを含む酸化スズゾルの調製工程
リン源としてリン酸三ナトリウム・十二水和物(26.8g)を用いた。これを水酸化ナトリウム溶液(25%溶液を500mL)に溶解し水を加えて9000mLの塩基性水溶液を得た。この塩基性水溶液のpHは12であった。これとは別に、スズ源として塩化第二スズ(50%溶液を800g)を用い、これを水に溶解して、1000mLの水溶液を得た。この水溶液を、室温下で、塩基性水溶液中に1時間にわたり滴下した。この間、塩基性水溶液を撹拌しておいた。この反応によってリンを含む酸化スズのゾルが得られた。元素分析の結果、その酸化スズは組成式SnO
2で表されるものであることが確認された。またX線回折測定の結果、この酸化スズは非晶質のものであることが確認された。
【0041】
(2)水熱処理によるPTO粒子の生成工程
(1)の工程で得られたゾルを電気伝導度が300μS/cm以下となるまで洗浄し、遠心分離機で濃縮して固形分を13.4%にした後、n−プロピルアミンを固形分に対して2.4%添加した。そして、オートクレーブ中で、180℃の加熱下に3時間水熱処理を行った。この処理によって、PTO粒子ゾルが得られた。
【0042】
(3)PTO粒子の分散処理工程
(2)の工程で得られた100mLのPTOゾル(固形分13.4%)に、メタノール100mLを加え、混合処理を行い、目的とするPTOゾルを得た。
【0043】
(4)分析及び評価
得られたPTOゾルについて、動的光散乱方式によるPTO粒子の粒径D
50、並びにPTO粒子のBET比表面積、炭素の含有割合及びリンの含有割合を以下の方法で測定した。また、該PTOゾルを用いて作製した透明導電膜の抵抗及びヘイズを以下の方法で測定した。それらの結果を以下の表1に示す。更に、得られたPTO粒子のTEM像を
図1(a)及び(b)に示す。更に、得られたPTO粒子のX線回折測定を行ったところ、四価のSnO
2と同様の回折ピークが観察された。
【0044】
(a)粒径D
50
測定装置として日機装(株)の粒子径・粒度分布測定装置であるナノトラックUPAを用い測定を行った。
【0045】
(b)BET比表面積
PTO粒子0.5gを、105℃で10分間の脱気処理を行った後、モノソーブ(カンタクロム社製)を用いてBET1点法で測定した。
【0046】
(c)炭素の含有割合
炭素含有量を、炭素分析装置(堀場製作所社製 EMIA−320V)を用いて測定した。
【0047】
(d)リンの含有割合
粉体をアルカリ溶融させ、HCl酸性にし、ICP(SII SPS5100)で測定した。
【0048】
(e)透明導電膜の抵抗
合成されたPTOゾル(固形分13%)にメタノールを加え(PTOゾルとメタノールは体積比で表して1:1で調整した)分散液を調整した。得られた分散液を用い、PETフィルム上にバーコーターで塗布し、80℃で乾燥させ塗膜を形成した。塗膜の表面抵抗を、2重リングプローブ法(三菱化学アナリテック製ハイレスタUP)を用いて測定した。
【0049】
(f)透明導電膜のヘイズ
塗膜のヘイズを、日本電色工業(株)製のヘイズメータであるNDH4000によって、積分球式測定法により行った。ヘイズは(散乱光/全光線透過光)×100から算出される。
【0050】
〔実施例2及び3〕
水熱処理時に添加するn−プロピルアミンの量を3.0%(実施例2)及び6.0%(実施例3)とする以外は、実施例1と同様にしてPTOゾルを得た。得られたPTOゾルについて、実施例1と同様の測定及び評価を行った。それらの結果を表1に示す。
【0051】
〔実施例4〕
リンを含む酸化スズゾル作製時に添加するリン酸三ナトリウム・十二水和物の添加量を85.1gとし、水熱処理時に添加するn−プロピルアミンの量を8.0%とする以外は、実施例1と同様にしてPTOゾルを得た。得られたPTOゾルについて、実施例1と同様の測定及び評価を行った。それらの結果を表1に示す。
【0052】
〔比較例1〕
本比較例は、特許文献1の実施例1に相当するものである。5Lのビーカーに、1.92Lの純水及び187.5gのシュウ酸を添加してシュウ酸水溶液を得た。このシュウ酸水溶液を70℃に加熱した状態下に、50gの過酸化水素をと25gの金属スズを添加した。過酸化水素と金属スズとの添加は交互に行った。反応が終了するのを待って(10分)、この操作を15回繰り返して、合計750gの過酸化水素と375gの金属スズを添加した。その後、50gの過酸化水素を添加し、更に260mLの純水と1155gの過酸化水素とを添加して、95℃に加熱した状態下に5時間熟成して、液中に残存するシュウ酸を炭酸ガスと水とに分解した。このようにして得られた500gの酸化スズゾル(固形分10.2%)に、1.35gのジイソプロピルアミンと1.18gのオルトリン酸とを添加し、オートクレーブ中で150℃、8時間にわたり水熱処理を行い、目的とするゾルを得た。このゾルについて、実施例1と同様の測定及び評価を行った。それらの結果を表1に示す。更に、得られた粒子のTEM像を
図2(a)及び(b)に示す。
【0053】
〔比較例2ないし4〕
実施例1において、酸化スズゾル作製時に添加するリン酸三ナトリウム・十二水和物の添加量を150g(比較例2)、16g(比較例3)及び150g(比較例4)とし、かつ水熱処理時に添加するn−プロピルアミンの量を0.7%(比較例2)、4.0%(比較例3)及び3.0%(比較例4)とする以外は、実施例1と同様にしてPTOゾルを得た。
【0054】
〔比較例5〕
実施例4において、酸化スズゾル作製時に添加するリン酸三ナトリウム・十二水和物の添加量を127.8gとする以外は、実施例4と同様にしてPTOゾルを得た。
【0055】
【表1】
【0056】
表1に示す結果から明らかなように、各実施例で得られたPTOゾルから得られた導電膜は、各比較例で得られたゾルから得られた導電膜に比べて導電性が高く、かつ比較例1〜3、5で得られたゾルから得られた導電膜に比べて透明性も高いものであることが判る。また、
図1と
図2との対比から明らかなように、実施例1で得られたPTO粒子は、比較例1で得られた粒子に比べて微粒のものであることが判る。この比較例1はD
50が大きいためにX/Yも126と大きく、このことに起因して透明性が低くヘイズ値が高いものであり、塗膜抵抗も高い。またn−プロピルアミンの添加量が多く、X/Yが50を超える比較例3も、透明性が高いものの高抵抗である。
一方、D
50が0.85μmと小さく、X/Yが0.53である比較例4は、透明性が高いものの、粒子の分散性が高すぎるため高抵抗となっている。
以上のようにX/Yの値が3〜50であるときに、PTO粒子の導電性と分散性とが両立したものとなることが判る。