特許第6200830号(P6200830)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6200830
(24)【登録日】2017年9月1日
(45)【発行日】2017年9月20日
(54)【発明の名称】トランスモジュール
(51)【国際特許分類】
   H01F 30/10 20060101AFI20170911BHJP
   H01F 38/36 20060101ALI20170911BHJP
【FI】
   H01F30/10 K
   H01F38/36
【請求項の数】6
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2014-32774(P2014-32774)
(22)【出願日】2014年2月24日
(65)【公開番号】特開2015-159175(P2015-159175A)
(43)【公開日】2015年9月3日
【審査請求日】2016年7月22日
(73)【特許権者】
【識別番号】000002037
【氏名又は名称】新電元工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100106909
【弁理士】
【氏名又は名称】棚井 澄雄
(74)【代理人】
【識別番号】100149548
【弁理士】
【氏名又は名称】松沼 泰史
(74)【代理人】
【識別番号】100160093
【弁理士】
【氏名又は名称】小室 敏雄
(72)【発明者】
【氏名】山城 卓児
【審査官】 右田 勝則
(56)【参考文献】
【文献】 特開2013−026597(JP,A)
【文献】 特開平10−189372(JP,A)
【文献】 実開昭61−030228(JP,U)
【文献】 特開平05−047573(JP,A)
【文献】 特開昭60−257111(JP,A)
【文献】 特開2013−105808(JP,A)
【文献】 実開平05−008919(JP,U)
【文献】 実開昭63−087812(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01F 30/10
H01F 38/36
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
一次側コイル及び二次側コイルを有するトランスと、筒状に形成されて挿通孔を有すると共に、前記一次側コイル及び前記二次側コイルの少なくともいずれか一方のコイルに流れる交流電流を計測する電流計測部と、を備えるトランスモジュールであって、
導電性を有すると共に前記電流計測部の挿通孔に挿通される棒状部材を備え、
前記一方のコイルが、その巻回部分から外側に引き出される板状の引出板部を備え、
前記棒状部材の軸方向の第一端部を前記一方のコイルの引出板部のうち厚さ方向に直交する主面に当接させることで、前記引出板部と前記棒状部材とを電気接続することを特徴とするトランスモジュール。
【請求項2】
前記棒状部材が、前記挿通孔の軸方向に延びる筒状部材であり、
前記一方のコイルの引出板部に、その厚さ方向に貫通する貫通孔が形成され、
前記貫通孔が前記筒状部材の内部に連通するように、前記筒状部材の軸方向の第一端部を前記引出板部の主面に当接させることを特徴とする請求項1に記載のトランスモジュール。
【請求項3】
前記電流計測部が、計測部本体と、該計測部本体を収容すると共に前記挿通孔を有する筒状の収容ケース部と、を備え、
前記棒状部材が、前記収容ケース部に一体に固定されることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載のトランスモジュール。
【請求項4】
前記電流計測部が、計測部本体と、該計測部本体を収容すると共に前記挿通孔を有する筒状の収容ケース部と、を備え、
該収容ケース部が、前記引出板部に固定されることを特徴とする請求項1から請求項3のいずれか一項に記載のトランスモジュール。
【請求項5】
前記トランスが、前記一次側コイル及び前記二次側コイルを封止して一体に固定する樹脂部を備え、
前記収容ケース部が、前記樹脂部と一体に成形されていることを特徴とする請求項4に記載のトランスモジュール。
【請求項6】
前記収容ケース部及び前記引出板部の一方に、前記収容ケース部及び前記引出板部の他方に係合する係合爪部が形成されていることを特徴とする請求項4に記載のトランスモジュール。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、トランスモジュールに関する。
【背景技術】
【0002】
従来のトランスモジュールには、例えば特許文献1のように、一次側コイル(一次側巻線)及び二次側コイル(二次側巻線)を有するトランスと、一次側コイルや二次側コイルに流れる交流電流を計測する電流計測部(例えばカレントトランス)と、を備えるものがある。特許文献1のトランスモジュールでは、導線からなるコイルの引出線部を筒状に形成された電流計測部に挿通させている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2013−26597号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、上記従来のトランスモジュールを各種装置の搭載部(例えば基板やヒートシンクなど)に搭載する場合、コイルの引出線部(導線)は可撓性を有するため、コイルの引出線部(導線)を、電流計測部から所定長さだけ外部に引き出した上で、搭載部に対して電気的に接続したり機械的に固定したりする必要がある。また、上記従来のトランスモジュールでは、予めコイルの引出線部の先端部に、搭載部に接続、固定するための端子部(例えば圧着端子など)を設けておく必要がある。
コイルの引出線部は、通電時に発生するコイルの熱を搭載部に逃がす放熱経路もなすが、上記従来のトランスモジュールでは、電流計測部と端子部とが離れて位置するため、上記放熱経路が長くなり、コイルの放熱効率が低い、という問題がある。
【0005】
また、上記従来のトランスモジュールでは、電流計測部と端子部とが離れて位置するため、トランスモジュールの小型化が難しい、という問題もある。また、上記従来のトランスモジュールでは、電流計測部と端子部とが離れて位置するため、搭載部に対するトランスモジュールの搭載面積の拡大を招く虞もある。
さらに、上記従来のトランスモジュールでは、電流計測部から外部に延びるコイルの引出線部が可撓性を有する。このため、引出線部の先端部に設けられた端子部を、搭載部に対して接続、固定する際には、端子部を搭載部に対して位置決めする治具を設けるなど、余分な工数が必要となり、搭載部に対するトランスモジュールの取付効率が低い、という問題もある。
【0006】
本発明は、上述した事情に鑑みたものであって、放熱効率の向上、小型化、及び、搭載部に対する取付効率の向上を図ることができるトランスモジュールを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
この課題を解決するために、本発明のトランスモジュールは、一次側コイル及び二次側コイルを有するトランスと、筒状に形成されて挿通孔を有すると共に、前記一次側コイル及び前記二次側コイルの少なくともいずれか一方のコイルに流れる交流電流を計測する電流計測部と、を備えるトランスモジュールであって、導電性を有すると共に前記電流計測部の挿通孔に挿通される棒状部材を備え、前記一方のコイルが、その巻回部分から外側に引き出される板状の引出板部を備え、前記棒状部材の軸方向の第一端部を前記一方のコイルの引出板部のうち厚さ方向に直交する主面に当接させることで、前記引出板部と前記棒状部材とを電気接続することを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明のトランスモジュールでは、棒状部材の第二端部を搭載部に当接させることで、コイルの引出板部を搭載部に対して電気的に接続したり機械的に固定したりすることが可能となる。このため、一方のコイルの引出板部から搭載部に至る一方のコイルの放熱経路を短く設定でき、一方のコイルの放熱効率の向上を図ることができる。
【0009】
また、本発明のトランスモジュールでは、電流計測部の挿通孔に挿通された棒状部材の第二端部が、搭載部に接続、固定される一方のコイルの端子部をなす。すなわち、一方のコイルの端子部が電流計測部と一体に設けられるため、トランスモジュールの小型化を容易に図ることができる。さらに、一方のコイルの端子部が電流計測部と一体に設けられることで、一方のコイルの端子部と電流計測部とが近くに位置するため、搭載部に対するトランスモジュールの搭載面積の縮小も図ることもできる。
【0010】
さらに、一方のコイルの端子部をなす棒状部材が電流計測部と一体に設けられるため、また、トランスから電流計測部に向けて延びる一方のコイルの引出板部は、従来のコイルの引出線部のような可撓性を有さないため、棒状部材の第二端部を搭載部に対して接続、固定する際には、従来のような位置決め用の治具を設ける必要が無くなる。すなわち、トランスモジュールを搭載部に取り付ける際には、従来のような余分な工数が不要となる。したがって、搭載部に対するトランスモジュールの取付効率を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本発明の第一実施形態に係るトランスモジュールを示す斜視図である。
図2図1のトランスモジュールに備わる一次側コイル及び二次側コイルの構成を示す分解斜視図である。
図3図1のトランスモジュールに備わる一次側コイルの第一端子板部、電流計測部及びその周辺構成を示す断面図である。
図4図3に示すトランスモジュールの第一端子板部を搭載部に取り付けた状態を示す断面図である。
図5】本発明の第二実施形態に係るトランスモジュールに備わる電流計測部及びその周辺構成を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
〔第一実施形態〕
以下、図1〜4を参照して本発明の第一実施形態について説明する。
図1〜3に示すように、本実施形態のトランスモジュール1は、トランス2と、電流計測部3と、筒状部材(棒状部材)4と、を備える。トランス2は、一次側コイル5、二次側コイル6、樹脂部7及びトランスコア8を備える。
【0013】
図1,2に示すように、一次側コイル5は、その巻回部分から後述する樹脂部7の外側に引き出される板状の引出板部12を二つ備える。以下、本実施形態の一次側コイル5の構成について詳細に説明する。
一次側コイル5は、導電性板材からなり、渦巻き状に巻かれた複数の渦巻き板部(巻回部分)11を備える。各渦巻き板部11には、後述するトランスコア8の軸部32を挿通させる孔13が形成されている。
【0014】
本実施形態の一次側コイル5は、四つの渦巻き板部11(11A〜11D)を備える。上側に位置する二つの渦巻き板部11A,11Bは、その内縁側の端部同士が溶接等により接続されることで、直列に接続され、第一直列渦巻きユニット14Aをなしている。また、下側に位置する二つの渦巻き板部11C,11Dも同様にして、直列に接続され、第二直列渦巻きユニット14Bをなしている。各直列渦巻きユニット14A,14Bにおいて、二つの渦巻き板部11,11の間には不図示の絶縁シートが設けられ、二つの渦巻き板部11,11同士の電気的な絶縁が図られている。これら二組の直列渦巻きユニット14A,14Bにそれぞれ備える二つの端子板部15,16は、それぞれ渦巻き板部11の外縁側に位置し、径方向外側に延びている。
【0015】
そして、二組の直列渦巻きユニット14A,14Bは、二つの端子板部15,16同士が溶接等によりそれぞれ接続されることで、並列に接続される。二組の直列渦巻きユニット14A,14Bは、軸方向D1に離れて位置するため、第二直列渦巻きユニット14Bの端子板部15B,16Bは、第一直列渦巻きユニット14Aの端子板部15A,16Aに近づくように軸方向D1に折り曲げられている。
本実施形態では、一次側コイル5に備わる二つの引出板部12が、上記した第一直列渦巻きユニット14Aの端子板部15A,16Aによって構成されている。なお、図示例では、一次側コイル5の引出板部12をなす一つの端子板部16A(第一端子板部16A)が、径方向外側に延びた上で、渦巻き板部11の周方向に屈曲して形成されているが、これに限ることはない。
【0016】
二次側コイル6は、一次側コイル5と同様に、その巻回部分から後述する樹脂部7の外側に引き出される板状の引出板部22を備える。
二次側コイル6は、導電性板材からなり、円環状に形成された二つのリング板部(巻回部分)21を備える。各リング板部21は、一周よりも若干短く形成され、平面視C字状を呈している。二つのリング板部21は、その周方向の端部同士が溶接等により接続されることで、直列に接続される。すなわち、本実施形態の二次側コイル6は、二周よりも若干短い渦巻き状に形成されている。なお、二次側コイル6において、二つのリング板部21の間には、不図示の絶縁シートが設けられ、リング板部21同士の電気的な絶縁が図られている。
【0017】
そして、二次側コイル6の両端をなす二つのリング板部21の周方向の各第一端部には、径方向外側に延びて後述する樹脂部7の外側に引き出される板状の端子板部25A,25Bが形成されている。また、一方のリング板部21Aのうち他方のリング板部21Bに接続される周方向の第二端部にも、径方向外側に延びて後述する樹脂部7の外側に引き出される板状の端子板部25Cが形成されている。これら三つの端子板部25A〜25Cが二次側コイル6の引出板部22をなす。
【0018】
以上のように構成される二次側コイル6は、一次側コイル5の二つの直列渦巻きユニット14A,14Bの間に配される。このため、二次側コイル6と各直列渦巻きユニット14A,14Bとの間には、不図示の絶縁シートが設けられ、一次側コイル5と二次側コイル6との電気的な絶縁が図られている。
また、一次側コイル5及び二次側コイル6は、これらの引出板部12,22をなす端子板部15A,16A,25A〜25Cが相互に逆向きで径方向外側に延びるように配される。これら一次側コイル5及び二次側コイル6の端子板部15A,16A,25A〜25Cには、その厚さ方向に貫通する貫通孔17,27が形成されている。
【0019】
樹脂部7は、引出板部12,22をなす端子板部15A,16A,25A〜25Cを除く一次側コイル5及び二次側コイル6の部分を封止して一体に固定するものである。樹脂部7は、渦巻き板部11やリング板部21、一次側コイル5における渦巻き板部11A〜11Dの端子板部15,16同士の接続部分を覆うように形成され、略円筒状の外観を有する。
【0020】
トランスコア8は、磁性体からなり、樹脂部7によって封止された一次側コイル5及び二次側コイル6の軸方向D1から挟み込む一対のベース部31と、一次側コイル5及び二次側コイル6に挿通されて二つのベース部31同士を接続する軸部32と、一次側コイル5及び二次側コイル6の外周側に配されて二つのベース部31同士を接続する外郭部33とを備える。図示例のトランスコア8は、軸部32及び外郭部33を一次側コイル5及び二次側コイル6の軸方向D1に分割して構成されているが、これに限ることはない。
【0021】
図1,3に示すように、電流計測部3は、一次側コイル5に流れる交流電流を計測するものである。電流計測部3は、筒状に形成されて挿通孔41を有する。電流計測部3は、計測部本体42と、計測部本体42を収容する収容ケース部43とを備える。
本実施形態の計測部本体42は、カレントトランスを構成するものであり、リング状のカレントコア44と、カレントコア44に巻回された二次巻線45と、を備える。
【0022】
収容ケース部43は、絶縁材料からなり、カレントコア44の内周側を覆う内側筒状部46と、カレントコア44の外周側を覆う外側筒状部47と、平面視環状に形成され、カレントコア44の軸方向D1の両端部を覆う一対の被覆環状板部48A,48Bと、を備える。前述した収容ケース部43の挿通孔41は、内側筒状部46によって形成されている。
本実施形態では、内側筒状部46、外側筒状部47及び一方の被覆環状板部48Aが、耐熱性を有する樹脂材料によって一体に形成されている。他方の被覆環状板部48Bは、絶縁シート等からなり、内側筒状部46、外側筒状部47及び一方の被覆環状板部48Aと別個に形成されている。
【0023】
また、本実施形態の収容ケース部43には、収容ケース部43内に設けられた二次巻線45の引出線部(不図示)を外部に接続するための外部端子部49が一体に固定されている。二次巻線45の引出線部は、例えば外部端子部49に絡げた上ではんだ付け等により固定される。
【0024】
筒状部材4は、導電性を有するものであり、筒状部材4の軸方向が上記した電流計測部3の挿通孔41に一致するように電流計測部3の挿通孔41に挿通される。筒状部材4は、電流計測部3を構成する収容ケース部43に一体に固定されている。筒状部材4は、例えば接着により収容ケース部43の挿通孔41の内周面に固定されてもよいし、例えば収容ケース部43の内側筒状部46、外側筒状部47及び一方の被覆環状板部48Aを成形する際に固定されてもよい。
上記のように筒状部材4が電流計測部3に取り付けられた状態では、筒状部材4の軸方向の両端部(第一端部4A及び第二端部4B)が、電流計測部3の挿通孔41の開口端と同一平面をなしてもよいし、挿通孔41の開口端から突出してもよい。
【0025】
収容ケース部43の一方の被覆環状板部48A側に位置する筒状部材4の軸方向の第一端部4Aは、前述した一次側コイル5の第一端子板部16A(引出板部12)のうち厚さ方向に直交する主面に当接している。本実施形態では、第一端子板部16Aの貫通孔17が筒状部材4の内部に連通するように、筒状部材4の第一端部4Aが第一端子板部16Aの主面に当接している。これにより、一次側コイル5の第一端子板部16Aと筒状部材4とが電気接続される。また、第一端子板部16Aと筒状部材4とが電気接続されることで、筒状部材4がカレントトランスの一次巻線として機能し、電流計測部3により一次側コイル5に流れる交流電流を計測することができる。
【0026】
本実施形態では、収容ケース部43が一次側コイル5の第一端子板部16Aに固定されている。これにより、筒状部材4の第一端部4Aと第一端子板部16Aとの当接状態が保持されている。第一端子板部16Aは、収容ケース部43の一方の被覆環状板部48Aに対して、例えば接着により固定されてもよいし、例えば収容ケース部43の内側筒状部46、外側筒状部47及び一方の被覆環状板部48Aを成形する際に固定されてもよい。
【0027】
また、本実施形態では、収容ケース部43がトランス2に固定されている。収容ケース部43の内側筒状部46、外側筒状部47及び一方の被覆環状板部48Aは、トランス2の樹脂部7と一体に成形されている。収容ケース部43の内側筒状部46、外側筒状部47及び一方の被覆環状板部48Aを構成する樹脂材料は、樹脂部7と同じであってもよいが、例えば異なっていてもよい。この場合、内側筒状部46、外側筒状部47及び一方の被覆環状板部48Aを構成する樹脂材料は、樹脂部7を構成する樹脂材料よりも耐熱性が高くてもよい。
【0028】
以上のように構成される本実施形態のトランスモジュール1は、例えば図4に示すように、各種装置の搭載部50に搭載される。
本実施形態の搭載部50は、配線パターンが形成された配線基板51と、配線基板51の上面51a(搭載面)に設けられて一次側コイル5及び二次側コイル6の各引出板部12,22(端子板部15A,16A,25A〜25C)をネジ止めにより配線基板51に固定するための雌ねじ部52と、を備える。
【0029】
配線基板51は、任意であってよいが、例えば熱伝導性に優れる銅基板やアルミナ基板であることが好ましい。雌ねじ部52は、配線基板51上に固定された台座部53と、台座部53に取り付けられたナット54と、を備える。台座部53は上方に開口する孔部55を有する。ナット54は、台座部53の孔部55の開口端部に固定されている。
また、搭載部50は、配線基板51の上面51aから雌ねじ部52のナット54上まで延びて形成され、一次側コイル5及び二次側コイル6の各端子板部を配線基板51に電気接続させるための配線板部56(バスバー)を備える。配線板部56の長手方向の第一端部はナット54上に配される。配線板部56の第二端部は、配線基板51上に配され、はんだ付け等により配線基板51の配線パターンと電気接続される。
【0030】
次に、上記した搭載部50にトランスモジュール1を取り付ける方法(取付方法)について述べる。ここでは、特に一次側コイル5の第一端子板部16Aを搭載部50に対して機械的に固定すると共に、電気的に接続する方法について説明する。一次側コイル5の他の端子板部15A(引出板部12)及び二次側コイル6の端子板部25A〜25C(引出板部22)の機械的な固定、電気的な接続は、第一端子板部16Aの場合と同様に行うことができるため、その説明を省略する。
【0031】
一次側コイル5の第一端子板部16Aを搭載部50に固定するためには、ネジ(雄ねじ)60の軸部61を第一端子板部16Aの貫通孔17及び筒状部材4に挿通させた上で、搭載部50のナット54に螺着させればよい。これにより、第一端子板部16A及び筒状部材4が、ネジ60の頭部62と搭載部50(特にナット54)との間に挟み込まれて搭載部50に固定される。
また、筒状部材4の軸方向の第二端部4Bとナット54との間には、配線板部56の第二端部が介在しているため、上記のようにネジ止めした状態では、筒状部材4の第二端部4Bが配線板部56の第二端部に当接する。これにより、一次側コイル5の第一端子板部16Aが、筒状部材4及び配線板部56を介して配線基板51の配線パターンに電気接続される。
【0032】
以上説明したように、本実施形態のトランスモジュール1によれば、電流計測部3に挿通された筒状部材4の第一端部4Aに一次側コイル5の第一端子板部16Aを当接させ、筒状部材4の第二端部4Bを搭載部50(配線板部56)に当接させることで、一次側コイル5の第一端子板部16Aを搭載部50に対して機械的に固定したり電気的に接続したりすることができる。このため、一次側コイル5の第一端子板部16Aから搭載部50に至る一次側コイル5の放熱経路を短く設定でき、一次側コイル5の放熱効率の向上を図ることができる。
また、電流計測部3の挿通孔41に挿通された筒状部材4の第二端部4Bが、搭載部50に接続、固定される一次側コイル5の端子部をなす。すなわち、一次側コイル5の端子部が電流計測部3と一体に設けられるため、トランスモジュール1の小型化を容易に図ることができる。さらに、一次側コイル5の端子部が電流計測部3と一体に設けられることで、一次側コイル5の端子部と電流計測部3とが近くに位置するため、搭載部50に対するトランスモジュール1の搭載面積の縮小も図ることもできる。
【0033】
さらに、本実施形態のトランスモジュール1では、一次側コイル5の端子部をなす筒状部材4が電流計測部3と一体に設けられる上に、トランス2から電流計測部3に向けて延びる一次側コイル5の第一端子板部16Aが、従来のコイルの引出線部のような可撓性を有さない。このため、筒状部材4の第二端部4Bを搭載部50に対して接続、固定する際には、従来のような位置決め用の治具を設ける必要が無くなる。すなわち、トランスモジュール1を搭載部50に取り付ける際には、従来のような余分な工数が不要となり、搭載部50に対するトランスモジュール1の取付効率を向上させることができる。
【0034】
また、本実施形態のトランスモジュール1によれば、一次側コイル5の第一端子板部16A及び筒状部材4がネジ60を挿通させるように形成されているため、一次側コイル5の第一端子板部16A、筒状部材4及び電流計測部3をネジ止めによって容易に搭載部50に一括固定することができる。
さらに、一次側コイル5の第一端子板部16A及び筒状部材4をネジ止めによって搭載部50に固定する場合には、第一端子板部16A及び筒状部材4がネジ60の頭部62と搭載部50との間に挟み込まれるため、筒状部材4の第一端部4Aを確実に第一端子板部16Aの主面に当接させることができる。したがって、第一端子板部16Aと筒状部材4との導通を確実に図ることができる。また、ネジ止め固定の場合には、筒状部材4の第二端部4Bを確実に搭載部50(配線板部56)に当接させ、筒状部材4と搭載部50(配線板部56)との導通も確実に図ることができる。
【0035】
また、本実施形態のトランスモジュール1によれば、筒状部材4が電流計測部3の収容ケース部43に一体に固定されるため、筒状部材4及び電流計測部3の取り扱いが容易となる。さらに、一次側コイル5の第一端子板部16Aに対する収容ケース部43(電流計測部3)の固定、及び、筒状部材4の第一端部4Aの当接を一括して行うことが可能となる。したがって、トランスモジュール1の製造効率向上を図ることができる。
【0036】
また、本実施形態のトランスモジュール1によれば、一次側コイル5の第一端子板部16Aが収容ケース部43に固定されるため、第一端子板部16A及び電流計測部3を一括して搭載部50上に配することが可能となる。これにより、搭載部50に対するトランスモジュール1の取り付け工数を削減して、取り付け作業を容易に行うことができる。
【0037】
また、本実施形態のトランスモジュール1によれば、電流計測部3の収容ケース部43がトランス2の樹脂部7と一体に成形されている。これにより、収容ケース部43及び樹脂部7を一つの金型で成形することが可能となるため、収容ケース部43及び樹脂部7を別個に成形する場合と比較して、トランスモジュール1の製造コスト削減を図ることができる。
【0038】
さらに、本実施形態のトランスモジュール1では、電流計測部3の収容ケース部43が耐熱性を有する樹脂材料からなるため、計測部本体42の二次巻線45の引出線部を外部端子部49にはんだ付けしても、収容ケース部43がはんだ付けによる熱によって変形することを防止できる。
【0039】
〔第二実施形態〕
次に、図5を参照して本発明の第二実施形態について説明する。
この実施形態のトランスモジュール1は、第一実施形態のトランスモジュール1と比較して、主に一次側コイル5の第一端子板部と収容ケース部との固定構造が異なっている。本実施形態では、第一実施形態のトランスモジュール1と同一の構成要素について同一符号を付す等して、その説明を省略する。
【0040】
図5に示すように、本実施形態の電流計測部3の収容ケース部43には、一次側コイル5の第一端子板部16Aに係合する係合爪部70が形成されている。以下、具体的に説明する。
本実施形態の電流計測部3の収容ケース部43は、第一実施形態と同様の内側筒状部46、外側筒状部47及び一対の被覆環状板部48A,48Bを備える。また、内側筒状部46、外側筒状部47及び一方の被覆環状板部48Aは、耐熱性を有する樹脂材料によって一体に形成され、ケース本体40を構成している。さらに、他方の被覆環状板部48Bは、絶縁シート等からなり、内側筒状部46、外側筒状部47及び一方の被覆環状板部48Aと別個に形成されている。
【0041】
前述した係合爪部70は、ケース本体40の開口端部をなす外側筒状部47の端部から収容ケース部43の軸方向に延びて形成されている。本実施形態では、係合爪部70が外側筒状部47の径方向に相対する位置に一対形成されている。各係合爪部70は、外側筒状部47に対してその径方向に弾性的に撓み変形可能となっている。各係合爪部70の先端には、第一端子板部16Aに引っ掛けるための鉤部71が形成されている。各鉤部71は、外側筒状部47に対して収容ケース部43の径方向外側に突出している。
この収容ケース部43は、ケース本体40の開口端部が第一端子板部16Aの主面に対向するように配される。
【0042】
一方、第一端子板部16Aには、上記した一対の係合爪部70をそれぞれ挿通させる一対の係合孔部18が形成されている。
そして、係合爪部70を係合孔部18に挿通させた状態では、係合爪部70の鉤部71が第一端子板部16Aの主面と反対側の面(裏面)に当接する。これにより、収容ケース部43が第一端子板部16Aに取り付けられる。また、係合爪部70の鉤部71が第一端子板部16Aの裏面に当接した状態では、例えば図5のように、収容ケース部43に固定された筒状部材4の第一端部4Aが第一端子板部16Aの主面に当接してもよい。この場合には、収容ケース部43を第一端子板部16Aに取り付けるだけで、第一端子板部16Aと筒状部材4とを電気接続できる。
【0043】
本実施形態のトランスモジュールによれば、第一実施形態と同様の効果を奏する。
また、本実施形態のトランスモジュールによれば、係合爪部70によって収容ケース部43と第一端子板部16Aとを係合させるだけで、電流計測部3を容易に第一端子板部16Aに取り付ける(固定する)ことができる。また、第一端子板部16Aと筒状部材4とを容易に電気接続することが可能となる。
【0044】
以上、上記実施形態により本発明の詳細を説明したが、本発明は上述した実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において種々の変更を加えることが可能である。
例えば、上記実施形態では、筒状部材4が電流計測部3の挿通孔41内に固定されるが、特に固定されなくてもよい。この場合でも図4に例示した第一実施形態の場合と同様にネジ止めすることで、一次側コイル5の第一端子板部16Aと搭載部50(配線板部56)との間に、筒状部材4を挟み込んで固定することができる。
【0045】
また、上記実施形態では、電流計測部3の挿通孔41内に導電性を有する筒状部材4が固定されるが、例えば導電性を有する棒状部材が固定されてもよい。この場合でも、例えば棒状部材に雌ねじを形成することで、電流計測部3及びこれに固定された一次側コイル5の第一端子板部16Aを搭載部50にネジ止めにより固定することが可能である。
【0046】
さらに、上記実施形態の電流計測部3は、一次側コイル5に流れる交流電流を計測するように設けられているが、例えば二次側コイル6に流れる交流電流を計測するように設けられてもよい。この場合には、上記実施形態と同様にして、電流計測部3が二次側コイル6の引出板部22(端子板部25A〜25C)に取り付けられればよい。
【0047】
上記実施形態の電流計測部3の計測部本体42は、カレントトランス2を構成しているが、これに限ることはない。計測部本体42は、例えば特開2013−26597号公報と同様のホールセンサであってもよい。
【0048】
また、一次側コイル5を構成する二組の直列渦巻きユニット14A,14Bは、並列に接続されることに限らず、例えば直列に接続されてもよい。さらに、一次側コイル5を構成する渦巻き板部11の数は上記実施形態のものに限らず、少なくとも二つ以上であればよい。
【符号の説明】
【0049】
1 トランスモジュール
2 トランス
3 電流計測部
4 筒状部材(棒状部材)
4A 第一端部
4B 第二端部
5 一次側コイル
6 二次側コイル
7 樹脂部
11 渦巻き板部(巻回部分)
12 引出板部
15,15A,15B,16,16A,16B 端子板部
17 貫通孔
21 リング板部(巻回部分)
22 引出板部
25A,25B,25C 端子板部
41 挿通孔
42 計測部本体
43 収容ケース部
70 係合爪部
図1
図2
図3
図4
図5