特許第6200831号(P6200831)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 日本電気硝子株式会社の特許一覧 ▶ ニューマンパワーサービス株式会社の特許一覧

特許6200831ガラスチョップドストランドの製造装置、ゴムロールの表面維持方法、及びガラスチョップドストランドの製造方法
<>
  • 特許6200831-ガラスチョップドストランドの製造装置、ゴムロールの表面維持方法、及びガラスチョップドストランドの製造方法 図000002
  • 特許6200831-ガラスチョップドストランドの製造装置、ゴムロールの表面維持方法、及びガラスチョップドストランドの製造方法 図000003
  • 特許6200831-ガラスチョップドストランドの製造装置、ゴムロールの表面維持方法、及びガラスチョップドストランドの製造方法 図000004
  • 特許6200831-ガラスチョップドストランドの製造装置、ゴムロールの表面維持方法、及びガラスチョップドストランドの製造方法 図000005
  • 特許6200831-ガラスチョップドストランドの製造装置、ゴムロールの表面維持方法、及びガラスチョップドストランドの製造方法 図000006
  • 特許6200831-ガラスチョップドストランドの製造装置、ゴムロールの表面維持方法、及びガラスチョップドストランドの製造方法 図000007
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6200831
(24)【登録日】2017年9月1日
(45)【発行日】2017年9月20日
(54)【発明の名称】ガラスチョップドストランドの製造装置、ゴムロールの表面維持方法、及びガラスチョップドストランドの製造方法
(51)【国際特許分類】
   C03B 37/16 20060101AFI20170911BHJP
   B28D 1/22 20060101ALI20170911BHJP
【FI】
   C03B37/16
   B28D1/22
【請求項の数】23
【全頁数】20
(21)【出願番号】特願2014-33900(P2014-33900)
(22)【出願日】2014年2月25日
(65)【公開番号】特開2014-193800(P2014-193800A)
(43)【公開日】2014年10月9日
【審査請求日】2016年11月7日
(31)【優先権主張番号】特願2013-40897(P2013-40897)
(32)【優先日】2013年3月1日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000232243
【氏名又は名称】日本電気硝子株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】513066915
【氏名又は名称】ニューマンパワーサービス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100141586
【弁理士】
【氏名又は名称】沖中 仁
(72)【発明者】
【氏名】山下 泰樹
(72)【発明者】
【氏名】松原 正典
(72)【発明者】
【氏名】青木 敏之
【審査官】 飯濱 翔太郎
(56)【参考文献】
【文献】 特開平07−041333(JP,A)
【文献】 特開2000−158382(JP,A)
【文献】 特開2000−326283(JP,A)
【文献】 特開平08−141983(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C03B 37/00−37/16
B28D 1/00− 7/04
B26D 1/25− 1/62
B26D 7/00−11/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
上流から供給されるガラスストランドを下流に搬送するゴムロールと、
前記ゴムロールの表面に当接して回転しながら前記ガラスストランドを切断するカッターロールと、
前記ゴムロールの表面を当該ゴムロールの幅方向に往復移動しながら研磨し、前記ゴムロールの径の減少に応じて前記ゴムロールに近接する研磨手段と、
を備えたガラスチョップドストランドの製造装置であって、
前記ゴムロールの径の減少に応じて単位時間あたりの前記ゴムロールの研磨量が増加するように、前記ゴムロールに対する前記研磨手段の状態が変更可能に構成されているガラスチョップドストランドの製造装置。
【請求項2】
単位時間あたりの前記ゴムロールの径の減少量が増加するように、前記ゴムロールに対する前記研磨手段の状態が変更可能に構成されている請求項1に記載のガラスチョップドストランドの製造装置。
【請求項3】
前記ゴムロールの径の減少に応じて前記ゴムロールの研磨量の増加率が上昇するように、前記ゴムロールに対する前記研磨手段の状態が変更可能に構成されている請求項1又は2に記載のガラスチョップドストランドの製造装置。
【請求項4】
前記ゴムロールの径の減少に応じて前記研磨手段の平均往復移動速度が増加するように、前記研磨手段の状態が設定される請求項1〜3の何れか一項に記載のガラスチョップドストランドの製造装置。
【請求項5】
前記ゴムロールの径が減少するに連れて前記平均往復移動速度の増加率が小さくなるように、前記研磨手段の状態が設定される請求項4に記載のガラスチョップドストランドの製造装置。
【請求項6】
前記研磨手段は、往復移動における、移動方向が変わる時に前記ゴムロールに近接し、前記ゴムロールの径の減少に応じて前記研磨手段が前記ゴムロールに近接する近接移動距離が増加するように、前記研磨手段の状態が設定される請求項1〜5の何れか一項に記載のガラスチョップドストランドの製造装置。
【請求項7】
前記ゴムロールの径の減少に応じて前記研磨手段の往復移動を一時的に停止させるように、前記研磨手段の状態が設定される請求項1〜6の何れか一項に記載のガラスチョップドストランドの製造装置。
【請求項8】
前記ゴムロールの径の減少に応じて前記研磨手段の往復移動を部分的に減速させるように、前記研磨手段の状態が設定される請求項1〜6の何れか一項に記載のガラスチョップドストランドの製造装置。
【請求項9】
前記研磨手段が一定速度で往復移動する定速移動期間と、一時的に停止する停止期間とが設けられる請求項4に記載のガラスチョップドストランドの製造装置。
【請求項10】
前記研磨手段の往復移動における、移動方向が変わる時に前記研磨手段の状態が変更可能に構成されている請求項4に記載のガラスチョップドストランドの製造装置。
【請求項11】
製造したガラスチョップドストランドに前記ゴムロールの研磨屑が混入することを防止する混入防止手段を備えている請求項1〜10の何れか一項に記載のガラスチョップドストランドの製造装置。
【請求項12】
上流から供給されるガラスストランドをゴムロールにより下流に搬送する搬送工程と、
前記ゴムロールの表面にカッターロールを当接させた状態で、当該カッターロールを回転させながら前記ガラスストランドを切断する切断工程と、
当該ゴムロールの幅方向に研磨手段を往復移動させて、前記ゴムロールの表面を研磨する研磨工程と、
を包含するガラスチョップドストランドの製造に用いるゴムロールの表面維持方法であって、
前記研磨工程において、前記ゴムロールの径の減少に応じて単位時間あたりの前記ゴムロールの研磨量が増加するように、前記ゴムロールに対する前記研磨手段の状態を変更させるゴムロールの表面維持方法。
【請求項13】
前記研磨工程において、単位時間あたりの前記ゴムロールの径の減少量が増加するように、前記研磨手段の状態が設定される請求項12に記載のゴムロールの表面維持方法。
【請求項14】
前記研磨工程において、前記ゴムロールの径の減少に応じて前記ゴムロールの研磨量の増加率が上昇するように、前記研磨手段の状態が設定される請求項12又は13に記載のゴムロールの表面維持方法。
【請求項15】
前記研磨工程において、前記ゴムロールの径の減少に応じて前記研磨手段の平均往復移動速度が増加するように、前記研磨手段の状態が設定される請求項12〜14の何れか一項に記載のゴムロールの表面維持方法。
【請求項16】
前記研磨工程において、前記ゴムロールの径が減少するに連れて前記平均往復移動速度の増加率が小さくなるように、前記研磨手段の状態が設定される請求項15に記載のゴムロールの表面維持方法。
【請求項17】
前記研磨工程において、前記研磨手段の往復移動における、移動方向が変わる時に前記ゴムロールに近接し、前記ゴムロールの径の減少に応じて前記研磨手段が前記ゴムロールに近接する近接移動距離が増加するように、前記研磨手段の状態が設定される請求項12〜16の何れか一項に記載のゴムロールの表面維持方法。
【請求項18】
前記研磨工程において、前記ゴムロールの径の減少に応じて前記研磨手段の往復移動を一時的に停止させるように、前記研磨手段の状態が設定される請求項12〜17の何れか一項に記載のゴムロールの表面維持方法。
【請求項19】
前記研磨工程において、前記ゴムロールの径の減少に応じて前記研磨手段の往復移動を部分的に減速させるように、前記研磨手段の状態が設定される請求項12〜17の何れか一項に記載のゴムロールの表面維持方法。
【請求項20】
前記研磨工程において、前記研磨手段が一定速度で往復移動する定速移動期間と、一時的に停止する停止期間とが設けられる請求項15に記載のゴムロールの表面維持方法。
【請求項21】
前記研磨工程において、前記研磨手段の往復移動における、移動方向が変わる時に前記研磨手段の状態が変更される請求項15に記載のゴムロールの表面維持方法。
【請求項22】
前記ゴムロールを所定の頻度で取り外して前記ゴムロールの表面の再生を行う再生工程を実行する請求項12〜21の何れか一項に記載のゴムロールの表面維持方法。
【請求項23】
上流から供給されるガラスストランドをゴムロールにより下流に搬送する搬送工程と、
前記ゴムロールの表面にカッターロールを当接させた状態で、当該カッターロールを回転させながら前記ガラスストランドを切断する切断工程と、
を包含するガラスチョップドストランドの製造方法であって、
前記切断工程の実行中に、前記ゴムロールの幅方向に研磨手段を往復移動させて、前記ゴムロールの表面を研磨する研磨工程を実行し、当該研磨工程において、前記ゴムロールの径の減少に応じて単位時間あたりの前記ゴムロールの研磨量が増加するように、前記ゴムロールに対する前記研磨手段の状態を変更させるガラスチョップドストランドの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ゴムロールとカッターロールとを備えたガラスチョップドストランドの製造装置、当該ゴムロールの表面維持方法、及びガラスチョップドストランドの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ガラスチョップドストランドは、ガラスモノフィラメントを数百〜数千本まとめて形成したガラス繊維ストランド(以下、単にガラスストランドと称する)を一定の長さに切断することにより製造される。ガラスストランドの切断工程は、上流から供給されるガラスストランドをゴムロールの表面に載せた状態で、当該ゴムロールの表面にカッターロールを当接させて回転させることにより行われる。カッターロールの表面には、切断刃が等間隔で回転軸を中心に放射状に取り付けられている。ガラスストランドがカッターロールとゴムロールとの間に送り込まれると、ガラスストランドはカッターロールによって一定の長さの短繊維に切断され、ガラスチョップドストランドが生成する。
【0003】
ゴムロールの表面は、カッターロールの切断刃が直接当たるため、傷等が付いて徐々に荒れた状態となる。ゴムロールの表面が荒れた状態のままガラスストランドの切断工程を継続すると、ガラスストランドがゴムロールの表面の傷に沈み込んで切断刃が十分に当たらなくなるため、ガラスストランドを完全に切断できなくなる虞がある。そこで、従来では、ゴムロールの表面をできるだけ長持ちさせるための工夫や、荒れたゴムロールの表面を研磨することで、平滑な状態に復活させる試みが行われている。
【0004】
例えば、特許文献1の長繊維切断装置は、ゴムロールの幅方向に一定速度で往復移動しながらゴムロールの表面を研磨する研磨手段を備えており、長繊維切断装置を稼働させながら研磨手段により荒れたゴムロールの表面を平滑にしている。
【0005】
特許文献2のカッター装置は、カッターロールの切断刃の円周方向における間隔、及び切断刃の厚さを所定範囲に調整することにより、ゴムロールの表面に形成されるカッターロールの刃形が切断刃のピッチと一致するようにして、ゴムロールの表面の劣化の進行を抑制している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平7−41333号公報
【特許文献2】特開2000−301487号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ガラスチョップドストランドの製造中、ゴムロールはカッターロールの切断刃によって削られるため、ゴムロールの径が徐々に減少する。一方、ゴムロールの周速は、ガラスチョップドストランドの繊維長を一定に揃えるため、一定の速さに設定されている。従って、ゴムロールの径が減少するとゴムロールの回転数が増加し、それに伴ってゴムロールと切断刃との当接回数が増加することになる。その結果、ゴムロールの表面の劣化速度は、ゴムロールの径の減少に伴って急増することになる。
【0008】
上記したように、特許文献1の長繊維切断装置は、ゴムロールの表面を研磨する研磨手段を備えるが、ゴムロールの表面の劣化速度は一定ではなく、ゴムロールの径の減少に伴って増加する。ここで、研磨手段の研磨速度(ゴムロールの幅方向に移動する研磨手段の速度)をゴムロールの径が小さくなった際のゴムロールの劣化速度に合わせると(研磨速度を速く設定すると)、ゴムロールの表面が過剰に削られてゴムロールの寿命が短くなる虞がある。また、研磨手段の研磨速度をガラスチョップドストランドの製造開始直後のゴムロールの劣化速度に合わせると(研磨速度を遅く設定すると)、ゴムロールの径の減少に伴ってゴムロールの表面を十分研磨することができなくなる。この場合、ゴムロールを取り外して再生する必要が生じるため、ガラスチョップドストランドの生産効率が低下する虞がある。
【0009】
特許文献2のカッター装置では、切断刃の円周方向における間隔、及び切断刃の厚さを調整してゴムロールの表面の劣化の進行を抑制している。しかし、切断刃の間隔及び厚さを調整するだけでは、カッターロールの刃形と切断刃のピッチとを完全に一致させることは難しく、時間の経過とともに両者間にずれが生じることになる。その結果、ゴムロールの表面に鋸状の刃形が形成され、ゴムロールの寿命が短くなる虞がある。
【0010】
本発明は、上記問題点に鑑みてなされたものであり、カッターロールの当接によってゴムロールの径の減少が進行した状況でも、ゴムロールの荒れた表面を研磨して一定の平滑な状態に維持し、カッターロールによるガラスストランドの切断を継続的に行うことができるとともに、ゴムロールの寿命を延ばすことができるガラスチョップドストランドの製造装置を提供することを目的とする。また、本発明は、当該ガラスチョップドストランドの製造装置に用いるゴムロールの表面維持方法を提供し、さらには、ガラスチョップドストランドの製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記課題を解決するための本発明に係るガラスチョップドストランドの製造装置の特徴構成は、
上流から供給されるガラスストランドを下流に搬送するゴムロールと、
前記ゴムロールの表面に当接して回転しながら前記ガラスストランドを切断するカッターロールと、
前記ゴムロールの表面を当該ゴムロールの幅方向に往復移動しながら研磨し、前記ゴムロールの径の減少に応じて前記ゴムロールに近接する研磨手段と、
を備えたガラスチョップドストランドの製造装置であって、
前記ゴムロールの径の減少に応じて単位時間あたりの前記ゴムロールの研磨量が増加するように、前記ゴムロールに対する前記研磨手段の状態が変更可能に構成されていることにある。
【0012】
本構成のガラスチョップドストランドの製造装置は、ゴムロールの径の減少に応じて単位時間あたりのゴムロールの研磨量が増加するように、ゴムロールに対する研磨手段の状態が変更可能であるため、ゴムロールの表面は常に適切に研磨された状態となり、その結果、カッターロールによるガラスストランドの切断を継続的に行うことが可能となる。そして、表面が適切に研磨されたゴムロールを使用することで、ガラスストランドの切断不良が発生し難くなり、ガラスチョップドストランドの品質向上にも寄与し得るものとなる。また、ガラスチョップドストランドの製造開始直後のゴムロールの表面の過剰な研磨を抑えることができるため、ゴムロールの寿命を延ばすことができる。
【0013】
本発明に係るガラスチョップドストランドの製造装置において、
単位時間あたりの前記ゴムロールの径の減少量が増加するように、前記ゴムロールに対する前記研磨手段の状態が変更可能に構成されていることが好ましい。
【0014】
本構成のガラスチョップドストランドの製造装置は、単位時間あたりのゴムロールの径の減少量が増加するように、ゴムロールに対する研磨手段の状態が変更可能であるため、ゴムロールの表面の研磨量を適切に維持することができる。これにより、ガラスストランドの切断中はゴムロールの表面が平滑な状態に維持され、その結果、ガラスストランドの切断不良が発生し難くなり、ガラスチョップドストランドの品質向上に寄与し得るものとなる。また、ガラスチョップドストランドの製造開始直後のゴムロールの表面の過剰な研磨を抑えることができるため、ゴムロールの寿命を延ばすことができる。
【0015】
本発明に係るガラスチョップドストランドの製造装置において、
前記ゴムロールの径の減少に応じて前記ゴムロールの研磨量の増加率が上昇するように、前記ゴムロールに対する前記研磨手段の状態が変更可能に構成されていることが好ましい。
【0016】
本構成のガラスチョップドストランドの製造装置は、ゴムロールの径の減少に応じてゴムロールの研磨量の増加率が上昇するように、ゴムロールに対する研磨手段の状態が変更可能であるため、ゴムロールの表面の研磨量を適切に維持することができる。これにより、ガラスストランドの切断中はゴムロールの表面が平滑な状態に維持され、その結果、ガラスストランドの切断不良が発生し難くなり、ガラスチョップドストランドの品質向上に寄与し得るものとなる。また、ガラスチョップドストランドの製造開始直後のゴムロールの表面の過剰な研磨を抑えることができるため、ゴムロールの寿命を延ばすことができる。
【0017】
本発明に係るガラスチョップドストランドの製造装置において、
前記ゴムロールの径の減少に応じて前記研磨手段の平均往復移動速度が増加するように、前記研磨手段の状態が設定されることが好ましい。
【0018】
本構成のガラスチョップドストランドの製造装置は、ゴムロールの径の減少に応じて研磨手段の平均往復移動速度が増加するように、研磨手段の状態が設定されているため、ゴムロールの径の減少によるゴムロールの劣化速度の増加に合わせて、研磨手段のゴムロールの表面の研磨量を増加させることができる。その結果、カッターロールの当接によってゴムロールの径の減少が進行した状況でも、ゴムロールの荒れた表面を研磨して一定の平滑な状態に維持し、カッターロールによるガラスストランドの切断を継続的に行うことが可能となる。また、ガラスチョップドストランドの製造開始直後のゴムロールの表面の過剰な研磨を抑えることができるため、ゴムロールの寿命を延ばすことができる。
【0019】
本発明に係るガラスチョップドストランドの製造装置において、
前記ゴムロールの径が減少するに連れて前記平均往復移動速度の増加率が小さくなるように、前記研磨手段の状態が設定されることが好ましい。
【0020】
本構成のガラスチョップドストランドの製造装置は、ゴムロールの径が減少するに連れて平均往復移動速度の増加率が小さくなるように、研磨手段の状態が設定されているため、ゴムロールの径の減少によるゴムロールの劣化速度の増加に合わせて、研磨手段のゴムロールの表面の研磨量を増加させることができる。その結果、カッターロールの当接によってゴムロールの径の減少が進行した状況でも、ゴムロールの荒れた表面を過不足なく研磨して一定の平滑な状態に維持し、カッターロールによるガラスストランドの切断を継続的に行うことが可能となる。
【0021】
本発明に係るガラスチョップドストランドの製造装置において、
前記研磨手段は、往復移動における、移動方向が変わる時に前記ゴムロールに近接し、前記ゴムロールの径の減少に応じて前記研磨手段が前記ゴムロールに近接する近接移動距離が増加するように、前記研磨手段の状態が設定されることが好ましい。
【0022】
本構成のガラスチョップドストランドの製造装置は、研磨手段が、往復移動における、移動方向が変わる時にゴムロールに近接し、ゴムロールの径の減少に応じて研磨手段がゴムロールに近接する近接移動距離が増加するように、研磨手段の状態が設定されているため、ゴムロールの径の減少によるゴムロールの劣化速度の増加に合わせて、研磨手段はゴムロールへの押圧力を増加させることができ、その結果、ゴムロールの表面の研磨量を増加させることができる。従って、ガラスチョップドストランドの製造開始直後のゴムロールの表面の研磨不足や過剰な研磨を抑えることができる。
【0023】
本発明に係るガラスチョップドストランドの製造装置において、
前記ゴムロールの径の減少に応じて前記研磨手段の往復移動を一時的に停止させるように、前記研磨手段の状態が設定されることが好ましい。
【0024】
本構成のガラスチョップドストランドの製造装置は、ゴムロールの径の減少に応じて研磨手段の往復移動を一時的に停止させるように、研磨手段の状態が設定されているため、研磨手段のオン/オフ操作のみでゴムロールの研磨量を簡単に調整することができる。また、停止時に研磨手段を取り外してメンテナンスや交換等を行うことも容易となる。
【0025】
本発明に係るガラスチョップドストランドの製造装置において、
前記ゴムロールの径の減少に応じて前記研磨手段の往復移動を部分的に減速させるように、前記研磨手段の状態が設定されることが好ましい。
【0026】
本構成のガラスチョップドストランドの製造装置は、ゴムロールの径の減少に応じて研磨手段の往復移動を部分的に減速させるように、研磨手段の状態が設定されているため、ゴムロールの研磨量を簡単に調整することができ、より平滑な状態に維持することが可能となる。
【0027】
本発明に係るガラスチョップドストランドの製造装置において、
前記研磨手段が一定速度で往復移動する定速移動期間と、一時的に停止する停止期間とが設けられることが好ましい。
【0028】
本構成のガラスチョップドストランドの製造装置は、研磨手段が一定速度で往復移動する定速移動期間と、一時的に停止する停止期間とが設けられているため、研磨手段の動作制御を簡単に行うことができる。また、停止期間中に研磨手段を取り外してメンテナンスや交換等を行うことも容易となる。
【0029】
本発明に係るガラスチョップドストランドの製造装置において、
前記研磨手段の往復移動における、移動方向が変わる時に前記研磨手段の状態が変更可能に構成されていることが好ましい。
【0030】
本構成のガラスチョップドストランドの製造装置は、研磨手段の往復移動における、移動方向が変わる時に研磨手段の状態が変更可能であるため、ゴムロールの幅方向における径のバラツキが小さくなり、ゴムロールの表面は平滑な状態に維持される。その結果、ガラスストランドの切断不良が発生し難くなり、ガラスチョップドストランドの品質向上に寄与し得るものとなる。
【0031】
本発明に係るガラスチョップドストランドの製造装置において、
製造したガラスチョップドストランドに前記ゴムロールの研磨屑が混入することを防止する混入防止手段を備えていることが好ましい。
【0032】
本構成のガラスチョップドストランドの製造装置は、上記混入防止手段を備えているため、ゴムロールを研磨した際に発生する研磨屑が製造したガラスチョップドストランドに混入することを防止することができる。その結果、ガラスチョップドストランドを使用した製品の品質を良好に維持することができる。
【0033】
上記課題を解決するための本発明に係るゴムロールの表面維持方法の特徴構成は、
上流から供給されるガラスストランドをゴムロールにより下流に搬送する搬送工程と、
前記ゴムロールの表面にカッターロールを当接させた状態で、当該カッターロールを回転させながら前記ガラスストランドを切断する切断工程と、
当該ゴムロールの幅方向に研磨手段を往復移動させて、前記ゴムロールの表面を研磨する研磨工程と、
を包含するガラスチョップドストランドの製造に用いるゴムロールの表面維持方法であって、
前記研磨工程において、前記ゴムロールの径の減少に応じて単位時間あたりの前記ゴムロールの研磨量が増加するように、前記ゴムロールに対する前記研磨手段の状態を変更させることにある。
【0034】
本構成のゴムロールの表面維持方法は、上述したガラスチョップドストランドの製造装置と同様の優れた作用効果を奏することができる。すなわち、ゴムロールの表面は常に適切に研磨された状態となり、その結果、カッターロールによるガラスストランドの切断を継続的に行うことが可能となる。そして、表面が適切に研磨されたゴムロールを使用することで、ガラスストランドの切断不良が発生し難くなり、さらに、表面が適切に研磨されたゴムロールは回転が安定するため、ガラスチョップドストランドの品質向上にも寄与し得るものとなる。また、ガラスチョップドストランドの製造開始直後のゴムロールの表面の過剰な研磨を抑えることができるため、ゴムロールの寿命を延ばすことができる。
【0035】
本発明に係るゴムロールの表面維持方法において、
前記研磨工程において、単位時間あたりの前記ゴムロールの径の減少量が増加するように、前記研磨手段の状態が設定されることが好ましい。
【0036】
本構成のゴムロールの表面維持方法は、上述したガラスチョップドストランドの製造装置と同様の優れた作用効果を奏することができる。すなわち、ゴムロールの表面の研磨量を適切に維持することができる。これにより、ガラスストランドの切断中はゴムロールの表面が平滑な状態に維持され、その結果、ガラスストランドの切断不良が発生し難くなり、ガラスチョップドストランドの品質向上に寄与し得るものとなる。また、ガラスチョップドストランドの製造開始直後のゴムロールの表面の過剰な研磨を抑えることができるため、ゴムロールの寿命を延ばすことができる。
【0037】
本発明に係るゴムロールの表面維持方法において、
前記研磨工程において、前記ゴムロールの径の減少に応じて前記ゴムロールの研磨量の増加率が上昇するように、前記研磨手段の状態が設定されることが好ましい。
【0038】
本構成のゴムロールの表面維持方法は、上述したガラスチョップドストランドの製造装置と同様の優れた作用効果を奏することができる。すなわち、ゴムロールの表面の研磨量を適切に維持することができる。これにより、ガラスストランドの切断中はゴムロールの表面が平滑な状態に維持され、その結果、ガラスストランドの切断不良が発生し難くなり、ガラスチョップドストランドの品質向上に寄与し得るものとなる。また、ガラスチョップドストランドの製造開始直後のゴムロールの表面の過剰な研磨を抑えることができるため、ゴムロールの寿命を延ばすことができる。
【0039】
本発明に係るゴムロールの表面維持方法において、
前記研磨工程において、前記ゴムロールの径の減少に応じて前記研磨手段の平均往復移動速度が増加するように、前記研磨手段の状態が設定されることが好ましい。
【0040】
本構成のゴムロールの表面維持方法は、上述したガラスチョップドストランドの製造装置と同様の優れた作用効果を奏することができる。すなわち、カッターロールの当接によってゴムロールの径の減少が進行した状況でも、ゴムロールの荒れた表面を研磨して一定の平滑な状態に維持し、カッターロールによるガラスストランドの切断を継続的に行うことが可能となる。また、ガラスチョップドストランドの製造開始直後のゴムロールの表面の過剰な研磨を抑えることができるため、ゴムロールの寿命を延ばすことができる。
【0041】
本発明に係るゴムロールの表面維持方法において、
前記研磨工程において、前記ゴムロールの径が減少するに連れて前記平均往復移動速度の増加率が小さくなるように、前記研磨手段の状態が設定されることが好ましい。
【0042】
本構成のゴムロールの表面維持方法は、上述したガラスチョップドストランドの製造装置と同様の優れた作用効果を奏することができる。すなわち、カッターロールの当接によってゴムロールの径の減少が進行した状況でも、ゴムロールの荒れた表面を過不足なく研磨して一定の平滑な状態に維持し、カッターロールによるガラスストランドの切断を継続的に行うことが可能となる。
【0043】
本発明に係るゴムロールの表面維持方法において、
前記研磨工程において、前記研磨手段の往復移動における、移動方向が変わる時に前記ゴムロールに近接し、前記ゴムロールの径の減少に応じて前記研磨手段が前記ゴムロールに近接する近接移動距離が増加するように、前記研磨手段の状態が設定されることが好ましい。
【0044】
本構成のゴムロールの表面維持方法は、上述したガラスチョップドストランドの製造装置と同様の優れた作用効果を奏することができる。すなわち、ゴムロールの径の減少によるゴムロールの劣化速度の増加に合わせて、研磨手段はゴムロールへの押圧力を増加させることができ、その結果、ゴムロールの表面の研磨量を増加させることができる。従って、ガラスチョップドストランドの製造開始直後のゴムロールの表面の研磨不足や過剰な研磨を抑えることができる。
【0045】
本発明に係るゴムロールの表面維持方法において、
前記研磨工程において、前記ゴムロールの径の減少に応じて前記研磨手段の往復移動を一時的に停止させるように、前記研磨手段の状態が設定されることが好ましい。
【0046】
本構成のゴムロールの表面維持方法は、上述したガラスチョップドストランドの製造装置と同様の優れた作用効果を奏することができる。すなわち、研磨手段のオン/オフ操作のみでゴムロールの研磨量を簡単に調整することができる。また、停止時に研磨手段を取り外してメンテナンスや交換等を行うことも容易となる。
【0047】
本発明に係るゴムロールの表面維持方法において、
前記研磨工程において、前記ゴムロールの径の減少に応じて前記研磨手段の往復移動を部分的に減速させるように、前記研磨手段の状態が設定されることが好ましい。
【0048】
本構成のゴムロールの表面維持方法は、上述したガラスチョップドストランドの製造装置と同様の優れた作用効果を奏することができる。すなわち、ゴムロールの研磨量を簡単に調整することができ、より平滑な状態に維持することが可能となる。
【0049】
本発明に係るゴムロールの表面維持方法において、
前記研磨工程において、前記研磨手段が一定速度で往復移動する定速移動期間と、一時的に停止する停止期間とが設けられることが好ましい。
【0050】
本構成のゴムロールの表面維持方法は、上述したガラスチョップドストランドの製造装置と同様の優れた作用効果を奏することができる。すなわち、研磨手段の動作制御を簡単に行うことができる。また、停止期間中に研磨手段を取り外してメンテナンスや交換等を行うことも容易となる。
【0051】
本発明に係るゴムロールの表面維持方法において、
前記研磨工程において、前記研磨手段の往復移動における、移動方向が変わる時に前記研磨手段の状態が変更されることが好ましい。
【0052】
本構成のゴムロールの表面維持方法は、上述したガラスチョップドストランドの製造装置と同様の優れた作用効果を奏することができる。すなわち、ゴムロールの幅方向における径のバラツキが小さくなり、ゴムロールの表面は平滑な状態に維持される。その結果、ガラスストランドの切断不良が発生し難くなり、ガラスチョップドストランドの品質向上に寄与し得るものとなる。
【0053】
本発明に係るゴムロールの表面維持方法において、
前記ゴムロールを所定の頻度で取り外して前記ゴムロールの表面の再生を行う再生工程を実行することが好ましい。
【0054】
本構成のゴムロールの表面維持方法は、ゴムロールを所定の頻度で取り外してゴムロールの表面を再生することで、ゴムロールの表面がさらに平滑化され、ゴムロールの寿命をより延長することができる。
【0055】
上記課題を解決するための本発明に係るガラスチョップドストランドの製造方法の特徴構成は、
上流から供給されるガラスストランドをゴムロールにより下流に搬送する搬送工程と、
前記ゴムロールの表面にカッターロールを当接させた状態で、当該カッターロールを回転させながら前記ガラスストランドを切断する切断工程と、
を包含するガラスチョップドストランドの製造方法であって、
前記切断工程の実行中に、前記ゴムロールの幅方向に研磨手段を往復移動させて、前記ゴムロールの表面を研磨する研磨工程を実行し、当該研磨工程において、前記ゴムロールの径の減少に応じて単位時間あたりの前記ゴムロールの研磨量が増加するように、前記ゴムロールに対する前記研磨手段の状態を変更させることにある。
【0056】
本構成のガラスチョップドストランドの製造方法は、上述したガラスチョップドストランドの製造装置と同様の優れた作用効果を奏することができる。すなわち、ゴムロールの表面は常に適切に研磨された状態となり、その結果、カッターロールによるガラスストランドの切断を継続的に行うことが可能となる。そして、表面が適切に研磨されたゴムロールを使用することで、ガラスストランドの切断不良が発生し難くなり、さらに、表面が適切に研磨されたゴムロールは回転が安定するため、ガラスチョップドストランドの品質向上にも寄与し得るものとなる。また、ガラスチョップドストランドの製造開始直後のゴムロールの表面の過剰な研磨を抑えることができるため、ゴムロールの寿命を延ばすことができる。
【図面の簡単な説明】
【0057】
図1図1は、ガラスチョップドストランドの製造装置の概略正面図である。
図2図2は、ガラスチョップドストランドの製造装置の概略平面図である。
図3図3は、混入防止手段を備えたガラスチョップドストランドの製造装置の概略正面図である。
図4図4は、ガラスチョップドストランドの製造装置に用いるゴムロールの径の減少と研磨手段の往復移動時間との関係を示したグラフである。
図5図5は、ゴムロールの研磨工程中におけるゴムロールの径と研磨作業の経過時間との関係を示したグラフである。
図6図6は、ゴムロールの研磨工程中におけるゴムロールの研磨量と研磨作業の経過時間との関係を示したグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0058】
以下、本発明のガラスチョップドストランドの製造装置、ゴムロールの表面維持方法、及びガラスチョップドストランドの製造方法に関する実施形態を図1図6に基づいて説明する。ただし、本発明は、以下に説明する実施形態や図面に記載される構成に限定されることを意図しない。
【0059】
<ガラスチョップドストランドの製造装置>
図1は、ガラスチョップドストランドの製造装置100の概略正面図である。図2は、ガラスチョップドストランドの製造装置100の概略平面図である。ガラスチョップドストランドの製造装置100は、図1及び図2に示すように、ガラスストランドFを所定の長さに切断してガラスチョップドストランドSを製造する装置であり、切断刃10aを円周方向に等間隔で且つ回転軸に対して放射状に取り付けたカッターロール10と、ローラ芯11dの周囲に弾性体11cを被覆したゴムロール11と、ゴムロール11の表面11aを研磨して一定の平滑な状態に維持する研磨手段12とを備えている。図1中に示す白抜きの矢印はカッターロール10及びゴムロール11の回転方向を示し、図1及び図2中に示す黒矢印はカッターロール10及び研磨手段12の移動方向を示している。
【0060】
ゴムロール11は、軸心11bの周りで回転可能に軸支されており、第1モータ13により一定の周速で回転駆動される。ゴムロール11のサイズは、製造するガラスチョップドストランドSの種類や製造規模等に応じて変更可能であるが、例えば、ゴムロール11の径(弾性体11cを含む)として250〜400mm、ゴムロール11の幅方向の長さとして250〜450mm、弾性体11cの厚みとして5〜100mmに設定される。弾性体11cに使用される材料は、切断対象のガラスストランドFの性状に応じて適宜選択可能であるが、適度の弾性と耐劣化性とを兼ね備えたゴム材料が好ましく、例えば、ウレタンゴム、フッ素ゴム、シリコーンゴム、クロロプレンゴム、アクリルゴム、イソプレンゴム、ニトリルゴム、スチレンゴム、ハイパロンゴム、天然ゴム等が挙げられる。上記のように構成されたゴムロール11は、上流から供給される1〜100本のガラスストランドFを表面11aに載せながら下流に搬送する。
【0061】
カッターロール10は、切断刃10aが円周方向に等間隔(例えば、3mm)で且つ軸心10bから放射状に突出するように取り付けられている。カッターロール10の軸心10bは、ゴムロール11の軸心11bと略平行になるように配置され、ゴムロール11の表面11aにカッターロール10の切断刃10aが当接可能なように配置されている。カッターロール10は、軸心10bの周りで回転可能に軸支されており、第2モータ14によりゴムロール11の周速に応じて回転駆動し、ゴムロール11の表面11aに当接して回転しながらガラスストランドFを切断する。このとき、切断されたガラスチョップドストランドSがカッターロール10の切断刃10aの間に目詰まりしないように、ガラスチョップドストランドSの生成量を考慮しながらカッターロール10の周速が設定される。カッターロール10のサイズは、製造するガラスチョップドストランドSの種類や製造規模等に応じて変更可能であるが、例えば、カッターロール10の径(切断刃10aを含む)を50〜100mmに設定し、カッターロール10の幅方向の長さをゴムロール11の幅方向の長さと同等又は若干長めに設定する。これにより、ゴムロール11の幅方向全体に亘ってカッターロール10の切断刃10aの刃先を確実に当接させることができる。
【0062】
カッターロール10は、ガラスストランドFに対する剪断力を与えるためにゴムロール11の表面11aに切断刃10aを所定の圧力で押圧している。この押圧により、カッターロール10の切断刃10aは、ゴムロール11の表面11aに食い込み、ゴムロール11の表面11aが削られる。その結果、ゴムロール11の径が徐々に減少し、カッターロール10のゴムロール11の表面11aへの押圧力が弱まる。そこで、カッターロール10には、ゴムロール11の劣化に応じてゴムロール11の方に接近させるためのスライド手段20が接続されている。スライド手段20は、図2に示すように、カッターロール10を回転駆動させる第2モータ14を載置する第1ベース21と、第1ベース21を移動させる第1駆動手段22とを備えている。第1ベース21は、カッターロール10の軸心10bに対して直交する方向(矢印aの方向)に配置された第1レール23の上にスライド可能に配置されている。
【0063】
カッターロール10の軸心10bとゴムロール11の軸心11bとは、略平行となるように配置されており、第1駆動手段22を駆動させると、第1ベース21が第1レール23上を矢印aの方向にスライド移動する。第1ベース21には第2モータ14が載置され、第2モータ14はカッターロール10と連結されている。このため、第1ベース21がスライド移動すると、カッターロール10は矢印aの方向、すなわちゴムロール11の表面11aを押圧する方向に移動する。これにより、カッターロール10は、カッターロール10の軸心10bとゴムロール11の軸心11bとの平行状態を維持しながら、ゴムロール11の表面11aに切断刃10aを押圧することが可能になる。第1駆動手段22は、例えば、一定時間ごとにカッターロール10をゴムロール11に接近させることができるステッピングモータを使用することができる。なお、本実施形態では、カッターロール10は第2モータ14により駆動されるものとして、ゴムロール11とは独立して回転駆動するように構成したが、ゴムロール11の回転に従動して回転するように構成してもよい。この場合、ガラスチョップドストランドの製造装置100の部品点数を減らすことができる。
【0064】
ゴムロール11の表面11aは、切断刃10aの押圧及び回転によって徐々に削られるため、時間の経過とともにゴムロール11の表面11aの平滑度が低下する。研磨手段12は、ゴムロール11の表面11aを研磨することにより、荒れたゴムロール11の表面11aを平滑な状態に維持する。研磨手段12は、図1及び図2に示すように、ゴムロール11の表面11aを研磨する研磨部15と、研磨部15をゴムロール11の軸心11bに対して近接するように移動させる近接移動手段30と、研磨部15をゴムロール11の幅方向と平行に往復移動させる幅方向移動手段40とを備えている。研磨部15は、近接移動手段30によりゴムロール11の表面11aに当接し、幅方向移動手段40によりゴムロール11の幅方向に往復移動することで、ゴムロール11の表面11aを研磨する。本発明においては、ゴムロール11の径の減少に応じて単位時間あたりのゴムロール11の研磨量が増加するように、ゴムロール11に対する研磨手段12の状態が変更可能に構成されている。ここで、研磨手段12の状態とは、例えば、ゴムロール11に対する研磨部15の姿勢(研磨角度)、研磨部15の移動方向、研磨部15の往復移動速度、近接移動距離、及び研磨部15の移動パターン等を意味する。研磨手段12の状態変更については後述する。
【0065】
幅方向移動手段40は、図1及び図2に示すように、ゴムロール11の表面11aを研磨する研磨部15を載置する第2ベース41と、ゴムロール11の幅方向に対して平行となる方向に配置された第2レール42と、第2レール42を固定するレール台43と、第2ベース41を移動させる第2駆動手段44とを備えている。第2駆動手段44には、例えば、第2ベース41のスライド速度に変化を与えることができるDCモータやサーボモータ等を使用することができる。第2ベース41には、研磨部15がゴムロール11の表面11aと対向するように固定されている。第2ベース41は、第2駆動手段44から駆動力を受けると、第2レール42の上をスライド移動する(矢印cの方向)。これにより、第2ベース41上に配置された研磨部15は、矢印cの方向に往復移動し、ゴムロール11の表面11aを均一に研磨する。研磨手段12の状態の一つである研磨部15の往復移動速度は、ゴムロール11の径の減少に応じて増加するように設定されることが好ましい。ゴムロール11の劣化速度は、ゴムロール11の径が減少するほど加速する。従って、研磨部15の往復移動速度をゴムロール11の径の減少に応じて増加させ、ゴムロールの表面の単位時間あたりの研磨量を増加させれば、カッターロール10の当接によってゴムロール11の径の減少が進行した状況でも、ゴムロール11の荒れた表面を研磨して一定の平滑な状態に維持し、カッターロール10によるガラスストランドFの切断を継続的に行うことが可能となる。また、表面が適切に研磨されたゴムロール11を使用することで、ガラスストランドFの切断不良が発生し難くなり、ガラスチョップドストランドの品質向上にも寄与し得るものとなる。さらに、ゴムロール11の表面の過剰な研磨を抑えることができるため、ゴムロール11の寿命を延ばすことができる。なお、研磨部15の往復移動速度は、研磨部15の往復移動方向が変わる時に増加させることが好ましい。この場合、ゴムロール11の全体の研磨量を均等化できるため、ゴムロール11の幅方向における径のバラツキが小さくなり、ゴムロール11の表面は平滑な状態に維持される。その結果、ガラスストランドFの切断不良が発生し難くなる。
【0066】
上述の研磨部15の往復移動速度は、後述のように、停止期間や減速期間等も含めた「平均往復移動速度」をいう。具体的には、研磨部15が往復移動した距離を、往復移動開始から次の往復移動開始までの時間で割ったものとして取り扱うことができる。従って、設定された平均往復移動速度が維持される限りは、ゴムロール11の研磨中において、研磨手段12の状態の変更として、ゴムロール11の径の減少に応じて研磨部15の往復移動を一時的に停止させたり、研磨部15の往復移動速度を部分的に減速させたりすることも可能である。研磨部15の往復移動の一時停止は、スイッチのオン/オフ操作のみで行うことができるため、ゴムロール11の研磨量を簡単に調整することができる。また、停止時に研磨手段を取り外してメンテナンスや交換等を行うことも容易となる。研磨部15の往復移動速度を部分的に減速させると、ゴムロール11の研磨量を簡単に調整することができ、より平滑な状態に維持することが可能となる。本発明では、研磨部15が一定速度で往復移動する定速移動期間と、一時的に停止する停止期間とを設けることが好ましい。この場合、研磨部15の動作制御を簡単に行うことができるとともに、停止期間中に研磨部15を取り外してメンテナンスや交換等を行うことも容易となる。
【0067】
近接移動手段30は、図1及び図2に示すように、レール台43を移動させる第3駆動手段31を備えている。第3駆動手段31には、例えば、研磨部15の往復移動方向が変わる時にレール台43を移動させることができるステッピングモータを使用することができる。レール台43は、第3駆動手段31から駆動力を受けると、ゴムロール11の軸心11bに対して直交する方向に配置された第3レール32の上をスライド移動する(矢印bの方向)。つまり、第2ベース41上に載置された研磨部15は、矢印bの方向、すなわちゴムロール11の表面11aを押圧する方向に移動する。これにより、研磨部15は、ゴムロール11の表面11aを所定の押圧力で押圧することが可能となり、その押圧力により研磨される。研磨手段12の状態の一つである研磨部15がゴムロール11の表面11aを押圧する方向に移動する距離、すなわちゴムロール11の軸心11bに近づく方向に移動(近接移動)する距離(近接移動距離)は、ゴムロール11の径の減少に応じて増加するように設定されることが好ましい。この場合、ゴムロール11の径の減少に応じて、研磨部15の押圧力が増加するため、ゴムロール11の径の減少に応じて、ゴムロール11の表面の研磨量を増加させることができる。その結果、ガラスチョップドストランドの製造開始直後のゴムロール11の表面の研磨不足や過剰な研磨を抑えることができる。なお、研磨部15の近接移動距離を研磨部15の往復移動方向が変わる時に断続的に増加させると、ゴムロール11の全体の研磨量を均等化でき、ゴムロール11の幅方向における径のバラツキが小さくなり、ゴムロール11の表面は平滑な状態に維持される。その結果、ガラスストランドFの切断不良が発生し難くなる。
【0068】
研磨部15は、ゴムロール11の表面11aを均一に研磨できるものであればよく、例えば、ホルソー、バイト刃、回転砥石、エンドミル等が挙げられるが、その中でもホルソーが好適に使用される。
【0069】
ガラスチョップドストランドの製造装置100においては、上記のスライド手段20、近接移動手段30、及び幅方向移動手段40の動作を制御する制御手段(図示せず)を設けることが好ましい。制御手段としては、汎用のパーソナルコンピュータ等を用いることができる。制御手段を用いれば、上述したゴムロール11に対する研磨手段12の状態(ゴムロール11に対する研磨部15の姿勢(研磨角度)、研磨部15の移動方向、研磨部15の往復移動速度、近接移動距離、及び研磨部15の移動パターン等)を容易に変更することができる。また、予め設定されたプログラムを制御手段に入力し、スライド手段20、近接移動手段30、及び幅方向移動手段40を所定のパターンで動作させることにより、後述するガラスチョップドストランドの製造装置100によるゴムロール11の表面維持方法を自動的に実行することができる。
【0070】
図3は、混入防止手段を備えたガラスチョップドストランドの製造装置100の概略正面図である。研磨手段12によりゴムロール11の表面11aを研磨すると、弾性体11cの研磨屑Wが発生し、ゴムロール11の下方に落下する。カッターロール10により切断されたガラスチョップドストランドSは、ゴムロール11とカッターロール10との間に落下する。ここで、研磨屑Wの落下位置とガラスチョップドストランドSの落下位置とが近接していると、研磨屑WがガラスチョップドストランドSに混入する虞がある。そこで、研磨屑WのガラスチョップドストランドSへの混入を避けるために、ゴムロール11の下方に研磨屑WがガラスチョップドストランドSに混入することを防止する混入防止手段を設けることが有効である。混入防止手段は、例えば、図3に示すような邪魔板16として構成される。この場合、研磨屑Wは邪魔板16を超えて飛び散ることがないので、研磨屑WのガラスチョップドストランドSへの混入を防止することができる。その結果、ガラスチョップドストランドを使用した製品の品質を良好に維持することができる。混入防止手段として、邪魔板16に加えて、例えば、研磨屑Wを吸入する吸入手段(図示せず)をゴムロール11の下方に設けることも有効である。この場合、研磨屑Wを吸引手段によって吸い取ることができるため、上記の邪魔板16と併用すると、研磨屑WのガラスチョップドストランドSへの混入をより確実に防止することができる。
【0071】
<ゴムロールの表面維持方法、及びガラスチョップドストランドの製造方法>
次に、上記のガラスチョップドストランドの製造装置100におけるゴムロール11の表面維持方法、及び当該表面維持方法と同時に実行されるガラスチョップドストランドの製造方法について説明する。本発明のゴムロール11の表面維持方法、及びガラスチョップドストランドの製造方法においては、ゴムロール11の径の減少に応じて単位時間あたりのゴムロール11の研磨量が増加するように、ゴムロール11に対する研磨手段12の状態を変更させる。研磨手段12の状態は、「ガラスチョップドストランドの製造装置」で説明したものと同様である。ガラスチョップドストランドの製造装置100によってガラスチョップドストランドの製造を行う場合、図示しないケーキスタンドに設置された複数のケーキからガラスストランドが解舒され、1本ずつ分離した状態のガラスストランドFがカッターロール10とゴムロール11との間に供給される。ゴムロール11は、供給された複数のガラスストランドFをゴムロール11の表面11aに載せながら、ゴムロール11の回転によりガラスストランドFを下流に搬送する(搬送工程)。カッターロール10は、切断刃10aをゴムロール11の表面11aに所定の圧力で押圧しながら回転することで、カッターロール10の表面に等間隔(例えば、3mm)で配置されている切断刃10aによってガラスストランドFを一定の長さのガラスチョップドストランドS(例えば、3mm)に切断する(切断工程)。
【0072】
カッターロール10は、ゴムロール11の表面11aの劣化に応じて、スライド手段20によりゴムロール11の軸心11bに対して近接する方向(矢印aの方向)に移動し、ゴムロール11の表面11aに切断刃10aを所定の圧力で押圧する。カッターロール10の矢印a方向への移動は、後述する研磨手段12のゴムロール11の軸心11bに対して近接する方向への移動(矢印bの方向)に連動して、カッターロール10が所定の距離だけ移動するように設定することができる。
【0073】
研磨手段12は、幅方向移動手段40により、ゴムロール11に当接した状態でゴムロール11の幅方向(矢印cの方向)を往復移動し、研磨部15がゴムロール11の表面11a全体を均一に研磨して平滑にする(研磨工程)。研磨手段12は、ゴムロール11の表面11aの劣化に応じて、近接移動手段30により矢印b方向に移動し、ゴムロール11の表面11aに研磨部15を当接させる。研磨手段12の矢印b方向への移動は、研磨手段12がゴムロール11の表面11aを一往復移動する毎に所定の距離だけ移動するように設定することができる。研磨手段12の矢印方向bへの移動は、例えば、幅方向移動手段40にパルス信号発生器(図示せず)を設け、研磨手段12がゴムロール11の表面11aを一往復移動する毎に発生するパルス信号を検知したときに実行させる。なお、本実施形態では、カッターロール10及び研磨手段12のゴムロール11の軸心11bに対して近接する方向への移動は、研磨手段12がゴムロール11の表面11aを一往復移動する毎に移動するように設定したが、研磨手段12が一定の規則に従って往復移動する毎に(例えば、2回往復する毎に)ゴムロール11の軸心11bに対して近接する方向に移動するように設定してもよく、ガラスストランドFの切断開始からの経過時間に合わせてゴムロール11の軸心11bに対して近接する方向に移動するように設定してもよい。さらに、研磨によるゴムロール11の径の減少に応じて研磨手段12がゴムロール11の軸心11bの方向に近接する近接移動距離を研磨手段12の往復移動における、移動方向が変わる時に増加させることも有効である。この場合、ゴムロール11の径の減少によるゴムロール11の劣化速度の増加に合わせて、研磨手段12はゴムロール11への押圧力を増加させることができ、その結果、ゴムロール11の表面の研磨量を増加させることができる。従って、ガラスチョップドストランドの製造開始直後のゴムロール11の表面の研磨不足や過剰な研磨を抑えることができる。荒れたゴムロール11の表面11aを新品と同等のレベルまで平坦化する必要がある場合は、ガラスチョップドストランドの製造装置100からゴムロール11を取り外し、より精密な研磨を行ってゴムロール11の表面11aの再生を行う(再生工程)。これにより、ゴムロール11の寿命を延ばすことができる。
【0074】
ところで、ガラスチョップドストランドの製造装置100のゴムロール11の表面11aを維持するにあたり、本実施形態では、研磨手段12をゴムロール11の表面11aに押し当てた状態で矢印c方向に往復移動させることにより、ゴムロール11の表面11aを均一に研磨し、平滑な状態を維持しているが、このとき、ゴムロール11の表面11aは、研磨手段12によって徐々に削られてゴムロール11の径が減少する。径が減少したゴムロール11で周速を一定に維持しようとすると、ゴムロール11の回転数が増加することから、ゴムロール11の表面11aとカッターロール10との当接回数が増加し、ゴムロール11の劣化速度が増加することになる。そこで、本発明では、研磨手段12の往復移動速度を、ゴムロール11の径の減少に応じて増加するように設定している。つまり、ゴムロール11の単位時間当たりの研磨量を、ゴムロール11の径の減少に応じて増加させるように設定している。ここで、研磨手段12の往復移動速度は、先の説明と同様に平均往復移動速度として取り扱うことができる。これにより、ゴムロール11の径の減少が進行した状況でも、荒れたゴムロール11の表面11aを研磨して一定の平滑な状態に維持し、カッターロール10によるガラスストランドFの切断を継続的に行うことを可能にしている。また、手作業によるゴムロール11の再生頻度も低減できるため、ゴムロール11の寿命も延ばすことができる。なお、研磨手段12の往復移動速度を変化させるタイミングとしては、研磨手段12がゴムロール11の表面11aを一往復した時点であってもよいし、研磨手段12がゴムロール11の表面11aを一往復している途中であってもよい。前者の場合、研磨手段12の往復移動速度の変化は段階的となり、後者の場合、研磨手段12の往復移動速度の変化は連続的となる。
【0075】
研磨手段12の往復移動速度の増加率は、ゴムロール11の径が減少するに連れて小さくなるように設定することが好ましい。上述のとおり、ゴムロール11の径が減少すると、ゴムロール11の回転数が増加することから、それに伴ってゴムロール11の表面11aとカッターロール10との当接回数が増加し、ゴムロール11の劣化速度が増加する。このとき、研磨手段12の往復移動速度の増加率を一定に増加させると、カッターロール10はゴムロール11の径が減少するに連れてゴムロール11の表面11aを過剰に研磨することになり、ゴムロール11の寿命が短くなってしまう。これは、ゴムロール11の径が減少すると、ゴムロール11の表面11aの表面積が減少し、ゴムロール11の全表面積に対する研磨手段12の1回の往復移動で研磨されるゴムロール11の表面積の割合が増加するためである。そこで、本発明では、ゴムロール11の径が減少するに連れて研磨手段12の往復移動速度の増加率が小さくなるように設定している。これにより、荒れたゴムロール11の表面11aを過不足なく研磨して一定の平滑な状態に維持することができる。その結果、手作業によるゴムロール11の再生頻度をさらに減らし、ゴムロール11の寿命をさらに延ばすことが可能となる。ゴムロール11の径が減少するに連れて研磨手段12の往復移動速度の増加率を小さくする設定例として、例えば、ゴムロール11の径を370mmとした場合、ゴムロール11の径が一定量(例えば、20mm)減少する毎に、研磨手段12の往復移動速度の増加率が小さくなるように設定する方法がある。
【0076】
研磨手段12の往復移動速度の増加率は、ゴムロール11の使用開始からゴムロール11の径が所定の径に減少するまで一定とし、ゴムロール11の径が所定の径となってから徐々に小さくなるように設定してもよい。具体的には、例えば、ゴムロール11の径を370mmとした場合、研磨手段12の往復移動速度の増加率を、370mm〜340mmの径の区間を一定とし、340mm〜280mmの径の区間をゴムロール11の径が10mm減少する毎に、研磨手段12の往復移動速度の増加率を徐々に小さくすることが考えられる。これにより、荒れたゴムロール11の表面11aをさらに過不足なく研磨して一定の平滑な状態に維持することができる。その結果、手作業によるゴムロール11の再生頻度をさらに効率的に減らし、ゴムロール11の寿命をさらに延ばすことが可能となる。
【実施例】
【0077】
ゴムロール11の表面を一定の平滑な状態に維持しながら、カッターロール10によるガラスストランドFの切断を長期間継続的に行うためには、ゴムロール11を取り外して行う再生作業の頻度を減らすとともに、ゴムロール11の寿命を延ばすことが必要となる。そこで、ゴムロール11の表面を研磨する際に実施する研磨手段12の状態変更について、本発明のガラスチョップドストランドの製造装置100を使用し、ゴムロール11の寿命及び再生頻度を確認するための試験を行った。以下、確認試験の内容について説明する。
【0078】
<試験方法>
研磨手段の往復移動速度をゴムロールの径の減少に応じて増加させたガラスチョップドストランドの製造装置(実施例)と、ゴムロールの径が小さくなっても平滑な表面が得られるように、研磨手段の往復移動速度を一定にしたガラスチョップドストランドの製造装置(比較例)とを使用し、夫々のゴムロールの研磨作業を実施した。図4は、ガラスチョップドストランドの製造装置に用いるゴムロールの径の減少と研磨手段の往復移動時間との関係を示したグラフである。グラフの縦軸は、研磨手段がゴムロールの幅方向を往復する時間(分)を示している。つまり、研磨手段が往復にかかる時間が短いほど、往復移動速度は速くなる。グラフの横軸は、ゴムロールの径(mm)を示している。グラフ中の白のマーカーは、研磨手段の往復移動速度をゴムロールの径の減少に応じて増加させた実施例である。実施例では、後述するように、研磨手段がゴムロールの幅方向を往復する時間が38分から6分までに段階的に短くなるように設定した。黒のマーカーは、研磨手段の往復移動時間を8分に固定し、研磨手段の往復移動速度を一定とした比較例である。
【0079】
実施例及び比較例において使用したゴムロールの径は370mmであり、弾性体の厚みは100mmであり、ゴムロールの幅は350mmである。ゴムロールの弾性体にはウレタンゴムを使用した。研磨部としてホルソーを使用し、ゴムロールの表面をゴムロールの幅方向に研磨した。ホルソー及びカッターロールのゴムロールの軸心方向への移動は、ホルソーが1回往復移動する毎に、0.1mmずつゴムロールの軸心方向に移動するように設定した。ゴムロールの径は、ホルソーが一往復移動する毎に0.2mm(ホルソー及びカッターロールの移動距離の和)ずつ減少するものとして設定した。実施例は、研磨手段の往復移動速度をゴムロールの径の減少に応じて増加するように設定し、さらに研磨手段の往復移動速度の増加率が上述のように段階的に小さくなるように設定した。具体的には、ゴムロールの径が370mm〜350mmの第1区間、350mm〜330mmの第2区間、330mm〜310mmの第3区間、310mm〜290mmの第4区間、290mm〜285mmの第5区間の夫々の区間において一定の増加率とし、新たなゴムロールの径の区間に進むに連れて、ホルソーの往復移動速度の増加率を徐々に小さくなるように設定した。夫々のゴムロールの径の区間における往復移動速度の増加率は、第1区間を72.7%、第2区間を69.2%、第3区間を44.4%、第4区間を28.6%、第5区間を16.7%に設定した。ゴムロールの径の区間における往復移動速度の増加率を、第1区間を例に挙げて説明する。第1区間では、ゴムロールの径が初期の370mmのときにホルソーの往復移動にかかる時間を38分に設定し、ゴムロールの径が終期の350mmのときにホルソーの往復移動にかかる時間を22分に設定している。ここで、ホルソーの往復移動速度は、往復移動にかかる時間の逆数に比例するため、第1区間のホルソーの往復移動速度の増加率は、(1/22−1/38) ÷ 1/38 × 100 = 72.7(%)と表すことができる。比較例は、ホルソーの往復移動に要する時間を一定時間8分に設定しているため、ホルソーの往復移動速度の増加率は0%である。
【0080】
<試験結果>
図5は、ゴムロールの研磨工程中におけるゴムロールの径と研磨作業の経過時間との関係を示したグラフである。図6は、ゴムロールの研磨工程中におけるゴムロールの研磨量と研磨作業の経過時間との関係を示したグラフである。
【0081】
ゴムロールの寿命について考察すると、例えば、ゴムロールを未使用時(直径370mm)の約77%(直径285mm)まで使用する場合、図5より、実施例のガラスチョップドストランドの製造装置では、ゴムロールの交換が必要となる直径285mmに達するまで約1390時間を要した。これに対し、比較例のガラスチョップドストランドの製造装置では、約690時間でゴムロールの直径が285mmに達し、ゴムロールの交換が必要となることが判明した。実施例のゴムロールが長寿命を達成できた理由は、図6に示すように、実施例のガラスチョップドストランドの製造装置においては、ゴムロールの研磨作業の経過時間(すなわち、ゴムロールの径の減少)に応じてゴムロールの研磨量の増加率を上昇させているためである。これにより、ガラスチョップドストランドの製造開始直後ではゴムロールの表面の過剰な研磨を抑えつつ、ゴムロールの研磨作業がある程度経過した段階ではゴムロールの表面を確実に研磨し、平滑な状態を維持してガラスストランドの切断不良を防止することができる。一方、比較例では、ゴムロールの研磨作業の経過時間に関わらず、ゴムロールの研磨量は一定であるため、特に、ガラスチョップドストランドの製造開始直後においてゴムロールの表面が過剰に研磨されることとなり、結果としてゴムロールの寿命を短縮することになった。このように、本発明の条件にてゴムロールの研磨作業を行えば、ゴムロールの表面の研磨量を適切に維持することができるため、従来よりもゴムロールの寿命を大幅に延長することが可能となることが示された。
【0082】
ゴムロールの再生頻度については、実施例のガラスチョップドストランドの製造装置を用いた場合では平均1日に1回の再生で足りたが、比較例のガラスチョップドストランドの製造装置を用いた場合では平均1日に3回程度の再生が必要であった。このように、実施例は比較例に対してゴムロールの再生頻度を約3分の1に減らすことができた。
【0083】
以上の結果から、本発明に係るガラスチョップドストランドの製造装置を用いてガラスチョップドストランドの製造を行うと、ゴムロールの表面を一定の平滑な状態に維持しながら、カッターロールによるガラスストランドの切断を長期間継続的に行うことが可能となることが示された。
【産業上の利用可能性】
【0084】
本発明のガラスチョップドストランドの製造装置、ゴムロールの表面維持方法、及びガラスチョップドストランドの製造方法は、ガラスストランド(ガラス繊維)を、ガラスチョップドストランドに切断する製造工程において利用可能であるが、ガラス繊維以外の繊維(例えば、合成繊維、炭素繊維、天然繊維)や、さらには金属線等の線状物を切断する用途においても利用可能である。
【符号の説明】
【0085】
10 カッターロール
11 ゴムロール
11a ゴムロールの表面
12 研磨手段
16 邪魔板(混入防止手段)
100 ガラスチョップドストランドの製造装置
F ガラスストランド
S ガラスチョップドストランド
図1
図2
図3
図4
図5
図6