【実施例】
【0025】
本発明をより詳細に説明するために、その実施例を添付の図に従って説明する。
【0026】
図1において、符号1は、帯電防止チューブである。この帯電防止チューブ1は、可燃性液体や気体、粉塵を含む気体、酸性で腐食性の高い液体などの流体Fを、その内部を通し所望部位から他の所望部位に向けて流動可能とさせるものであり、この際、上記帯電防止チューブ1に帯電が生じることを自ら防止するものである。
【0027】
上記帯電防止チューブ1は、横断面が円形で可撓性のチューブ本体2と、このチューブ本体2の外周面に沿って延びると共にこのチューブ本体2に一体的に接合される可撓性の導電帯3とを備えている。
【0028】
上記チューブ本体2は透明(半透明含む)な樹脂製であり、具体的には、特に、耐熱性、耐酸性に優れたフッ素樹脂が適用されるが、ポリエチレン、塩化ビニール、ポリウレタン、PPなどの合成樹脂製であってもよい。
【0029】
上記導電帯3は、上記チューブ本体2と同材質の樹脂材に、カーボンブラックや鉄、銅など金属の良導電性微粒子を混入させたものであり、この結果、不透明なものとなっている。なお、導電帯3は上記チューブ本体2と同材質でなくてもよく、上記したような他種の樹脂材であってもよい。
【0030】
上記導電帯3は、上記チューブ本体2の軸心4回りで左回りに螺旋を描くよう延びる一条の左回り螺旋状導電帯3aと、上記軸心4回りで右回りに螺旋を描くよう延びる一条の右回り螺旋状導電帯3bとでなり、これら左、右回り螺旋状導電帯3a,3bの互いの交差部3cは互いに一体的に電気的に接合される。
【0031】
上記構成によれば、仮に、上記導電帯3の一部に亀裂が入ったり、各導電帯3a,3bの一部とアース側との間に非接触部が生じたりしたとしても、各導電帯3a,3b同士の間では、上記交差部3cの接合により通電状態が維持されて、帯電防止チューブ1は全体としてのアースができる。よって、この帯電防止チューブ1につき、良好な帯電防止効果が確保される。
【0032】
また、上記したように、導電帯3は左、右回り螺旋状導電帯3a,3bでなるため、上記チューブ本体2の内部をその軸方向に流動する流体Fは、帯電防止チューブ1の側面視(
図1(a))で、上記各導電帯3a,3bに対し交差するよう流動する。よって、上記チューブ本体2における上記導電帯3の非接合部分(透明なままに残された部分)を通し上記チューブ本体2の内部を流動する流体Fを目視するとき、チューブ本体2の内部における流体Fの液面動作や気泡の移動動作など、流体Fの流動状態の上記目視による把握は、上記各導電帯3a,3bに大きくは邪魔されることなく、精度よくできる。
【0033】
上記の場合、左、右回り螺旋状導電帯3a,3bの各ピッチPと各幅寸法Wとはそれぞれ互いに同じ値とされる。
【0034】
このため、上記各導電帯3a,3b周りで透明のままに残された上記チューブ本体2の部分を通しこのチューブ本体2の内部を流動する流体Fを目視するとき、このチューブ本体2の外周面の各部で、上記目視の各前提条件を互いに同様の状態にすることができる。よって、その分、チューブ本体2の内部における流体Fの流動状態の上記目視による把握は、より精度よくできる。
【0035】
上記の場合、各導電帯3a,3bの幅寸法Wは、上記チューブ本体2の直径Dの0.1−0.6倍であることが好ましく、0.15−0.55倍であることがより好ましく、0.2−0.5倍であることが更に好ましい。その理由は、次の如くである。
【0036】
即ち、上記幅寸法Wを、単に直径Dの0.1倍未満にしたとすると、導電材が線状となって帯電防止効果が著しく低下するおそれが生じる。そこで、上記左、右回り螺旋状導電帯3a,3bをそれぞれ多条にして全体的に網状にすることが考えられる。しかし、このようにすると、チューブ本体2の内部における流体Fの流動状態の目視は多数の網目を通してせざるを得ず、よって、この流動状態の目視による把握は不正確になりがちとなる。
【0037】
一方、上記幅寸法Wが直径Dの0.6倍を越えると、チューブ本体2の外周面の面積に対する各導電帯3a,3bの面積が過大となって、上記チューブ本体2において透明なままに残される部分が過少となる。このため、上記各導電帯3a,3bが邪魔になって、上記流動状態の目視による把握が不正確になりがちとなる。
【0038】
また、上記の場合、各導電帯3a,3bのピッチPは(1−3)・Dであることが好ましく、(1.5−2.5)・Dであることがより好ましい。その理由は、次の如くである。
【0039】
即ち、上記ピッチPを直径D未満にしたとすると、上記各導電帯3a,3bはチューブ本体2の軸方向で互いに接近し過ぎて、上記チューブ本体2において透明のままに残される部分が過少となり、上記各導電帯3a,3bは上記目視の邪魔になりがちとなる。このため、上記流動状態の目視による把握が不正確になりがちとなる。
【0040】
一方、上記ピッチPが直径Dの3倍を越えると、上記各導電帯3a,3bは、チューブ本体2の軸方向に直線状に延びる直線状導電帯に近づき、チューブ本体2の内部における流体Fの流動方向に合致して上記目視の邪魔になりがちとなる。このため、上記流動状態の目視による把握が不正確になりがちとなる。
【0041】
なお、上記左、右回り螺旋状導電帯3a,3bは、図示したように、各一条のみを設けることが好ましいが、上記ピッチPを上記範囲内で大きくすると共に上記幅寸法Wを上記範囲内で小さくしてやれば、二条や三条設けてもよい。
【0042】
図2,3において、上記帯電防止チューブ1を押出成形可能とする押出成形装置10につき、説明する。なお、説明の便宜上、図中矢印Frの方向を前方として、以下説明するが、この矢印Frの方向は水平に限定されるものではなく、鉛直方向やこれに傾斜する傾斜方向であってもよい。
【0043】
上記押出成形装置10は、架台など静止側部材11に支持され、前後方向に延びる軸心12上に形成されて前方に向かって開口する横断面が円形のダイ孔13を有するダイ本体14と、上記軸心12上に位置して上記ダイ孔13に挿入され、後部が上記ダイ本体14に支持されるマンドレル15と、上記軸心12上に位置すると共に上記ダイ本体14に外嵌し、上記軸心12回りに正回転A可能となるよう軸受18を介し上記ダイ本体14に支持される内側回転筒体19と、上記軸心12上に位置すると共に上記内側回転筒体19に外嵌し、上記軸心12回りに逆回転B可能となるよう軸受20,21を介し上記静止側部材11および内側回転筒体19に支持され、上記逆回転B時にその内周面が上記内側回転筒体19の外周面に摺接する外側回転筒体22とを備えている。
【0044】
また、上記押出成形装置10は、上記内側回転筒体19を、チェーン巻掛手段26を介し正、逆転可能に正回転Aさせる第1電動装置27と、上記外側回転筒体22を、チェーン巻掛手段28を介し正、逆転可能に逆回転Bさせる第2電動装置29とを備えている。上記第1、第2電動装置27,29は、それぞれ個別に加変減速可能なものとされる。
【0045】
また、上記押出成形装置10は、上記ダイ孔13の内周面と上記マンドレル15の外周面との間に形成されると共に前方に向かって開口し、後部に透明な熱溶融樹脂32がスクリュー式第1押出成形機33により押入されるチューブ本体2成形用の円筒状通路34と、上記内、外側回転筒体19,22の上記軸心12回りでの互いの摺接面のそれぞれに形成される第1、第2溝状通路35,36とを備えている。
【0046】
上記第1、第2溝状通路35,36のそれぞれ長手方向の各一端部は上記円筒状通路34の外周面に開口し、各他端部には導電性の熱溶融樹脂37がスクリュー式第2押出成形機38により押入されるようになっている。
【0047】
上記押出成形装置10によれば、帯電防止チューブ1は次のように成形される。
【0048】
即ち、まず、上記第1押出成形機33の駆動により、透明な熱溶融樹脂32を上記円筒状通路34の後部に押入すると共に、この円筒状通路34を通し前方に押し出せば、上記チューブ本体2が形成される。また、これと同時に、上記第1、第2電動装置27,29の駆動により上記内側回転筒体19を正回転Aさせると共に上記外側回転筒体22を逆回転Bさせ、かつ、上記第2押出成形機38の駆動により導電性の熱溶融樹脂37を上記第1、第2溝状通路35,36の各他端部に押入すると共に、これら第1、第2溝状通路35,36を通し上記円筒状通路34に向けて押し出す。すると、上記チューブ本体2の外周面に、左、右回り螺旋状導電帯3a,3bが形成されると共に、これら導電帯3a,3bの互いの接合により各交差部3cが形成される。これにより、上記帯電防止チューブ1が連続的に押出成形される。
【0049】
なお、上記左、右回り螺旋状導電帯3a,3bの幅寸法Wや厚さ寸法は、上記第1、第2溝状通路35,36の横断面形状を種々選択することにより、任意に設定可能である。
【0050】
また、上記内側回転筒体19の正回転Aや上記外側回転筒体22の逆回転Bの各回転数を変更すれば、上記各導電帯3a,3bの各ピッチPをそれぞれ所望値にすることができる。この場合、正、逆回転A,Bは、それぞれ図例とは逆方向に向かうものであってもよい。