特許第6200877号(P6200877)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6200877帯電防止チューブ、およびその押出成形装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6200877
(24)【登録日】2017年9月1日
(45)【発行日】2017年9月20日
(54)【発明の名称】帯電防止チューブ、およびその押出成形装置
(51)【国際特許分類】
   B29C 47/04 20060101AFI20170911BHJP
   B29C 47/24 20060101ALI20170911BHJP
   F16L 11/127 20060101ALI20170911BHJP
【FI】
   B29C47/04
   B29C47/24
   F16L11/127
【請求項の数】3
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2014-217694(P2014-217694)
(22)【出願日】2014年10月24日
(65)【公開番号】特開2016-83826(P2016-83826A)
(43)【公開日】2016年5月19日
【審査請求日】2016年6月27日
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】591265611
【氏名又は名称】株式会社プラ技研
(74)【代理人】
【識別番号】110001276
【氏名又は名称】特許業務法人 小笠原特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】菊澤 良治
【審査官】 辰己 雅夫
(56)【参考文献】
【文献】 特開2007−309342(JP,A)
【文献】 実開昭54−042010(JP,U)
【文献】 特表平08−507350(JP,A)
【文献】 特開平07−232368(JP,A)
【文献】 米国特許第05732746(US,A)
【文献】 米国特許第05639409(US,A)
【文献】 実開昭50−031153(JP,U)
【文献】 特開昭57−114077(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B29C47/00−47/96
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
透明なフッ素樹脂製チューブ本体と、このチューブ本体の外周面に沿って延びると共にこのチューブ本体に接合される樹脂製の導電帯とを備えた帯電防止チューブにおいて、
上記導電帯が、上記チューブ本体の軸心回りで左回りに螺旋を描くよう延びる左回り螺旋状導電帯と、上記軸心回りで右回りに螺旋を描くよう延びる右回り螺旋導電帯とでなり、これら左、右回り螺旋状導電帯の互いの交差部を互いに電気的に接合させ
上記帯電防止チューブは、上記チューブ本体と上記導電帯とが一体的に接合された押出成形品であり、上記帯電防止チューブの外周面の横断面が円形であることを特徴とする帯電防止チューブ。
【請求項2】
上記左、右回り螺旋状導電帯の各ピッチと各幅寸法とをそれぞれ互いに同じ値にしたことを特徴とする請求項1に記載の帯電防止チューブ。
【請求項3】
請求項1に記載の帯電防止チューブを成形可能とする押出成形装置であって、
静止側部材に支持され、前後方向に延びる軸心上に形成されてその軸方向での前方に向かって開口するダイ孔を有するダイ本体と、上記軸心上に位置して上記ダイ孔に挿入され、後部が上記ダイ本体の後部に支持されるマンドレルと、上記軸心上に位置すると共に上記ダイ本体に外嵌し、上記軸心回りに正回転可能となるよう上記ダイ本体に支持される内側回転筒体と、上記軸心上に位置すると共に上記内側回転筒体に外嵌し、上記軸心回りに逆回転可能となるよう上記内側回転筒体に支持され、上記逆回転時にその内周面が上記内側回転体の外周面に摺接する外側回転筒体と、上記ダイ孔の内周面と上記マンドレルの外周面との間に形成されると共に前方に向かって開口し、後部に透明な熱溶融樹脂が押入される上記チューブ本体成形用の円筒状通路と、上記内、外側回転筒体の上記軸心回りでの互いの摺接面のそれぞれに形成され、それぞれ長手方向の各一端部が上記円筒状通路に開口し、各他端部に導電性の熱溶融樹脂が押入される上記左、右回り螺旋状導電帯成形用の第1、第2溝状通路とを備え、
上記円筒状通路に開口した上記第1、第2溝状通路の長手方向の上記各一端部が、上記円筒状通路の前方開口部よりも上記円筒状通路の後部側に位置することを特徴とする押出成形装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、透明な樹脂製チューブ本体の外周面に樹脂製の導電帯を接合した帯電防止チューブ、およびその押出成形装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
上記帯電防止チューブには、従来、下記特許文献1に示されるものがある。この公報のものによれば、帯電防止チューブは、透明な樹脂製チューブ本体と、このチューブ本体の外周面に沿って延びると共にこのチューブ本体に接合される樹脂製の導電帯とを備えている。また、この導電帯は、上記チューブ本体の軸心回りで螺旋(つる巻き)を描くよう延びる螺旋状導電帯と、上記チューブ本体の軸方向に直線状に延びる直線状導電帯とを有し、これら両導電帯の互いの交差部は互いに電気的に接合されている。
【0003】
そして、上記帯電防止チューブによれば、螺旋状導電帯と直線状導電帯とがその互いの交差部で互いに電気的に接合されているため、仮に、上記導電帯の一部に亀裂が入ったとしても、各導電帯同士の間では、上記交差部の接合により通電状態が維持されて、帯電防止チューブ全体のアースができる。よって、この帯電防止チューブにつき、良好な帯電防止効果が確保されるようになっている。
【0004】
また、上記チューブ本体は透明の樹脂製である一方、上記導電帯は樹脂材にカーボンブラックや金属の良導電性微粒子を混入させたものであって不透明である。このため、上記チューブ本体の内部を流動する流体の流動状態を目視により把握しようとする場合には、このチューブ本体における導電帯の非接合部材(透明のままに残された部分)を通して、上記チューブ本体の内部を流動する流体を目視すればよく、これにより、この流体の流動状態の把握が可能とされる。そして、この流動状態の把握が精度よくできれば、この帯電防止チューブを用いた装置の管理作業が精度よくできると考えられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2010−249172号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、上記従来の技術の帯電防止チューブは、上記チューブ本体の外周面に接合され、その軸方向に直線的に延びる直線状導電帯を有している。一方、上記チューブ本体の内部を流動する流体は、通常、このチューブ本体の軸方向に向かって流動するため、上記直線状導電帯が延びる方向と流体の流動方向とはほぼ合致することとなる。
【0007】
このため、上記帯電防止チューブの外部から、上記チューブ本体における上記導電帯の非接合部を通し、内部の流体の液面動作や気泡の移動動作など、流体の流動状態を目視するときには、上記直線状導電帯により上記目視が阻害されるおそれを生じ、つまり、帯電防止チューブの内部での流動状態の把握が不正確になるおそれを生じる。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、上記のような事情に注目してなされたもので、本発明の目的は、帯電防止チューブにおいて、外周面に樹脂製の導電帯が接合された透明なチューブ本体の内部を流体が流動する場合に、このチューブ本体における上記導電帯の非接合部分を通し、帯電防止チューブの外部から内部の流体の流動状態を目視するとき、この目視による上記流動状態の把握が精度よくできるようにすることである。
【0009】
請求項1の発明は、透明なフッ素樹脂製チューブ本体2と、このチューブ本体2の外周面に沿って延びると共にこのチューブ本体2に接合される樹脂製の導電帯3とを備えた帯電防止チューブにおいて、
上記導電帯3が、上記チューブ本体2の軸心4回りで左回りに螺旋を描くよう延びる左回り螺旋状導電帯3aと、上記軸心4回りで右回りに螺旋を描くよう延びる右回り螺旋導電帯3bとでなり、これら左、右回り螺旋状導電帯3a,3bの互いの交差部3cを互いに電気的に接合させ、上記帯電防止チューブは、上記チューブ本体2と上記導電帯3とが一体的に接合された押出成形品であり、上記帯電防止チューブの外周面の横断面が円形であることを特徴とする帯電防止チューブである。
【0010】
請求項2の発明は、上記左、右回り螺旋状導電帯3a,3bの各ピッチPと各幅寸法Wとをそれぞれ互いに同じ値にしたことを特徴とする請求項1に記載の帯電防止チューブである。
【0011】
請求項3の発明は、請求項1に記載の帯電防止チューブ1を成形可能とする押出成形装置であって、
静止側部材11に支持され、前後方向に延びる軸心12上に形成されてその軸方向での前方に向かって開口するダイ孔13を有するダイ本体14と、上記軸心12上に位置して上記ダイ孔13に挿入され、後部が上記ダイ本体14の後部に支持されるマンドレル15と、上記軸心12上に位置すると共に上記ダイ本体14に外嵌し、上記軸心12回りに正回転A可能となるよう上記ダイ本体14に支持される内側回転筒体19と、上記軸心12上に位置すると共に上記内側回転筒体19に外嵌し、上記軸心12回りに逆回転B可能となるよう上記内側回転筒体19に支持され、上記逆回転B時にその内周面が上記内側回転体19の外周面に摺接する外側回転筒体22と、上記ダイ孔13の内周面と上記マンドレル15の外周面との間に形成されると共に前方に向かって開口し、後部に透明な熱溶融樹脂32が押入される上記チューブ本体2成形用の円筒状通路34と、上記内、外側回転筒体19,22の上記軸心12回りでの互いの摺接面のそれぞれに形成され、それぞれ長手方向の各一端部が上記円筒状通路34に開口し、各他端部に導電性の熱溶融樹脂37が押入される上記左、右回り螺旋状導電帯3a,3b成形用の第1、第2溝状通路35,36とを備え、上記円筒状通路34に開口した上記第1、第2溝状通路35,36の長手方向の上記各一端部が、上記円筒状通路34の前方開口部よりも上記円筒状通路の後部側に位置することを特徴とする押出成形装置である。
【0012】
なお、この項において、上記各用語に付記した符号や図面番号は、本発明の技術的範囲を後述の「実施例」の項や図面の内容に限定解釈するものではない。
【発明の効果】
【0013】
本発明による効果は、次の如くである。
【0014】
請求項1の発明は、透明なフッ素樹脂製チューブ本体と、このチューブ本体の外周面に沿って延びると共にこのチューブ本体に接合される樹脂製の導電帯とを備えた帯電防止チューブにおいて、
上記導電帯が、上記チューブ本体の軸心回りで左回りに螺旋を描くよう延びる左回り螺旋状導電帯と、上記軸心回りで右回りに螺旋を描くよう延びる右回り螺旋導電帯とでなり、これら左、右回り螺旋状導電帯の互いの交差部を互いに電気的に接合させ、上記帯電防止チューブは、上記チューブ本体と上記導電帯とが一体的に接合された押出成形品であり、上記帯電防止チューブの外周面の横断面が円形である
【0015】
このため、仮に、上記導電帯の一部に亀裂が入ったり、各導電帯の一部とアース側との間に非接触部が生じたりしたとしても、各導電帯同士の間では、上記交差部の接合により通電状態が維持されて、帯電防止チューブは全体としてのアースができる。よって、この帯電防止チューブにつき、良好な帯電防止効果が確保される。
【0016】
また、上記したように、導電帯は左、右回り螺旋状導電帯でなるため、上記チューブ本体の内部をその軸方向に流動する流体は、帯電防止チューブの側面視で、上記各導電帯に対し交差するよう流動する。よって、上記チューブ本体における上記導電帯の非接合部分(透明なままに残された部分)を通し上記チューブ本体の内部を流動する流体を目視するとき、チューブ本体の内部における流体の液面動作や気泡の移動動作など、流体の流動状態の上記目視による把握は、上記各導電帯に大きくは邪魔されることなく、精度よくできる。
【0017】
請求項2の発明は、上記左、右回り螺旋状導電帯の各ピッチと各幅寸法とをそれぞれ互いに同じ値にしている。
【0018】
このため、上記各導電帯周りで透明のままに残された上記チューブ本体の部分を通しこのチューブ本体の内部を流動する流体を目視するとき、このチューブ本体の外周面の各部で、上記目視の各前提条件を互いに同様の状態にすることができる。よって、その分、チューブ本体の内部における流体の流動状態の上記目視による把握は、より精度よくできる。
【0019】
請求項3の発明は、請求項1に記載の帯電防止チューブを成形可能とする押出成形装置であって、
静止側部材に支持され、前後方向に延びる軸心上に形成されてその軸方向での前方に向かって開口するダイ孔を有するダイ本体と、上記軸心上に位置して上記ダイ孔に挿入され、後部が上記ダイ本体の後部に支持されるマンドレルと、上記軸心上に位置すると共に上記ダイ本体に外嵌し、上記軸心回りに正回転可能となるよう上記ダイ本体に支持される内側回転筒体と、上記軸心上に位置すると共に上記内側回転筒体に外嵌し、上記軸心回りに逆回転可能となるよう上記内側回転筒体に支持され、上記逆回転時にその内周面が上記内側回転体の外周面に摺接する外側回転筒体と、上記ダイ孔の内周面と上記マンドレルの外周面との間に形成されると共に前方に向かって開口し、後部に透明な熱溶融樹脂が押入される上記チューブ本体成形用の円筒状通路と、上記内、外側回転筒体の上記軸心回りでの互いの摺接面のそれぞれに形成され、それぞれ長手方向の各一端部が上記円筒状通路に開口し、各他端部に導電性の熱溶融樹脂が押入される上記左、右回り螺旋状導電帯成形用の第1、第2溝状通路とを備え、上記円筒状通路に開口した上記第1、第2溝状通路の長手方向の上記各一端部が、上記円筒状通路の前方開口部よりも上記円筒状通路の後部側に内側に位置している。
【0020】
上記押出成形装置によれば、帯電防止チューブは次のように成形される。
【0021】
即ち、まず、上記透明な熱溶融樹脂を上記円筒状通路の後部に押入すると共に、この円筒状通路を通し前方に押し出せば、上記チューブ本体が形成される。また、これと同時に、上記内側回転筒体を正回転させると共に上記外側回転筒体を逆回転させ、かつ、上記導電性の熱溶融樹脂を上記第1、第2溝状通路の各他端部に押入すると共に、これら第1、第2溝状通路を通し上記円筒状通路に向けて押し出せば、上記チューブ本体の外周面に、左、右回り螺旋状導電帯と互いに接合される各交差部とが形成される。これにより、上記帯電防止チューブが連続的に押出成形される。
【図面の簡単な説明】
【0022】
図1】(a)は、帯電防止チューブの側面部分破断図であり、(b)は、(a)のb−b線矢視断面図である。
図2】帯電防止チューブ用の押出成形装置の側面断面図である。
図3図2のIII−III線矢視拡大断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
本発明の帯電防止チューブ、およびその押出成形装置に関し、帯電防止チューブにおいて、外周面に樹脂製の導電帯が接合された透明なチューブ本体の内部を流体が流動する場合に、このチューブ本体における上記導電帯の非接合部分を通し、帯電防止チューブの外部から内部の上記流体の流動状態を目視するとき、この目視による上記流動状態の把握が精度よくできるようにする、という目的を実現するため、本発明を実施するための形態は、次の如くである。
【0024】
即ち、帯電防止チューブは、透明な樹脂製チューブ本体と、このチューブ本体の外周面に沿って延びると共にこのチューブ本体に接合される樹脂製の導電帯とを備える。上記導電帯は、上記チューブ本体の軸心回りで左回りに螺旋を描くよう延びる左回り螺旋状導電帯と、上記軸心回りで右回りに螺旋を描くよう延びる右回り螺旋導電帯とでなる。これら左、右回り螺旋状導電帯の互いの交差部は互いに電気的に接合される。
【実施例】
【0025】
本発明をより詳細に説明するために、その実施例を添付の図に従って説明する。
【0026】
図1において、符号1は、帯電防止チューブである。この帯電防止チューブ1は、可燃性液体や気体、粉塵を含む気体、酸性で腐食性の高い液体などの流体Fを、その内部を通し所望部位から他の所望部位に向けて流動可能とさせるものであり、この際、上記帯電防止チューブ1に帯電が生じることを自ら防止するものである。
【0027】
上記帯電防止チューブ1は、横断面が円形で可撓性のチューブ本体2と、このチューブ本体2の外周面に沿って延びると共にこのチューブ本体2に一体的に接合される可撓性の導電帯3とを備えている。
【0028】
上記チューブ本体2は透明(半透明含む)な樹脂製であり、具体的には、特に、耐熱性、耐酸性に優れたフッ素樹脂が適用されるが、ポリエチレン、塩化ビニール、ポリウレタン、PPなどの合成樹脂製であってもよい。
【0029】
上記導電帯3は、上記チューブ本体2と同材質の樹脂材に、カーボンブラックや鉄、銅など金属の良導電性微粒子を混入させたものであり、この結果、不透明なものとなっている。なお、導電帯3は上記チューブ本体2と同材質でなくてもよく、上記したような他種の樹脂材であってもよい。
【0030】
上記導電帯3は、上記チューブ本体2の軸心4回りで左回りに螺旋を描くよう延びる一条の左回り螺旋状導電帯3aと、上記軸心4回りで右回りに螺旋を描くよう延びる一条の右回り螺旋状導電帯3bとでなり、これら左、右回り螺旋状導電帯3a,3bの互いの交差部3cは互いに一体的に電気的に接合される。
【0031】
上記構成によれば、仮に、上記導電帯3の一部に亀裂が入ったり、各導電帯3a,3bの一部とアース側との間に非接触部が生じたりしたとしても、各導電帯3a,3b同士の間では、上記交差部3cの接合により通電状態が維持されて、帯電防止チューブ1は全体としてのアースができる。よって、この帯電防止チューブ1につき、良好な帯電防止効果が確保される。
【0032】
また、上記したように、導電帯3は左、右回り螺旋状導電帯3a,3bでなるため、上記チューブ本体2の内部をその軸方向に流動する流体Fは、帯電防止チューブ1の側面視(図1(a))で、上記各導電帯3a,3bに対し交差するよう流動する。よって、上記チューブ本体2における上記導電帯3の非接合部分(透明なままに残された部分)を通し上記チューブ本体2の内部を流動する流体Fを目視するとき、チューブ本体2の内部における流体Fの液面動作や気泡の移動動作など、流体Fの流動状態の上記目視による把握は、上記各導電帯3a,3bに大きくは邪魔されることなく、精度よくできる。
【0033】
上記の場合、左、右回り螺旋状導電帯3a,3bの各ピッチPと各幅寸法Wとはそれぞれ互いに同じ値とされる。
【0034】
このため、上記各導電帯3a,3b周りで透明のままに残された上記チューブ本体2の部分を通しこのチューブ本体2の内部を流動する流体Fを目視するとき、このチューブ本体2の外周面の各部で、上記目視の各前提条件を互いに同様の状態にすることができる。よって、その分、チューブ本体2の内部における流体Fの流動状態の上記目視による把握は、より精度よくできる。
【0035】
上記の場合、各導電帯3a,3bの幅寸法Wは、上記チューブ本体2の直径Dの0.1−0.6倍であることが好ましく、0.15−0.55倍であることがより好ましく、0.2−0.5倍であることが更に好ましい。その理由は、次の如くである。
【0036】
即ち、上記幅寸法Wを、単に直径Dの0.1倍未満にしたとすると、導電材が線状となって帯電防止効果が著しく低下するおそれが生じる。そこで、上記左、右回り螺旋状導電帯3a,3bをそれぞれ多条にして全体的に網状にすることが考えられる。しかし、このようにすると、チューブ本体2の内部における流体Fの流動状態の目視は多数の網目を通してせざるを得ず、よって、この流動状態の目視による把握は不正確になりがちとなる。
【0037】
一方、上記幅寸法Wが直径Dの0.6倍を越えると、チューブ本体2の外周面の面積に対する各導電帯3a,3bの面積が過大となって、上記チューブ本体2において透明なままに残される部分が過少となる。このため、上記各導電帯3a,3bが邪魔になって、上記流動状態の目視による把握が不正確になりがちとなる。
【0038】
また、上記の場合、各導電帯3a,3bのピッチPは(1−3)・Dであることが好ましく、(1.5−2.5)・Dであることがより好ましい。その理由は、次の如くである。
【0039】
即ち、上記ピッチPを直径D未満にしたとすると、上記各導電帯3a,3bはチューブ本体2の軸方向で互いに接近し過ぎて、上記チューブ本体2において透明のままに残される部分が過少となり、上記各導電帯3a,3bは上記目視の邪魔になりがちとなる。このため、上記流動状態の目視による把握が不正確になりがちとなる。
【0040】
一方、上記ピッチPが直径Dの3倍を越えると、上記各導電帯3a,3bは、チューブ本体2の軸方向に直線状に延びる直線状導電帯に近づき、チューブ本体2の内部における流体Fの流動方向に合致して上記目視の邪魔になりがちとなる。このため、上記流動状態の目視による把握が不正確になりがちとなる。
【0041】
なお、上記左、右回り螺旋状導電帯3a,3bは、図示したように、各一条のみを設けることが好ましいが、上記ピッチPを上記範囲内で大きくすると共に上記幅寸法Wを上記範囲内で小さくしてやれば、二条や三条設けてもよい。
【0042】
図2,3において、上記帯電防止チューブ1を押出成形可能とする押出成形装置10につき、説明する。なお、説明の便宜上、図中矢印Frの方向を前方として、以下説明するが、この矢印Frの方向は水平に限定されるものではなく、鉛直方向やこれに傾斜する傾斜方向であってもよい。
【0043】
上記押出成形装置10は、架台など静止側部材11に支持され、前後方向に延びる軸心12上に形成されて前方に向かって開口する横断面が円形のダイ孔13を有するダイ本体14と、上記軸心12上に位置して上記ダイ孔13に挿入され、後部が上記ダイ本体14に支持されるマンドレル15と、上記軸心12上に位置すると共に上記ダイ本体14に外嵌し、上記軸心12回りに正回転A可能となるよう軸受18を介し上記ダイ本体14に支持される内側回転筒体19と、上記軸心12上に位置すると共に上記内側回転筒体19に外嵌し、上記軸心12回りに逆回転B可能となるよう軸受20,21を介し上記静止側部材11および内側回転筒体19に支持され、上記逆回転B時にその内周面が上記内側回転筒体19の外周面に摺接する外側回転筒体22とを備えている。
【0044】
また、上記押出成形装置10は、上記内側回転筒体19を、チェーン巻掛手段26を介し正、逆転可能に正回転Aさせる第1電動装置27と、上記外側回転筒体22を、チェーン巻掛手段28を介し正、逆転可能に逆回転Bさせる第2電動装置29とを備えている。上記第1、第2電動装置27,29は、それぞれ個別に加変減速可能なものとされる。
【0045】
また、上記押出成形装置10は、上記ダイ孔13の内周面と上記マンドレル15の外周面との間に形成されると共に前方に向かって開口し、後部に透明な熱溶融樹脂32がスクリュー式第1押出成形機33により押入されるチューブ本体2成形用の円筒状通路34と、上記内、外側回転筒体19,22の上記軸心12回りでの互いの摺接面のそれぞれに形成される第1、第2溝状通路35,36とを備えている。
【0046】
上記第1、第2溝状通路35,36のそれぞれ長手方向の各一端部は上記円筒状通路34の外周面に開口し、各他端部には導電性の熱溶融樹脂37がスクリュー式第2押出成形機38により押入されるようになっている。
【0047】
上記押出成形装置10によれば、帯電防止チューブ1は次のように成形される。
【0048】
即ち、まず、上記第1押出成形機33の駆動により、透明な熱溶融樹脂32を上記円筒状通路34の後部に押入すると共に、この円筒状通路34を通し前方に押し出せば、上記チューブ本体2が形成される。また、これと同時に、上記第1、第2電動装置27,29の駆動により上記内側回転筒体19を正回転Aさせると共に上記外側回転筒体22を逆回転Bさせ、かつ、上記第2押出成形機38の駆動により導電性の熱溶融樹脂37を上記第1、第2溝状通路35,36の各他端部に押入すると共に、これら第1、第2溝状通路35,36を通し上記円筒状通路34に向けて押し出す。すると、上記チューブ本体2の外周面に、左、右回り螺旋状導電帯3a,3bが形成されると共に、これら導電帯3a,3bの互いの接合により各交差部3cが形成される。これにより、上記帯電防止チューブ1が連続的に押出成形される。
【0049】
なお、上記左、右回り螺旋状導電帯3a,3bの幅寸法Wや厚さ寸法は、上記第1、第2溝状通路35,36の横断面形状を種々選択することにより、任意に設定可能である。
【0050】
また、上記内側回転筒体19の正回転Aや上記外側回転筒体22の逆回転Bの各回転数を変更すれば、上記各導電帯3a,3bの各ピッチPをそれぞれ所望値にすることができる。この場合、正、逆回転A,Bは、それぞれ図例とは逆方向に向かうものであってもよい。
【符号の説明】
【0051】
1 帯電防止チューブ
2 チューブ本体
3 導電帯
3a 左回り螺旋状導電帯
3b 右回り螺旋状導電帯
3c 交差部
4 軸心
10 押出成形装置
11 静止側部材
12 軸心
13 ダイ孔
14 ダイ本体
15 マンドレル
19 内側回転筒体
22 外側回転筒体
32 樹脂
33 第1押出成形機
34 円筒状通路
35 第1溝状通路
36 第2溝状通路
37 樹脂
38 第2押出成形機
A 正回転
B 逆回転
D 直径
F 流体
P ピッチ
W 幅寸法
図1
図2
図3