(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記結晶性ポリオレフィン樹脂が、高密度ポリエチレン、低密度ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリブテン、エチレン・酢酸ビニル共重合体、エチレン・プロピレンランダム共重合体、エチレン・プロピレングラフト共重合体、エチレン・プロピレンブロック共重合体、エチレン・ブテン共重合体からなる群から選ばれる少なくとも一種である請求項1〜3のいずれか1項に記載のポリオレフィン樹脂組成物。
【背景技術】
【0002】
ポリエチレンやポリプロピレン等のポリオレフィン樹脂は、寸法安定性や耐衝撃性に優れていることから、自動車部品、家電製品、及びその他の各種用途の成形品等の形成材料として広く利用されている。食品包装用途の樹脂材料としても有用であるが、この場合には特有の性能として、形成した容器等の成形体が、冷蔵・冷凍保存、滅菌・殺菌処理等に対応可能な、低温・高温環境における必要な強度を有すると共に、内容物の確認を可能にするための透明性も要求されている。
【0003】
これに対し、例えば、結晶性ポリオレフィン樹脂の透明性を改良する方法として、結晶核剤を添加する方法(特許文献1)が知られており、また、透明性と滑り性とのバランス、及び剛性に優れる熱成形シート用ポリプロピレン系樹脂組成物(特許文献2)や、剛性、透明性、及び熱成形性に優れたプロピレン・α−オレフィン共重合体シート(特許文献3)や、透明性、耐熱性、耐衝撃性、高温クリープ特性等に優れるプロピレン系樹脂組成物(特許文献4)等の提案がされている。
【0004】
ここで、形成された成形体の透明性を目的とした場合、プロピレン−エチレンブロック共重合体は、衝撃特性に優れ、家電用器具、包装容器・フィルム・シート等に汎用されている反面、透明性への課題があり、その使用には制限がある。一方、エチレン−プロピレンランダム共重合体は、透明性には優れるものの、耐衝撃性への課題から、例えば、冷蔵庫或いは冷凍庫内等での低温環境における使用や、電位レンジを利用して内容物を一気にマイクロ波加熱する製品等への用途の展開には制限があった。
【0005】
冷蔵容器、冷凍容器等の製品に用いるポリプロピレン樹脂組成物として、エチレン−プロピレンランダム共重合体及びポリプロピレン−ブテン−1ランダム共重合体から選択される高結晶性ランダム共重合体と、エチレン−プロピレンエラストマー共重合体の微粒子として微細に分散した、優れた耐衝撃性、曲げ弾性率および透明性を有するポリプロピレン組成物(特許文献5)が開示されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、上記した従来技術には、シートやフィルムとしてではなく、比較的厚さを持った成形体として利用した場合に、優れた透明性と、強度等の十分な物性を兼ね備えたポリオレフィン樹脂についての開示はなされていない。本発明者らの検討によれば、中でも、低温時(0℃以下)における衝撃性低下が著しく、例えば、厳冬期あるいは内容物を冷蔵や冷凍で輸送・保管する際に、包装用容器としたポリオレフィン樹脂製の成形品が落下することで割れてしまうといった問題がある。この問題に対しては、ポリオレフィン樹脂に別の種類の樹脂等を添加して耐衝撃性を改善する試みがなされているが、透明性を維持することが困難であった。本発明者らは、上記の現状に対し、近年における冷蔵・冷凍技術の進展と、電子レンジの普及から、食品包装用の成形体には、透明性の向上に加えて、冷蔵・冷凍環境における十分な強度の確保と、冷蔵・冷凍環境に置かれた成形体が、電子レンジでマイクロ波加熱されて一気に昇温した場合にも十分な強度を有することが求められており、このような成形体を提供できる技術の開発が急務であるとの認識を持つに至った。
【0008】
これに対し、本発明者らの検討によれば、下記に述べるように、上記したいずれの従来技術も、これらの課題を全て解決できるものではなかった。特許文献1で開示された透明性付与のために結晶核剤を添加した結晶性高分子によって得られる成形体は、十分な透明度を達成しているとは言い難く、また、上記した冷蔵や冷凍の低温環境下における成形体の衝撃強度に関する課題解決を目的とするものでなく、当然のことながら、この点からの配慮は何らされていない。
【0009】
特許文献2で開示されたシート用ポリプロピレン系樹脂組成物、特許文献3で開示されたシート成形用プロピレン・α−オレフィン共重合体は、いずれもシートを対象としたものであるため、これらの従来技術で問題としているのは、シートにおける透明度についてであり、一般成形体に関わる透明度を追求したるものではない。更に、当然のことながら、これらの従来技術は、成形体としての強度物性を得るためのものではなく、勿論、冷蔵や冷凍の低温環境下における成形体の衝撃強度を問題としたものでもない。
【0010】
特許文献4で開示された透明性、耐熱性、耐衝撃性、高温クリープ特性に優れるプロピレン系樹脂組成物は、特定のエラストマー及び透明核剤を必須とした配合系の樹脂組成物である。ただし、使用するエラストマー微粒子を分散することで耐衝撃性の向上には繋がるものの、樹脂の透明性を損なうという問題がある。この点を透明核剤の添加によって物性を補う組成としているが、得られた成形体のヘイズ値を考慮すれば、この技術では、本発明が目的としている成形体の透明性としての物性が不十分である。また、冷蔵や冷凍の低温環境下における成形体の衝撃強度を問題とした技術ではない。
【0011】
特許文献5に開示されている、高結晶性ランダム共重合体と、エチレン・プロピレンエラストマー共重合体の微粒子として微細に分散した、優れた耐衝撃性、曲げ弾性率及び透明性を有するポリプロピレン組成物は、強度に重点をおいた組成であるため、透明度としては十分な物性が得られていない。
【0012】
本発明は、このような従来技術の有する問題点に鑑みてなされたものであり、その課題とするところは、高い透明性を有し、更に優れた強度物性を備え、しかも、近年、その要望が高い、冷蔵・冷凍の低温環境下での製品破壊の問題が解決された衝撃強度を高めた成形体の提供を可能にできる構成のポリオレフィン樹脂組成物を提供することにある。すなわち、本発明の目的は、透明性と、強度物性と、特に低温環境下におけるシャルピー衝撃強度とをバランスよく満足した容器等の成形体を形成できる、ポリオレフィン樹脂組成物を提供することにある。本発明の目的は、成形体の強度物性、更には、特に、冷蔵・冷凍の低温環境下でのシャルピー衝撃強度の低下程度が少ない成形体が得られ、冷蔵・冷凍の低温環境下での製品破壊の問題の解決に対応した成形体とでき、しかも、従来のものよりも透明性を向上させた成形体の形成が可能なポリオレフィン樹脂組成物、その成形体を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記の課題は、下記の本発明によって達成される。すなわち、本発明は、[1]透明性と、強度物性と、低温環境下におけるシャルピー衝撃強度とをバランスよく満足した成形体を形成できるポリオレフィン樹脂組成物であって、結晶性ポリオレフィン樹脂を88.5〜99.45質量%、アモルファスポリ−α−オレフィンを0.5〜10質量%、透明化核剤を0.05〜1.5質量%含有してなることを特徴とするポリオレフィン樹脂組成物を提供する。
【0014】
上記のポリオレフィン樹脂組成物の好ましい形態としては、下記のものが挙げられる。
[2]前記強度物性が、JISに基づき測定される、引張強度、曲げ強度及び曲げ弾性率から選ばれる少なくとも一種である前記[1]に記載のポリオレフィン樹脂組成物。
[3]前記アモルファスポリ−α−オレフィンが、アモルファスプロピレン単独重合体、アモルファスプロピレン・エチレン共重合体、アモルファスプロピレン・ブテン−1共重合体、アモルファスプロピレン・エチレン・ブテン−1三元共重合体、アモルファスプロピレン・ペンテン−1共重合体及びアモルファスプロピレン・オクテン−1共重合体である前記[1]又は[2]に記載のポリオレフィン樹脂組成物。
[4]前記結晶性ポリオレフィン樹脂が、高密度ポリエチレン、低密度ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリブテン、エチレン・酢酸ビニル共重合体、エチレン・プロピレンランダム共重合体、エチレン・プロピレングラフト共重合体、エチレン・プロピレンブロック共重合体、エチレン・ブテン共重合体からなる群から選ばれる少なくとも一種である前記[1]〜[3]のいずれかに記載のポリオレフィン樹脂組成物。
[5]前記透明化核剤が、ノニトール系核剤である前記[1]〜[4]のいずれかに記載のポリオレフィン樹脂組成物。
【0015】
また、本発明は、別の実施形態として、[6]前記[1]〜[5]のいずれかに記載のポリオレフィン樹脂組成物を成形してなることを特徴とする成形体を提供する。その好ましい形態としては、[7]冷蔵保管用の容器、冷凍保管用の容器又は電子レンジ用の容器の少なくともいずれかである前記[6]に記載の成形体が挙げられる。
【0016】
なお、本発明の強度物性を改良した上記ポリオレフィン樹脂組成物には、その他の各種添加剤、例えば、染料、顔料、安定剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤等を、必要に応じて配合することができる。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、その透明性と、強度物性と、低温環境下におけるシャルピー衝撃強度とをバランスよく満足した成形体を形成できるポリオレフィン樹脂組成物が提供される。すなわち、本発明のポリオレフィン樹脂組成物を使用して形成した成形体は、従来のものよりも透明性に優れると同時に、透明性の向上のために透明化核剤を添加した形態でありながら、透明化核剤を添加することで低下する傾向にあった成形体における、冷蔵・冷凍の低温環境下でのシャルピー衝撃強度の低下を5%以内程度の低下率に留めた、冷蔵・冷凍の低温環境下での成形体破壊の問題が低減されており、更に、その強度物性の向上効果も達成した、諸物性に優れるものになる。なお、本発明のポリオレフィン樹脂組成物を使用して形成した成形体で達成される「強度物性」とは、引張強度、曲げ強度及び曲げ弾性率から選ばれる少なくとも一種を意味する。
【0018】
上記した本発明の顕著な効果は、本発明者らの下記の知見によって達成された。本発明者らは、ポリオレフィン樹脂に結晶性ポリオレフィンにアモルファスポリ−α−オレフィンを添加した組成物とした場合、該組成物によって形成した成形体は、高度なシャルピー衝撃強度を達成したものとなるものの、強度物性の低下に繋がることを見出した。そして、その課題解決について鋭意検討した結果、驚くべきことに、ポリオレフィン樹脂組成物中に配合した透明化核剤が、形成した成形体に、高度な透明性を加えると同時に強度物性をも改良できることを見出して、透明性と、強度物性と、低温環境下におけるシャルピー衝撃強度とをバランスよく満足した成形体の形成が可能なポリオレフィン樹脂組成物の提供を達成した。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の好ましい実施の形態について説明するが、本発明は以下の実施の形態に限定されるものではない。本発明は、前記したように、従来技術の有する問題点に鑑みてなされたものであり、その課題とするところは、形成した成形体が、高い透明性を有し、優れた強度物性を備え、しかも、近年、その要望が高い、冷蔵・冷凍の低温環境下での製品破壊の問題が解決された衝撃強度を高めたものになる、新規なポリオレフィン樹脂組成物を提供することにある。本発明者らは、先述した従来技術の課題について鋭意検討する過程で、形成した成形体の低温環境下における衝撃強度を高める目的で、結晶性ポリオレフィン樹脂に、特許文献3に開示されているようなアモルファスポリ−α−オレフィンを配合することを試みた。その結果、このような樹脂組成物で形成した成形体は、低温環境下における衝撃強度を高めることができるものの、その強度物性が低下してしまうという新たな課題があることがわかった。この課題に対して、本発明者らは、アモルファスポリ−α−オレフィンを配合したポリオレフィン樹脂組成物とすることで低下する、形成した成形体に生じる強度物性の改良について鋭意検討をした結果、驚くべきことに、特別の手法によることなく、成形体に高度な透明性を与えるために配合する透明化核剤の添加によって、この問題が改善されるという事実を見出した。その一方で、ポリオレフィン樹脂組成物に透明化核剤を添加すると、得られる成形体の低温環境下におけるシャルピー衝撃強度が低下し、透明性は高まるものの、特に低温環境下における耐衝撃性に劣るものになることがわかった。
【0020】
本発明は、上記に挙げた知見に基づきなされたものであって、結晶性のポリオレフィン樹脂に、アモルファスポリ−α−オレフィンを配合することで、特に低温環境下におけるシャルピー衝撃強度を高める一方で、アモルファスポリ−α−オレフィンを配合することで生じた強度物性の低下の問題を、透明化核剤を添加することで改善し、この透明化核剤の添加によって生じるシャルピー衝撃強度の低下の問題を、上記したアモルファスポリ−α−オレフィンを配合することで改善するという、互いに補完関係にある2種の成分を巧みに利用することで、透明性と、強度物性と、低温環境下におけるシャルピー衝撃強度とをバランスよく満足した成形体を形成できるポリオレフィン樹脂組成物に至ったものである。より具体的には、本発明のポリオレフィン樹脂組成物は、結晶性ポリオレフィン樹脂を88.5〜99.45質量%、アモルファスポリ−α−オレフィンを0.5〜10質量%、透明化核剤を0.05〜1.5質量%含有してなることを特徴とする。以下、これらの成分について説明する。
【0021】
<結晶性ポリオレフィン樹脂>
本発明で使用する結晶性ポリオレフィン樹脂としては、下記に挙げるようなものが使用できる。具体的には、例えば、結晶性ホモポリプロピレン、プロピレンを主成分とするプロピレンと、エチレン又は炭素数4以上のα−オレフィンとの共重合体、結晶性ホモポリエチレン、エチレンを主成分とするプロピレンと、エチレン又は炭素数3以上のα−オレフィンとの共重合体であり、例えば、高密度ポリエチレン、低密度ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリブテン、エチレン−酢酸ビニル共重合体、エチレン−プロピレンランダム共重合体、エチレン−プロピレングラフト共重合体、エチレン−プロピレンブロック共重合体、エチレン−ブテン共重合体等を挙げることができる。これらのポリオレフィン樹脂は、一種単独で又は二種以上を組み合わせて用いることができ、中でも、加工性及び成形性等を考慮すると、ホモポリプロピレン、エチレン−プロピレンランダム共重合体、或いは、エチレン−プロピレンブロック共重合体を用いることが好ましい。また、これらの結晶化ポリオレフィンは、X線回折法にて測定される結晶化度が30%より大きく、高度な透明性を得るには、40%以上の結晶化度のものが好ましく使用できる。
【0022】
本発明で使用される結晶性ポリオレフィン樹脂は、メルトフローレート(MFR:JIS K7210に準拠、以下「MFR」と略記する。)に制限はないが、0.05〜500g/10分、好ましくは0.1〜100g/10分、より好ましくは、1〜50g/10分である。MFR値は特に成形性や、成形体における強度物性に係る目安となり、上記した下限値よりも低い場合は、成形性が低下し、用途が限定される点で、実用上あまり好ましくない。上記した上限値を超える場合は、成形体における強度物性が低下する傾向があるため、好ましくない。上記に挙げた値は、添加する物質との組み合わせを考慮し、求められる用途に応じて、成形性及び強度物性のバランスを制御するための基準的な数値範囲である。なお、本発明で使用する結晶性ポリオレフィン樹脂は、示差走査熱量計にて測定される融点が100〜180℃、更には110〜170℃であるものが好ましい。
【0023】
本発明の樹脂組成物は、上記に挙げたような結晶性ポリオレフィン樹脂をベースとしているが、結晶性ポリオレフィン樹脂で形成した成形体は、表面が強固な結晶構造で覆われるので、耐摩耗性、耐溶剤・耐薬品性に優れ、様々な用途に使用できるものとなる。更に、強度物性を必要とする目的から、例えば、ガラス繊維強化プラスチック(FRP)のような、カーボンやガラス繊維を混合し、耐熱・強度アップを目的とした用途でも広く使用されている。ただし、この強度に効果的な結晶構造は、反面、光を遮る性質を兼ね備えており、この点も特徴の一つとなっており、用途によっては不向きである。例えば、光を遮る性質を兼ね備えているため、強度面で優れたFRPにおいても透明度が低くなり、中にはPET(ポリエチレンテレフタレート)のような透明性を有するものもあるが不十分である。このため、結晶性ポリオレフィン樹脂をベースとする材料でありながら、十分な透明度と強度物性を兼ね備えたプラスチック材料の開発が求められている。本発明のポリオレフィン樹脂組成物は、透明性と強度物性に優れるため、このような要求にも対応可能である。
【0024】
<アモルファスポリ−α−オレフィン>
本発明のポリオレフィン樹脂組成物は、結晶性ポリオレフィン樹脂をベースとし、更に必須となる成分として、アモルファスポリ−α−オレフィンを使用する。アモルファスポリ−α−オレフィンは、非晶性のランダムコポリマーであり、ポリ−α−オレフィンの密度測定法による結晶化度が5%未満、好ましくは2%以下である。具体的には、例えば、アモルファスプロピレン単独重合体、アモルファスプロピレン・エチレン共重合体、アモルファスプロピレン・ブテン−1共重合体、アモルファスプロピレン・エチレン・ブテン−1三元共重合体、アモルファスプロピレン・ペンテン−1共重合体、アモルファスプロピレン・オクテン−1共重合体等が挙げられる。中でも、重量平均分子量Mwが200〜500000であるものが好ましく、1000〜200000のものがより好ましくは、更には、2000〜200000であるものを用いるとよい。上記の下限値よりも低分子量のアモルファスポリ−α−オレフィンを使用した場合は、形成した成形体の強度物性が得られ難く、上記の上限値よりも高分子量のアモルファスポリ−α−オレフィンを使用した場合は、成形時の流動性及び作業性が低下し、成形性と同時に透明度への影響がある点で好ましくない。更に、本発明者らの検討によれば、本発明の組成物が必須とするアモルファスポリ−α−オレフィンの代わりに、例えば、耐衝撃性の向上を目的として配合することが知られているスチレン系エラストマーを使用した組成物によって得られる成形体は、透明性を損なうと同時に、特に強度物性が十分なものにならない。また、スチレン系エラストマーを配合させる場合には、粒子径の条件設計が必要となり、分散性に課題がある。
【0025】
本発明のポリオレフィン樹脂組成物は、本発明で規定した通り、ベースとなる88.5〜99.45質量%の結晶性ポリオレフィン樹脂に、アモルファスポリ−α−オレフィンを0.5〜10質量%配合することによって、用途特性として必要なシャルピー衝撃強度を高める効果を有している。その効果は、特に、成形体における厳しい環境下で発揮される。具体的には、本発明のポリオレフィン樹脂組成物によって形成される成形体は、例えば、冷蔵・冷凍の冷温状態からの急速加熱や、マイクロ波加熱で一気に昇温する電子レンジ等への利用に繋がる、このような温度変化においても対応できる、温度変化により変形しにくい成形体となる点で極めて有用である。反面、本発明者らの検討によれば、本発明で必須とするアモルファスポリ−α−オレフィンのポリオレフィン樹脂組成物への添加は、同時に、成形体の様々な強度物性の低下を生じさせる。低下が生じる強度物性は、例えば、引張強度、曲げ強度、曲げ弾性率、低荷重である。従って、上記のことから、本発明では、ベースとなる結晶性ポリオレフィン樹脂に添加させるアモルファスポリ−α−オレフィンを本発明で規定する範囲とすることで、最適化を達成する。すなわち、本発明で規定する下限値を下回る配合量では、形成した成形体において、十分なシャルピー衝撃強度が得られなくなり、一方、本発明で規定する上限値を上回る配合量とした場合には、上記に挙げたような強度物性が低下するので好ましくない。
【0026】
更に、本発明では、ポリオレフィン樹脂組成物で形成した成形体が、高い透明度を実現したものとなることを別の目的としており、本発明者らは、この観点からも検討を行った。そのため、本発明のポリオレフィン樹脂組成物では、透明化核剤を併用すると共に、新たに見出した、透明化核剤をポリオレフィン樹脂に添加することによって生じる特性を利用した組成物の設計を行った。具体的には、ポリオレフィン樹脂に透明化核剤を配合したものとすることで、結晶核形成が促進し、結晶化度が向上すること、また、透明化核剤の結晶サイズを低下させることで、形成した成形
体の強度物性、透明度を向上させる働きが発揮されることがわかった。更に、アモルファスポリ−α−オレフィンと透明核剤を共に配合してポリオレフィン樹脂組成物としたことで、双方の特徴を併せ持つ成形体の形成が可能になることを見出して、本発明を達成した。
【0027】
<透明化核剤>
本発明のポリオレフィン樹脂組成物は、必須成分として、透明化核剤を含有し、形成した成形体において、高い透明性を達成することを一つの特徴としている。本発明者らの検討によれば、ポリオレフィン樹脂組成物に透明核剤を本発明で規定する範囲で配合することによって、ヘイズ値(JIS K7105)を、20%以下(2.5mm)、12%以下(1.5mm)にすることができる。なお、ヘイズ値が20%(2.5mm)、12%(1.5mm)を超える配合は、成形体の透明度としては必ずしも十分とは言えず、透明性を要求性能とする使用用途では品質の低下に繋がる。
【0028】
本発明のポリオレフィン樹脂組成物に使用できる透明化核剤は、特に限定されないが、例えば、タルク、シリカ、カルボン酸金属塩、キシリトール系化合物、リン酸エステル系化合物、トリアミノベンゼン誘導体、ソルビトール系化合物及びノニトール系化合物からなる群から選択して使用することが好ましい。これらの透明化核剤は、一種単独で又は二種以上を組み合わせて用いることができる。本発明では、先に述べたように、透明化核剤の配合によって、ポリオレフィン樹脂へのアモルファスポリ−α−オレフィンの添加によって生じる、形成した成形体の強度物性の低下の問題を改良することができる。そのため、本発明の組成物に配合させる透明化核剤の選択は、これに併用して配合されるアモルファスポリ−α−オレフィンの添加によって生じる成形体の衝撃強度の向上効果がより効果的に発揮できるようにするように行うことが好ましい。本発明者らの検討によれば、本発明に好適な透明化核剤としては、少なくともキシリトール系核剤、ソルビトール系核剤、ノニトール系核剤が好ましい。これらの中でも、ノニトール系核剤が、配合した場合の樹脂中における分散性に優れ、アモルファスポリ−α−オレフィンの添加によって生じる成形体の強度物性の低下の改善にも有効で、適している。
【0029】
本発明のポリオレフィン樹脂組成物中における透明化核剤の含有量は、透明化核剤と共に配合されるアモルファスポリ−α−オレフィンが与える効果との兼ね合いで調整されているが、0.05〜1.5質量%の範囲で配合することを要する。この範囲は、用途特性として、例えば、冷蔵・冷凍環境下で使用される容器等の成形体に必要となるシャルピー衝撃強度を達成するため、共に配合したアモルファスポリ−α−オレフィンによって、低下した成形体の強度物性を改善するのに有効な添加量である。その効果は、ポリオレフィン樹脂組成物中における透明化核剤の含有量が、上記した下限値よりも添加量が少ない場合は、形成した成形体の透明度が不十分となり、一方、添加量が上記した上限値を超えると、樹脂組成物中における透明化核剤の分散性悪化に繋がり、形成した成形体の透明度低下や強度物性の低下の問題を生じる。更に、ノニトール系透明化核剤を配合してなるポリオレフィン樹脂組成物によって調製された成形体は、本発明で規定する組成配合の中で、ヘイズ値が10%以下(1.5mm)の透明性に優れたものとなるので、より好ましい。本発明に好適なノニトール系構造の透明化核剤としては、例えば、1,2,3−トリデオキシ−4,6:5,7−ビス−[(4−プロピルフェニル)メチレン]−ノニトールを使用することができる。
【0030】
先に述べたように、本発明で使用できる透明化核剤としては、ノニトール系透明化核剤に限らず下記に挙げるものも使用できる。キシリトール系構造の透明化核剤の具体的なものとしては、例えば、ビス−1,3:2,4−(5’,6’,7’,8’−テトラヒドロ−2−ナフトアルデヒドベンジリデン)1−アリルキシリトールが挙げられる。また、ソルビトール系構造の透明化核剤としては、例えば、ビス−1,3:2,4−(4’−エチルベンジリデン)1−アリルソルビトール、ビス−1,3:2,4−(3’−メチル−4’−フルオロ−ベンジリデン)1−プロピルソルビトール、ビス−1,3:2,4−(3’,4’−ジメチルベンジリデン)1’−メチル−2’−プロペニルソルビトール、ビス−1,3:2,4−(3’−ブロモ−4’−エチルベンジリデン)−1−アリルソルビトール、モノ2,4−(3’−ブロモ−4’−エチルベンジリデン)−1−アリルソルビトールが挙げられる。
【0031】
<その他の添加剤>
本発明のポリオレフィン樹脂組成物には、本発明が目的としている必要な透明度、強度物性を損なわない程度で、必要に応じて各種添加剤を配合することもできる。添加材としては、例えば、酸化防止剤、紫外線吸収剤、光安定剤、熱安定剤、酸中和剤、発泡剤、顔料・染料等の着色剤、充填剤、金属石鹸、帯電防止剤、抗菌剤、防黴剤、顔料分散剤(ワックス)、滑剤、造核剤、難燃剤、ブロッキング防止剤、脱水剤、艶調整剤等が挙げられ、用途に応じて適宜に選択して含有させることができる。
【0032】
特に、本発明のポリオレフィン樹脂組成物では、透明化核剤を必須として用いるため、その分散剤を用いることが好ましい。分散剤としては、顔料の分散剤として用いる公知のものを適宜に使用することができ、例えば、ポリエチレンワックス、エステルワックス、及び脂肪酸金属石鹸等を用いることができる。ポリエチレンワックスの数平均分子量は300〜8,000であることが好ましく、1,000〜5,000であることがさらに好ましい。なお、ポリエチレンワックスとしては、低分子量ポリエチレン及びその誘導体を用いることができる。ポリエチレンワックスの数平均分子量が300未満であると、透明化核剤の分散性には優れているものの、加工性が低下する傾向にあるので好ましくない。また、ポリエチレンワックスの数平均分子量が8,000超であると、加工性が低下する傾向にあるので好ましくない。
【0033】
本発明のポリオレフィン樹脂組成物では、酸化防止剤を添加することも有効である。酸価防止材としては、例えば、3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシトルエン等の公知のフェノール系酸化防止剤、トリフェニルホスファイト、トリラウリルホスファイト、トリスノリルフェニルホスファイト等のリン系酸化防止剤、テトラキス[メチレン−3−(3’,5’−ジ−t−ブチル−4’−ヒドロキシフェニル)−プロピオネート]メタン等のヒンダードフェノール系酸化防止剤等を使用することができる。
【0034】
紫外線吸収剤としては、公知の、トリアゾール系紫外線吸収剤、安息香酸系紫外線吸収剤、ベンゾフェノン系紫外線吸収剤、蓚酸アニリド系紫外線吸収剤、アクリルエステル系紫外線吸収剤等を使用することができる。
【0035】
着色剤としては、各種の染料の他、アゾ顔料やフタロシアニン系顔料等の有機顔料や、酸化チタン、カーボンブラック、複合酸化物等の無機顔料が挙げられる。また、顔料分散剤としては、先に挙げたような、ポリエチレンワックス、エステルワックス及び脂肪酸金属石鹸等を用いることができる。
【0036】
充填剤としては、無機充填剤と有機充填剤のいずれも用いることができる。無機充填剤の具体例としては、炭酸カルシウム、マイカ、硫酸バリウム、アルミナ等を挙げることができる。また、有機充填剤の具体例としては、木粉、もみがら、新聞紙等の古紙、各種デンプン(アルファー化したデンプン等の構造を変化させたものも含む)、セルロース等を挙げることができる。
【0037】
<ポリオレフィン樹脂組成物の製造方法>
本発明のポリオレフィン樹脂組成物を製造する方法については、先述した各配合成分を均一に混合する手法にて行われ、その方法には特に制限はない。更に、本発明では、予めマスターバッチとして樹脂と高濃度の組成物を作成し、その後更に樹脂と混合希釈し、目的のポリオレフィン樹脂組成物を得ることもできる。その場合、公知の混練造粒方法によって各成分を混練するとともに造粒すれば、ペレット状等の所望の形状を有するマスターバッチを製造することができる。
【0038】
<ポリオレフィン樹脂成形体の製造方法>
本発明のポリオレフィン樹脂組成物は、これを用いて成形することで、透明性と、強度物性と、低温環境下におけるシャルピー衝撃強度とをバランスよく満足したポリオレフィン樹脂製の所望の形状の成形体を得ることができる。特に、冷蔵保管用の容器、冷凍保管用の容器又は電子レンジ用の容器等の成形体とすることが有効である。本発明のポリオレフィン樹脂組成物は、汎用のポリオレフィン樹脂をベースとしたものであるため、成形体を得るための成形方法は特に制限がなく、公知の成形方法をいずれも使用できる。具体的な成形方法としては、例えば、射出成形法、射出発泡成形法、超臨界射出発泡成形法、射出圧縮成形法、ガスアシスト射出成形法、サンドイッチ成形法、及びサンドイッチ発泡成形法、圧縮成型法等を挙げることができる。
【0039】
本発明のポリオレフィン樹脂組成物を用いて成形体を得る方法としては、シートとして成形することも好ましい方法の一つである。例えば、高度に透明性が優れている点から、押出Tダイ成形方法が使用できる。これは、一軸、二軸、ギヤ押出機等を用い、ポリオレフィン溶融樹脂組成物をTダイより、シート状に押出、冷却ロールで固化しながら成形する方法である。更に、真空、圧空、真空圧空成形方法によって、前記のようにして得た樹脂シートを樹脂容器として熱成形することも、好適な方法として挙げることができる。本発明のポリオレフィン樹脂組成物は、結晶化温度が高く、成形体強度や成形体を製造する際の冷却時間の短縮に繋がり、強度物性への効果と同時に、成形体製造の生産性向上の面で有効である。その際の結晶化温度としては、強度及び生産性の効果から、100℃以上であればよいが、110〜180℃が好ましく、120〜170℃がより好ましい。
【0040】
本発明のポリオレフィン樹脂組成物を使って形成した成形体の形状は、使用目的に応じて任意の形状を選択することができる。例えば、曲げ弾性率等、強度物性に優れ、透明性が必要とされる中で、シート、フィルム、表皮材、シール材、電気電子部品、弁当容器型、飲料用容器型、ゼリーカップ型等の食品包装用途の各種の形状のものが挙げられる。本発明では、成形体を、透明性と、強度物性と、低温環境下におけるシャルピー衝撃強度とをバランスよく満足したものにできるため、これらの性能が要求される、冷蔵及び冷凍用の容器、電子レンジ用容器、医療用材料、乳児・幼児用品、電気・電子部品、家電製品、住設機器、車両部品、自動車内装材等の、様々な製品に使用できるものと期待される。
【0041】
以上のように、本発明のポリオレフィン樹脂組成物を使って形成された成形体は、高度な透明性、低温環境下における耐衝撃性等、引張強度、曲げ強度及び曲げ弾性率といった強度物性を有する特徴のものになる。本発明の成形体は、このような特性を有するため、特に、内容物が確認でき、破損し難い強度と、低温高温環境における耐久性が求められる用途に最適である。このため、前記挙げた用途に限らず、家庭用・日用品、飲食料・調味料・医薬品・化粧品・化学品等の容器、輸送用・工業部品用・建材用・産業資材用部品等として、特に有効に利用できる。
【実施例】
【0042】
本発明を具体的に説明するために、以下に実施例及び比較例を挙げて本発明をより詳細に説明する。ただし、本発明はこれらの実施例によって何ら限定されるものではない。なお、実施例、比較例中の「部」及び「%」は、特に断らない限り質量基準である。
【0043】
下記に示した各成分をそれぞれに用いて実施例と比較例のポリオレフィン樹脂組成物を調製した。具体的には、結晶性ポリオレフィン樹脂として下記の流動度(MFR)の異なる2種類のものを用い、アモルファスポリ−α−オレフィンとして下記の2種類のものを用い、透明化核剤として下記の2種類のものを用いた。また、その他の添加剤として、下記のように、酸化防止剤と分散剤とを1:1の比で用いた。更に、比較例8では、衝撃強度を高める目的で従来使用されている下記のスチレン系エラストマーを用いた。これをその他の添加剤−2とした。
【0044】
(1)結晶性ポリオレフィン;
EP−1:低密度エチレン−プロピレン(質量比=2:1)共重合体(MFR7g/10分)
P−2:プロピレン単独重合体(MFR5g/10分)
(2)アモルファスポリ−α−オレフィン;
APAO−1:アモルファスエチレン・プロピレン共重合体
APAO−2:アモルファスプロピレン・エチレン・ブテン共重合体
(3)透明化核剤;
透明化核剤−1:1,2,3−トリデオキシ−4,6:5,7−ビス−[(4−プロピルフェニル)メチレン]−ノニトール
透明化核剤−2:ビス−1,3:2,4−(4’−エチルベンジリデン)1−アリルソルビトール
(4)その他の添加剤;
添加剤−1:酸化防止剤/分散剤=1/1
〔酸化防止剤=3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシトルエン、分散剤=ポリエチレンワックス〕
添加剤−2:スチレン系エラストマー
〔スチレン−エチレン−ブテン−スチレン共重合体(MFR5g/10分)〕
【0045】
[実施例1〜7]
上記した各成分を用い、結晶性ポリオレフィン樹脂と、透明化核剤と、アモルファスポリ−α−オレフィン(APAOと略記)と、添加剤−1を、ヘンシェルミキサーを用いて十分に混合した。その後、押出機を用いて160〜200℃で混練造粒し、円柱状ペレット(直径3mm×長さ3mm)のマスターバッチをそれぞれに得た。そして、得られたマスターバッチ20部と、それぞれの実施例で用いたと同様の結晶性ポリオレフィン樹脂(エチレン−プロピレン共重合体)80部とを混合し、成形温度200℃で射出成形を行って射出成形体を作製し、形状の異なるダンベル片を作製して、後述するそれぞれの評価用サンプルとした。得られた各評価用サンプルを構成するポリオレフィン樹脂組成物における配合比(単位:質量%)を表1の上段に示した。
【0046】
[比較例1〜8]
表2の上段に示す配合としたこと以外は、前述の実施例と同様にして比較例1〜8の各評価用サンプル製造した。
【0047】
<評価>
上記で得た実施例及び比較例の各評価用サンプルを用い、下記の各項目について、下記の方法で測定し、それぞれ評価した。評価結果は、表1及び表2の下段に、それぞれ示した。「強度物性」については、引張強度、曲げ強度及び曲げ弾性率をそれぞれ測定し、評価した。「シャルピー衝撃強度」については、常温(23℃)、氷温(0℃)、冷凍(−20℃)の各条件での衝撃強度を測定し、評価した。また、「透明性」については、ヘイズ値を測定して評価した。各評価方法は以下の通りである。
【0048】
(1)引張強度試験(単位:MPa)
上記のようにして作製した下記の形状のダンベル型試験片を評価用サンプルとして用い、JIS K7161に準じて下記の条件で測定した。
・試験片:JIS K7139に準拠する多目的試験片A型
・引張速度:50mm/分
【0049】
(2)曲げ強度試験(単位:MPa)
上記のようにして作製した下記の形状の短柵状試験片を評価用サンプルとして用い、JIS K7171に準じて下記の条件で測定した。
・試験片:10mm(幅)×4mm(厚さ)×80mm(長さ)
・曲げ速度:2mm/分
【0050】
(3)曲げ弾性率(単位:MPa)
上記のようにして作製した下記の形状の短柵状試験片を評価用サンプルとして用い、JIS K7171に準じて下記の条件で測定した。
・試験片:10mm(幅)×4mm(厚さ)×80mm(長さ)
・試験速度2mm/分
【0051】
(4)シャルピー衝撃試験(単位:kJ/m
2)
上記のようにして作製した下記の形状の切削ノッチを設けた短柵状試験片を評価用サンプルとして用い、JIS K7111に準じて下記の条件でそれぞれ測定した。
・試験片:10mm(幅)×4mm)×80mm(長さ)(切削ノッチ)
・測定温度:23℃、0℃、−20℃
・ハンマー:2.0J
【0052】
(5)加熱変形試験(低荷重 HDT;単位:℃)
上記のようにして作製した下記の形状の短柵状試験片を評価用サンプルとして用い、JIS K7191に準じて下記の条件で測定した。
・試験片:5mm(幅)×4mm(厚さ)×80mm(長さ)
・荷重:0.45MPa
【0053】
(6)ヘイズ値の測定(HAZE、単位:%)
上記のようにして作製した下記の形状の2段プレート試験片を評価用サンプルとして用い、JIS K7136に準じて測定した。ヘイズ値が小さいほど透明性が良好であることを示す。
・試験片:50mm(幅)×1.5又は2.5mm(厚さ)×90mm(長さ)
【0054】
(7)結晶化温度測定(単位:MPa)
評価用サンプルを作製した樹脂組成物について、下記の方法で熱分析を行い、結晶化温度を測定した。JIS K7122に準拠する方法に準拠し、加熱速度10℃/分にて常温から200℃まで加熱して溶融させたサンプルを、冷却速度10℃/分にて40℃まで温度を降下させる際に得られるDSC曲線の結晶化熱量ピークの頂点温度を、結晶化温度(℃)とした。
【0055】
【0056】
【0057】
表1、2から下記のことが確認された。まず、比較例1と2との比較から、結晶性ポリオレフィン樹脂に透明化核剤を配合することで、透明性が格段に向上し、強度物性も向上するものの、シャルピー衝撃強度が低下することを確認した。また、比較例1と3との比較から、結晶性ポリオレフィン樹脂にAPAOを配合することで、強度物性が低下する傾向を示すが、シャルピー衝撃強度を向上させることができることを確認した。更に、比較例8では、透明化核剤と共に、APAOに替えて衝撃強度を向上させる目的でスチレン系エラストマーを配合したが、この場合は、シャルピー衝撃強度の改善効果が高いものの、比較例8では、その配合量が0.8質量%と実施例の場合と比較して低いにもかかわらず、強度物性が劣るものになることを確認した。APAOを配合した場合に比べて強度物性の低下が著しいことは、APAOの配合量を同様に0.8質量%とした比較例5、6における強度物性との比較から明らかである。
【0058】
上記知見に基づき、結晶性ポリオレフィン樹脂に配合する透明化核剤とAPAOの配合バランスを、互いの欠点を補完して、透明性と、強度物性と、低温環境下におけるシャルピー衝撃強度とをバランスよく満足した実用化できる成形体が得られるポリオレフィン樹脂組成物を見出すべく検討した結果、本発明に至ったものである。実施例1〜7に示した通り、比較例の各成形体に比べ、実施例では、透明性と、強度物性と、低温環境下におけるシャルピー衝撃強度とをバランスよく満足した成形体の形成が可能になることが確認された。