(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
車載用の鉛蓄電池は、公称電圧6V(3直列)、12V(6直列)及び24V(12直列)の製品が広く用いられている。それに対し、ニッケル水素蓄電池については鉛蓄電池と同様の公称電圧の製品は少ない。個々のニッケル水素蓄電池は、公称電圧が1.2Vであるため、5直列で6V、10直列で12V及び20直列で24Vとなり、容易に鉛蓄電池と同じ公称電圧とし得る。これに対し、リチウムイオン二次電池は使用されている正極活物質や負極活物質の種類によって公称電圧が種々異なっているので、個々のリチウムイオン二次電池を直列接続するのみで車載用として普通に使用されている鉛蓄電池の公称電圧に合わせることは容易ではない。そのため、通常、鉛蓄電池と並列接続するサブバッテリとしては、複数個のニッケル水素蓄電池を直列接続ないし直並列接続したものが選択されている。
【0007】
ニッケル水素蓄電池及びそれを複数個直列接続した蓄電池モジュールは、電池内の空間部が上側を向くように縦置きもしくは横置きとなるようにして使用される。これは、電池内の空間部が下側を向くと、電解液が空間部に溜まるため、電極群が保持する電解液量が減少して耐久性が低下してしまうことがあるあるからである。しかしながら、用途によっては必ずしも電池内の空間部が上側を向くように縦置きあるいは横置きに載置できない場合がある。また、特にニッケル水素蓄電池を複数個直列接続した蓄電池モジュールでは、外周囲が外装体ないしケースによって覆われているため、外部から電池内の空間部が上側を向いているか否かを明確に確認できないことも多い。そのため、少なくとも蓄電池モジュールでは、載置方向によらず耐久性が低下し難いものが要求されている。
【0008】
本発明の一態様によれば、載置方向によらず、耐久性が良好な蓄電池モジュール及びこの蓄電池モジュールと鉛蓄電池とを並列接続した蓄電池システムを提供することができる。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の一態様によれば、複数個のニッケル水素蓄電池が互いに直列接続された蓄電池モジュールであって、
隣接するそれぞれの前記ニッケル水素蓄電池は、正極端子と負極端子とが互いに上下反転して直列に接続されており、
前記複数個のニッケル水素蓄電池のそれぞれは、
正極と負極とがセパレータを介して互いに絶縁された状態で巻回され、軸方向の両端にそれぞれ正極集電体及び負極集電体が設けられた電極群と、
前記電極群及びアルカリ電解液が収納され、一端が開口された外装体と、
前記外装体の開口を封止するように、前記外装体とは電気的に絶縁された状態で取り付けられた封口体と、を備え、
前記正極集電体及び前記負極集電体は、一方が前記封口体に電気的に接続され、他方が前記外装体に電気的に接続されており、
前記アルカリ電解液の量は、単位正極容量当たり、2.4g/Ah以上、3.3g/Ah以下であり、
前記アルカリ電解液中には、タングステン化合物、モリブデン化合物、ニオブ化合物から選択された少なくとも1種がそれぞれの金属換算で前記アルカリ電解液1g当たり、20mg以上、50mg以下で含有されている、蓄電池モジュールが提供される。
【0010】
また、本発明の別態様によれば、上記ニッケル水素蓄電池モジュールと、鉛蓄電池とが並列に接続されている、蓄電池システムが提供される。
【発明の効果】
【0011】
本発明の一態様の蓄電池モジュールによれば、載置方向の如何にかかわらず、耐久性が良好な蓄電池モジュールが得られる。加えて、本発明の別態様の蓄電池システムによれば、車載用の蓄電池システムとして使用しても鉛蓄電池の劣化が抑制された蓄電池システムが得られる。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明を実施するための形態について詳細に説明する。ただし、以下に示す実施形態は、本発明の技術思想を理解するために例示するものであって、本発明をこの実施形態に特定することを意図するものではなく、本発明は特許請求の範囲に示した技術思想を逸脱することなく種々の変更を行ったものにも均しく適用し得るものである。
【0014】
<ニッケル水素蓄電池>
ニッケル正極は、基板となるニッケル焼結基板の多孔内に水酸化ニッケルを主成分とし、水酸化亜鉛、水酸化コバルトから選択したいずれかの化合物が添加された正極活物質が充填されたものを用いた。この場合、ニッケル焼結基板は以下のようにして作製したものを用いた。
【0015】
ニッケル(Ni)粉末に、増粘剤となるメチルセルロース(MC)と、たとえば孔径が60μm高分子中空微小球体と、水とを混合、混練してニッケルスラリーを作製した。次いで、ニッケルめっき鋼板からなるパンチングメタルの両面にニッケルスラリーを塗着した後、還元性雰囲気中1000℃で加熱し、増粘剤及び高分子中空微小球体を消失させるとともに、ニッケル粉末同士を焼結することにより、多孔質ニッケル焼結基板を得た。なお、得られた多孔性ニッケル基板を水銀圧入式ポロシメータ(ファイソンズ インスツルメンツ製 Pascal 140)で測定したところ、多孔度が85%であった。
【0016】
得られた多孔質ニッケル焼結基板を硝酸ニッケル(Ni(NO
3)
2)と硝酸亜鉛(Zn(NO
3)
2)ないし硝酸コバルト(Co(NO
3)
2)との混合水溶液からなる含浸液に浸漬した後に、80℃(8mol/L)のアルカリ溶液(例えば水酸化ナトリウム水溶液)中に浸漬してアルカリ処理を行った。これにより、硝酸ニッケルと、硝酸亜鉛ないし硝酸コバルトとを水酸化ニッケル(Ni(OH)
2)、水酸化亜鉛(Zn(OH)
2)ないし水酸化コバルト(Co(OH)
2)に転換させた。この後、充分に水洗してアルカリ溶液を除去した後、乾燥させた。
【0017】
このような、多孔質ニッケル焼結基板への含浸液の含浸、乾燥、アルカリ処理液への浸漬、水洗、および乾燥という一連の正極活物質の充填操作を7回繰り返すことにより、予め実験的に定めた量の正極活物質を多孔質ニッケル焼結基板に充填した。
【0018】
水素吸蔵合金負極は、以下のようにして、ニッケルメッキした軟鋼材製のパンチングメタルからなる負極芯体に水素吸蔵合金スラリーを充填することにより作製したものを用いた。たとえば、ランタン(La)、ネオジム(Nd)、マグネシウム(Mg)、ニッケル(Ni)、アルミニウム(Al)を下記化学式のモル比となる割合で混合し、この混合物を高周波誘導炉で溶解させ、これを急冷して、La
0.4Nd
0.5Mg
0.1Ni
3.5Al
0.2で表される水素吸蔵合金のインゴットを作製した。得られた水素吸蔵合金のインゴットを、水素吸蔵合金の融点よりも30℃だけ低い温度で、たとえば10時間の熱処理を行った。
【0019】
この後、得られた水素吸蔵合金のインゴットを粗粉砕した後、不活性雰囲気中で機械的に粉砕し、篩分けにより400メッシュ〜200メッシュの間に残る水素吸蔵合金粉末を選別した。なお、得られた水素吸蔵合金粉末の平均粒径は、レーザ回折・散乱式粒度分布測定装置により粒度分布の測定値より求めると、質量積分50%(D50)にあたる平均粒径は25μmであった。これを水素吸蔵合金粉末とした。
【0020】
得られた水素吸蔵合金粉末100質量部に対し、非水溶性高分子結着剤としてのSBR(スチレンブタジエンラテックス)を0.5質量部と、増粘剤としてCMC(カルボキシメチルセルロース)を0.03質量部と、適量の純水を加えて混練して、水素吸蔵合金スラリーを調製した。そして、得られた水素吸蔵合金スラリーをパンチングメタル(ニッケルメッキ鋼板製)からなる負極芯体の両面に塗着した後、100℃で乾燥させ、所定の充填密度になるように圧延した後、所定の寸法に裁断して、水素吸蔵合金負極を作製した。
【0021】
アルカリ電解液は、水酸化カリウム(KOH)、水酸化ナトリウム(NaOH)、水酸化リチウム(LiOH)を所定のモル比となるよう調整した混合水溶液に適宜量のタングステン酸ナトリウムを添加したものを使用した。この場合、表1及び2に示したように、タングステン化合物無添加(蓄電池モジュールA)、タングステン化合物をタングステン換算でアルカリ電解液1gあたり15mg(蓄電池モジュールB)、20mg(蓄電池モジュールC)ないし50mg(蓄電池モジュールD及びE)となるように添加したものを用いた。また、アルカリ電解液量は、それぞれ2.4g/Ah(蓄電池モジュールA〜D)及び3.3g/Ah(蓄電池モジュールE)となるようにした。
【0022】
上記のようにして作製されたニッケル正極と水素吸蔵合金負極との間に、目付が55g/cm
2のポリオレフィン製不織布からなるセパレータを介在させ、巻回して渦巻状電極群を作製した。このとき、前記セパレータの少なくとも一方の面は、スルホン化処理を行うか又はアンモニア吸着能繊維とすることにより、アンモニア吸着能を有している。
【0023】
この渦巻状電極群の上端面に露出した、ニッケル正極板の極板芯体端部に正極集電体を溶接した。一方、下端面に露出した水素吸蔵合金極板の極板芯体端部に、負極集電体を溶接した。この渦巻状電極体を外装缶に挿入し、負極集電体と缶底とを溶接し、上記電解液を前記外装缶に注液した。この後、集電リードに封口体を溶接し、封口部をカシメて封口し、それぞれ電池容量が6.0Ahの5種類の円筒状ニッケル水素蓄電池を作製した。
【0024】
上述のようにして作製された5種類の円筒状ニッケル水素蓄電池に共通する具体的構成を
図1を用いて説明する。これらのニッケル水素蓄電池10は、上述のようにして作製されたニッケル正極11と、水素吸蔵合金負極12とがセパレータ13とを介して互いに絶縁された状態で巻き回された巻回電極体14を有している。
【0025】
ニッケル正極11は、ニッケルめっき鋼板からなるパンチングメタルからなる正極芯体15の両面に形成された多孔質ニッケル焼結体16内に、水酸化ニッケルを主成分とし、水酸化亜鉛、水酸化コバルトから選択したいずれかの化合物が添加された正極活物質17が充填された構成を有している。水素吸蔵合金負極12は、ニッケルメッキした軟鋼材製のパンチングメタルからなる負極芯体18の両面に負極活物質としての水素吸蔵合金粉末を有する負極合剤層19が形成されている。
【0026】
巻回電極体14の下部には負極芯体18に負極集電体20が抵抗溶接されており、巻回電極体14の上部には正極芯体15に正極集電体21が抵抗溶接されている。巻回電極体14は、鉄にニッケルメッキを施した有底円筒形の金属製の外装缶22内に挿入されており、負極集電体20と外装缶22の底部との間はスポット溶接されている。
【0027】
外装缶22の開放端側には、鉄にニッケルメッキを施した封口体23が、ガスケット24を介して外装缶22とは電気的に絶縁された状態で、カシメ固定されている。正極集電体21は、封口体23に溶接されて電気的に接続されている。正極集電体21の中央部には開口25が設けられており、この開口25には弁体26が開口25を塞ぐように配置されている。
【0028】
また、封口体23の上面には、開口25の周囲を覆い、かつ、弁体26とは一定距離だけ隔てた状態となるように、正極キャップ27が設けられている。正極キャップ27には、適宜ガス抜き孔(図示省略)が設けられている。正極キャップ27の内面と弁体26との間にはバネ28が設けられており、弁体26はバネ28によって封口体23の開口25を塞ぐように押圧されている。この弁体26は外装缶22の内部の圧力が高くなった際に、内部の圧力を逃がす安全弁としての機能を有している。
【0029】
上述のようにして作製された5種類の円筒状ニッケル水素蓄電池を、それぞれ25℃に維持された恒温槽中で、1It(=6A)の充電電流でSOC(State Of Charge:充電状態)120%まで充電し、1時間休止した。次いで、60℃に維持された恒温槽中で24時間放置した後、30℃に維持された恒温槽中で、1Itの放電電流で電池電圧が0.9Vになるまで放電させた。この充放電サイクルを1サイクルとして2サイクル繰り返して、電池を活性化した。次いで、活性化された5種類の円筒状ニッケル水素蓄電池を
図2に示したように、それぞれ10個直列に接続し、下記表1に示す5種類の蓄電池モジュールA〜Eを作製した。この際、10個のニッケル水素蓄電池は、
図2に示したように、2個ずつ直列にしたものを相互に上向き及び下向きとなるように配置し、隣り合うニッケル水素蓄電池が互いに上下反転して配置されている状態とした。
【0031】
<蓄電池システム>
上記の鉛蓄電池と上記表1に示した5種類の各蓄電池モジュールA〜Eを用い、それぞれ以下の処理を行ってから並列接続した。
【0032】
鉛蓄電池は、電池工業会規格(SBA S 0101)で定める充電条件、すなわち、0.2It(=9.6A)の充電電流で、15分ごとに測定した充電中の端子電圧、または温度換算した電解液密度が3回連続して一定値を示すまで充電し、室温において24時間放置後の開回路電圧を測定し、初期電圧として求めた。
【0033】
蓄電池モジュールA〜Eは、それぞれ1Itの定電流で電池容量の110%まで充電した後、1Itでの定電流で予め実験的に定めた所定のSOCとなるまで放電し、その状態で室温において24時間放置後の開回路電圧を測定し、初期電圧として求めた。予め実験的に定めた所定のSOCとは、予め蓄電池モジュールを室温で24時間放置した後の開回路電圧とSOCとの関係を求めておき、蓄電池モジュールを室温において24時間放置した後の開回路電圧が鉛蓄電池の初期電圧とほぼ等しくなるときのSOCを示す。
【0034】
<鉛蓄電池>
各実験例及び比較例で使用する鉛蓄電池としては、電池工業会規格(SBA S 0101)で定める試験条件で、以下の性能を満たす鉛蓄電池を用いた。この鉛蓄電池の定格電圧は12Vである。
5時間率容量 :48Ah
定格コールドクランキング電流:320A
充電受入性 :6.0A
前記方法により所定開始電圧に調整した鉛蓄電池と蓄電池モジュールA〜Eのそれぞれを、それぞれの開回路電圧の差が0.1V以内であることを確認してから、並列に接続し、実験例1〜5の蓄電池システムを作製した。
【0035】
このような鉛蓄電池とニッケル水素蓄電池とが並列に接続された蓄電池システムにおいて、定電流放電から定電圧充電に切り替えた際の一般的な充放電挙動を
図3に示した。
図3の記載から以下のことが分かる。すなわち、充電時及び放電時とも、充電電流及び放電電流は両方の蓄電池に流れる。しかし、放電時にはニッケル水素蓄電池の放電電流が鉛蓄電池のものよりも大きく、充電時の鉛蓄電池の充電電流は、過度的にニッケル水素蓄電池のものよりも大きくなるが、すぐに低下してニッケル水素蓄電池のものよりも小さくなる。
【0036】
このことから、鉛蓄電池とニッケル水素蓄電池とが並列に接続された蓄電池システムでは、充放電に際してはサブバッテリであるニッケル水素蓄電池が優先的に充放電を行うため、メインバッテリである鉛蓄電池は放電負荷が低減されて満充電に近い状態が維持され、蓄電池システムの長寿命化が可能となることが分かる。
【0037】
<耐久試験>
鉛蓄電池単独(参考例)及び実験例1〜5のそれぞれの蓄電池システムについて、それぞれのニッケル水素蓄電池が上下方向に向くように垂直に立てた状態とし、60℃の恒温槽内で、14Vで60秒の充電と、45Aで59秒の放電と、300Aで1秒の放電とを3600回繰り返した後に、2日間放置する耐久試験を繰り返し行った。
【0038】
上記のようにして300Aで1秒放電した後の蓄電池システムの電圧が7.2Vを下回ったときの充放電の繰り返し回数を耐久性の指標として測定し、結果を、実験例2の繰り返し回数に対する比率Xとして求めた。結果をまとめて表2に示した。
【0040】
上記結果によれば、蓄電池モジュールAと蓄電池モジュールBを鉛蓄電池に並列接続した実験例1及び2の場合、鉛蓄電池単独の場合よりも耐久性が向上するが、その効果は十分でなかった。耐久試験後の蓄電池モジュールA及びBを分解し、各電池の内部の抵抗値を確認したところ、正極端子が下側になるよう配置された電池の劣化が顕著であることが確認された。これは、電池内の空間部が下側を向くと、電解液が空間部に溜まるため、電極群が保持する電解液量が減少して、耐久性が低下してしまうからである。
【0041】
また、蓄電池モジュールCと蓄電池モジュールDを鉛蓄電池に並列接続した実験例3及び4の場合、十分な耐久性を示すことが確認された。これは電解液中に充分量のタングステン化合物を添加することで、電極群の液保持性が向上したためと考えられる。特に実験例2〜4の結果を対比すれば、電解液にタングステン化合物を添加すると、その添加量の増大に比例して耐久性の改善効果が向上していることが確認された。これは電解液中に充分量のタングステン化合物を添加することで、電極群の液保持性が向上したためと考えられる。ただし、タングステン化合物を50mgよりも多く添加すると、液抵抗の増大により電池の出力特性が低下することから、添加量は、電解液1g当たり20mg以上、50mg以下が好ましい。
【0042】
実験例4及び5の結果を対比すると、電池内に注液される電解液量が多いほど、耐久性が改善されることがわかる。ただし、電解液量が3.3g/Ahより多いと、充電時の電池内圧上昇が大きくなり、場合によっては漏液するといった課題が発生するため、電解液量は2.4g/Ah以上、3.3g/Ah以下が好ましい。
【0043】
なお、蓄電池モジュールB〜Eでは、電解液中にタングステン源としてタングステン酸ナトリウムを添加した例を示したが、タングステン酸カリウム、タングステン酸リチウム等のタングステンの水溶性酸素酸塩や、タングステンの酸化物も同様に使用し得る。タングステン以外に、ニオブ化合物ないしモリブデン化合物を添加した場合においても同様の効果が奏される。この場合、ニオブの水溶性酸素酸塩や酸化物、モリブデンの水溶性酸素酸塩や酸化物として添加すればよい。これらのことから、電解液中に、タングステン化合物、モリブデン化合物、ニオブ化合物から選択された少なくとも1種が、電解液1g当たり、タングステン、モリブデンないしニオブ換算で20mg以上、50mg以下で含有されていることが好ましいことが分かる。
【0044】
また、上記実験例では負極活物質としてLa
0.4Nd
0.5Mg
0.1Ni
3.5Al
0.2で表される水素吸蔵合金を用いたニッケル水素蓄電池を用いた例を示したが、他の組成の水素吸蔵合金を用いたニッケル水素蓄電池も使用し得る。例えば、負極活物質として一般式がLa
xRe
yMg
1−x−yNi
n−aM
a(ReはLaを除く希土類元素から選択される少なくとも1種の元素:Nd、Sm、Y等、MはAl、Znから選択される少なくとも1種の元素)で表される水素吸蔵合金を用いたニッケル水素蓄電池を用いることができる。
【0045】
上記実験例では鉛蓄電池として公称電圧12Vのものを用いたため、蓄電池モジュールA〜Eとしては、ニッケル水素蓄電池を10直列したものを用いた例を示した。ただし、鉛蓄電池は車載用として公称電圧6V(3直列)、12V(6直列)及び24V(12直列)の製品が広く用いられており、個々のニッケル水素蓄電池は公称電圧が1.2Vであるため、ニッケル水素蓄電池が5直列で6V、10直列で12V及び20直列で24Vとなり、容易に鉛蓄電池と同じ公称電圧とし得る。すなわち、用いる鉛蓄電池の公称電圧が6×nV(ただし、nは正の整数)であるとき、この鉛蓄電池に対して5n個のニッケル水素蓄電池を直列接続した蓄電池モジュールを並列に接続すればよい。
【0046】
この場合においても、隣接するそれぞれのニッケル水素蓄電池は、正極端子と負極端子とが互いに上下反転して直列に接続されている状態とすればよい。すなわち、鉛蓄電池の公称電圧が12Vのものであれば、ニッケル水素蓄電池を、
(1)1個ずつ互いに上下反転して直列接続する、
(2)2個直列接続したもの同士を互いに上下反転して直列接続する、
(3)5個直列接続したもの同士を互いに上下反転して直列接続する、
等の構成を採用し得る。
【0047】
なお、
図4に示したように、従来の車載用電源システム部51は、オルタネーター52と、スターター53と、鉛蓄電池54とが、適宜スイッチ55を介して、互いに並列に接続された構成を備えている。スターター53は、最初の始動時ないしアイドルストップ状態からの始動時のスイッチ55がON状態とされた際に、エンジン(図示省略)を駆動させるためのモーターとして作動するものであり、この時の駆動電力は鉛蓄電池54の放電によって供給される。オルタネーター52は、エンジンの駆動時ないしエンジンブレーキとして機能させるための発電機として作動するものであり、この時の回生エネルギーは鉛蓄電池54に充電される。
【0048】
本発明の一態様に係る蓄電池システム50は、上述した車載用電源システム部51における鉛蓄電池54に対して、サブバッテリとしてニッケル水素蓄電池56を複数個直列接続した蓄電池モジュール56Aを並列に接続したものに対応する。すなわち、オルタネーター52と、スターター53と、鉛蓄電池54及び蓄電池モジュール56Aによって形成される蓄電池システム50とによって、新たな車載用電源システム50Aが構成される。この場合、蓄電池モジュール56Aには、適宜制御回路57、ニッケル水素蓄電池56の温度を測定するためのサーミスタなどの温度測定手段58、蓄電池モジュール56Aに流れる電流を測定するためのシャント抵抗59等が接続される場合もある。
【0049】
なお、
図4には、サブバッテリとしての蓄電池モジュール56Aとしてニッケル水素蓄電池56を10直列したものを1個用いた例を示したが、より大容量のサブバッテリが必要な場合には、蓄電池モジュール56Aを複数個並列に接続すればよい。
【0050】
このような蓄電池システム50を用いた車載用電源システム50Aによれば、最初の始動時ないしアイドルストップ状態からの始動時、定常走行時などの場合には、サブバッテリとしての蓄電池モジュール56Aからの放電電流が鉛蓄電池54のものよりも大きくなる。また、回生エネルギーによる充電時には、鉛蓄電池54の充電電流は、過度的に蓄電池モジュール56Aからのものよりも大きくなるが、すぐに低下して蓄電池モジュール56Aのものよりも小さくなる。これにより、鉛蓄電池54と複数個のニッケル水素蓄電池56からなる蓄電池モジュール56Aとが並列に接続された蓄電池システム50では、充放電に際してはサブバッテリである蓄電池モジュール56Aが優先的に充放電を行うため、メインバッテリである鉛蓄電池54は放電負荷が低減され、蓄電池システム50の長寿命化が可能となる。