特許第6200901号(P6200901)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6200901アクティブ弁を有するカートリッジ・ハブ
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6200901
(24)【登録日】2017年9月1日
(45)【発行日】2017年9月20日
(54)【発明の名称】アクティブ弁を有するカートリッジ・ハブ
(51)【国際特許分類】
   A61M 5/24 20060101AFI20170911BHJP
   A61M 39/22 20060101ALI20170911BHJP
【FI】
   A61M5/24 530
   A61M39/22 100
【請求項の数】15
【全頁数】25
(21)【出願番号】特願2014-550724(P2014-550724)
(86)(22)【出願日】2013年1月9日
(65)【公表番号】特表2015-506212(P2015-506212A)
(43)【公表日】2015年3月2日
(86)【国際出願番号】EP2013050297
(87)【国際公開番号】WO2013104665
(87)【国際公開日】20130718
【審査請求日】2015年12月22日
(31)【優先権主張番号】12150480.7
(32)【優先日】2012年1月9日
(33)【優先権主張国】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】397056695
【氏名又は名称】サノフィ−アベンティス・ドイチュラント・ゲゼルシャフト・ミット・ベシュレンクテル・ハフツング
(74)【代理人】
【識別番号】100127926
【弁理士】
【氏名又は名称】結田 純次
(74)【代理人】
【識別番号】100140132
【弁理士】
【氏名又は名称】竹林 則幸
(72)【発明者】
【氏名】デーヴィッド・ムーア
【審査官】 佐藤 智弥
(56)【参考文献】
【文献】 米国特許第4044757(US,A)
【文献】 国際公開第2010/051205(WO,A2)
【文献】 特開2010−110572(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61M 5/24
A61M 39/22
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも2つの薬作用物質を送達するための薬物送達デバイス用の投薬インターフェース(402)であって、
薬物送達デバイスのカートリッジ・ホルダに軸方向でカップリングされるように構成され、
該カートリッジ・ホルダは、少なくとも2つのカートリッジ(416、418)を保持するように構成され、
該投薬インターフェース(402)が該カートリッジ・ホルダに軸方向でカップリングされたとき少なくとも2つのカートリッジ(416、418)のそれぞれのカートリッジ
から流体を受けるように構成された流体入口開口部(408、412)をそれぞれが備える少なくとも2つの入口チャネル(404、406)と、
流体出口開口部(426)を備える出口チャネル(424)と、
複数の位置のいずれか1つに選択的に動くように構成された弁構造体(420)が、少なくとも1つの位置で、該少なくとも2つの入口チャネル(404、406)のいずれかから該出口チャネル(424)への流体流を選択的に可能にする、または妨げる、該弁構造体(420)と
を備える該投薬インターフェース(402)において、
該弁構造体(420)は、該投薬インターフェース(402)が該カートリッジ・ホルダにカップリングされたとき該カートリッジ・ホルダの弁カップリング機能(432)に係合するように構成されたカップリング構造体(430)を備えることを特徴とする、前記投薬インターフェース(402)。
【請求項2】
弁構造体は、回転運動によって複数の位置のいずれか1つに動くように構成された回転弁(420)である、請求項1に記載の投薬インターフェース(402)。
【請求項3】
弁構造体(420)は、弁構造体(420)の横方向表面上に流体移送通路(428)を備え、
該流体移送通路(428)は、複数の位置の少なくとも1つで、いずれか1つの入口チャネル(404、406)から出口チャネル(424)への流体流を可能にし、他の入口チャネル(404、406)から該出口チャネル(424)への流体流を防止するように構成される、請求項1または2に記載の投薬インターフェース(402)。
【請求項4】
流体移送通路は溝(428)である、請求項3に記載の投薬インターフェース(402)。
【請求項5】
カップリング構造体(430)は、カートリッジ・ホルダの弁カップリング機能(432)の係合を遮断するように構成され、それにより、弁構造体(420)が複数の位置の少なくとも1つの遮断位置にあるとき投薬インターフェース(402)が該カートリッジ・ホルダにカップリングするのを防止する、請求項1〜4のいずれか1項に記載の投薬インターフェース(402)。
【請求項6】
カップリング構造体は切欠き(430)であり、弁カップリング機能は突起(432)である、請求項1〜5のいずれか1項に記載の投薬インターフェース(402)。
【請求項7】
カップリング構造体(430)は、該カップリング構造体(430)が弁カップリング機能(432)に係合されたときカートリッジ・ホルダによって弁構造体(420)を複数の位置のいずれか1つに動かすことを可能にするように構成される、請求項1〜6のいずれか1項に記載の投薬インターフェース(402)。
【請求項8】
弁構造体(420)を複数の位置のいずれかに選択的に動かすように構成された弁駆動構成を備える、請求項1〜6のいずれか1項に記載の投薬インターフェース(402)。
【請求項9】
弁駆動構成は、弁構造体(420)を動かすように構成された電気モータを含む、請求項8に記載の投薬インターフェース(402)。
【請求項10】
弁駆動構成は、カートリッジ・ホルダから電気信号を受けるように構成された少なくとも1つの電気接点を備える、請求項9に記載の投薬インターフェース(402)。
【請求項11】
電気モータは、カートリッジ・ホルダから受ける電気信号に基づいて弁構造体(420
)を動かすように構成される、請求項10に記載の投薬インターフェース(402)。
【請求項12】
弁構造体(420)は推進機能を備え、
該推進機能はカートリッジ・ホルダのリンキング配置を係合するように構成され、
該弁構造体(420)が複数の位置のうちの取付け位置に動かされたとき、該推進機能はカートリッジ・ホルダを投薬インターフェース(402)に向かって引くように構成され、そして、
該弁構造体(420)が複数の位置のうちの取外し位置に動かされたとき、該推進機能はカートリッジ・ホルダを該投薬インターフェース(402)から押し離すように構成される、
請求項1〜10のいずれか1項に記載の投薬インターフェース(402)。
【請求項13】
推進機能は溝であり、リンキング配置は隆起である、請求項11に記載の投薬インターフェース(402)。
【請求項14】
推進機能はねじ付きナットであり、そして、
リンキング配置はシャフト上に軸方向で取り付けられた長さのねじ山である、
請求項12に記載の投薬インターフェース。
【請求項15】
請求項1〜14のいずれか1項に記載の投薬インターフェース(402)を備える、少なくとも2つの薬作用物質を送達するための薬物送達デバイス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本特許出願は、少なくとも2つの薬作用物質を送達するための薬物送達デバイス用の投薬インターフェースに関し、そのような投薬インターフェースを有する薬物送達デバイスに関する。
【背景技術】
【0002】
薬物送達デバイスは、薬作用物質を送達するための医療デバイスである。送達予定の薬作用物質の仕込み量(charge)は、通常、カートリッジに入っており、したがって、ここでの薬物送達デバイスは、少なくとも2つのカートリッジを容れるように構成され得る。各カートリッジは、薬作用物質の別々のリザーバを形成する。薬物送達デバイスに、薬作用物質を送達するための針が1本しかないとき、薬作用物質の、それぞれのカートリッジから注射針への流れを制御するために、弁構成が必要となり得る。
【0003】
少なくとも2つの薬作用物質を別々のリザーバから送達するための様々な医療デバイスがある。そのような薬作用物質は、第1の薬剤および第2の薬剤を含むことができる。そのような医療デバイスは、薬作用物質を自動またはユーザによる手動で送達するための用量設定機構を含む。
【0004】
医療デバイスは、注射器、たとえば手持ち式注射器、特にペン型注射器とすることができ、これは、1つまたはそれ以上の多用量カートリッジから医療製品を注射によって投与することを可能にする種類の注射器である。具体的には、本発明は、ユーザが用量を設定することができる注射器に関する。
【0005】
薬作用物質は、独立の(単一の薬物化合物)または予め混合された(共に処方された複数の薬物化合物)薬作用物質を収容する1つまたはそれ以上の複数用量のリザーバ、コンテナ、またはパッケージに収容されることがある。
【0006】
ある種の疾病状態は、1つまたはそれ以上の異なる薬剤を使用する治療を必要とする。最適な治療用量を送達するために、いくつかの薬物化合物を互いに特定の関係で送達することが必要である。本特許出願は、組合せ療法が望ましいが、それだけには限らないが安定性、発揮されない治療能力、中毒学などの理由で単一の配合物で可能でない場合特に有益なものである。
【0007】
たとえば、場合によっては、長く作用するインスリン(第1の薬剤または1次薬剤とも称されることがある)を、GLP−1またはGLP−1誘導体(第2の薬剤または2次薬剤とも称されることがある)と共に用いて糖尿病患者を治療することが有益となり得る。
【0008】
したがって、1回の注射で2つまたはそれ以上の薬剤を送達するためのデバイス、または薬物送達デバイスの複雑な物理的操作なしにユーザが実施するのが簡単な送達工程を提供することが求められている。提案されている薬物送達デバイスは、2つまたはそれ以上の活性薬作用物質用に別々の収納コンテナまたはカートリッジ・リテーナを提供する。次いで、これらの活性薬作用物質は、1回の送達手順中に、組み合わされ、および/または患者に送達される。これらの活性作用物質は、組み合わされた用量で共に投与されてもよく、あるいは、これらの活性作用物質は、順次、交互に組み合わされてもよい。
【0009】
また、薬物送達デバイスは、薬剤の量を変える機会を可能にする。たとえば、注射デバイスの特性を変更すること(たとえば、ユーザ可変の用量を設定すること、またはデバイスの「固定」用量を変更すること)によって、1つの流体の量を変えることができる。第2の薬剤の量は、各異なるパッケージ(each variant)が異なる体積および/または濃度の第2の活性作用物質を収容する様々な2次薬物収容パッケージを製造することによって変更することができる。
【0010】
薬物送達デバイスは、単一の投薬インターフェースを有することができる。このインターフェースは、少なくとも1つの薬作用物質を含む薬剤の1次リザーバおよび2次リザーバと流体連通するように構成することができる。薬物投薬インターフェースは、2つまたはそれ以上の薬剤がシステムを出て患者に送達されることを可能にするタイプの出口とすることができる。
【0011】
別々のリザーバからの化合物の組合せは、両頭ニードル・アセンブリを介して本体に送達させることができる。これは、ユーザから見て、標準的なニードル・アセンブリを使用する現在使用可能な注射デバイスに厳密に一致するようにして薬物送達を達成する組合せ薬物注射システムを提供する。1つの可能な送達手順は、以下の工程を含むことができる。
【0012】
1.電気機械式注射器の遠位端に投薬インターフェースを取り付ける。投薬インターフェースは、第1の近位針および第2の近位針を備える。第1の近位針と第2の近位針は、1次化合物を収容する第1のリザーバ、および2次化合物を収容する第2のリザーバをそれぞれ穿孔する。
2.両頭ニードル・アセンブリなど用量ディスペンサを投薬インターフェースの遠位端に取り付ける。このようにして、ニードル・アセンブリの近位端は、1次化合物および2次化合物の両方と流体連通する。
3.たとえばグラフィカル・ユーザ・インターフェースを介して、注射デバイスからの1次化合物の所望の用量をダイアル・アップ/設定する。
4.ユーザが1次化合物の用量を設定した後で、マイクロプロセッサ制御式の制御ユニットが、2次化合物の用量を決定または計算することができ、前もって記憶された治療容量プロファイルに基づいて、この第2の用量を決定または計算することができることが好ましい。次いで、薬剤のこの計算された組合せが、ユーザによって注射されることになる。治療容量プロファイルは、ユーザ選択可能なものであってもよい。あるいは、ユーザは、2次化合物の所望の用量をダイアルまたは設定することができる。
5.場合により、第2の用量が設定された後で、デバイスを準備完了の(armed)状態にすることができる。この任意選択の(optional)準備完了状態は、制御パネル上の「OK」または「Arm(準備)」ボタンを押す、および/または保持することによって達成することができる。準備完了状態は、組み合わされた用量を投薬するためにデバイスを使用することができる所定の期間の間、提供されてもよい。
6.次いで、ユーザは、用量ディスペンサ(たとえば、両頭ニードル・アセンブリ)の遠位端を所望の注射部位内に挿入する、または接触させることになる。1次化合物と2次化合物(および潜在的には第3の薬剤)の組合せの用量は、注射ユーザ・インターフェース(たとえば、注射ボタン)を起動することによって投与される。
【0013】
1つの注射針または用量ディスペンサを介して、1つの注射工程で、両薬剤を送達することができる。これは、2つの別々の注射を投与することに比べてユーザ工程が少ないという点で、好都合な利益をユーザにもたらす。
【0014】
以下、より詳細に述べる薬物送達デバイスは、薬物送達デバイスの投薬インターフェースを通じてそのそれぞれのカートリッジから注射針への各薬作用物質の流れを調節し、特に薬作用物質の選択的な吐出を可能にするための弁機能を実装する機構を備える。
【0015】
1次、2次、および潜在的な他の薬剤の選択的な吐出を可能にするために必要とされる弁機能を実装する1つの方法は、エラストマーの弁を使用することである。これらの弁は、たとえば、カートリッジ内の流体に加えられ、さらに膜に伝達される圧力があるレベルを超えた後で、偏向または反転し、それぞれのカートリッジからの流体流を可能にする膜を備えることができる。
【0016】
圧力は、カートリッジ・ホルダ内のプランジャを使用することによってカートリッジ内で栓(bung)を前進させることによってカートリッジ内の流体に加えられる。メンブレン弁の開閉挙動は、プランジャの延長に応じてとられ、非常に変動しやすい。すなわち、流体吐出動作を繰り返す場合、膜の最初の開きは、プランジャによって引き起こされる異なる流体圧力で行われる可能性がある。カートリッジ内の栓が弾性特性を示す場合、流体圧力により弁が開くとき、プランジャはすでに前進し栓を圧縮していることがある。したがって、プランジャの前進は、注射プロセス中、常にカートリッジから放出される薬剤の量に直接相関されるものではない。同様に、メンブレン弁の閉じる挙動も不規則なものとなることがあり、それにより、吐出される薬剤の正確な用量決定(dosage)は困難になる。さらに、所望の吐出量からのこれらの逸脱は、検出すること、または予測することが困難となり得る。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0017】
したがって、本発明の目的は、薬剤用量決定の精度が改善された投薬インターフェースを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0018】
この目的は、少なくとも2つの薬作用物質を送達するための薬物送達デバイス用の投薬インターフェースによって解決され、投薬インターフェースは、薬物送達デバイスにカップリングされるように、たとえば薬物送達デバイスのカートリッジ・ホルダに、たとえば軸方向でカップリングされるように構成され、カートリッジ・ホルダは、少なくとも2つのカートリッジを保持するように構成され、投薬インターフェースは、投薬インターフェースがカートリッジ・ホルダに軸方向でカップリングされたとき少なくとも2つのカートリッジのそれぞれのカートリッジから流体を受けるように構成された流体入口開口部をそれぞれが備える少なくとも2つの入口チャネルと、流体出口開口部を備える出口チャネルと、複数の位置のいずれか1つに選択的に動くように構成された弁構造体が、少なくとも1つの位置で、少なくとも2つの入口チャネルのいずれかから出口チャネルへの流体流を選択的に可能にする、または妨げる、弁構造体とを備える。
【0019】
その位置を変えることができる弁構造体を有するアクティブ弁制御機構を使用することによって、弁の動作をよりよく制御することができる。それにより、弁を開く時ならびに閉じる時を、したがって用量決定をもより正確に調整することができる。さらに、弁は、それぞれのカートリッジ内に流体圧力を蓄積することを必要とせずに開くことができる。また、カートリッジ・ハブ弁を能動的に閉じ、プランジャを前進させることによって、栓を検出することを可能にする。さらに、メンブレン弁とは対照的に、能動的に閉じられる弁では、漏れを完全に回避することができる。本発明による解決策は、メンブレン弁が開いているとき存在する背圧をも回避する。この背圧は、正確に計算することが困難であり、薬作用物質の通過に影響を及ぼすが、能動的に制御される弁が使用されたときには生じない。
【0020】
各カートリッジは、薬物送達デバイスによって注射される予定のそれぞれの1次、2次、または他の薬剤を保持することができる。流体出口開口部は、投薬インターフェースの遠位端で投薬インターフェースに取り付けることができるニードル・アセンブリにさらに通じてもよい。弁構造体は、いくつかの位置をとることができる機械的物体(mechanical entity)である。各流体入口開口部ごとに、弁構造体の少なくとも1つの関連の位置があり、そこでは、弁構造体は、その流体入口開口部から出口チャネルへの流体流を可能にし、他の流体入口開口部すべてからの流体流を遮断する。また、すべての流体入口開口部からの流体流が遮断される弁構造体の少なくとも1つの位置があってもよい。
【0021】
少なくとも2つの入口チャネルの各流体入口開口部は、投薬インターフェースの近位端に配置される。それにより、投薬インターフェースが投薬インターフェースの近位端でカートリッジ・ホルダに軸方向でカップリングされたとき、各カートリッジが、その関連の流体入口開口部にカップリングされる。
【0022】
さらに、流体出口開口部は、投薬インターフェースの遠位端に配置される。それにより、流体出口開口部は、ニードル・アセンブリが投薬インターフェースの遠位端で投薬インターフェースに取り付けられたときそのニードル・アセンブリの流体チャネルに連結される。
【0023】
好ましい実施形態では、弁構造体は、回転運動によって複数の位置のいずれか1つに動くように構成された回転弁である。弁構造体の回転運動は、投薬インターフェースの長手方向軸に対して平行または同様の軸の周りでの回転とすることができる。この場合、それぞれの流体入口開口部から出口チャネルへの流体流を選択的に可能にする弁構造体の機能は、弁構造体の回転軸に対して、弁構造体の横方向表面上に配置されてもよい。
【0024】
他の好ましい実施形態では、弁構造体は、弁構造体の横方向表面上に流体移送通路を備え、この流体移送通路は、複数の位置の少なくとも1つで、いずれか1つの入口チャネルから出口チャネルへの流体流を可能にし、他の入口チャネルから出口チャネルへの流体流を防止するように構成される。弁構造体の横方向表面は、弁構造体の長手方向軸に対する横方向表面である。
【0025】
他の好ましい実施形態では、流体移送通路は溝である。この文脈での溝は、弁構造体の表面上の切欠きである。溝を流体移送通路として使用することには、弁構造体のそれほど複雑でない生産を可能にするという利点がある。具体的には、トンネルの形状の流体移送通路は必要でない。
【0026】
他の好ましい実施形態では、弁構造体は、投薬インターフェースがシャシまたはカートリッジ・ホルダにカップリングされたときシャシまたはカートリッジ・ホルダの弁カップリング機能に係合するように構成されたカップリング構造体を備える。このために、弁構造体は、複数の位置の係合位置にある。弁構造体のカップリング構造体は、投薬インターフェースの近位方向で突出しても、他の方法でアクセス可能であってもよい。カップリング構造体は、非対称断面を有する開口部とすることができる。また、カップリング構造体は、回転と対称でない断面を有する開口部であってもよい。一方、弁カップリング機能は、対応する断面を有する突起とすることができる。あるいは、カップリング構造体が、突起と、弁カップリング機能、開口部とを備えてもよい。
【0027】
回転対称性がなく、開口部の断面と突起が一致するので、またカートリッジ・ホルダが投薬インターフェースにカップリングされたとき弁カップリング機能が所定の向きになることができるので、カートリッジ・ホルダを弁構造体のいくつか、さらには1つだけの位置でシャシまたは投薬インターフェースにカップリングすることが可能であるだけでよい。そのような位置は、弁構造体の係合位置である。弁構造体の係合位置は、少なくとも2つの入口チャネルの1つから出口チャネルへの流体流が可能にされる位置に対応することができる。また、弁構造体の係合位置は、すべての入口チャネルから出口チャネルへの流体流が遮断される位置に対応してもよい。
【0028】
好ましい実施形態では、カップリング構造体は、カートリッジ・ホルダの弁カップリング機能の係合を遮断するように構成され、それにより、弁構造体が複数の位置の少なくとも1つの遮断位置にあるとき投薬インターフェースがカートリッジ・ホルダにカップリングするのを防止または遮断する。弁構造体の遮断位置は、少なくとも2つの入口チャネルの1つから出口チャネルへの流体流が可能にされる位置に対応することができる。また、弁構造体の遮断位置は、すべての入口チャネルから出口チャネルへの流体流が遮断される位置に対応してもよい。この実施形態の機能により、投薬インターフェースをカートリッジ・ホルダにカップリングすることは、投薬インターフェースのある規定の状態でのみ可能にされ得る。特に、これは、薬剤の注射の前または後に、投薬インターフェースの再使用を防止する位置に弁構造体を動かすことを可能にする。
【0029】
他の好ましい実施形態では、カップリング構造体は切欠きであり、弁カップリング機能は突起である。それにより、投薬インターフェースとカートリッジ・ハブの間のカップリング機構が、単純かつ丈夫な機械的手段によって達成される。
【0030】
他の好ましい実施形態では、カップリング構造体は、カップリング構造体が弁カップリング機能に係合されたときシャシまたはカートリッジ・ホルダによって弁構造体を複数の位置のいずれか1つに動かすことを可能にするように構成される。カップリング構造体は、たとえば、弁構造体の長手方向軸に沿った弁構造体の突起とすることができる。カートリッジ・ホルダの弁カップリング機能は、たとえば、シャシまたはカートリッジ・ホルダのピボット上に配置されてもよい。ピボットを回転することにより、シャシまたはカートリッジ・ホルダは−投薬インターフェースにカップリングされたとき−ねじ回しがねじを回すのと同様に、または同じように弁構造体を回転することができ、それにより弁構造体を複数の位置のいずれかに動かすことが可能である。カートリッジからの流体の吐出もまた、シャシもしくはカートリッジ・ホルダ、またはシャシもしくはカートリッジ・ホルダにリンクされたユニットによって行われるので、シャシまたはカートリッジ・ホルダによる弁構造体の制御により、カートリッジからの流体吐出と弁構造体の動作との間の厳密な制御の同期が可能になる。
【0031】
他の好ましい実施形態では、投薬インターフェースは、弁構造体を複数の位置のいずれかに選択的に動かすように構成された弁駆動構成を備える。弁駆動構成は、アクチュエータを含むことができる。アクチュエータは、電気的に制御されてもよい。
【0032】
好ましい実施形態では、弁駆動構成は、弁構造体を動かすように構成された電気モータを含む。電気モータは、投薬インターフェースがシャシまたはカートリッジ・ホルダにカップリングされたときシャシまたはカートリッジ・ホルダから受ける電気によって給電されるように構成されてもよい。それにより、弁動作の手動制御ではなく弁動作の電子制御が有効にされる。
【0033】
他の好ましい実施形態では、弁駆動構成は、薬物送達デバイスから、たとえばカートリッジ・ホルダを通じて、もしくはカートリッジ・ホルダから、または薬物送達デバイスのシャシから直接、電気信号を受けるように構成された少なくとも1つの電気接点を備える。シャシまたはカートリッジ・ホルダは、制御信号を投薬インターフェース内の弁駆動構成に送信するように構成された対応する電子ピンを備えることができる。電気信号は、制御信号を含むことができる。また、電気信号は、電気モータに給電するための電力供給信号を含むことができる。電力供給信号は、DC電気信号またはAC電気信号とすることができる。電気信号は、パルス幅、または他の方法で変調された信号をさらに含むことができる。他の好ましい実施形態では、電気モータは、シャシまたはカートリッジ・ホルダから受ける電気信号に基づいて弁構造体を動かすように構成される。
【0034】
他の好ましい実施形態では、弁駆動構成は、シャシまたはカートリッジ・ホルダから電気信号を受けるように構成された少なくとも1つの電気接点を備え、シャシまたはカートリッジ・ホルダは、制御信号を投薬インターフェース内の弁駆動構成に送信するように構成された対応する電子ピンを備えることができる。弁は、電動弁である。電気信号は、電動弁のための制御信号を含むことができる。各弁ごとに制御信号があってもよい。たとえば、弁は、制御信号が「高」電圧(たとえば、5V)であるとき開位置にあり、弁は、制御信号が「低」電圧、たとえば、0Vであるとき閉位置にある。
【0035】
好ましい実施形態では、カップリング機能は、投薬インターフェースをデバイスにロックし、その結果、たとえば投薬または栓検出中に取外しを防止することができる。たとえば、弁構造体は、カートリッジ・ホルダのリンキング配置を係合するように構成され、弁構造体が複数の位置のうちの取付け位置に動かされたときカートリッジ・ホルダを投薬インターフェースに向かって引くように構成され、弁構造体が複数の位置のうちの取外し位置に動かされたときカートリッジ・ホルダを投薬インターフェースから押し離すようにさらに構成された推進機能を備える。それによりカートリッジ・ホルダに投薬インターフェースをカップリングすることは、ユーザが手動でカップリングすることだけに依拠しない。そうではなく、ユーザは、正しい位置決めを確認するだけでよく、一方、機械的な完了とカップリングの締付けは、自動機構によって行われる。また、これは、送達される予定の薬物の注射前に十分な質のカップリングがさらに確実に行われるようにする助けとなる。
【0036】
好ましい実施形態では、推進機能は溝であり、リンキング配置は隆起である。
【0037】
他の好ましい実施形態では、推進機能は、ねじ付きナットであり、リンキング配置は、シャフト上に軸方向で取り付けられた(短い)長さのねじ山である。この実施形態では、シャシまたはカートリッジ・ホルダへの投薬インターフェースの取付けは、たとえば所定の回転数の間、またはナット内の端面に当接するまで、シャフトを第1の方向に回し、したがってシャフトをねじ付きナット内に螺着することによって行われる。さらに、シャフトを第1の方向に回すことにより、弁が動く、または回転する。第1の方向にシャフトをさらに回転することにより、弁を閉位置から開位置に動かすことができ、弁を開位置から閉位置に動かすことができる。たとえば、第1の方向に第1の90度回す間、弁は開位置から閉位置に動かされ、第1の方向に(後続の)第2の90度回す間、弁は再び閉位置から開位置に動かされる。第1の方向に追加で90度回すと、弁が再び開閉することになる。シャフトを反対方向に回すことにより、ねじ山がねじ付きナットから再び外れ、したがって投薬インターフェースがシャシまたはカートリッジ・ホルダから取り外されることになる。
【0038】
本発明の目的は、本発明による投薬インターフェースを備える薬物送達デバイスによってさらに解決される。
【0039】
本発明の様々な態様のこれらの、ならびに他の利点は、添付の図面を適切に参照して以下の詳細な説明を読めば、当業者には明らかになろう。
【図面の簡単な説明】
【0040】
図1】デバイスのエンド・キャップが取り外された状態の送達デバイスの斜視図である。
図2】カートリッジを示す送達デバイス遠位端の斜視図である。
図3】1つのカートリッジ・リテーナが開位置にある図1または図2に示されている送達デバイスの斜視図である。
図4図1に示されている送達デバイスの遠位端上に着脱可能に取り付けることができる投薬インターフェースおよび用量ディスペンサの図である。
図5図1に示されている送達デバイスの遠位端上に取り付けられた図4に示されている投薬インターフェースおよび用量ディスペンサの図である。
図6】送達デバイスの遠位端上に取り付けることができるニードル・アセンブリの1つの配置の図である。
図7図4に示されている投薬インターフェースの斜視図である。
図8図4に示されている投薬インターフェースの別の斜視図である。
図9図4に示されている投薬インターフェースの断面図である。
図10図4に示されている投薬インターフェースの分解図である。
図11図1に示されているデバイスなど薬物送達デバイス上に取り付けられた投薬インターフェースおよびニードル・アセンブリの断面図である。
図12】カートリッジが投薬インターフェースに連結され、ペグ(peg)が投薬インターフェースに係合する本発明によるさらなる投薬インターフェースの断面図である。
図13図12に示されている、本発明による投薬インターフェースの横方向断面図である。
図14図12および図13に示されている、本発明による投薬インターフェースの長手方向断面図である。
図15a】弁構造体の切欠きおよびカートリッジ・ホルダの突起の嵌合する心合せ、および嵌合しない心合せの図である。
図15b】弁構造体の切欠きおよびカートリッジ・ホルダの突起の嵌合する心合せ、および嵌合しない心合せの図である。
【発明を実施するための形態】
【0041】
本発明の実施形態について述べる前に、本発明を適用するために使用することができる薬物送達デバイスの例示的な実施形態について述べる。図1に示されている薬物送達デバイスは、近位端16から遠位端15に延びる主本体14を備える。遠位端15には、着脱可能なエンド・キャップまたはカバー18が設けられる。このエンド・キャップ18と主本体14の遠位端15は、スナップ嵌めまたはフォーム・フィット連結をもたらすように協働し、その結果、カバー18が主本体14の遠位端15上に摺動された後、キャップと主本体外側表面20の間のこの摩擦嵌めは、カバーが誤って主本体から脱落するのを防止する。
【0042】
主本体14は、マイクロプロセッサ制御ユニットと、電気機械式駆動トレインと、少なくとも2つの薬剤リザーバとを含む。エンド・キャップまたはカバー18が(図1に示されているように)デバイス10から取り外されたとき、投薬インターフェース200が主本体14の遠位端15に取り付けられており、用量ディスペンサ(たとえば、ニードル・アセンブリ)がインターフェースに取り付けられている。薬物送達デバイス10を使用し、第2の薬剤(2次薬物化合物)の計算された用量と、第1の薬剤(1次薬物化合物)の可変の用量を、両頭ニードル・アセンブリなど単一のニードル・アセンブリを通じて投与することができる。
【0043】
駆動トレインは、第1および第2の薬剤の用量を放出するために、各カートリッジの栓に対してそれぞれ圧力をかけることができる。たとえば、ピストン・ロッドが、単一の用量の薬剤のために所定の量だけカートリッジの栓を前方に押すことができる。カートリッジが空であるとき、ピストン・ロッドは主本体14内に完全に引き込まれ、空のカートリッジを取り外すことができ、新しいカートリッジを挿入することができる。
【0044】
制御パネル領域60が主本体14の近位端近くに設けられる。好ましくは、この制御パネル領域60は、デジタル・ディスプレイ80を、組み合わされた用量を設定および注射するためにユーザが操作することができる複数のヒューマン・インターフェース要素と共に備える。この配置では、制御パネル領域は、第1の用量設定ボタン62と、第2の用量設定ボタン64と、「OK」という記号で示された第3のボタン66とを備える。さらに、主本体の最近位端に沿って、注射ボタン74も設けられる(図1の斜視図では見えない)。
【0045】
カートリッジ・ホルダ40は、主本体14に着脱可能に取り付けることができ、少なくとも2つのカートリッジ・リテーナ50、52を収容することができる。各リテーナは、ガラス・カートリッジなど1つの薬剤リザーバを収容するように構成される。好ましくは、各カートリッジは、異なる薬剤を収容する。
【0046】
さらに、カートリッジ・ホルダ40の遠位端において、図1に示されている薬物送達デバイスは、投薬インターフェース200を含む。図4に関連して述べるように、一配置では、この投薬インターフェース200は、カートリッジ・ハウジング40の遠位端42に着脱可能に取り付けられる外側主本体212を含む。図1でわかるように、投薬インターフェース200の遠位端214は、ニードル・ハブ216を備えることが好ましい。このニードル・ハブ216は、従来のペン型注射ニードル・アセンブリなど用量ディスペンサを薬物送達デバイス10に着脱可能に取り付けることを可能にするように構成されてもよい。
【0047】
このデバイスがオンにされた後で、図1に示されているデジタル・ディスプレイ80は明るくなり、ある種のデバイス情報、好ましくはカートリッジ・ホルダ40内に収容された薬剤に関する情報をユーザに提供する。たとえば、ユーザには、1次薬剤(薬物A)および2次薬剤(薬物B)両方に関するある種の情報が提供される。
【0048】
図3に示されているように、第1のカートリッジ・リテーナ50および第2のカートリッジ・リテーナ52は、ヒンジ式カートリッジ・リテーナとすることができる。これらのヒンジ式リテーナは、ユーザがカートリッジにアクセスすることを可能にする。図3は、第1のヒンジ式カートリッジ・リテーナ50が開位置にある、図1に示されているカートリッジ・ホルダ40の斜視図を示す。図3は、第1のリテーナ50を開き、それにより第1のカートリッジ90にアクセスできるようにすることによって、ユーザがどのように第1のカートリッジ90にアクセスすることができるかを示す。
【0049】
図1について論じたとき上述したように、投薬インターフェース200は、カートリッジ・ホルダ40の遠位端にカップリングされる。図4は、カートリッジ・ホルダ40の遠位端に連結されていない投薬インターフェース200の平面図を示す。インターフェース200と共に使用することができる用量ディスペンサまたはニードル・アセンブリもまた示されており、保護外側キャップ420内に設けられている。
【0050】
図5では、図4に示されている投薬インターフェース200が、カートリッジ・ホルダ40にカップリングされて示されている。投薬インターフェース200とカートリッジ・ホルダ40の間の軸方向取付け手段は、スナップ・ロック、スナップ嵌め、スナップ・リング、キー付きスロット(keyed slot)、およびそのような連結具の組合せを含めて、当業者に知られている任意の軸方向取付け手段とすることができる。投薬インターフェースとカートリッジ・ホルダの間の連結具または取付け具は、コネクタ、止め、スプライン、リブ、溝、ピップ(pip)、クリップ、および同様の設計機能など、特定のハブが、一致する薬物送達デバイスにしか取付け可能でないことを確実にするある種の追加の機能(図示せず)を含んでもよい。そのような追加の機能は、適切でない2次カートリッジが一致しない注射デバイスに挿入されることを防止することになる。
【0051】
また、図5は、インターフェース200のニードル・ハブ上に螺着することができる、投薬インターフェース200の遠位端にカップリングされるニードル・アセンブリ400および保護カバー420を示す。図6は、図5における投薬インターフェース200上に取り付けられた両頭ニードル・アセンブリ400の断面図を示す。
【0052】
図6に示されているニードル・アセンブリ400は、両頭針406と、ハブ401とを備える。両頭針またはカニューレ406は、ニードル・ハブ401内に固定して取り付けられる。このニードル・ハブ401は、円板状の要素と、スリーブ403とを備える。このスリーブ403の内壁に沿って、ねじ山404が設けられる。このねじ山404は、ニードル・ハブ401が投薬インターフェース200上に螺着されることを可能にし、投薬インターフェース200は、好ましい一実施形態では、遠位ハブに沿って対応する外ねじ山を備える。ハブ要素401の中央部分には、突起402が設けられる。この突起402は、ハブからスリーブ部材の反対方向に突出する。両頭針406が、突起402およびニードル・ハブ401を通って中央に取り付けられる。この両頭針406は、両頭針の第1または遠位の穿孔端部405が注射部位(たとえば、ユーザの皮膚)を穿孔するための注射部材を形成するように取り付けられる。
【0053】
同様に、ニードル・アセンブリ400の第2または近位の穿孔端部406が、スリーブ403によって同心状に囲まれるように円板の反対側から突出する。1つのニードル・アセンブリ配置では、第2または近位の穿孔端部406はスリーブ403より短くてもよく、その結果、このスリーブが、ある程度、裏側スリーブの尖った端部を保護する。図4および図5に示されているニードル・カバー・キャップ420は、ハブ401の外側表面403周りでフォーム・フィットを提供する。
【0054】
次に図4から図11を参照して、このインターフェース200の好ましい一実施形態について次に論じる。この好ましい一実施形態では、このインターフェース200は、以下を備える。
a.外側主本体210
b.第1の内側本体220
c.第2の内側本体230
d.第1の穿孔針240
e.第2の穿孔針250
f.弁封止260
g.セプタム270
【0055】
外側主本体210は、主本体近位端212と、主本体遠位端214とを備える。外側本体210の近位端212では、連結部材が、投薬インターフェース200がカートリッジ・ホルダ40の遠位端に取り付けられることを可能にするように構成される。好ましくは、連結部材は、投薬インターフェース200がカートリッジ・ホルダ40に着脱可能に連結されることを可能にするように構成される。1つの好ましいインターフェース配置では、インターフェース200の近位端が、少なくとも1つの凹部を有する上向きに延在する壁218と共に構成される。たとえば、図8からわかるように、上向きに延在する壁218は、少なくとも第1の凹部217と第2の凹部219とを備える。
【0056】
好ましくは、第1の凹部217および第2の凹部219は、薬物送達デバイス10のカートリッジ・ハウジング40の遠位端近くに位置する外向きに突出する部材と協働するようにこの外側主本体の壁内に配置される。たとえば、カートリッジ・ハウジングのこの外向きに突出する部材48は、図4および図5に見ることができる。第2の同様に突出する部材が、カートリッジ・ハウジングの反対側に設けられる。したがって、インターフェース200がカートリッジ・ハウジング40の遠位端の上で軸方向に摺動されたとき、外向きに突出する部材は、第1の凹部217および第2の凹部219と協働し、締まり嵌め(interference fit)、フォーム・フィット、またはスナップ・ロックを形成することになる。あるいは、当業者なら理解するように、投薬インターフェースおよびカートリッジ・ハウジング40が軸方向でカップリングされることを可能にする任意の他の同様の連結機構をも使用することができる。
【0057】
外側主本体210、およびカートリッジ・ハウジング40の遠位端は、カートリッジ・ハウジングの遠位端上に軸方向で摺動することができる、軸方向で係合するスナップ・ロックまたはスナップ嵌めを形成するように働く。一代替配置では、投薬インターフェース200は、不注意による投薬インターフェースの交差使用を防止するようにコーディング機能を備えてもよい。すなわち、ハブの内側本体は、1つまたはそれ以上の投薬インターフェースの不注意による交差使用を防止するように幾何学的に構成することができる。
【0058】
取付けハブが、投薬インターフェース200の外側主本体210の遠位端に設けられる。そのような取付けハブは、ニードル・アセンブリに解放可能に連結されるように構成することができる。単に一例として、この連結手段216は、図6に示されているニードル・アセンブリ400などニードル・アセンブリのニードル・ハブの内壁表面に沿って設けられた内ねじ山と係合する外ねじ山を備えることができる。スナップ・ロック、ねじ山を介して解放されるスナップ・ロック、バヨネット・ロック、フォーム・フィット、または他の同様の連結配置など、代替の解放可能なコネクタが設けられてもよい。
【0059】
投薬インターフェース200は、第1の内側本体220をさらに備える。この内側本体のいくつかの詳細が図8から図11に示されている。好ましくは、この第1の内側本体220は、外側主本体210の延在する壁218の内側表面215にカップリングされる。より好ましくは、この第1の内側本体220は、リブおよび溝のフォーム・フィット配置により、外側本体210の内側表面にカップリングされる。たとえば、図9からわかるように、外側主本体210の延在する壁218は、第1のリブ213aと第2のリブ213bとを備える。この第1のリブ213aは、図10にも示されている。これらのリブ213a、213bは、外側主本体210の壁218の内側表面215に沿って配置され、第1の内側本体220の協働する溝224a、224bとフォーム・フィットまたはスナップ・ロック配置を生み出す。好ましい配置では、これらの協働する溝224a、224bは、第1の内側本体220の外側表面222に沿って設けられる。
【0060】
さらに、図8から図10でわかるように、第1の内側本体220の近位端近くの近位表面226が、近位穿孔端部部分244を備える少なくとも第1の近位に配置された穿孔針240と共に構成されてもよい。同様に、第1の内側本体220は、近位穿孔端部部分254を備える第2の近位に配置された穿孔針250と共に構成される。第1の針240と第2の針250はどちらも、第1の内側本体220の近位表面226上に剛性取付けされる。
【0061】
好ましくは、この投薬インターフェース200は、弁配置をさらに備える。そのような弁配置は、第1および第2のリザーバにそれぞれ収容された第1および第2の薬剤の相互汚染を防止するように構築することができる。
【0062】
また、第1および第2の薬剤の逆流および相互汚染を防止するように、好ましい弁配置が構成されてもよい。
【0063】
1つの好ましいシステムでは、投薬インターフェース200は、弁封止260の形態で弁配置を含む。そのような弁封止260は、保持チャンバ280を形成するように、第2の内側本体230によって画成されたキャビティ231内に設けられてもよい。好ましくは、キャビティ231は、第2の内側本体230の上部表面に沿って存在する。この弁封止は、第1の流体溝264と第2の流体溝266とを共に画成する上部表面を備える。たとえば、図9は、第1の内側本体220と第2の内側本体230との間に着座する弁封止260の位置を示す。注射工程中、この封止弁260は、第1の通路内の1次薬剤が第2の通路内の2次薬剤に移動するのを防止する助けとなり、一方、やはり第2の通路内の2次薬剤が第1の通路内の1次薬剤に移動するのを防止する。好ましくは、この封止弁260は、第1の逆止弁262と、第2の逆止弁268とを備える。したがって、第1の逆止弁262は、第1の流体通路264、たとえば封止弁260内の溝に沿って移送される流体がこの通路264内に戻るのを防止する。同様に、第2の逆止弁268は、第2の流体通路266に沿って移送される流体がこの通路266内に戻るのを防止する。
【0064】
第1の溝264と第2の溝266は共に、それぞれ逆止弁262、268に向かって収束し、次いで押出し流体経路または保持チャンバ280を提供する。この保持チャンバ280は、穿孔可能なセプタム270と共に、第2の内側本体の遠位端、第1の逆止弁262および第2の逆止弁268によって画成された内側チャンバによって画成される。図のように、この穿孔可能なセプタム270は、第2の内側本体230の遠位端部分と、外側主本体210のニードル・ハブによって画成された内側表面との間に配置される。
【0065】
保持チャンバ280は、インターフェース200の出口ポートで終わる。この出口ポート290は、インターフェース200のニードル・ハブ内で中央に位置し、穿孔可能なセプタム270を静止位置で維持するのを助けることが好ましい。したがって、(図6に示されている両頭針など)両頭ニードル・アセンブリがインターフェースのニードル・ハブに取り付けられたとき、押出し流体経路は、両薬剤が、取り付けられたニードル・アセンブリと流体連通することを可能にする。
【0066】
ハブ・インターフェース200は、第2の内側本体230をさらに備える。図9からわかるように、この第2の内側本体230は、凹部を画成する上部表面を有し、弁封止260は、この凹部内に配置される。したがって、インターフェース200が図9に示されているように組み立てられたとき、第2の内側本体230は、外側本体210の遠位端と第1の内側本体220との間に配置されることになる。第2の内側本体230と外側主本体は共に、セプタム270を定位置で保持する。内側本体220の遠位端もまた、弁封止の第1の溝264と第2の溝266の両方と流体連通するように構成することができるキャビティまたは保持チャンバを形成することができる。
【0067】
外側主本体210を薬物送達デバイスの遠位端の上で軸方向に摺動することにより、投薬インターフェース200が多目的デバイスに取り付けられる。このようにして、第1の針240と第2の針250の間で、それぞれ第1のカートリッジの1次薬剤および第2のカートリッジの2次薬剤との流体連通を生み出すことができる。
【0068】
図11は、図1に示されている薬物送達デバイス10のカートリッジ・ホルダ40の遠位端42上に取り付けられた後の投薬インターフェース200を示す。両頭針400もまた、このインターフェースの遠位端に取り付けられる。カートリッジ・ホルダ40は、第1の薬剤を収容する第1のカートリッジおよび第2の薬剤を収容する第2のカートリッジを有して示されている。
【0069】
まずインターフェース200がカートリッジ・ホルダ40の遠位端の上に取り付けられたとき、第1の穿孔針240の近位穿孔端244が第1のカートリッジ90のセプタムを穿孔し、それにより第1のカートリッジ90の1次薬剤92と流体連通状態になる。第1の穿孔針240の遠位端もまた、弁封止260によって画成された第1の流体経路溝264と流体連通することになる。
【0070】
同様に、第2の穿孔針250の近位穿孔端254が第2のカートリッジ100のセプタムを穿孔し、それにより第2のカートリッジ100の2次薬剤102と流体連通状態になる。第2の穿孔針250の遠位端もまた、弁封止260によって画成された第2の流体経路溝266と流体連通することになる。
【0071】
図11は、薬物送達デバイス10の主本体14の遠位端15にカップリングされるそのような投薬インターフェース200の好ましい配置を示す。好ましくは、そのような投薬インターフェース200は、薬物送達デバイス10のカートリッジ・ホルダ40に着脱可能にカップリングされる。
【0072】
図11に示されているように、投薬インターフェース200は、カートリッジ・ハウジング40の遠位端にカップリングされる。このカートリッジ・ハウジング40は、第1の薬剤92を収容する第1のカートリッジ90および第2の薬剤102を収容する第2のカートリッジ100を収容して示されている。カートリッジ・ハウジング40にカップリングされた後で、投薬インターフェース200は、本質的に、第1のカートリッジ90および第2のカートリッジ100から共通の保持チャンバ280への流体連通をもたらすための機構を提供する。この保持チャンバ280は、用量ディスペンサと流体連通するものとして示されている。ここで、図のように、この用量ディスペンサは、両頭ニードル・アセンブリ400を備える。図のように、両頭ニードル・アセンブリの近位端は、チャンバ280と流体連通する。
【0073】
好ましい一実施形態では、投薬インターフェースは、1つの向きだけで主本体に取り付けられるように構成される。すなわち、一方通行だけで嵌合される。したがって、図11に示されているように、投薬インターフェース200がカートリッジ・ホルダ40に取り付けられた後では、1次針240は、第1のカートリッジ90の1次薬剤92と流体連通するためだけに使用することができ、インターフェース200は、1次針240が今度は第2のカートリッジ100の2次薬剤102と流体連通するために使用することができるようにホルダ40に再び取り付けられるのを妨げられることになる。そのような一方通行の連結機構は、2つの薬剤92、102間での相互汚染の可能性を低減する助けとなり得る。
【0074】
次に図12から図14を参照すると、本発明による投薬インターフェースの一実施形態が示されている。投薬インターフェース402は、薬物送達デバイスのシャシまたはカートリッジ・ホルダ(その全体は示されていない)に軸方向でカップリングされる。投薬インターフェース402は、第1の入口チャネル404と、第2の入口チャネル406とを備える。第1の入口チャネル404は、第1の針410が配置される第1の流体入口開口部408を備える。同様に、第2の入口チャネル406は、第2の針414が配置される第2の流体入口開口部412を備える。第1の針410は、1次薬剤で満たされた第1のカートリッジ416と流体連通する。第2の針414は、2次薬剤で満たされた第2のカートリッジ418と流体連通する。
【0075】
さらに、投薬インターフェース402は、流体出口開口部426を有する出口チャネル424である第3のチャネルをも備える。流体出口開口部は、注射針を有するニードル・アセンブリ(図示せず)に通じる。
【0076】
投薬インターフェース402は、弁構造体420をさらに備え、弁構造体420は、ここでは回転弁であり、投薬インターフェース402の中央の長手方向軸に沿って配置される。この弁420は、流体移送通路428を提供する。2つの「開」位置の1つにおいて、回転弁420は、第1の入口チャネル404と出口チャネル424との間、または第2の入口チャネル406と出口チャネル424との間で流体連結を可能にする。図14に示されている閉位置では、入口チャネル404、406と出口チャネル424との間の流体流が遮断される。
【0077】
回転弁420は、この場合には切欠き430であるカップリング構造体を有する。切欠き430は、投薬インターフェース402から投薬インターフェース402の近位方向に突出する。すなわち、カートリッジ・ホルダに面する。この切欠き430は、一般に突起とすることができるカートリッジ・ホルダの弁カップリング機能を挿入するように構成される。図のこの特定の場合には、突起は、シャシまたはカートリッジ・ホルダのペグ432である。切欠き430とペグ432は、同じ断面を共有する。図14および図15a、15bに示されている断面の形状により、ペグ432は、切欠き430とペグ432の向きが一致したとき切欠き430内に挿入することができるだけである。それにより、そのように一致しないとき、投薬インターフェース402とカートリッジ・ホルダのカップリングは妨げられる。
【0078】
ペグ432が切欠き430内に挿入されたとき、回転弁420の動作は、ペグ432によって制御することができる。したがって、回転弁420は、たとえば、投薬インターフェース402の外側に実装された他の制御論理、たとえば主本体14のマイクロプロセッサ制御ユニットによって制御することができる。
【0079】
次に、投薬インターフェース402の典型的な動作について述べる。2つのカートリッジ416、418を有するカートリッジ・ホルダが、投薬インターフェース402にカップリングされる準備ができている。カートリッジ・ホルダのペグ432が切欠き430に対して同一に配向され、それによりカップリングを可能にし、その間に、ペグ432が切欠き430内に挿入され、それにより切欠き430に係合する。
【0080】
図14および図15aに示されている最初の向きでは、回転弁420の向きにより、入口チャネル404、406と出口チャネル424との間の流体流すべてが遮断される。
【0081】
薬物送達手順の一部として、第1のカートリッジ416からの1次薬剤が注射される予定である。そのために、ペグ432は、移送通路428により第1の入口チャネル404と出口チャネル424との間に流体連結が生み出されるまで、回転弁420を反時計回りに回す。次に、第1のカートリッジ416内の栓が前進し、それにより第1のカートリッジ416から流体出口426を介して注射針に1次薬剤を吐出する。栓は、所望の量の1次薬剤が注射されるまで第1のカートリッジ416内で前進する。
【0082】
1次薬剤の注射が完了した後で、ペグ432は、移送通路428により第2の入口チャネル406と出口チャネル424との間で流体連結が生み出されるまで、依然として反時計回りで回転弁420をさらに回す。次いで、第2のカートリッジ418内の栓が前進し、第2のカートリッジ418から流体出口426を介して注射針に2次薬剤を吐出する。
【0083】
2次薬剤の注射が完了した後で、ペグ432は、切欠き430の向きが初期状態における切欠き430の向きと同一でない、すなわち図14に示されている向きとは異なる位置に回転弁420を回す。一例は、図15bに示されているペグ432の位置となろう。回転弁420のこの位置は、移送通路428により入口チャネル404、406と出口チャネル424との間で流体練通が遮断される位置でもあり得る。
【0084】
注射後だけ、切欠き430の向きが初期状態と同一でない位置にペグ432を動かすことの代わりに、投薬インターフェースをシャシまたはカートリッジ・ホルダに取り付けた直後すでにあった位置にペグ432を動かすことができる。その場合、各注射後、ペグ432は、切欠き430をこの位置に再び動かす。
【0085】
投薬インターフェースが取り外された後で、ペグ432は、新しい投薬インターフェースを取り付けるために初期位置に戻る。
【0086】
使用済み投薬インターフェースの取外しは、カートリッジ・ホルダ、すなわち薬物送達デバイスのシャシ内、さらにはペグ432内のセンサまたはスイッチによって検出されてもよい。センサまたはスイッチは、投薬インターフェースの対応する機械的構造(たとえば、壁または表面)によってトリガされてもよい。
【0087】
したがって、投薬インターフェース402が薬物送達デバイスのカートリッジ・ホルダまたはシャシから取り外され、使用済み投薬インターフェース402の再カップリングが試みられたとき、使用済み投薬インターフェース402の切欠き430は、異なる心合せでペグ432に係合することができないので、カートリッジ・ホルダまたはシャシに使用済み投薬インターフェース402をカップリングすることは成功しないことになる。ペグ432が初期位置に戻ったとき、新しい未使用のカートリッジ・ハブだけ取り付けることができる。それにより、投薬インターフェース402の再使用が防止される。
【0088】
したがって、投薬インターフェースを薬物送達デバイスに取り付け、取り外すことは、薬物送達デバイスのペグ432が新しい投薬インターフェースを取り付けるために初期位置にあることを条件に、以下の工程を含むことができる:
− たとえばスイッチまたはセンサによって、新しい投薬インターフェースの取付けを検出する工程;
− 場合により、投薬インターフェースをシャシまたはカートリッジ・ホルダにロックする工程;
− ペグ432を通じてカートリッジ・ホルダ内の弁を動作させる、すなわち、弁内の1つまたはそれ以上の流体経路を開く、または閉じる工程;
− 弁を初期位置とは異なる閉位置(すなわち、流体経路すべてが閉じられる位置)に動かす工程;
− たとえばスイッチまたはセンサによって、投薬インターフェースの取外しを検出する工程;
− ペグ432を新しい投薬インターフェースを取り付けるために初期位置に戻す/回す工程。
【0089】
あるいは、投薬インターフェースを薬物送達デバイスに取り付け、取り外すことは、以下の工程を含むことができる。ここでは、弁は、投薬インターフェースの取付け直後、異なる位置に動かされる:
− たとえばスイッチまたはセンサによって、新しい投薬インターフェースの取付けを検出する工程;
− 場合により、投薬インターフェースをシャシまたはカートリッジ・ホルダにロックする工程;
− ペグ432の回転によって、弁を初期位置とは異なる閉位置に動かす工程;
− ペグ432を通じてカートリッジ・ホルダ内の弁を動作させる、すなわち、弁内の1つまたはそれ以上の流体経路を開く、または閉じる工程;
− 弁を初期位置とは異なる閉位置に動かす工程(これは、上記工程と同じ閉位置でもよい);
− たとえばスイッチまたはセンサによって、投薬インターフェースの取外しを検出する工程;
− ペグ432を新しい投薬インターフェースを取り付けるために初期位置に戻す/回す工程。
【0090】
投薬インターフェースの取外しを検出する工程は、ユーザが操作することができるイジェクト・ボタンまたはスイッチの検出を含むことができる。イジェクト・ボタンが押されたことを検出した後で、投薬インターフェースは、前もってデバイスにロックされていた場合、ロック解除され得る。
【0091】
本明細書で使用する用語「薬物」または「薬剤」は、少なくとも1つの薬学的に活性な化合物を含む医薬製剤を意味し、
ここで、一実施形態において、薬学的に活性な化合物は、最大1500Daまでの分子量を有し、および/または、ペプチド、タンパク質、多糖類、ワクチン、DNA、RNA、酵素、抗体もしくはそのフラグメント、ホルモンもしくはオリゴヌクレオチド、または上述の薬学的に活性な化合物の混合物であり、
ここで、さらなる実施形態において、薬学的に活性な化合物は、糖尿病、または糖尿病性網膜症などの糖尿病関連の合併症、深部静脈血栓塞栓症または肺血栓塞栓症などの血栓塞栓症、急性冠症候群(ACS)、狭心症、心筋梗塞、がん、黄斑変性症、炎症、枯草熱、アテローム性動脈硬化症および/または関節リウマチの処置および/または予防に有用であり、
ここで、さらなる実施形態において、薬学的に活性な化合物は、糖尿病または糖尿病性網膜症などの糖尿病に関連する合併症の処置および/または予防のための少なくとも1つのペプチドを含み、
ここで、さらなる実施形態において、薬学的に活性な化合物は、少なくとも1つのヒトインスリンもしくはヒトインスリン類似体もしくは誘導体、グルカゴン様ペプチド(GLP−1)もしくはその類似体もしくは誘導体、またはエキセジン−3もしくはエキセジン−4もしくはエキセジン−3もしくはエキセジン−4の類似体もしくは誘導体を含む。
【0092】
インスリン類似体は、たとえば、Gly(A21),Arg(B31),Arg(B32)ヒトインスリン;Lys(B3),Glu(B29)ヒトインスリン;Lys(B28),Pro(B29)ヒトインスリン;Asp(B28)ヒトインスリン;B28位におけるプロリンがAsp、Lys、Leu、Val、またはAlaで置き換えられており、B29位において、LysがProで置き換えられていてもよいヒトインスリン;Ala(B26)ヒトインスリン;Des(B28−B30)ヒトインスリン;Des(B27)ヒトインスリン、およびDes(B30)ヒトインスリンである。
【0093】
インスリン誘導体は、たとえば、B29−N−ミリストイル−des(B30)ヒトインスリン;B29−N−パルミトイル−des(B30)ヒトインスリン;B29−N−ミリストイルヒトインスリン;B29−N−パルミトイルヒトインスリン;B28−N−ミリストイルLysB28ProB29ヒトインスリン;B28−N−パルミトイル−LysB28ProB29ヒトインスリン;B30−N−ミリストイル−ThrB29LysB30ヒトインスリン;B30−N−パルミトイル−ThrB29LysB30ヒトインスリン;B29−N−(N−パルミトイル−γ−グルタミル)−des(B30)ヒトインスリン;B29−N−(N−リトコリル−γ−グルタミル)−des(B30)ヒトインスリン;B29−N−(ω−カルボキシヘプタデカノイル)−des(B30)ヒトインスリン、およびB29−N−(ω−カルボキシヘプタデカノイル)ヒトインスリンである。
【0094】
エキセンジン−4は、たとえば、H−His−Gly−Glu−Gly−Thr−Phe−Thr−Ser−Asp−Leu−Ser−Lys−Gln−Met−Glu−Glu−Glu−Ala−Val−Arg−Leu−Phe−Ile−Glu−Trp−Leu−Lys−Asn−Gly−Gly−Pro−Ser−Ser−Gly−Ala−Pro−Pro−Pro−Ser−NH2配列のペプチドであるエキセンジン−4(1−39)を意味する。
【0095】
エキセンジン−4誘導体は、たとえば、以下のリストの化合物:
H−(Lys)4−desPro36,desPro37エキセンジン−4(1−39)−NH2、
H−(Lys)5−desPro36,desPro37エキセンジン−4(1−39)−NH2、
desPro36[Asp28]エキセンジン−4(1−39)、
desPro36[IsoAsp28]エキセンジン−4(1−39)、
desPro36[Met(O)14,Asp28]エキセンジン−4(1−39)、
desPro36[Met(O)14,IsoAsp28]エキセンジン−(1−39)、
desPro36[Trp(O2)25,Asp28]エキセンジン−4(1−39)、
desPro36[Trp(O2)25,IsoAsp28]エキセンジン−4(1−39)、
desPro36[Met(O)14,Trp(O2)25,Asp28]エキセンジン−4(1−39)、
desPro36[Met(O)14Trp(O2)25,IsoAsp28]エキセンジン−4(1−39);または
desPro36[Asp28]エキセンジン−4(1−39)、
desPro36[IsoAsp28]エキセンジン−4(1−39)、
desPro36[Met(O)14,Asp28]エキセンジン−4(1−39)、
desPro36[Met(O)14,IsoAsp28]エキセンジン−(1−39)、
desPro36[Trp(O2)25,Asp28]エキセンジン−4(1−39)、
desPro36[Trp(O2)25,IsoAsp28]エキセンジン−4(1−39)、
desPro36[Met(O)14,Trp(O2)25,Asp28]エキセンジン−4(1−39)、
desPro36[Met(O)14,Trp(O2)25,IsoAsp28]エキセンジン−4(1−39)、
(ここで、基−Lys6−NH2が、エキセンジン−4誘導体のC−末端に結合していてもよい);
【0096】
または、以下の配列のエキセンジン−4誘導体:
H−(Lys)6−desPro36[Asp28]エキセンジン−4(1−39)−Lys6−NH2、
desAsp28Pro36,Pro37,Pro38エキセンジン−4(1−39)−NH2、
H−(Lys)6−desPro36,Pro38[Asp28]エキセンジン−4(1−39)−NH2、
H−Asn−(Glu)5desPro36,Pro37,Pro38[Asp28]エキセンジン−4(1−39)−NH2、
desPro36,Pro37,Pro38[Asp28]エキセンジン−4(1−39)−(Lys)6−NH2、
H−(Lys)6−desPro36,Pro37,Pro38[Asp28]エキセンジン−4(1−39)−(Lys)6−NH2、
H−Asn−(Glu)5−desPro36,Pro37,Pro38[Asp28]エキセンジン−4(1−39)−(Lys)6−NH2、
H−(Lys)6−desPro36[Trp(O2)25,Asp28]エキセンジン−4(1−39)−Lys6−NH2、
H−desAsp28Pro36,Pro37,Pro38[Trp(O2)25]エキセンジン−4(1−39)−NH2、
H−(Lys)6−desPro36,Pro37,Pro38[Trp(O2)25,Asp28]エキセンジン−4(1−39)−NH2、
H−Asn−(Glu)5−desPro36,Pro37,Pro38[Trp(O2)25,Asp28]エキセンジン−4(1−39)−NH2、
desPro36,Pro37,Pro38[Trp(O2)25,Asp28]エキセンジン−4(1−39)−(Lys)6−NH2、
H−(Lys)6−desPro36,Pro37,Pro38[Trp(O2)25,Asp28]エキセンジン−4(1−39)−(Lys)6−NH2、
H−Asn−(Glu)5−desPro36,Pro37,Pro38[Trp(O2)25,Asp28]エキセンジン−4(1−39)−(Lys)6−NH2、
H−(Lys)6−desPro36[Met(O)14,Asp28]エキセンジン−4(1−39)−Lys6−NH2、
desMet(O)14,Asp28Pro36,Pro37,Pro38エキセンジン−4(1−39)−NH2、
H−(Lys)6−desPro36,Pro37,Pro38[Met(O)14,Asp28]エキセンジン−4(1−39)−NH2、
H−Asn−(Glu)5−desPro36,Pro37,Pro38[Met(O)14,Asp28]エキセンジン−4(1−39)−NH2;
desPro36,Pro37,Pro38[Met(O)14,Asp28]エキセンジン−4(1−39)−(Lys)6−NH2、
H−(Lys)6−desPro36,Pro37,Pro38[Met(O)14,Asp28]エキセンジン−4(1−39)−(Lys)6−NH2、
H−Asn−(Glu)5desPro36,Pro37,Pro38[Met(O)14,Asp28]エキセンジン−4(1−39)−(Lys)6−NH2、
H−Lys6−desPro36[Met(O)14,Trp(O2)25,Asp28]エキセンジン−4(1−39)−Lys6−NH2、
H−desAsp28,Pro36,Pro37,Pro38[Met(O)14,Trp(O2)25]エキセンジン−4(1−39)−NH2、
H−(Lys)6−desPro36,Pro37,Pro38[Met(O)14,Asp28]エキセンジン−4(1−39)−NH2、
H−Asn−(Glu)5−desPro36,Pro37,Pro38[Met(O)14,Trp(O2)25,Asp28]エキセンジン−4(1−39)−NH2、
desPro36,Pro37,Pro38[Met(O)14,Trp(O2)25,Asp28]エキセンジン−4(1−39)−(Lys)6−NH2、
H−(Lys)6−desPro36,Pro37,Pro38[Met(O)14,Trp(O2)25,Asp28]エキセンジン−4(S1−39)−(Lys)6−NH2、
H−Asn−(Glu)5−desPro36,Pro37,Pro38[Met(O)14,Trp(O2)25,Asp28]エキセンジン−4(1−39)−(Lys)6−NH2;
または前述のいずれか1つのエキセンジン−4誘導体の薬学的に許容される塩もしくは溶媒和化合物
から選択される。
【0097】
ホルモンは、たとえば、ゴナドトロピン(フォリトロピン、ルトロピン、コリオンゴナドトロピン、メノトロピン)、ソマトロピン(ソマトロピン)、デスモプレシン、テルリプレシン、ゴナドレリン、トリプトレリン、ロイプロレリン、ブセレリン、ナファレリン、ゴセレリンなどの、Rote Liste、2008年版、50章に列挙されている脳下垂体ホルモンまたは視床下部ホルモンまたは調節性活性ペプチドおよびそれらのアンタゴニストである。
【0098】
多糖類としては、たとえば、グルコサミノグリカン、ヒアルロン酸、ヘパリン、低分子量ヘパリン、もしくは超低分子量ヘパリン、またはそれらの誘導体、または上述の多糖類の硫酸化形態、たとえば、ポリ硫酸化形態、および/または、薬学的に許容されるそれらの塩がある。ポリ硫酸化低分子量ヘパリンの薬学的に許容される塩の例としては、エノキサパリンナトリウムがある。
【0099】
抗体は、基本構造を共有する免疫グロブリンとしても知られている球状血漿タンパク質(約150kDa)である。これらは、アミノ酸残基に付加された糖鎖を有するので、糖タンパク質である。各抗体の基本的な機能単位は免疫グロブリン(Ig)単量体(1つのIg単位のみを含む)であり、分泌型抗体はまた、IgAなどの2つのIg単位を有する二量体、硬骨魚のIgMのような4つのIg単位を有する四量体、または哺乳動物のIgMのように5つのIg単位を有する五量体でもあり得る。
【0100】
Ig単量体は、4つのポリペプチド鎖、すなわち、システイン残基間のジスルフィド結合によって結合された2つの同一の重鎖および2本の同一の軽鎖から構成される「Y」字型の分子である。それぞれの重鎖は約440アミノ酸長であり、それぞれの軽鎖は約220アミノ酸長である。重鎖および軽鎖はそれぞれ、これらの折り畳み構造を安定化させる鎖内ジスルフィド結合を含む。それぞれの鎖は、Igドメインと呼ばれる構造ドメインから構成される。これらのドメインは約70〜110個のアミノ酸を含み、そのサイズおよび機能に基づいて異なるカテゴリー(たとえば、可変すなわちV、および定常すなわちC)に分類される。これらは、2つのβシートが、保存されたシステインと他の荷電アミノ酸との間の相互作用によって一緒に保持される「サンドイッチ」形状を作り出す特徴的な免疫グロブリン折り畳み構造を有する。
【0101】
α、δ、ε、γおよびμで表される5種類の哺乳類Ig重鎖が存在する。存在する重鎖の種類により抗体のアイソタイプが定義され、これらの鎖はそれぞれ、IgA、IgD、IgE、IgGおよびIgM抗体中に見出される。
【0102】
異なる重鎖はサイズおよび組成が異なり、αおよびγは約450個のアミノ酸を含み、δは約500個のアミノ酸を含み、μおよびεは約550個のアミノ酸を有する。各重鎖は、2つの領域、すなわち定常領域(CH)と可変領域(VH)を有する。1つの種において、定常領域は、同じアイソタイプのすべての抗体で本質的に同一であるが、異なるアイソタイプの抗体では異なる。重鎖γ、α、およびδは、3つのタンデム型のIgドメインと、可撓性を加えるためのヒンジ領域とから構成される定常領域を有し、重鎖μおよびεは、4つの免疫グロブリン・ドメインから構成される定常領域を有する。重鎖の可変領域は、異なるB細胞によって産生された抗体では異なるが、単一B細胞またはB細胞クローンによって産生された抗体すべてについては同じである。各重鎖の可変領域は、約110アミノ酸長であり、単一のIgドメインから構成される。
【0103】
哺乳類では、λおよびκで表される2種類の免疫グロブリン軽鎖がある。軽鎖は2つの連続するドメイン、すなわち1つの定常ドメイン(CL)および1つの可変ドメイン(VL)を有する。軽鎖のおおよその長さは、211〜217個のアミノ酸である。各抗体は、常に同一である2本の軽鎖を有し、哺乳類の各抗体につき、軽鎖κまたはλの1つのタイプのみが存在する。
【0104】
すべての抗体の一般的な構造は非常に類似しているが、所与の抗体の固有の特性は、上記で詳述したように、可変(V)領域によって決定される。より具体的には、各軽鎖(VL)について3つおよび重鎖(HV)に3つの可変ループが、抗原との結合、すなわちその抗原特異性に関与する。これらのループは、相補性決定領域(CDR)と呼ばれる。VHドメインおよびVLドメインの両方からのCDRが抗原結合部位に寄与するので、最終的な抗原特異性を決定するのは重鎖と軽鎖の組合せであり、どちらか単独ではない。
【0105】
「抗体フラグメント」は、上記で定義した少なくとも1つの抗原結合フラグメントを含み、そのフラグメントが由来する完全抗体と本質的に同じ機能および特異性を示す。パパインによる限定的なタンパク質消化は、Igプロトタイプを3つのフラグメントに切断する。1つの完全なL鎖および約半分のH鎖をそれぞれが含む2つの同一のアミノ末端フラグメントが、抗原結合フラグメント(Fab)である。サイズが同等であるが、鎖間ジスルフィド結合を有する両方の重鎖の半分の位置でカルボキシル末端を含む第3のフラグメントは、結晶可能なフラグメント(Fc)である。Fcは、炭水化物、相補結合部位、およびFcR結合部位を含む。限定的なペプシン消化により、Fab片とH−H鎖間ジスルフィド結合を含むヒンジ領域の両方を含む単一のF(ab’)2フラグメントが得られる。F(ab’)2は、抗原結合に対して二価である。F(ab’)2のジスルフィド結合は、Fab’を得るために切断することができる。さらに、重鎖および軽鎖の可変領域は、縮合して単鎖可変フラグメント(scFv)を形成することもできる。
【0106】
薬学的に許容される塩は、たとえば、酸付加塩および塩基性塩である。酸付加塩としては、たとえば、HClまたはHBr塩がある。塩基性塩は、たとえば、アルカリまたはアルカリ土類金属、たとえば、Na+、またはK+、またはCa2+から選択されるカチオン、または、アンモニウムイオンN+(R1)(R2)(R3)(R4)(式中、R1〜R4は互いに独立に:水素、場合により置換されたC1〜C6アルキル基、場合により置換されたC2〜C6アルケニル基、場合により置換されたC6〜C10アリール基、または場合により置換されたC6〜C10ヘテロアリール基を意味する)を有する塩である。薬学的に許容される塩のさらなる例は、「Remington’s Pharmaceutical Sciences」17版、Alfonso R.Gennaro(編)、Mark Publishing Company、Easton、Pa.、U.S.A.、1985およびEncyclopedia of Pharmaceutical Technologyに記載されている。
【0107】
薬学的に許容される溶媒和物は、たとえば、水和物である。
図1
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図9
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図15b