特許第6200905号(P6200905)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 株式会社日立産機システムの特許一覧

<>
  • 特許6200905-流体圧縮システムまたはその制御装置 図000002
  • 特許6200905-流体圧縮システムまたはその制御装置 図000003
  • 特許6200905-流体圧縮システムまたはその制御装置 図000004
  • 特許6200905-流体圧縮システムまたはその制御装置 図000005
  • 特許6200905-流体圧縮システムまたはその制御装置 図000006
  • 特許6200905-流体圧縮システムまたはその制御装置 図000007
  • 特許6200905-流体圧縮システムまたはその制御装置 図000008
  • 特許6200905-流体圧縮システムまたはその制御装置 図000009
  • 特許6200905-流体圧縮システムまたはその制御装置 図000010
  • 特許6200905-流体圧縮システムまたはその制御装置 図000011
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6200905
(24)【登録日】2017年9月1日
(45)【発行日】2017年9月20日
(54)【発明の名称】流体圧縮システムまたはその制御装置
(51)【国際特許分類】
   F04B 49/06 20060101AFI20170911BHJP
【FI】
   F04B49/06 341L
【請求項の数】17
【全頁数】17
(21)【出願番号】特願2014-560602(P2014-560602)
(86)(22)【出願日】2013年2月8日
(86)【国際出願番号】JP2013052981
(87)【国際公開番号】WO2014122764
(87)【国際公開日】20140814
【審査請求日】2015年7月1日
(73)【特許権者】
【識別番号】502129933
【氏名又は名称】株式会社日立産機システム
(74)【代理人】
【識別番号】100098660
【弁理士】
【氏名又は名称】戸田 裕二
(72)【発明者】
【氏名】任 之家
(72)【発明者】
【氏名】高安 広宣
(72)【発明者】
【氏名】兼本 喜之
【審査官】 松浦 久夫
(56)【参考文献】
【文献】 特開2012−149548(JP,A)
【文献】 特開平11−287188(JP,A)
【文献】 特開2009−221977(JP,A)
【文献】 特開昭60−147586(JP,A)
【文献】 特開昭54−021607(JP,A)
【文献】 特開昭58−167889(JP,A)
【文献】 特開2007−120497(JP,A)
【文献】 特開2010−190108(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F04B 49/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
流体を圧縮する複数台の圧縮装置と、
複数台の前記圧縮装置の運転台数を制御する台数制御装置とを備え、
複数台の前記圧縮装置のそれぞれは、複数台の圧縮機本体および制御回路から構成され、前記制御回路は、前記複数台の圧縮機本体が圧縮流体の使用量に応じて運転台数を変更する容量制御運転または圧縮流体の使用量によらず運転台数を変更しない固定制御運転を行うかの切り替えが可能であり、
前記台数制御装置は、複数台の前記圧縮装置のそれぞれが前記容量制御運転または前記固定制御運転のいずれを行うかを切り替えが可能であり、
前記制御回路における容量制御運転および前記台数制御装置の容量制御運転において、前記圧縮機本体の運転台数の増減を、前記圧縮装置の運転台数の増減よりも優先して実行することを特徴とする流体圧縮システム。
【請求項2】
前記台数制御装置は1台の前記圧縮装置を前記容量制御運転させ、他の前記圧縮装置を前記固定制御運転とすることを特徴とする請求項1に記載の流体圧縮システム。
【請求項3】
新しく起動した圧縮装置がある場合、当該圧縮装置を前記容量制御運転させる1台とすることを特徴とする請求項2に記載の流体圧縮システム。
【請求項4】
前記容量制御運転中に圧縮装置の運転台数を増減させるタイミングで各圧縮機毎に前記容量制御運転または前記固定制御運転を切り替えることを特徴とする請求項1に記載の流体圧縮システム。
【請求項5】
累積運転時間が短い前記圧縮装置を優先的に起動させ、累積運転時間が長い前記圧縮装置を優先的に停止させることを特徴とする請求項1に記載の流体圧縮システム。
【請求項6】
前記台数制御装置は、前記圧縮装置が生成した流体を貯留する流体タンク内の圧力が所定の上限圧力値または下限圧力値に到達するまでの時間が第1の閾値以下になると前記圧縮装置の運転台数を増減させ、
前記制御回路は前記流体タンク内の圧力が所定の上限圧力値または下限圧力値に到達するまでの時間が前記第1の閾値よりも大きい第2の閾値以下になると前記圧縮機本体の運転台数を増減させることを特徴とする請求項1に記載の流体圧縮システム。
【請求項7】
複数台の前記圧縮装置のうち少なくとも1台は、前記固定制御運転を行うことを特徴とする請求項1に記載の流体圧縮システム。
【請求項8】
複数台の前記圧縮装置のうち、前記容量制御運転または前記固定制御運転を行う圧縮装置を前記固定制御運転を行う圧縮装置よりも先に起動することを特徴とする請求項7に記載の流体圧縮システム。
【請求項9】
複数台の前記圧縮装置のうち、前記固定制御運転を行う圧縮装置を前記容量制御運転または前記固定制御運転を行う圧縮装置よりも先に停止することを特徴とする請求項7に記載の流体圧縮システム。
【請求項10】
複数台の圧縮機本体および制御回路から構成され、圧縮流体の使用量に応じて運転台数を変更する容量制御運転または圧縮流体の使用量によらず運転台数を変更しない固定制御運転を行うかの切り替えが可能である複数台の圧縮装置の運転台数を制御し、
前記制御回路前記複数台の圧縮機本体に対して前記容量制御運転または前記固定制御運転のいずれを行うかを制御し、
前記制御回路における容量制御運転および前記圧縮装置に対する容量制御運転において、前記圧縮機本体の運転台数の増減を、前記圧縮装置の運転台数の増減よりも優先して実行することを特徴とする流体圧縮システムの制御装置。
【請求項11】
1台の前記圧縮装置を前記容量制御運転させ、他の前記圧縮装置を前記固定制御運転とすることを特徴とする請求項10に記載の流体圧縮システムの制御装置。
【請求項12】
新しく起動した前記圧縮装置を前記容量制御運転させることを特徴とする請求項10に記載の流体圧縮システムの制御装置。
【請求項13】
前記圧縮装置の運転台数を増減させるタイミングで前記容量制御運転または前記固定制御運転を切り替えることを特徴とする請求項10に記載の流体圧縮システムの制御装置。
【請求項14】
累積運転時間が短い前記圧縮装置を優先的に起動させ、累積運転時間が長い前記圧縮装置を優先的に停止させることを特徴とする請求項10に記載の流体圧縮システムの制御装置。
【請求項15】
前記圧縮装置が生成した流体を貯留する流体タンク内の圧力が所定の上限圧力値または下限圧力値に到達するまでの時間が第1の閾値以下になると前記圧縮装置の運転台数を増減させ、
前記制御回路は前記流体タンク内の圧力が所定の上限圧力値または下限圧力値に到達するまでの時間が前記第1の閾値よりも大きい第2の閾値以下になると前記圧縮機本体の運転台数を増減させることを特徴とする請求項10に記載の流体圧縮システムの制御装置。
【請求項16】
複数台の前記圧縮装置のうち少なくとも1台は、前記固定制御運転を行い、複数台の前記圧縮装置のうち、前記容量制御運転または前記固定制御運転を行う圧縮装置を前記固定制御運転を行う圧縮装置よりも先に起動することを特徴とする請求項15に記載の流体圧縮システムの制御装置。
【請求項17】
複数台の前記圧縮装置のうち少なくとも1台は、前記固定制御運転を行い、複数台の前記圧縮装置のうち、前記固定制御運転を行う圧縮装置を前記容量制御運転または前記固定制御運転を行う圧縮装置よりも先に停止することを特徴とする請求項15に記載の流体圧縮システムの制御装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、流体圧縮装置またはその制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、タンク内の圧力の時間当たりの増加率または減少率に応じて複数台の圧縮機の運転台数を増加または減少させる空気圧縮装置の制御装置が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2007−120497号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1の空気圧縮装置の制御装置では、全ての圧縮機を運転しても空気量が足りない場合、設置する圧縮機の運転台数をさらに増やすことになる。設置する圧縮機の運転台数を増やした場合、全ての圧縮機を特許文献1の制御装置によって制御すると、全ての圧縮機が停止の状態のときに1台ずつ順次に起動したり、全ての圧縮機が運転状態のときに1台ずつ順次に停止したりする。そのため、急激な空気の使用量の変化に対応して空気を供給することができなかった。
【0005】
上記問題点に鑑み、本発明は圧縮機の設置台数を増やした場合においても急激な流体の使用量の変化に対応して圧縮流体を供給できる流体圧縮システムまたはその制御装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、本発明は、流体を圧縮する複数台の圧縮装置と、複数台の前記圧縮装置の運転台数を制御する台数制御装置とを備え、複数台の前記圧縮装置のうち少なくとも1台は、複数台の圧縮機本体から構成され、圧縮流体の使用量に応じて運転台数を変更する容量制御運転または圧縮流体の使用量によらず運転台数を変更しない固定制御運転を行うかの切り替えが可能であり、前記台数制御装置は、複数台の前記圧縮装置が前記容量制御運転または前記固定制御運転のいずれを行うかを切り替えることを特徴とする流体圧縮システムを提供する。
【0007】
また、本発明は、複数台の圧縮機本体から構成され、圧縮流体の使用量に応じて運転台数を変更する容量制御運転または圧縮流体の使用量によらず運転台数を変更しない固定制御運転を行うかの切り替えが可能である少なくとも1台の圧縮装置を含む複数台の圧縮装置の運転台数を制御し、前記圧縮装置が前記容量制御運転または前記固定制御運転のいずれを行うかを制御することを特徴とする流体圧縮システムの制御装置を提供する。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、圧縮機の設置台数を増やした場合においても急激な流体の使用量の変化に対応して圧縮流体を供給できる流体圧縮システムまたはその制御装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本発明の実施例1の空気圧縮システムの構成を示すブロック図である
図2】本発明の実施例1の台数制御装置による圧縮装置の起動または停止制御の処理を示す流れ図である
図3】本発明の実施例1の圧縮装置による圧縮機本体の起動または停止制御の処理を示す流れ図である
図4】本発明の実施例1の圧縮機本体による圧縮装置の起動と停止時の判定タイミング図である
図5】本発明の実施例1のタンク圧力、圧縮機本体のON/OFF、電力の時間変化を示す特性線図である
図6】本発明の実施例2の空気圧縮システムの構成を示すブロック図である
図7】本発明の実施例2の台数制御装置による圧縮装置の起動または停止制御の処理を示す流れ図である
図8】本発明の実施例2の圧縮装置による圧縮機本体の起動または停止制御の処理を示す流れ図である
図9】本発明の実施例2の圧縮機本体と圧縮装置の起動と停止時の判定タイミング図である。
図10】本発明の実施例2のタンク圧力、圧縮機本体のON/OFF、電力の時間変化を示す特性線図である
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の実施の形態による流体圧縮システムとしてタンクに対し個別に圧縮空気を供給する4台の空気圧縮装置を用いて構成した場合を例に挙げ、添付図面に従って詳細に説明する。
【実施例1】
【0011】
図1ないし図5を用いて本発明の実施例1の空気圧縮システムを説明する。本実施例における空気圧縮システムの構成を図1に示す。図1において、台数制御装置1は圧縮装置2A〜2Dの運転台数を制御する装置である。空気タンク12に貯蓄している空気の圧力P’(t)を測定する手段である圧力センサ15を備え、測定した圧力を電圧信号として制御回路16に取り込み、制御回路16のアナログ/デジタル変換回路を介し、デジタル信号に変換する。そして、圧力測定値P’(t)の変化率を用い、台数制御装置と接続する圧縮装置の運転台数を制御する機能を有する。
【0012】
空気を圧縮する圧縮装置2Aは主に3つの空気を圧縮する圧縮機本体31A〜33Aと、3つの圧縮機本体を駆動するモータ21A〜23Aと、圧縮機本体の運転台数を制御する制御回路4Aと、圧縮した空気を貯蓄するタンク5Aと、タンク5Aの圧力P(t)を測定する手段である圧力センサ6Aにより構成されている。制御回路4Aは測定した圧力値を記録する機能、と各圧縮機本体31A〜33Aの累積運転時間を記録する機能と、各圧縮機本体31A〜33Aを駆動するモータ21A〜23Aの運転、停止を制御する機能を有する。制御回路4Aは測定した圧力値P(t)を用いて、圧縮機本体の運転台数を制御する。また、使用者によって設定されたタンク5Aの下限圧力Pminと上限圧力Pmaxは制御回路4Aに記録されている。
【0013】
その他の圧縮装置2B〜2Dは圧縮装置2Aと同様、それぞれ3つの圧縮機本体31B〜33B,31C〜33C,31D〜33Dと3つのモータ21B〜23B,21C〜23C,21D〜23Dと制御回路4B〜4D、空気貯蓄するタンク5B〜5D、空気タンクの圧力を測定する手段である圧力センサ6B〜6Dにより構成されている。
【0014】
圧縮装置2A〜2Dは配線7A〜7D,8A〜8D,9A〜9D,17A〜17Dを通じて、台数制御装置1と接続している、各配線の機能について後述する。また、各空気を貯蓄するタンク5A〜5Dは空気を輸送する配管10A〜10Dを介し、空気タンク12に圧縮した空気を送り込む。そして、タンク12には、取り出し弁13を備えた出力配管14が取り付けられている。これにより、タンク12は、出力配管14を介して外部の空圧機器(図示せず)に接続されると共に、取り出し弁13を開閉することによって該空圧機器に向けて圧縮空気を供給するものである。また、空気タンク12から配管25を通じて、台数制御装置1に内蔵される圧力センサ15と接続する。
【0015】
圧縮装置2A〜2Dはそれぞれ独立な圧縮装置であり、単独での運転も可能である。台数制御装置1と接続する配線7A〜7Dを通じて、単独運転するか、台数制御装置1により制御されるかの切替えが可能である。また、信号線8A〜8Dは台数制御装置1から各圧縮装置への運転信号線であり、その運転信号を受け、圧縮装置2A〜2Dが起動、停止を行う。台数制御装置1は信号線9A〜9Dを通じて圧縮装置2A〜2Dに対し、どの制御方式で運転するかの命令を送る。圧縮装置2A〜2Dは上記の命令を受け、圧縮装置2A〜2Dの運転台数を増減させるタイミングで、圧縮空気の使用量に応じて運転台数を変更することにより、吐出し空気量(出力)を変更する容量制御方式で運転するか、それとも圧縮空気の使用量によらず運転時の運転台数を変更せず、吐出し空気量(出力)が一定となる固定制御方式で運転するかを切替える。また、圧縮装置2A〜2Dが異常発生した時に、17A〜17Dを通じて台数制御装置1に信号を送り、台数制御装置1はその信号を受け、該圧縮装置を台数制御対象から外し、代替の圧縮装置を起動することが可能である。
【0016】
また、空気タンク12と空気タンク5A〜5Dは配管10A〜10Dにより接続したため、空気タンク12の圧力測定値P’(t)と空気タンク5A〜5Dの圧力測定値P(t)は同じ値である。そして、空気タンク12の上限圧力値Pmaxと下限圧力値Pminは空気タンク5A〜5Dの上限圧力値Pmaxと下限圧力値Pminも同じ値で設定する。
【0017】
本実施例による空気圧縮システムは上述の如き構成を有するもので、次に、図1図4を参照しつつ、台数制御装置1と圧縮装置(2A〜2D)各々の圧力測定値P’(t)とP(t)を用いて、圧縮装置(2A〜2D)の運転台数と圧縮機本体の運転台数の制御処理を説明する。
【0018】
まず、図2を参照し、台数制御装置1が圧縮装置(2A〜2D)の運転台数を増減する制御方法について説明する。図2に示す運転制御処理は、予め決められたサンプリング周期Ts(例えば200ms)毎に行うものである。
【0019】
ステップ1では、圧力センサ15からの圧力信号P’(t)を用いて、一定のサンプリング周期Tsで現在の空気タンク12内の圧力P’(t)を計測する。
【0020】
次に、ステップ2では、現在タンク圧力値P’(t)が予め設定された空気タンク12の下限圧力値Pminより小さいか否かを判定する、もし「Yes」と判定した場合、次のステップ3で圧縮装置(2A〜2D)を全台起動させる。 「No」と判定した場合、次のステップ4で現在圧力値P’(t)は予め設定された空気タンク12の上限圧力値Pmax以上か否かを判定する。もし「Yes」と判定した場合、次のステップ5で圧縮装置(2A〜2D)を全台停止させる。「No」と判定した場合、ステップ6では現在測定した圧力P’(t)と前回測定した圧力値P’(t-1)を用い、数式1でタンク圧力変化率K’を計算する。
【0021】
(数式1)
K’ = (P’(t) - P’(t-1))/Ts
ステップ7では上記計算されたK’がマイナスの値か否かを判定する。もし「Yes」と判定した場合、圧力が下降中というkとで、ステップ8に移る。「No」と判定した場合、圧力が上昇中ということで、ステップ13に移る。ステップ8では、数式2を用いて、下限圧力Pminと現在の圧力P’(t)との差を圧力変化率K’で割ることによって、現在の状態から下限圧力Pminに到達するまでの時間を計算する。計算した値をTd’値とする
【0022】
(数式2)
Td’=(Pmin-P’(t))/K’
次のステップ9でTd’値が予め決めたTd’閾値(例えば2秒)より小さいか否かを判定する。もし「No」と判定した場合、ステップ19に移り、リターンする。もし「Yes」と判定した場合、ステップ10で圧縮装置(2A〜2D)の運転台数を1台の増加を判定する。次のステップ11で累積運転時間最短かつ停止中の圧縮装置(2A〜2D)を優先的に起動させ、新しく起動した圧縮装置(2A〜2D)を容量制御に切替える。そして、ステップ12ではその他の運転中の圧縮装置を空気吐出し量一定となる固定制御に切り替える。最後、ステップ19に移りリターンする。
【0023】
ステップ7で「No」と判定した場合、ステップ13に移り、圧力変化率K’がプラスか否かを判定する。もし「No」と判定した場合、ステップ19に移り、リターンする。もし「Yes」と判定した場合、ステップ14に移る。ステップ14では、上限圧力Pmaxと現在の圧力P’(t)との差を圧力変化率K’で割ることによって、現在の状態から上限圧力Pmaxまで到達すまでの時間を計算する。計算した値をTu’値とする
【0024】
(数式3)
Tu’=(Pmax-P’(t))/K’
次のステップ15ではTu’値が予め決めたTu’閾値(例えば5秒)未満か否かを判定する。もし「No」と判定した場合、ステップ19に移り、リターンする。「Yes」と判定した場合、ステップ16で圧縮装置(2A〜2D)の運転台数を1台の減少を判定する。次のステップ17で容量制御で運転中の圧縮装置(2A〜2D)を停止させる。そして、ステップ18で運転中の圧縮装置(2A〜2D)の中で累積運転時間最長のものを優先的に容量制御に切替え、最後、ステップ19に移りリターンする。
【0025】
台数制御装置1は以上の台数制御処理によって、空気使用量に応じ、空気タンクの上限圧Pmaxに達する前に圧縮装置の運転台数を減少することができ、高い圧力領域の運転を避け、無駄な消費電力を省ける。また、タンクの下限圧力Pminに達す前に、圧縮装置(2A〜2D)の運転台数を増加することで、下限圧力Pminを下回ることがない。そして、運転中に必ず1台の容量制御で運転する圧縮装置を保持することによって、細かい容量制御が可能かつ複数台の圧縮装置が同時に容量制御を行う際に発生する干渉現象も防げる。
【0026】
ここから、図3を参照しながら、圧縮装置(2A〜2D)内部の圧縮機本体の運転台数を増減する制御方法について説明する。例として、圧縮装置2Aが容量制御で運転中と仮定する。図3に示す運転制御処理は、予め決められたサンプリング周期Ts(例えば200ms)毎に行うものである。
【0027】
ステップ31では、圧力センサ6Aからの圧力信号を用いて、一定のサンプリング周期Tsで現在の空気タンク5A内の圧力P(t)を計測する。
【0028】
次に、ステップ32では、現在タンク圧力値P(t)は予め設定された空気タンク5Aの下限圧力値Pminより小さいか否かを判定する、もし「Yes」と判定した場合、次のステップ33で圧縮機本体(31A〜33A)を全台起動させる。 「No」と判定した場合、次のステップ34で現在圧力値P(t)は予め設定された空気タンク5Aの上限圧力値Pmax以上か否かを判定する。もし「Yes」と判定した場合、次のステップ35で圧縮機本体(31A〜33A)を全台停止させる。「No」と判定した場合、ステップ36で現在測定した圧力P(t)と前回測定した圧力値P(t-1)を用い、数式4でタンク圧力変化率Kを計算する。
【0029】
(数式4)
K = (P(t) - P(t-1))/Ts
ステップ37で上記計算されたKはマイナスの値か否かを判定する。もし「Yes」と判定した場合、圧力が下降中ということで、ステップ38に移る。「No」と判定した場合、圧力が上昇中ということで、ステップ42に移る。ステップ38では、数式5を用いて、下限圧力Pminと現在の圧力P(t)との差を圧力変化率Kで割ることによって、現在の状態から下限圧力Pminに到達するまでの時間を計算する。計算した値をTd値とする
【0030】
(数式5)
Td=(Pmin-P(t))/K
次のステップ39でTd値が予め決めたTd閾値より小さいか否かを判定する。ここで、圧縮装置Td閾値と台数制御装置側のTd’閾値はTd閾値>Td’閾値の関係を持たなくてはならない。その理由について後述する。ここて、仮にTd閾値を3秒にする。
【0031】
もしステップ39で「No」と判定した場合、ステップ47に移り、リターンする。もし「Yes」と判定した場合、ステップ40で圧縮機本体(31A〜33A)の運転台数を1台の増加を判定する。次のステップ41で累積運転時間最短かつ停止中の圧縮機本体を起動させる。最後、ステップ47に移りリターンする。
【0032】
Td閾値は必ずTd’閾値より大きくしなくといけない理由は、もしTd閾値をTd’閾値と同じ値に設定した場合は、圧縮装置の起動と圧縮機本体の起動が同時発生するという制御の干渉現象が起きるためである。ここで、Td閾値をTd’閾値より大きくすることで、必ず、ステップ39の圧縮機本体の起動判定はステップ9の圧縮装置の起動判定より先に「Yes」と判定するので、圧縮機本体(31A〜33A)の運転台数の増加は圧縮装置(2A〜2D)の増加より先に行うことになる。そのため、圧縮機本体運転台数の増加と圧縮装置の増加が同時に発生するという干渉現象を防ぐことができる。
【0033】
ステップ37で「No」と判定した場合、ステップ42に移り、圧力変化率Kがプラスか否かを判定する。もし「No」と判定した場合は、圧力が変化無しということで、ステップ47に移り、リターンする。もし「Yes」と判定した場合、圧力が上昇中ということで、ステップ43に移る。ステップ43では、上限圧力Pmaxと現在の圧力P(t)との差を圧力変化率Kで割ることによって、現在の状態から上限圧力Pmaxまでに到達するまでの時間を計算する。計算した値をTu値とする
【0034】
(数式6)
Tu=(Pmax-P(t))/K
次のステップ44でTu値が予め決めたTu閾値未満か否かを判定する。ここで、圧縮装置側Tu閾値と台数制御装置側のTu’閾値はTu閾値>Tu’閾値の関係を持たなくてはならない。その理由について後述する。ここて、仮にTu閾値を10秒にする。
【0035】
もし「No」と判定した場合、ステップ47に移り、リターンする。「Yes」と判定した場合、ステップ45で圧縮機本体(31A〜33A)の運転台数を1台の減少を判定し、次のステップ46で運転中の累積運転時間最長の圧縮機本体を停止させる、最後、ステップ47に移りリターンする。
【0036】
Tu閾値は必ずTu’閾値より大きくしなくといけない理由は、もしTd閾値をTd’閾値と同じ値に設定した場合は、圧縮装置の停止と圧縮機本体の停止が同時発生するという制御の干渉現象が起きるためである。ここで、Td閾値はTd’閾値より大きくすることで、必ず、ステップ44の圧縮機本体の判定はステップ15の圧縮装置の停止判定より先に「Yes」と判定するので、圧縮機本体(31A〜33A)の運転台数の減少は圧縮装置(2A〜2D)の減少より先に行われることになる。そのため、圧縮機本体運転台数の減少と圧縮装置の減少が同時に発生するという干渉現象を防ぐことができる。
【0037】
ここから、図4を参照しながら、空気タンク12の圧力が上昇や下降する際に、圧縮機本体の運転台数の増減及び圧縮装置運転台数の増減動作タイミングについて説明する。例として、台数制御装置が運転中、圧縮装置(2A〜2D)1台も運転していない状態かつ圧縮装置の累積運転時間の関係が2A<2B<2C<2Dである。タンク12の圧力が下降している状態を前提とし、空気圧縮システム全体の動きを説明する。
【0038】
まず、台数制御装置は200msごとに空気タンク12の圧力P’(t)を用い、Td’値を計算する。Td’値が2秒未満になった時に、台数制御装置が累積運転時間最短の圧縮装置2Aを起動し、容量制御で運転させる。起動した圧縮装置2Aは、タンク5Aの圧力値P(t)を用い、Td値を計算する。空気タンク5Aと空気タンク12は配管により接続されているため、それぞれの圧力値P’(t)とP(t)は同じ値である。よって、計算されたTd値がTd’値と同じ値(2秒未満)になり、Td閾値(3秒)より小さいため、圧縮機本体の運転台数の増加が必要と判定し、累積運転時間最短の圧縮機本体を起動する。そして、タンク圧力が下がり続けて、Td’値とTd値は200msごとに更新される。圧縮機本体の起動判定用のTd閾値(3秒)が圧縮装置の起動判定用のTd’閾値(2秒)より大きいため、圧縮機本体の運転台数を増加の判定は常に圧縮装置の運転台数を増加の判定より先に行うことになる。よって、圧縮装置の運転台数が増加される前に、圧縮装置2A内部の圧縮機本体の運転台数が先に増加される。
【0039】
圧縮装置2A内部の圧縮機本体(31A〜33A)が全台運転の状態でも圧力P’(t)が下がり続けると、起動できる圧縮機本体が存在しないため、Td値が再度Td閾値(3秒)を下回る。その状況を続けると、Td’値がTd’閾値(2秒)を下回り、台数制御装置は圧縮装置の運転台数の増加を判定し、累積運転時間最短の圧縮装置2Bを起動し、容量制御で運転させ、圧縮装置2Aを吐き出し空気量一定となる固定制御で運転させる。起動した圧縮装置2Bは、タンク5Bの圧力値P(t)を用い、Td値を計算する。この時、Td値が2秒未満でTd閾値(3秒)より小さいので、圧縮装置2Bは累積運転時間最短の圧縮機本体を起動する。
【0040】
もし圧力P(t)が上昇し、計算されたTuがTu閾値(10秒)より小さくなった場合、圧縮装置2Bは圧縮機本体の運転台数を減少判定し、運転中の圧縮機本体を停止させる。ここで、圧縮機本体停止しても圧力が上昇し続ける場合、再度Tu閾値(10秒)より小さくなっても、圧縮装置2B内部の圧縮機本体が全停止の状態なので、何もしない。その後、Tu’値はTu’閾値(5秒)より小さくなった時に、台数制御装置が圧縮装置の運転台数を減少すると判定し、容量制御で運転中の圧縮装置2Bを停止し、圧縮装置2Aを固定制御から容量制御に切り替える。圧縮装置2Aが容量制御に切替えたら、Tu値を計算する。Tu値はTu’値と同じ値(5秒未満)であり、Tu閾値(10秒)より小さいため、圧縮装置2Aは圧縮機本体の運転台数を減少すると判定し、累積運転時間の圧縮機本体を停止する。その後、もし圧力が上昇しつづけると、再度Tu閾値(10秒)に引っ掛かり、もう1台の圧縮機本体を停止する。その後、Tu,Tu’値とTd,Td’値により、圧縮機本体または圧縮装置の運転台数の増減が繰り返す。
【0041】
ここから、図5を参照しながら、同じ空気使用量(全体吐出し量の55%)の状態で、従来技術を使用の場合と本実施例の場合の運転パターン及び消費電力を比較する。従来技術では台数制御機能を有する圧縮装置を台数制御装置でさらに台数制御する場合、お互いに運転台数の増減を干渉してしまう問題があるため、ここで、従来技術を利用する場合、台数制御装置の圧縮装置の台数制御機能のみを行い、圧縮装置における圧縮機本体の台数制御を無効にすることを前提とする。
【0042】
まず、従来技術の場合と本実施例の場合にそれぞれの上限圧力P’maxとPmaxを設定する必要がある。圧縮機本体を駆動するモータ(21A〜23A)、(21B〜23B)、(21C〜23C)、(21D〜23D)は停止時の逆誘起電圧及び起動時の突入電流が発生するため、頻繁にモータの運転をON/OFFすると、モータや関連配線が焼けてしまう恐れがある。そのため、モータを保護するために、停止→起動→停止の時間は最低サイクル制限時間TC以上になる必要がある。ということで、一般的に上限圧力と下限圧力の差圧をできるだけ広く設定し、差圧の広さで最低サイクル制御時間Tc以上になるようにする。従来技術の場合、圧縮装置1台ごとに運転/停止し、すなわち、圧縮機本体3台ごとに運転/停止するため、運転ON/OFF頻度を抑え、最低サイクル制御時間Tc以上なるためには差圧を大きく設ける必要がある。一方、本実施例では、圧縮機本体1台ずつ運転/停止が可能のため、従来技術と比べ、圧力変動が少ない状態で長時間運転できるため、上限圧力と下限圧力の差圧を小さくしても問題ない。
【0043】
そして、圧縮機本体を駆動するモータの停止→起動→停止のサイクルが同じになる条件で、本実施例と従来技術の運転パターンを比較した結果は図5に示す。本実施例の空気圧縮システムの運転パターンは実線で表示する。従来技術を利用し、空気圧縮システムの運転パターンは点線で表示する。圧力の変化により、圧縮装置及び圧縮機本体の運転台数の増減はタイミングチャートで示し、消費電力の比較は図5の最下部に示す。
【0044】
まず、空気使用量が全体吐出し量の55%の場合、本実施例では、圧縮装置2Aと2Bを固定制御で運転させ、圧縮装置2Cを容量制御で運転させることによって、圧縮機本体の運転台数を細かく制御し、吐出し空気量を微調整することが可能になった。よって、圧縮機本体は6台〜7台で運転する。一方、従来技術では、圧縮装置が1台運転/停止するため、圧縮機本体の運転台数が6台〜9台変動し、本実施例と比べ、2台分の圧縮機本体を駆動する電力が無駄に消費してしまう。
【0045】
そして、従来技術では運転サイクルは最小サイクル時間Tc以上になるように、高い圧力領域で運転してしまい、さらに電力が無駄に消費する問題がある。本実施例では、圧縮機本体台数1台ずつ細かく制御可能のため、最小サイクル時間を保持した上で低い圧力範囲内で運転することができ、省エネ効果が高い。
【0046】
また、本実施例では、12台の圧縮機本体を4台の圧縮装置に集約することができ、12台の圧縮茎本体を1台の圧縮装置で制御する場合よりも配線配管作業の工数と設置スペースを低減できる。
【0047】
また、12台の圧縮茎本体を1台の圧縮装置で制御した場合、全台数の圧縮機本体を停止または運転した状態から1台ずつ順次に圧縮機本体を停止する必要があるため、空気使用量が急激に変化した場合に対応できなかった。一方、本実施例では圧縮機本体台数を1台ずつ細かく制御できるのと同時に空気使用量が急激に変化しても、圧縮装置が圧縮機本体の台数を増減すると同時に、台数制御装置が圧縮装置の運転台数も増減するので、空気使用量の急激な変化にも迅速に対応できる。
【0048】
また、本実施例では、新しく起動した圧縮装置を容量制御に切り替えることにより、空気使用量の変化に応じ、圧縮システムは連続的に圧縮機本体の増減が可能になる。
【0049】
また、本実施例では、圧縮装置の起動は累積運転時間の短い順で行われ、停止は累積運転時間の長い順で行われる。一方、圧縮機本体の起動と停止も、圧縮装置と同じ、累積運転時間により起動と停止順が決まる。そのため、各圧縮装置の累積運転時間が平均化され、かつ圧縮装置内部の圧縮機本体の累積運転時間も平均化されるので、負荷の偏りで先に故障する圧縮機本体は存在しないため、機械のメンテナンスが容易となる。
【0050】
また、本実施例では、圧縮装置が異常発生した際に、信号線17A〜17Dを通じて、台数制御装置1に知らせることができる。台数制御装置1はそれらの信号を受け、異常発生した圧縮装置を台数制御から外し、残りの圧縮装置で台数制御を行うことができる。
【0051】
また、本実施例では、圧縮装置2A〜2Dの運転台数を増加する判定した時に、停止中の圧縮装置から累積運転時間最短のものを最優先起動させる。しかし、空気使用量の変動がなく、圧縮装置の運転状態が継続した場合、運転中の圧縮装置の累積時間が停止中の圧縮装置累積時間を超えてしまう可能性があり、各圧縮装置の運転時間を平均化する目的を反してしまう。そのため、本実施例では、圧縮装置が一定時間(例えば30分)連続運転したら、停止中の圧縮装置の中で該圧縮装置より累積運転時間短いものを起動させ、該圧縮装置を停止させるという運転交代も行う。そのため、各圧縮装置の累積運転時間が連続運転状態においても平均化され、かつ最大差異は30分以内に収まる。これにより、さらに機械のメンテナンスが容易になる。
【実施例2】
【0052】
図6ないし図10を用いて本発明の実施例2を説明する。実施例1と同一の構成については、同一の符号を付し、その説明を省略する。本実施例の特徴は、複数台の圧縮機本体を有し、圧縮空気の使用量に応じて運転台数を変更することにより、吐出し空気量(出力)を変更する容量制御運転が可能な圧縮装置と圧縮空気の使用量によらず運転時の運転台数を変更せず、運転時の空気吐出し量(出力)が一定となる固定制御運転のみを行う圧縮装置により構成される点である。
【0053】
本実施例の空気圧縮システムの構成を図6に示す。実施例1と同様に、台数制御装置1、圧縮装置2A〜2Dと空気タンク12により構成されている。台数制御装置1は制御基板16とタンク12の圧力を測定する圧力センサ15により構成され、各圧縮装置(2A〜2D)に対し、運転・停止、制御方式を切替する機能を有する。組合せ例として、圧縮装置2A〜2Bは実施例1の空気圧縮システムと同様に、複数台の圧縮機本体により構成され、空気使用量に応じ、圧縮機本体の運転台数を増減する容量制御運転と運転時の空気吐出し量(出力)が一定となる固定制御運転とを行う。圧縮装置2Cと2Dは1台の圧縮機本体のみ構成され、空気吐出し量(出力)が一定となる固定制御運転のみを行う。なお、上記の圧縮装置2A〜2Dの中で容量制御可能な機種を予め台数制御装置1に認識させる必要がある。認識方法として、予め機種を設定し、台数制御装置1内部の制御回路16に機種情報を保存させる方法がある。もしくは、台数制御装置と圧縮装置を接続したときに、自動的に機種を認識させる方法もある
図7を参照し、台数制御装置が圧縮装置の運転台数を増減する制御方法について説明する。図7に示す台数制御処理は、実施例1と同様に、予め決められたサンプリング周期Ts(例えば200ms)毎に行うものである。
【0054】
ステップ51では、実施例1と同様に、圧力センサ15を用い、一定サンプリング周期Tsで現在の空気タンク12内の圧力P’(t)を計測する。
【0055】
次に、ステップ52では、現在タンク圧力値P’(t)が予め設定された空気タンク12の下限圧力値Pminより小さいか否かを判定する、もし「Yes」と判定した場合、次のステップ53で圧縮装置(2A〜2D)を全台起動させる。 「No」と判定した場合、次のステップ54で現在圧力値P’(t)は予め設定された空気タンク12の上限圧力値Pmax以上か否かを判定する。もし「Yes」と判定した場合、次のステップ55で圧縮装置(2A〜2D)を全台停止させる。「No」と判定した場合、ステップ56で現在測定した圧力P’(t)と前回測定した圧力値P’(t-1)を用い、前述した数式1でタンク圧力変化率K’を計算する。
【0056】
ステップ57で上記計算されたK’はマイナスの値か否かを判定する。もし「Yes」と判定した場合、圧力が下降中ということで、ステップ58に移る。「No」と判定した場合、圧力が上昇中ということで、ステップ65に移る。ステップ58では、前述した数式2を用いて、使用者が設定したタンク12の最低圧力Pmin(下限圧力)と現在の圧力P’(t)との差を圧力変化率K’で割ることによって、現在の状態からあと何秒後に下限圧力Pminまで達すかを計算する。計算した値をTd’値とする
次のステップ59でTd’値が予め決めたTd’閾値(例えば2秒)未満か否かを判定する。もし「No」と判定した場合、ステップ73に移り、リターンする。もし「Yes」と判定した場合、ステップ60で圧縮装置(2A〜2D)の運転台数を1台増加させる。次のステップ61では、容量制御運転中の圧縮装置があるか否かを判定する。もし「Yes」と判定した場合、次のステップ62で累積運転時間最短かつ停止中の圧縮装置を起動させ、空気吐出し量が一定となる固定制御で運転させる。もし、ステップ61で「No」と判定した場合、すなわち、容量制御運転中の圧縮装置が無ければ(全ての圧縮装置が停止した状態であれば)、ステップ63で運転時間最短の容量制御運転が可能な圧縮装置を優先的に起動し、そして、次のステップ64で起動した圧縮装置を容量制御に切り替える。最後、ステップ73に移り、リターンする。
【0057】
もしステップ57では「No」と判定した場合、ステップ65に移り、K’はプラスの値か否か判定する。もし「No」と判定した場合、すなわち、タンク12の圧力は変化なしということなので、そのままステップ73に移り、リターンする。もしステップ65で「Yes」と判定した場合、タンク12の圧力が上昇中ということなので、ステップ66であと何秒間この状態が継続したら、予め設定された上限圧力Pmaxに達すかのTu’値を前述した数式3で計算する。計算したTu’値をステップ67で予め決められたTu’閾値(例えば5秒)と比較する。もし「No」と判定した場合、ステップ73に移り、リターンする。もし「Yes」と判定した場合、次のステップ68で圧縮装置(2A〜2D)の運転台数を1台減少させる。次のステップ69では固定制御で運転中の圧縮装置があるかどうかを判定する。もし「Yes」と判定した場合、ステップ70では、固定制御で運転中の圧縮装置の中で運転時間最長のものを停止させ、ステップ73に移り、リターンする。ステップ71では、容量制御で運転中の圧縮装置があるかどうかを判定する。もしステップ71で「No」と判定した場合、容量制御の圧縮装置が全部停止したということなので、何もしないでそのままステップ73に移りリターンする。もしステップ71で「Yes」と判定した場合、すなわち、容量制御で運転中の圧縮機のみ残っているため、ステップ72で該当圧縮装置を停止させる。最後、ステップ73に移り、リターンする。即ち、固定制御で運転中の圧縮装置を容量制御で運転中の圧縮装置よりも先に停止させる。
【0058】
圧縮装置が圧力の変化により内部の圧縮機本体の運転台数を増減する処理を図8に示す。この処理も一定サンプリング時間周期Ts(例えば200ms)で行う。そして、図8の処理は前述した図3の処理は同様な処理なので、ここでは詳細説明を省略する。
【0059】
ここから、図9を参照しながら、圧縮機本体の増減や圧縮装置の増減動作タイミングについて説明する。例として、台数制御装置が運転中、圧縮装置(2A〜2D)が1台も運転していない状態かつ圧縮装置の累積運転時間の関係は2A<2B<2C<2Dで、タンク12の圧力が下降している状態を前提とし、空気圧縮システム全体の動きを説明する。
【0060】
まず、圧力が下降中のため、台数制御装置は空気タンク12の圧力P’(t)を用い、Td’値を計算する。Td’値が2秒未満になった時に、台数制御装置が累積運転時間最短の容量制御可能な圧縮装置2Aを起動し、容量制御で運転させる。
【0061】
起動した圧縮装置2Aはタンク5Aの圧力値P(t)を用い、Td値を計算する。圧縮装置2Aが起動した時に、計算されたTd値はTd’値と同じ値(2秒未満)であり、Td閾値(3秒)より小さいため、圧縮装置2Aは圧縮機本体の運転台数の増加が必要と判定し、累積運転時間最短の圧縮機本体を起動する。そして、タンク圧力が下がり続けて、Td’値とTd値は200msごとに更新される。
【0062】
圧縮機本体の起動判定用のTd閾値(3秒)が圧縮装置の起動判定用のTd’閾値(2秒)より大きいため、圧縮機本体の運転台数を増加の判定は常に圧縮装置の運転台数を増加の判定より先に行うことになる。よって、圧縮装置の運転台数が増加される前に、圧縮装置2A内部の圧縮機本体の運転台数が先に増加される。
【0063】
圧縮装置2A内部の圧縮機本体(31A〜33A)が全台運転の状態でも圧力P’(t)が下がり続けると、起動できる圧縮機本体が存在しないため、Td値が再度Td閾値(3秒)を下回る。その状況を続けると、Td’値がTd’閾値(2秒)を下回り、台数制御装置は圧縮装置の運転台数の増加を判定し、停止中の累積運転時間最短の圧縮装置2Bを起動し、固定制御で運転させ、圧縮装置2Aは容量制御で運転のままにする。
【0064】
もし、圧力P’(t)がさらに下降し続けると、圧縮装置2C、2Dも順次に起動し、固定制御で運転する。もし、圧縮装置2Bが起動して、圧力P’(t)が上昇したら、圧縮装置2Aはタンク5Aの圧力値P(t)を用い、Tu値を計算する。Tu値がTu閾値(10秒)より小さくなった場合、圧縮装置2Aが圧縮機本体の運転台数を減少判定するため、運転中の圧縮機本体を1台ずつ停止させる。
【0065】
ここで、圧縮機本体を1台停止しても圧力が上昇し続ける場合、圧縮装置2A内部の圧縮機本体が順次に停止する。全圧縮機本体21A〜23Aが停止しても、圧力上昇しつづけた場合、Tu’値がTu’閾値(5秒)より小さくなった時に、台数制御装置が圧縮装置の運転台数を減少すると判定し、固定制御で運転中の圧縮装置2Bを停止する。その後、空気使用量の変化が小さい時、圧縮装置2A内部の圧縮機本体の運転台数を増減することで空気吐き出し量を制御する。一方、空気使用量の変化が大きく、圧縮装置2Aの容量制御のみで対応しきれない場合、圧縮装置2B〜2D運転台数の増減により、吐き出し量を制御する。
【0066】
ここから、図10を参照しながら、空気使用量(全体吐出し量の55%)が一定の状態で、従来技術を使用の場合と本実施例の場合の運転パターン及び消費電力を比較する。従来技術では台数制御機能を有する圧縮装置を台数制御装置でさらに台数制御する場合、お互いに運転台数の増減を干渉してしまう問題があるため、ここで、従来技術を利用する場合、台数制御装置の圧縮装置の台数制御のみを行い、圧縮装置における圧縮機本体の台数制御を行わないことを前提とする。
【0067】
まず、従来技術の場合と本実施例の場合にそれぞれの上限圧力P’maxとPmaxを設定する必要がある。圧縮機本体を駆動するモータ(21A〜23A)、(21B〜23B)、20C、20Dは、実施例1で述べたように、モータを保護するために、停止→起動→停止の時間は最低サイクル制限時間Tc以上になる必要がある。従って、一般的には上限圧力と下限圧力の差圧をできるだけ広く設定し、差圧の広さで最低サイクル制御時間Tc以上になるようにする。従来技術の場合、圧縮装置1台ごとに運転/停止し、すなわち、圧縮機本体3台ごとに運転/停止するため、運転ON/OFF頻度を抑え、最低サイクル制御時間Tc以上なるためには差圧を大きく設ける必要がある。一方、本実施例では、圧縮機本体1台ずつ運転/停止が可能のため、従来技術と比べ、圧力変動が少ない状態で長時間運転できるため、上限圧力と下限圧力の差圧を小さくしても問題ない。
【0068】
そして、圧縮機本体を駆動するモータの停止→起動→停止のサイクルが同じになる条件で、本実施例と従来技術の運転パターンを比較した結果は図10に示す。本実施例の空気圧縮システムの運転パターンを実線で表示する。従来技術を利用し、空気圧縮システムの運転パターンを点線で表示する。圧力の変化により、圧縮装置及び圧縮機本体の運転台数の増減はタイミングチャートで示し、消費電力の比較は図10の最下部に示す。
【0069】
まず、空気使用量が全体吐出し量の55%の場合、本実施例では、圧縮装置2Bと2Cを固定制御で運転させ、圧縮装置2Aを容量制御で運転させることによって、圧縮機本体の運転台数を細かく制御し、吐出し空気量を微調整することが可能になった。一方、従来技術では、圧縮装置は1台丸ごとに運転/停止するため、本実施例と比べ、2台分の圧縮機本体を駆動する電力が無駄に消費してしまう。
【0070】
そして、従来技術では運転サイクルは最小サイクル時間Tc以上になるように、高い圧力領域で運転してしまい、電力が無駄に消費する問題がある。本実施例では、圧縮機本体を1台ずつ細かく制御可能のため、最小サイクル時間を保持した上で低い圧力範囲内で運転することができる。従来技術と比べ、省エネ効果が高い。
【0071】
また、本実施例では、実施例1と比較して、1台以上の台数制御可能な圧縮装置があれば、固定制御のみの圧縮装置と組み合わせて、細かい容量制御が可能になり、省エネ効果を得られると同時に、空気圧縮システムの導入コストも削減できる。
【0072】
また、本実施例によれば、容量制御可能な圧縮装置を優先的に起動させ、固定制御のみ可能な圧縮装置を優先的に停止させるため、細かい容量制御が可能となる。
【0073】
これまで説明してきた実施例は、何れも本発明を実施するにあたっての具体化の一例を示したものに過ぎず、これらによって本発明の技術的範囲が限定的に解釈されない。すなわち、本発明はその技術思想、又はその主要な特徴から逸脱することなく、様々な形で実施することができる。
【符号の説明】
【0074】
1 台数制御装置
2 圧縮装置
4、16 制御回路
5、12 空気タンク
6、15 圧力センサ
20、21、22、23 モータ
30、31、32、33 圧縮機本体

図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10