(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記弁流路の内面は、前記後面の外周縁に沿った外側内面と、前記外側内面に対して前記弁本体部の中心側に対称的に形成された内側内面とにより形成され、前記切断線は、前記内側内面の形状に沿って形成されていることを特徴とする請求項3に記載の弁体を備えた2液混合吐出器。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明にかかる一実施形態の2液混合吐出器について説明する。
図1は、分解した2液混合吐出器10を斜め上方から示す分解斜視図である。2液混合吐出器10は、
図1に示すように、液剤を収納したカートリッジ12と、カートリッジ12から液剤を押し出す押出器14とを備えている。以下、2液混合吐出器10について、基本的に、カートリッジ12のノズル16の側を前方とし、その逆を後方とし、又、押出器14に対して握り部52が取り付けられている側を2液混合吐出器10の下方とし、その逆を上方として説明する。
【0012】
押出器14は、
図1に示すように、カートリッジ12を装填する装填部50と、握り部52と、操作レバー54と、押込部材56とを備えている。装填部50は、カートリッジ12が収容できる空間を有している。装填部50の前方には、カートリッジ12のノズル16が突出する切欠き部58が設けられている。
【0013】
装填部50の下部には、握り部52が固定されている。握り部52の前方には、操作レバー54が揺動自在に取り付けられている。操作レバー54は、押込部材56の駆動機構に連結している。
【0014】
押込部材56は、左右2か所に押し板57、59を有している。作業者が操作レバー54を作動させると、駆動機構により押込部材56が駆動し、押し板57、59が所定量ずつ前進する。押し板57、59は、操作レバー54の操作により装填部50内で同一に前後進し、後述する第1容器24及び第2容器25の底板28、29を前方に押圧する。
図2に、カートリッジ12を分解して示す分解図を示す。
【0015】
カートリッジ12は、
図2に示すように、ノズル16と、弁体18と、キャップ20と、容器本体22とを備えている。容器本体22は、第1容器24と第2容器25とから構成されている。第1容器24と第2容器25は、請求項でいう収納容器である。
【0016】
第1容器24と第2容器25は、共に円筒形の容器で、同一の長さを有している。径は、第1容器24の方が、第2容器25より大きい。第1容器24は、内部に底板28を長手方向に沿って移動自在に備えている。第2容器25は、内部に底板29を長手方向に沿って移動自在に備えている。第1容器24と第2容器25は、それぞれ内部に液剤を収納している。
【0017】
尚、第1容器24と第2容器25は、円筒形でなくともよく、又、同一の径でもよい。更に、第1容器24内の液剤と第2容器25内の液剤とを、適切な比率で混合できるようにするために、それぞれの径を変更してもよい。但し、これは、液剤の本来決められている混合比に帰属することとなる。
【0018】
第1容器24は、先端に第1吐出部30を備えている。第2容器25は、先端に第2吐出部32を備えている。第1吐出部30と第2吐出部32は、それぞれ半円筒状であり、第1吐出部30と第2吐出部32とにより、円筒形の取付部34が容器本体22の先端に形成されている。
【0019】
図8に示すように、第1吐出部30の内部には、第1容器24の内部に連通する第1吐出路36が形成されている。第2吐出部32の内部には、第2容器25の内部に連通する第2吐出路38が形成されている(いずれも
図8参照)。第1吐出路36と第2吐出路38はともに、横断面が、2つの円弧を組み合わせたような凸レンズ形状を有し、取付部34の前端面(
図2の上方の面)に開口している。尚、第1吐出路36等の開口形状は、凸レンズ型に限るものではない。
【0020】
取付部34の外周面には、雄ねじ部35が形成されている。雄ねじ部35は、キャップ20の雌ねじ部に対応している。取付部34には、後述する弁体18を挟んで、ノズル16が取り付けられる。
【0021】
ノズル16は、環状の組付部40と、組付部40に連続した傾斜部42と、傾斜部42に連続したノズル部44と、ノズル部44の先方に設けられた先細部48とを備えている。更に、ノズル部44の内部には、混合羽根46(
図7参照)が挿入されている。
【0022】
組付部40は、円筒形で、
図7に示すように、内径が、雄ねじ部35の先方のねじが形成されていない面の径に等しく形成されている。傾斜部42は、組付部40から連続して形成されている。傾斜部42は、
図7に示すように、ノズル16の中心に向けて所定の角度aで、円錐台状に形成されている。
【0023】
ノズル部44は、傾斜部42に連続して設けられている。ノズル部44は、円筒状で、内部に混合羽根46が設けられている。混合羽根46は、ノズル部44の長さとほぼ同じ長さを有している。混合羽根46は、螺旋状に捩じれた羽根が、羽根の捩じり方向を左右交代しつつ連続して形成されている。
【0024】
先細部48は、ノズル部44の先方に設けられている。先細部48は、段階的に開口面積が狭められており、先細部48を任意の位置で切断することで、ノズル部44を所望の開口面積で切断することができる。
【0025】
キャップ20は、円筒状で、内面に取付部34の雄ねじ部35に対応した雌ねじ部37を備えている。キャップ20は、先端の内径が狭めてあり、キャップ20を取付部34の雄ねじ部35に螺合させると、キャップ20の先端がノズル16の傾斜部42に係合し、ノズル16とともに弁体18が取付部34に固定される。
【0026】
次に、本発明の特徴部分である、弁体18について説明する。弁体18を、
図3から
図6に示す。
【0027】
図3は、弁体18の正面を示す正面図である。
図4は、弁体18を、弁体18の中心を通る平面で破断した断面図である。
図5は、弁体18の前
面を示す平面図である。
図6は、弁体18の後
面を示す底面図である。
【0028】
弁体18は、
図3に示すように、円錐台状の弁本体部60と弁本体部60に設けられた一対の弁流入部62とを備えて形成されている。弁体18は、合成樹脂材から一体に形成され、全体で適度な弾性を有している。
【0029】
弁本体部60は、
図3において上方に位置する前面6
4と、前面64に対向した後面6
6と、側面68とを備えている。弁本体部60の前面64は、液剤の吐出方向であり、円形で、平坦に形成されている。前面64には、弁片70が設けられている。
【0030】
側面68は、前面64の周囲に連続して形成されている。側面68は、ノズル16の傾斜部42の傾斜角度aと等しい傾斜を有している。弁片70は、側面68にも一部かかって設けられている。後面66は、平面状で、前面64と平行に形成されている。
前面64と後面66は、側面68を介して連結されている。後面66には、弁流入部62が設けられている。
【0031】
弁流入部62は、
図3に示すように、2本平行に後面66に設けられている。弁流入部62は、
図6に示すように、2つの円弧を組み合せたような凸レンズ状に形成してある。これは、前述した取付部34の第1吐出路36等と同じ形状である。弁流入部62は、第1吐出路36や第2吐出路38にほとんど隙間を生じさせることなく挿入される。弁流入部62の内部には、弁流路72が形成されている。
【0032】
弁流路72は、弁流入部62の後方端部に開口している
(請求項でいう弁流路の一端は、「弁流入部62の後方端部」側に相当)。弁流路72は、弁流入部62の後方端部から弁本体部60の内部に、前面64から所定の厚みを残した部分
(請求項でいう弁流路の他端は、「所定の厚みを残した部分」側に相当)まで延びている。前面64から残された所定の厚み部分は、弁片70である。
【0033】
弁片70は、前面64と側面68の双方にかけて設けられている。弁片70は、
図5に示すように、前面64の中心Cを挟んで対向した位置に設けられている。弁片70は、
図4に示すように、所定の厚みを有し、後方に凹む球状に湾曲している。
図4は、弁体18の中心と弁片70の中央とを通る平面で弁体18を破断して示す図である。
【0034】
図5に、弁体18の前面64を示す。
図5に示すように、前面64には、弁片70により、前面64の中心側に凸状に湾曲した第1縁部80が形成されている。第1縁部80は、前面64に対称位置に設けられている。
【0035】
側面68には、弁片70により、第2縁部82が形成されている。第2縁部82は、ほぼ円形形状を有している。第1縁部80と第2縁部82で、弁片70が区画形成されている。
【0036】
更に、第1縁部80の近傍には、開口線74が形成されている。開口線74は、前面64を前後に貫通した切断線である。開口線74は、弁流路72の内面
(請求項における内側内面に相当)の延長線上に形成されている。すなわち、開口線74は、第1縁部80より、弁片70の厚み分前面64の中心側に入った位置に、弁流路72
の内面に沿って円弧状に形成されている。
【0037】
開口線74は、弁片70が球状に凹に湾曲しているので、素材の弾性力により常に閉じられる方向に付勢されている。開口線74が開くと、弁流路72の内部は前面64の前方側と連通する。開口線74は、例えば、弁流路72の側から、弁流路72の内面に沿った形状の刃物を差し入れて形成する。刃物を差し入れて形状を形成することから、開口線74の切り口は、隙間なく形成でき、弁片70の密閉性を高めることができる。
【0038】
図7に、カートリッジ12の部分断面を示す。
図7は、カートリッジ12の取付部34の周辺を、弁片70が現れる方向から破断した状態を示している。弁本体部60の側面68は、ノズル16の傾斜部42の内面と傾斜が一致し、互いに密着している。
【0039】
図8は、カートリッジ12の取付部34の周辺を、弁片70の中心を通る平面で破断した状態を示す図である。
図8に示すように、弁片70と傾斜部42との間、及び弁本体部60の前面64とノズル16の傾斜部42の内面との間には、空隙が形成されている。そのため、接着剤を吐出すると、弁片70が膨らみ、開口線74が開き、容易に接着剤を吐出させることが可能になるのである。
【0040】
次に、2液混合吐出器10の作用、効果について説明する。容器本体22の第1容器24には、エポキシ樹脂などの2液混合接着剤の主剤が収納されている。第2容器25には、エポキシ樹脂等を硬化させる硬化剤が収納されている。
【0041】
取付部34に組み付けられている蓋を外し、取付部34に弁体18を嵌める。弁体18の弁流入部62を、第1吐出部30と第2吐出部32に挿入する。弁体18を取付部34に嵌めた後に、その上にノズル16を取り付け、ノズル16にキャップ20を通して、キャップ20を取付部34の雄ねじ部35にねじ込む。これにより、ノズル16が容器本体22に固定され、カートリッジ12が形成される。
【0042】
形成されたカートリッジ12を、押出器14の装填部50に装填する。操作レバー54を操作すると、押込部材56が前進し、押し板57等が容器本体22の底板28等に当接する。押込部材56を更に前進させると、底板28、29が前進し、液剤が容器本体22から所定量ずつ押し出される。操作レバー54の操作により容器本体22から押し出された主剤と硬化剤は、第1容器24と第2容器25の第1吐出路36と第2吐出路38を通って弁体18の開口線74をそれぞれ開き、弁体18から吐出される。
【0043】
図9に、主剤や硬化剤からの圧力で弁片70が外方に移動し、開口線74が開かれた状態を示す。主剤と硬化剤は、ノズル16の内部に移動し、混合羽根46で撹拌され、一体に混合されて先細部48から吐出される。
【0044】
そして、操作レバー54の操作を停止すると、押し板は底板28、29の押圧を停止し、主剤と硬化剤の吐出が停止される。又、弁片70に掛かっていた圧力が解消される。すると、弁片70は、
図8に示すように、弁片70自身の弾性力で通常の形状に戻り、開口線74が閉鎖される。弁片70は、主剤と硬化剤等の液剤の吐出方向に対して逆向きに凹の湾曲した球状面を有しているので、より強い力で開口線74が閉鎖される。
【0045】
このように、2液混合吐出器10によれば、第1容器24と第2容器25から主剤と硬化剤とを吐出させ、それらを混合羽根46により混合させてノズル16より確実に吐出させることができる。そして、操作レバー54の操作を停止すると、弁体18が閉鎖されるので、主剤や硬化剤が容器本体22に戻ることがない。したがって、ノズル16内から第1容器24や第2容器25内に液剤の逆流が発生せず、それらによる不具合が発生しない。
【0046】
尚、本発明は、上記例に限るものではなく、適宜変更してもよい。