特許第6200941号(P6200941)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ ルーサイト インターナショナル スペシャリティ ポリマーズ アンド レジンズ リミテッドの特許一覧

<>
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6200941
(24)【登録日】2017年9月1日
(45)【発行日】2017年9月20日
(54)【発明の名称】硬化性二液型アクリル組成物
(51)【国際特許分類】
   C08F 2/44 20060101AFI20170911BHJP
   C04B 26/06 20060101ALI20170911BHJP
   C08F 265/06 20060101ALI20170911BHJP
【FI】
   C08F2/44 C
   C04B26/06
   C08F265/06
【請求項の数】22
【全頁数】56
(21)【出願番号】特願2015-502443(P2015-502443)
(86)(22)【出願日】2013年3月21日
(65)【公表番号】特表2015-517004(P2015-517004A)
(43)【公表日】2015年6月18日
(86)【国際出願番号】GB2013050744
(87)【国際公開番号】WO2013144590
(87)【国際公開日】20131003
【審査請求日】2016年3月16日
(31)【優先権主張番号】1205677.6
(32)【優先日】2012年3月30日
(33)【優先権主張国】GB
(73)【特許権者】
【識別番号】516033112
【氏名又は名称】ルーサイト インターナショナル スペシャリティ ポリマーズ アンド レジンズ リミテッド
【氏名又は名称原語表記】LUCITE INTERNATIONAL SPECIALITY POLYMERS AND RESINS LIMITED
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 博宣
(74)【代理人】
【識別番号】100142907
【弁理士】
【氏名又は名称】本田 淳
(72)【発明者】
【氏名】チザム、マイケル スティーブン
(72)【発明者】
【氏名】マクドナルド、デイビッド
(72)【発明者】
【氏名】アベド−アリ、セラ サーハブ
(72)【発明者】
【氏名】ロビンソン、イアン
【審査官】 渡辺 陽子
(56)【参考文献】
【文献】 特表2011−530641(JP,A)
【文献】 特表2010−522591(JP,A)
【文献】 特開昭63−057614(JP,A)
【文献】 特開2004−201869(JP,A)
【文献】 国際公開第2006/123589(WO,A1)
【文献】 特開昭61−064711(JP,A)
【文献】 特開2001−276206(JP,A)
【文献】 国際公開第2010/098305(WO,A1)
【文献】 特開平06−057157(JP,A)
【文献】 特開平07−286018(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61L、A61K35,36
C08F2
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
混合すると互いに反応して硬化するセメントを形成するための、貯蔵安定性を有した第一液、及び貯蔵安定性を有した第二液を含んでなる、硬化性二液型アクリル組成物であって、アクリルモノマー成分と前記モノマー成分を重合させるために有効な量の開始剤成分とをさらに含み、前記モノマー成分が貯蔵安定性であるように前記モノマー成分及び前記開始剤成分が前記二液型組成物の別々の液に配置されている、硬化性二液型アクリル組成物において、前記第一液が乳化重合されたアクリルポリマー粒子を液体担体中に含むことを特徴とする、硬化性二液型アクリル組成物。
【請求項2】
混合すると互いに反応して硬化するセメントを形成する、貯蔵安定性を有した第一液、及び貯蔵安定性を有した第二液を含んでなる硬化性二液型アクリル組成物であって、アクリルモノマー成分と前記モノマー成分を重合させるために有効な量の開始剤成分とをさらに含む、硬化性二液型アクリル組成物において、前記第一液が乳化重合されたアクリルポリマー粒子を液体担体中に含むことを特徴とする、硬化性二液型アクリル組成物。
【請求項3】
液体担体中で前記乳化重合された粒子がアクリルポリマーエマルションの形態であって好適には第一液に連続層を与え、任意で乳化重合されたアクリルポリマー粒子、少なくとも1種の乳化剤、及び水からなる、請求項1又は2のいずれか一項に記載の硬化性二液型アクリル組成物。
【請求項4】
前記液体担体が水である、請求項1〜3のいずれか一項に記載の硬化性二液型アクリル組成物。
【請求項5】
前記二液型アクリル組成物が、少なくとも1つのさらなる種類のアクリルポリマー粒子も含んでなり、好適には少なくとも1つのさらなる種類のアクリルポリマー粒子がポリマービーズである、請求項1〜4のいずれか一項に記載の硬化性二液型アクリル組成物。
【請求項6】
前記重合したエマルション粒子、及び存在する場合さらなる種類のポリマー粒子が、混合前の二液型アクリル組成物に存在するポリマーの少なくとも98%をなす、請求項1〜
5のいずれか一項に記載の硬化性二液型アクリル組成物。
【請求項7】
混合すると互いに反応して固体に硬化するセメントを形成する、貯蔵安定性を有した第一液及び貯蔵安定性を有した第二液を含んでなる硬化性二液型アクリル組成物の製造方法において、
(a)アクリルモノマー組成物を過剰な開始剤の存在下で乳化重合して、残存開始剤を含むアクリルポリマーエマルションを製造する工程、又は
(b)アクリルモノマー組成物を乳化重合して、アクリルポリマーエマルションを製造し、開始剤を前記エマルションに加える工程、又は
(c)アクリルモノマー組成物を乳化重合して、過剰な開始剤のないアクリルポリマーエマルションを製造する工程、
(d)任意選択的に、(a)又は(b)の前記エマルションを少なくとも1つのさらなる種類のアクリルポリマー粒子と混合し、又は(c)の前記エマルションを、前記さらなる種類のアクリルポリマーのアクリルモノマー中の溶液と混合して、アクリルモノマー及び開始剤が共に存在する状況で所定の速度で硬化するのに好適な液体アクリルポリマー第一部を製造する工程
を備える、方法。
【請求項8】
硬化性二液型アクリル組成物中のドウタイム低下剤としての、請求項1〜6のいずれか一項に定義される第一液の使用。
【請求項9】
任意選択的に少なくとも1つのさらなる種類の非乳化重合されたアクリルポリマー粒子と混合された乳化重合されたアクリルポリマー粒子を含む液体組成物において、前記液体組成物中に、反応性モノマー液体との接触時に前記液体組成物を硬化させるのに充分なレベルで重合開始剤があることを特徴とする、請求項1〜6のいずれか一項に記載の液体組成物。
【請求項10】
請求項1〜6のいずれか一項に記載の二液型アクリル組成物を混合することから製造される固体セメント組成物。
【請求項11】
請求項1〜6のいずれか一項に記載の二液型アクリル組成物から、前記第一部と第二部とを混合することによりアクリルセメントを製造する方法。
【請求項12】
少なくとも2つの筒を有するシリンジ又はコーキングガンであって、その第一の筒に請求項1〜6のいずれか一項に記載の第一液を、その第二の筒に請求項1〜6のいずれか一項に記載の第二液を含み、それに応じて請求項1〜6のいずれか一項に記載のさらなる成分もさらに含むシリンジ又はコーキングガン。
【請求項13】
ヒト又は動物の骨の治療に使用するための、請求項1〜6のいずれか一項に記載の二液型組成物。
【請求項14】
前記第一液及び第二液のブルックフィールド粘度範囲が1010,000センチポイズの範囲になり得る、請求項1〜6のいずれか一項に記載の硬化性二液型アクリル組成物。
【請求項15】
前記第一部が、請求項1〜6又は14の乳化重合されたアクリルポリマー粒子とは異なるそれぞれのz平均粒径を有する、第二又はさらなる集団の乳化重合されたアクリルポリマー粒子をさらに含む、請求項1〜6又は14のいずれか一項に記載の硬化性二液型アクリル組成物。
【請求項16】
前記乳化重合されたアクリルポリマー粒子及び/又は第二若しくはさらなる集団の乳化重合されたアクリルポリマー粒子の前記z平均粒径が、独立に、10〜2,000nmの範囲であり得る、請求項1〜6、14、又は15のいずれか一項に記載の硬化性二液型アクリル組成物。
【請求項17】
前記第一部が、2つ以上のさらなる種類のアクリルポリマー粒子集団をさらに含み、前記さらなる種類が互いに異なるそれぞれの平均粒径を有する、請求項1〜6、14、15、又は16のいずれか一項に記載の硬化性二液型アクリル組成物。
【請求項18】
前記さらなるアクリルポリマー粒子の平均粒径が10〜1,000ミクロンである、請求項5、6、14〜17のいずれか一項に記載の硬化性二液型アクリル組成物。
【請求項19】
混合すると互いに反応して硬化するセメントを形成する、貯蔵安定性第一液及び貯蔵安定性第二液を含む硬化性二液型アクリル組成物であって、アクリルモノマー成分と前記モノマー成分を重合させるのに有効な量の開始剤成分とをさらに含む組成物において、前記第一液が、液体担体中に、第一の集団の乳化重合されたアクリルポリマー粒子と前記第一の乳化重合されたアクリルポリマー粒子とは異なるz平均粒径を有する第二又はさらなる集団の乳化重合されたアクリルポリマー粒子とを含むことを特徴とする硬化性二液型アクリル組成物。
【請求項20】
混合すると互いに反応して硬化するセメントを形成する、貯蔵安定性第一液及び貯蔵安定性第二液を含む硬化性二液型アクリル組成物であって、アクリルモノマー成分と前記モノマー成分を重合させるのに有効な量の開始剤成分とをさらに含む組成物において、前記第一液が、液体担体中に、第一の集団の乳化重合されたアクリルポリマー粒子と互いに異なるそれぞれの平均粒径を有する2つ以上のさらなる種類のアクリルポリマー粒子集団とを含むことを特徴とする硬化性二液型アクリル組成物。
【請求項21】
請求項4〜6,14〜18のいずれか一項に記載の二液型アクリル組成物を混合して得られた固体セメント組成物であって、前記セメントは多孔性である、固体セメント組成物。
【請求項22】
前記固体セメント組成物は骨セメントであり、多孔性(大きさ及び構造)は周囲の骨及び組織への抗生物質及び他の医薬の制御放出を与える、請求項21に記載の固体セメント組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポリマー組成物に関する。より詳細には、二液型アクリル組成物であって、二液を混合すると反応してセメントを形成し固体に硬化する二液型アクリル組成物、二液型組成物を収容する二筒式シリンジ(twin barreled syringe)又はコーキングガン、及び二液型組成物を製造する方法に関するが、これらに限定されない。
【背景技術】
【0002】
アクリルポリマーとモノマーを混合して形成される硬化性組成物は、広範囲の用途に有用である。特に有用なのは、歯科、医療、接着、及び建築用途においてであり、そのような材料は40年以上にわたり使用されてきた。
【0003】
歯科用途には、義歯床、義歯床用プレート、義歯裏装材、義歯修理、個人トレー、歯冠及び架工義歯用の被覆、義歯、天然歯の被覆及び修復、並びに歯修復充填材用の使用がある。
【0004】
医療用途には、骨セメントとしてのそれらの使用がある。骨セメントは、一般に、骨空洞の充填に、特に、補装具用セメント、頭蓋用セメント、椎体形成術及び椎骨形成術における脊椎用セメントとして、体外で硬化してその後体内に導入できる付形品の製造に有用である。
【0005】
接着及び建築用途には、目地仕上げ、接着、空隙充填、密封、積層におけるそれらの使用、及び多孔性材料の形成におけるそれらの使用などの多くの用途がある。
硬化性アクリル組成物は、一般的に固体成分及び液体成分から構成されている。固体成分は、ポリマー粒子から形成されたパウダー並びに、必要な場合、重合開始剤及び触媒、充填剤、顔料、及び染料などのさらなる添加剤を含む。液体成分は、液体のモノマー又は複数のモノマー、並びに加速剤及び安定剤などのさらなる添加剤を含む。使用の際には、固体成分と液体成分は混合されて、液体又は半固体ペーストが形成され、重合開始剤及び加速剤の作用の下に、粘度が増加し、硬化して固体になる。
【0006】
典型的に使用される固体成分は、ポリ(メチルメタクリラート)(PMMA)の小さい球状ビーズ(通常、直径が約20〜150ミクロン)と、ジベンゾイルペルオキシド(BPO)などの少量の重合開始剤からなり、重合開始剤は通常PMMAビーズ中にカプセル化されているが、別の成分として加えることもできる。液体成分は、通常、モノマー、典型的にはメチルメタクリラート(MMA)であり、N,N−ジメチル−p−トルイジン(第三級アミン)(DMPT)などの重合活性剤及びモノマーの自発重合を防ぐヒドロキノン(HQ)などの阻害剤も含み得る。
【0007】
固体成分と液体成分が混合される時、ポリマー粒子はモノマーにより湿らされ、溶媒和されて、溶解し始める。溶媒和されたポリマー粒子は、モノマー中にジベンゾイルペルオキシド開始剤を放出するが、それは、活性剤が存在する場合活性剤と相互作用してラジカルが発生し、それがモノマーと反応して、モノマーの室温付加重合が開始される。混合物は比較的低粘度で始まり、より硬い系に進行し、最後には完全に硬化する。
【0008】
この絶えず変化する混合物の粘度は、BS ISO 5833:2002に定義されるとおり、ドウタイム(dough time)及び硬化時間並びに到達する最大発熱温度により特徴づけられる。ドウタイムは、混合物が、優しく触る場合に手袋をつけた手に付
着しないドウ状の塊に達する混合開始後の時間の長さであると考えられる。硬化時間は、室温と最大の中間の温度に達するのにかかる時間であると考えられる。
【0009】
ドウタイム及び硬化時間並びに最大発熱温度は、硬化性組成物がどのように使用されるべきかを決定する非常に重要なパラメーターである。室温で硬化性の組成物(いわゆる「自然硬化」又は「常温硬化」系)は、典型的には4〜10分のドウタイム及び典型的には期間が10〜25分である硬化時間を有する。これらのパラメーターは、作業者がドウを所望の方法で扱うのに、例えば、義歯床製造のために歯型に押しこむ、股関節修復又は置換の間に骨の空洞に押し込む、脊髄手術の間に脊椎の空洞に注入する、又は工業的な接合操作の間に隙間若しくは空隙に押し込むなどで扱うのに利用可能な期間を効果的に定義する。作業者が利用できる操作時間を最大にする明らかな要求がある。これは、理想的には硬化時間を増加させずに達成しなければならないが、その理由は、硬化時間が、接合又は固定操作の終点を定義するからである。したがって、これにより、ドウタイムの短縮に注目が集まる。ドウタイムは、固体成分と液体成分の組み合わせが混合直後に粘度を増加させる速度により決まり、ポリマービーズ粒子のサイズ及び形状、ポリマー分子量、並びにポリマー組成などのいくつかの因子により制御される。
【0010】
特許文献1(Niesら)は、ビーズミルの使用によるPMMAビーズと顆粒の混合物の処理を記載している。次いで、得られたポリマー混合物は液体成分と共に撹拌され、約2分後にドウになる組成物が生じる。
【0011】
特許文献2(Higham and He)は、ボールミル又はジェットミルの使用による、骨セメントの液体成分との混合後に、粉砕されていないビーズと比べて短いドウタイムを示す粉砕されたPMMA又はPMMAコポリマービーズの製造を教示している。
【0012】
特許文献3(Seidelら)は、固体成分としてのPMMA及びポリ(2−ヒドロキシエチルメタクリラート)(PHEMA)並びに液体成分としてのMMA及び/又は2−ヒドロキシエチルメタクリラート(HEMA)の混合物に基づく、急速ドウ化自然硬化組成物を記載している。2分ほどのドウタイム及び少なくとも6分の作業時間が記載されている。
【0013】
特許文献4(Beyarら)は、モノマー成分とポリマー成分の混合後180秒以内に少なくとも500パスカル秒の粘度及び少なくとも5分の操作ウィンドウに達する急速ドウ化骨セメント組成物を記載している。特徴は、異なるサイズ分布のビーズの使用により得られると言われている。直径が20ミクロン未満のビーズが、モノマー液体による迅速な濡れを促進し、粘性のある状態への急速な移行に寄与すると言われている。
【0014】
骨セメントのレオロジー的性質に対するPMMAビーズサイズの影響は、Hernandez,L.;Goni,I.;Gurruchaga,M.により研究されている(非特許文献1)。著者らは、「小さいビーズの分率を増加させるにつれて…粘度増加の始まりが早く現れる。これは、最小のPMMAビーズ(<20ミクロン)の溶媒和によるもので、重合塊の粘度増加を起こしている」と述べている。また、「まとめると、異なるサイズのビーズを混合することにより最適なレオロジー的性質を持つ注入可能な骨セメントを得ることが実現可能であると言うことができる」とも述べている。
【0015】
アクリル骨セメントのレオロジー的性質がPMMAビーズ粒子サイズにより影響される様子を記載している他の論文は、非特許文献2である。著者らは、レオロジー的性質に強く影響する因子の1つが、小型PMMAビーズ(0から40ミクロンの平均直径)の相対的な量であると結論付けている。
【0016】
熱硬化性歯科用樹脂のドウ化時間(doughing time)に関する研究(非特許文献3)は、「…短いドウ化時間のコンセプトは、相当数の小さいビーズの存在に依存する」と結論付けた。小さいビーズの粒径は、D<20ミクロンであると推定される。
【0017】
上記説明から、短いドウタイムを得る最も普通に記載されている方法が、PMMAポリマー粒子を粉砕するか、硬化性組成物の固体成分に直径が20ミクロン未満のPMMAポリマー粒子を相当な分率で故意に組み込むことであることがわかる。粉砕プロセスは、一度に粉砕できるビーズの量に限度があるという欠点があり、相当量の材料が関与する場合製造時間の延長につながる。
【0018】
さらに、バッチ間の再現性、バッチの間のミルの洗浄、相当量の処理及び手作業での取扱いの間の汚染物質の導入の問題を克服する必要がある。固体成分中で20ミクロン未満の直径のPMMAポリマー粒子の相対量を制御することは簡単でない。硬化性組成物に使用されるPMMAビーズは一般的に、懸濁重合又は分散重合プロセスにより製造される。これは、液相、通常水の中に分散されたMMAモノマー液滴を重合して固体の球状ビーズを形成し、次いでそれを濾過工程により液相から分離し、洗浄して分散剤を除去し、乾燥して、次いでふるい分けすることを含む。しかし、直径20ミクロン未満の粒子は濾過及び洗浄が比較的困難であり、長く、多くの場合面倒な処理時間を含む。
【0019】
相当な比率の小さい(直径20ミクロン未満)PMMAポリマー粒子を集める代替的手段は、従来調製される懸濁重合スラリーから最小粒子サイズの分画を分離するふるい分けプロセスの利用である。しかし、収率は比較的低く、ふるい分け時間が長くなることがあり、ふるい上に残るかなり大量のより粗い粒子サイズの材料をどうするかという問題が残る。
【0020】
相当な比率の小さい(直径20ミクロン未満)PMMAポリマー粒子を生成させる他の手法は、例えば、粉砕、摩砕、破砕などにより、従来どおり製造された材料のビーズを分解する機械的方法の利用である。しかし、PMMAビーズは比較的硬く、小さい(直径20ミクロン未満)PMMAポリマー粒子の比率を著しく上げるには長い処理時間が通常必要である(典型的には、ボールミルで24時間を超える)。さらに、そのようなプロセスのバッチ間の再現性は極めて低く、所望の粒径分布を得るには、例えば、ふるい分け又は混合による、得られた生成物のさらなる処理が必要なことがある。
【0021】
このため、相当な比率の直径が20ミクロン未満の粒子を含むPMMAの商業生産は、費用がかかり、時に冗長で信頼性のない仕事である。
特許文献5は、固体ポリマー成分の一部として合体した乳化重合アクリル微粒子のネットワークの使用により短いドウタイムをいかに達成するかという問題に対する解決法を教示している。合体した乳化重合微粒子のネットワークは、多孔性又は微孔性のアクリルポリマー粒子を形成する。ポリマー粒子は、液体エマルションの乾燥により形成されて、パウダーを形成するが、エマルションポリマー微粒子を乾燥する好ましい手段は噴霧乾燥である。合体した粒子を乾燥した後、それは、硬化性二液型アクリル組成物の固体成分として使用される。
【0022】
特許文献6(Lautenschlagerら)は、2つの液体成分の混合により調製された低多孔性の骨セメント系を記載している。各液体成分は、PMMAのMMAモノマー溶液からなるが、一方の溶液は開始剤(例えば、BPO)を含み、他方の液体は活性剤(例えば、DMPT)を含む。この系は、限定された貯蔵安定性、比較的高い重合の発熱、溶液の調製に必要とされる必然的に高いレベルのMMAにより生じる収縮の増加という欠点を有する。
【0023】
特許文献7(Hasenwinkelら)は、架橋したPMMAビーズを溶液に組み入れることで、これらの欠点をある程度克服している。しかし、限定された貯蔵安定性という欠点は残っている。
【0024】
特許文献8及び特許文献9(Nies)は、2成分を含む有効成分の改善された放出のためのインプラント材料を記載している。第一の成分は、水、界面活性剤(例えば、Tween80)、及び水溶性ポリマー(例えば、カルボキシメチルスターチ)の添加により安定な非沈降性のペーストに作られた、ポリマーパウダーとBPO開始剤の混合物を含む。第二の成分は、MMAモノマーに溶解したPMMAの溶液とDMPT加速剤を含む。各成分は、ダブルチャンバーシリンジ(double chamber syringe)の別な区画に充填され、スタティックミキサーを通して押すことで混合される。高い含水量により、最終硬化製品の高い多孔性が与えられ、有効成分の改善された放出に役立つ。しかし、比較的高い多孔性(典型的には、およそ16%以上)は、機械的性質の低下、例えば、従来の骨セメントに許容されるもの未満の低下した圧縮強度という欠点を生み出す。
【0025】
さらなる従来技術文書である、非特許文献4、特許文献10、非特許文献5、及び特許文献11は、骨セメント系における水の含有を議論しているが、ダブルチャンバーシリンジによる送達及びスタティックミキサーを通して押すことによる混合の目的ではない。
【0026】
非特許文献6及び特許文献12において、従来のポリマーパウダーを、パウダー形態のゲル化剤、例えば、カルボキシメチルセルロース(CMC)と混合することを記載している。次いで、モノマーが加えられて、セメントドウが形成され、それに続いて水が加えられて、CMCによるゲル化が起こる。次いで、生じた混合物は硬化して、多孔性材料が形成される。多孔性材料の開気孔構造は、経時的な組織侵入を可能にして、インプラントを周囲の結合組織又は骨にさらに固定化させる。しかし、材料の多孔性の性質が、やはり、従来の骨セメントに比べた機械的性質の低下という欠点を作り出す。
【0027】
Bogerらは、非特許文献7において、Bisigらは特許文献13において、骨粗しょう症の骨用の注入可能な低モジュラスPMMA骨セメントを記載している。この系は、三成分、すなわち、従来の二成分骨セメントのパウダー及び液体成分に加えてヒアルロン酸の水溶液からなる。従来の骨セメントの機械的性質より著しく低い、ヒトの海綿状の骨の機械的性質に近い機械的性質を有すると主張される多孔性材料が得られる。
【0028】
第一液と第二液をシリンジ又はコーキングガンの2つの区画に接続しているスタティックミキサーを通すなどで混合する場合、液体の一方若しくは両方の粘度が高すぎる場合、又は液体の粘度が互いに著しく異なる場合に、さらなる問題が起こり得る。
【0029】
問題に対する解決法の1つは、第一液の粘度を低下させて、第二液の粘度により近づけることである。
第一液の高粘度は、第一液の液体担体(例えば、水)の量を単に増やせば低下させることができる。しかし、反応した二液型アクリル組成物中の高濃度の水は多孔性の量を増加させ、したがって骨セメントの機械的性質を低下させる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0030】
【特許文献1】米国特許第5,650,108号明細書
【特許文献2】米国特許出願公開第2007/0213425A1号明細書
【特許文献3】米国特許第4,268,639号明細書
【特許文献4】米国特許出願公開第2007/0032567A1号明細書
【特許文献5】国際公開第2010/018412号パンフレット
【特許文献6】国際公開第98/24398号パンフレット
【特許文献7】国際公開第2010/005442号パンフレット
【特許文献8】米国特許出願公開第2011/0054392号明細書
【特許文献9】欧州特許第2,139,530号明細書
【特許文献10】米国特許第4,093,576号明細書
【特許文献11】国際公開第2004/071543号パンフレット
【特許文献12】米国特許第4,093,576号明細書
【特許文献13】国際公開第2004/071543号パンフレット
【非特許文献】
【0031】
【非特許文献1】Hernandez,L.;Goni,I.;Gurruchaga,M.、“Effect of size of pmma beads on setting parameters and rheological properties of injectable bone cements”, Transactions−7th World Biomaterials Congress,Sydney,Australia,17 May 2004−21 May 2004,p 740
【非特許文献2】Lewis G. and Carroll M,J Biomed Mater Res(Appl Biomater)63:191−199,2002
【非特許文献3】McCabe,J.F.,Spence D.and Wilson H.J.,Journal of Oral Rehabilitation,1975 Volume 2,pages 199−207
【非特許文献4】De Wijn,J.Biomed.Mater.Res.Symposium,No 7,pp625−635(1976)
【非特許文献5】Boger et al.,J.Biomed.Mat.Res.Part B:Applied Biomaterials,volume 86B,part 2,pp474−482(2008)
【非特許文献6】De Wijnは、J.Biomed.Mater.Res.Symposium,No 7,pp625−635(1976)
【非特許文献7】J.Biomed.Mat.Res.Part B:Applied Biomaterials,volume 86B,part 2,pp474−482(2008)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0032】
驚くべきことに、液体担体としての水の量を増やすことなどの望ましくない方法に頼らずに、第一液の粘度を低下させる方法が発見された。
本発明の1つ以上の目的は、上記問題の1つ以上に対する解決法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0033】
本発明の第一の態様によると、混合すると互いに反応して硬化するセメントを形成する、貯蔵安定性第一液及び貯蔵安定性第二液を含む硬化性二液型アクリル組成物であって、アクリルモノマー成分とモノマー成分を重合させるのに有効な量の開始剤成分とをさらに含み、モノマー成分が貯蔵安定性であるように前記モノマー成分及び前記開始剤成分が前記二液型組成物の別々な部に配置されている組成物であって、第一液が乳化重合されたアクリルポリマー粒子を液体担体中に含むことを特徴とする硬化性二液型アクリル組成物が提供される。
【0034】
好ましくは、液体担体中の乳化重合された粒子は、アクリルポリマーエマルションの形態である。液体担体は、好ましくは水である。したがって、ポリマーエマルションは、好ましくは水性エマルションである。水担体は他の成分を含んでよい。ポリエチレングリコール、グリセロール、及びD−ソルビトールから選択される可溶化剤などのこれらの成分は、水に溶解され得る。
【0035】
アクリルポリマーエマルションは、第一液に連続相を与えることができる。アクリルポリマーエマルションは、典型的には、乳化重合されたアクリルポリマー粒子、少なくとも1種の乳化剤、及び水からなる。
【0036】
代替的な組の実施形態において、本発明は、混合すると互いに反応して硬化するセメントを形成する、貯蔵安定性第一液及び貯蔵安定性第二液を含む硬化性二液型アクリル組成物であって、アクリルモノマー成分とモノマー成分を重合させるのに有効な量の開始剤成分とをさらに含む組成物であって、第一液が乳化重合されたアクリルポリマー粒子を液体担体中に含むことを特徴とする硬化性二液型アクリル組成物に及ぶ。
【0037】
典型的には、第二液はモノマー成分を含む。この組の実施形態は、本明細書中の第一の態様又はさらなる態様の特徴のいずれも、そのような特徴が相互排他的でない限り有し得る。
利益
好都合には、組成物は、組成物の通常固体であるポリマーパウダー成分がそうではなく液体として与えられるように、懸濁している乳化重合されたアクリル粒子、典型的には微粒子のための液体担体を提供するアクリルポリマーエマルションを含む。液体エマルション第一液又は第二液は、それぞれ、独立に、組成物のさらなる成分を、その中に懸濁した状態で有してよい。
【0038】
さらに、乳化重合されたアクリル粒子をその最初のエマルション形態で調製されたとおり直接使用することにより、ダブルチャンバーシリンジ又はコーキングガンの別々な区画内にエマルション、分散液、ペースト、又は溶液などの液体として硬化性組成物の各成分を貯蔵及び送り出すことができるというさらなる利益がいくつかの実施形態において与えられる。次いで、これらの成分を、シリンジ/コーキングガンに適用されたスタティックミキサー又はヘリカルミキサーなどのシリンジ/コーキングガンに適用されたミキシングチップを通して直列に加圧することにより簡便に混合し、要求される部位に要求されるとおり直接送り出すことができ、それにより手作業による混合の不便さが克服される。それに加えて、硬化性組成物の混合は、再現性が高まり、より安全になり、信頼性が高まる。
【0039】
さらに、ダブルチャンバーシリンジ又はコーキングガンのそれぞれの区画に個々の成分を貯蔵することは、作業者の有害なモノマーへの曝露という手作業の混合で起こる危険性を避ける利点を与える。混合は、セメントを所望の部位に適用する間に直接達成される。
【0040】
さらに、いくつかの実施形態において、さらなるミキシングチップを付けることにより、ダブルチャンバーシリンジ又はコーキングガンが2回以上使用できるように、使い捨てのミキシングチップを与えることも可能である。従来のパウダーはノズルへと押し出すことができなかったので、ダブルチャンバーは今まで可能でなかった。したがって、パウダーと液体成分を配置前にシングルチャンバーシリンジ中で混合することが必要である。そのような混合物は貯蔵安定性がなく、交換用ミキシングチップヘッドにより材料の筒を後で再使用する選択は不可能であった。
【0041】
本発明のさらなる利点は、二液型組成物の成分が長い貯蔵安定性を有することである。
本発明のさらなる利点は、液体エマルションの乾燥によるパウダーの形成により形成された、合体した乳化重合された微粒子のネットワークを製造する必要なく、乳化重合されたアクリル粒子を液体エマルション中で直接使用し、短縮されたドウタイムを持つ硬化性組成物を製造できることである。したがって、これにより、著しいエネルギーコストが節約され、製造効率が高められる。
【0042】
本発明の二液型硬化性組成物は、硬化中の最大発熱温度も低く、そのため、骨セメントの場合、アクリル骨セメントの周知の問題である組織壊死が回避される。
本発明から形成された硬化性組成物は長い操作時間も示し、それにより作業者が適用の間に所望のやり方でセメントドウを操作するための、より長い期間が与えられる。
【0043】
好都合には、第一液に水が存在するため、最終的な硬化したセメント組成物は多孔性である。この多孔性により、硬化性組成物の機械的性質を、例えば、椎骨の機械的性質に合わせることができ、それにより、周囲の自然の骨よりもモジュラスが高い人工材料の埋め込みに関連する周知の問題が回避される。しかし、多孔性のレベルを調整し、機械的性質を変えるように配合物を変化させて、例えば、ISO 5833:2002の要件を満たす機械的性質を達成することもできる。
【0044】
さらに、多孔性の結果として、本発明の組成物の凝固時の重合収縮は、パウダー/液体組み合わせに基づく従来の硬化性組成物に通常期待されるより低くなり得る。
骨セメントとして使用される場合の本発明のなおさらなる利点は、多孔性の制御(大きさ及び微細構造)により、周囲の骨及び組織への抗生物質及び他の医薬の制御放出に対する制御を改善できることである。
【発明を実施するための形態】
【0045】
ポリマービーズ
上述の通り、第一液は、乳化重合されたアクリル粒子、好ましくは微粒子を含む。好ましくは、二液型アクリル組成物は、少なくとももう1つのさらなる種類のアクリルポリマー粒子も含む。好ましくは、少なくとももう1つのさらなる種類のアクリルポリマー粒子はポリマービーズである。そのようなビーズは、好ましくは乳化重合された粒子でできておらず、好ましくは、従来のポリマー処理により製造されている。そのようなポリマービーズはアクリルポリマー組成物の分野の当業者に周知であり、例えば、バルク重合、溶液重合、懸濁重合により製造されるものであり得る。典型的には、ビーズは懸濁重合により製造されている。二液型アクリルポリマー組成物には2つ以上のさらなる種類のアクリルポリマー粒子があることがあり、それらは、平均粒径及び/又は分子量により互いに区別されている。例えば、2つ、3つ、又は4つのそのようなさらなる種類のアクリルポリマー粒子があり得る。ビーズを第一液と混合すると、液体担体中のポリマービーズの分散液が形成する。典型的には、これは、連続エマルション相中のビーズポリマーの分散液である。
【0046】
本明細書でのビーズという用語は、特記されない限り限定的に解釈されないものとし、好適な大きさ、形状、及び表面性状の個別のポリマー粒子を意味する。
ポリマー及び他の成分量
典型的には、重合したエマルション粒子及び、存在する場合、さらなる種類のポリマー粒子は、混合前の二液型アクリル組成物に存在するポリマーの少なくとも98%、より好ましくは少なくとも99%、最も好ましくは混合前の二液型アクリル組成物に存在するポリマーのおよそ100%を形成する。混合すると、モノマーは重合し、混合された組成物はセメントを形成し、それが徐々に硬化して最終的に固体に凝固する。
【0047】
典型的には、二液型組成物の第一液の固形分は、10〜95%w/w、より典型的には
20〜92%w/w、最も典型的には30〜90%w/wである。好ましい範囲は、望まれる性質、例えば、機械的性質による。例えば、生じる固体に40MPaを超える圧縮強度を達成するには、二液型組成物の第一液の固形分の好ましい範囲は、60〜95%w/w、より好ましくは65〜95%w/w、最も好ましくは70〜90%w/wである。
【0048】
乳化重合されたアクリルポリマー粒子及び、存在する場合、さらなる種類のポリマー粒子の合計は、典型的には、二液型アクリル組成物の第一部の固形分の50〜99.9%w/w、より好ましくは60〜97.5%w/w、最も好ましくは65〜94.5%w/wを形成する。残部は、一般的に、充填剤、顔料、染料、触媒、開始剤であり得る他の固形物でできているが、残存する乳化剤も存在し得る。
【0049】
本発明の態様の乳化重合されたアクリルポリマー粒子と、存在する場合の前記さらなる種類のアクリルポリマー粒子の合計の比率は、最終用途により変動し得る。それでも、骨セメントなどのいくつかの用途では、2:98から50:50w/w、より好ましくは3:97から40:60w/w、最も好ましくは5:95から30:70w/wの比率を持つことが好都合である。そのような比率は、短いドウタイムと長い作業時間の間の良好なバランスを与える。しかし、それによって制限が加えられるべきではなく、第一液のポリマー成分を形成する100%w/wの乳化重合された粒子又は30:70から70:30、より典型的には40:60から60:40の比率など、他のより高い乳化重合された粒子の比率も可能である。
【0050】
第一液の液体担体は、乳化されていようが、他の方法でその中に懸濁されていようが、固体成分の液体担体として作用するのに充分である。そのため、液体は、第一液の、5〜90%w/w、より典型的には8〜80%w/w、最も典型的には10〜70%w/wを形成する。
【0051】
第二液は、ポリマー、開始剤(モノマーがない場合)、充填剤、顔料、染料、触媒、加速剤、可塑剤などの当業者に公知である他のポリマー組成物成分を含み得る他の成分のための液体担体を与えるのに充分な液体成分として、モノマー、水、又は他の溶媒を含み得る。この点で、任意選択的に可塑剤の存在下で、水又は有機溶媒などの液体担体中で開始剤ペーストを使用して第二液を形成するのが可能であるが、任意選択的にアクリルポリマー粒子が溶解しており、加速剤、充填剤、染料などの他の成分が加えられたアクリルモノマーを液体担体として、第二液に有するのがより典型的である。一般的には、混合されていない組成物中のモノマーの量は、第二液であろうと、第一液であろうと、10〜70%w/w、より典型的には15〜60%w/w、より好ましくは20〜50%w/wの範囲である。
【0052】
モノマーとさらなる種類のアクリルポリマー粒子の両方が第二液の大部分を形成する場合、アクリルモノマー:ポリマーの比率は99:1から60:40w/wである。
第一液と第二液の比率は、好ましくは、質量で2:1から1:20、より好ましくは、質量で1:1から1:2の範囲である。
【0053】
典型的には、二液型アクリル組成物中の充填剤のレベルは、アクリル組成物の0〜49.9%w/w、より好ましくは2〜39.9%w/w、最も好ましくは5〜34.9%w/wである。充填剤は、二部のどちらか一方に存在してよく、二部の両方に分布されていてもよい。
【0054】
加速剤は、混合されていない組成物中に、0.1から5質量%、より典型的には0.5〜3質量%の範囲で存在してよい。
二液型アクリル組成物中の未反応の開始剤の全レベルは、残存していようと、加えられ
たものであろうと、典型的には、アクリル組成物の0.1〜10%w/w、好ましくは0.15〜5%w/w、より好ましくは0.2〜4.0%w/wである。
【0055】
成分の一方に開始剤が使用される場合、これは、ポリマービーズ又はポリマーエマルション内にカプセル化されていてよく、別に加えられてもよい。
ポリマーがモノマーに溶解される場合、貯蔵寿命が短くなるのを回避するため、ポリマーの中に含まれる残存開始剤は非常に低レベルでなくてはならない。
【0056】
開始剤は、アクリルポリマー組成物を形成する第一のポリマー粒子及び、存在する場合、さらなる種類のポリマー粒子の両方に存在してよい。第一のポリマー粒子及び、存在する場合、さらなる種類のポリマー粒子中の開始剤は、粒子の形成に使用された未反応開始剤の残存量でよく、したがってそれは、開始剤の過剰な量の当量である。いくらかの開始剤を、その代わりとして、又は追加的に、二液型組成物の別な成分として加えることができる。乳化重合されたアクリル粒子において、第二部との反応前に存在する残存開始剤のレベルは、典型的には、乳化重合されたアクリル粒子の0.001〜10%w/w、好ましくは0.1〜6%w/w、より好ましくは0.1〜5%w/wである。
【0057】
好ましくは、開始剤は、少なくとも90%超の重合、より典型的には93%超、より典型的には95%超の重合であるモノマー成分の重合を果たすだろうレベルで存在する。
第一液の液体成分は、水でも、モノマー、有機溶媒、可塑剤、液体ポリマー、希釈剤などの他の液体でもよく、より典型的には、水及び任意選択的にアクリルモノマーでよい。
【0058】
2種以上のアクリルポリマー粒子が第一液に存在する場合、追加の種類のポリマー粒子は、第一部エマルションと混合されて水エマルション相中の懸濁液を形成しても、モノマー中に溶解されて(開始剤が第二部に存在する場合)連続エマルション相に懸濁する溶液を形成してもよく、或いはエマルションは連続モノマー溶液相に懸濁される。いずれにしても、ポリマー成分は、典型的には、当業者に公知である他の好適なポリマー組成物成分の存在下にある。そのようなポリマー組成物添加剤には、開始剤、乳化剤、触媒、顔料、染料、充填剤がある。
具体的な材料
乳化重合の開始に使用でき、したがって、組成物中に残存開始剤を形成して硬化プロセスを開始し得る開始剤は、過硫酸塩、(例えば、カリウム、ナトリウム、又はアンモニウム)、過酸化物(例えば、過酸化水素、ジベンゾイルペルオキシド、tert−ブチルヒドロペルオキシド、tert−アミルヒドロペルオキシド、ジ−(2−エチルへキシルペルオキシジカーボナート、又はラウロイルペルオキシド)、及びアゾ開始剤(例えば、4,4’−アゾビス(4−シアノ吉草酸))である。
【0059】
上述の乳化開始剤(emulsion initiators)に加えて、硬化段階のために特に好ましい開始剤はジベンゾイルペルオキシドである。乳化剤のない乳化重合のために使用でき、したがって、残存開始剤として存在し得る開始剤には、過硫酸カリウム、過硫酸ナトリウム、又は過硫酸アンモニウムなどのイオン性水溶性開始剤がある。
【0060】
さらに、上記の開始剤の任意の1種以上を、独立に組成物に加えてよい。
特に好ましい実施形態において、エマルション粒子は、そのポリマーマトリックス中に開始剤を取り込んでいる。したがって、この実施形態において、開始剤は、組成物の第一液に別々に加えられない。
【0061】
好都合には、硬化性組成物用の開始剤は、開始剤の一部がエマルション粒子の重合に使用されるが、エマルション粒子が形成するにつれて過剰な開始剤がポリマーマトリックスの中に取り込まれるように、粒子の乳化重合の間に過剰な開始剤として加えることができ
る。それに続いて、モノマーによる濡れ及び溶解の後で、開始剤は放出され、そのため硬化段階を開始することができる。コア/シェル粒子において、開始剤は、好ましくは、外側のシェルに、すなわち、多段階乳化重合プロセスの最終段階の間に取り込まれ、したがって、過剰な開始剤は最終的なシェル重合段階に使用される。第一のポリマー粒子又はさらなる種類のポリマー粒子の重合の間に、2種以上の開始剤を使用してもよい。複数の開始剤の場合、過剰な量の第二の開始剤が粒子に取り込まれるように、開始剤のうちの1種が重合に実質的に消費され、第二の開始剤が過剰にあり部分的にしか使用されないことが好都合である。この手順は、半減期の短い開始剤(すなわち、ある温度及び反応媒体でより高い分解速度を持つ開始剤)が優先的に消費されるように、異なる半減期を有する開始剤により支援され得る。さらに、より高い温度を利用して、重合が第一の開始剤の存在下で完了するようにさせる一方で、より低い温度が、残存開始剤として意図される第二の開始剤の存在下でのモノマーの重合を妨げることができる。しかし、開始剤を粒子に取り込むには、いくらかの重合が第二の開始剤の存在下で起こるはずなので、第二の開始剤の一部は必然的に消費されるだろう。1種の開始剤が使用されようと、複数の開始剤が使用されようと、残存物として残される開始剤の量は、開始剤が重合条件及び反応物に曝露される時間並びに存在する場合第一の開始剤に対する相対的な反応性に依存する。残存開始剤の正確な量が実験条件に依存し、試行錯誤により容易に決定でき、モノマー及び開始剤の量並びにプロセス条件の注意深い制御により再現可能になることが当業者に認識されるだろう。過剰に開始剤を加える時間は、ポリマーの分子量にも関連する。あまりにも早く重合に加えられると、粒子の分子量が低下するだろう。したがって、特定の用途に要求される分子量を達成する一方で、過剰な開始剤が取り込まれるように、要求される分子量は、開始剤を過剰に添加する時間にも影響するだろう。
【0062】
疑義を避けるために述べると、「過剰な開始剤」は、アクリルポリマー粒子の重合を完了するのに必要ではなく、アクリルポリマー粒子の初期の重合が終了した後でその後の反応に利用可能である開始剤の一部を意味する。
【0063】
好ましくは、多段階乳化粒子の場合、液体組成物の乳化重合されたアクリル粒子は、ポリマーマトリックス中に好適な開始剤化合物を取り込み、開始剤は、最終段階でその外側のシェルに取り込まれる。
【0064】
カプセル化された残存開始剤又は添加された開始剤(例えば、ジベンゾイルペルオキシド)の量の変動は、硬化性組成物の硬化時間を変える効果がある。開始剤のレベルを高めると、硬化時間が短くなる。さらに、アクリルモノマー組成物中の加速剤(例えば、DMPT)の量の変動も硬化時間に影響し得る。加速剤濃度を上げると硬化時間が短くなる。
【0065】
医療及びいくつかの歯科用途において、充填剤は、好都合には、治療又は手術の間にX線により観測できるように、X線不透過充填剤である。この目的に好適な充填剤には、ポリマー粒子にカプセル化されるか、又は遊離である硫酸バリウム及び二酸化ジルコニウムがある。義歯の製造又は工業的用途において、他の充填剤を代りに使用することがあり、これらはそのような分野の当業者に公知であろう。さらに、有機X線不透過モノマーを充填剤の代りに使用できる。これらは、その製造の間にアクリルポリマー粒子のいずれにも共重合でき、アクリルモノマー組成物に取り込むこともできる。典型的な有機X線不透過モノマーには、ハロゲン化されたメタクリラート又はアクリラート、例えば、2,3−ジブロモプロピルメタクリラート又は2−メタクリロイルオキシエチル−2,3,5−トリヨードベンゾアートがある。
【0066】
乳化重合に使用でき、したがってその後の第一液に存在する乳化剤は、従来の乳化重合に典型的なものであり、アニオン性(例えば、ジオクチルスルホコハク酸ナトリウム、スルホコハク酸のエトキシ化アルコール半エステル二ナトリウム、N−(1,2−ジカルボ
キシエチル)−N−オクタデシルスルホコハク酸テトラナトリウム、硫酸化アルキルフェノールエトキシレートのナトリウム塩、アルカンスルホン酸ナトリウム、ドデシル硫酸ナトリウム、又は2−エチルヘキシル硫酸ナトリウム)、非イオン性(例えば、ポリエチレングリコールノニルフェニルエーテル、ポリエチレンオキシドオクチルフェニルエーテル、又は二官能性エチレンオキシド/プロピレンオキシドブロックコポリマー)、又はカチオン性乳化剤(例えば、ヘキサデシルトリメチルアンモニウムブロミド又はアルキルポリグリコールエーテルアンモニウムメチルクロリド)がある。アクリルエマルションとの使用に好適な反応性又は重合性の乳化剤又は界面活性剤も使用でき、例えば、ドデシルアリルスルホコハク酸ナトリウム、スチレンナトリウムドデシルスルホネートエーテル(styrene sodium dodecylsulfonate ether)、ドデシルナトリウムエチルスルホネートメタクリルアミド(dodecyl sodium ethylsulfonate methacrylamide)、ポリエチレンオキシド若しくはエチレンオキシド/プロピレンオキシドブロックコポリマーのメタクリル又はビニルベンジルマクロモノマー、又はメタクリロイルエチルヘキサデシルジメチルアンモニウムブロミドがある。
【0067】
第一液のさらなる成分と液体担体との混合は、固体又は液体を液体と混合するための、当業者に公知の好適な技術により実施できる。
好ましくは、乳化重合されたアクリルポリマー粒子のZ平均粒径は、Malvern ZetasizerナノシリーズS粒径分析器(測定キュベット中で、エマルション1滴を1mlの脱イオン水に加え、試験試料を25℃で平衡化させ、装置により提供されるソフトウェアを利用してZ平均粒径を決定)を利用する光散乱により決定して2000nm未満、より好ましくは1000nm未満、最も好ましくは800nm未満、特に500nm未満である。乳化重合された粒子の好ましいZ平均粒径範囲は、上述のMalvern
Zetasizerを利用する光散乱により決定して、10〜2000nm、より好ましくは20〜1000nm、最も好ましくは50〜500nm、特に100〜450nmである。
【0068】
乳化重合されたアクリル粒子のコアシェル(C:S)比率は、典型的には、C:S95:5%wtからC:S40:60%wt、より典型的にはC:S90:10%wtからC:S50:50%wt、好ましくはC:S85:15%wtからC:S70:30%wtである。
【0069】
典型的には、乳化重合されたアクリルポリマー粒子は、一段階でも、多段階でも、すなわちいわゆるコア/シェル粒子でもよい。この点で、シード、コア、及びシェルの製造にメチルメタクリラートなどの単一のモノマーを使用することが適切であり得る。この場合、特にシード、コア、及びシェルの組成及び分子量が同じであるように設計される場合、当業者に公知である標準的な一段階乳化重合技術を採用できるだろう。しかし、その構造、特にその組成、粒径、及び分子量のいくらかの制御を示すエマルション粒子を得るには、多段階コア−シェル乳化重合手法を利用するのが好ましい。
【0070】
コア−シェル粒子を乳化重合により製造するには、最初にシード粒子を形成し、それがさらなる成長のための核として作用し、すなわちポリマーコアを、次いでシェルを製造する、広く利用されている方法を採用することが便利である。このコンセプトは、より詳細に、V.L.Dimonie,et al,“Emulsion Polymerization and Emulsion Polymers”,P.A.Lovell and M.S.El−Aasser,Eds,John Wiley & Sons Ltd,Chapter 9,pages 294−326,(1997)に記載されている。シード粒子が形成され、無乳化剤技術(すなわち、粒子安定化が、過硫酸カリウム、ナトリウム、又はアンモニウムなどのイオン性水溶性開始剤の使用から生じる)の利用と
乳化剤の利用のいずれかにより安定化され得る。シード粒子が形成されると、コア及びシェルが、モノマー及び開始剤のさらなる部分の引き続いた添加から形成される。
【0071】
第一液及び第二液のブルックフィールド粘度範囲は、10から10,000センチポイズ、より好ましくは500から7,000センチポイズ、さらにより好ましくは1,000から5,000センチポイズ、最も好ましくは1,500から4,000センチポイズになり得る。
【0072】
第一液が、乳化重合されたアクリルポリマー粒子とさらなる種類のアクリルポリマー粒子、例えば、アクリルポリマービーズから構成されている場合の特別な問題は、第一液の粘度が、第二液と比べて比較的高くなり得ることであり、特に、第二液がアクリルモノマーに溶解したアクリルポリマーから構成される比較的低粘度のシロップである場合はそうである。上述の通り、液体の一方又は両方の粘度が高すぎるか、2種以上の液体の粘度が互いに著しく異なる場合は問題になり得る。
【0073】
したがって、本発明において、二筒式シリンジなどの2つ以上の容器を持つ装置の別なそれぞれの容器からその出口に二液型骨セメントを送るための好適な粘度を与えるレベルに粘度が下がるように、第一液の粘度を制御することが好都合である。典型的には、そのような装置は、複数の容器の押出物を出口の前で共に混合する、スタティックミキサーなどのミキサーも必要とする。ミキサーを通って装置の出口の方に移動するにつれ硬化する組成物の増加する粘度は、第一液の粘度により影響を受け得る。第一液の粘度の制御は、第一部の成分を下記により適合させることにより達成できる:
(i)本発明の第一部の乳化重合されたアクリルポリマー粒子に、比較的大きいz平均粒径を与えること;及び/又は
(ii)本発明の第一の乳化重合されたアクリルポリマー粒子とは異なるそれぞれのz平均粒径を有する第二又はさらなる集団の乳化重合されたアクリルポリマー粒子を、第一部に与えること;及び/又は
(iii)第一部に2つ以上のさらなる種類のアクリルポリマー粒子集団を与えることであって、前記さらなる種類は互いに異なるそれぞれの平均粒径を有する。
【0074】
したがって、乳化重合されたアクリルポリマー粒子及び/又は第二若しくはさらなる集団の乳化重合されたアクリルポリマー粒子のz平均粒径は、独立に、100nm超、より好ましくは200nm超、例えば、100〜900nm、最も好ましくは200〜800nmの範囲になり得る。
【0075】
さらに、さらなるアクリルポリマー粒子の平均粒径は、10〜1,000ミクロン、好ましくは15〜600ミクロン、より好ましくは20〜400ミクロン、最も好ましくは25〜300ミクロンになり得る。
【0076】
したがって、本発明の第二の態様によると、混合すると互いに反応して硬化するセメントを形成する、貯蔵安定性第一液及び貯蔵安定性第二液を含む硬化性二液型アクリル組成物であって、アクリルモノマー成分とモノマー成分を重合させるのに有効な量の開始剤成分とをさらに含む組成物であって、第一液が、液体担体中に、第一の集団の乳化重合されたアクリルポリマー粒子と第一の乳化重合されたアクリルポリマー粒子とは異なるz平均粒径を有する第二又はさらなる集団の乳化重合されたアクリルポリマー粒子とを含むことを特徴とする硬化性二液型アクリル組成物が提供される。
【0077】
前記モノマー成分と前記開始剤成分は好適には、モノマー成分が貯蔵安定性であるように、前記二液型組成物の別々な部に配置される。
したがって、本発明の第三の態様によると、混合すると互いに反応して硬化するセメン
トを形成する、貯蔵安定性第一液及び貯蔵安定性第二液を含む硬化性二液型アクリル組成物であって、アクリルモノマー成分とモノマー成分を重合させるのに有効な量の開始剤成分とをさらに含む組成物であって、第一液が、液体担体中に、第一の集団の乳化重合されたアクリルポリマー粒子と互いに異なるそれぞれの平均粒径を有する2つ以上のさらなる種類のアクリルポリマー粒子集団とを含むことを特徴とする硬化性二液型アクリル組成物が提供される。
【0078】
前記モノマー成分と前記開始剤成分は好適には、モノマー成分が貯蔵安定性であるように、前記二液型組成物の別々な部に配置される。
好適には、2つ以上の集団の乳化重合されたアクリルポリマー粒子がある場合、各種類の少なくとも1重量%、より好ましくは5重量%、最も好ましくは10重量%がある。例えば、2種がある場合、典型的な比率は1〜99:99〜1重量%の範囲、より典型的には、10〜90:90〜10重量%の範囲である。さらに例を挙げると、3種類ある場合、典型的な比率は、1〜98:98〜1:98〜1重量%の範囲、より典型的には5〜90:90〜5:90〜5重量%の範囲である。
【0079】
好ましくは、2つ以上の集団のさらなる種類のアクリルポリマー粒子がある場合、各種類の少なくとも1重量%、より好ましくは5重量%、最も好ましくは10重量%がある。例えば、2種がある場合、典型的な比率は、1〜99:99〜1重量%の範囲、より典型的には10〜90:90〜10重量%の範囲である。さらに例を挙げると、3種類ある場合、典型的な比率は、1〜98:98〜1:98〜1重量%の範囲、より典型的には5〜90:90〜5:90〜5重量%の範囲である。
【0080】
好ましくは、本発明の任意の態様における前記第一部と第二部を混合することにより製造される固体の圧縮強度は、40MPa超、より好ましくは70MPa超である。製造された固体に見られる圧縮強度の典型的な範囲は、40〜130MPa、より好ましくは70〜130MPaである。
定義:
「別々な部に配置される」とは、前記モノマー成分が第一部に配置される場合、前記開始剤成分が第二部に配置されることを意味し、逆もまた同じである。
【0081】
本明細書での「液体」という用語は、当業者に周知であるので定義を必要としない。しかし、疑義を避けるために述べると、それは、スラリー又はペーストなどの流動性物質であって、そのため圧力をかけるとシリンジ又はコーキングガン出口を通って送り出されやすい流動性物質を含む。典型的には、用語液体は、少なくとも5から35℃、より典型的には5から30℃に当てはまる。
【0082】
「貯蔵安定性」とは、通常許容される貯蔵条件の温度及び時間で、すなわち5から30℃で1から250日、より典型的には15から25℃及び1から170日で、重合しないモノマー又は液体を意味する。
【0083】
用語「集団」は、一般的に当業者に理解されているが、疑義を避けるために述べると、同じ重合プロセスを共に経たモノマーにより通常製造されるとおり、特定の平均粒径、重量平均分子量、粒径分布、及び分子量分布を有する複数のポリマー粒子を意味する。
【0084】
上述の通り、本発明のポリマー組成物は、さらなる種類のアクリルポリマー粒子を含み得る。
そのようなさらなる粒子の製造の方法は、一般的に、略球状のポリマー粒子又はビーズを製造する従来の懸濁重合又は分散重合である。しかし、他の製造方法、例えば、バルク重合又は溶液重合とそれに続く溶媒の蒸発も可能である。
【0085】
本明細書でのアクリルポリマーとは、乳化重合されたアクリルポリマー粒子に関連しようと、少なくとも1つのさらなる種類のアクリルポリマー粒子に関連しようと、独立に、ポリアルキル(アルキ)アクリラート若しくは(アルキ)アクリル酸のホモポリマー又はアルキル(アルキ)アクリラート若しくは(アルキ)アクリル酸と1種以上の他のビニルモノマーとのコポリマーの各タイプに関する。典型的には、メチルメタクリラートのホモポリマー又はメチルメタクリラートと1種以上の他のビニルモノマーとのコポリマーが使用される。他のビニルモノマーとは、さらなるアルキル(アルキ)アクリラート又は(アルキ)アクリル酸、例えば、エチルメタクリラート、メチルアクリラート、エチルアクリラート、n−ブチルアクリラート、iso−ブチルアクリラート、t−ブチルアクリラート、n−ブチルメタクリラート、iso−ブチルメタクリラート、t−ブチルメタクリラート、2−エチルヘキシ(ethylhexy)メタクリラート、2−エチルヘキシルアクリラート、ラウリルメタクリラート、ラウリルアクリラート、シクロヘキシルアクリラート、シクロヘキシルメタクリラート、イソボルニルアクリラート、イソボルニルメタクリラート、メタクリル酸、アクリル酸;ヒドロキシル官能性アクリラート、例えば、2−ヒドロキシエチルメタクリラート、ヒドロキシプロピルエチルメタクリラート、2−ヒドロキシエチルアクリラート、又はヒドロキシプロピルアクリラート;ビニル化合物、例えば、スチレン、ビニルピロリジノン、ビニルピリジン;及び相溶性架橋性モノマー、例えば、アリルメタクリラート、ジビニルベンゼン、エチレングリコールジメタクリラート、エチレングリコールジアクリラート、1,4−ブタンジオールジメタクリラート、1,4−ブタンジオールジアクリラート、1,6−ヘキサンジオールジメタクリラート、及び1,6−ヘキサンジオールジアクリラート、特に相溶性アクリル架橋性モノマーを意味する。
【0086】
官能化されたモノマーを含むコポリマーは、骨セメント組成物に使用されるX線放射線不透過性充填剤(例えば、硫酸バリウム、二酸化ジルコニウムなど)を第二液に分散させるのを助け得るので、特に興味深い。好適な官能化モノマーは、インク及びコーティングにおける顔料分散体の分野において周知である。例えば、N,N−ジメチルアミノエチルメタクリラート、N,N−ジエチルアミノエチルメタクリラート、t−ブチルアミノエチルメタクリラートなどのアミン並びにメタクリル酸及びアクリル酸などの酸。
【0087】
架橋性モノマーを使用して、アクリルポリマー粒子種類の1つを架橋できる。乳化重合された粒子では、架橋は、コア及びシェルでも、コアのみでも、シェルのみでも実施できる。架橋は、硬化性二液型アクリル組成物の性質を微調整する目的を果たす。
【0088】
乳化重合されたアクリルポリマー粒子の重量平均分子量(Mw)は、典型的には、25,000ダルトンから3,000,000ダルトン、より典型的には、100,000ダルトンから1,500,000ダルトン、好ましくは、250,000から1000000、例えば、250,000から600,000である。分子量は、ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)により、この目的のために決定できる。
【0089】
硬化性組成物のポリマー成分中のポリマーの分子量がドウタイム及び作業時間に影響を与え得るとしても、本発明は、特定の分子量に限定されない。いずれの場合でも、さらなるアクリルポリマー粒子の分子量の低減及び/又は粒径の増加を利用して、硬化性組成物の作業時間を増加させることができる。
【0090】
存在する場合、さらなる種類のポリマー粒子の重量平均分子量(Mw)は、典型的には、10,000ダルトンから3,000,000ダルトン、より典型的には30,000ダルトンから1,000,000ダルトン、好ましくは50,000から700,000、例えば、60,000から600,000ダルトンである。分子量は、ゲル浸透クロマ
トグラフィー(GPC)により、この目的のために決定できる。
【0091】
本明細書でのアクリルモノマーは、任意の好適なアルキル(アルキ)アクリラート又は(アルキ)アクリル酸、例えば、メチルメタクリラート、エチルメタクリラート、メチルアクリラート、エチルアクリラート、メタクリル酸若しくはアクリル酸、n−ブチルアクリラート、iso−ブチルアクリラート、t−ブチルアクリラート、n−ブチルメタクリラート、iso−ブチルメタクリラート、t−ブチルメタクリラート、2−エチルヘキシメタクリラート、2−エチルヘキシルアクリラート、ラウリルメタクリラート、ラウリルアクリラート、シクロヘキシルアクリラート、シクロヘキシルメタクリラート、イソボルニルアクリラート、イソボルニルメタクリラート;ヒドロキシル官能性アクリラート、例えば、2−ヒドロキシエチルメタクリラート、ヒドロキシプロピルエチルメタクリラート、2−ヒドロキシエチルアクリラート、又はヒドロキシプロピルアクリラート;ビニル化合物、例えば、スチレン、ビニルピロリジノン、ビニルピリジン;及び相溶性架橋性モノマー、例えば、アリルメタクリラート、ジビニルベンゼン、エチレングリコールジメタクリラート、エチレングリコールジアクリラート、1,4−ブタンジオールジメタクリラート、1,4−ブタンジオールジアクリラート、1,6−ヘキサンジオールジメタクリラート、及び1,6−ヘキサンジオールジアクリラート、特に相溶性アクリル架橋性モノマーを意味する。典型的には、メチルメタクリラートが使用される。
【0092】
本発明のアクリルモノマーは、任意選択的に、付随する好適な阻害剤、例えば、ヒドロキノン(HQ)、メチルヒドロキノン(MeHQ)、2,6−ジ−tert−ブチル−4−メトキシフェノール(Topanol O)、及び2,4−ジメチル−6−tert−ブチルフェノール(Topanol A)などと共に与えられる。阻害剤は、モノマーの自発重合を防ぐために存在する。好適な阻害剤は、室温での長い保存寿命を確実にする60ppmのヒドロキノンである。
【0093】
N,N−ジメチル−p−トルイジン(DMPT)及びN,N−ジヒドロキシエチル−p−トルイジン(DHEPT)(両方とも第三級アミン)又は有機溶媒可溶性遷移金属触媒などの重合活性剤又は加速剤も任意選択的に存在してよい。活性剤又は加速剤の存在は、最終用途次第である。歯科又は骨セメント用途などのように「常温硬化」が必要である場合、加速剤が通常必要である。しかし、工業用途では、「熱硬化」系における熱の利用も可能である。例えば、義歯は熱により活性化され得る。
【0094】
本明細書では、アルキルはC−C18アルキルを意味し、用語アルキル及びアルキは、シクロオアルキル(cyclooalkyl)及びヒドロキシル官能性C−C18アルキルを包含する。本明細書でのアルキとは、C−Cアルキを意味する。
【0095】
好ましい一実施形態において、アクリルポリマー組成物第一液は、重合されたアクリルポリマー粒子と1種類のみのさらなるアクリルポリマー粒子のエマルションを含むが、前者が一般的にドウタイムを制御し、後者が一般的に操作時間を制御する。
【0096】
「アクリル組成物」とは、存在する全モノマー及びモノマー残基の少なくとも50%が、1種以上の先に定義されたアクリルモノマーとして存在するか、それから誘導された組成物を意味し、より典型的には全体の少なくとも70%、最も典型的には95%、又は特に99%を意味する。
【0097】
本発明の好ましい実施形態において、第一部は、液体担体中の乳化重合されたアクリルポリマー粒子(好ましくは、PMMAエマルション)及び開始剤を含み、第二部は、アクリルモノマー(好ましくはMMAモノマー)及び加速剤を含む。
【0098】
本発明のさらなる好ましい実施形態において、第一部は、液体担体中の乳化重合されたアクリルポリマー粒子(好ましくはPMMAエマルション)及び開始剤を含み、第二部は、開始剤を含まないアクリルポリマー(好ましくはPMMA)のアクリルモノマー(好ましくはMMA)溶液と加速剤を含む。
【0099】
本発明のさらなる好ましい実施形態において、第一部は、液体担体中のアクリルポリマービーズ(好ましくはPMMAビーズ)及び乳化重合されたアクリルポリマー粒子(好ましくは、PMMAエマルション)及び開始剤を含み、第二部は、アクリルモノマー(好ましくは、MMAモノマー)及び加速剤を含む。
【0100】
本発明のさらなる好ましい実施形態において、第一部は、液体担体中のアクリルポリマービーズ(好ましくはPMMAビーズ)及び乳化重合されたアクリルポリマー粒子(好ましくは、PMMAエマルション)及び開始剤を含み、第二部は、開始剤を含まないアクリルポリマービーズ(好ましくはPMMAビーズ)のアクリルモノマー(好ましくは、MMAモノマー)溶液及び加速剤を含む。
【0101】
本発明のさらなる好ましい実施形態において、第一部は、アクリルモノマー(好ましくは、MMAモノマー)中の開始剤を含まないアクリルポリマービーズ(好ましくはPMMAビーズ)の溶液及び液体担体中の開始剤を含まない乳化重合されたアクリルポリマー粒子(好ましくは、PMMAエマルション)を含み、第二部は、開始剤ペーストを含む。開始剤ペーストは、通常水又は可塑剤との混合物として市販されている。
【0102】
本発明のさらなる態様によると、混合すると互いに反応して固体に硬化するセメントを形成する、貯蔵安定性第一液及び貯蔵安定性第二液を含む硬化性二液型アクリル組成物を製造する方法であって、下記工程を含む方法が提供される:
(a)少なくとも1種のアクリルモノマー組成物を過剰の開始剤の存在下で乳化重合して、残存開始剤を含むアクリルポリマーエマルションを製造する工程;又は
(b)少なくとも1種のアクリルモノマー組成物を乳化重合して、アクリルポリマーエマルションを製造し、任意選択的に開始剤をエマルションに加える工程;
(c)任意選択的に、(a)又は(b)のエマルションを少なくとも1つのさらなる種類のアクリルポリマー粒子及び/又は前記さらなる種類のアクリルポリマーのアクリルモノマー溶液と混合して、アクリルモノマー組成物及び開始剤が共に存在する状況で所定の速度で硬化するのに好適な液体アクリルポリマー第一部を製造する工程;
(d)アクリルポリマー第一部を、前記第一部が開始剤及びアクリルモノマーの両方に接触するように、アクリルモノマーと開始剤のいずれかに接触させて、硬化するセメントを形成する工程。
【0103】
より具体的には、本発明のなおさらなる態様によると、混合すると互いに反応して固体に硬化するセメントを形成する、貯蔵安定性第一液及び貯蔵安定性第二液を含む硬化性二液型アクリル組成物を製造する方法であって、下記工程を含む方法が提供される:
(a)少なくとも1種のアクリルモノマー組成物を過剰な開始剤の存在下で乳化重合して、残存開始剤を含むアクリルポリマーエマルションを製造する工程;又は
(b)少なくとも1種のアクリルモノマー組成物を乳化重合して、アクリルポリマーエマルションを製造し、開始剤をエマルションに加える工程;又は
(c)少なくとも1種のアクリルモノマー組成物を乳化重合して、過剰な開始剤のないアクリルポリマーエマルションを製造する工程;
(d)任意選択的に、(a)又は(b)のエマルションを少なくとも1つのさらなる種類のアクリルポリマー粒子と混合し、又は(c)のエマルションを、前記さらなる種類のアクリルポリマーのアクリルモノマー溶液と混合して、アクリルモノマー及び開始剤が共に存在する状況で所定の速度で硬化するのに好適な液体アクリルポリマー第一部を製造する
工程。好都合には、本発明において、未反応の開始剤が第一部に存在する場合にモノマーが第二部から加えられるように、未反応の開始剤が全くなく代りにモノマーが第一部に存在する場合に開始剤が第二部から加えられるように、モノマー及び開始剤は二液型組成物の別々な部に保存されている。
【0104】
工程(a)は好適には、シード、コア、及び少なくとも1種のシェル乳化重合工程を含む。特に好ましい方法は、残存開始剤がエマルション粒子中にカプセル化されるように、過剰な開始剤を乳化重合工程(a)に導入する。好ましくは、多段階乳化重合において、過剰な開始剤が、多段階粒子の外側のシェルに存在するように、最終ステージの間に導入される。しかしその代わりに、開始剤を、その後でアクリルポリマーエマルションに加えてもよい。
【0105】
本発明の第一、第二、又は第三の態様の乳化重合されたアクリルポリマー粒子の利点は、アクリルモノマー組成物の存在下で到達する迅速なドウタイムである。しかし、ドウの操作時間及び硬化時間は、用途に応じて変わる必要がある。非常に短い操作時間及び硬化時間が必要とされる場合、本発明の第一、第二、又は第三の態様の乳化重合されたアクリルポリマー粒子が単独で使用され得る。それでも、ほとんどの用途において、より長い操作時間及び硬化時間が必要とされるだろうが、これは、さらなる種類のアクリルポリマー粒子の量、種類、及び粒径を変えることにより達成できる。より小さい平均粒径の(例えば、典型的には20ミクロン未満)ポリマー粒子は、短い操作時間も与えることが知られているが、より大きい粒径の粒子の量を増加させるか、又は粒径自体を増加させることにより、より長い操作時間を得ることができる。したがって、さらなるアクリルポリマー粒子の粒径及び量は最終用途次第であり、それは当業者により認識されるだろう。
【0106】
典型的には、さらなる種類のアクリルポリマー粒子は、ポリマービーズとして知られる固体ポリマー粒子の形態である。そのようなビーズは、上述の通り、典型的には懸濁重合により製造されるが、溶液重合及びバルク重合も可能な製造方法である。そのようなビーズは、上記の乳化重合されたアクリルポリマー粒子について記載されたカプセル化された残存開始剤も含むことがある。そのようなビーズの平均粒径は上述の通り可変的だろうが、最終用途に応じて、そのようなビーズの典型的な平均粒径は、10〜1000ミクロンの範囲、より典型的には20〜600ミクロン、最も典型的には25〜200ミクロンである。平均粒径が大きいほど、操作時間は長くなる。当業者は、ポリマーの分子量及び加速剤の存在も操作時間及び硬化時間に影響を与え得ることも認識するだろう。したがって、本発明の有利な態様は、乳化重合された第一の種類のアクリルポリマー粒子の存在により達成される低下したドウタイムであるが、操作時間又は硬化時間は用途次第なので、本発明は特定の操作時間又は硬化時間に限定されない。
【0107】
上述のことにもかかわらず、本発明の態様のアクリル組成物の特に有利な用途は、骨セメント組成物としてのその使用である。そのような組成物は椎体形成術に使用され、過度な遅れなく手術が進行するように非常に短いドウタイムが要求される。さらに、そのような使用では、手術現場での患者の固定が不必要に長くならないように、短い硬化時間が要求される。競合する要件は、手順を効果的に実施するための充分な操作時間である。ドウタイムの短縮は、作業時間を増加させる効果がある。本発明の組成物の類似の用途は、類似の短いドウタイムが要求される歯科修復である。
【0108】
それでも、多くの工業用途で短いドウタイムが一般的に望ましいとされているのが分かり、したがって、骨セメント及び歯科用途は好ましい実施形態であるが、本発明はこれらの用途に限定されない。
【0109】
したがって、本発明は、本発明の第一、第二、又は第三の態様において定義された第一
液の、硬化性二液型アクリル組成物におけるドウタイム低下剤としての使用にわたる。
乳化重合された粒子は、耐衝撃性改良剤の分野で周知である。そのため、ブタジエン又はブチルアクリラートなどの耐衝撃性改良剤は、典型的には、コモノマーとして、多段階コア−シェル粒子のシェルの1つに導入される。しかし、本発明の二液型組成物において、耐衝撃性改良剤は必要とされないかもしれない。したがって、本発明の乳化重合されたアクリルポリマー粒子は、耐衝撃性改良剤コモノマー残基を含まなくてよい。
【0110】
本発明のアクリル組成物第一部は、液体として別々に、本明細書に定義されるさらなる成分を加えられて、又は加えられないで、硬化性組成物の第一液として後の使用のために与えることができる。
【0111】
したがって、本発明の第四の態様によると、任意選択的に、少なくとも1つのさらなる種類の非乳化重合されたアクリルポリマー粒子と混合された、且つ任意選択的に、少なくとも1種のさらなる集団の乳化重合されたアクリルポリマー粒子と混合された、乳化重合されたアクリルポリマー粒子を含む液体組成物であって、液体組成物中に、反応性モノマー液体と接触すると液体組成物を硬化させるのに充分なレベルで重合開始剤があることを特徴とする液体組成物が提供される。
【0112】
本発明の利用に、特別な温度制限はない。しかし、一般に、作業者に許容できる温度、すなわち、作業者が室内又は屋外で遭遇し得る通常の作業条件の間に見られる温度、例えば周囲温度で利用される。
【0113】
本発明のさらなる態様によると、本発明の第一、第二、又は第三の態様の二液型アクリル組成物を混合することから製造された固体セメント組成物が与えられる。
本発明のさらなる態様によると、本発明の第一、第二、又は第三の態様の二液型アクリル組成物から、前記第一部と第二部を混合することにより、アクリルセメントを製造するプロセスが与えられる。
【0114】
上記プロセスは手作業の混合プロセスのことがある。しかし、適合されたシリンジ又はコーキングガンの使用が好ましい。
したがって、本発明のさらなる態様によると、少なくとも2つの筒を有するシリンジ又はコーキングガンであって、本発明の第一、第二、第三、又は第四の態様の第一液をその第一の筒に、本発明の任意の態様の第二液をその第二の筒に含み、本明細書に開示される第一、第二、第三、又は第四の態様のさらなる成分も含む、少なくとも2つの筒を有するシリンジ又はコーキングガンが与えられる。
【0115】
本発明は、本発明の第一、第二、又は第三の態様の二液型骨セメント若しくは歯科用セメント、又は建築用セメント若しくは構造用接着剤若しくは貼り合せ用接着剤若しくは目地若しくはシーリング組成物にわたる。
【0116】
好適には、骨セメント又は歯科用セメント組成物において、少なくともその組成物が固体に凝固すると、その成分は生体適合性成分である。
本発明のなおさらなる態様によると、ヒト又は動物の骨の治療に使用するための、本発明の第一、第二、又は第三の態様の二液型組成物が与えられる。
【0117】
本発明のなおさらなる態様によると、ヒト又は動物の骨の代替品に使用するための、本発明の第一、第二、又は第三の態様の二液型組成物が与えられる。
本発明のなおさらなる態様によると、ヒトの歯又は動物の歯、蹄、爪、若しくは角の治療に使用するための、本発明の第一、第二、又は第三の態様の二液型組成物が与えられる。
【0118】
本発明のなおさらなる態様によると、ヒトの歯又は動物の歯、蹄、爪、若しくは角の代替品に使用するための、本発明の第一、第二、又は第三の態様の二液型組成物が与えられる。
【0119】
本発明の実施形態は、ここで、添付される実施例を参照しながら説明されるだろう。
【実施例】
【0120】
特性化技術
Z平均エマルション粒径は、Malvern ZetasizerナノシリーズS粒径分析器を利用して決定した。
【0121】
還元粘度(RV、dl/g)は、クロロホルム中で(1重量%溶液)、ウベローデ粘度計OB型を25℃で使用して測定した。
残存ジベンゾイルペルオキシド含量の重量%は、滴定法により決定した。
【0122】
ブルックフィールド粘度測定法(BV、センチポイズ(cPs))は、ブルックフィールド粘度計RVDV−E型を使用して25℃で、測定される粘度範囲に応じてスピンドル及びスピードを調整した実施例47以降を除いて、スピンドル数5及びスピード20rpmで操作して実施した。
【0123】
重量平均分子量、Mwは、ポリメチルメタクリラート標準を較正に使用してゲル浸透クロマトグラフィーにより決定した。テトラヒドロフランを移動相として使用した。
アクリルビーズポリマー平均粒径は、Coulter LS230レーザー回折粒度分析計により測定した。
【0124】
ドウタイム及び硬化時間及び最大発熱温度は、BS ISO 5833:2002に従って測定した。
ドウタイムは、混合物が、優しく触る場合に手袋をつけた手に付着しないドウ状の塊に達する混合開始後の時間の長さであると考えられる。
【0125】
硬化時間は、室温と最大の中間の温度に達するのにかかる時間であると考えられる。
曲げ強度及び曲げ弾性率は、ISO 1567:1997に従って三点曲げ試験により決定した。圧縮強度は、ISO 5833:2002に従って決定した。
【0126】
実施例1から4は、32%wtから54%wtに変わる固形分のアクリルエマルションの調製を記載している。
【0127】
実施例1
32%wt固形分のアクリルポリマーエマルションの調製
2000グラムの脱イオン水を、窒素入口、冷却管、及び電動式ステンレススチールパドルスターラーを備えた5リットルの丸底ガラスフラスコに加える。毎分200回転(rpm)で撹拌しながら、水浴で水を80℃に加熱する。窒素流を、液体の表面上のフラスコの蒸気の空間に通す。
【0128】
1000グラムのメチルメタクリラート、1.8グラムの1−ドデカンチオール、5.0グラムのラウリル硫酸ナトリウム、及び100グラムの脱イオン水からなる乳化されたモノマー混合物を調製する。この混合物を、添加の前及び添加の間60分間撹拌して、乳化した状態を保つ。
【0129】
水の温度を80℃にして、100グラムの乳化されたモノマー混合物をフラスコに加え、それに続いて10ミリリットルの2重量%過硫酸カリウムの脱イオン水溶液を加えることにより、ポリマーシード(ステージ1)を調製する。わずかな発熱の後、反応は、温度が80℃に戻るまで30分間進行する。
【0130】
次いで、最初に、10ミリリットルの2重量%過硫酸カリウムの脱イオン水溶液をフラスコに加え、それに続いて250グラムの乳化されたモノマー混合物をおよそ45分かけて、蠕動ポンプを利用して連続的に添加することにより、コアをポリマーシード粒子上に成長させる(ステージ2)。反応は、温度が80℃に戻るまで、モノマー混合物の添加の完了後さらに30分間進行する。次いで、この工程を2回繰り返す。
【0131】
37.0グラムの75%の活性ジベンゾイルペルオキシド(BPO)を、残りの乳化されたモノマー混合物に45分間撹拌しながら溶解させる。
次いで、最初に、10ミリリットルの2重量%の過硫酸カリウムの脱イオン水溶液をフラスコに加え、それに続いて、BPOが加えられている乳化されたモノマー混合物をおよそ30分かけて蠕動ポンプを使用して連続的に加えることにより、BPO含有シェルをコアの上に成長させる(ステージ3)。反応は、温度が80℃に戻るまで、全てのモノマー混合物を加えた後さらに15分間進行する。
【0132】
次いで、得られたアクリルポリマーエマルションを40℃未満に冷却し、150ミクロンのふるいに通して濾過する。
アクリルポリマーエマルションは、固形分が32%wt、還元粘度が1.8dl/g、残存ジベンゾイルペルオキシドが1.66%wt、及びz平均エマルション粒径が177nmである。
【0133】
実施例2
38%wt固形分のアクリルポリマーエマルションの調製
1200グラムの脱イオン水を、窒素入口、冷却管、及び電動式ステンレススチールパドルスターラーを備えた5リットルの丸底ガラスフラスコに加える。毎分200回転(rpm)で撹拌しながら、水浴で水を80℃に加熱する。窒素流を、液体の表面上のフラスコの蒸気の空間に通す。
【0134】
1000グラムのメチルメタクリラート(MMA)、1.0グラムの1−ドデカンチオール、5.0グラムのラウリル硫酸ナトリウム、及び200グラムの脱イオン水からなる乳化されたモノマー混合物を調製する。この混合物を、添加の前及び添加の間60分間撹拌して、乳化した状態を保つ。
【0135】
水の温度を80℃にして、100グラムの乳化されたモノマー混合物をフラスコに加え、それに続いて10ミリリットルの2重量%過硫酸カリウムの脱イオン水溶液を加えることにより、ポリマーシード(ステージ1)を調製する。わずかな発熱の後、反応は、温度が80℃に戻るまで30分間進行する。残りの乳化されたモノマー混合物に、1gのラウリル硫酸ナトリウムを撹拌しながら加える。
【0136】
次いで、最初に、10ミリリットルの2重量%過硫酸カリウムの脱イオン水溶液をフラスコに加え、それに続いて250グラムの乳化されたモノマー混合物をおよそ45分かけて、蠕動ポンプを利用して連続的に添加することにより、コアをポリマーシード粒子上に成長させる(ステージ2)。反応は、温度が80℃に戻るまで、モノマー混合物の添加の完了後さらに30分間進行する。次いで、この工程を2回繰り返す。
【0137】
35.0グラムの75%活性ジベンゾイルペルオキシドを、残りの乳化されたモノマー
混合物に45分間撹拌しながら溶解させる。
次いで、最初に、10ミリリットルの2重量%の過硫酸カリウムの脱イオン水溶液をフラスコに加え、それに続いて、BPOが加えられている乳化されたモノマー混合物をおよそ30分かけて蠕動ポンプを使用して連続的に加えることにより、BPO含有シェルをコアの上に成長させる(ステージ3)。反応は、温度が80℃に戻るまで、全てのモノマー混合物を加えた後さらに15分間進行する。
【0138】
次いで、得られたアクリルポリマーエマルションを40℃未満に冷却し、150ミクロンのふるいに通して濾過する。
アクリルポリマーエマルションは、固形分が38%wt、還元粘度が2.1dl/g、ブルックフィールド粘度が50cPs、残存ジベンゾイルペルオキシドが1.98%wt、及びz平均エマルション粒径が186nmである。
【0139】
実施例3
50%wt固形分のアクリルポリマーエマルションの調製
1200グラムの代りに600グラムの脱イオン水を5リットル丸底フラスコに加える以外、実施例2の手順を繰り返した。
【0140】
得られたアクリルポリマーエマルションは、固形分が50%wt、還元粘度が1.6dl/g、ブルックフィールド粘度が540cPs、残存ジベンゾイルペルオキシドが2.10%wt、及びz平均エマルション粒径が205nmである。
【0141】
実施例4
54%wt固形分のアクリルポリマーエマルションの調製
1200グラムの代りに400グラムの脱イオン水を5リットル丸底フラスコに加える以外、実施例2の手順を繰り返した。
【0142】
得られたアクリルポリマーエマルションは、固形分が55%wt、還元粘度が1.49dl/g、ブルックフィールド粘度が7920cPs、残存ジベンゾイルペルオキシドが2.20%wt、及びz平均エマルション粒径が191nmである。
【0143】
実施例5、7から12、及び19は、実施例2から4で調製したアクリルポリマーエマルションとアクリルビーズポリマーとの混合による、第一液の調製を説明する。それに続いて、第一液と第二液との混合により硬化性組成物を調製する。
【0144】
実施例5
38%wt固形分のアクリルポリマーエマルションを使用した第一液の調製
電動スターラーモーター及びステンレススチールパダルスターラーを備えた250mlポリプロピレンビーカーに、70gのポリ(メチルメタクリラート)(PMMA)ビーズポリマー(Colacryl(登録商標)B866、Lucite International Speciality Polymers & Resins Limitedから入手、RVは2.4dl/g、Mwは421,200、残存ジベンゾイルペルオキシドは2.94%wt、平均粒径は39ミクロン)を加える。撹拌を100rpmで始め、30gの実施例2の38%wt固形分のアクリルポリマーエマルションを60から90秒かけて加える。次いで、スターラーのスピードを800〜1000rpmに上げ、均一な液体混合物が得られるまで混合をさらに3から5分続ける。液体混合物のブルックフィールド粘度は7,000cPsである。液体混合物は安定であり、23℃で数日保存した後で分離は全くない。
【0145】
実施例6
硬化性組成物の調製
17.2gの実施例5の第一液を、60ppmヒドロキノン(HQ)阻害剤及び1%N,N−ジメチル−パラ−トルイジン(DMPT)加速剤(第二液)を含む7mlのMMAモノマーと混合することにより、硬化性組成物を調製する。利用する混合比率は、14gのポリマー(等価乾燥重量(equivalent dry weight))対7mlのモノマー液体である。混合の前に、2成分を、23℃のインキュベーター中で少なくとも10時間平衡化させる。要求される量の第一液をポリプロピレンビーカーに入れ、それに続いて第二液を入れる。第二液を第一液に加えた点で時間測定を始める。次いで、金属のスパチュラを使用して手作業の混合を30秒間実施し、その後材料に覆いをして放置する。定期的に、材料を初期の混合物の粘稠度(initial mix consistency)に関して評価し、ドウタイム及び硬化時間を決定する。硬化する塊の中心に埋め込んだ熱電対の使用により、発熱温度も測定する。
【0146】
以下の比較例は、従来技術に対する本発明の利益を示すために調製した。
比較例1
実施例5に記載のPMMAビーズポリマー(Colacryl(登録商標)B866)を、アクリルポリマーエマルションを全く加えずにそれ自体で使用する。14gのこのPMMAビーズポリマーを、60ppmヒドロキノン(HQ)阻害剤及び1%N,N−ジメチル−パラ−トルイジン(DMPT)加速剤を含む7mlのMMAモノマーと混合し、上述の通り試験する。
比較例2
使用前に実施例2のアクリルポリマーエマルションを噴霧乾燥してパウダーを形成する以外、この実施例は実施例6と等しい。PMMAビーズポリマー(Colacryl(登録商標)B866)と実施例2の噴霧乾燥した38%wt固形分エマルションの配合比率は、86/14%wtである。次いで、ビーズポリマーと微孔性アクリルポリマーパウダーのこのブレンド14gを、60ppmヒドロキノン(HQ)阻害剤及び1%N,N−ジメチル−パラ−トルイジン(DMPT)加速剤を含む7mlのMMAモノマーと混合し、上述の通り試験する。
【0147】
表1は結果を記録するものである。実施例6が、比較例1と比べて、低い発熱温度並びに短いドウタイム及び硬化時間を示すことがわかる。さらに、実施例6は、比較例2に類似のドウタイムを示すが、硬化時間は長く、固体に凝固するまで硬化性組成物を施すための、より長い操作時間を与える。実施例6は、比較例2より低い発熱温度も示す。
【0148】
【表1】
【0149】
実施例7から12
50%wt固形分のアクリルポリマーエマルションを使用する第一液の調製
電動スターラーモーター及びステンレススチールパダルスターラーを備えた250mlポリプロピレンビーカーに、ポリ(メチルメタクリラート)(PMMA)ビーズポリマー(Colacryl(登録商標)B866、Lucite International
Speciality Polymers & Resins Limitedから入手、RVは2.4dl/g、Mwは421,200、残存ジベンゾイルペルオキシドは2.94%wt、平均粒径は39ミクロン)を加える。撹拌を100rpmで始め、実施例3の50%wt固形分のアクリルポリマーエマルションを、60から90秒かけて加える。次いで、スターラースピードを800〜1000rpmに上げ、均一な液体混合物が得られるまで、混合をさらに3から5分続ける。各実施例に使用したPMMAビーズポリマー及びアクリルポリマーエマルションの量を、各液体混合物のブルックフィールド粘度と共に表3に示す。液体混合物は全て安定で、23℃で数日保存した後で分離は全くない。
【0150】
【表2】
【0151】
実施例13から18
硬化性組成物の調製
硬化性組成物は、実施例7から12の第一液を、60ppmのヒドロキノン(HQ)阻害剤及び1%N,N−ジメチル−パラ−トルイジン(DMPT)加速剤を含むMMAモノマー(第二液)と混合することにより調製する。利用する混合比率は、14.0gのポリマー(等価乾燥重量)対7.0mlのモノマー液体である。混合の前に、2成分を、23℃のインキュベーター中で少なくとも10時間平衡化させる。要求される量の第一液をポリプロピレンビーカーに入れ、それに続いて第二液を入れる。第二液を第一液に加えた点で時間測定を始める。次いで、手作業の混合を、金属のスパチュラを使用して30秒間実施し、その後材料に覆いをして放置する。定期的に、材料を初期の混合物の粘稠度に関して評価し、ドウタイム及び硬化時間を決定する。硬化する塊の中心に埋め込んだ熱電対の使用により、発熱温度も測定する。表3は結果を記録するものである。
【0152】
実施例18から13の順でアクリルポリマーエマルションの量が増加するにつれて、発熱温度、ドウタイム、及び硬化時間が全て減少することがわかる。さらに、実施例13から18は、比較例1に比べて低い発熱温度並びに短いドウタイム及び硬化時間を示し、従来技術に勝る本発明の利点を表している。
【0153】
【表3】
【0154】
実施例19
54%wt固形分のアクリルポリマーエマルションを使用する第一液の調製
電動スターラーモーター及びステンレススチールパダルスターラーを備えた250mlポリプロピレンビーカーに、65gのポリ(メチルメタクリラート)(PMMA)ビーズポリマー(Colacryl(登録商標)B866、Lucite International Speciality Polymers & Resins Limitedから入手、RVは2.4dl/g、Mwは421,200、残存ジベンゾイルペルオキシドは2.94%wt、平均粒径は39ミクロン)を加える。撹拌を100rpmで始め、実施例4の54%wt固形分のアクリルポリマーエマルション35gを、60から90秒かけて加える。次いで、スターラースピードを800〜1000rpmに上げ、均一な液体混合物が得られるまで、混合をさらに3から5分続ける。液体混合物は安定で、23℃で数日保存した後で分離は全くない。
【0155】
実施例20
硬化性組成物の調製
硬化性組成物は、16.7gの実施例19の第一液を、60ppmのヒドロキノン(HQ)阻害剤及び1%N,N−ジメチル−パラ−トルイジン(DMPT)加速剤を含むMMAモノマー(第二液)7mlと混合することにより調製する。利用する混合比率は、14.0gのポリマー(等価乾燥重量)対7.0mlのモノマー液体である。混合の前に、2成分を、23℃のインキュベーター中で少なくとも10時間平衡化させる。要求される量の第一液をポリプロピレンビーカーに入れ、それに続いて第二液を入れる。第二液を第一
液に加えた点で時間測定を始める。次いで、手作業の混合を、金属のスパチュラを使用して30秒間実施し、その後材料に覆いをして放置する。定期的に、材料を初期の混合物の粘稠度に関して評価し、ドウタイム及び硬化時間を決定する。硬化する塊の中心に埋め込んだ熱電対の使用により、発熱温度も測定する。表4は結果を記録するものである。
【0156】
【表4】
【0157】
実施例20が、比較例1と比べて低い発熱温度並びに短いドウタイム及び硬化時間を示すことがわかる。
【0158】
実施例21及び22
溶解したポリマーを含む第二液を使用する硬化性組成物の調製
PMMAホモポリマーのMMAモノマー中の10%wtシロップを、10gのPMMAビーズポリマー(残存開始剤がなく、分子量Mwは426,700ダルトン、還元粘度は2.8dl/g)を、89gのMMAモノマー(60ppmヒドロキノン(HQ)阻害剤で安定化)及び1.0gのN,N−ジメチル−パラ−トルイジン(DMPT)加速剤の混合物に溶解させて調製する。シロップのブルックフィールド粘度は220cPである。
【0159】
実施例7及び8の第一液を、この第二液と混合して、硬化性組成物を調製する。利用される混合比率は、第一液中の14.0gのポリマー(等価乾燥重量)対7.0gの第二液である。混合前、成分を、23℃のインキュベーター中で少なくとも10時間平衡化する。要求される量の第一液をポリプロピレンビーカーに入れ、それに続いて第二液を入れる。第二液の第一液への混合の点で時間測定を開始する。次いで、手作業の混合を、金属のスパチュラを使用して30秒間実施し、その後材料に覆いをして放置する。定期的に、材料を初期の混合物の粘稠度に関して評価し、ドウタイム及び硬化時間を決定する。硬化する塊の中心に埋め込んだ熱電対の使用により、発熱温度も測定する。表5は結果を記録するものである。
【0160】
【表5】
【0161】
実施例21及び22が、比較例1と比べてはるかに低い発熱温度並びに短いドウタイム及び硬化時間を示すことがわかる。MMAモノマー液体中にいくらかのPMMAを事前溶解させ、第二液としてシロップを形成することの効果は、MMAモノマー液体中に事前溶解されたPMMAがない等価な実施例、実施例13及び14と比べて、発熱温度のさらなる低下並びにドウタイム及び硬化時間の短縮をうみだすものである。
【0162】
実施例23から41
様々な機械的性質を持つ硬化性組成物の調製
以下の実施例は、第一液の組成及び第一液と第二液の比率の変更が、生じる硬化性組成物の機械的性質に与える影響を示すものである。曲げ強度及び曲げ弾性率は、ISO 1567:1997に従って三点曲げ試験により決定した。圧縮強度は、ISO 5833:2002に従って決定した。
【0163】
実施例23から41の第一液は、実施例10から12に類似な方法で調製したが、硫酸バリウムの添加を伴う実施例は例外とした。これらの特別な実施例では(実施例30、38、及び39)、要求される量の硫酸バリウムを、PMMAビーズポリマー及びアクリルポリマーエマルションを含む混合物に、60〜90秒かけて、100rpmで撹拌しながら加えて、スターラーのスピードを800〜1000romに上げて、均一な液体混合物が得られるまでさらに3〜5分混合する。実施例31、32、39、及び40以外の実施例23から41の第二液として使用されたPMMAホモポリマーのMMAモノマー中の16%wtシロップを、16gのPMMAビーズポリマー(残存開始剤無し、分子量Mwは426,700ダルトン、還元粘度は2.8dl/g)を、82.4gのMMAモノマー(60ppmヒドロキノン(HQ)阻害剤により安定化)及び1.6gのN,N−ジメチル−パラ−トルイジン(DMPT)加速剤の混合物に溶解させることにより調製する。シロップのブルックフィールド粘度は4,250cPである。
【0164】
実施例31、32、39、及び40の第二液として使用される、ポリ(MMA−co−DMAEMA)コポリマーのMMAモノマー中の20%wtシロップは、20gのポリ(MMA−co−DMAEMA)コポリマー(残存開始剤無し)を、78.4gのMMAモノマー(60ppmヒドロキノン(HQ)阻害剤により安定化)及び1.6gのN,N−ジメチル−パラ−トルイジン(DMPT)加速剤に溶解することにより調製する。実施例
31及び39では、コポリマーは、還元粘度が0.50dl/gであり、分子量Mwが69,900ダルトンである。シロップのブルックフィールド粘度は175cPである。実施例32及び40では、コポリマーは、還元粘度が1.52dl/gであり、分子量Mwが260,000ダルトンである。シロップのブルックフィールド粘度は4,420cPである。
【0165】
実施例40及び41の第二液は、硫酸バリウムの添加を含む。これらは、最初に、スターラーを備えたガラスフラスコ中で、関連するPMMAホモポリマー又はポリ(MMA−co−DMAEMA)コポリマーをMMAモノマー(60ppmヒドロキノン(HQ)阻害剤により安定化)及びN,N−ジメチル−パラ−トルイジン(DMPT)加速剤に溶解させることにより調製する。次いで、要求される量の硫酸バリウムを、500〜600rpmで撹拌しながら加え、1時間放置して、硫酸バリウムをモノマー/ポリマーシロップに分散させる。
【0166】
実施例23から41の硬化性組成物は、実施例21及び22に記載の通り、2成分を手により混合することにより調製する。利用する混合比率は、第一液中の14.0gのポリマー(等価乾燥重量)対7.0gの第二液又は第一液中の14.0gのポリマー(等価乾燥重量)対14.0gの第二液のいずれかである。
【0167】
表6は、各成分の組成、利用する混合比率、各硬化性組成物から得られた機械的性質についての詳細を与える。実施例23から28の機械的性質の大きさが、利用するアクリルポリマーエマルションの相対量と共に変動することがわかる。これは、最終的な硬化した硬化性組成物に多孔性を生み出す、アクリルポリマーエマルション中の水の存在から生じるものである。アクリルポリマーエマルションの比率の増加による多孔性の増加は、水が全く添加されていない比較例3に比べた機械的性質の低下をもたらす。この多孔性により、硬化性組成物の機械的性質を、例えば、椎骨の機械的性質に合致させることができ、それにより、周囲の自然の骨よりもモジュラスが高い人工材料の埋め込みに関連する周知の問題が回避される。しかし、多孔性のレベルを調整し、機械的性質を変えて、例えば、ISO 5833:2002の要件を満たす機械的性質を達成するように、配合物を変えることもできる。
【0168】
【表6】
【0169】
【表7】
【0170】
【表8】
【0171】
【表9】
【0172】
【表10】
【0173】
【表11】
【0174】
【表12】
【0175】
【表13】
【0176】
実施例42から45は、50%wt固形分及び様々なz平均粒径のアクリルエマルションの調製を説明する。
【0177】
実施例42
Z平均粒径が195nmの約50%wt固形分のアクリルポリマーエマルションの調製
600グラムの脱イオン水を、窒素入口、冷却管、及び電動式ステンレススチールパドルスターラーを備えた5リットル丸底ガラスフラスコに加える。毎分200回転(rpm)で撹拌しながら、水浴により水を80℃に加熱する。窒素流を、液体の表面上のフラスコの蒸気の空間に通す。
【0178】
1000グラムのメチルメタクリラート、0.5グラムの1−ドデカンチオール、5.0グラムのラウリル硫酸ナトリウム、及び300グラムの脱イオン水からなる、乳化されたモノマー混合物を調製する。この混合物を、添加の前及び添加の間60分間撹拌して、乳化した状態を保つ。
【0179】
水の温度を80℃にして、100グラムの乳化したモノマー混合物をフラスコに加え、それに続いて10ミリリットルの2重量%の過硫酸カリウムの脱イオン水溶液を加えることにより、ポリマーシード(ステージ1)を調製する。わずかな発熱の後、温度が80℃に戻るまで、反応は30分間進行する。残りの乳化したモノマー混合物に、1gのラウリル硫酸ナトリウムを撹拌しながら加える。
【0180】
次いで、最初に、10ミリリットルの2重量%の過硫酸カリウムの脱イオン水溶液をフラスコに加え、それに続いて300グラムの乳化されたモノマー混合物をおよそ30分かけて、蠕動ポンプを利用して連続的に添加することにより、コアをポリマーシード粒子上に成長させる(ステージ2)。反応は、温度が80℃に戻るまで、モノマー混合物の添加の完了後さらに15分間進行する。次いで、この工程を2回繰り返す。
【0181】
35.0グラムの75%活性ジベンゾイルペルオキシド(BPO)を、残りの乳化されたモノマー混合物に、45分間撹拌しながら溶解させる。
次いで、最初に、10ミリリットルの2重量%の過硫酸カリウムの脱イオン水溶液をフラスコに加え、それに続いてBPOが加えられている乳化されたモノマー混合物を、およそ20分かけて、蠕動ポンプを使用して連続的に加えることにより、BPO含有シェルをコアの上に成長させる(ステージ3)。温度が80℃に戻るまで、モノマー混合物を全て加えた後さらに15分間反応が進行する。
【0182】
次いで、得られたアクリルポリマーエマルションを40℃未満に冷却し、150ミクロンのふるいを通して濾過する。
得られたアクリルポリマーエマルションは、固形分が50%wt、還元粘度が2.3dl/g、ブルックフィールド粘度が287cPs、残存ジベンゾイルペルオキシドが2.50%wt、且つz平均エマルション粒径が195nmである。
【0183】
実施例43
z平均粒径が306nmの約50%wt固形分のアクリルポリマーエマルションの調製
600グラムの脱イオン水を、窒素入口、冷却管、及び電動式ステンレススチールパドルスターラーを備えた5リットル丸底ガラスフラスコに加える。毎分200回転(rpm)で撹拌しながら、水浴により水を80℃に加熱する。窒素流を、液体の表面上のフラスコの蒸気の空間に通す。
【0184】
1000グラムのメチルメタクリラート、0.5グラムの1−ドデカンチオール、5.0グラムのラウリル硫酸ナトリウム、及び300グラムの脱イオン水からなる、乳化されたモノマー混合物を調製する。この混合物を、添加の前及び添加の間60分間撹拌して、乳化した状態を保つ。
【0185】
水の温度を80℃にして、40グラムの乳化されたモノマー混合物をフラスコに加え、それに続いて20ミリリットルの2重量%の過硫酸カリウムの脱イオン水溶液を加えることにより、ポリマーシード(ステージ1)を調製する。わずかな発熱の後、温度が80℃に戻るまで、反応は30分間進行する。
【0186】
次いで、最初に、10ミリリットルの2重量%の過硫酸カリウムの脱イオン水溶液をフラスコに加え、それに続いて300グラムの乳化されたモノマー混合物をおよそ30分かけて、蠕動ポンプを利用して連続的に添加することにより、コアをポリマーシード粒子上に成長させる(ステージ2)。反応は、温度が80℃に戻るまで、モノマー混合物の添加の完了後さらに15分間進行する。次いで、この工程を2回繰り返す。
【0187】
35.0グラムの75%活性ジベンゾイルペルオキシド(BPO)を、残りの乳化されたモノマー混合物に、45分間撹拌しながら溶解させる。
次いで、最初に、10ミリリットルの2重量%の過硫酸カリウムの脱イオン水溶液をフラスコに加え、それに続いてBPOが加えられている乳化されたモノマー混合物を、およそ20分かけて、蠕動ポンプを使用して連続的に加えることにより、BPO含有シェルをコアの上に成長させる(ステージ3)。温度が80℃に戻るまで、モノマー混合物を全て加えた後さらに15分間反応が進行する。
【0188】
次いで、得られたアクリルポリマーエマルションを40℃未満に冷却し、150ミクロンのふるいを通して濾過する。
得られたアクリルポリマーエマルションは、固形分が49.4%wt、還元粘度が2.0dl/g、ブルックフィールド粘度が62cPs、残存ジベンゾイルペルオキシドが2.30%wt、且つz平均エマルション粒径が306nmである。
【0189】
実施例44
z平均粒径が582nmの約50%wt固形分のアクリルポリマーエマルションの調製
600グラムの脱イオン水を、窒素入口、冷却管、及び電動式ステンレススチールパドルスターラーを備えた5リットル丸底ガラスフラスコに加える。毎分200回転(rpm)で撹拌しながら、水浴により水を80℃に加熱する。窒素流を、液体の表面上のフラスコの蒸気の空間に通す。
【0190】
980グラムのメチルメタクリラート、0.5グラムの1−ドデカンチオール、5.0グラムのラウリル硫酸ナトリウム、及び300グラムの脱イオン水からなる、乳化されたモノマー混合物を調製する。この混合物を、添加の前及び添加の間60分間撹拌して、乳化した状態を保つ。
【0191】
水の温度を80℃にして、20グラムのメチルメタクリラートをフラスコに加え、それに続いて0.3グラムの過硫酸カリウムの10ミリリットルの脱イオン水中の溶液を加えて、80℃で1時間反応させることにより、ポリマーシード(ステージ1)を調製する。
【0192】
次いで、最初に、10ミリリットルの2重量%の過硫酸カリウムの脱イオン水溶液をフラスコに加え、それに続いて300グラムの乳化されたモノマー混合物をおよそ30分かけて、蠕動ポンプを利用して連続的に添加することにより、コアをポリマーシード粒子上に成長させる(ステージ2)。反応は、温度が80℃に戻るまで、モノマー混合物の添加の完了後さらに15分間進行する。次いで、この工程を2回繰り返す。
【0193】
35.0グラムの75%活性ジベンゾイルペルオキシド(BPO)を、残りの乳化されたモノマー混合物に、45分間撹拌しながら溶解させる。
次いで、最初に、10ミリリットルの2重量%の過硫酸カリウムの脱イオン水溶液をフラスコに加え、それに続いてBPOが加えられている乳化されたモノマー混合物を、およそ20分かけて、蠕動ポンプを使用して連続的に加えることにより、BPO含有シェルをコアの上に成長させる(ステージ3)。温度が80℃に戻るまで、モノマー混合物を全て加えた後さらに15分間反応が進行する。
【0194】
次いで、得られたアクリルポリマーエマルションを40℃未満に冷却し、150ミクロンのふるいを通して濾過する。
得られたアクリルポリマーエマルションは、固形分が48.0%wt、還元粘度が1.94dl/g、ブルックフィールド粘度が21cPs、残存ジベンゾイルペルオキシドが2.28%wt、且つz平均エマルション粒径が582nmである。
【0195】
実施例45
z平均粒径が694nmの約50%wt固形分のアクリルポリマーエマルションの調製
600グラムの脱イオン水を、窒素入口、冷却管、及び電動式ステンレススチールパドルスターラーを備えた5リットル丸底ガラスフラスコに加える。毎分200回転(rpm)で撹拌しながら、水浴により水を80℃に加熱する。窒素流を、液体の表面上のフラスコの蒸気の空間に通す。
【0196】
985グラムのメチルメタクリラート、0.5グラムの1−ドデカンチオール、3.0グラムのラウリル硫酸ナトリウム、及び300グラムの脱イオン水からなる、乳化されたモノマー混合物を調製する。この混合物を、添加の前及び添加の間60分間撹拌して、乳化した状態を保つ。
【0197】
水の温度を80℃にして、15グラムのメチルメタクリラートをフラスコに加え、それに続いて0.3グラムの過硫酸カリウムの10ミリリットルの脱イオン水中の溶液を加えて、80℃で1時間反応させることにより、ポリマーシード(ステージ1)を調製する。
【0198】
次いで、最初に、10ミリリットルの2重量%の過硫酸カリウムの脱イオン水溶液をフラスコに加え、それに続いて300グラムの乳化されたモノマー混合物をおよそ30分かけて、蠕動ポンプを利用して連続的に添加することにより、コアをポリマーシード粒子上に成長させる(ステージ2)。反応は、温度が80℃に戻るまで、モノマー混合物の添加の完了後さらに15分間進行する。次いで、この工程を2回繰り返す。
【0199】
35.0グラムの75%活性ジベンゾイルペルオキシド(BPO)を、残りの乳化されたモノマー混合物に、45分間撹拌しながら溶解させる。
次いで、最初に、10ミリリットルの2重量%の過硫酸カリウムの脱イオン水溶液をフラスコに加え、それに続いてBPOが加えられている乳化されたモノマー混合物を、およそ20分かけて、蠕動ポンプを使用して連続的に加えることにより、BPO含有シェルをコアの上に成長させる(ステージ3)。温度が80℃に戻るまで、モノマー混合物を全て加えた後さらに15分間反応が進行する。
【0200】
次いで、得られたアクリルポリマーエマルションを40℃未満に冷却し、150ミクロンのふるいを通して濾過する。
得られたアクリルポリマーエマルションは、固形分が48.0%wt、還元粘度が1.90dl/g、ブルックフィールド粘度が19cPs、残存ジベンゾイルペルオキシドが2.60%wt、且つz平均エマルション粒径が694nmである。
【0201】
実施例46
実施例42から45の結果は、粒径の増加と共に、アクリルポリマーエマルションのブ
ルックフィールド粘度が低下することを示す。実施例42から44のエマルションを等量(それぞれ100g)とることにより、アクリルポリマーエマルション混合物を調製した。ブルックフィールド粘度は40cPsであった。表7は、実施例42、43、及び44の単一のエマルションと、エマルションの混合物、実施例46の粘度比較を示す。
【0202】
【表14】
【0203】
実施例47から65
実施例47から65は、実施例42、43、44、又は46のアクリルポリマーエマルションを、単一のアクリルビーズポリマー(実施例48から50、52から54、及び56から58)とアクリルビーズポリマーの混合物(実施例47、51、55、及び59から65)のいずれかと混合することによる、第一液の調製を含む。アクリルビーズポリマー(表8に詳細に記載)を、異なる平均粒径を持つPMMAホモポリマー((i)、(ii)、及び(iii)と称する)又はコポリマー、すなわちポリ(メチルメタクリラート−co−2−エチルヘキシルアクリラート)(ポリ(MMA−co−2EHA))((iv)、(v)、及び(vi)と称する)、及びポリ(メチルメタクリラート−co−スチレン)(ポリ(MMA−co−sty)((vii)、(viii)、及び(ix)と称する)のいずれかから選択する。実施例47から61の第一液の調製方法は以下の通りである。
【0204】
電動スターラーモーター及びステンレススチールパドルスターラーを備えた250mlのポリプロピレンビーカーに、70gのアクリルビーズポリマーを加える。100rpmで撹拌を始め、30gのアクリルポリマーエマルションを、60から90秒かけて加える。次いで、スターラースピードを600〜1000rpmに上げ、均一な液体混合物が得られるまで、混合をさらに3から5分続ける。アクリルビーズポリマーの混合物を使用する場合、好適な容器中で等しい重量の各ビーズポリマーを乾式混合することにより、混合物を最初に調製する。
【0205】
アクリルビーズポリマー対アクリルポリマーエマルションの比率が70g:30gから76g:24gに変わる以外、実施例62から65に同じ調製方法を利用する。
調製後、各第一液のブルックフィールド粘度を測定して、表9から14に記録した。
【0206】
シリンジ又はコーキングガンの区画に接続しているスタティックミキサーによる混合及
び供給挙動の評価は以下の通り実施した。実施例47から65の第一液及び実施例78の第二液を、Nordson EFDから入手可能な50ml 1:1 vol:volポリプロピレンカートリッジの別々な区画に充填した。Nordson EFD Series 190スパイラルミキサー(混合エレメント11、直径6.35mm、長さ8.6cm)をカートリッジの1対の区画に取り付け、内容物を均質な流れとして、スパイラルミキサーを通して、平らな表面に検査のために供給した。入口から出口までのスタティックミキサーを通る各混合物の流れの程度を記録した。生じた押出物の特性も評価し、連続的な流れの全実施例において、押出物が元の形状を保ったことが分かった。結果を表9から14に報告する。
【0207】
表9から14の結果は、第一液のブルックフィールド粘度をどのように低下できるかを示す。以下の観察をすることができる。
1.実施例47を実施例48から50と、又は実施例51を実施例52から54と、又は実施例55を実施例56から58と比較すると、アクリルポリマーエマルションをアクリルビーズポリマーの混合物と混合して調製した第一液が、単一の種類のアクリルビーズポリマーを含む第一液より低いブルックフィールド粘度を示すことが示される。
2.実施例47、51、及び55を比較すると、第一液のブルックフィールド粘度が、アクリルポリマーエマルションの粒径の増加と共に低下することが示される。
3.実施例61より、アクリルポリマーエマルションの混合物をアクリルビーズポリマーの混合物と合わせて調製した第一液が、実施例47及び51の第一液より低いブルックフィールド粘度を示すことが示される。
【0208】
実施例62から65(表14)は、第一液のブルックフィールド粘度が、アクリルビーズとアクリルポリマーエマルションの比率の増加と共にどのように増加するかを示すものである。
【0209】
【表15】
【0210】
【表16】
【0211】
【表17】
【0212】
【表18】
【0213】
【表19】
【0214】
【表20】
【0215】
【表21】
【0216】
【0217】
【表22】
【0218】
【0219】
実施例66から77
これらの実施例は、あるアクリルポリマーエマルションと、異なる粒径を持つ異なる比率のアクリルビーズポリマーの混合物との混合から得られる第一液に対する粘度低下効果を示す。結果を表15に表す。2系列の実験を行った。1つの系列は、異なる平均粒径のPMMAホモポリマー((i)、(ii)、及び(iii)と称する)に基づいていた。第2の系列は、異なる平均粒径のポリ(MMA−co−2EHA)コポリマーに基づいていた((iv)、(v)、及び(vi)と称する)に基づいていた。ポリマー(i)から(vi)の詳細を表8に与える。各第一液の全般的な調製方法は以下の通りである。
【0220】
電動スターラーモーター及びステンレススチールパドルスターラーを備えた250mlのポリプロピレンビーカーに、70gのアクリルビーズポリマー混合物を加える。各実施例に使用したアクリルビーズポリマー混合物の組成を表15に列挙する。100rpmで撹拌を始め、実施例44のアクリルポリマーエマルション30gを60から90秒かけて加える。次いで、スターラースピードを600〜1000rpmに上げ、均一な液体混合物が得られるまで混合をさらに3から5分続ける。
【0221】
実施例66から72を実施例56から58と比べると、異なる平均粒径の2種以上のPMMAビーズポリマーの混合物を使用すると、単一のPMMAビーズポリマーのみ使用する場合よりも低いブルックフィールド粘度を示す第一液を生み出すことが示される。実施例73から77は、異なる平均粒径の2種以上のポリ(MMA−co−2EHA)ビーズコポリマーの混合物を使用する場合に類似の粘度低下効果が生み出されることを示す。
【0222】
実施例78
硬化性組成物の製造に使用するための、溶解されたポリマー及びX線不透明剤(opacifier)を含む第二液の調製
第二液を以下の通り調製する。最初に、10gのポリ(MMA−co−DMAEMA)コポリマー(残存開始剤無し、RV=0.50dl/g)及び10gのより高分子量のポリ(MMA−co−DMAEMA)コポリマー(残存開始剤無し、RV=1.52dl/g)を、79.2gのMMAモノマー(60ppmヒドロキノン(HQ)阻害剤により安定化)及び0.8gのN,N−ジメチル−パラ−トルイジン(DMPT)加速剤の混合物に溶解させる。次いで、このモノマー/ポリマーシロップ60gを、スターラーを備えたガラスフラスコに移し、40gの硫酸バリウムを、500〜600rpmで撹拌しながら、ゆっくりと2分かけて加える。撹拌を5時間続けて、硫酸バリウムをモノマー/ポリマーシロップに分散させる。得られた第二液のブルックフィールド粘度は、2,734cPsである。
【0223】
実施例79
実施例60の第一液及び実施例78の第二液を使用する硬化性組成物の調製
実施例60の第一液及び実施例78の第二液の組み合わせからの硬化性組成物の調製を以下の通り記載する。混合前に、2成分を、23℃のインキュベーター中で少なくとも10時間平衡化させる。14.0gの60の第一液をポリプロピレンビーカーに入れ、それに続いて14.0gの実施例78の第二液を入れる。次いで、金属のスパチュラを使用して、手作業の混合を23℃で30秒実施し、その後材料に覆いをして放置する。定期的に、材料を初期の混合物の粘稠度に関して評価する。ドウタイムが達成されると、こねた混合物をビーカーから取り出し、手作業でさらに30秒間混合する。機械的試験の検体の調製には、23℃にあらかじめ調整した金属の型にドウを詰め、圧力をかけて(2バール)硬化させる。硬化時間の30分後に検体を型から出す。表16は結果を記録するものである。
【0224】
【表23】
【0225】
実施例79の硬化性組成物が、ISO 5833:2002−“Implants for surgery−Acrylic resin cements”の最低の要件、すなわち圧縮強度≧70MPa、曲げ弾性率≧1.8GPa、及び曲げ強度≧50MPaを超える機械的性質を示すことがわかる。
【0226】
本願に関連して本明細書と同時に又は本明細書より前に提出され、本明細書と共に縦覧に供されている全ての論文及び文書に関心が集められ、そのような論文及び文書の全ての内容は引用により本明細書に組み込まれる。
【0227】
本明細書(添付の特許請求の範囲、要約、及び図面を含む)に開示されている特徴の全て及び/又はそのように開示されている任意の方法又はプロセスの工程の全ては、どのような組み合わせでも組み合わせられるが、そのような特徴及び/又は工程の少なくとも一部が相互排他的である組み合わせは除かれる。
【0228】
本明細書(添付の特許請求の範囲、要約、及び図面を含む)に開示されている各特徴は、明白に他のように述べられていない限り、同じ、等価な、又は類似な目的を果たす代替的な特徴に代えることができる。そのため、明白に他のように述べられていない限り、開示される各特徴は、包括的な系列の等価又は類似な特徴の一例に過ぎない。
【0229】
本発明は、上記の実施形態の詳細に制限されない。本発明は、本明細書(添付の特許請求の範囲、要約、及び図面を含む)に開示されている特徴の任意の新規な一つ若しくは任意の新規な組み合わせにわたり、又はそのように開示されている任意の方法若しくはプロセスの工程の任意の新規な一つ若しくは任意の新規な組み合わせにわたる。