(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6201042
(24)【登録日】2017年9月1日
(45)【発行日】2017年9月20日
(54)【発明の名称】送電線のクランプ
(51)【国際特許分類】
H02G 7/05 20060101AFI20170911BHJP
【FI】
H02G7/05 060
【請求項の数】12
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2016-517766(P2016-517766)
(86)(22)【出願日】2014年5月8日
(86)【国際出願番号】JP2014062399
(87)【国際公開番号】WO2015170389
(87)【国際公開日】20151112
【審査請求日】2017年3月13日
(73)【特許権者】
【識別番号】000003528
【氏名又は名称】東京製綱株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100108855
【弁理士】
【氏名又は名称】蔵田 昌俊
(74)【代理人】
【識別番号】100103034
【弁理士】
【氏名又は名称】野河 信久
(74)【代理人】
【識別番号】100153051
【弁理士】
【氏名又は名称】河野 直樹
(72)【発明者】
【氏名】蜂須賀 俊次
(72)【発明者】
【氏名】木村 浩
(72)【発明者】
【氏名】眞鍋 太輔
【審査官】
和田 財太
(56)【参考文献】
【文献】
米国特許第6015953(US,A)
【文献】
米国特許出願公開第2011/0297441(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02G 7/05
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
炭素繊維を撚り線状に成形した炭素繊維心材と、この炭素繊維心材の外周側に設けられ、導電用金属線を撚合わせて形成された撚合わせ送電線とを有する送電線の端部を把持する送電線のクランプにおいて、
前記炭素繊維心材と、撚合わせ送電線との間に介挿された筒状の金属緩衝材と、
この金属緩衝材の内周面側に配置され、アルミナ又は炭化ケイ素のうち少なくとも一方を含む増摩材と、
前記撚合わせ送電線の外周側に設けられ、前記撚合わせ送電線、前記金属緩衝材、前記炭素繊維心材を圧縮固定する筒状のスリーブとを備えていることを特徴とする送電線のクランプ。
【請求項2】
炭素繊維を撚り線状に成形した炭素繊維心材と、この炭素繊維心材の外周側に設けられ、導電用金属線を撚合わせて形成された撚合わせ送電線とを有する送電線の端部を把持する送電線のクランプにおいて、
前記炭素繊維の外周面に、この炭素繊維に生じる引張力と交差する方向に巻き付けられたラッピング繊維と、
前記炭素繊維心材と、撚合わせ送電線との間に介挿され、内周面に前記ラッピング繊維に対応する凹凸が形成された筒状の金属緩衝材と、
前記撚合わせ送電線の外周側に設けられ、前記撚合わせ送電線、前記金属緩衝材、前記炭素繊維心材を圧縮固定する筒状のスリーブとを備えていることを特徴とする送電線のクランプ。
【請求項3】
炭素繊維を撚り線状に成形した炭素繊維心材と、この炭素繊維心材の外周側に設けられ、導電用金属線を撚合わせて形成された撚合わせ送電線とを有する送電線の端部を把持する送電線のクランプにおいて、
前記炭素繊維の外周面に、この炭素繊維に生じる引張力と交差する方向に巻き付けられたラッピング繊維と、
前記炭素繊維心材と、撚合わせ送電線との間に介挿され、内周面に前記ラッピング繊維に対応する凹凸が形成された筒状の金属緩衝材と、
この金属緩衝材の内周面側に配置され、アルミナ又は炭化ケイ素のうち少なくとも一方を含む増摩材と、
前記撚合わせ送電線の外周側に設けられ、前記撚合わせ送電線、前記金属緩衝材、前記炭素繊維心材を圧縮固定する筒状のスリーブとを備えていることを特徴とする送電線のクランプ。
【請求項4】
炭素繊維を撚り線状に成形した炭素繊維心材と、この炭素繊維心材の外周側に設けられ、導電用金属線を撚合わせて形成された撚合わせ送電線とを有する送電線の端部を把持する送電線のクランプにおいて、
前記炭素繊維心材と、撚合わせ送電線との間に介挿された筒状で錫材を含む金属緩衝材と、
この金属緩衝材の内周面側に配置され、アルミナ又は炭化ケイ素のうち少なくとも一方を含む増摩材と、
前記撚合わせ送電線の外周側に設けられ、前記撚合わせ送電線、前記金属緩衝材、前記炭素繊維心材を圧縮固定する筒状のスリーブとを備えていることを特徴とする送電線のクランプ。
【請求項5】
炭素繊維を撚り線状に成形した炭素繊維心材と、この炭素繊維心材の外周側に設けられ、導電用金属線を撚合わせて形成された撚合わせ送電線とを有する送電線の端部を把持する送電線のクランプにおいて、
前記炭素繊維の外周面に、この炭素繊維に生じる引張力と交差する方向に巻き付けられたラッピング繊維と、
前記炭素繊維心材と、撚合わせ送電線との間に介挿され、内周面に前記ラッピング繊維に対応する凹凸が形成された筒状で錫材を含む金属緩衝材と、
前記撚合わせ送電線の外周側に設けられ、前記撚合わせ送電線、前記金属緩衝材、前記炭素繊維心材を圧縮固定する筒状のスリーブとを備えていることを特徴とする送電線のクランプ。
【請求項6】
炭素繊維を撚り線状に成形した炭素繊維心材と、この炭素繊維心材の外周側に設けられ、導電用金属線を撚合わせて形成された撚合わせ送電線とを有する送電線の端部を把持する送電線のクランプにおいて、
前記炭素繊維の外周面に、この炭素繊維に生じる引張力と交差する方向に巻き付けられたラッピング繊維と、
前記炭素繊維心材と、撚合わせ送電線との間に介挿され、内周面に前記ラッピング繊維に対応する凹凸が形成された筒状で錫材を含む金属緩衝材と、
この金属緩衝材の内周面側に配置され、アルミナ又は炭化ケイ素のうち少なくとも一方を含む増摩材と、
前記撚合わせ送電線の外周側に設けられ、前記撚合わせ送電線、前記金属緩衝材、前記炭素繊維心材を圧縮固定する筒状のスリーブとを備えていることを特徴とする送電線のクランプ。
【請求項7】
炭素繊維を撚り線状に成形した炭素繊維心材と、この炭素繊維心材の外周側に設けられ、導電用金属線を撚合わせて形成された撚合わせ送電線とを有する送電線の端部を把持する送電線のクランプにおいて、
内部で前記炭素繊維心材を保持する筒状の鋼スリーブと、
前記炭素繊維心材と、前記鋼スリーブとの間に介挿された筒状の金属緩衝材と、
この金属緩衝材の内周面側に配置され、アルミナ又は炭化ケイ素のうち少なくとも一方を含む増摩材と、
前記撚合わせ送電線の外周側に設けられ、前記鋼スリーブ、前記撚合わせ送電線、前記金属緩衝材、前記炭素繊維心材を圧縮固定する筒状のスリーブとを備えていることを特徴とする送電線のクランプ。
【請求項8】
炭素繊維を撚り線状に成形した炭素繊維心材と、この炭素繊維心材の外周側に設けられ、導電用金属線を撚合わせて形成された撚合わせ送電線とを有する送電線の端部を把持する送電線のクランプにおいて、
前記炭素繊維の外周面に、この炭素繊維に生じる引張力と交差する方向に巻き付けられたラッピング繊維と、
内部で前記炭素繊維心材を保持する筒状の鋼スリーブと、
前記炭素繊維心材と、前記鋼スリーブとの間に介挿され、内周面に前記ラッピング繊維に対応する凹凸が形成された筒状の金属緩衝材と、
前記撚合わせ送電線の外周側に設けられ、前記鋼スリーブ、前記撚合わせ送電線、前記金属緩衝材、前記炭素繊維心材を圧縮固定する筒状のスリーブとを備えていることを特徴とする送電線のクランプ。
【請求項9】
炭素繊維を撚り線状に成形した炭素繊維心材と、この炭素繊維心材の外周側に設けられ、導電用金属線を撚合わせて形成された撚合わせ送電線とを有する送電線の端部を把持する送電線のクランプにおいて、
前記炭素繊維の外周面に、この炭素繊維に生じる引張力と交差する方向に巻き付けられたラッピング繊維と、
内部で前記炭素繊維心材を保持する筒状の鋼スリーブと、
前記炭素繊維心材と、前記鋼スリーブとの間に介挿され、内周面に前記ラッピング繊維に対応する凹凸が形成された筒状の金属緩衝材と、
この金属緩衝材の内周面側に配置され、アルミナ又は炭化ケイ素のうち少なくとも一方を含む増摩材と、
前記撚合わせ送電線の外周側に設けられ、前記鋼スリーブ、前記撚合わせ送電線、前記金属緩衝材、前記炭素繊維心材を圧縮固定する筒状のスリーブとを備えていることを特徴とする送電線のクランプ。
【請求項10】
炭素繊維を撚り線状に成形した炭素繊維心材と、この炭素繊維心材の外周側に設けられ、導電用金属線を撚合わせて形成された撚合わせ送電線とを有する送電線の端部を把持する送電線のクランプにおいて、
内部で前記炭素繊維心材を保持する筒状の鋼スリーブと、
前記炭素繊維心材と、前記鋼スリーブとの間に介挿された筒状で錫材を含む金属緩衝材と、
この金属緩衝材の内周面側に配置され、アルミナ又は炭化ケイ素のうち少なくとも一方を含む増摩材と、
前記撚合わせ送電線の外周側に設けられ、前記鋼スリーブ、前記撚合わせ送電線、前記金属緩衝材、前記炭素繊維心材を圧縮固定する筒状のスリーブとを備えていることを特徴とする送電線のクランプ。
【請求項11】
炭素繊維を撚り線状に成形した炭素繊維心材と、この炭素繊維心材の外周側に設けられ、導電用金属線を撚合わせて形成された撚合わせ送電線とを有する送電線の端部を把持する送電線のクランプにおいて、
内部で前記炭素繊維心材を保持する筒状の鋼スリーブと、
前記炭素繊維の外周面に、この炭素繊維に生じる引張力と交差する方向に巻き付けられたラッピング繊維と、
前記炭素繊維心材と、前記鋼スリーブとの間に介挿され、内周面に前記ラッピング繊維に対応する凹凸が形成された筒状で錫材を含む金属緩衝材と、
前記撚合わせ送電線の外周側に設けられ、前記鋼スリーブ、前記撚合わせ送電線、前記金属緩衝材、前記炭素繊維心材を圧縮固定する筒状のスリーブとを備えていることを特徴とする送電線のクランプ。
【請求項12】
炭素繊維を撚り線状に成形した炭素繊維心材と、この炭素繊維心材の外周側に設けられ、導電用金属線を撚合わせて形成された撚合わせ送電線とを有する送電線の端部を把持する送電線のクランプにおいて、
内部で前記炭素繊維心材を保持する筒状の鋼スリーブと、
前記炭素繊維の外周面に、この炭素繊維に生じる引張力と交差する方向に巻き付けられたラッピング繊維と、
前記炭素繊維心材と、前記鋼スリーブとの間に介挿され、内周面に前記ラッピング繊維に対応する凹凸が形成された筒状で錫材を含む金属緩衝材と、
この金属緩衝材の内周面側に配置され、アルミナ又は炭化ケイ素のうち少なくとも一方を含む増摩材と、
前記撚合わせ送電線の外周側に設けられ、前記鋼スリーブ、前記撚合わせ送電線、前記金属緩衝材、前記炭素繊維心材を圧縮固定する筒状のスリーブとを備えていることを特徴とする送電線のクランプ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、架空送電線等の送電線の端末定着に用いる送電線のクランプに関する。
【背景技術】
【0002】
遠方に電力を送電する手法として、架空線形式の架空送電線(以下、「送電線」と称する。)が用いられている。この送電線は、架線張力の多くを負担する心材と、心材の周りに複数の層に撚り合わせたアルミ線とで構成されている。アルミ線は電気良導体で、かつ、軽量であるため架空線形式の送電線として好適である。心材としては鋼撚り線が使用されているが、軽量で高強度、低線膨張等の特性を有する炭素繊維材が用いられることもある。炭素繊維材を用いることで、鋼撚り線を用いた場合に比べ、送電線全体の重量軽減、引張強さ増加、低線膨張化、クリープ性向上が図られ、大容量化、低地度化、長スパン化等のメリットが得られる。
【0003】
炭素繊維材を心材にした送電線を架設・緊張するには送電線を把持、固定するためのクランプ装置が必要となる。炭素繊維材は高い引張強度や弾性係数を有するが、せん断に弱い性質があり、鋼心の送電線をクランプするときに通常に用いられる強い圧縮をすると炭素繊維材がつぶれて損傷し、期待した高い把持力を発揮できずに、低張力で心材が破壊してしまう。このため、次のような対策が考えられている。
【0004】
段剥ぎをすることなく、撚り合わせ送電線と心材との間に、不織布の巻回層や金属ダイカスト層等の軟質あるいは硬質の緩衝層を設けることで、金属スリーブの圧縮力が緩衝層により吸収または遮断され、心材に加わる力を低減することで炭素繊維の損傷を防ぐ技術が知られている(例えば、日本国特開平7−250419号公報)。
【0005】
亜鉛あるいはアルミニウムの金属を主成分とし、内周面に心材の外周に係合する係合面を形成した一対の半円筒体からなる緩衝スリーブを心材と導電用金属線の撚り合わせ層との間に配置し、外側の金属スリーブを圧縮固定してクランプを構成している。一対の半円筒体からなる緩衝スリーブは予め工場で製造しておくため、現場では露出させた心材に係合させるだけであり作業時間を短縮できる(例えば、日本国特開平8−237840号公報)。
【発明の開示】
【0006】
上述したクランプ装置では、次のような問題があった。すなわち、緩衝層を設ける方法では、不織布の巻回層を成型するには現場で多くの時間を必要とする不都合があった。また、ダイカストによる金属製の緩衝層を形成するには、大型のダイカスト成型機械装置を送電線架設の作業現場に持ち込まなければならず、山間部で実施するには困難があった。
【0007】
緩衝スリーブを予め工場で製造して用いる方法では、ダイカスト成型機械装置を送電線架設の作業現場に持ち込むことは不要になる。しかしながら、近年、炭素繊維心材は技術改良が図られ、従来と同じ直径であっても引張強さが30〜40%程度高くなっている。すなわち、心材の引張強さが大きくなることに伴い、送電線の引張強さも同時に高まり、これにより、同じサイズのクランプであっても把持力をさらに高める必要があった。さらに、炭素繊維は軽量、高強度、低線膨張であるため、特に長スパンでかつ重量の大きくなる太径の大容量送電線に用いられる場合、炭素繊維心材の直径も大きくなる。
【0008】
直径が太くなると金属スリーブの食い込み量が相対的に低下し、また、表面積も引張強さに比べて相対的に狭くなるため、結果的に把持力が不足し、クランプから炭素繊維心材が抜ける虞があった。
【0009】
そこで本発明は、簡単な構成で十分で安定した把持力を有するクランプ装置を提供することを目的としている。
【0010】
炭素繊維を撚り線状に成形した炭素繊維心材と、この炭素繊維心材の外周側に設けられ、導電用金属線を撚合わせて形成された撚合わせ送電線とを有する送電線の端部を把持する送電線のクランプにおいて、前記炭素繊維の外周面に、この炭素繊維に生じる引張力と交差する方向に巻き付けられたラッピング繊維と、前記炭素繊維心材と、撚合わせ送電線との間に介挿された筒状の金属緩衝材と、この金属緩衝材の内周面側に配置され、アルミナ又は炭化ケイ素のうち少なくとも一方を含む増摩材と、前記撚合わせ送電線の外周側に設けられ、前記撚合わせ送電線、前記金属緩衝材、前記炭素繊維心材を圧縮固定する筒状のスリーブとを備えていることを特徴とする。
【0011】
炭素繊維を撚り線状に成形した炭素繊維心材と、この炭素繊維心材の外周側に設けられ、導電用金属線を撚合わせて形成された撚合わせ送電線とを有する送電線の端部を把持する送電線のクランプにおいて、前記炭素繊維の外周面に、この炭素繊維に生じる引張力と交差する方向に巻き付けられたラッピング繊維と、前記炭素繊維心材と、撚合わせ送電線との間に介挿された筒状で錫材を含む金属緩衝材と、この金属緩衝材の内周面側に配置され、アルミナ又は炭化ケイ素のうち少なくとも一方を含む増摩材と、前記撚合わせ送電線の外周側に設けられ、前記撚合わせ送電線、前記金属緩衝材、前記炭素繊維心材を圧縮固定する筒状のスリーブとを備えていることを特徴とする。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】
図1は、本発明の第1の実施の形態に係る電線のクランプを示す縦断面図である。
【
図2】
図2は、同電線のクランプを
図1中A−A線で切断して矢印方向に見た横断面図である。
【
図3】
図3は、同電線のクランプに組み込まれた金属緩衝材を示す横断面図である。
【
図4】
図4は、同電線のクランプに組み込まれた金属緩衝材及び炭素繊維心材を示す斜視図である。
【
図5】
図5は、同金属緩衝材の変形例を示す横断面図である。
【
図6】
図6は、同金属緩衝材及び炭素繊維心材の変形例を示す斜視図である。
【
図7】
図7は、本発明の第2の実施の形態に係る電線のクランプを示す縦断面図である。
【
図8】
図8は、同電線のクランプを
図7中B−B線で切断して矢印方向に見た横断面図である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下、添付図面にもとづき、本発明の実施形態について説明する。
【0014】
図1は本発明の第1の実施の形態に係る1ボディタイプの電線のクランプ10を示す縦断面図、
図2は電線のクランプ10を
図1中A−A線で切断して矢印方向に見た横断面図、
図3は電線のクランプ10に組み込まれた金属緩衝材50を示す横断面図、
図4は、電線のクランプ10に組み込まれた金属緩衝材50及び炭素繊維心材30を示す斜視図である。説明中において、軸方向とは、素線31の延びる方向を示し、素線31に生じる引張力と同一の方向である。送電線のクランプは送電線の端部を固定するものであり、架線張力を保持するために要求される機械的把持力と、送電線を流れる電気を通す電導性の両方が要求される。
【0015】
電線のクランプ10は、有底筒状のアルミスリーブ20と、このアルミスリーブ20に同軸的に配置された炭素繊維心材30と、この炭素繊維心材30の外周に設けられたアルミ撚り線(導電性金属線)40と、炭素繊維心材30とアルミ撚り線40との間に配置された筒状の金属緩衝材50とを備えている。金属緩衝材50の内周面にはさらに硬質粒子(増摩材)60が設けられている。硬質粒子60は、例えば、直径0.01〜0.5mmのアルミナ又は炭化ケイ素である。
【0016】
アルミスリーブ20には、このアルミスリーブ20の底部21側に緊張力接続部22と、この緊張力接続部22に取り付けられた電気接続部23とを備えている。アルミスリーブ20は、把持力と電導性の両方を分担する。
【0017】
炭素繊維心材30は、素線31を1×7等の撚り線に成型した連続線条体であって(
図4参照)、各素線31は炭素繊維とマトリクス樹脂からなる連続繊維複合材から成っている。炭素繊維心材30は軽量、高強度、耐食性、耐熱性、低線膨張、低クリープ性等、鋼撚り線にはない優れた機械特性がある。
【0018】
各素線31には内層の保護や表面の摩擦力を高めるためにポリエステル等の有機繊維によるラッピング繊維32が緻密に巻き付け被覆してある(
図4参照)。巻き付け方向は、素線31に生じる引張力と交差する方向に巻き付けられている。なお、ラッピング繊維32の巻き付けが緻密なものに限られることなく、繊維幅に対し巻き付けピッチが大きく、巻き付けられていない部分と巻き付けられた部分が交互になっている、いわゆる縞模様状の被覆がされているものであってもよい。
【0019】
炭素繊維心材30の素線31への緻密なラッピング繊維32の巻き付け被覆は、表面に微細な凹凸を形成するので、炭素繊維心材30の表面の摩擦係数を高め、電線のクランプ10の把持力を高める効果がある。
【0020】
アルミ撚り線40は、アルミニウム線またはアルミニウム合金線を撚合せて形成されている。
【0021】
金属緩衝材50の材料は、亜鉛合金、アルミ合金、錫合金、マグネシウム合金等の合金、または、アルミニウムである。これらは融点が550℃以下であるため比較的成型しやすく、また弾性係数が120GPa以下と小さいため、圧縮により変形し、炭素繊維心材30を適度に締める効果がある。銅合金を使用することもできる。これらの金属を使用した金属緩衝材50の成型は鋳込成型やダイカスト成型や熱間鍛造等で行う。なお、錫合金は特に融点が低く、また濡れ性が良いため、型に入れた時の追従性が高い。
【0022】
鋳込成型では、まず、炭素繊維心材30を心型として、炭素繊維心材30よりも大きめのパイプに入れ、その中に樹脂等を充填、硬化することで円柱に成型する。取り出した円柱を縦に2つ割、あるいは3つ割にして、炭素繊維心材30を取り除くことで、炭素繊維心材30の外周形状を内面に転写した、円柱状の2つ割、あるいは3つ割のマスタ型を得る。このマスタ型を、連結材の入った砂、石膏、耐熱シリコン樹脂等を使った鋳型材に埋め込み、固化したのち、割って、マスタ型を取り外す。このようにして得られた中空鋳型に溶融金属を流し込み、冷却固化した後に脱型して、成型体を取り出す。
【0023】
ダイカスト成型に使う金型は、例えば、3次元計測器等で炭素繊維心材30の形状を読み込み、機械切削等により2つ以上に分割できる金型を作る。これに溶融金属を注入後、直ちに冷却固化し、金型を開いて成型体を取り出す。
【0024】
熱間鍛造もダイカスト成型で使う金型と同様の製法で分割できる金型を製作し、予熱した金属を金型で挟み、プレスすることで、成型体を得る。
【0025】
上記のようにして得られた成型体は炭素繊維心材30を心型としているため、いずれも炭素繊維心材30の外周に係合する係合面(内周面にラッピング繊維32に対応する凹凸)を有する縦方向に2分割、ないし3分割された円筒体からなる金属緩衝材50の本体を形成する。
【0026】
硬質粒子60は、金属緩衝材50の内周面に均一に貼り付けるのが肝要である。貼り付ける方法として、あらかじめ樹脂性接着材を薄く金属緩衝材50の内周面に塗布し、それに硬質粒子60を吹き付ける方法がよい。あるいは、鋳型の内表面にあらかじめ硬質粒子60を配置しておき、それに溶融金属を流し込んでもよい。また、合金にあらかじめ硬質粒子60を練り混ぜておき、ダイカスト成型してもよい。成型後に硬質粒子60が金属内に埋め込まれたときには、塩酸や硝酸等で成型体の表面をわずかに溶かすことで、表面に硬質粒子60が現れる。このようにして、金属からなる緩衝材本体が作られ、さらにその内表面に硬質粒子が取り付けられて、緩衝材が作られる。
【0027】
硬質粒子60はメッシュサイズの異なる2つのふるいを使って、粒度をそろえることができる。巻き付け被覆の代表的厚さは0.1〜0.3mm程度であり、この場合には、使用する硬質粒子径は0.1〜0.5mm程度がよい。すなわち、硬質粒子径は巻き付け被覆厚と同等か、これよりも若干大きいので、巻き付け被覆の下層にある、炭素繊維とマトリクス樹脂のコンポジット層(炭素繊維心材30の表面)に硬質粒子60が食い込む。この食い込み量は僅かわずかであるので、コンポジット層、すなわち、炭素繊維心材30の強度を負担する部分を損傷させることなく、アンカー効果を発揮する。
【0028】
このように構成された電線のクランプ10は、次のようにして、送電線端部を固定する。すなわち、送電線端部のアルミ撚り線40の撚りを解いて、炭素繊維心材30を露出させる。露出した炭素繊維心材30に2つ割、ないし3つ割の金属緩衝材50を取り付ける。アルミ線を巻き戻し、それをアルミスリーブ20に挿入し、2つ割ダイス装置により圧縮加工する。圧縮は、六角型仕上がりの2つ割りダイスを、油圧力でダイスを相互に合わせる方向にプレスすることで行われる。但し、六角に限らず、ダイス形状を変えて、円型や楕円型断面仕上がりであってもよい。スリーブはダイスよりも長いのが通常なので、圧縮位置を少しずつずらしながら、複数回の圧縮をすることで、スリーブ全体を圧縮する。このようにして、1ボディクランプは、アルミスリーブのみで炭素繊維心材30とアルミ撚り線40の両方を把持する構造であり、断面は中心から、炭素繊維心材30、金属緩衝材50、アルミスリーブ20になる。
【0029】
このような電線のクランプ10を用いて送電線を把持する場合、次のような効果がある。すなわち、金属緩衝材50の弾性係数は材質により異なるが全体として概ね50〜120GPaの範囲にある。炭素繊維心材30の弾性係数は代表的に150GPa、アルミ撚り線40の弾性係数は代表的に80GPaである。すなわち、金属緩衝材50の弾性係数はいずれも炭素繊維心材30よりも小さいので、炭素繊維心材30と比べ変形しやすく、圧縮によって金属緩衝材50がやや変形し、炭素繊維心材30の形状に隈なく密着し覆うことができる。
【0030】
さらに硬質粒子60を金属緩衝材50と炭素繊維心材30の間に介在させることで、硬質粒子60は金属緩衝材50と炭素繊維心材30の間にアンカーとしての役目を果たし、金属緩衝材50がより確実に炭素繊維心材30を把持する。
【0031】
ここに、金属緩衝材50、アルミ撚り線40、炭素繊維心材30が相互に強固に密着し、かつ硬質粒子60の介在によるアンカー効果によって、炭素繊維心材30が抜けることなく、送電線全体のグリップ力を発揮させることができる。さらに、金属緩衝材50の材質として、錫合金を用いた場合は、炭素繊維心材30への食いつきが良好で、アンカー効果を増大させることができる。
【0032】
硬質粒子60は摩擦を高めるために効果的な寸法にしてあるので、炭素繊維心材30を損傷させる虞はない。
【0033】
したがって、炭素繊維心材30の外周面に係合する内周面を形成し、割り型となった金属緩衝材50であって、内周表面に、多数の硬質粒子60を備えた金属緩衝材50を、炭素繊維心材30と導送電線撚り合わせ層との間に介在させ、最外層のアルミスリーブ20を圧縮させることで、炭素繊維心材30の損傷を生じることなく、炭素繊維心材30と金属緩衝材50の摩擦力を高め、結果として、炭素繊維心材30・金属緩衝材50・アルミ撚り線40・アルミスリーブ20を一体化することで、送電線の高い緊張力での把持を実現することが可能となる。なお、ラッピング繊維32が設けられている場合には、硬質粒子60を用いなくてもよい。
【0034】
したがって、本実施の形態に係る電線のクランプ10は、簡単な構成で十分で安定した把持力を有する。
【0035】
図5は金属緩衝材50の変形例に係る金属緩衝材50Aを示す横断面図である。上述した金属緩衝材50は2つ割であったが、金属緩衝材50Aは3つ割である。この場合であっても同様の効果を得ることができる。
【0036】
図6は金属緩衝材50及び炭素繊維心材30の変形例に係る金属緩衝材50A及び炭素繊維心材30Aを示す斜視図である。すなわち、素線31にラッピング繊維32等の被覆が全く無い炭素繊維心材にも適用できる。
【0037】
この他、素線31にテープ状のものが被覆されたもの、被覆が密ではなく疎に巻かれていて素線31表面に被覆の有る部分と無い部分が混在しまだら模様となっているもの、さらに、撚り線状でなく、複数の素線31を使い、4本組、6本組や8本組等の組み紐構造にした炭素繊維心材にも適用できる。このような場合でも、金属緩衝材50Aの内面に設置した硬質粒子60(図省略)が炭素繊維心材30Aと金属緩衝材50Aの両方にアンカーの作用をするので、炭素繊維心材30Aと金属緩衝材50Aが一体化する。被覆の無い炭素繊維心材30Aの場合には、0.01〜0.1mmのように硬質粒子径を小さく調整することで、炭素繊維心材の強度を負担する部分を損傷させることなく、アンカー効果を発揮することができる。
【0038】
図7は本発明の第2の実施の形態に係る2ボディタイプの電線のクランプ10Aを示す縦断面図、
図8は電線のクランプ10Aを
図7中B−B線で切断して矢印方向に見た横断面図である。なお、
図7,8において、
図1〜
図6と同一機能部分には同一符号を付し、その詳細な説明は省略する。2ボディタイプは構造が複雑であるが、炭素繊維心材30とアルミ撚り線40の把持を別々に把持するので、クランプの設計自由度が大きい。1ボディタイプは構造がシンプルであるが、一度の圧縮で、心材とアルミ線の両方を把持する必要があるため、圧縮率の微調整が必要とされる。
【0039】
電線のクランプ10Aは、有底筒状のアルミスリーブ20と、このアルミスリーブ20に同軸的に配置された炭素繊維心材30と、この炭素繊維心材30の外周に設けられたアルミ撚り線(導電性金属線)40と、炭素繊維心材30とアルミ撚り線40との間に配置された筒状の金属緩衝材50と、有底筒状の鋼スリーブ70と、炭素繊維心材30と鋼スリーブ70との間に配置された筒状の金属緩衝材50とを備えている。金属緩衝材50の内周面にはさらに硬質粒子60が設けられている。硬質粒子60は、例えば、直径0.01〜0.5mmのアルミナ又は炭化ケイ素である。
【0040】
アルミスリーブ20には、このアルミスリーブ20の底部21側に緊張力接続部22と、この緊張力接続部22に取り付けられた電気接続部23とを備えている。
【0041】
アルミ撚り線40の先端側は、段剥ぎされて、炭素繊維心材30が露出されており、この露出された炭素繊維心材30は、鋼スリーブ70に挿入され、硬化性樹脂により接着固定されている。なお、把持力は鋼スリーブ70が分担し、電導性はアルミスリーブ20が分担する。
【0042】
このように構成された電線のクランプ10Aは、次のようにして、送電線端部を固定する。すなわち、全体に被せることになるアルミスリーブ20を送電線に通しておく。送電線端部の、鋼スリーブ70に挿入する長さ相当位置で、アルミ撚り線40を切断し、炭素繊維心材30を露出させ、いわゆる段付きの状態にする。露出した炭素繊維心材30に2つ割の金属緩衝材50を取り付け、それを鋼スリーブ70に挿入し、鋼スリーブ70を圧縮する。ついでアルミ撚り線40の撚りを解いて、炭素繊維心材30を露出させ、そこに金属緩衝材50を取り付け、さらにその上にアルミ撚り線40を巻き戻し、次いで、先に通しておいたアルミスリーブ20を引き戻し、それを2つ割ダイス装置により圧縮加工する。圧縮形状は上記と同様に六角が普通であるが、円型や楕円型断面仕上がりであってもよい。
【0043】
鋼スリーブ70の端部には緊張力接続部72と、中間部にはアルミスリーブ20との機械的接合のための表面凹凸71がある。表面凹凸71は切削や鍛造等によりあらかじめ加工してある。
【0044】
アルミスリーブ20には全長を通して貫通穴があり、端部には電気接続部23がある。
【0045】
上述のように、段剥ぎして露出した炭素繊維心材30は、介在させた金属緩衝材50とともに、鋼スリーブ70の圧縮によって一体化している。また巻き戻したアルミ撚り線40の部分では、炭素繊維心材30、金属緩衝材50、アルミ撚り線40、アルミスリーブ20が、アルミスリーブ20の圧縮によって一体化している。さらに鋼スリーブ70の表面凹凸71の位置においてもアルミスリーブ20を圧縮するので、アルミスリーブ20の内側が鋼スリーブの表面凹凸71の形状をたどって変形し、相互にかみ込むことにより、鋼スリーブ70とアルミスリーブ20が一体化する。
【0046】
このようにして2ボディクランプでは、1ボディタイプと同様のアルミスリーブ20の圧縮による炭素繊維心30とアルミ撚り線40の把持に加え、鋼スリーブ70の圧縮による炭素繊維心材の把持を併用し、これらが一体化した構造をしている。そして、それぞれの部分において金属緩衝材50を介在させているため、高い把持力を発揮することができる。
【0047】
アルミスリーブ20や鋼スリーブ70の断面は筒状が代表的である。六角ダイスを使った圧縮により、アルミスリーブ20や鋼スリーブ70の外形状は略六角形状になる。圧縮の強さは心材径、アルミ線径、緩衝材外径、圧縮ダイス径等により調整可能であり、圧縮力を調整して圧縮の強さを調整してもよい。
【0048】
このようにして、圧縮加工により外部から内部に圧力が伝達し、内部の各層が相互に密着する。仕上がりとしては、その断面形状でみると、外形は六角であり、内部は緻密に充填した構造となっている。すなわち、アルミ撚り線40は略六角状になり相互に密接し、アルミ撚り線40間の隙間は無くなり中実な構造となる。さらに、金属緩衝材50はもともと炭素繊維心材30の外層内周面に係合する係合面を形成した一対の半円筒体からなるため、概ね炭素繊維心材30との間の隙間が無いのであるが、適度な柔らかさがあるため、圧縮により変形し、その結果、硬質粒子60が炭素繊維心材30と金属緩衝材50の間に適度に食い込むことができる。
【0049】
炭素繊維心材30は金属緩衝材40と密に固着し、両者の間には硬質粒子60が介在している。この硬質粒子60が炭素繊維心材30と金属緩衝材40のそれぞれに食い込みアンカー効果を発揮することで、高い把持力を発揮する。
【0050】
炭素繊維心材30が高強度になった結果、従来と同じ径でも、従来より高い把持力が要求される場合や、炭素繊維心の径が大きくなり、より大荷重での把持力が要求される場合に、本考案は特に効果を発揮する。また、炭素繊維材を構成する各素線が、繊維巻き付け被覆が無いものであっても、緩衝材内面に設置する硬質粒子サイズを調整することで、高い把持力を実現する。
【0051】
このような電線のクランプ10Aを用いて送電線を把持する場合であっても、上述した電線のクランプ10Aと同様の効果が得られる。
【0052】
なお、本発明は前記実施の形態に限定されるものではない。各部材の寸法や形状は一例であり、これらに限られるものではない。この他、本発明の要旨を逸脱しない範囲で種々変形実施可能であるのは勿論である。
【産業上の利用可能性】
【0053】
簡単な構成で十分で安定した把持力を有する電線のクランプが得られる。