特許第6201054号(P6201054)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6201054モノアセチルジアシルグリセロール化合物を有効成分として含有する血液癌または癌転移抑制用組成物
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6201054
(24)【登録日】2017年9月1日
(45)【発行日】2017年9月20日
(54)【発明の名称】モノアセチルジアシルグリセロール化合物を有効成分として含有する血液癌または癌転移抑制用組成物
(51)【国際特許分類】
   A61K 31/231 20060101AFI20170911BHJP
   A61P 35/00 20060101ALI20170911BHJP
   A23L 33/115 20160101ALI20170911BHJP
   A61K 31/23 20060101ALN20170911BHJP
   C12N 5/09 20100101ALN20170911BHJP
【FI】
   A61K31/231
   A61P35/00
   A23L33/115
   !A61K31/23
   !C12N5/09ZNA
【請求項の数】12
【全頁数】16
(21)【出願番号】特願2016-536021(P2016-536021)
(86)(22)【出願日】2014年8月18日
(65)【公表番号】特表2016-528277(P2016-528277A)
(43)【公表日】2016年9月15日
(86)【国際出願番号】KR2014007620
(87)【国際公開番号】WO2015026112
(87)【国際公開日】20150226
【審査請求日】2016年4月4日
(31)【優先権主張番号】10-2013-0098185
(32)【優先日】2013年8月19日
(33)【優先権主張国】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】514070834
【氏名又は名称】エンジーケム ライフサイエンシーズ コーポレーション
【氏名又は名称原語表記】ENZYCHEM LIFESCIENCES CORPORATION
(73)【特許権者】
【識別番号】505448855
【氏名又は名称】コリア リサーチ インスティテュート オブ バイオサイエンス アンド バイオテクノロジー
【氏名又は名称原語表記】KOREA RESEARCH INSTITUTE OF BIOSCIENCE AND BIOTECHNOLOGY
(74)【代理人】
【識別番号】110000729
【氏名又は名称】特許業務法人 ユニアス国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】キム、チェ ファ
(72)【発明者】
【氏名】オ、セ リャン
(72)【発明者】
【氏名】アン、キョン ソプ
(72)【発明者】
【氏名】カン、ホ ポム
(72)【発明者】
【氏名】シン、チェ ミン
(72)【発明者】
【氏名】コ、ヨン ウン
(72)【発明者】
【氏名】イ、テ ソク
(72)【発明者】
【氏名】キム、ミョン ファン
(72)【発明者】
【氏名】カン、チョン ク
(72)【発明者】
【氏名】ハン、ヨン−ヘ
(72)【発明者】
【氏名】ソン、キ−ヨン
【審査官】 砂原 一公
(56)【参考文献】
【文献】 特表2007−534681(JP,A)
【文献】 KIM, Myung-Hwan et al.,EC-18, a Synthetic Monoacetyldiacylglyceride, Inhibits Hematogenous Metastasis of KIGB-5 Cancer Cell in Hamster Model,Journal of Korean Medical Science,2009年,Vol.24, No.3,p.474-480
【文献】 辻井弘忠ほか,エゾジカ幼角抽出エキスのin vitroにおけるガン細胞増殖抑制効果,信州大学農学部AFC報告,2004年 3月,第2号,p.83-86
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
CAplus/REGISTRY/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記の化学式1で表示されるモノアセチルジアシルグリセロール化合物を有効成分として含有する、抗血液癌用組成物であって、
該血液癌は、リンパ腫、急性白血病、慢性白血病、および多発性骨髄腫からなる群より選択される1種である、抗血液癌用組成物。
【化1】
上記の式において、R1およびR2はそれぞれ炭素数14ないし20の脂肪酸基である。
【請求項2】
前記R1およびR2はそれぞれパルミトイル(palmitoyl)、オレオイル(oleoyl)、リノレオイル(linoleoyl)、リノレノイル(linolenoyl)、ステアロイル(stearoyl)、ミリストイル(myristoyl)、アラキドノイル(arachidonoyl)で構成される群から選択されることを特徴とする請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
前記R1およびR2の組み合わせ(R1/R2)はオレオイル/パルミトイル、パルミトイル/オレオイル、パルミトイル/リノレオイル、パルミトイル/リノレノイル、パルミトイル/アラキドノイル、パルミトイル/ステアロイル、パルミトイル/パルミトイル、オレオイル/ステアロイル、リノレオイル/パルミトイル、リノレオイル/ステアロイル、ステアロイル/リノレオイル、ステアロイル/オレオイル、ミリストイル/リノレオイル、ミリストイル/オレオイルで構成される群から選択されることを特徴とする請求項1または2に記載の組成物。
【請求項4】
前記モノアセチルジアシルグリセロール化合物は下記の化学式2で表示される化合物であることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の組成物。
【化2】
【請求項5】
前記モノアセチルジアシルグリセロール化合物は鹿茸から分離したことを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項6】
前記モノアセチルジアシルグリセロール化合物は、IL−4の分泌を抑制することを特徴とする、請求項1〜5のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項7】
前記モノアセチルジアシルグリセロール化合物は、STAT−6の活性を抑制することを特徴とする、請求項1〜6のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項8】
前記組成物は、化学式1で表示されるモノアセチルジアシルグリセロール化合物を0.001ないし50重量%含むことを特徴とする、請求項1〜7のいずれか1項に記載の組成物:
【化3】
上記の式において、R1およびR2はそれぞれ炭素数14ないし20の脂肪酸基である。
【請求項9】
下記の化学式1で表示されるモノアセチルジアシルグリセロール化合物を有効成分として含有することを特徴とする、抗血液癌用健康機能食品組成物であって、
該血液癌は、リンパ腫、急性白血病、慢性白血病、および多発性骨髄腫からなる群より選択される1種である、抗血液癌用健康機能食品組成物。
【化4】
上記の式において、R1およびR2はそれぞれ炭素数14ないし20の脂肪酸基である。
【請求項10】
前記R1およびR2はそれぞれパルミトイル(palmitoyl)、オレオイル(oleoyl)、リノレオイル(linoleoyl)、リノレノイル(linolenoyl)、ステアロイル(stearoyl)、ミリストイル(myristoyl)、アラキドノイル(arachidonoyl)で構成される群から選択されることを特徴とする、請求項9に記載の組成物。
【請求項11】
前記R1およびR2の組み合わせ(R1/R2)はオレオイル/パルミトイル、パルミトイル/オレオイル、パルミトイル/リノレオイル、パルミトイル/リノレノイル、パルミトイル/アラキドノイル、パルミトイル/ステアロイル、パルミトイル/パルミトイル、オレオイル/ステアロイル、リノレオイル/パルミトイル、リノレオイル/ステアロイル、ステアロイル/リノレオイル、ステアロイル/オレオイル、ミリストイル/リノレオイル、ミリストイル/オレオイルで構成される群から選択されることを特徴とする、請求項9または10に記載の組成物。
【請求項12】
請求項1乃至8のうちいずれか一項に記載の組成物を非人間個体に投与する段階を含むことを特徴とする、血液癌の予防または治療方法であって、該血液癌は、リンパ腫、急性白血病、慢性白血病、および多発性骨髄腫からなる群より選択される1種である、方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、モノアセチルジアシルグリセロール化合物を有効成分として含有する血液癌または癌転移抑制用組成物及びこれの用途に関する。
【背景技術】
【0002】
癌とは多様な原因によって、細胞の分裂と死滅間の均衡が破壊されて継続的な分裂と増殖によって発生した非正常的な細胞の集団を意味し、腫瘍とも言う。一般的に臓器、白血球、骨、リンパ節などを含めた100余種類以上の身体の色んな部分で発病し、周辺組織に浸潤する現象及び他の器官に移動する転移を通じて深刻な症状に発展する。癌発生の原因としては、化学物質、ウイルス、細菌、電離放射線などの環境的または外的要因と先天性遺伝子変異などの内的要因をあげることができる。この中慢性炎症と癌発生の間の連関性が最近現れながら、これを立証するたくさんの資料が報告されている。感染と慢性炎症が全体癌発生原因の25%を占め、慢性炎症と活性酸素種関連疾患を持った患者で癌の発病危険がはるかに高いと知られている。炎症反応を調節する多様な媒介因子らつまり、サイトカインと自由ラジカル、成長因子などが腫瘍抑制遺伝子の突然変異や、DNAメチル化、転写後変形などと同じ遺伝的、後生遺伝的変化を誘導することにより、正常的な細胞恒常性を維持するのに必須的な経路を変化させて、さらに癌を発生、進展させることと推測されている。
【0003】
初期に発見された癌の場合手術、放射線治療、化学的療法などの治療法があるがその副作用もまた大きな問題として現れて、末期癌や転移された癌の場合特別な治療法なく時限付人生で生を締め切りする状況である。これによって、癌治療のための新しい接近方法で、毒性が低い天然物から副作用が少なくて効能が優れた抗癌剤または癌転移抑制剤を開発するための研究が進行されている。このような天然物由来の治療法では化学的療法と放射線治療などでよく観察される造血、免疫機能抑制などの副作用が大きく減少することが見出されている。
【0004】
EC−18はモノアセチルジグリセリド(monoaetyldiglyceride)の一種であって、鹿茸から分離された。EC−18は cecal−ligation−puncture(CLP)を利用した敗血症動物モデルで 動物の生存率を大きく増加させたことが開示されており、GLP(Good Laboratory Practice)毒性試験でも毒性がないことが示された。しかし、このようなEC−18を含むモノアセチルジアシルグリセロール化合物が血液癌または癌転移においていかなる効果を現すかについてはまだ開示されていない。これに本発明者らは、天然物由来あるいは新たな化合物の血液癌または癌転移抑制剤を開発するために鋭意努力した結果、モノアセチルジアシルグリセロール化合物がIL-4の分泌を抑制し、STAT-6の活性もまた抑制し癌組織の成長のためな微細環境を破壊することで、血液癌の予防、治療または癌転移抑制に有用に使用できることを確認し本発明を完成させるに至った。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の一つの目的は、下記化学式1で表示されるモノアセチルジアシルグリセロール化合物を有効成分として含有する、血液癌または癌転移抑制用薬学的組成物及び健康機能食品組成物を提供することである。
【化1】
上記の式でR1及びR2はそれぞれ炭素数14ないし20の脂肪酸基である。
本発明の他の目的は、上記薬学的組成物を血液癌の発病または癌転移の可能性可能性があるか血液癌を患っている個体に投与する段階を含む、血液癌の予防または治療方法、または癌転移抑制方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するための一つの様態として、下記化学式1で表示されるモノアセチルジアシルグリセロール化合物を有効成分として含有する、血液癌または癌転移抑制用薬学的組成物を提供する。
【化2】
上記の式において、R1及びR2はそれぞれ炭素数14ないし20の脂肪酸基である。本明細書で脂肪酸基は脂肪酸のカルボキシル基から−OH基を除いた残りの部分を意味する。
【0007】
具体的に、本発明の血液癌または癌転移抑制用薬学的組成物は上記化学式1で表示されるモノアセチルジアシルグリセロール化合物を含むことができる。本発明において用語、“モノアセチルジアシルグリセロール化合物”とは、1つのアセチル基と2つのアシル基を有するグリセロールの誘導体を意味し、モノアセチルジグリセロール(MADG)ともいう。
【0008】
上記化学式1で表示されるモノアセチルジアシルグリセロール化合物においてR1及びR2はそれぞれ炭素数14ないし20の脂肪酸基であることもあり、好ましくはパルミトイル(palmitoyl)、オレオイル(oleoyl)、リノレオイル(linoleoyl)、リノレノイル(linolenoyl)、ステアロイル(stearoyl)、ミリストイル(myristoyl)またはアラキドノイル(arachidonoyl)などであることができるが、これらに限定されない。さらに好ましくは、上記R1及びR2の組み合わせ(R1/R2)はオレオイル/パルミトイル、パルミトイル/オレオイル、パルミトイル/リノレオイル、パルミトイル/リノレノイル、パルミトイル/アラキドノイル、パルミトイル/ステアロイル、パルミトイル/パルミトイル、オレオイル/ステアロイル、リノレオイル/パルミトイル、リノレオイル/ステアロイル、ステアロイル/リノレオイル、ステアロイル/オレオイル、ミリストイル/リノレオイルまたはミリストイル/オレオイルなどであることができるが、これらに限定されない。また、上記モノアセチルジアシルグリセロール化合物は光学活性において、(R)−形、(S)−形またはラセミ体であることができる。
【0009】
上記モノアセチルジアシルグリセロール類化合物は、好ましくは、下記化学式2で表示される化合物であることができる。
【化3】
【0010】
上記化学式2で表示される化合物は1−パルミトイル(palmitoyl)−2−リノレオイル(linoleoyl)−3−アセチルグリセロール(acetylglycerol)と言うし、EC−18とも命名される。上記化合物のR1とR2は、それぞれパルミトイルとリノレオイルに該当する。
【0011】
上記モノアセチルジアシルグリセロール類化合物は、鹿茸から抽出/分離したり、公知の有機合成法(大韓民国特許登録番号10−0789323号公報)により製造される。具体的に、鹿茸をヘキサンで抽出し、その抽出の残余を再びクロロホルムにより抽出した後、収得した抽出液を減圧蒸留して鹿茸のクロロホルム抽出物を収得することができる。上記抽出において使用される抽出溶媒であるヘキサン及びクロロホルムの量はそれぞれ使用された鹿茸が浸る程度の量であれば十分で、一般的には、鹿茸1kgに対しヘキサン及びクロロホルムをそれぞれ4〜5リットルの割合で使用されるが、抽出溶媒の種類及び使用量は、これに限定されない。このような方法で収得した鹿茸のクロロホルム抽出物が、次いで一連のシリカゲルコラムクロマトグラフィー及びTLC方法によりさらに分画化され精製されて、本発明に使用されるモノアセチルジアシルグリセロール類化合物が得られる。上記クロマトグラフィー精製段階の溶離液としてはクロロホルム/メタノール、ヘキサン/酢酸エチル、ヘキサン/酢酸エチル/酢酸などが用いられるが、これに制限されない。
【0012】
一方、本発明に使用されるモノアセチルジアシルグリセロール化合物を化学的に合成する方法は、大韓民国特許登録番号10−0789323号公報に開示されている。具体的に、(a)1−R1−グリセロールの3番位置に保護基を導入して1−R1−3−保護基−グリセロールを製造する過程、(b)1−R1−3−保護基−グリセロールの2番位置にR2基を導入して1−R1−2−R2−3−保護基−グリセロールを製造する過程及び、(c)1−R1−2−R2−3−保護基−グリセロールの脱保護反応及びアセチル化反応を同時に実行する過程を含み、必要に応じて精製して、目的とするモノアセチルジアシルグリセロール類化合物を合成でき、他の方法としてはホスファチジルコリンを加酢酸分解(acetolysis)して得られるが、これに限定されない。また、上記化学式1の化合物だけでなく、その立体異性体もすべて本発明の範囲内に含まれる。
【0013】
本発明によってモノアセチルジアシルグリセロール化合物は、IL−4の分泌の減少させるのが確認されたことによって、血液癌または癌転移抑制に効果的に用いられることが確認された。
【0014】
本発明において、用語“癌”は細胞自体の調節機能に問題が起って正常的では死滅するべき非正常細胞が過多増殖して周囲組織及び臓器に侵入し塊を形成し既存の構造を破壊したり変形させる状態を意味し、悪性腫瘍と同一な意味で使われる。一方、本発明において用語、“抗癌”は癌細胞の増殖を抑制したり癌細胞を死滅させる全ての活性を意味する。本発明において、“血液癌”はリンパ腫、急性白血病、慢性白血病、及び多発性骨髄腫からなる群で選択できるが、これに制限されるのではない。本発明において用語、“癌転移(metastasis)”とは、癌細胞、特に、血液癌に関連された癌細胞が一つの臓器若しくはその部分から他の臓器や臓器周辺部に広がるのを意味するが、これに制限されない。主に悪性癌細胞が転移する能力を持ち、癌細胞は1次癌から抜け出してリンパ系あるいは血管系に浸透してはいって血管を循環して身体の他の部位の正常組織で成長する。癌転移は悪性癌の典型的な特徴でこんな癌の転移は癌による死亡原因の90%を占めている。よって、本発明において癌転移抑制は、癌細胞が他の臓器や周辺部に広がっていくのを抑制する意味で使用できる。本発明において用語、“予防”は、本発明の組成物の投与で癌または癌転移を抑制または遅延させるあらゆる行為を意味し、“治療”とは、本発明の組成物によって癌または癌転移による症状が好転したり有益に変更されるあらゆる行為を意味する。
【0015】
腫瘍関連大食細胞(マクロファジ)(Tumor-associated macrophage; TAM)は腫瘍進行及び転移に関連した大食細胞として、主に腫瘍の周辺で発見される。腫瘍関連大食細胞によって過発現された分子を免疫化することで、これら大食細胞を攻撃する方式で腫瘍微細環境を改善することが抗癌の新しい方法で台頭されている。腫瘍関連大食細胞はM2表現型の大食細胞として、これらは主にIL-4, IL-13などのTh2サイトカインによって誘導されることとして知られており、実際にこれら大食細胞は血管形成促進因子及びメタロプロチアーゼを分泌して、腫瘍基質内繊維母細胞の作用を調節する信号伝達経路に関与して腫瘍細胞増殖及び転移を促進する。
【0016】
本発明で用語、“インターロイキンー4(IL-4)”はTh2リンパ球、好酸球、肥満細胞などで分泌される多様な免疫調節機能を持つサイトカインを意味する。IL-4は色んな癌組織で正常組織より高い濃度で発見され、腫瘍浸潤リンパ球(tumor-infiltrating lymphocytes, TILs)で大量のIL-4 が生成されるのが報告された。特に、IL-4は腫瘍関連大食細胞を活性化させる代表的なサイトカインとして知られている。よって、上記IL-4はM2表現型大食細胞の活性を誘導し、これによって腫瘍の成長、転移、血官生成などを誘導する。
【0017】
また、上記モノアセチルジアシルグリセロール類化合物は、STAT-6の活性を抑制できることが確認されたことで、血液癌または癌転移抑制に効果的に使用できることが確認された。本発明で用語、“STAT-6”は転写因子として、IL-4媒介の生物学的反応を修行するのに重要な役割を すると知られている。つまりSTAT-6はIL-4によって燐酸化された形態で活性かされ、続いてIL-4/STAT-6信号伝達経路を進行させる。上記信号伝達経路は細胞増殖/成長及び細胞死滅に対する耐性に重要な役割を果たすことで知れ渡っている。よって、STAT-6の抑制は細胞死滅を誘導して癌転移を抑制する効果を持ち、癌組織の成長のための微細環境を破壊することで、腫瘍の効果的な治療剤と治療併用剤としての効果を持つことができる。
【0018】
本発明の実施例では、i) U937細胞、A549細胞及びJurkat細胞に各々IL-4とEC-18を処理した場合、EC-18の濃度依存的に、STAT-6の燐酸化が抑制される効果を確認して(実験例1,図1及び2)、 ii) HEK293及びA549細胞にIL-4を勝利して活性化させたSTAT-6にEC-18を処理した場合、STAT-6の活性が減少されたことを確認した。(実験例2、図3)。本発明の他の実施例では、RBL-2H3細胞でEC-18の濃度別処理によるIL-4の転写量を酵素結合免疫吸収分析(ELISA)によって観察した結果、EC-18の濃度依存的にIL-4の分泌量が減少したのを確認した(実験例3、図4及び図5)。これは上記モノアセチルジアシルグリセロール化合物が血液癌または癌転移の治療に有効であることを示唆する。具体的に、人体由来の骨髄癌細胞株であるRPMI 8226細胞を雄ヌード・マウスに移植し、試験物質であるEC-18を経口投与した後、腫瘍の成長抑制効果を評価した結果、500 mg/kg容量の試験物質投与群で、腫瘍の嵩測定結果、陰性対照群と比較して統計学的に有意に腫瘍嵩が減少し、腫瘍の重量も陰性対照群と比較して統計学的に有意に小さくなって、EC-18が腫瘍の成長を抑制することを確認した。(実験例4図6、7)。これは上記モノアセチルジアシルグリセロール化合物が血液癌予防、治療または癌転移抑制に有効であることを良く表しているのである。
【0019】
本発明のモノアセチルジアシルグリセロール化合物を含む薬学的組成物は、薬学的組成物の製造に通常使用する適切な担体、賦形剤または希釈剤をさらに含むことができる。このとき、上記組成物に含まれるモノアセチルジアシルグリセロール化合物の含量は、特に限定されないが、組成物総重量に対して0.0001ないし100.0重量%、好ましくは0.01ないし50.0重量%、さらに好ましくは0.01ないし20重量%を含むことができる。
【0020】
上記薬学的組成物は錠剤、丸剤、散剤、顆粒剤、カプセル剤、懸濁剤、内用液剤、油剤、シロップ剤、滅菌された水溶液、非水性溶剤、懸濁剤、乳剤、凍結乾燥剤及び坐剤からなる群から選択されるいずれか一つの剤形を有することができ、経口または非経口の様々な剤形であることができる。製剤化に際して、通常使用される充填剤、増量剤、結合剤、湿潤剤、崩壊剤、界面活性剤などの希釈剤または賦形剤を用いることができる。経口投与のための固形製剤には錠剤、丸剤、散剤、顆粒剤、カプセル剤などが含まれ、このような固形製剤は、一つ以上の化合物に少なくとも一つ以上の賦形剤、例えば、澱粉、炭酸カルシウム、スクロース(sucrose)またはラクトース(lactose)、ゼラチンなどを混合して調製することができる。また、単純な賦形剤以外にステアリン酸マグネシウム、タルクなどのような潤滑剤も用いることができる。経口投与のための液状製剤としては懸濁剤、内用液剤、油剤、シロップ剤などが該当するが、よく使用される単純希釈剤である水、リキッドパラフィン以外に様々な賦形剤、例えば湿潤剤、甘味剤、芳香剤、保存剤などを含むことができる。非経口投与のための製剤には、滅菌された水溶液、非水性溶剤、懸濁剤、乳剤、凍結乾燥製剤、坐剤が含まれる。非水性溶剤、懸濁溶剤にはプロピレングリコール(propylene glycol)、ポリエチレングリコール、オリーブオイルのような植物性油、オレイン酸エチルのような注射可能なエステルなどが用いることができる。坐剤の基剤にはウィテプソル(witepsol)、マクロゴール、ツイン(tween)61、カカオ脂、ラウリン脂、グリセロゼラチンなどが用いることができる。
【0021】
本発明の組成物は薬学的に有効な量で投与することができる。本発明において、用語“薬学的に有効な量”とは、医学的治療に適用可能な合理的な受恵/危険の比率で疾患を治療するのに十分な量を意味し、有効用量のレベルは個体の種類及び重症度、年齢、性別、病気の種類、薬物の活性、薬物に対する敏感度、投与時間、投与経路及び排出比率、治療期間、同時に使用される薬物を含む要素と、その他医学分野によく知られている要素とによって決定できる。本発明の組成物は個別治療剤として投与したり、他の治療剤と併用して投与が可能であり、従来の治療剤とは順次または同時に投与が可能である。そして、単一または多重投与することができる。上記要素いずれもを考慮して副作用なしに最小限の量で最大効果が得られる量を投与するのが重要であり、当業者によって容易に決定可能である。本発明の組成物の望ましい投与量は、患者の状態及び体重、病気の程度、薬物形態、投与経路及び期間により異なり、適した一日の総使用量は、正しい医学的判断の範囲内で担当医によって決定されるが、一般に0.001ないし1000mg/kgの量、好ましくは0.05ないし200mg/kg、より好ましくは0.1ないし100mg/kgの量を一日1回乃至複数回に分けて投与することができる。上記組成物は、血液癌または癌転移抑制を目的とする個体であれば特に限定されず、あらゆる個体に適用可能である。例えば、猿、犬、猫、ウサギ、モルモット、ラット、マウス、牛、羊、豚、ヤギ、鳥類などのような非人間動物及び人間などすべての個体に適用でき、投与の方式は当業系の通常の方法であれば、限りはない。例えば、経口、直腸または静脈、筋肉、皮下、子宮内頚膜または脳血管内注射によって投与できる。
【0022】
また一つの様態として、本発明は下記化学式1で表示されるモノアセチルジアシルグリセロール化合物を有効成分として含有する、血液癌または癌転移抑制用健康機能食品組成物を提供する。
【化4】
【0023】
上記化学式1で表示されるモノアセチルジアシルグリセロール化合物においてR1及びR2はそれぞれ炭素数14ないし20の脂肪酸基であることができるが、これに限定されない。
【0024】
具体的に、本発明のモノアセチルジアシルグリセロール化合物またはこれの薬学的に許容可能な塩を血液癌または癌転移抑制を目的に健康機能食品組成物に含むことができる。上記モノアセチルジアシルグリセロール化合物、血液癌及び癌転移抑制に対しては上記で説明したとおりである。本発明において用語、“改善”は、本発明の組成物を利用して癌または癌転移の疑心及び発症個体の症状が好転されたり有益となるあらゆる行為を意味する。
【0025】
本発明の組成物を健康機能食品に含めて使用する場合、上記組成物をそのまま包含したり他の健康機能食品または健康機能食品成分と共に使用することができ、通常的な方法により適切に使用することができる。有効成分の混合量は使用目的により適するように決定される。一般的に、食品または飲料の製造時に本発明の組成物は原料に対し、好ましくは15重量部以下、より好ましくは10重量部以下の量で包含することができる。しかし、健康調節及び衛生を目的とする長期間の摂取時の場合には上記量は上記範囲以下であることができ、安定性の面でも問題がないため、有効成分は上記範囲以上の量でも使用することができる。本発明の組成物を含まれる健康機能食品の種類には特別な制限はなく、具体的な例としては肉類、ソーセージ、パン、チョコレート、キャンディ類、スナック類、菓子類、ピザ、ラーメン、その他の麺類、ガム類、アイスクリーム類を含む酪農製品、各種スープ、飲料、茶、ドリンク剤、アルコール飲料及びビタミン複合剤などがあり、通常的な意味での健康機能食品を全て含み、動物用飼料として利用される食品を含むことができる。
【0026】
また、本発明の健康機能食品組成物が飲料形態に用いられる場合は、通常の飲料と同様に、色々な甘味剤、香味剤または天然炭水化物などを追加成分として含有することができる。上記天然炭水化物とは、ブドウ糖、果糖などのモノサッカライド、マルトース、シュークロスなどのジサッカライド、デキストリン、サイクロデキストリンなどのポリサッカライド、及びキシリトール、ソルビトール、エリトリトールなどの糖アルコールである。上記天然炭水化物の比率は、これに限定されないが、本発明の組成物100ml当たり好ましくは、約0.01ないし0.04g、より好ましくは0.02乃至0.03gである。上記甘味剤としては、タウマチン、ステビア抽出物などの天然甘味剤及びサッカリン、アスファルタムなどの合成甘味剤などが挙げられる。上記以外に本発明の健康機能食品組成物は種々の栄養剤、ビタミン、電解質、風味剤、着色剤、ペクト酸及びその塩、アルギン酸及びその塩、有機酸、保護性コロイド増粘剤、pH調節剤、安定化剤、防腐剤、グリセリン、アルコール、炭酸飲料に使われる炭酸化剤などを含有することができる。その他、天然果物ジュース、果物ジュース飲料及び野菜飲料の製造のための果肉を含有することができる。
【0027】
また一つの様態として、本発明は上記薬学的組成物を血液癌または癌転移の疑心個体に投与する段階を含める、血液癌の予防または治療方法、または癌転移抑制方法を提供する。本発明で上記血液癌または癌転移の疑心個体は上記疾患が発病したり発病することができる人間を含めた全ての動物を意味し、本発明の化合物またはこれの薬学的に許容できる塩を含める薬学的組成物を血液癌または癌転移の疑心個体に投与することで、個体を効率的に治療できる。血液癌及び癌転移については上記で説明したとおりだ。本発明で用語、“投与”はいかなる適切な方法で血液癌または癌転移の疑心個体に本発明の薬学的組成物を導入するのを意味し、投与経路は目的組織に到達できる限り経口または非経口の多様な経路を通じて投与されることができる。
【0028】
本発明の治療方法は、上記化学式1のモノアセチルジアシルグリセロール化合物を含む薬学的組成物を薬学的有効量で投与するのを含むことができる。適した1日の総使用量は正しい医学的判断の範囲内で担当医によって決定され、一般に0.001ないし1000mg/kgの量、好ましくは0.05ないし200mg/kg、より好ましくは0.1ないし100mg/kgの量を一日1回乃至複数回に分けて投与することができる。しかし、本発明の目的上、特定患者に対する具体的な治療的有効量は達成しようとする反応の種類と程度、場合によって他の製剤を使用するかどうかをはじめとする具体的組成物、患者の年令、体重、一般的な健康状態、性別及び食餌、投与時間、投与経路及び組成物の分泌率、治療期間、具体的組成物とともに使用されたり同時に使用される薬物をはじめとする多様な因子と医薬分野によく知られた類似因子によって異なるように適用するのが望ましい。
【発明の効果】
【0029】
本発明のモノアセチルジアシルグリセロール化合物はIL-4の発現を抑制し、STAT-6の活性を抑制する効果が優れているので、現在使用される血液癌または癌転移 抑制剤の副作用を克服し、毒性がなく、かつ治療効果が優秀な化合物として血液癌または癌転移予防、治療及び改善用組成物として有用に用いられる。
【図面の簡単な説明】
【0030】
図1】U937細胞で(A) IL-4によって燐酸化されたSTAT-6のEC-18濃度別処理による燐酸化抑制効果及び(B) IFN-繧ノよって燐酸化されたSTAT-6のEC-18濃度別処理による燐酸化抑制効果を表したウェスタンブロッティング結果を表した図である。
図2図2はA549細胞(A)、U937細胞(B)及びJurkat細胞(C)でIL-4によって燐酸化されたSTAT-6のEC-18濃度別処理による燐酸化抑制効果を表したウェスタンブロッティング結果を表した図である。
図3図3はHEK293細胞及びA549細胞でIL-4によって活性化されたSTAT-6及びIFN-繧ノよって活性かされたSTAT-1のEC-18濃度別処理によるルシフェラゼの発光値を表した図である。
図4図4はRBL-2H3細胞でEC-18の濃度別処理によるIL-4の転写量を酵素結合免疫吸収分析(ELISA)によって観察した図である。
図5図5はRBL-2H3細胞でEC-18の濃度別処理によるIL-4の発現量を時間帯別に(6h、15h及び24h)表した図である。
図6図6は人間血液癌細胞を移植したモデル動物でEC-18の処理による腫瘍の嵩減少結果を見せるグラフである。
図7図7は人間血液癌細胞を移植したモデル動物でEC-18の処理による腫瘍の重量減少結果を見せるグラフである。
図8図8は血液癌モデルハツカネズミでEC-18投与群、陰性対照群及び陽性対照群で、腫瘍の大きさ変化を見せる写真である。
【発明を実施するための形態】
【0031】
以下、本発明を下記例でより具体的に説明する。しかし、これらの例は本発明の理解を助けるためのものであるだけで、これらによって本発明が限定されることではない。
【0032】
実施例: 細胞培養
人間細胞株U937、A549、Jurkat、HEK293と家ネズミ細胞株RBL-2H3(American Type Culture Collection、ATCC、Rockville、MD)の培養は37℃, 5% CO2の湿化された条件下で遂行した。U937、Jurkat、K562と A549細胞株は10%ウシ胎仔血清(Fetal Calf Serum、FCS、HyClone、Logan、UT)、2 mM L-グルタメート、100 μg/mlペニシリン、100 μg/ml ストレプトマイシン(Life Technologies)を含むRPMI1640(Life Technologies、Karlsruhe、Germany)培地、HEK293細胞株はDMEM培地、RBL-2H3 細胞株はMEM培地で培養した。
【0033】
実験例 1: EC-18によるSTAT-6の燐酸化抑制効果
EC-18とIL-4とIFN-γを処理した細胞に冷たいSDS-溶解バッファー[(50 mM HEPES、150 mM NaCl、0.2 mM EDTA、0.5% NP-40、0.1% SDS、1mM Na3VO4、10mM NaF、and complete Protein Inhibitor Cocktail(Roche)]を使って30分間氷に溶解した。溶解された細胞溶液を高速回転機で30分間13,000 rpmで回転して不溶性部分を沈殿させて水溶性溶液を分離した。分離した細胞水様液を定量後10〜12% のぐらい濃度のSDS-PAGEを利用して電気泳動した。Gel上で分離された細胞蛋白質をPVDFメンブレン(Millipore、Billerica、MA、 USA)で100Vから2時間転写させた。
細胞内で燐酸化されたSTAT-1、STAT-6を確認するためpoly rabbit anti-(STAT1, STAT6), -phosphor(STAT1, STAT6)(Cell signaling Technology, USA)(1:1000)を1次抗体に利用して室温で60分間反応させた。2次抗体ではhorseradish peroxidase peroxidase-conjugated goat anti-rabbit IgG(Santa Cruz Biotechnology, USA)(1:3000)で室温で60分間反応させた。細胞蛋白質の同一量の測定はpoly rabbit anti-(STAT1, STAT6)で確認した。免疫反応が終った メンブレンはECL試薬(Millipore, Billerica, MA, USA)で反応させて、X-rayフイルムに露出させてSTATの燐酸化程度をフイルム上に現れたバンドで確認した。
【0034】
その結果、上皮細胞であるA549細胞と免疫細胞であるU937及びJurkat細胞でSTAT-6が燐酸化されたことを確認し、上記燐酸化されたSTAT-6は前処理したEC-18に対して濃度依存的に減少されることを確認した(図1-A, 図2-A乃至C)。 反面、STAT-1はEC-18による燐酸化減少がないことを確認した(図1-B)。
【0035】
実験例 2: ルシフェラ─ゼレポーターを利用したEC-18のSTAT-6活性抑制
STAT-6が結合するSTAT-6Elementを含めているp4xSTAT6-Luc2Pベクターを利用してHEK293細胞はA549細胞に導入させた後EC-18を前処理してIL-4を処理してSTAT-6の活性抑制を分析した。また、STAT-1が結合するInterferon Stimulated Response Element(ISRE)を含めているpGL4.45[luc2P/ISRE/Hygro]ベクター(Promega)を利用してSTAT-1の活性を分析した。
【0036】
先にHEK293細胞とA549細胞をtrypsin-EDTAを処理して分離した後、培養皿に分注してAttractene Transfection Reagentを利用してp4xSTAT6-Luc2PとpGL4.45[luc2P/ISRE/Hygro]ベクターを細胞に導入させた後、37℃、5%CO2条件で1日間培養した。翌日、培養皿で細胞を分離した後、96-well plateに5×104 cell/wellの個体数がなるべく0.1mlずつ 分注して37℃、5%CO2条件で1日間培養した。 翌日EC-18を濃度別に1時間前処理した後IL-4とIFN-γを10 ng/mlを細胞に添加して、37℃、5%CO2条件で6時間培養した。6時間が経過した後IL-4とIFN-γ信号伝達によるルシフェラ─ゼの活性化程度をONE-Glo Luciferase Assay System(Promega)を利用して下のように確認した。 具体的に、96-wellにONE-GloTMLuciferase Assay BufferとSubstrateが1:1で混合された溶液0.1mlを添加して約3分経過後発光される程度をVICTOR X Multilabel Plate Reader(PerkinElmer)を利用して0.5秒間測定した。
【0037】
STAT-6ルシフェラ─ゼの発光値はIL-4だけ処理した値に対し、EC-18が濃度別に処理された場合の値が減縮され、相対的活性減少を確認できた。反面、IFN-γを処理した場合、EC-18によってSTAT-1ルシフェラ─ゼの発光値は変化がないことを確認した(図3)。つまり、IL-4によって誘導されたSTAT-6の活性がEC-18を処理したHEK293細胞とA549細胞で顕著に減少されることを確認した。
【0038】
実験例 3: EC-18によるIL-4遺伝子発現抑制効果
実験例 3-1: 逆転写ポリメラーゼ連鎖反応(RT-PCR)
RBL-2H3細胞にEC-18を前処理した後、IgEに対したantigenで細胞活性を誘導させてその結果で発現されるサイトカインIL-4のmRNA水準の変化をRT-PCR(Reverse Transcriptase Polymerase Chain Reaction)を遂行した。
【0039】
総RNAは標準プロトコルによって分離し、cDNAは製造者の指示書に従ってAccuScript High Fidelity 1st Strand cDNA Synthesis Kit(Stratagene)を使用して合成した。 2段階RT-PCR反応はoligo-dTプライマーと逆転写酵素、特異プライマー対とTaqポリメラーゼ(Takara、Shiga、Japan)を使用して遂行した。 合成した1μlのcDNAを0.5 U ExTaq DNAポリメラーゼ、1 buffer及び1 mM dNTP mix(Takara)と特異プライマー対で成り立った20μlのPCR反応に使用した。 PCR反応による増幅は次のような条件でGeneAmp PCR system 2700(Applied Biosystems、Foster city、CA、USA)を使用して遂行した;94°で5分、続いて94°で45秒、56°で45秒及び72°で1分を25乃至40サイクル行った後、最終延長反応は72°で7分間行った。 表1はPCRによってcDNA増幅に使用されたプライマー序列として、下記PCRプライマーはPrimer3 programを使用してデザインし、Bioneer社(大韓民国、大田)から購入した。
【0040】
【表1】
【0041】
PCR生成物は1.5%アガロースゲル上で分離してエチジウムブロマイド(しゅうかエチジウム、臭化エチジウム、ethidium bromide、EtBr) に染色してGel Doc 2000 UV trans-illuminator(Bio-Rad Laboratories、Hercules、CA、USA)で視覚化した後に、Quantity One software(Bio-Rad Laboratories)を使用して分析した。 各サンプルは3回以上テストし代表データを提示した。
細胞は0.01、0.1、1.0及び10μg/mlのEC-18をそれぞれ1時間前処理してAntigenを一緒に処理した後、3時間培養した。 続いて、細胞を溶解させた後にRNAを分離した。 RNAに対してpoly A+プライマーと共に逆転写酵素(reverse transcriptase)を使用してcDNAを製造した。 IL-4についてデザインされたプライマーをPCR増幅に使用した(表1)。GAPDHを内部標準として使用した。
【0042】
実験例 3-2: 酵素結合免疫吸収分析法(ELISA)によるIL-4分泌抑制確認
EC-18を0.1 pg/ml乃至10μg/mlの濃度になるように処理して1時間反応させて準備して抗原を処理して37℃で18時間培養した後、細胞を除去して上層液を修得した。 RBL-2H3細胞の細胞培養液に存在する家ネズミIL-4の定量は商業的に購入可能なモノクローナル抗体(mAb)(BD Biosciences)を使用して製造者が指示したプロトコルに従って酵素結合免疫吸収分析(enzyme-linked immunosorbent assay、ELISA)を遂行した。
【0043】
その結果、EC-18を処理したRBL-2H3細胞で、IL-4の転写物はEC-18の濃度に比例して発現が減少することを確認し、(図4)、抗原によって誘導されたIL-4の分泌が、RBL-2H3細胞でEC-18の処理によって発現が減少したことを確認した(図5)。また、各時間に発現されるIL-4の分泌量はEC-18の濃度依存的に減少されており、EC-18の10μg/ml濃度で最高60%以上IL-4の分泌を抑制することを確認した。
【0044】
実験例 4: 抗癌モデル動物でEC-18による抗癌効能分析
人体由来の骨髄癌細胞株であるRPMI 8226細胞が移植された雄のヌード・マウスに試験物質であるEC-18を経口投与した後腫瘍の成長抑制効果を評価した。 群構成は陰性対照群、500 mg/kgの容量の試験物質投与群、500 mg/kgの容量の試験物質及び80 mg/kgの容量の陽性対照物質ゲムシタビン(Gemcitabine)併用の投与群、500 mg/kgの容量の試験物質及び120 mg/kgの容量の陽性対照物質併用の投与群、80及び120 mg/kgの容量の陽性対照群の総6この群で構成し、各群当10匹ずつ実験した。 陰性対照群は賦形剤であるolive oilを、試験物質投与群は試験物質(EC-18)を1回/日、4週間、総28回員内に強制投与し、陽性対照群は陽性対照物質であるゲムシタビン(Gemcitabine)を2回/週、4週間、総8回腹腔に強制投与した。 観察期間の間、毎日1回一般症状を観察し、動物の体重及び腫瘍の体積(Tumor volume、mm3)は2回/週測定した。 観察期間終了後腫瘍を摘出して腫瘍の重量(Tumor weight、g)を測定し、それぞれ図6及び7に示した。図6及び7に示したとおり、500 mg/kgの容量の試験物質投与群は腫瘍の体積測定結果、陰性対照群と比較して統計学的に有意に抑制され、腫瘍の重量も陰性対照群と比較して統計学的に有意に小さく測定され、腫瘍の成長を抑制した。 また、血液癌モデルハツカネズミでEC-18と陽性対照群であるgemcitabineに投与した後、腫瘍の大きさ変化を示す写真を図8に図示した。 図8に図示されたとおり、EC-18を投与した場合にも、陽性対照群と類似に腫瘍の大きさが減少されることを確認できる。
【0045】
以上の説明より、本発明が属する技術分野の当業者は本発明がその技術的思想や必須的特徴を変更しなくて他の具体的な形態で実施されるのができるのを理解できるはずだ。これに関連して、以上で記述した実施例は全ての面で例示的な事で、限定的なことでは無いこととして理解するべきだ。本発明の範囲は上記詳細な説明よりは後述する特許請求範囲の意味及び範囲、そしてその等価概念から導出される全ての変更または変形された形態が本発明の範囲に含まれることとして解釈するべきである。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
【配列表】
[この文献には参照ファイルがあります.J-PlatPatにて入手可能です(IP Forceでは現在のところ参照ファイルは掲載していません)]