【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 平成26年9月4日に家入龍太公式ウェブサイトにて掲載、平成26年10月1日に日経BP社ケンプラッツのウェブサイトにて掲載、平成26年10月22日に北海道建設新聞の記事にて掲載、平成26年10月29日にCIM JAPAN 2014の展示会にて発表。
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記ノイズ除去処理部は、前記投影X軸方向の最も一端側にある点からN−1点目までの前記最低標高点については、前記投影X軸方向の他端側から一端側にかけて前記工程(6)〜(10)を実行することにより前記変化点を算出する、請求項2に記載の地盤形状推定プログラム。
前記ノイズ除去処理部は、前記最低標高点を連結してなる全ての線分のうち、一端側の線分から順次、下記工程(1)〜(5)を実行することにより前記仮の地盤線を算出する、請求項1から請求項3のいずれかに記載の地盤形状推定プログラム;
(1)処理対象とする対象線分よりも下方に点PPm(初期値:m=1)が存在するか否かを判定し、
(2)前記点PPmが存在しない場合、前記対象線分を前記仮の地盤線を構成する線分として採用し、
(3)前記点PPmが存在する場合、前記対象線分の一端側の点と前記点PPmとを結んだ線分を前記仮の地盤線を構成する線分として採用するとともに、前記点PPmと前記対象線分の他端側の点とを結んだ線分よりも下方に点PPm+1が存在するか否かを判定し、
(4)前記点PPm+1が存在しない場合、前記点PPmと前記対象線分の他端側の点とを結んだ線分を前記仮の地盤線を構成する線分として採用し、
(5)前記点PPm+1が存在する場合、前記点PPmと前記点PPm+1とを結んだ線分を前記仮の地盤線を構成する線分として採用するとともに、mをインクリメントして前記工程(3)〜(5)を繰り返す。
前記ノイズ除去処理部は、前記仮の地盤線を構成する前記最低標高点のそれぞれについて、前記投影X軸方向に隣り合う前記最低標高点との標高差が第5の距離以上、かつ、前記隣り合う2点のなす勾配が所定の設定値以上の場合、前記隣り合う最低標高点をノイズとして除去する、請求項1から請求項4のいずれかに記載の地盤形状推定プログラム。
前記ノイズ除去処理部は、下記工程(11)〜(15)を実行することにより前記仮の地盤線を平滑化する、請求項1から請求項5のいずれかに記載の地盤形状推定プログラム;
(11)前記仮の地盤線を構成する前記最低標高点のうち、一端側の点P1と、前記点P1に対して他端側の点P2とを結ぶ線分P1P2を算出し、
(12)前記点P1と前記点P2との間の各点から前記線分P1P2に下ろした垂線の長さが第6の距離よりも大きいか否かを判定し、
(13)前記第6の距離よりも大きい垂線がない場合、前記点P2を他端側へ一つ移動して前記工程(11)〜(13)を繰り返し、
(14)前記第6の距離よりも大きい垂線がある場合、前記点P1と、前記点P2に対して一端側に隣接する点P2−1との間にある全ての点を除去し、
(15)前記点P2−1を新たな前記点P1に設定するとともに、前記点P2が最も他端側の前記最低標高点に到達するまで前記工程(11)〜(15)を繰り返す。
前記垂直断面設定部は、前記地盤の形状を特徴付ける線であるブレークラインに対して直交する方向に前記垂直断面を設定する、請求項1から請求項7のいずれかに記載の地盤形状推定プログラム。
前記垂直断面設定部は、前記3次元点群データの平均点間距離の2倍以上の間隔で前記垂直断面を設定する、請求項1から請求項8のいずれかに記載の地盤形状推定プログラム。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、本発明に係る地盤形状推定プログラム、地盤形状推定装置および地盤形状推定方法の一実施形態について図面を用いて説明する。
【0026】
なお、本発明において、地盤とは、土木・建築建造物や工作物などを設置する基礎となる全ての地表面を含む概念である。
【0027】
本実施形態の地盤形状推定装置1は、3次元点群データに基づいて地盤の3次元形状を高精度に推定するものであり、マルチスレッド処理が可能なパーソナルコンピュータやタブレットコンピュータ等のコンピュータによって構成されている。また、本実施形態において、地盤形状推定装置1は、
図1に示すように、主として、表示手段2と、入力手段3と、記憶手段4と、演算処理手段5とを有している。以下、各構成について詳細に説明する。
【0028】
表示手段2は、液晶ディスプレイ等で構成されており、地盤の3次元形状や任意の断面における断面形状を表示したり、後述する垂直断面の設定画面等を表示するものである。
【0029】
入力手段3は、マウスやキーボード等で構成されており、後述する垂直断面の方向や間隔等を指定する他、ユーザによる各種の選択や指示を入力するものである。なお、本実施形態では、表示手段2および入力手段3をそれぞれ別個に有しているが、この構成に限定されるものではなく、タッチパネルのように表示機能および入力機能を兼ね備えた表示入力手段を備えていてもよい。
【0030】
記憶手段4は、各種のデータを記憶するとともに、演算処理手段5が演算処理を行う際のワーキングエリアとして機能するものである。本実施形態において、記憶手段4は、ハードディスク、ROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)、フラッシュメモリ等で構成されており、
図1に示すように、プログラム記憶部41と、3次元点群データ記憶部42と、地盤点記憶部43とを有している。
【0031】
プログラム記憶部41には、本実施形態の地盤形状推定プログラム1aがインストールされている。そして、演算処理手段5が地盤形状推定プログラム1aを実行することにより、地盤形状推定装置1としてのコンピュータを後述する各構成部として機能させるようになっている。
【0032】
また、本実施形態の地盤形状推定プログラム1aには、
図1に示すように、3次元点群データから地盤点以外の点をノイズとして除去するためのノイズ除去アルゴリズムが組み込まれている。ノイズ除去アルゴリズムとしては、例えば、前述したローリングボールアルゴリズムの他、後述するとおり、所定の断面における地盤線(地盤点を結んだ折れ線)を自動的に推定し、当該地盤線の折れ点として使用されなかった点をノイズとして除去するノイズ除去アルゴリズムのように、所定の断面を特定してノイズをフィルタリングするアルゴリズムであればよい。
【0033】
3次元点群データ記憶部42は、対象領域内における複数点の3次元座標からなる3次元点群データを記憶するものである。本実施形態において、3次元点群データ記憶部42には、3次元レーザースキャナー(図示せず)によって計測された対象領域の3次元点群データが記憶されている。なお、3次元点群データは、3次元レーザースキャナーによって取得されたものに限定されるものではなく、レーザープロファイラーや航空写真により取得されたものでもよい。
【0034】
地盤点記憶部43は、ノイズが除去された後の3次元点群データを地盤の表面を構成する地盤点として記憶するものである。本実施形態において、地盤点記憶部43には、後述する垂直断面を設定する方向ごとに、地盤点として採用された3次元点群データが保存されるようになっている。
【0035】
なお、地盤形状推定プログラム1aや上記各データの利用形態は、上記構成に限られるものではない。例えば、CD−ROM、DVD−ROMおよびUSBメモリ等のように、コンピュータで読み取り可能な記録媒体に地盤形状推定プログラム1aや上記各データを記憶させておき、当該記録媒体から直接読み出して実行等してもよい。また、外部サーバ等からクラウドコンピューティング方式や、ASP(Application Service Provider)方式等で利用してもよい。
【0036】
演算処理手段5は、記憶手段4に記憶された各種のデータに基づいて、各種の演算処理を実行するものである。本実施形態において、演算処理手段5は、CPU(Central Processing Unit)等で構成されており、記憶手段4にインストールされた地盤形状推定プログラム1aを実行することにより、
図1に示すように、3次元点群データ取得部51と、垂直断面設定部52と、ノイズ除去処理部53と、地盤形状推定部54として機能するようになっている。以下、各構成部についてより詳細に説明する。
【0037】
3次元点群データ取得部51は、地盤の3次元形状を推定しようとする対象領域内の3次元点群データを取得するものである。本実施形態において、3次元点群データ取得部51は、ユーザが入力手段3を用いて指定した対象領域を把握し、当該対象領域内に含まれる全ての3次元点群データを3次元点群データ記憶部42から読み出すようになっている。
【0038】
垂直断面設定部52は、前記対象領域内において地盤線を求めたい垂直断面を設定するものである。具体的には、垂直断面設定部52は、
図2に示すように、3次元点群データ取得部51によって取得された点群が存在するXY平面上において、任意の2点(P1,P2)が特定されると、当該2点を結ぶ線分を通り、Z軸に平行な面を地盤線を求めたい垂直断面として設定するようになっている。
【0039】
また、本実施形態において、垂直断面設定部52は、
図3に示すように、対象領域に対して、互いに45°ずつ角度の異なる4方向(方向1〜4)を自動的に設定し、各方向ごとに、当該方向に平行で、かつ、同じ間隔で隔てられた複数の垂直断面を設定することも可能である。
【0040】
具体的には、垂直断面設定部52は、方向1に平行で等間隔な複数の垂直断面(Sec.1-1, Sec.1-2, Sec.1-3,…)と、方向2に平行で等間隔な複数の垂直断面(Sec.2-1, Sec.2-2, Sec.2-3,…)と、方向3に平行で等間隔な複数の垂直断面(Sec.3-1, Sec.3-2, Sec.3-3,…)と、方向4に平行で等間隔な複数の垂直断面(Sec.4-1, Sec.4-2, Sec.4-3,…)とを設定する。
【0041】
上記のように、垂直断面設定部52が、垂直断面を設定する方向を複数設定する理由を以下に説明する。まず、3次元形状の特定に際しては、
図3および
図4に示すように、地形が大きく変化している角部やエッジ部のように、地盤の形状を特徴付ける線である、いわゆるブレークラインを構成する点が極めて重要である。しかしながら、上述したローリングボールアルゴリズムのように、所定の一方向にのみ設定された断面についてノイズを除去するアルゴリズムは、上記のような重要な点まで除去してしまうおそれがある。
【0042】
具体的には、
図3に示すように、上記のようなアルゴリズムで用いる断面に対して、ブレークラインが平行に存在するような場合、当該ブレークラインを構成する点までもノイズとして除去してしまう可能性が高くなる。このため、実際にはシャープな角部やエッジ部が存在するような地盤についても、当該部分が円弧状に面取りされたような形状として推定されてしまうという問題がある。
【0043】
そこで、本実施形態では、垂直断面設定部52が、上述した4方向に平行で、かつ、同じ間隔で隔てられた複数の垂直断面を設定しうるようになっている。このため、対象領域内の断面形状が均等に分割された方向に沿って推定され、ブレークラインを高精度に抽出するようになっている。
【0044】
なお、垂直断面の方向は、上記構成に限定されるものではなく、互いに異なる2以上の方向に垂直断面を設定すれば、ブレークラインの欠落が抑制される。また、本実施形態において、特に高精度に推定したいブレークラインが存在する場合、垂直断面設定部52は、
図2に示すように、当該ブレークラインに対して直交する方向(方向5)に、別途、垂直断面(Sec.5-1, Sec.5-2, Sec.5-3,…)を設定する。これにより、ブレークラインを構成する角部やエッジ部が最も推定しやすい状態となる。
【0045】
また、本実施形態において、各垂直断面の間隔は、垂直断面設定部52によって自動的に設定される。具体的には、垂直断面設定部52は、取得された3次元点群データの平均点間距離を推定し、当該平均点間距離の2倍以上の値を各垂直断面の間隔として設定する。これにより、ノイズをフィルタリングする際に必要となる最低限の点群が抽出される。
【0046】
なお、本実施形態では、垂直断面の方向や間隔が自動的に設定されているが、この構成に限定されるものではなく、ユーザがマニュアルで任意の方向および値に設定してもよい。特に、ブレークラインに対して直交する方向は、表示手段2に表示された画面を見ながら設定すると簡単である。
【0047】
ノイズ除去処理部53は、草、木、重機等のように、地盤の表面を構成する地盤点以外の点をノイズとして除去するものである。本実施形態において、ノイズ除去処理部53は、垂直断面設定部52によって設定された全方向における全垂直断面のそれぞれについて、
図2および
図5に示すように、当該垂直断面を中心面とし、各垂直断面間の間隔L1と同じ第1の間隔L1を隔てて平行に設けられた2平面を想定する。そして、当該2平面の間に存在する3次元点群データのうち、地盤点以外の点をノイズとして除去するようになっている。
【0048】
具体的には、ノイズ除去処理部53は、上記2平面の間に存在する3次元点群データを取得するとともに、地盤形状推定プログラム1aに組み込まれているノイズ除去アルゴリズムを読み出す。そして、全方向における全垂直断面のぞれぞれについて当該ノイズ除去アルゴリズムを適用し、マルチスレッド処理によって地盤点以外の点群を面的にノイズとして除去する処理を同時に実行する。
【0049】
本実施形態において、ノイズ除去処理部53が、本発明に係る特徴的なノイズ除去アルゴリズム、すなわち、所定の断面における地盤線を自動的に推定し、当該地盤線の折れ点として使用されなかった点をノイズとして除去するノイズ除去アルゴリズムを使用する場合、各垂直断面のそれぞれについて想定された上記2平面間の3次元点群データに対して、以下に説明する処理工程を実行することによりノイズを除去する。
【0050】
まず、ノイズ除去処理部53は、
図6に示すように、垂直断面を中心とし、第1の間隔L1を隔てて平行に設けられた2平面の間に存在する点群を抽出する。当該2平面のそれぞれは垂直断面に平行であって、垂直断面の両側に距離L1/2だけ離れた位置に設定される。なお、第1の間隔L1は、所定の上限値以下に設定することで地盤形状の精細さが担保される。一方、所定の下限値以上に設定することで演算処理に係る負荷が低減され処理速度が向上する。
【0051】
つぎに、ノイズ除去処理部53は、
図7に示すように、抽出された点群を垂直断面に対して垂直に投影して投影点群として取得する。すなわち、抽出された点群の各点から垂直断面に対して垂線を下ろし、当該垂線のそれぞれと垂直断面との各交点を投影点群として取得する。なお、本実施形態では、
図7に示すように、垂直断面と水平面(XY平面)との交線を投影X軸とし、鉛直(Z軸)方向を投影Z軸とし、投影X軸および投影Z軸に垂直な方向をY軸とする。
【0052】
つづいて、ノイズ除去処理部53は、
図8に示すように、投影X軸に沿う第2の間隔L2ごとに、当該第2の間隔L2に含まれる投影点群のうち、投影Z軸に沿う標高値が最も低い最低標高点を特定する。このように、複数の区間に分けて処理を実行することにより、演算処理が高速化される。本実施形態において、第2の間隔L2は、投影点群の平均点間距離以上で、かつ、所定の上限値以下に設定されており、本処理に係る負荷が重くなり過ぎるのを防止するようになっている。
【0053】
なお、本実施形態では、投影X軸の一端側(点P1)から他端側(点P2)にかけて、距離L2ごとに最低標高点を探索するようになっており、仮に第2の間隔L2内に点が存在しない場合には、投影X軸方向にL2以上隔たっても、最初に発見された点を最低標高点とする。また、本処理に際して、ノイズ除去処理部53は、投影点群を投影X軸についてソート(すなわち、投影X軸値の小さい順に並べる)してもよい。
【0054】
つぎに、ノイズ除去処理部53は、
図8に示すように、最低標高点のそれぞれを連結してなる仮の地盤線を算出する。また、本実施形態において、ノイズ除去処理部53は、
図9に示すように、最低標高点を連結してなる全ての線分に対して、下記工程(1)〜(5)を実行することにより、仮の地盤線をより実際の地盤線に近づけるようになっている。
【0055】
(1)処理対象とする対象線分PL−PR(一端側の点をPLとし、他端側の点をPRとする)よりも下方に点PP
m(初期値:m=1)が存在するか否かを判定する。
(2)点PP
mが存在しない場合、対象線分PL−PRを仮の地盤線を構成する線分として採用する。
(3)点PP
mが存在する場合、対象線分PL−PRの一端側の点PLと点PP
mとを結んだ線分PL−PP
mを仮の地盤線を構成する線分として採用する。また、点PP
mと対象線分PL−PRの他端側の点PRとを結んだ線分PP
m−PRよりも下方に点PP
m+1が存在するか否かを判定する。すなわち、線分PP
m−PRを新たな処理対象として同様の処理を続行する。
(4)点PP
m+1が存在しない場合、点PP
mと対象線分PL−PRの他端側の点PRとを結んだ線分PP
m−PRを仮の地盤線を構成する線分として採用する。
(5)点PP
m+1が存在する場合、点PP
mと点PP
m+1とを結んだ線分PP
m−PP
m+1を仮の地盤線を構成する線分として採用するとともに、mをインクリメントして前記工程(3)〜(5)を繰り返す。
【0056】
つづいて、ノイズ除去処理部53は、
図10に示すように、仮の地盤線における変化の大まかな傾向を示す傾向線を算出する。具体的には、ノイズ除去処理部53は、仮の地盤線を構成する各最低標高点(折れ点)に基づき、下記工程(6)〜(10)を実行することにより前記傾向線を算出する。なお、本実施形態において、ノイズ除去処理部53は、以下に詳述するとおり、細かな変化を取り除き、周期の大きな変化のみを取り出すことが可能な独自の平均法を用いて傾向線を求めるようになっている。
【0057】
(6)仮の地盤線を構成する最低標高点のうち、投影X軸方向の一端側から数えてn番目(初期値:n=1)の点P
nからN点分の最低標高点の中で、最も標高値が低い最低標高値を取得する。ここで、最低標高点の点数Nは、仮の地盤線の傾向を表す平均値を求めるための母集団を規定するものであり、本実施形態では、N=10としている。
(7)N点の最低標高点のうち、最低標高値との標高差が第3の距離L3より小さい点の標高値の平均値を投影Z軸値として算出する。すなわち、最低標高値との標高差が第3の距離L3以上の点については、細かな変化である可能性が高いため、傾向線の算出に際して考慮しないようになっている。第3の距離L3を所定の下限値以上に設定することで適切な傾向が算出される。一方、第3の距離L3を所定の上限値以下に設定することで、仮の地盤線における細かい変化が除去されるようになっている。
(8)平均値の算出に用いた最低標高点のうち、投影X軸方向において最も他端側にある最低標高点の投影X軸値を取得する。
(9)工程(8)で取得した投影X軸値、および工程(7)で算出した投影Z軸値によって特定される点を、傾向線を構成する変化点として採用する。
(10)nをインクリメントし、投影X軸方向の一端側から数えてN+n−1点目が、投影X軸方向において最も他端側にある最低標高点に到達するまで前記工程(6)〜(10)を繰り返す。
【0058】
ただし、前記工程(6)〜(10)のみでは、投影X軸方向の最も一端側にある点P
1からN−1点目の点P
N−1までの最低標高点について、前記変化点が得られない。そこで、本実施形態では、ノイズ除去処理部53が、投影X軸方向の最も一端側の点P
1からN−1点目の点P
N−1までの最低標高点については、投影X軸方向の他端側から一端側の方向で前記工程(6)〜(10)を実行する。すなわち、前記工程(6)〜(10)における「一端」と「他端」を入れ替えて実行する。これにより点P
1から点P
N−1までの最低標高点についても変化点が算出され、仮の地盤線全体に関する傾向線が求められるようになっている。
【0059】
具体的には、本実施形態において、最も一端側の点P
1に関して変化点を算出する場合、点P
10,点P
9,点P
8,点P
7,点P
6,点P
5,点P
4,点P
3,点P
2,点P
1の10点分について、他端側から一端側へ向かう方向で上記処理を実行する。また、N−1点目にあたる点P
9に関して変化点を算出する場合、点P
18,点P
17,点P
16,点P
15,点P
14,点P
13,点P
12,点P
11,点P
10,点P
9の10点分について、他端側から一端側へ向かう方向で上記処理を実行する。
【0060】
つぎに、ノイズ除去処理部53は、
図11に示すように、仮の地盤線を構成する最低標高点(折れ点)のそれぞれから傾向線に下ろした垂線の長さが、第4の距離L4以上である最低標高点をノイズとして除去する。第4の距離L4を所定の下限値以上に設定することで、傾向線に近い点が漏れなく地盤点として採用される。また、第4の距離L4を所定の上限値以下に設定することで、傾向線から大きく外れた最低標高点が適切に除去される。
【0061】
つづいて、ノイズ除去処理部53は、
図12に示すように、仮の地盤線を構成する最低標高点のそれぞれについて、投影X軸方向の他端側に隣り合う最低標高点との標高差、および隣り合う2点のなす勾配(ΔX/ΔY)を算出する。そして、当該標高差が第5の距離L5以上、かつ、当該勾配が所定の設定値K以上の場合、前記隣り合う最低標高点をノイズとして除去するようになっている。
【0062】
本実施形態では、第5の距離L5を所定の下限値以上に設定することにより、地盤点として存在し得ないような特異点が適切に除去される。また、設定値Kを所定の下限値以上に設定することにより、実際の地盤点を誤って除去してしまう可能性が低減される。
【0063】
上述した各処理によって算出された仮の地盤線は、実際の地盤線に近いものとなる。しかしながら、一般的に、土木工事等に用いられる地盤線(現況線)に必要なオーダーは大まかで、高精細なものは必要とされていない。また、3次元レーザースキャナー等によって取得された3次元点群データは、当該スキャナー近傍では密で、遠くなるほど粗になるため、不自然な地盤線となるおそれがある。
【0064】
そこで、本実施形態では、算出された仮の地盤線にスムージングを施し、適度に平滑化されて自然な地盤線を求めるようになっている。具体的には、ノイズ除去処理部53は、
図13に示すように、下記工程(11)〜(15)を実行することにより仮の地盤線を平滑化する。
【0065】
(11)仮の地盤線を構成する最低標高点のうち、一端側の点P1と、当該点P1に対して他端側の点P2(最初は点P1に隣接する点)とを結ぶ線分P1−P2を算出する。
(12)点P1と点P2との間の各点から線分P1−P2に下ろした垂線の長さが第6の距離L6よりも大きいか否かを判定する。第6の距離L6を所定の上限値以下に設定することにより、適度なスムージングが担保される。また、第6の距離L6を所定の下限値以上に設定することにより、過度に平滑化してしまうことが防止される。
(13)第6の距離L6よりも大きい垂線がない場合、点P2を他端側へ一つ移動して工程(11)〜(13)を繰り返す。
(14)第6の距離L6よりも大きい垂線がある場合、点P1と、点P2に対して一端側に隣接する点P2−1との間にある全ての点をノイズとして除去する。すなわち、点P1より右側にあり、かつ、点P2−1より左側の点を全て取り除く。
(15)点P2−1を新たな点P1に設定するとともに、点P2が最も他端側の最低標高点に到達するまで前記工程(11)〜(15)を繰り返す。
【0066】
以上のようなノイズ除去アルゴリズムによれば、上記パラメータL1〜L6、およびKを適切に設定することにより、同じ処理手順でありながら様々な点群のノイズ状況に対応した処理が実現される。
【0067】
なお、本実施形態において、ノイズ除去処理部53は、ノイズ除去アルゴリズムとしてローリングボールアルゴリズムを使用することもできる。この場合、ノイズ除去処理部53は、各垂直断面のそれぞれについて想定された上記2平面間の3次元点群データに対して、以下の処理(1)〜(5)を実行することによりノイズを除去する。
【0068】
(1)適当な半径の球または円柱を定める。
(2)点群の最も左端点に球または円柱の上端を接する(接点をP1とする)。
(3)当該円内に他の点が入らずに、円周が他の点に接するまで、P1を中心として球または円柱を回転する(転がす)。この時に接した点をP2とする。
(4)P2を新たなP1として、P2が発見できなくなるまで繰り返す。
(5)以上の処理の後、P1またはP2とならなかった点を全て削除する。
【0069】
ただし、ローリングボールアルゴリズムは、上述したとおり、球または円柱の半径によってノイズの除去精度が大きく左右される上、点群の点間距離が設定半径以上の場合には、処理が続行不能になってしまうという問題もある。よって、実用性が低い。
【0070】
以上のように、ノイズ除去処理部53によってノイズとして除去されずに残った点群が、地盤点として採用された点群である。本実施形態において、地盤点として採用された3次元点群データは、垂直断面を設定した各方向ごとに地盤点記憶部43に保存される。
【0071】
地盤形状推定部54は、対象領域内における地盤の3次元形状を推定するものである。本実施形態において、地盤形状推定部54は、地盤点記憶部43に保存されている各方向ごとの地盤点を取得する。そして、
図14に示すように、いずれかの方向において地盤点として採用された全ての3次元点群データを地盤点群とし、当該地盤点群に基づいて、対象領域内における地盤の3次元形状を推定するようになっている。
【0072】
つぎに、本実施形態の地盤形状推定プログラム1a、地盤形状推定装置1および地盤形状推定方法による作用について、
図15を参照しつつ説明する。
【0073】
本実施形態の地盤形状推定プログラム1a、地盤形状推定装置1および地盤形状推定方法によって、所定の対象領域内における地盤の3次元形状を推定する場合、まず、3次元点群データ取得部51が、当該対象領域内の3次元点群データを取得する(ステップS1:3次元点群データ取得ステップ)。
【0074】
つぎに、
図3に示すように、垂直断面設定部52が、対象領域に対して、互いに異なる方向ごとに、平行かつ等間隔な複数の垂直断面を設定する(ステップS2:垂直断面設定ステップ)。これにより、ある垂直断面の方向と平行にブレークラインが存在する場合であっても、当該方向とは異なる方向に別途、垂直断面が設定される。このため、ブレークライン点を欠落させてしまう可能性が最小限に抑えられる。
【0075】
また、本実施形態において、垂直断面設定部52は、45°ずつ角度の異なる4方向に垂直断面の方向を設定する。このため、対象領域内の断面形状が、均等に分割された方向に沿って推定されることとなり、ブレークラインの抽出精度が向上する。
【0076】
さらに、本実施形態において、垂直断面設定部52は、
図3に示すように、ブレークラインに対して直交する方向に、垂直断面を追加設定することも可能である。これにより、ブレークラインを構成する角部やエッジ部を最も推定しやすい方向に垂直断面が設定されるため、ブレークラインを構成する点群の残存確率がさらに向上する。
【0077】
また、本実施形態において、垂直断面設定部52は、3次元点群データの平均点間距離の2倍以上の間隔で各垂直断面を設定する。このため、ノイズをフィルタリングするのに必要最低限の3次元点群データが抽出される。
【0078】
つづいて、ノイズ除去処理部53が、ステップS2で設定された全方向における全垂直断面のそれぞれについてノイズ除去処理を実行する(ステップS3:ノイズ除去処理ステップ)。以下、各垂直断面について実行される本実施形態のノイズ除去処理について、
図16から
図18を参照しつつ説明する。
【0079】
まず、ノイズ除去処理部53は、
図6に示すように、垂直断面を中心とし、第1の間隔L1を隔てて平行に設けられた2平面の間に存在する点群を抽出する(ステップS31)。このとき、第1の間隔L1を適切な値に設定することにより、地盤形状の精細さが担保されるとともに、演算処理に係る負荷が増大しないため処理速度が向上する。
【0080】
つぎに、ノイズ除去処理部53は、
図7に示すように、抽出された点群を垂直断面に対して垂直に投影して投影点群とし(ステップS32)、当該投影点群を投影X軸についてソートする(ステップS33)。
【0081】
つづいて、ノイズ除去処理部53は、
図8に示すように、投影X軸に沿う第2の間隔L2ごとに、当該第2の間隔L2に含まれる投影点群のうち、標高値が最も低い最低標高点を特定する(ステップS34)。このように、複数の区間に分けて処理を実行することにより、演算処理が高速化される。また、第2の間隔L2を投影点群の平均点間距離以上に設定することで、最低標高点を取得できない区間が発生しない。さらに、第2の間隔L2を所定値以下に設定することで、ノイズ除去処理に係る負荷が重くなり過ぎるのを防止する。
【0082】
つぎに、ノイズ除去処理部53は、
図8に示すように、最低標高点のそれぞれを連結して仮の地盤線を算出した後(ステップS35)、
図9に示すように、当該仮の地盤線を構成する全ての線分に対して、下記ステップS36からステップS44の処理を実行する。これにより、仮の地盤線が、より実際の地盤線に近いものとなる。
【0083】
まず、ノイズ除去処理部53は、パラメータmの初期値として1を設定した後(ステップS36)、処理対象とする対象線分PL−PRよりも下方に点PP
mが存在するか否かを判定する(ステップS37)。その判定の結果、点PP
mが存在しない場合(ステップS37:NO)、対象線分PL−PRを仮の地盤線を構成する線分として採用する(ステップS38)。そして、次の対象線分がある限り(ステップS39:YES)、ステップS36へと戻る。
【0084】
一方、点PP
mが存在する場合(ステップS37:YES)、ノイズ除去処理部53は、線分PL−PP
mを仮の地盤線を構成する線分として採用する(ステップS40)。そして、線分PP
m−PRを新たな処理対象とし、当該線分PP
m−PRよりも下方に点PP
m+1が存在するか否かを判定する(ステップS41)。
【0085】
その判定の結果、点PP
m+1が存在しない場合(ステップS41:NO)、線分PP
m−PRを仮の地盤線を構成する線分として採用する(ステップS42)。そして、次の対象線分がある限り(ステップS39:YES)、ステップS36へと戻る。一方、点PP
m+1が存在する場合(ステップS41:YES)、線分PP
m−PP
m+1を仮の地盤線を構成する線分として採用する(ステップS43)。その後、パラメータmをインクリメントし(ステップS44)、ステップS41へと戻る。以上の処理により、点群のうち地盤点である可能性が高い、下方に位置する点が漏れなく地盤点として採用されるため、地盤線の推定精度が向上する。
【0086】
つぎに、上記の処理が全ての対象線分について実行されると(ステップS39:NO)、ノイズ除去処理部53は、
図17に示すように、下記ステップS45からステップS51の処理を実行し、
図10に示すように、仮の地盤線における変化の大まかな傾向を示す傾向線を算出する。
【0087】
具体的には、ノイズ除去処理部53は、まずパラメータnの初期値として1を設定した後(ステップS45)、点P
nからN点分の最低標高点の中で、最も標高値が低い最低標高値を取得する(ステップS46)。つぎに、N点の最低標高点のうち、最低標高値との標高差が第3の距離L3より小さい点の標高値の平均値を投影Z軸値として算出する(ステップS47)。このとき、第3の距離L3を適切な値に設定することにより、細かな変化が除去され、適切な傾向を示す標高値が求められる。
【0088】
また、ノイズ除去処理部53は、平均値の算出に用いた最低標高点のうち、投影X軸方向において最も他端側にある最低標高点の投影X軸値を取得する(ステップS48)。そして、ステップS48で取得した投影X軸値、およびステップS47で算出した投影Z軸値によって特定される点を、傾向線を構成する変化点として採用する(ステップS49)。その後、パラメータnをインクリメントし(ステップS50)、投影X軸方向の一端側からN+n−1点目が、最も他端側の最低標高点に到達するまで(ステップS51)、ステップS46からステップS50を繰り返す。これにより、点P
Nから他端点までの各点について、傾向線を構成する変化点が求められる。
【0089】
また、本実施形態では、ノイズ除去処理部53が、点P
1から点P
N−1までについては、投影X軸方向の他端側から一端側にかけてステップS46からステップS50を実行する(ステップS52)。これにより、点P
1から点P
N−1までについての変化点も算出されるため、仮の地盤線全体に関する傾向線が求められる。
【0090】
つぎに、ノイズ除去処理部53は、
図11に示すように、仮の地盤線を構成する各最低標高点から傾向線に下ろした垂線の長さを算出し(ステップS53)、当該垂線の長さが第4の距離L4以上である最低標高点をノイズとして除去する(ステップS54)。このとき、第4の距離L4を適切に設定することで、傾向線に近い点が漏れなく地盤点として採用されるとともに、傾向線から大きく外れた最低標高点が適切に除去される。
【0091】
つづいて、
図18に示すように、ノイズ除去処理部53は、パラメータiの初期値として1を設定した後(ステップS55)、
図12に示すように、投影X軸の一端側から数えてi番目の最低標高点P
iについて、他端側に隣り合う最低標高点P
i+1との標高差、および隣り合う2点P
i,P
i+1のなす勾配(ΔX/ΔY)を算出する(ステップS56)。そして、当該標高差が第5の距離L5以上、かつ、当該勾配が所定の設定値K以上か否かを判定する(ステップS57)。
【0092】
その判定の結果、当該標高差が第5の距離L5以上、かつ、当該勾配が設定値K以上の場合のみ(ステップS57:YES)、隣り合う最低標高点P
i+1をノイズとして除去する(ステップS58)。そして、点P
i+1が最も他端側の他端点に到達しない限り(ステップS59:NO)、ノイズ除去処理部53はパラメータiをインクリメントし(ステップS60)、ステップS56へ戻る。これにより、第5の距離L5および設定値Kを適切な値に設定することで、地盤点として存在し得ないような特異点が適切に除去されるとともに、実際の地盤点を誤って除去してしまう可能性が低減される。
【0093】
最後に、ノイズ除去処理部53は、下記ステップS61からステップS66の処理を実行することにより、上記処理によって算出された仮の地盤線を平滑化する。
【0094】
まず、ノイズ除去処理部53は、
図13に示すように、各最低標高点のうち、一端側の点P1と、当該点P1に対して他端側の点P2とを結ぶ線分P1−P2を算出した後(ステップS61)、点P1と点P2との間の各点から線分P1−P2に下ろした垂線の長さが第6の距離L6よりも大きいか否かを判定する(ステップS62)。
【0095】
その判定の結果、第6の距離L6よりも大きい垂線がない場合(ステップS62:NO)、点P2を他端側へ一つ移動し(ステップS63)、ステップS61へと戻る。一方、第6の距離L6よりも大きい垂線がある場合(ステップS62:YES)、点P1と、点P2に対して一端側に隣接する点P2−1との間にある全ての点をノイズとして除去する(ステップS)。
【0096】
なお、
図13に示す例では、点P1から4番目の最低標高点が点P2になっており、当該P2の一端側に隣接する点(点P1から3番目の最低標高点)である点P2−1から下ろした垂線の長さa3が、第6の距離L6よりも大きい。よって、点P1から1番目の点と点P1から2番目の点が削除されることとなる。
【0097】
そして、ノイズ除去処理部53は、点P2−1を新たな点P1に設定した後(ステップS65)、点P2が最も他端側の最低標高点に到達しない限り(ステップS66:NO)、ステップS61へと戻り、全ての最低標高点について上記処理を繰り返す。これにより、第6の距離L6を適切な値に設定することで、仮の地盤線が土木工事等の現況線に適したオーダーでスムージングされる。
【0098】
以上のノイズ除去処理ステップにより、草、木、重機等のように、地盤点以外の点の多くがノイズとして除去され、地盤点である可能性の高い点のみが残存する。また、ノイズ除去処理部53は、ノイズの除去処理に際して、
図3に示すように、各垂直断面を中心面とし、各垂直断面間の間隔と同じ間隔を隔てて平行に設けられた2平面を想定する。このため、隣接する垂直断面において、互いに向かい合う側に設定された上記平面が一致し、隙間なく配置される。よって、対象領域内の3次元点群データが漏れなく処理される。
【0099】
つぎに、
図15に戻り、ステップS2で設定された全方向のうち、いずれかの方向において、ステップS3のノイズ除去処理が、全ての垂直断面について終了したか否かが判定される(ステップS4)。ここで、本実施形態のノイズ除去処理は、各方向の各垂直断面ごとに実行される処理であり、他の垂直断面における処理の影響を受けることがない。このため、マルチスレッド処理が可能な本実施形態の地盤形状推定装置1によれば、各方向における各垂直断面ごとのノイズ除去処理を同時に実行できるため、処理速度が高速化される。
【0100】
つづいて、いずれかの方向における全ての垂直断面についてノイズ除去処理が終了すると(ステップS4:YES)、各垂直断面において地盤点として採用された3次元点群データが、当該方向に対応付けられて地盤点記憶部43に保存される(ステップS5)。そして、ステップS2で設定された全ての方向において、全ての垂直断面に対するノイズ除去処理が終了するまで、上記ステップS3〜5の処理が繰り返される(ステップS6)。これにより、ステップS2で設定された各方向ごとに、地盤点として採用された3次元点群データが保存される。
【0101】
全ての方向において地盤点が抽出されると(ステップS6:YES)、地盤形状推定部54が、地盤点記憶部43に保存されている地盤点を参照し、いずれかの方向において地盤点として採用された全ての3次元点群データに基づき、対象領域内における地盤の3次元形状を推定する(ステップS7:地盤形状推定ステップ)。これにより、地盤点が複数方向から検出されてブレークライン等の重要な点の欠落が抑制されるため、地盤の3次元形状の推定精度が向上する。
【0102】
以上のような本実施形態の地盤形状推定プログラム1a、地盤形状推定装置1および地盤形状推定方法によれば、以下のような効果を奏する。
1.地盤点以外の点群をノイズとして高確率で自動的に除去することができ、地盤の3次元形状を高精度に推定することができる。
2.仮の地盤線における変化の傾向を示す傾向線を算出することができる。
3.仮の地盤線全体について傾向線を算出することができる。
4.確実かつ安定した精度で、仮の地盤線を算出することができる。
5.地表面に存在しないような特異点を除去することができる。
6.地盤線を土木工事等に適したオーダーに平滑化することができる。
7.ブレークラインの欠落を最小限に抑えて、地盤の3次元形状の推定精度を向上することができる。
8.ブレークラインに直交する垂直断面を追加設定でき、ブレークラインの抽出精度を向上することができる。
9.各垂直断面の間隔を3次元点群データの平均点間距離の2倍以上とすることで、ノイズのフィルタリングに必要な数の3次元点群データを確保することができる。
10.垂直断面を45°ずつ角度の異なる4方向に自動設定するため、ブレークラインの抽出精度が担保される。
11.各垂直断面ごとのノイズ除去処理をマルチスレッド処理でき、地盤の3次元形状を高速に推定することができる。
【0103】
また、本実施形態の地盤形状推定プログラム1a、地盤形状推定装置1および地盤形状推定方法による、3次元点群データから地盤線(現況横断線)を自動的に推定する工程は、建築・土木構造物の設計システム、あるいは情報化施工、施工管理、完成後の維持・管理システム等における必要な処理工程に組み込むことができる。そして、処理に必要な任意断面における現況横断線を必要に応じてリアルタイム、又は個別に求め、設計に供したり、情報化施工のマシンコントロールデータに供したり、任意の施工段階、維持・管理時点における出来高形状、又は任意時点の地盤形状等を自動的に取得し、利活用に供することが可能となる。
【0104】
以下、具体的に説明する。現況地盤上に構造物等を構築する際には、当該構造物の3次元的な位置、及びサイズにより現況の地盤面を掘削(切土)したり、不足分を盛る(盛土)必要がある。これらの切土量・盛土量を求める方法としては、構造物の設計中心に直角方向に、適当な間隔で横断面を設定し、その横断面内の現況横断線(地表面を表す)上の変化点を計測し、計測された点を結んでできる横断線と、構造物の同断面における設計断面線との2つの断面線により囲まれる面積を求め、2つの断面間の距離を乗じて切・盛土体積を求めるようになっている。
【0105】
情報化施工、及び施工管理においても、任意の施工段階において、任意の断面形状を知る必要がある。また完成後の構造物の任意の時点における任意の断面位置の現況地盤形状を知る必要が生じる。従来、これらの必要な断面形状は、トータルステーションによる測量によってその都度取得している。しかしながら、トータルステーションによる測量では、計測断面を特定するための測量を必要としたり、人が立ち入ることが困難あるいは危険なため、必要な作業ができない断面形状もある等の問題があり、かつ、その計測には相当の時間を必要とする。
【0106】
一方、3次元スキャナー等によって3次元点群データを取得する技術は、上述した問題を解決しうるものではあるが、当該3次元点群データには様々なノイズ(不要点)が含まれている。このため、必要な情報を取得するためには、そのようなノイズの除去処理が必要不可欠であり、当該除去処理にかかる時間やコストが大きいという問題がある。
【0107】
以下、現況横断線を観測するための従来の処理工程について説明する。
図19に示すように、従来、現況横断線を観測するに際しては、主として、下記工程1〜6の手順をとっている。
【0108】
1.現地踏査し、設計・施工・維持監理に必要なデータを所得する位置を特定するための中心線を設置する。
2.設置された中心線上の観測すべき位置(測点)を測量により特定し、杭を打つなどにより観測の必要な複数の横断線を特定する。
3.特定された各横断線に沿って、現況の標高が変化する点(横断点)を観測する。
4.観測データに基づき、各測点における現況横断線(ポリライン)を生成する。
5.計算により求められた現況横断線データをファイルに登録する。
6.登録された現況横断線データを読み込み、必要な計算処理に供する。
【0109】
しかしながら、上記の手順では、現況横断線データは、処理開始までに生成されて、ファイルに登録されている必要があり、その結果ファイルを入力し、処理結果を出力するという、いわゆるバッチ処理のみが可能な処理系である。従って、何らかの理由により、処理対象の断面位置が変更になった場合、現場での作業となる上記工程1〜3を含めて、最初からやり直さなければならず、非常に時間やコストがかかる。
【0110】
これに対し、
図20に示すように、本発明に係る処理工程を採用した場合、主として、下記工程1〜6の手順によって現況横断線が観測される。
【0111】
1.現地踏査し、処理対象となる可能性のある領域全体に対して要求精度、コスト、計測の可能性などを考慮して適切な方法により、3次元点群データを取得して登録する。
2.システム内に処理対象の断面を特定するための中心線等の特定ルールを登録する。
3.前記特定ルールに従い、現況横断線の両端座標によって、処理対象の断面位置を自動的に定める。なお、特定された処理対象の断面位置の点群をリアルタイムに計測するシステムを組み込むことが可能なときには、必要に応じてデータの計測を実行する。
4.前記工程3で定めた各断面位置に対して、前記工程1により登録されている点群、またはリアルタイム観測された点群から、現況横断線を自動推定する。
5.前記工程4で求められた現況横断線を用いて、必要な処理を実行し、必要な断面が他にあれば前記工程3に戻る。ここで、必要な処理としては、以下のような処理が挙げられる。
・設計計算
・施工管理のための処理(出来高、出来型の自動算出)
・情報化施工のためのマシンコントロールデータの自動生成
・維持/管理のための任意時期の作工物、及び現況地盤の形状把握
6.処理結果を評価し、処理が必要な断面の特定ルール(中心線等)を変更する場合には前記工程2に戻る。
【0112】
上記工程のうち、現場での作業は上記工程1のみであり、他の上記工程2〜6はシステム内で自動的に進められる処理である。このため、従来のように、現場での作業工程に戻る必要が無く、様々な処理を繰り返したり、処理対象の断面位置を動的に変更することが可能である。
【0113】
以上のとおり、本実施形態の地盤形状推定プログラム1a、地盤形状推定装置1および地盤形状推定方法によって実現される、3次元点群データから高い確率でノイズを自動的に除去し、現況横断線を高精度に推定する処理工程は、予め計測された3次元点群データ、又はリアルタイムに計測される3次元点群データを、構造物の設計システム、又は情報化施工、施工管理、完成後の維持・管理システムの必要な処理過程に組み込み、上記の工程により、任意時点の、必要な任意断面の現況地盤線を取得することができ、各処理の作業工程の短縮、高速化に寄与できる。
【0114】
なお、本発明に係る地盤形状推定プログラム1a、地盤形状推定装置1および地盤形状推定方法は、前述した実施形態に限定されるものではなく、適宜変更することができる。
【0115】
例えば、上述した本実施形態では、垂直断面の方向や間隔が自動的に設定されているが、この構成に限定されるものではななく、ユーザがマニュアルで任意の方向および値に適宜設定してもよい。
【0116】
また、上述した本実施形態では、ブレークラインに直交する垂直断面をマニュアルで設定しているが、この構成に限定されるものではなく、自動的に設定してもよい。具体的には、地盤形状の推定結果に基づいてブレークラインを自動的に検出し、当該ブレークラインに対して直交する方向に垂直断面を自動的に設定してもよい。
【0117】
さらに、上述した本実施形態では、本発明に係る独自の処理によって仮の地盤線を算出しているが、この構成に限定されるものではなく、ローリングボールアルゴリズムを用いて算出してもよい。
【0118】
また、上述した本実施形態では、本発明に係る独自の平均法によって傾向線を算出しているが、この構成に限定されるものではなく、最小二乗法等の傾向推定処理を用いて算出してもよい。
【0119】
さらに、上述した本実施形態では、投影X軸方向において、一端側から他端側にかけて各種の処理を実行しているが、この構成に限定されるものではなく、他端側から一端側にかけて実行してもよい。