(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6201060
(24)【登録日】2017年9月1日
(45)【発行日】2017年9月20日
(54)【発明の名称】テンショナ
(51)【国際特許分類】
F16H 7/12 20060101AFI20170911BHJP
【FI】
F16H7/12 A
【請求項の数】22
【全頁数】23
(21)【出願番号】特願2016-550608(P2016-550608)
(86)(22)【出願日】2015年1月19日
(65)【公表番号】特表2017-508116(P2017-508116A)
(43)【公表日】2017年3月23日
(86)【国際出願番号】US2015011927
(87)【国際公開番号】WO2015119765
(87)【国際公開日】20150813
【審査請求日】2016年8月23日
(31)【優先権主張番号】14/173,978
(32)【優先日】2014年2月6日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】504005091
【氏名又は名称】ゲイツ コーポレイション
(74)【代理人】
【識別番号】100090169
【弁理士】
【氏名又は名称】松浦 孝
(74)【代理人】
【識別番号】100124497
【弁理士】
【氏名又は名称】小倉 洋樹
(72)【発明者】
【氏名】サーク,アレクサンダー
(72)【発明者】
【氏名】シュナイダー,ディーン
【審査官】
前田 浩
(56)【参考文献】
【文献】
独国特許出願公開第102005039719(DE,A1)
【文献】
特表2005−537439(JP,A)
【文献】
米国特許第5000724(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16H 7/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ベースと、
前記ベースに旋回可能に係合される第1ピボットアームと、前記第1ピボットアームに軸支される第1プーリと、
前記ベースに旋回可能に係合される第2ピボットアームと、前記第2ピボットアームに軸支される第2プーリと、
前記第1ピボットアームと歯合するとともに前記第2ピボットアームと歯合し、それにより前記第1ピボットアームと前記第2ピボットアームを同調させて動かす可撓性抗張部材と、
前記ベースに旋回可能に係合され、前記可撓性抗張部材に係合されるテンショナ組立体と
を備えることを特徴とするテンショナ。
【請求項2】
前記第1ピボットアームと摩擦係合する第1ダンピング組立体を備え、前記第1ダンピング組立体は、第2方向よりも第1方向において前記第1ピボットアームに対してより大きなダンピング力を作用し、
前記第2ピボットアームと摩擦係合する第2ダンピング組立体を備え、前記第2ダンピング組立体は、第2方向よりも第1方向において前記第2ピボットアームに対してより大きなダンピング力を作用する
ことを特徴とする請求項1に記載のテンショナ。
【請求項3】
前記第1ダンピング組立体は、前記ベースに係合する第1クラッチスプリングを備え、前記第1クラッチスプリングは、巻き戻し方向に荷重が掛けられており、
前記第2ダンピング組立体は、前記ベースに係合する第2クラッチスプリングを備え、前記第2クラッチスプリングは、巻き戻し方向に荷重が掛けられている
ことを特徴とする請求項2に記載のテンショナ。
【請求項4】
前記第1クラッチスプリングが前記第2クラッチスプリングとは逆向きに巻かれていることを特徴とする請求項3に記載のテンショナ。
【請求項5】
テンショナ組立体が、トーションスプリングを備えることを特徴とする請求項4に記載のテンショナ。
【請求項6】
前記第1ピボットアームが、ファスナを受け入れるボアを備え、前記第2ピボットアームが、ファスナを受け入れるボアを備えることを特徴とする請求項1に記載のテンショナ。
【請求項7】
前記可撓性抗張部材が、歯付ベルトを含むことを特徴とする請求項1に記載のテンショナ。
【請求項8】
前記第1ダンピング組立体が、第1ダンピングリングの径方向内側に第1ダンピングシューを備え、前記第1ダンピングシューが、前記第1クラッチスプリングと係合可能であり、前記第1ダンピングリングが、前記第1ピボットアームと係合されていることを特徴とする請求項4に記載のテンショナ。
【請求項9】
前記第2ダンピング組立体が、第2ダンピングリングの径方向内側に第2ダンピングシューを備え、前記第2ダンピングシューが、前記第2クラッチスプリングと係合可能であり、前記第2ダンピングリングが、前記第2ピボットアームと係合されていることを特徴とする請求項4に記載のテンショナ。
【請求項10】
オルタネータに取り付けられたことを特徴とする請求項1に記載のテンショナ。
【請求項11】
ベースと、
各々前記ベースに旋回可能に取り付けられる第1テンショナ組立体と第2テンショナ組立体と、
前記第1テンショナ組立体と前記第2テンショナ組立体の間に掛け回される可撓性抗張部材とを備え、前記可撓性抗張部材は、前記第1テンショナ組立体と前記第2テンショナ組立体の同調した動きを引き起こし、
前記可撓性抗張部材と係合された前記ベースに取り付けられた第3テンショナを備える
ことを特徴とするテンショナ。
【請求項12】
ベースと、
前記ベースに取り付けられた第1テンショナ組立体を備え、前記第1テンショナ組立体は、第1ピボットアームと前記第1ピボットアームの所定の第1方向への動きを摩擦により制限するように構成された第1ダンピング組立体と、前記第1ピボットアームに軸支される第1プーリとを備え、
前記ベースに取り付けられた第2テンショナ組立体を備え、前記第2テンショナ組立体は、第2ピボットアームと前記第2ピボットアームの所定の第2方向への動きを摩擦により制限するように構成された第2ダンピング組立体と、前記第2ピボットアームに軸支される第2プーリとを備え、
前記第1テンショナ組立体と前記第2テンショナ組立体の間に係合される可撓性部材を備え、前記可撓性部材は、前記第1テンショナ組立体と前記第2テンショナ組立体の動きを制御するように構成され、
前記ベースに取り付けられ、前記可撓性部材に係合される第3テンショナを備える
ことを特徴とするテンショナ。
【請求項13】
前記第1ダンピング組立体が、前記ベースに係合される第1クラッチスプリングを備え、前記第1クラッチスプリングは巻き戻し方向に荷重が掛けられ、
前記第2ダンピング組立体が、前記ベースに係合される第2クラッチスプリングを備え、前記第2クラッチスプリングは巻き戻し方向に荷重が掛けられる
ことを特徴とする請求項12に記載のテンショナ。
【請求項14】
前記第1クラッチスプリングが、前記第2クラッチスプリングとは逆向きに巻かれていることを特徴とする請求項13に記載のテンショナ。
【請求項15】
前記第3テンショナがトーションスプリングを備えることを特徴とする請求項14に記載のテンショナ。
【請求項16】
前記第1ピボットアームがファスナを受け入れるボアを備え、前記第2ピボットアームがファスナを受け入れるボアを備えることを特徴とする請求項12に記載のテンショナ。
【請求項17】
前記可撓性部材が歯付きベルトを含むことを特徴とする請求項12に記載のテンショナ。
【請求項18】
前記第1ダンピング組立体が、第1ダンピングリングの径方向内側に第1ダンピングシューを備え、前記第1ダンピングシューが、前記第1クラッチスプリングと係合可能であることを特徴とする請求項13に記載のテンショナ。
【請求項19】
前記第2ダンピング組立体が、第2ダンピングリングの径方向内側に第2ダンピングシューを備え、前記第2ダンピングシューが、前記第2クラッチスプリングと係合可能であることを特徴とする請求項13に記載のテンショナ。
【請求項20】
前記所定の第1の方向が前記所定の第2の方向とは異なることを特徴とする請求項12に記載のテンショナ。
【請求項21】
前記第1ピボットアームが第1ピボット軸を備え、
前記第2ピボットアームが第2ピボット軸を備え、
前記第1ピボット軸と第2ピボット軸が同軸でない
ことを特徴とする請求項12に記載のテンショナ。
【請求項22】
前記テンショナがオルタネータに取り付けられており、前記第1プーリと前記第2プーリがベルトに係合し、前記ベルトが前記オルタネータに係合されていることを特徴とする請求項12に記載のテンショナ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、テンショナに関し、より具体的には、ベースに搭載された第1ピボットアームおよび第2ピボットアームと、両ピボットアームが同調して動くように第1ピボットアームと第2ピボットアームの間に掛け回される可撓性部材と、可撓性部材に係合するベースに取り付けられたテンショナ組立体とを備えるテンショナに関する。
【背景技術】
【0002】
総じてベルト伝動アプリケーションでは、適正なベルト張力を維持する能力は、ベルトのスリップなしでの動力伝達を保証するのに重要である。ベルト伝動における最低張力スパンは、通常緩み側スパンと呼ばれる。テンショナは、伝統的にベルト伝動におけるこの緩み側スパンに配置され、このスパンにおいて適正な最低ベルト張力を維持することを課せられている。ベルトの回転方向をガイドにすると、このスパンは動力を与えるプーリ、この場合、クランクシャフトの直ぐ後に位置するスパンである。例えば、クランクシャフトが回転するとき、緩み側スパンはベルトがクランクシャフトプーリを離れた直後のスパンとなり、張り側張力はクランクシャフトプーリに向かっているスパンとなる。
【0003】
ベルト・オルタネータ・スタータ(BAS)システムは、モータとしても機能するオルタネータを利用する。これはときにモータ・ジェネレータと呼ばれる。BASシステムの運転は、エンジンが運転中は、オルタネータが初め伝統的な方法で動作し、ベルトはエンジン・クランクシャフト・プーリにより与えられる動力で通常に力が加えられ、オルタネータにより負荷が掛けられる。BASシステムでは、伝動装置は、ベルトがクランクシャフトを通り過ぎた後の次の補機にオルタネータがなるように一般的に配置される。この配置では、ベルトテンショナは、クランクシャフトプーリとオルタネータの間に配置される必要がある。テンショナは、ベルトの回転方向をガイドにすると、オルタネータの直前に配置される。
【0004】
BASシステムは、ベルト伝動に特異な問題をもたらす。オルタネータはベルト伝動装置の負荷としての役割を果たすとともに、ベルト伝動装置への動力供給部としての役割も果たす。BASシステムのオルタネータは、エンジンを始動するのに使用され、オルタネータはエンジンに動力を与えるために使用される。始動時には、オルタネータプーリは、伝動装置の動力供給部となる。これは一般的に、伝動装置における緩み側スパンの位置をオルタネータプーリに続くスパンへと変える。加えて、張り側スパンは、このときオルタネータとクランクシャフトの間のスパンとなる。伝統的なテンショナは、単に緩み側張力の最低レベルを維持するように設計されているため、ここでテンショナ位置におけるベルトの高い張力は、テンショナの過剰な運動を引き起こす。更に、この状況は、新たな緩み側スパンの位置における第2のテンショナの必要性を生む。
【0005】
この問題を解決するための伝統的なアプローチは、ベルト伝動装置を2台のテンショナを用いて制作することである。この第2のテンショナは、一般的にベルトから離れる動作に対して大きな抵抗を示すテンショナである。第2のテンショナは、多くの場合高価な油圧テンショナである。この2台のテンショナの配置は、伝動装置における複数のテンショナに適合するために過剰に長いベルトも必要とする。これは多くの場合、高価な解決策となる。
【0006】
この技術の代表は、米国特許第7494434号明細書であり、駆動用およびエンジンにより駆動されることに適合されたベルト駆動スタータジェネレータを備えるエンジン用の補機駆動装置を開示する。典型的な実施形態では、伝動装置は第1エンジン駆動プーリと第2スタータ駆動プーリを備える。伝動ベルトは、一方のプーリを他方のプーリにより駆動するため両プーリに係合する。組み立て済みのユニットとして作成されたデュアル・ベルト・テンショナは、エンジンに中心軸が取り付けられたキャリアと、中心軸から径方向に延出する第1、第2キャリアアームとを備える。第1アームに取り付けられた第1テンショナは、エンジン始動の間、緩み側である第2駆動プーリに隣接する第1ベルト走行部に対して付勢される第1テンショナプーリを支持する。第2アームに支持される第2テンショナプーリは、エンジン始動の間、張り側である第2駆動プーリに隣接する第2ベルト走行部に対して付勢される。第2アームに連結され、好ましくは組み立て済みのユニットに含まれる油圧ストラットは、エンジンの通常運転時、適度に第2テンショナプーリを付勢するとともに、エンジン始動時およびエンジンの過渡運転において第2テンショナプーリの反動を制限する速度感応式抵抗を第2テンショナプーリに与え、ベルト力を増大する。
【0007】
必要とされているのは、ベースに取り付けられた第1ピボットアームと第2ピボットアーム、第1ピボットアームと第2ピボットアームの間に掛け回された可撓性部材を備え、ピボットアーム同士が同調して動き、テンショナ組立体が可撓性部材と係合するベースに取り付けられるテンショナである。本発明はこの要求に合致する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明の第1の目的は、ベースに取り付けられた第1ピボットアームと第2ピボットアーム、第1ピボットアームと第2ピボットアームの間に掛け回された可撓性部材を備え、ピボットアーム同士が同調して動き、テンショナ組立体が可撓性部材と係合するベースに取り付けられるテンショナを提供することである。
【0009】
本発明の他の目的は、本発明の以下の詳細な説明と添付図面により指摘され明らかにされる。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、ベースと、ベースに旋回可能に係合される第1ピボットアームと、第1ピボットアームに軸支される第1プーリと、ベースに旋回可能に係合される第2ピボットアームと、第2ピボットアームに軸支される第2プーリと、第1ピボットアームと歯合するとともに第2ピボットアームと歯合し、それにより第1ピボットアームと第2ピボットアームを同調させて動かす可撓性抗張部材と、ベースに旋回可能に係合され、可撓性抗張部材に係合されるテンショナ組立体とを備えるテンショナを具備する。
【図面の簡単な説明】
【0011】
本明細書に組み込まれ、その一部を構成する添付図面は、本発明の実施形態を例示し、詳細な説明とともに、本発明の原理を説明するためのものである。
【
図9】
図8の同期テンショナ組立体の分解図である。
【
図15】エンジン上で運転状態にある本装置の詳細を示す。
【
図16】静止状態におけるピボットアーム5、ピボットアーム55とハブ荷重の方向を示す。
【
図17A】ピボットアーム負荷状態の詳細図である。
【
図17B】ピボットアーム負荷状態の詳細図である。
【
図18】オルタネータ始動モードポジションにおけるピボットアーム5およびピボットアーム55、ハブ荷重の方向を示す。
【
図22A】運転状態におけるピボットアームの位置を示す。
【
図22B】運転状態におけるピボットアームの位置を示す。
【
図22C】運転状態におけるピボットアームの位置を示す。
【
図22D】運転状態におけるピボットアームの位置を示す。
【
図23】
図8のテンショナ組立体を下側から見た図である。
【
図26】オルタネータに取り付けられたテンショナの背面詳細図である。
【
図27】オルタネータに取り付けられたテンショナの背面からの上面斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
図1は、本装置の上面斜視図である。本発明に係るテンショナ1000は、各々旋回自在にベース1に取り付けられる第1テンショナ組立体501および第2テンショナ組立体502を備える。
【0013】
図2は、本装置の断面図である。ベース1から延出するのはシャフト2とシャフト22である。ピボットアーム5は、ブッシュ6を介してシャフト2に旋回自在に軸支される。ピボットアーム5のピボット軸は、シャフト2と同軸である。ピボットアーム55は、ブッシュ66を介してシャフト22に旋回自在に軸支される。ピボットアーム55のピボット軸は、シャフト22と同軸である。シャフト2とシャフト22は、同軸ではない。アーム5のピボット軸は、アーム55のピボット軸と同軸でない。
【0014】
クラッチスプリング3は、ダンピング組立体4とベース1の間に係合される。クラッチスプリング33は、ダンピング組立体44とベース1の間に係合される。プーリ101は、ベアリング102を介してピボットアーム55に軸支される。プーリ10は、ベアリング12を介してピボットアーム5に軸支される。クラッチスプリング3とクラッチスプリング33は、ダンピング機能を作動させるのに使用される。
【0015】
ファスナ14とファスナ144は、カバー9をベース1に保持する。アーム5は、リテーニングリング7によりベース1に保持される。テンショナ組立体15は、カバー9によりベース1に保持される。カバー9は、内部コンポーネントを異物から保護する。
【0016】
図3は、本装置の分解図である。ワッシャ120は、リテーニングリング7とブッシュ6の間に配置される。ワッシャ122は、リテーニングリング77とブッシュ66の間に配置される。アーム5は、ブッシュ6とブッシュ661の周りに旋回する。アーム55は、ブッシュ660とブッシュ66の周りに旋回する。ファスナ13はアーム5と係合する。ファスナ133はアーム55と係合する。
【0017】
図4は、ダンピング組立体の詳細図である。
図5は、
図4のダンピング組立体の分解図である。ダンピング組立体4は、ダンピングシュー41とダンピングリング42を備える。ダンピングリング42は、ダンピングシュー41と同軸である。ダンピングリング42は、軸方向にギャップ421を備える円筒形状を呈する。ダンピングリング42は、ダンピングシュー41を収容するため、内側に突出する複数のタブ420、430を備える。ダンピングシュー41は、軸方向にギャップ410を備える円筒形状を呈する。ダンピングリング42の外側面422は、ピボットアーム5の内側面51と係合する。
【0018】
図6は、ダンピング組立体の詳細図である。
図7は、
図6のダンピング組立体の分解図である。ダンピング組立体44は、ダンピングシュー441とダンピングリング442を備える。ダンピングリング442は、ダンピングシュー441と同軸である。ダンピングリング442は、軸方向にギャップ4440を備える円筒形状を呈する。ダンピングリング442は、ダンピングシュー441を収容するため、内側に突出する複数のタブ4420、4430を備える。ダンピングシュー441は、軸方向にギャップ4410を備える円筒形状を呈する。ダンピングリング442の外側面4421は、ピボットアーム55の内側面551と係合する。
【0019】
図8は、テンショナ組立体の上面斜視図である。
図9は、
図8のテンショナ組立体の分解図である。同期テンショナ組立体15は、回転自在なベルトガイド151、ファスナ152、アーム153、スプリング154を備える。ベルトガイド151は、シャフト155によりアーム153に軸支される。シャフト155は、アーム153において穴1532に係合する。アーム153は、ファスナ152によりベース1に旋回自在に取付けられている。スプリング154は、タブ1530およびタブ1531によりアーム153に固定的に取り付けられる(
図28参照)。スプリング154は、アーム153にトルクを掛け、ベルト8に荷重を掛けるための付勢部材としての役割を果たす。
図23は、
図8のテンショナ組立体を下側から見た図である。
図24は、テンショナスプリングの詳細図である。
図25は、ベースの詳細図である。スプリング端部1540は、ベース1内のタブ912とタブ913の間に係合され、荷重が掛かったときにスプリング154が回転するのを防止する(
図21および
図25参照)。
【0020】
シャフト2は、ベース1に固定的に取り付けられる。クラッチスプリング3は、ベース1のスロット911に係合するタング31を通してベース6に固定的に取り付けられる(
図19および
図21参照)。ピボットアーム5とブッシュ6とブッシュ661は、ボア54を通してシャフト2に軸支される。ワッシャ120は、シャフト2と同軸である。リテーニングリング7は、シャフト2上、溝21内に固定的に配置される。ダンピング組立体4は、ピボットアーム5と同軸である。
【0021】
シャフト22は、ベース1に固定的に取り付けられる。クラッチスプリング33は、スロット910に係合するタング331を通してベース1に取り付けられる(
図20および
図21参照)。ピボットアーム55とブッシュ66とブッシュ660は、ボア554を通してシャフト22に軸支される。ワッシャ122は、シャフト22と同軸である。リテーニングリング77は、シャフト22上、溝221内に固定的に配置される。リテーニングリング7は、アーム5をシャフト2上に保持する。リテーニングリング7は、シャフト2上、溝21内に固定的に配置される。リテーニングリング77は、アーム55をシャフト22上に保持する。ダンピング組立体44は、ピボットアーム55と同軸である。ダンピング組立体44は、ピボットアーム・ダンピング面551に摩擦係合する。
【0022】
図10は、アイドラ組立体の詳細図である。
図11は、アイドラ組立体の詳細図である。プーリ10は、ベアリング12に軸支される。ベアリング12は、面53上においてピボットアーム5に軸支される。プーリ101は、ベアリング102に軸支される。ベアリング102は、面553上においてピボットアーム55に軸支される。
【0023】
図12Aは、ピボットアームの詳細図である。
図12Bは、ピボットアームの詳細図である。
図13Aは、ピボットアームの詳細図である。
図13Bは、ピボットアームの詳細図である。ピボットアーム・ベアリング取付面53は、ベアリング12を支持し、ピボットアーム・ボア54と同軸ではない(ベアリング軸(A)とピボット軸(B)のそれぞれを参照)。ピボットアーム・ベアリング取付面553は、ベアリング102を支持し、ピボットアーム・ボア554とは同軸ではない。ボア54は、ファスナ13を受け入れるシャフト2と係合する。ボア554は、ファスナ133を受け入れるシャフト22と係合する。
【0024】
ピボットアーム5は、ピボット軸(A)の周りに旋回する。ベアリング12は、ベアリング軸(B)の周りに回転する。ベアリング軸(B)とピボット軸(A)は、同軸でなく、その代りに、距離(X)離れて互いにオフセットされる。
【0025】
ピボットアーム55は、ピボット軸(A2)の周りに旋回する。ベアリング102は、ベアリング軸(B2)の周りに回転する。ベアリング軸(B2)とピボット軸(A2)は、同軸でなく、その代りに、距離(Y)離れて互いにオフセットされる。
【0026】
ベルト8は、ピボットアーム5とピボットアーム55に設けられたスプロケット52とスプロケット552にそれぞれ係合する。ベルト8は、例えば歯付きベルトであるが、引張荷重を担うのに適切であれば如何なる可撓性部材であってもよい。スプロケット52とスプロケット552は、ベルト8に確りと係合するように各々歯が設けられる。
【0027】
図14は、本装置の内部詳細の上面斜視図である。ベルト8は、テンショナ組立体15に係合する。ベルト8およびベルト200における全ての引張荷重は、テンショナ組立体15により加えられる。ピボットアーム5の回転は、ベルト8の移動を引き起こし、これにより、ピボットアーム5と同じ回転方向に、同期すなわち同調した動き方でピボットアーム55の動きを発生させる。同様に、ピボットアーム55の回転は、ベルト8の移動を引き起こし、これにより、ピボットアーム55と同じ回転方向に、同期すなわち同調した動き方でピボットアーム5の動きを発生させる。そのため、運転時には、ピボットアーム5とピボットアーム55は、ベルト8の動きにより実質的に同時に動く。
【0028】
「同期」運動は、ピボットアーム5とピボットアーム55の動きとして、各ピボットアームが、略同じ角度を亘って略同時に回転するものとして説明できる。「同調」した動きは、ピボットアーム5とピボットアーム55の動きとして、各ピボットが、略同時ではあるが、両ピボットアームに対して同じ角度に亘って回転するのではないものとして説明できる。ピボットアームの異なる角度に亘る回転は、ここで説明されるように、例えばベルト8の伸びにより発生する(
図22参照)。
【0029】
図15は、エンジンにおいて運転位置にある本装置の詳細図である。典型的な非同期補機ベルト伝動システム(ABDS)において、本発明に係る装置1000は、
図15に示されるように配置される。テンショナ1000は、ファスナ13、133を用いてオルタネータ203に取り付けられる。ベルト200は、クランクシャフトプーリ201と、オルタネータプーリ202と、テンショナプーリ10、プーリ101の周りに掛け回される。この配置は、オルタネータプーリ202の両側にベルトスパンを配置する。ベルト200における張力は、テンショナ1000の動作とプーリ10およびプーリ101の位置により維持される。典型的にはベルト200は、周知のマルチリブ・ベルトであり、すなわち、長手方向すなわち無端方向に走る多数のリブを備える。
【0030】
ピボットアーム5の位置、従ってプーリ10の位置は、ベルト8によって制御される。ピボットアーム55、従ってプーリ101の位置も、ベルト8によって制御される。ベルト8の張力は、プーリ10とプーリ101の位置によって制御される。ベルト8の張力は、テンショナ組立体15によって維持される。テンショナ組立体15に係合するベルト8のスパンは、ベルト8の張り側スパンである。ベルト8の残りのスパン81は、テンショニングを全く必要としない。ベルト8の張力は、自身のスプロケット52およびスプロケット552との係合を通してピボットアーム5およびピボットアーム55にそれぞれトルクを発生する。
【0031】
図16は、「静止」状態におけるピボットアーム5およびピボットアーム55と、ハブ荷重の向きを示す。エンジン補機駆動装置が静止状態にあるとき、ベルト200の張力はベルト全体を通して均一化される。この状態におけるベルト200の張力は、初期ベルト張力であり、本発明のテンショナによって達成される。ピボットアーム5とピボットアーム55は、ベルト8に押し当てられるテンショナ組立体15により発生するベルト8の張力によりそれらに引き起こされたトルクにより各々ベルト200に向けて回転しながら押し付けられる。ベルト8の張力は、トルクがベルト200からのハブ荷重により引き起こされるトルクにより逆向きに等しくなるまでピボットアーム5とピボットアーム55を回転させる。ベルト200ハブ荷重は、ベアリング12とベアリング102の中心軸を通してピボットアーム5およびピボットアーム55に対してそれぞれ作用する。これは、それぞれのアームに掛かる荷重の方向と有効アーム長さとに基づき、ピボットアーム5とピボットアーム55の各々に引き起こされるトルクを発生させる。ピボットアーム5とピボットアーム55の各々は、ハブ荷重によるトルクが、それぞれピボットアーム5とピボットアーム55ベルト8のトルクに等しく反対向きになるまで回転する。
【0032】
ピボットアーム5に作用しているベルト8からのモーメントアームの長さは、スプロケット52のピッチ円直径(例えば26.3mm)の1/2に等しい。ピボットアーム5に作用しているベルト200ハブ荷重からのモーメントアームの長さは、アーム長さにピボットアーム5に掛かる力の角度のサイン(正弦)を掛けたものに等しく、これは有効アーム長さと呼ばれる。
図17Aは、ピボットアーム負荷状態の詳細図である。
図17Bは、ピボットアーム負荷状態の詳細図である。
【0033】
ピボットアーム55に作用するベルト8のモーメントアームの長さは、スプロケット552のピッチ円直径(例えば26.3mm)の1/2に等しい。ベルト200ハブ荷重からピボットアーム55に作用するモーメントアームの長さは、アーム長さにピボットアーム55に掛かる力の角度のサイン(正弦)を掛けたものに等しく、これも有効アーム長さと呼ばれる。
【0034】
ベルト伝動装置では、プーリ周りのベルトの捩じり角度(torsion angle)が60度のとき、ベルト張力により引き起こされるハブ荷重は概ねベルト張力に等しい。例えば、ベルトの各スパンにおける張力が100Nであれば、捩じり角度が60度のときピボットアーム5に掛かるハブ荷重は、100Nに等しい。
【0035】
このとき、ピボットアーム5に引き起こされるトルクは、ハブ荷重100Nに有効アーム長さを掛けたものとなる。もし、有効アーム長さが7mmであれば、ハブ荷重からピボットアーム5に掛かるトルクは、100N×0.007m=0.70Nmとなる。
【0036】
このとき、大きさが等しく、反対向きのトルクをピボットアーム5およびピボットアーム55に引き起こすためにはベルト8の張力は、0.7Nm/0.0263m=26.6Nとなる必要がある。
【0037】
上記例に示されるように、ベルト8の張力は、ベルト200緩み側張力の概ね1/4であれば十分である。これは有効アーム長さのスプロケット52およびスプロケット552の半径に対する比率である。
【0038】
図18は、オルタネータ始動モードイベントにおけるピボットアーム5およびピボットアーム55、ハブ荷重の方向を示す。オルタネータが、システム内でクランクシャフトの代わりに原動プーリとなる始動イベントの間、
図18における上側スパン(C)が緩み側スパンとなり、下側スパン(D)が張り側スパンとなる。もしオルタネータが、始動のために60Nmのトルクを供給すると、張り側張力は、このレベルの動力伝達を維持できるレベルにまで上昇する必要がある。始動イベントにおいて、下側ピボットアーム55は、増大されたベルト200の張力により回転される。ベルト200の張力は、エンジンの回転を開始する、すなわちクランクシャフトを駆動するのに十分なレベルまで上昇する。
【0039】
ベルト伝動装置では、張り側張力の緩み側張力に対するプーリ周りの比率が、張力比として知られている。ABDS伝動装置において、適正なベルト機能を維持するには、張力比は約5である必要がある。
【0040】
オルタネータにより60Nmのトルクの供給を要求する始動イベントでは、60Nmのトルクを発生するのに必要なオルタネータプーリ周りにおける張力の差が:
トルク=r×ΔT=r(T2−T1) (式1)
ここでT2=張り側張力
T1=緩み側張力
R=プーリ半径=0.030m
ΔTについて解くと:
ΔT=トルク/r=60/0.030=2000N
【0041】
緩み側張力が、適正なABDSシステムの機能を維持するのに張力比5が維持されるべきであることが知られている。これにより:
T2/T1=5 (式2)
【0042】
ΔT=T2−T1 (式3)
である。
【0043】
式3においてT2について解くと、
T2=ΔT+T1
【0044】
式2に代入してT1について解くと
(ΔT+T1)/T1=5
ΔT+T1=5T1
ΔT=4T1
ΔT/4=T1
2000/4=T1
T1=500N
【0045】
式2に戻して代入すると、
T2/T1=5
T2/500=5
T2=2500N
【0046】
始動イベントの間における張り側スパン(T2)(
図18の(D)参照)の高い張力は、ピボットアーム55に掛かるハブ荷重が、アームの方向がハブ荷重の方向に本質的に平行になる位置(
図18参照)までアームを回転させるトルクを発生させる。これはテンショナ組立体502を固定アイドラへと一時的に変換する効果を有する。テンショナ組立体502のピボットアーム55の回転量は約65度である。
【0047】
ピボットアーム5とピボットアーム55の配置は、各々がベルト200に向けて回転するときのプーリ10、プーリ101各々のベルト200に向かう回転角当たりの移動量が、各ピボットアームが回転してベルト200から離れるときよりも大きくなるように配置される。これは同じベルト長さを維持するため、緩み側テンショナ組立体501の回転角が、張り側テンショナ組立体502により移動されるものよりも小さくなることを要求する。表1は、ベルト伸び無しでの始動イベントにおける各ピボットアーム5およびピボットアーム55の回転量を示す。
【0049】
ベルト200が負荷により伸びることから、緩み側ピボットアーム5は、この伸びを埋め合わせしなければならない。負荷によるベルトの伸びを3mmと仮定すると、緩み側テンショナは、この追加されたベルト長さを吸収するために追加的に30度回転する必要がある。表2は、ベルト伸びを考慮した情報を含む始動イベントにおける各ピボットアーム5およびピボットアーム55の回転量を示す。
【0051】
表2に示されるように、緩み側テンショナ・ピボットアーム5は、ベルト200の伸びのために追加的に30度回転する必要がある。
図22Aは、運転状態におけるピボットアームの位置を示す。
図22Bは、運転状態におけるピボットアームの位置を示す。
図22Cは、運転状態におけるピボットアームの位置を示す。
図22Dは、運転状態におけるピボットアームの位置を示す。
【0052】
更に、この配置は、それがベルト200に向かって移動するに従って緩み側ピボットアーム5の有効アーム長さが低減するような配置である。この有効アーム長さの低減は、本発明の装置が、緩み側張力を増大させ、オルタネータ始動時などのイベントにおいてベルト200の張力全体を増大させることを可能にする。これは、ベルト8の張力がテンショナ組立体15により制御されることから達成される。テンショナ組立体15は、前述したようにベルト200のハブ荷重により対抗されるべきピボットアーム5のトルクを発生する。緩み側ピボットアーム5の55度の回転は、その有効アーム長さを7mmから4.2mmへと低減する。
【0053】
テンショナ組立体15がベルト8の張力、それによりベルト200を制御することから、それはピボットアーム5のトルクを制御する。ピボットアーム5の回転角は、ピボットアーム55の回転角よりも10度小さい。これはテンショナ組立体15に作用するベルト8のスパンを実際に短くし、それによりテンショナ組立体15の回転を引き起こす。テンショナ組立体15の回転は、ベルト8の張力を増大させる。ベルト8の張力の増大は、ピボットアーム5とピボットアーム55のトルクを増大する。ピボットアーム5とピボットアーム55の反対向きのトルクを引き起こすハブ荷重力は、釣り合いに達するまで増大することになる。
【0054】
前述したようにハブ荷重に略等しい、ベルト200の張力を計算するには、単にピボットアーム5のベルト8からのトルクを新たな有効アーム長さで割ればよい。新たなベルト8の張力は、81Nである。ベルト8からのピボットアームのトルクは、2.13Nmである。ベルト200の張力は、2.13Nm/0.0042m=507Nである。この張力は、先に計算された最少緩み側張力(T1)よりも大きく、適正な全体のベルト張力を発生する。緩み側張力を増大させる本発明の装置の能力は、総体的な初張力を低減するのに有利であり、これはベルト寿命および補機寿命に有益である。
【0055】
そのため、60Nmの始動イベントにおいては、本発明の装置は、最少の500Nの緩み側張力を与える。60Nmの回生ブレーキイベントにおいては、本発明の装置は、最少の500Nの緩み側張力を与える。負荷のない状況においては、本発明の装置は、低減された100Nの緩み側張力を与える。20Nmのオルタネータ負荷など中負荷が掛かった状況においては、本発明の装置は、167Nの必要な緩み側張力を与える。
【0056】
なお、この説明において使用された数値は全て、単なる説明のための例示的なものであり、本発明の範囲を限定することを意図したものではない。
【0057】
ベルト振動のダンピングは、テンショナの重要な機能である。ダンピングは、最も多くの場合、テンショナ・ピボットアームの動きに対し抵抗を発生させることで達成される。ABDSテンショナに非対称ダンピングを持たせることが有利であると一般的に考えられている。非対称ダンピングは、テンショナ・ピボットアームの移動方向に応じて、テンショナアームの動きに対する抵抗が異なる状態である。
【0058】
図19は、クラッチスプリングの詳細図である。
図20は、クラッチスプリングの詳細図である。本発明のテンショナにおけるダンピングは、ダンピング組立体4のクラッチスプリング3とピボットアーム5との相互干渉と、ダンピング組立体44のクラッチスプリング33とピボットアーム55との相互干渉を通して引き起こされる。クラッチスプリング3は、右巻であり、クラッチスプリング33は左巻である。クラッチスプリング3は、タング31のスロット911内への係合を通してベース1に取り付けられる。クラッチスプリング33は、タング331のスロット910内への係合を通してベース1に取り付けられる(
図21参照)。
図21はベースの詳細図である。
【0059】
クラッチスプリング3は、ダンピング組立体4に対して一方向クラッチとして作用する。クラッチスプリング3は、ダンピング組立体4を、ピボットアーム5がベルト200に向けて回転する方向のみにそれが自由に回転するように規制する。ダンピング組立体4は、ダンピングシュー41がダンピングリング42に外向き圧力を与え、外側へ押出してピボットアーム5のダンピング面51と接触するように構成される。この外向き圧力により生成される垂直力は、ピボットアーム5上のダンピングリング42の摩擦係数と合同して、ダンピング組立体4とピボットアーム5の間の動きを妨げる摩擦力を発生する。摩擦力は、ダンピング組立体4が回転するときに、ダンピング組立体4が、ピボットアーム5の回転を促すようにする。
【0060】
クラッチスプリング33は、ダンピング組立体44に対して一方向クラッチとして作用する。クラッチスプリング33は、ダンピング組立体44を、ピボットアーム55がベルト200に向けて回転する方向のみにそれが自由に回転するように規制する。ダンピング組立体44は、ダンピングシュー441がダンピングリング442に外向き圧力を与え、外側へ押出してピボットアーム55のダンピング面551と接触するように構成される。この外向き圧力により生成される垂直力は、ピボットアーム55上のダンピングリング442の摩擦係数と合同して、ダンピング組立体44とピボットアーム55の間の動きを妨げる摩擦力を発生する。摩擦力は、ダンピング組立体44が回転するときに、ダンピング組立体44が、ピボットアーム55の回転を促すようにする。
【0061】
ベルト200の張り側スパンがテンショナ組立体15と係合する車両の運転中において、ベルト200張力が増大すると、ピボットアーム5に掛かるハブ荷重により発現するトルクが増大し、ピボットアーム5がベルト200から離れる回転を引き起こす。ベルト200から離れるこの移動において、クラッチスプリング3はダンピング組立体4に対しロックし、ダンピングリング4のピボットアーム5とともに回転する機能を停止し、ピボットアーム5の回転を停止する。このときピボットアーム5は、増大するハブ荷重により引き起こされるトルクがダンピング組立体4からの抵抗を上回って初めて回転できる。更に、ベルト200の緩み側スパンの張力が低下し、それぞれのピボットアーム55がベルト200に向けて移動する。この回転の方向において、クラッチスプリング33のクラッチがリリースすることから、ピボットアーム55は自由に回転し、それにより適正な緩み側スパンベルト張力を維持する。
【0062】
張り側スパンがテンショナ組立体502に押接する車両の運転中においては、ベルト200の張力が増大すると、ピボットアーム55に掛かるハブ荷重により発現するトルクが増大し、アームがベルト200から離れる回転を引き起こす。ベルト200から離れるこの移動において、クラッチスプリング33はダンピング組立体44に対しロックし、ダンピング組立体44のピボットアーム55とともに回転する機能を停止し、それによりピボットアーム55の回転を停止する。このときピボットアーム55は、増大するハブ荷重により引き起こされるトルクがダンピング組立体44からの抵抗を上回って初めて回転できる。更に、ベルト200の緩み側スパンの張力が低下し、それぞれのピボットアーム5がベルト200に向けて移動する。この回転の方向において、クラッチスプリング3のクラッチがピボットアーム5をリリースすることから、ピボットアーム5は自由に回転し、それによりベルト200の適正な緩み側スパンベルト張力を維持する。
【0063】
クラッチスプリング3とともに作動するダンピング組立体4により引き起こされるピボットアーム5の回転抵抗は、他方よりも一方の方向への動きにより大きい抵抗を発生する。回転に対する不均等な抵抗は、テンショナ組立体501に非対称ダンピングをもたらす。
【0064】
クラッチスプリング33とともに作動するダンピング組立体44により発生するピボットアーム55の回転抵抗は、他方よりも一方の方向への動きにより大きい抵抗を発生する。回転に対するこの不均等な抵抗は、テンショナ組立体502に非対称ダンピングをもたらす。
【0065】
BASシステムは、例えばオルタネータが電力を生成しているときのように、オルタネータがベルト200を通してクランクシャフトプーリに負荷を与える通常モードでも運転する。
【0066】
BASシステムは、オルタネータがクランクシャフトプーリに大きな負荷を与えるように使用され、それにより車両のブレーキをアシストする、回生ブレーキングとも呼ばれるモードでも運転する。回生ブレーキングイベントでは、ベルトへの負荷は、上述したオルタネータ始動イベントにおけるものとは逆向きである。この場合、本発明のテンショナの機能は、単に切り換えられ、ベルト200の張り側スパンは、テンショナ組立体501に押し当てられ、ベルト200の緩み側スパンはテンショナ組立体502に押し当てられる。
【0067】
スプロケット52とスプロケット552を備える更なる実施形態は、限定されるものではないが、各々独立して、あるいは組み合わされて、形状が非円形である。各スプロケット52とスプロケット552は、ピボットアーム5とピボットアーム55のピボット軸にそれぞれ同軸でなくともよい。スプロケット52とスプロケット552は、ピボットアーム5とピボットアーム55に対して偏心していてもよく、各々は、異なる偏心オフセットを有してもよい。ピボットアーム5は、ピボットアーム55とは異なる偏心オフセットを有してもよい。スプロケット52とスプロケット552は、異なる直径でもよい。ベルト8は、無端、複数の均等に離間された歯でなくともよく、すなわちベルト8は、両端を備えてもよく、その場合スパン81が存在しない。ベルト8は、無端、複数の均等に離間された歯でなくともよく、むしろスプロケット52やスプロケット552との接触面に歯が形成されてさえいればよい。ベルト8は、引張荷重を担える平ベルト、ストラップ、ロープあるいはケーブルなどの可撓性無端部材であってもよい。ベルト8は、テンショナ組立体15近くに軸支される剛体棒でもよい。ベルト8は、ベルト8のスパン81の役割を果たす圧縮性部材で置き換えることもできる。
【0068】
図26は、オルタネータに取り付けられたテンショナの背面詳細図である。ファスナ13とファスナ133が、テンショナ1000をオルタネータ203に取り付けるのに用いられる。
【0069】
図27は、オルタネータに取り付けられたテンショナの背面からの上面斜視図である。
【0070】
図28は、テンショナアームの底面図である。スプリング154の端部1541は、ピボットアーム153上のタブ1530とタブ1531の間に係合する。
【0071】
図29は、
図2の断面29−29の斜視図である。ダンピング組立体4は、ピボットアーム5の面51に摩擦係合する。ダンピング組立体44は、ピボットアーム55の面551に摩擦係合する。クラッチスプリング3は、ダンピングシュー41に摩擦係合する。クラッチスプリング33は、ダンピングシュー441に摩擦係合する。クラッチスプリング3とクラッチスプリング33は、各々巻き戻し方向に荷重が掛けられ、これは掛けられる荷重が増大するに従って各々の径が拡大することを意味する。クラッチスプリング3の拡大は、ダンピングシュー41をダンピングリング42に押し付け、結果、面51を押し付けることとなり、ピボットアーム5の回転を減速あるいは停止する。クラッチスプリング33の拡大は、ダンピングシュー441をダンピングリング442に押し付け、結果、面551を押し付けることとなり、ピボットアーム55の回転を減速あるいは停止する。
【0072】
例えば、もしベルト8が方向(M1)へ移動すると、クラッチスプリング3は、巻き方向へ荷重が掛けられ、そのためピボットアーム5の回転に抵抗しない。しかし、クラッチスプリング33は、巻き戻し方向に荷重が掛けられ、そのためダンピング組立体44はピボットアーム55の回転に抵抗する。
【0073】
もしベルト8が方向(M2)へ移動すると、クラッチスプリング3は、巻き戻し方向に荷重が掛けられ、そのためピボットアーム5の回転に抵抗する。しかし、クラッチスプリング33は、巻き方向へ荷重が掛けられ、そのためダンピング組立体44はピボットアーム55の回転に抵抗しない。
【0074】
テンショナ組立体15は、ベルト8の移動方向に拘わらずベルト8の負荷を維持する。テンショナ組立体15は、ベルト200の移動方向に拘わらず、各ピボットアーム5とピボットアーム55を通してベルト200の負荷を維持する。
【0075】
ここで本発明の1つの構成が説明されたが、当業者であれば、ここで説明された発明の趣旨および範囲から逸脱することなく、その構成、パーツ間の関係、方法に様々な変更ができることは明らかである。