特許第6201069号(P6201069)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6201069給電ケーブル、及びコネクタ付給電ケーブル
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】6201069
(24)【登録日】2017年9月1日
(45)【発行日】2017年9月20日
(54)【発明の名称】給電ケーブル、及びコネクタ付給電ケーブル
(51)【国際特許分類】
   H01B 7/00 20060101AFI20170911BHJP
   H01R 13/46 20060101ALI20170911BHJP
   H01B 7/42 20060101ALI20170911BHJP
   H01B 7/18 20060101ALI20170911BHJP
【FI】
   H01B7/00 310
   H01R13/46 303C
   H01B7/42 C
   H01B7/18 H
   H01B7/00 306
【請求項の数】5
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2017-13004(P2017-13004)
(22)【出願日】2017年1月27日
【審査請求日】2017年4月28日
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000005186
【氏名又は名称】株式会社フジクラ
(74)【代理人】
【識別番号】100064908
【弁理士】
【氏名又は名称】志賀 正武
(74)【代理人】
【識別番号】100106909
【弁理士】
【氏名又は名称】棚井 澄雄
(74)【代理人】
【識別番号】100126882
【弁理士】
【氏名又は名称】五十嵐 光永
(74)【代理人】
【識別番号】100160093
【弁理士】
【氏名又は名称】小室 敏雄
(74)【代理人】
【識別番号】100169764
【弁理士】
【氏名又は名称】清水 雄一郎
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 望
【審査官】 和田 財太
(56)【参考文献】
【文献】 特開2012−164478(JP,A)
【文献】 特開2001−160322(JP,A)
【文献】 国際公開第2016/151752(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01B 7/00
H01B 7/18
H01B 7/42
H01R 13/46
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
互いに撚り合わされた複数の第1信号線および複数の前記第1信号線を内部に収容する被覆を有する第1通信コードと、
横断面視において前記第1通信コードを挟んで配置され、それぞれが複数の第2信号線を有する2本の第2通信コードと、
冷却管と、前記冷却管を囲繞する導電体と、前記導電体を囲繞する絶縁体と、を有する4本の電力線と、
前記第1通信コード、2本の前記第2通信コード、および4本の前記電力線を内部に収容するシースと、を備え、
横断面視において、2本の前記第2通信コードおよび4本の前記電力線は、前記第1通信コードを囲うように配置され
前記第1通信コードが有する前記第1信号線の本数は、2本の前記第2通信コードがそれぞれ有する前記第2信号線の本数よりも少ない、給電ケーブル。
【請求項2】
数の前記第1信号線は、テープで一体に巻かれた状態で前記被覆内に収容されている、請求項1に記載の給電ケーブル。
【請求項3】
記第1通信コード、2本の前記第2通信コード、および4本の前記電力線は、互いに略同等の外径とされている、請求項1または2に記載の給電ケーブル。
【請求項4】
前記複数の第1信号線は、給電対象物との通信に用いられる、請求項1から3のいずれか1項に記載の給電ケーブル。
【請求項5】
請求項1から請求項のいずれか1項に記載の給電ケーブルと、
給電対象物に接続されるコネクタと、を備えるコネクタ付給電ケーブル。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、給電ケーブル及びコネクタ付給電ケーブルに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、下記特許文献1に示されるような給電ケーブルが知られている。この給電ケーブルは、複数の電力線と、これらの電力線を被覆するシースと、を備え、各電力線は、冷媒の流路となる管状の導電体と、この導電体を囲繞する絶縁体と、を有している。この構成では、導電体が内側から冷却されることで、通電に伴って導電体の温度が上昇するのを抑えることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】実開昭53−97384号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
この種の給電ケーブルでは、給電対象物との通信などに用いられる信号線を、電力線とともにシース内に収容する場合がある。このような場合に、信号線および電力線のシース内における位置が長期にわたって使用しているうちに変化し、給電ケーブルの屈曲や曲げに対する耐久性が低下するという問題があった。
【0005】
本発明はこのような事情を考慮してなされたもので、信号線および電力線のシース内における位置が変化しにくく、屈曲や曲げに対する耐久性が維持される給電ケーブルを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、本発明の第1態様に係る給電ケーブルは、第1信号線および前記第1信号線を内部に収容する被覆を有する第1通信コードと、冷却管と、前記冷却管を囲繞する導電体と、前記導電体を囲繞する絶縁体と、を有する複数の電力線と、前記第1通信コード、および前記複数の電力線を内部に収容するシースと、を備え、横断面視において、前記複数の電力線は、前記第1通信コードを囲うように配置されている。
【0007】
上記態様の給電ケーブルによれば、電力線が、冷却管と、冷却管を囲繞する導電体と、を有しているため、電力線内の導電体がその内側から冷却管により冷却される。これにより、発熱源である電力線内が偏りなく冷却されるため、給電ケーブル内やシース表面に温度むらが生じるのを抑制し、導電体を効率よく冷却することができる。
また、この給電ケーブルは、複数の電力線が第1通信コードを囲うように配置され、第1通信コードは第1信号線を内部に収容する被覆を有している。この構成により、第1通信コードの被覆の厚みを適宜調整することで、第1通信コードの外径を変化させて、この第1通信コードを囲う各電力線の、シース内における径方向の位置を容易に調整することができる。これにより、例えば各電力線がそれぞれ、径方向で第1通信コードと接しつつ、周方向で隣り合う他の電力線と接するようにして、シース内における各部材の位置が変化しにくくなり、給電ケーブルの屈曲や曲げに対する耐久性を維持することができる。
【0008】
ここで、前記第1通信コードは複数の前記第1信号線を有し、複数の前記第1信号線は、テープで一体に巻かれた状態で前記被覆内に収容されていてもよい。
【0009】
この場合、複数の第1信号線がテープで一体に巻かれているため、例えば被覆を押出し成形する際に、被覆となる軟化した材料がこれら第1信号線同士の間に入り込んでしまうのを抑止することができる。これにより、被覆の厚みおよび第1通信コードの外径を容易に安定させることが可能となり、前述した作用効果をより確実に奏功させることができる。
【0010】
また、前記給電ケーブルは、第2信号線を有する第2通信コードおよび前記複数の電力線が、横断面視において、前記第1通信コードを囲うように配置されていてもよい。
【0011】
この場合、第2通信コードによって給電ケーブルが備える通信手段を増やすことができる。さらに、この第2通信コードおよび各電力線が、第1通信コードを囲うように配置されているため、前記したようにシース内における各部材の位置が変化しにくく、給電ケーブルの屈曲や曲げに対する耐久性が維持される。
【0012】
また、前記給電ケーブルは、2本の前記第2通信コードと、4本の前記電力線と、を備え、前記第1通信コード、2本の前記第2通信コード、および4本の前記電力線は、互いに略同等の外径とされていてもよい。
【0013】
この場合、計6本の第2通信コードおよび電力線が、これらと略同等の外径を有する第1通信コードを囲うように配置される。この構成により、隣り合う第2通信コードおよび電力線同士が周方向で互いに接しつつ、これら第2通信コードおよび電力線が、第1通信コードと径方向で接することとなる。これにより、第1通信コード、第2通信コード、および電力線の、シース内における位置がより安定するとともに、これらの部材をシース内に高密度に配置することが可能となる。
さらに、例えば電力線および第2通信コードを第1通信コードに巻き付けた状態における各部材の位置や姿勢が安定することで、この状態が崩れにくくなり、これらの部材をシース内に収容する際の製造工程の簡略化および安定化を図ることも可能となる。
【0014】
また、前記態様の給電ケーブルは複数の第2信号線を有する第2通信コードを備え、前記第1通信コードは複数の前記第1信号線を有し、前記第1通信コードが有する前記第1信号線の本数は、前記第2通信コードが有する前記第2信号線の本数よりも少なくてもよい。
【0015】
この場合、第1通信コードが有する第1信号線の本数が少ないため、これら第1信号線を内部に収容する被覆の厚みの調整範囲を大きくすることができる。これにより、より容易に第1通信コードを所望の外径として、前述の通り各部材のシース内における位置を安定させることが可能となる。
【0016】
また、前記複数の第1信号線は、互いに撚り合わされた状態で前記被覆内に収容され、給電対象物との通信に用いられてもよい。
【0017】
この場合、少ない本数の第1信号線が互いに撚り合わされているため、これら第1信号線を撚り合わせるピッチの調整範囲を大きくすることができる。これにより、第1信号線に作用するノイズの影響が少なくなるような、最適な撚り合わせのピッチを容易に選択することが可能となる。さらに、この第1信号線を給電対象物との通信に用いることで、給電対象物との通信の信頼性を確保した給電ケーブルとすることができる。
【0018】
また、上記課題を解決するために、本発明の第2態様に係るコネクタ付給電ケーブルは、前記給電ケーブルと、給電対象物に接続されるコネクタと、を備えている。
【0019】
上記態様のコネクタ付給電ケーブルによれば、給電時にシース表面に温度のむらが生じるのを抑えつつ、シース内に各部材を安定して配置することができる。
【発明の効果】
【0020】
本発明の上記態様によれば、信号線および電力線のシース内における位置が変化しにくく、屈曲や曲げに対する耐久性が維持される給電ケーブルを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1】本実施形態の給電ケーブルの構成を示す横断面図である。
図2図1の給電ケーブルを備えたコネクタ付給電ケーブルの概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本実施形態に係る給電ケーブルの構成を、図1を参照しながら説明する。
図1に示すように、給電ケーブル1は、複数の電力線10と、第1通信コード20と、複数の第2通信コード30と、介在物2と、シース4と、を備えている。本実施形態では、給電ケーブル1は、4本(偶数個)の電力線10と、2本(偶数個)の第2通信コード30と、を備えている。
【0023】
給電ケーブル1は、例えば充電器と給電対象物とを電気的に接続して、給電対象物に電力を供給する際に用いられる。給電対象物は、電気自動車(車両)などであってもよい。給電ケーブル1を用いて、電気自動車用バッテリーを急速充電する場合には、例えば250A以上の大電流が電力線10内を流れる。このような大電流を流している状態でも、使用者が給電ケーブル1を直接触れる可能性があるため、シース4表面の温度を所定の範囲内に抑える必要がある。
また、給電ケーブル1は、不使用時には部分的に巻かれるなどして収容され、使用時には収容状態から繰り出され、これを繰り返す使われ方をする。このため、給電ケーブル1全体に、摩擦に対する耐久性、屈曲や曲げに対する耐久性、および可撓性などが求められる。
【0024】
ここで本実施形態では、給電ケーブル1の中心軸線Oに沿う方向を長手方向という。また、中心軸線Oに直交する横断面視において、中心軸線Oに直交する方向を径方向といい、中心軸線O周りに周回する方向を周方向という。
【0025】
(第1通信コード)
第1通信コード20は、例えば給電対象物である車両と充電器との間の通信に用いられてもよい。横断面視において、第1通信コード20は、給電ケーブル1の中心部に配置されている。横断面視において、第1通信コード20は、4本の電力線10および2本の第2通信コード30に囲われている。
第1通信コード20は、複数(2本)の第1信号線21と、これらの第1信号線21を包むテープ22と、テープ22を覆う被覆23と、を備えている。第1通信コード20に含まれる第1信号線21の数(2本)は、第2通信コード30に含まれる第2信号線31の数(6本)よりも少ない。
【0026】
第1通信コード20は、可撓性を有している。第1信号線21は、導体21aに絶縁体21bが被覆された構成となっている。複数の第1信号線21は、テープ22で一体に巻かれた状態で、被覆23内に収容されている。
本実施形態では、2本の第1信号線21が互いに撚り合わされた状態で被覆23内に収容されており、第1通信コード20はいわゆるツイストペアケーブルとされている。このため、2本の第1信号線21を撚り合わせるピッチの調整可能な範囲が大きく、通信時のノイズ等の観点から最適なピッチを選択することができる。
【0027】
被覆23の厚みは、テープ22の厚みより大きい。また、被覆23の厚みは、第2通信コード30の後述するテープ32の厚みより大きい。被覆23の厚みを変更することで、第1通信コード20の外径を調整し、各第2通信コード30および各電力線10の径方向における位置を容易に調整することができる。これにより、各第2通信コード30および各電力線10が径方向で被覆23に接するとともに、周方向で隣り合う第2通信コード30および電力線10、若しくは電力線10同士が、周方向で互いに接するようにすることができる。このように、被覆23の厚みを適宜調整することで、各第2通信コード30および各電力線10をバランスよく第1通信コード20の周囲に位置させることができる。
【0028】
(第2通信コード)
第2通信コード30は、第1通信コード20の径方向外側に配置されている。図1に示す横断面視では、2本の第2通信コード30が、径方向で第1通信コード20を挟むように配置されている。第2通信コード30の外径は、第1通信コード20および電力線10の外径と略同等となっている。2本の第2通信コード30の外径は、互いに略同等となっている。
【0029】
第2通信コード30は、可撓性を有している。第2通信コード30は、6本の第2信号線31と、これらの第2信号線31を包むテープ32と、を備えている。各第2信号線31は、後述するコネクタ40のロック機構の制御、給電時に点灯するLEDの電源線、コネクタ40が温度センサーを備えている場合の温度センサーの信号線などの用途に用いられる。また、第2信号線31の一部は給電対象物への補助給電線として使用されてもよい。
【0030】
各第2信号線31は、螺旋状に撚り合わされた状態で、テープ32に包まれている。第2信号線31は、導体31aに絶縁体31bが被覆された構成となっている。第2通信コード30が備える第2信号線31の外径は、第1通信コードが備える第1信号線21の外径と略同等であってもよい。あるいは、第2信号線31の外径は、第1信号線21の外径と異なっていてもよい。
【0031】
(電力線)
電力線10は、冷却管11と、導電体12と、絶縁体13と、を有する。電力線10は、可撓性を有している。
冷却管11は、電力線10の中心部に配置されている。冷却管11としては、例えばナイロン12からなるチューブを用いることができる。ナイロン12は、耐熱性や絶縁性に優れているため、通電により発熱する導電体12に接触する冷却管11の材質として適している。また、ナイロン12は可撓性や機械強度にも優れているため、可撓性や耐久性が求められる給電ケーブル1内の材質として適している。なお、冷却管11の材質としてはナイロン12の他、例えばシリコーン樹脂、フッ素樹脂、ポリウレタン、ポリオレフィンなどの他の材質を適宜用いてもよい。
【0032】
冷却管11の内部には、液体冷媒、エアー、水、油、不凍液などの冷媒が充填されている。冷却管11内の冷媒は、不図示の循環装置によって流動する。本実施形態の冷却管11の寸法は、外径が4.0mm、内径が2.5mmとなっている。このように内径が小さい冷却管11内を流動させるため、冷媒としては低粘度のものが適している。また、給電ケーブル1は寒冷地で用いられる場合もあるため、不凍液である冷媒が適している。なお、冷却管11の寸法および冷媒の性質は上記に限定されず、適宜変更してもよい。
【0033】
導電体12は、冷却管11を囲繞している。本実施形態における導電体12には、例えば250A以上の直流電流が流れる。導電体12は、複数の導体線12bが冷却管11に巻きつけられることで形成されている。本実施形態における導電体12は、21本の素線12aを束ねて撚った導体線12bを10本、冷却管11を中心に集合撚りすることで形成されている。これにより、導電体12は、冷却管11の周囲に偏りなく配置されている。導体線12bを構成する各素線12aとしては、例えばすずメッキ軟銅線を用いることができる。
【0034】
なお、1つの導電体12が有する導体線12bおよび素線12aの本数は適宜変更可能である。また、図1に示す導体線12bおよび素線12aの本数は、図の簡略化のため適宜変更されている。
絶縁体13は、導電体12を被覆(囲繞)している。絶縁体13の材質としては、例えばEPゴムを用いることができる。
【0035】
各電力線10は、第1通信コード20の径方向外側に配置されている。1本の電力線10は、第2通信コード30と、その他の電力線10と、によって周方向で挟まれている。図1に示す横断面視では、2本の第2通信コード30の各中心を通る対象軸Cに対して、4本の電力線10が線対称な位置に配置されている。また、2本の第2通信コード30は第1通信コード20を径方向に挟む位置に配置されているため、対象軸Cは第1通信コード20の中心部を通っている。このように、各電力線10、第1通信コード20、および各第2通信コード30は、給電ケーブル1の横断面が対称軸Cに対して線対称となるように配置されている。さらに本実施形態では、各電力線10、第1通信コード20、および各第2通信コード30が、給電ケーブル1の横断面が中心軸線Oを中心として点対称となるように配置されている。これにより、通電時に給電ケーブル1内に温度むらが生じるのを抑えて、シース4の表面が局所的に高温になるのを防ぎ、安全性をより高めることができる。
【0036】
電力線10の外径は、第1通信コード20および第2通信コード30の外径と略同等となっている。4本の電力線10の外径は、互いに略同等となっている。
横断面視において、周方向で互いに隣り合う一対の電力線10がそれぞれ有する冷却管11のうち、一方は冷媒の往路とされ、他方は冷媒の復路とされている。また、互いに隣り合う一対の電力線10がそれぞれ有する導電体12を流れる電流の向きは同じである。
【0037】
シース4は、各電力線10、第1通信コード20、および各第2通信コード30を、介在物2と一体に被覆している。各電力線10および各第2通信コード30は、第1通信コード20に螺旋状に巻きつけられた状態で、介在物2とともにシース4内に収容されている。シース4は、例えばクロロプレンゴムなどを用いて、押出し成形などによって形成することができる。
【0038】
介在物2は、各電力線10、第1通信コード20、および各第2通信コード30の周囲に充填されている。介在物2により、これらの部材をシース4で被覆する際に、各部材の位置を安定させることができる。また、介在物2は、例えば給電ケーブル1が車体に踏まれるなどした場合に、電力線10や通信コード20、30が破損しないように保護する緩衝材として機能する。介在物2としては、例えばテトロン糸などを用いることができる。
【0039】
(コネクタ)
図2は、給電ケーブル1を備えたコネクタ付給電ケーブル50の概略図である。図2に示すように、コネクタ付給電ケーブル50は、給電ケーブル1と、給電ケーブル1の一方の端部に配置された給電コネクタ(以下、単にコネクタ40という)と、を備えている。コネクタ40は、給電対象物に接続される。コネクタ40は、ケース41と、複数のコネクタ端子42と、を備えている。
【0040】
給電ケーブル1の一方の端部は、ケース41内に収容されている。各電力線10内の導電体12はそれぞれ、各コネクタ端子42と電気的に接続される。周方向で互いに隣り合う電力線10内の一対の冷却管11は、ケース41内で不図示の接続管によって互いに接続されている。また、この一対の冷却管11のうち、一方は冷媒の往路とされ、他方は冷媒の復路とされている。これにより、冷媒は、往路とされた冷却管11、前記接続管、および復路とされた冷却管11の順に流通し、給電ケーブル1およびコネクタ40の双方を冷却することができる。なお、本実施形態の給電ケーブル1は4本(二対)の電力線10および冷却管11を備えているため、ケース41内には2つの前記接続管が収容されている。
【0041】
給電ケーブル1の他方の端部は、冷媒の循環装置を備えた不図示の充電器に接続されている。各冷却管11内の冷媒は、上記循環装置に接続されている。これにより、冷媒が給電ケーブル1内およびコネクタ40内を循環する。なお、図2では給電ケーブル1と先述の充電器との接続部の図示を省略している。
【0042】
以上説明したように、本実施形態によれば、電力線10が、冷却管11と、冷却管11を囲繞する導電体12と、を有しているため、電力線10内の導電体12がその内側から冷却管11により冷却される。これにより、発熱源である電力線10内が偏りなく冷却されるため、給電ケーブル1内の温度むらが抑えられて、シース4の表面の他、給電ケーブル1内に収容された電力線10、第1通信コード20、第2通信コード30等が局所的に高温になるのを抑制することができる。
また、電力線10、第1通信コード20、および第2通信コード30がそれぞれ可撓性を有しているため、給電ケーブル1が全体として可撓性を有している。これにより、例えば給電ケーブル1を不使用時に巻いて収容したり、使用時に繰り出したりすることが容易となり、取り扱い性に優れた給電ケーブル1とすることができる。
【0043】
また、本実施形態の給電ケーブル1は、複数の電力線10が第1通信コード20を囲うように配置され、第1通信コード20は複数の第1信号線21を収容する被覆23を有している。この構成により、第1通信コード20の被覆23の厚みを適宜調整することで、第1通信コード20の外径を変化させて、この第1通信コード20を囲う各電力線10の、シース4内における径方向の位置を容易に調整することができる。これにより、例えば各電力線10がそれぞれ、径方向で第1通信コード20と接しつつ、周方向で隣り合う他の電力線10と接するようにして、シース4内における各部材の位置を変化しにくくすることができる。
【0044】
また、複数の第1信号線21は、テープ22で一体に巻かれた状態で被覆23内に収容されている。この構成により、例えば被覆23を押出し成形する際に、被覆23となる軟化した材料がこれら第1信号線21同士の間に入り込んでしまうのを抑止することができる。これにより、被覆23の厚みおよび第1通信コード20の外径を容易に安定させることが可能となり、前述した作用効果をより確実に奏功させることができる。
【0045】
また、本実施形態の給電ケーブル1は、複数の第2信号線31を有する複数の第2通信コード30を備えており、多くの通信手段が確保されている。さらに、各第2通信コード30および各電力線10が、第1通信コード20を囲うように配置されているため、前記したようにシース4内における各部材10、20、30の位置を変化しにくくし、給電ケーブル1の屈曲や曲げに対する耐久性を維持することができる。
【0046】
また、本実施形態の給電ケーブル1は、2本の第2通信コード30と、4本の電力線10と、を備えており、これら計6本の第2通信コード30および電力線10が、これらと略同等の外径を有する第1通信コード20を囲うように配置されている。この構成により、図1に示すように、隣り合う第2通信コード30および電力線10同士が周方向で互いに接しつつ、各第2通信コード30および各電力線10が、第1通信コード20と径方向で接することとなる。これにより、第1通信コード20、第2通信コード30、および電力線10の、シース4内における位置がより変化しにくくなるとともに、これらの部材をシース4内に高密度に配置することが可能となる。
さらに、各電力線10および各第2通信コード30を第1通信コード20に巻き付けた状態における、各部材10、20、30の位置や姿勢が安定することで、この状態が崩れにくくなり、これらの部材をシース4内に収容する際の製造工程の簡略化および品質の安定化を図ることも可能となる。
【0047】
また、第1通信コード20が有する第1信号線21の本数が少ないため、これら第1信号線21を内部に収容する被覆23の厚みの調整範囲を大きくすることができる。これにより、より容易に第1通信コード20を所望の外径として、前述の通り各部材10、20、30のシース4内における位置を安定させることが可能となる。
【0048】
また、少ない本数の第1信号線21が互いに撚り合わされているため、これら第1信号線21を撚り合わせるピッチの調整範囲を大きくすることができる。これにより、第1信号線21に作用するノイズの影響が少なくなるような、最適な撚り合わせのピッチを容易に選択することが可能となる。さらに、この第1信号線21を給電対象物との通信に用いることで、ノイズの影響を受けにくく、給電対象物との通信の信頼性を確保した給電ケーブル1とすることができる。
【0049】
また、給電ケーブル1の中心部に、互いに撚り合わされた複数の第1信号線21が配置されているため、給電ケーブル1が曲げられたとしても、各第1信号線21に作用する張力を小さく抑えることができる。
【0050】
また、複数の電力線10の外径は互いに略同等であるため、各電力線10を共通化してコストダウンを図ることができるとともに、各電力線10の表面の温度を均一にして、給電ケーブル1内外の温度むらをより確実に抑えることができる。
【0051】
なお、本発明の技術的範囲は前記実施の形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において種々の変更を加えることが可能である。
【0052】
例えば、前記実施形態では2本の第2通信コード30および4本の電力線10を備えた構成について説明したが、シース4内に収容される第2通信コード30および電力線10の本数は適宜変更してもよい。この場合であっても、第2通信コード30および電力線10が、第1通信コード20を囲うように配置されることで、前述の作用効果を得ることができる。例えば、2本の第2通信コード30および2本の電力線10が、第1通信コード20を囲うように配置されていてもよい。この場合、第2通信コード30および電力線10の外径を略同等としつつ、これらの外径より第1通信コード20の外径を小さくすることで、径方向若しくは周方向で隣り合う各部材が互いに接する状態にすることができる。
【0053】
また、前記実施形態では、第2通信コード30の構成が第1通信コード20の構成と異なっていたが、第1通信コード20と同様の構成を有する第2通信コード30を採用してもよい。
【0054】
また、前記実施形態では、互いに隣り合う一対の電力線10がそれぞれ備える冷却管11のうち、一方は冷媒の往路とされ、他方は冷媒の復路とされていると説明したが、これに限らず、互いに隣り合う一対の電力線10がそれぞれ備える冷却管11は、いずれも冷媒の往路若しくは復路であってもよい。
【0055】
また、前記実施形態では、互いに隣り合う一対の電力線10がそれぞれ有する導電体12を流れる電流の向きは同じであると説明したが、これに限らず、互いに隣り合う一対の電力線10がそれぞれ有する導電体12に流れる電流の向きは互いに異なっていてもよい。
【0056】
また、前記実施形態では、第2通信コード30および電力線10が第1通信コード20を囲うように配置されていると説明したが、これに限らず、電力線10のみが第1通信コード20を囲うように配置されていてもよい。この場合、給電ケーブル1は6本の電力線10を備え、これら6本の電力線10が横断面視において第2通信コード30を囲うように配置されていてもよい。
【0057】
その他、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、上記した実施の形態における構成要素を周知の構成要素に置き換えることは適宜可能であり、また、上記した実施形態や変形例を適宜組み合わせてもよい。
【符号の説明】
【0058】
1…給電ケーブル 2…介在物 4…シース 10…電力線 11…冷却管 12…導電体 12a…素線 12b…導体線 13…絶縁体 20…第1通信コード 21…第1信号線 22…テープ 23…被覆 30…第2通信コード 31…第2信号線 32…テープ 40…コネクタ 50…コネクタ付給電ケーブル
【要約】
【課題】信号線および電力線のシース内における位置が変化しにくく、屈曲や曲げに対する耐久性が維持される給電ケーブルを提供する。
【解決手段】給電ケーブル1は、第1信号線21およびこれを内部に収容する被覆23を有する第1通信コード20と、冷却管11と、冷却管11を囲繞する導電体12と、導電体12を囲繞する絶縁体13と、を有する複数の電力線10と、第1通信コード20、および複数の電力線10を内部に収容するシース4と、を備え、横断面視において、複数の電力線10は、第1通信コード20を囲うように配置されている。
【選択図】図1
図1
図2