(54)【発明の名称】PPARγ発現抑制剤、C/EBPα発現抑制剤、PPARγ発現抑制用食品組成物、C/EBPα発現抑制用食品組成物、PPARγ発現抑制用化粧料組成物、C/EBPα発現抑制用化粧料組成物、PPARγ発現抑制剤の製造方法及びC/EBPα発現抑制剤の製造方法
【文献】
World Journal of Microbiology & Biotechnology,2005年,Vol.21,p.45-51
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の実施形態について、
図1〜
図12を参照しながら説明する。
本実施形態は、ユーグレナ水性溶媒抽出物を有効成分とする、脂肪細胞分化抑制剤、PPARγ発現抑制剤、C/EBPα発現抑制剤、抗肥満剤、および抗メタボリックシンドローム剤の発明に関するものである。
【0019】
本明細書において、「肥満」とは、正常な状態と比較して体重が多い状態、又は体脂肪が過剰に蓄積した状態である。肥満の判定基準として、BMI(Body Mass Index、ボディマス指数)が用いられている。WHO(World Health Organization、世界保健機関)による肥満の判定基準では、BMI 30以上を肥満とし、一方、日本ではBMI 25以上を肥満としている。日本の判定基準は、日本肥満学会が定義した基準で、日本人はBMI 25を超えたあたりから、耐糖能障害、脂質異常症、高血圧といった合併症の発症頻度が高まることに基づいている。
本明細書において、「肥満症」とは、肥満に起因、関連する健康障害を有するか、該健康障害が予測される内臓脂肪が過剰に蓄積した場合で、減量治療を必要とする状態のことである。肥満症は、脂肪細胞数の増加及び脂肪細胞の肥大化に起因するものであり、前駆脂肪細胞の増殖や分化、肥大化、あるいは脂肪細胞の死および生体からの排除といった脂肪細胞のライフサイクルと関係している。
本明細書において、「抗肥満」とは、上記肥満症を予防又は治療することを意味する。
【0020】
本明細書において、「メタボリックシンドローム」とは、インスリン抵抗性を基盤とする2型糖尿病、高脂血症、高血圧、内臓脂肪型肥満、脂肪肝などの一連の病態群を合併した状態を表し、シンドロームX、インスリン抵抗性症候群、内臓脂肪症候群、マルチプルリスクファクター症候群などの呼称でも知られている。
本明細書において、「抗メタボリックシンドローム」とは、上記の病態群より選ばれる少なくとも1つ以上の病態を予防又は治療することを意味する。
【0021】
<脂肪細胞の概要>
脂肪細胞とは、細胞質内に脂肪滴を有する細胞のことであり、単胞性脂肪細胞(白色脂肪細胞)と、多胞性脂肪細胞(褐色脂肪細胞)とに分類される。
白色脂肪細胞は、過剰に摂取されて、消費されなかった過剰なエネルギーを中性脂肪へと変換し、エネルギー源として蓄積する。白色脂肪細胞は、人体に広く存在しているが、特に下腹部、臀部、大腿部、背中、上腕部、内臓の周囲などに多く、皮下脂肪や内臓脂肪として蓄積される。
【0022】
白色脂肪細胞の数は、乳幼児や思春期など、限られた時期にのみ増加し、その時期に生涯の白色脂肪細胞の数が決定すると考えられていた。しかし、最近の研究では、過剰なエネルギー摂取や運動不足などにより、既に存在している白色脂肪細胞が中性脂肪で満たされると、思春期を過ぎてからでも脂肪細胞の数が増え、さらに脂肪を取り込むということがわかった。脂肪細胞の大きさが上限に達し、これ以上脂肪を溜め込めない状態になると、周囲の前駆脂肪細胞がPPARγなどによって刺激されることで成熟脂肪細胞となり、順次肥大化し、さらに、成熟脂肪細胞も細胞分裂し、脂肪細胞の数も増加する。
【0023】
20歳前後の成人における白色脂肪細胞の数は約400億個であるが、肥満の人における白色脂肪細胞の数は、400〜600億個にもなる。
白色脂肪細胞は、エネルギーが必要となった時に、蓄積している脂肪を分解し、遊離脂肪酸とグリセロールとして全身に供給する。その際に、脂肪を放出した白色脂肪細胞は、前駆脂肪細胞に戻り、再びエネルギーが過剰な状態になると、成熟脂肪細胞となり、脂肪を取り込む。
【0024】
一方、褐色脂肪細胞は、余分な脂肪を分解することによって熱を生み出す働きがあり、首の後や肩甲骨周囲、脇の下、心臓や腎臓の周囲など、人体の特定の部分に存在している。褐色脂肪細胞の数は、生後すぐのときに最も多く、成人になると加齢に従い減少し、特に40歳以降で顕著に減少する。この褐色脂肪細胞の数の減少が、中年太りの大きな原因になることが報告されている。
【0025】
<脂肪細胞のライフサイクルと転写因子カスケード、及び脂肪細胞分化抑制作用>
図1に示すように、脂肪細胞のライフサイクルは、(1)間葉系幹細胞が前駆脂肪細胞へ分化することが決定される過程、(2)前駆脂肪細胞の増殖と成熟脂肪細胞へと分化する過程、(3)肥大化した脂肪細胞のアポトーシスと生体から排除される過程に分けて考えることができる。
培養細胞や遺伝子改変個体を用いた系などにより脂肪細胞分化過程に密接に関与する転写因子が、明らかになっている。
【0026】
PPAR(Peroxisome Proliferator−Activated Receptor、ペルオキシソーム増殖剤応答性受容体)、C/EBP(CCAAT/Enhancer−Binding Protein、CCAAT/エンハンサー結合タンパク質)、及びSREBP−1/ADD1(Sterol Regulatory Element Binding Protein 1 または Adipocyte Determination and Differentiation−dependent Factor 1)は脂肪細胞の分化に最も重要な転写因子として知られている。
【0027】
PPARは、PPARα、PPARγ、PPARδなどのファミリーが知られており、その中でもPPARγは脂肪細胞分化に特に重要である。脂肪芽細胞や前駆脂肪細胞において、PPARγを強制的に発現させると脂肪細胞に分化する。
【0028】
C/EBPは、C/EBPα、C/EBPβ、C/EBPδ、C/EBPγ、C/EBPε、C/EBPζなどのファミリーが知られており、C/EBPαがPPARγと同じように脂肪細胞分化のマスターレギュレーターとして機能している。また、C/EBPβとC/EBPδは分化の初期に発現し、C/EBPαとPPARγの発現を制御している。
【0029】
SREBP1/ADD1は、脂肪細胞の分化を促進することが知られている一方、脂肪細胞の分化過程においてPPARγのリガンド生成に関わっている。
【0030】
これら3種類の転写因子群(PPAR、C/EBP、SREBP1/ADD1)が、クロストークすることにより脂肪細胞の分化過程が進行する。
【0031】
<ユーグレナ>
本実施形態において、「ユーグレナ」とは、分類学上、ユーグレナ属(Euglena)に分類される微生物、その変種、その変異種及びユーグレナ科(Euglenaceae)の近縁種を含む。
ここで、ユーグレナ属(Euglena)とは、真核生物のうち、エクスカバータ、ユーグレノゾア門、ユーグレナ藻綱、ユーグレナ目、ユーグレナ科に属する生物の一群である。
【0032】
ユーグレナ属に含まれる種として、具体的には、Euglena chadefaudii、Euglena deses、Euglena gracilis、Euglena granulata、Euglena mutabilis、Euglena proxima、Euglena spirogyra、Euglena viridisなどが挙げられる。
ユーグレナとして、ユーグレナ・グラシリス(E. gracilis),特に、ユーグレナ・グラシリス(E. gracilis)Z株を用いることができるが、そのほか、ユーグレナ・グラシリス(E. gracilis)Z株の変異株SM−ZK株(葉緑体欠損株)や変種のE. gracilis
var. bacillaris、これらの種の葉緑体の変異株等の遺伝子変異株、Astaia longa等のその他のユーグレナ類、及びそれらに由来するβ−1,3−グルカナーゼ等の物質であってもよい。
【0033】
ユーグレナ類は、池や沼などの淡水及び汽水、海水中に広く分布しており、これらから分離して使用しても良く、また、既に単離されている任意のユーグレナ類を使用してもよい。
ユーグレナ類は、その全ての変異株を包含する。また、これらの変異株の中には、遺伝的方法、たとえば組換え,形質導入,形質転換等により得られたものも含有される。
【0034】
ユーグレナ細胞の培養において、培養液としては、例えば、窒素源,リン源,ミネラルなどの栄養塩類を添加した培養液、例えば、改変Cramer−Myers培地((NH
4)
2HPO
4 1.0g/L,KH
2PO
4 1.0g/L,MgSO
4・7H
2O 0.2g/L,CaCl
2・2H
2O 0.02g/L,Fe
2(SO
2)
3・7H
2O 3mg/L,MnCl
2・4H
2O 1.8mg/L,CoSO
4・7H
2O 1.5mg/L,ZnSO
4・7H
2O 0.4mg/L,Na
2MoO
4・2H
2O 0.2mg/L,CuSO
4・5H
2O 0.02g/L,チアミン塩酸塩(ビタミンB
1) 0.1mg/L,シアノコバラミン(ビタミンB
12)、(pH3.5))を用いることができる。なお、(NH
4)
2HPO
4は、(NH
4)
2SO
4やNH
3aqに変換することも可能である。また、そのほか、ユーグレナ生理と生化学(北岡正三郎編、株式会社学会出版センター)の記載に基づき調製される公知のHunter培地、Koren−Hunter培地を用いてもよい。
【0035】
培養液のpHは好ましくは2以上、また、その上限は、好ましくは6以下、より好ましくは4.5以下である。pHを酸性側にすることにより、光合成微生物は他の微生物よりも優勢に生育することができるため、コンタミネーションを抑制することができる。
ユーグレナ細胞の培養は、太陽光を直接利用するオープンポンド方式、集光装置で集光した太陽光を光ファイバー等で送り、培養槽で照射させ光合成に利用する集光方式等により行ってもよい。
また、ユーグレナ細胞の培養は、例えば供給バッチ法を用いて行われ得るが、フラスコ培養や発酵槽を用いた培養、回分培養法、半回分培養法(流加培養法)、連続培養法(灌流培養法)等、いずれの液体培養法により行ってもよい。
【0036】
培養は、オープンポンド型、レースウェイ型、チューブ型等の公知の培養装置や、坂口フラスコ、三角フラスコ、試薬ビンなどの実験用の培養容器を用いて行うことができる。ユーグレナはCO
2を資化するため、独立栄養培地であるCramer−Myers培地を用いて培養する場合は1〜5%CO
2を含む空気を培地中に通過させることが好ましい。また、さらに、葉緑体を十分に発達させるために、培地1リットルあたり1〜5g程度のリン酸アンモニウムを加えるとよい。培養温度は、通常20〜34℃で、特に28〜30℃が好適である。また、培養条件にもよるが、ユーグレナは通常、培養開始後2〜3日で対数増殖期となり、4〜5日程度で定常期に到達する。
ユーグレナは、光照射下で培養(明培養)されてもよく、無照射で培養(暗培養)されてもよい。
【0037】
ユーグレナ細胞の分離は、例えば、培養液の遠心分離または単純な沈降,膜濾過等によって行われる。
ユーグレナの藻体乾燥物は、分離されたユーグレナ細胞を洗浄後、公知の方法で真空凍結乾燥することにより調製される。但し、藻体乾燥物の調整は、噴霧乾燥、加熱真空乾燥等により行ってもよい。
本実施形態の脂肪細胞分化抑制剤、PPARγ発現抑制剤、C/EBPα発現抑制剤、抗肥満剤、および抗メタボリックシンドローム剤は、ユーグレナとして、遠心分離、沈降、膜濾過等により培養液から分離したユーグレナの藻体を用いてもよいし、藻体乾燥物を用いてもよい。また、藻体乾燥物を、公知の粉砕機で粉砕したユーグレナの乾燥粉末を用いてもよい。
【0038】
<ユーグレナ水性溶媒抽出物>
本実施形態において、「ユーグレナ水性溶媒抽出物」とは、水性溶媒を用いてユーグレナから抽出される抽出物を意味し、特に、水性溶媒として水を用い、5℃〜600℃で、数秒〜数十時間抽出したユーグレナの水抽出物又は熱水抽出物を用いることが好ましい。
抽出に使用する水は、必ずしも蒸留水や、純水、又は超純水である必要はなく、例えば、水道水や不純物を含むものであってもよいが、活性成分の抽出を妨げる成分を含まない水が好ましい。
【0039】
本実施形態において、「水抽出物」とは、0〜50℃(0℃を除く。)の水による抽出物を意味する。
ここで、「水」とは、0〜50℃(0℃を除く。)の水を意味する。
水の温度は、活性成分に影響を与えずに、活性成分を十分に抽出できる範囲内であれば特に限定されるものではないが、好ましくは1〜40℃、より好ましくは5〜35℃、特に好ましくは10〜30℃である。
【0040】
本実施形態において、「熱水抽出物」とは、50℃よりも高い温度の水による抽出物を意味し、「温水抽出物」とも呼ぶことができる。
ここで、「熱水」とは、50℃よりも高温の水を意味し、「熱湯」も含む概念であり、沸騰状態にある水も含まれる。また、液体状態の熱水に限定されることなく、気体状態及び超臨界状態の熱水も含まれる。
熱水の温度は、活性成分に影響を与えずに、活性成分を十分に抽出できる範囲内であれば特に限定されるものではないが、好ましくは50℃より高く120℃以下、より好ましくは50℃より高く100℃以下である。
【0041】
抽出に使用する水のpHは、活性成分に影響を与えずに、活性成分を十分抽出できる範囲内であれば特に限定されるものではないが、好ましくはpH4〜10、より好ましくはpH5〜9、特に好ましくはpH6〜8であるとよい。
【0042】
なお、本実施形態では、水性溶媒として、水を単独で用いるが、活性成分に影響を与えずに、活性成分を十分抽出できるものであって、通常、抽出に用いることができる溶媒を1種または2種以上選択して用いてもよい。例えば、水、アルコール類、グリコール類などを挙げることができるが、これに限定されるものではない。アルコール類としては、エタノール、メタノール、n−プロパノール、イソプロパノール等が挙げられる。グリコール類としては、ブチレングリコール及びプロピレングリコール等が挙げられる。その他の水性溶媒としては、アセトン等が挙げられる。これらの溶媒は単独或いは水溶液として用いても良く、任意の2種または3種以上の混合溶媒として用いてもよい。
【0043】
抽出に用いる水性溶媒の温度は、例えば、0℃以上であり、活性成分に影響を与えないのであれば特に限定されることはない。沸騰状態又は超臨界状態にある水性溶媒を使用することもできるが、5℃〜600℃の水性溶媒を使用するのが好ましく、10℃〜200℃の水性溶媒を使用するのがより好ましい。
したがって、抽出用の水性溶媒とは、沸騰状態や超臨界状態にある水性溶媒も含むものである。抽出に使用する水性溶媒の量は、ユーグレナ中に含まれる水溶性活性成分を十分に溶解することができる量であることが好ましい。
【0044】
抽出方法も特に限定されず、例えば、以下に示す方法により抽出を行うことができるが、これに限定されることなく、通常の抽出方法を自由に選択して用いることができる。例えば、ユーグレナの藻体乾燥粉末を水性溶媒に所定時間浸漬した後に遠心分離又は濾過する方法、ユーグレナの藻体乾燥粉末を水性溶媒に加えて震盪して均一に分散させた後に遠心分離又は濾過する方法、などが挙げられる。
また、抽出を促進するために、ユーグレナを添加後の水性溶媒を加熱することも可能である。
【0045】
ユーグレナの水抽出は、以下に示すような通常の方法で行うことができるが、これに限定されるものではない。例えば、ユーグレナ組織及び水を容器に入れ、適宜攪拌又は震盪しながら所定時間静置し、得られた抽出液は、そのまま水抽出物として使用可能である。また、例えば、そのような抽出液を遠心して得られる上清を水抽出物として使用することもできる。また、そのような抽出液又は上清を濃縮、乾燥して水分を除去し、これを水抽出物として使用することもできる。水抽出は、抽出効率を上げて抽出時間を短縮するために、水に、少量、例えば、10質量%以下のアルコール、好ましくはエタノールを添加して行ってもよい。
水抽出を行う場合の抽出時間は、活性成分が抽出される時間であれば特に限定されず、数秒〜数十時間の範囲で、抽出の温度に応じて適宜設定することができる。
【0046】
熱水による抽出は、以下に示すような、通常用いられている方法で行なうことができるが、これに限定されるものではない。ユーグレナを、通常用いられる抽出器に水とともに導入した後に、加熱することで抽出を行う。沸騰水または超臨界状態にある水を使用して抽出する場合には、水の蒸気圧に耐え得る抽出器を使用する必要がある。抽出時の圧力は1〜5000気圧に設定することができ、60〜400気圧に設定するのが好ましい。
高温高圧下で抽出を行なう場合には、抽出時間が長す過ぎると活性成分が分解したり、化学反応を起こすことがある。従って、高温高圧下で抽出を行なうときには、抽出時間を短時間、例えば、3分以内とするのが好ましく、1分以内とするのがより好ましく、30秒以内とすることが特に好ましい。
【0047】
抽出したユーグレナ抽出物は、そのままでも本実施形態に係る脂肪細胞分化抑制剤、PPARγ発現抑制剤、C/EBPα発現抑制剤、抗肥満剤、およびメタボリックシンドローム予防または治療剤の有効成分として用いることができるが、当該抽出物を更に、適当な分離手段(例えば、分配抽出、ゲル濾過法、シリカゲルクロマトグラフィー、逆相若しくは順相の高速液体クロマトグラフィーなど)により活性の高い画分を分画して用いることも可能である。
また、ユーグレナ抽出物やその画分を、濃縮、乾燥して水性溶媒を除去し、これを水性溶媒抽出物として使用することもできる。
【0048】
<脂肪細胞分化抑制剤・PPARγ発現抑制剤・C/EBPα発現抑制剤>
本実施形態に係る脂肪細胞分化抑制剤、PPARγ発現抑制剤、C/EBPα発現抑制剤は、ユーグレナ水性溶媒抽出物を有効成分とする。
本実施形態に係る脂肪細胞分化抑制剤は、脂肪細胞分化過程において、脂肪細胞分化のマスターレギュレーターであるPPARγ及びC/EBPαの発現を抑制し、前駆脂肪細胞から脂肪細胞への分化を抑制するものである。
【0049】
<抗肥満剤・抗メタボリックシンドローム剤>
本実施形態に係る抗肥満剤、および抗メタボリックシンドローム剤は、ユーグレナ水性溶媒抽出物を有効成分とする。
ユーグレナ水性溶媒抽出物は、脂肪細胞分化のマスターレギュレーターであるPPARγやC/EBPαの発現を抑制し、前駆脂肪細胞から脂肪細胞への分化を抑制することにより、脂肪細胞の蓄積を抑制し、その結果、抗肥満やメタボリックシンドロームの予防または治療効果を発揮する。
【0050】
<用途>
実施形態に係るユーグレナ水性溶媒抽出物を有効成分として含む脂肪細胞分化抑制剤、PPARγ発現抑制剤、C/EBPα発現抑制剤、抗肥満剤、および抗メタボリックシンドローム剤は、肥満症及び/又はメタボリックシンドロームの確定診断を受けた患者に投与される。
また、本実施形態の脂肪細胞分化抑制剤、PPARγ発現抑制剤、C/EBPα発現抑制剤、抗肥満剤、および抗メタボリックシンドローム剤は、医薬組成物、健康食品等として構成され、肥満症及び/又はメタボリックシンドロームの自覚症状を発現した者や、BMIが増加傾向にある者や、遺伝的に又は生活環境から考慮して肥満症及び/又はメタボリックシンドロームに罹患する可能性の高い者等、肥満症やメタボリックシンドローム予備軍の者に、予防的に投与される。
【0051】
ユーグレナ水性溶媒抽出物は、食品としても摂取可能で副作用がないため、肥満症及び/又はメタボリックシンドロームの確定診断を受ける前であっても、投与可能である。また、確定診断を受ける前から、確定診断を受けた後の任意の時点、例えば、BMI値が25未満まで低下した時点、脂肪細胞の分化が活発でなくなったと思われる時点や、他の抗肥満剤に切り替える時点などまで、継続して投与可能である。
【0052】
また、肥満症及び/又はメタボリックシンドロームの治療を完了した人は、肥満症及び/又はメタボリックシンドロームを再発しやすいため、本実施形態の脂肪細胞分化抑制剤、PPARγ発現抑制剤、C/EBPα発現抑制剤、抗肥満剤、および抗メタボリックシンドローム剤を、肥満症及び/又はメタボリックシンドロームの患者が治療によりBMI値が25未満まで低下した後、BMI値が25未満まで低下した患者に対して、症状の再発を抑制することを目的に、肥満症及び/又はメタボリックシンドロームの再発予防、抑制薬として、継続投与することができる。
【0053】
一般的に、肥満症及び/又はメタボリックシンドロームは、ストレス、食生活、遺伝的要因など、様々な要因によって引き起こされることが知られている。
よって、本実施形態の脂肪細胞分化抑制剤、PPARγ発現抑制剤、C/EBPα発現抑制剤、抗肥満剤、および抗メタボリックシンドローム剤を、心理的ストレス・社会的ストレスのかかり易い環境にある人、例えば、心因性ストレスのかかりやすい職場、住環境にある人や試験等の準備中の人に対して、長期間継続投与できる。
【0054】
また、本実施形態の脂肪細胞分化抑制剤、PPARγ発現抑制剤、C/EBPα発現抑制剤、抗肥満剤、および抗メタボリックシンドローム剤を、食生活や、遺伝的要因により、肥満症及び/又はメタボリックシンドロームに罹患する可能性の高い環境にある人、例えば、食生活の乱れた家庭の人、親などの家族に肥満症及び/又はメタボリックシンドロームに罹患した者がいる家庭の人に対して、長期間継続投与できる。
【0055】
さらに、本実施形態に係るユーグレナ水性溶媒抽出物を有効成分として含む脂肪細胞分化抑制剤、PPARγ発現抑制剤、C/EBPα発現抑制剤、抗肥満剤、および抗メタボリックシンドローム剤を投与する対象は、上記症状又は状態の者や、ヒト以外の動物に限定されるものではない。
【0056】
例えば、白色脂肪細胞が特に増加する、乳幼児期や思春期のヒトのうち、BMI 25以上の肥満状態のヒトに、ユーグレナ水性溶媒抽出物を有効成分として含む脂肪細胞分化抑制剤、PPARγ発現抑制剤、C/EBPα発現抑制剤、抗肥満剤および抗メタボリックシンドローム剤を投与し、又は摂取させることができる。
乳幼児期や思春期の年齢のヒトは、白色脂肪細胞が増加し易いが、ユーグレナ水性溶媒抽出物が備える、脂肪細胞分化抑制効果、PPARγ発現抑制効果、C/EBPα発現抑制効果により、白色脂肪細胞の増加を抑制することができる。
【0057】
ここで、「乳児期」とは、生後から1歳未満の期間であり、「幼児期」とは、1歳以上から6歳未満の期間である。
また、「思春期」とは、二次性徴が始まり、成熟して、身長発育が最終的に停止するまでの期間である。男性に関しては、概ね12歳〜17歳の期間であるが、女性に関し、日本産科婦人科学会の定義によれば、「性機能の発育(乳房発育・恥毛発育など)に始まり、初経を経て第二次性徴の完成と月経周期がほぼ順調になるまでの期間で、現在の日本人の場合、平均的には8、9歳から17、18歳の間とする」と定義される。WHO(世界保健機関)によれば10〜19歳と定義されるように、性別や個人差によって、幅を有する概念であるが、8〜19歳の期間である。
【0058】
また、40歳以降の年齢のヒトに、ユーグレナ水性溶媒抽出物を有効成分として含む脂肪細胞分化抑制剤、PPARγ発現抑制剤、C/EBPα発現抑制剤、抗肥満剤、および抗メタボリックシンドローム剤を投与することができる。
40歳以上のヒトは、余分な脂肪を分解することによって熱を生み出す働きが衰えており、脂肪が蓄積し易く、中年太りになり易くなっているが、ユーグレナ水性溶媒抽出物が備える、脂肪細胞分化抑制効果、PPARγ発現抑制効果、C/EBPα発現抑制効果により、脂肪細胞の蓄積や中年太りを抑制することができる。
【0059】
また、本実施形態に係るユーグレナ水性溶媒抽出物を有効成分として含む脂肪細胞分化抑制剤、PPARγ発現抑制剤、C/EBPα発現抑制剤、抗肥満剤、および抗メタボリックシンドローム剤は、薬理学的に許容され得る添加剤を加え、医薬組成物、化粧料組成物、食品組成物等の組成物等として用いることができる。
【0060】
(医薬組成物)
本実施形態に係るユーグレナ水性溶媒抽出物を有効成分として含む脂肪細胞分化抑制剤、PPARγ発現抑制剤、C/EBPα発現抑制剤、抗肥満剤、および抗メタボリックシンドローム剤は、その優れた脂肪細胞分化抑制効果、PPARγ発現抑制効果、C/EBPα発現抑制効果、抗肥満効果および抗メタボリックシンドローム効果を利用して、医薬組成物に好適に用いることができる。
該医薬組成物は、あらゆる剤型の医薬品又は医薬部外品に適用することができる。例えば、散剤、細粒剤、顆粒剤、錠剤、カプセル剤、懸濁液、エマルジョン剤、シロップ剤、エキス剤、丸剤、などの経口剤、外用液剤、外用ゲル剤、クリーム剤、軟膏剤、スプレー剤、点鼻液剤、リニメント剤、ローション剤、ハップ剤、硬膏剤、噴霧剤、エアゾール剤、などの外用剤、または注射剤に適用することができる。
【0061】
本実施形態に係る医薬組成物には、薬学的に許容される添加剤を1種または2種以上自由に選択して含有させることができる。
例えば、本実施形態に係る医薬組成物を経口剤に適用させる場合、例えば、賦形剤、結合剤、崩壊剤、界面活性剤、保存剤、着色剤、矯味剤、香料、安定化剤、防腐剤、酸化防止剤等の、医薬製剤の分野で通常使用し得る全ての添加剤を含有させることができる。また、ドラックデリバリーシステム(DDS)を利用して、徐放性製剤等にすることもできる。
【0062】
また、本実施形態に係る医薬組成物を外用剤に適用させる場合、基剤、界面活性剤、保存剤、乳化剤、着色剤、矯臭剤、香料、安定化剤、防腐剤、酸化防止剤、潤沢剤、溶解補助剤、懸濁化剤等の、医薬製剤の分野で通常使用し得る全ての添加剤を含有させることができる。
【0063】
また、本実施形態に係る医薬組成物を注射剤に適用させる場合、例えば、溶剤、安定剤、溶解補助剤、懸濁化剤、保存剤、等張化剤、防腐剤、酸化防止剤等の、医薬製剤の分野で通常使用し得る全ての添加剤を含有させることができる。
【0064】
本実施形態に係る脂肪細胞分化抑制剤、PPARγ発現抑制剤、C/EBPα発現抑制剤、抗肥満剤、および抗メタボリックシンドローム剤は、経口投与、経皮投与、皮内投与、皮下投与、筋肉内投与、静脈内投与、などにより全身又は局所においてその効果を発揮したり、あるいは投与部位において、局所的に効果を発揮したりする。
【0065】
本実施形態に係る医薬組成物において、脂肪細胞分化抑制剤、PPARγ発現抑制剤、C/EBPα発現抑制剤、抗肥満剤、および抗メタボリックシンドローム剤の含有量は特に限定されず、目的に応じて自由に設定することが可能である。
【0066】
(食品組成物)
本実施形態に係るユーグレナ水性溶媒抽出物を有効成分として含む脂肪細胞分化抑制剤、PPARγ発現抑制剤、C/EBPα発現抑制剤、抗肥満剤、および抗メタボリックシンドローム剤は、その優れた脂肪細胞分化抑制効果、PPARγ発現抑制効果、C/EBPα発現抑制効果、抗肥満効果およびメタボリックシンドローム予防または治療効果を利用して、各種食品に配合することにより、当該作用を有する食品組成物を提供することができる。
【0067】
例えば、飲料(清涼飲料、アルコール飲料、炭酸飲料、乳飲料、果汁飲料、茶、コーヒー、栄養ドリンク等)、醤油などの調味料、スープ類、クリーム類、各種乳製品類、畜肉加工品、農産加工品、アイスクリームなどの冷菓、各種粉末食品(飲料を含む)、濃縮飲料、保存用食品、冷凍食品、パン類、シリアル類、菓子類(キャンディ(のど飴)、クッキー、ビスケット、ガム、グミ、チョコレート等)など、あらゆる食品組成物に用いることができる。
【0068】
あるいは、保健機能食品(特定保健機能食品、栄養機能食品、機能性表示食品)や、いわゆる健康食品(飲料を含む)、濃厚栄養剤、流動食、乳児・幼児食にも用いることができる。
ここで特定保健用食品とは、生理学的機能等に影響を与える保健機能成分を含む食品であって、消費者庁長官の許可を得て特定の保健の用途に適する旨を表示可能なものである。本実施形態においては、特定の保健用途として、「体脂肪をつきにくくする」、脂肪蓄積の予防、改善、脂肪細胞増殖の抑制、肥満の予防、改善などと表示して販売される食品となる。
また栄養機能食品とは、栄養成分(ビタミン、ミネラル)の補給のために利用される食品であって、栄養成分の機能を表示するものである。栄養機能食品として販売するためには、一日当たりの摂取目安量に含まれる栄養成分量が定められた上限値、下限値の範囲内にある必要があり、栄養機能表示だけでなく注意喚起表示等もする必要がある。
また機能性表示食品とは、事業者の責任において、科学的根拠に基づいた機能性を表示した食品である。販売前に安全性及び機能性の根拠に関する情報などが消費者庁長官へ届け出られたものである。
【0069】
上記において本実施形態は、ユーグレナ水性溶媒抽出物を有効成分として含み、肥満病患者を対象とした脂肪蓄積予防用特定保健用食品/脂肪細胞分化抑制用特定保健用食品や、脂肪蓄積予防用栄養機能食品/脂肪細胞分化抑制用栄養機能食品、脂肪蓄積予防用機能性表示食品/脂肪細胞分化抑制用機能性表示食品として用いることができる。
また本実施形態は、ユーグレナ水性溶媒抽出物を有効成分として含み、生体、例えば脂肪が蓄積する前のヒト、脂肪が蓄積することによって引き起こされるメタボリックシンドローム予備軍のヒトを対象とした脂肪蓄積予防用特定保健用食品/脂肪細胞分化予防用特定保健用食品や、脂肪蓄積予防用栄養機能食品/脂肪細胞分化予防用栄養機能食品、脂肪蓄積予防用機能性表示食品/脂肪細胞分化予防用機能性表示食品として用いることができる。
【0070】
本実施形態に係る食品組成物には、本実施形態に係る脂肪細胞分化抑制剤、PPARγ発現抑制剤、C/EBPα発現抑制剤、抗肥満剤、および抗メタボリックシンドローム剤に加え、通常食品組成物に用いることができる成分を、1種または2種以上自由に選択して配合することが可能である。例えば、各種調味料、保存剤、乳化剤、安定剤、香料、着色剤、防腐剤、pH調整剤などの、食品分野で通常使用し得る全ての添加剤を含有させることができる。
【0071】
食品組成物における肪細胞分化抑制剤、PPARγ発現抑制剤、C/EBPα発現抑制剤、抗肥満剤、および抗メタボリックシンドローム剤の含有量は特に限定されず、目的に応じて自由に設定することが可能である。
【0072】
(化粧料組成物)
本実施形態に係るユーグレナ水性溶媒抽出物を有効成分として含む脂肪細胞分化抑制剤、PPARγ発現抑制剤、C/EBPα発現抑制剤、抗肥満剤、および抗メタボリックシンドローム剤は、その優れた脂肪細胞分化抑制効果、PPARγ発現抑制効果、C/EBPα発現抑制効果、抗肥満効果およびメタボリックシンドローム予防または改善効果を利用して、化粧料組成物に好適に用いることができる。
該化粧料組成物は、あらゆる形態の化粧料に適用することができる。例えば、ローション、乳液、クリーム、美容液などのスキンケア化粧料、ファンデーション、コンシーラー、化粧下地、口紅、頬紅、アイシャドウ、アイライナーなどのメイクアップ化粧料、日焼け止め化粧料などに適用することができる。
【0073】
本実施形態に係る化粧料組成物には、本実施形態に係る脂肪細胞分化抑制剤、PPARγ発現抑制剤、C/EBPα発現抑制剤、抗肥満剤、および抗メタボリックシンドローム剤に加え、通常化粧料組成物に用いることができる成分を、1種または2種以上自由に選択して配合することが可能である。
例えば、基材、保存剤、乳化剤、着色剤、防腐剤、界面活性剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤、保湿剤、紫外線吸収剤、香料、防腐防黴剤、体質顔料、着色顔料、アルコール、水などの、化粧品分野で通常使用し得る全ての添加剤を含有させることができる。
【0074】
本実施形態に係る化粧料組成物において、脂肪細胞分化抑制剤、PPARγ発現抑制剤、C/EBPα発現抑制剤、抗肥満剤、および抗メタボリックシンドローム剤の含有量は特に限定されず、目的に応じて自由に設定することが可能である。
【0075】
<脂肪細胞分化抑制剤、PPARγ発現抑制剤、C/EBPα発現抑制剤、抗肥満剤、および抗メタボリックシンドローム剤の製造方法>
本実施形態の脂肪細胞分化抑制剤、PPARγ発現抑制剤、C/EBPα発現抑制剤、抗肥満剤、および抗メタボリックシンドローム剤は、以下の方法で製造される。
まず、ユーグレナに、水性溶媒を加えて撹拌及び/又は振盪して分散液を得る分散液調製工程を行う。この分散液調製工程においてユーグレナとして、ユーグレナ粉末を用いるとよい。
次いで、分散液を遠心分離して、上澄を、ユーグレナの水性溶媒抽出物として得る抽出工程を行う。
【0076】
また、分散液調製工程の後、抽出工程の前に、高圧蒸気滅菌器等の加熱手段を用いて分散液を加熱して、加熱工程を行ってもよい。
具体的には、まず、ユーグレナに、水性溶媒を加えて撹拌及び/又は振盪して分散液を得る分散液調製工程を行う。
次いで、加熱手段を用いて分散液を加熱して、加熱抽出する加熱工程を行う。
さらに、分散液を遠心分離して、上澄を、ユーグレナの水性溶媒抽出物として得る抽出工程を行う。
【0077】
加熱工程において、加熱手段の設定温度を、室温以上、例えば20℃以上50℃以下、50℃以上80℃以下、80℃以上100℃以下、100℃以上120℃以下、120℃以上150℃以下、150℃以上200℃以下とすることができる。
【0078】
加熱工程において、ユーグレナ水性溶媒分散液が密閉容器に入れられている場合、加熱手段の設定温度が、ユーグレナ水性溶媒分散液の温度に一致する。
また、加熱工程において、ユーグレナ水性溶媒分散液を開放容器に入れられている場合、開放容器周囲の雰囲気の気圧に応じて、ユーグレナ水性溶媒分散液の温度が決まるが、大気圧の場合、最高で約100℃となる。
【0079】
加熱工程において、ユーグレナ水性溶媒分散液が開放容器に入れられている場合には、加熱工程と、ユーグレナ水性溶媒抽出物の濃縮工程が同時に行われることになる。
【0080】
なお、分散液を遠心分離する代わりに、一般的な分離方法によって、ユーグレナの水性溶媒抽出物を得てもよい。例えば、分散液を濾過することで得られる濾液をユーグレナの水性溶媒抽出物を得てもよい。
さらに、遠心分離や濾過等を行うことなく、水性溶媒を加えて振盪して得られる分散液をそのままユーグレナ水性溶媒抽出物とすることも可能である。
【0081】
得られたユーグレナ水性溶媒抽出物を更に、適当な分離手段(例えば、分配抽出、ゲル濾過法、シリカゲルクロマトグラフィー、逆相若しくは順相の高速液体クロマトグラフィーなど)により活性の高い画分を分画して得る分画工程を行ってもよい。
また、得られたユーグレナ水性溶媒抽出物又は画分を濃縮する濃縮工程及び/又は、水性溶媒を蒸発させ乾燥する乾燥工程を行ってもよい。
【0082】
以上により得られたユーグレナの水性溶媒抽出物を、本実施形態の肪細胞分化抑制剤、PPARγ発現抑制剤、C/EBPα発現抑制剤、抗肥満剤、および抗メタボリックシンドローム剤として用いる。
【実施例】
【0083】
以下、具体的実施例に基づいて本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
以下の試験例では、ユーグレナの熱水抽出物(実施例1)、室温および異なる温度(25℃、50℃、75℃、95℃、120℃)で抽出を行ったユーグレナの水抽出物又は熱水抽出物(実施例2〜6)のヒト皮下脂肪由来幹細胞を用いた脂肪細胞への分化に対する影響を確認することにより、脂肪細胞への分化抑制効果が高くなるユーグレナの抽出方法の検討を行った。
また、ユーグレナ熱水抽出物が、脂肪細胞分化のマスターレギュレーターであるPPARγ遺伝子及びC/EBPα遺伝子の発現量に対して与える影響を確認することにより、脂肪細胞分化抑制のメカニズムを検討した。
【0084】
<実施例1>
ユーグレナ粉末(ユーグレナ・グラシリス、EU−1593、(株)ユーグレナ製)0.5gに、超純水20mlを加え震盪し、均一に分散された後、乾熱滅菌器を用いて加熱抽出(95℃、2時間)した。遠心分離(4000rpm、3分、25℃)により得られた上清を分取し、0.45μm滅菌フィルターにて濾過することで、ユーグレナ熱水抽出物(ユーグレナ熱水抽出液、原液)を調製した。当該抽出液を脂肪細胞分化抑制剤として用いた。
【0085】
<実施例2>
ユーグレナ粉末(ユーグレナ・グラシリス、EU−1593、(株)ユーグレナ製)0.5gに、超純水20mlを加え震盪し、均一に分散された後、室温(25℃)で2時間抽出した。遠心分離(4000rpm、3分、25℃)により得られた上清を分取し、0.45μm滅菌フィルターにて濾過することで、ユーグレナ水抽出物(ユーグレナ水抽出液、原液)を調製した。当該抽出液を脂肪細胞分化抑制剤として用いた。
【0086】
<実施例3〜5>
ユーグレナ粉末(ユーグレナ・グラシリス、EU−1593、(株)ユーグレナ製)0.5gに、超純水20mlを加え震盪し、均一に分散された後、乾熱滅菌器を用いて、各温度(実施例3:50℃、実施例4:75℃、実施例5:95℃)で2時間熱水抽出した。遠心分離(4000rpm、3分、25℃)により得られた上清を分取し、0.45μm滅菌フィルターにて濾過することで、ユーグレナ熱水抽出物(ユーグレナ熱水抽出液、原液)を調製した。当該抽出液を脂肪細胞分化抑制剤として用いた。
【0087】
<実施例6>
ユーグレナ粉末(ユーグレナ・グラシリス、EU−1593、(株)ユーグレナ製)0.5gに、超純水20mlを加え震盪し、均一に分散された後、高圧蒸気滅菌器を用いて加熱抽出(120℃、20分)した。遠心分離(4000rpm、3分、25℃)により得られた上清を分取し、0.45μm滅菌フィルターにて濾過することで、ユーグレナ熱水抽出物(ユーグレナ熱水抽出液、原液)を調製した。当該抽出液を脂肪細胞分化抑制剤として用いた。
【0088】
<試験例1 脂肪由来幹細胞を用いたユーグレナ熱水抽出物の脂肪分化抑制試験>
(培地)
脂肪由来幹細胞増殖培地(増殖培地)として、DMEM、αMEM、1%FBS、ITS−X、10ng/mLb−FGF、ハイドロコルチゾンを含む培地を用いた。
脂肪細胞分化誘導培地として、DMEM、10%FBS、1μMデキサメタゾン、0.5mM3−イソブチル−1−メチルキサンチン、0.2mMインドメタシン、10μg/mLインスリン、33μMビオチンを含む培地を用いた。
脂肪細胞分化維持培地として、DMEM、10%FBS、10μg/mLインスリン、33μMビオチンを含む培地を用いた。
【0089】
(細胞の準備)
1) 15mlチューブに9mlの増殖培地を入れた。
2) ヒト皮下脂肪由来幹細胞(Lonza社、PT−5006;以下、ASC)の凍結バイアルを液体窒素から取り出した。
3) 37℃の温浴に1〜2分入れ、氷片が指先程度の大きさになるまで溶かした。
4) アルコールでふき取り、クリーンベンチ内に入れた。
5) 1)内の培地で氷片を溶解し、1)の15mlチューブに全て回収した。
6) 1200rpmで3分間遠心した。
7) アスピレーターで上清を除き、増殖培地を500μl〜1ml入れて細胞を懸濁した。
8) トリパンブルーと細胞懸濁液を10μlずつ混合し、ワンセルカウンターに入れた。
9) 顕微鏡を用いて、細胞数を計測した。
10) 培養用dishに3〜5×10
5cells/dishで細胞を播種した。
11) CO
2インキュベーター(37℃、5vol%CO
2)で3日間培養した。
【0090】
上記手順で準備したヒト皮下脂肪由来幹細胞を用い、ユーグレナ熱水抽出物の脂肪分化抑制試験を
図2に示す手順で行った。試験の手順を以下に具体的に示す。
【0091】
(3日前:細胞播種)
1) 細胞を顕微鏡で確認した。
2) アスピレーターで細胞上清を除き、PBS(−)5mlを添加した。
3) PBS(−)をアスピレーターで除去し、トリプシン溶液(0.25%(w/v)Trypsin−1mM EDTA(和光純薬株式会社製)を1ml滴下した。
4) CO
2インキュベーター(37℃、5vol%CO
2)で2分間静置した。
5) 顕微鏡で細胞を観察し、細胞が丸く、バラバラになってくることを確認した。
6) 10%FBS、DMEMを2ml添加し、15mlチューブに細胞を回収した。
7) 1200rpmで3分間、遠心分離を行った。
8) 上清を除いて、増殖培地で再懸濁し、細胞数を血球計算盤でセルカウントした。
9) 25000cells/wellになるように増殖培地で調整し、24wellプレートに500μlずつ播種した。
10) CO
2インキュベーターで静置した。
11) CO
2インキュベーター(37℃、5vol%CO
2)で3日間培養した。
【0092】
(0日目:脂肪分化誘導/ユーグレナ抽出物添加)
1) 脂肪細胞分化誘導培地に、各実施例のユーグレナ抽出物を添加し、ユーグレナ抽出物を所定濃度含む、ユーグレナ抽出物添加培地溶液を作製した。
2) アスピレーターで培養上清を除き、1)で調整したユーグレナ抽出物添加培地溶液を500μlずつ添加した。
3) コントロールに脂肪細胞分化誘導培地を添加した。
4) CO
2インキュベーター(37℃、5vol%CO
2)で7日間培養した。
5) 2〜3日に1回、培地交換を行った。
【0093】
(7日目:脂肪分化誘導/ユーグレナ抽出物添加)
1) 脂肪細胞分化維持培地に、各実施例のユーグレナ抽出物を添加し、ユーグレナ抽出物を所定濃度含む、ユーグレナ抽出物添加培地溶液を作製した。
2) アスピレーターで培養上清を除き、1)で調整したユーグレナ抽出物添加培地溶液を500μlずつ添加した。
3) コントロールに脂肪細胞分化維持培地を添加した。
4) CO
2インキュベーター(37℃、5vol%CO
2)で7日間培養した。
5) 2〜3日に1回、培地交換を行った。
【0094】
(14日目:細胞測定および細胞固定)
1) 顕微鏡で細胞を確認した。
2) DMEM、P/S培地:Cell Counting Kit−8=24:1の比でCCK−8溶液を必要量調製した。ここで、Cell Counting Kit−8は、水溶性テトラゾリウム塩WST−8を発色試薬として用いた生細胞数測定キット(株式会社同仁化学研究所製)である。
3) アスピレーターで培養上清を除き、2)で調整したCCK−8溶液を500μlずつ添加した。
4) CO
2インキュベーター(37℃、5vol%CO
2)で1時間静置した。
5) 96wellプレートにそれぞれ上清を100μ×2wellずつ移した。
6) マイクロプレートリーダーを用い、450nm及び650nmのそれぞれの波長における吸光度を測定した。
7) 5)で余った上清をアスピレーターで除き、PBS(−)を500μlずつ添加した。
8) 7)を計2回実施した。
9) PBS(−)を除き、4%パラホルムアルデヒド(PFA)を500μl/wellずつ添加し、細胞を固定した。
10) アルミホイルで遮光をし、4℃で24時間以上保存した。
11) 以下に示す方法でオイルレッドO染色を行い、脂肪蓄積率を定量化した。
【0095】
(染色及び脂肪分化の定量)
Oil Red Oストック溶液を、Oil Red O:イソプロパノール=120mg:40mlの比で50mlチューブに作成し、室温で保存した。
Oil Red O染色液は、Oil Red Oストック溶液:超純水=3:2の比で混合し、濾過をし、直ちに以下の細胞染色に用いた。
1) プレート内の固定液を除いた。
2) PBS(−)500μl/wellで2回洗浄した。
3) 60%イソプロパノール水溶液を500μl/well加え、室温で2分程度なじませた。
4) 60%イソプロパノール水溶液を除き、Oil Red O染色液を250μl/well添加した。
5) 室温で15分静置した。
6) Oil Red O染色液を除き、60%イソプロパノール水溶液を500μl/well加え、軽く撹拌し洗浄した。
7) 60%イソプロパノール水溶液を除き、PBS(−)を500μl/well加え、写真を撮影した。
8) PBS(−)を除き、100%イソプロパノールを500μl/well加え、Oil Red Oを抽出した。
9) 全て抽出が完了したら、96wellプレートに200μl/wellずつ移した。
10) マイクロプレートリーダーを用い、520nmで吸光度を測定した。
11) 吸光度の値を脂肪蓄積量とした。単位細胞あたりの脂肪蓄積量は、脂肪蓄積量(Oil Red O)/細胞の数(CCK−8)で換算した値を用いた。
12) 脂肪細胞分化誘導培地を用いて培養を行ったコントロールにおける脂肪蓄積率を100%として、脂肪蓄積率を算出した。
【0096】
(試験例1の結果)
実施例1のユーグレナ熱水抽出物を用いて、上記試験を行った結果を解析して、ユーグレナ熱水抽出物による各濃度(5vol%、10vol%、20vol%)の脂肪蓄積率を比較したグラフを
図3に示す。
コントロールにおける脂肪蓄積率を100%としたときの、各濃度における脂肪蓄積率は、順に56.4%、32.5%、7.05%であった。
脂肪蓄積率は、ユーグレナ熱水抽出物の濃度が高くなるにつれて減少した。
なお、これら試験は複数回行い、同様の再現性が得られた。
【0097】
図4に示す通り、ユーグレナ熱水抽出物の濃度が高くなるにつれて脂肪滴(Oil Red Oで染色された部分)が少なくなっていることがわかった。
【0098】
<試験例2 異なる温度で抽出したユーグレナ水抽出物の脂肪分化抑制試験>
実施例1のユーグレナ熱水抽出物の代わりに、実施例2〜6の水抽出物又は熱水抽出物(実施例2:25℃、実施例3:50℃、実施例4:75℃、実施例5:95℃、実施例6:120℃)を用いたこと以外は、試験例1と同様の試験を行った。
【0099】
(試験例2の結果)
実施例2〜6のユーグレナ水抽出物又は熱水抽出物を用いた試験の結果を解析して、異なる温度で抽出したユーグレナ水抽出物又は熱水抽出物による各濃度(5vol%、10vol%、20vol%)の脂肪蓄積率を比較したグラフを
図5に示す。
各温度のユーグレナ水抽出物又は熱水抽出物における脂肪蓄積率は、ユーグレナ水抽出物又は熱水抽出物の濃度が高くなるにつれて減少した。
なお、これら試験は複数回行い、同様の再現性が得られた。
【0100】
一方、抽出温度が高くなっても、脂肪蓄積率が大きく下がることはなかった。以上の結果から、抽出の温度よりも、抽出物の濃度が、脂肪蓄積率の減少に影響を与えることがわかった。このことは、50℃程度という比較的低い温度の熱水抽出物であっても、脂肪蓄積率の減少に効果があることを示している。
【0101】
図6に示す通り、各温度の水抽出物又は熱水抽出物において、ユーグレナ水抽出物又は熱水抽出物の濃度が高くなるにつれて脂肪滴が少なくなっていることがわかった。
【0102】
<試験例3 ユーグレナ熱水抽出物とEPAの脂肪分化抑制試験>
実施例1のユーグレナ熱水抽出物と、比較例1として脂肪分化抑制作用を有することが知られているエイコサペンタンエン酸(EPA)を用いて、試験例1と同様の試験を行った。
【0103】
(試験例3の結果)
実施例1のユーグレナ熱水抽出物を用いた試験の結果と、比較例1のEPAを用いた試験の結果を解析して、ユーグレナ熱水抽出物(10vol%濃度、20vol%濃度)と、EPA(10μM、50μM、100μM)の脂肪蓄積率を比較したグラフを
図7に示す。
なお、本試験のEPAの添加量は、ユーグレナ熱水抽出に含有されるEPAの量よりも6倍以上多くなるように設定した。
比較例1における脂肪蓄積率は、80%以上であり、実施例1のユーグレナ熱水抽出物の脂肪蓄積率と比較して高かった。
また、
図8に示す通り、コントロールと比べて脂肪滴(Oil Red Oで染色された部分)が僅かに少なくなっていることがわかった。
この結果から、ユーグレナ熱水抽出物に含まれる成分のうち、EPA以外の有効成分、特に未同定の有効成分が、脂肪細胞の分化を抑制する作用をもたらすことが分かった。
【0104】
<試験例4 ユーグレナ熱水抽出物の添加期間を変えた脂肪分化抑制試験>
実施例1のユーグレナ熱水抽出物を用い、ユーグレナの熱水抽出物を培地に添加する期間を変更した以外は、試験例1と同様の試験を行った。
具体的には、脂肪細胞分化誘導培地を用いて培養を行う0〜7日目までを前半、脂肪細胞分化維持培地を用いて培養を行う7〜14日目までを後半としたときに、(i)前半および後半にユーグレナ熱水抽出物を添加した場合と、(ii)前半のみにユーグレナ熱水抽出物を添加した場合と、(iii)後半のみにユーグレナ熱水抽出物を添加した場合とで、脂肪蓄積率を比較した。
【0105】
(試験例4の結果)
試験例4の結果を解析して、ユーグレナ熱水抽出物を添加する期間を変えた場合の脂肪蓄積率を比較したグラフを
図9に示す。
ユーグレナ熱水抽出物の添加期間が(i)前半および後半の場合と、(ii)前半のみの場合で、同程度の脂肪蓄積率であることがわかった。一方、(iii)添加期間が後半のみの場合では、脂肪蓄積率が高くなっていることがわかった。この結果は、ユーグレナ熱水抽出物の脂肪分化抑制効果は、脂肪分化誘導の前半に、その効果を発揮していることを示している。
【0106】
図10に示す通り、ユーグレナ熱水抽出物の添加期間が(i)前半および後半の場合と、(ii)前半のみの場合に、(iii)添加期間が後半のみの場合と比べて、添加脂肪滴が少なくなっていることがわかった。
【0107】
<試験例5 リアルタイムPCRによる遺伝子発現解析>
脂肪細胞分化のマスターレギュレーターであるPPARγ遺伝子及びC/EBPα遺伝子の発現を調べるために、実施例1のユーグレナ熱水抽出物を用いて試験例1と同様の試験を行った。具体的には、0日目にユーグレナ熱水抽出物を添加して、分化誘導培地を用いて培養を行い、培養1日目、2日目、3日目、6日目、13日目に、細胞から全RNAを抽出し、逆転写反応で得られたcDNAを使用してリアルタイムPCRを用い、PPARγ遺伝子及びC/EBPα遺伝子の発現量を測定した。
【0108】
(RNAの回収および抽出)
1) 培地を除き、PBS(−)で2回洗浄した。
2) PBS(−)を除いた後、全RNA抽出試薬(RNAiso Plus、タカラバイオ株式会社製)0.5mlを入れ、1.5mlのマイクロチューブに移した(−80℃で保存可能)。
3) クロロホルムを100μl(全RNA抽出試薬の0.2倍量)加え、15秒間ボルテックスミキサーで撹拌後、5分間、室温で静置した。
4) 12000g、4℃で、15分間遠心分離した。
5) 遠心分離の間に、新しい1.5mlのマイクロチューブに、イソプロパノール500μlを用意した。
6) 遠心分離後、透明の層を1.5mlのマイクロチューブに移し、10秒間ボルテックスミキサーで撹拌後、10分間、室温で静置した。
7) 12000g、4℃で、15分間遠心分離した。
8) 遠心分離の間、75%エタノール水溶液を作製し、氷上に置いた。
9) 遠心分離後、上清を抜き、75%エタノールを500μlずつ入れて、ボルテックスミキサーで少し撹拌した。
10) 7500g、4℃で、5分間で遠心分離した。
11) ペレットを吸わないようにし、可能な限り上清を抜いた。
12) 室温で、10分〜30分間乾燥させた。
13) 滅菌水20μlを加え、数回ピペッティングをしてペレットを溶かし、−20℃で保存した。
【0109】
(cDNA合成)
1) 分光光度計(NanoDrop ND−2000C、Thermo社製)で濃度を測定した。
2) 5×PrimeScript RT Master Mixと、2μl分のTotal RNAをマイクロチューブに添加し、10μlになるように滅菌水を加え、混合した。
3) サーマルサイクラー(TP600、TaKaRa社製)に試料を設置し、37℃で15分間保持、85℃で5秒間保持、25℃に降温することで、逆転写反応を行った。
4) 90μlの滅菌水を加えて10倍希釈し、−20℃で保存した。
【0110】
(リアルタイムPCRによる遺伝子発現解析)
1) 使用するwell数+1wellの容量のプライマーSYBR mixを、以下の比で、試薬を混合することで作製した。
PowerUp SYBR Green Master Mix(Applied Biosystems社製):5μl×well数
プライマー:0.6μl×well数
滅菌水:1.4μl×well数
2) 各試料を96wellプレートに3μlずつ添加した。ネガティブコントロール(NC)には滅菌水を添加した。
3) プライマーSYBR mixを各7μlずつ添加し、プレート遠心機(PS―020、TOMY社製)にてスピンダウンした。
4) リアルタイムPCR装置(Step One Plus、Applied Biosystems社製)を用い、リアルタイムPCRを実行した。
プライマーとして、以下のプライマーを用いた。
・PPARγ遺伝子の発現解析に用いたプライマー
PPARG−F:5'-GAACGACCAAGTAACTCTCCTCAAAT-3'(配列番号1)
PPARG−R:5'-TCTTTATTCATCAAGGAGGCCAGCATT-3'(配列番号2)
・C/EBPα遺伝子の発現解析に用いたプライマー
CEBPA−F:5'-GGGTCTGAGACTCCCTTTCCTT-3'(配列番号3)
CEBPA−R:5'-CTCATTGGTCCCCCAGGAT-3'(配列番号4)
内部標準として、ハウスキーピング遺伝子であるグリセルアルデヒド−3−ホスフェートデヒドロゲナーゼ(GAPDH)mRNAを同様に増幅した。
・House Keeping Gene(GAPDH)遺伝子の発現解析に用いたプライマー
GAPDH−F:5'-TGCACCACCAACTGCTTAGC-3'(配列番号5)
GAPDH−R:5'-TCTTCTGGGTGGCAGTGATG-3'(配列番号6)
【0111】
(試験例5の結果)
培養0日目のPPARγ遺伝子発現量を1とした場合の、1日目、2日目、3日目、6日目、13日目のPPARγ遺伝子の発現量を比較した結果を
図11に示す。
1日目、2日目、3日目、6日目、13日目のPPARγ遺伝子発現量は、ユーグレナ熱水抽出物を10vol%及び20vol%添加した場合、各日数のコントロールに対して、PPARγ遺伝子の発現量が、有意に減少していることがわかった。
また、ユーグレナ熱水抽出物の濃度が高くなるに従い、PPARγ遺伝子の発現が抑制されることがわかった。
【0112】
培養0日目のC/EBPα遺伝子発現量を1とした場合の、1日目、2日目、3日目、6日目、13日目のC/EBPα遺伝子の発現量を比較した結果を
図12に示す。
熱水抽出物添加量が10vol%及び20vol%である場合のC/EBPα遺伝子発現量は、脂肪細胞の分化を誘導する培地で培養を行ったコントロールに対してC/EBPα遺伝子の発現量が、有意に減少していることがわかった。
また、ユーグレナ熱水抽出物の濃度が高くなるに従い、C/EBPα遺伝子の発現が抑制されることがわかった。
【0113】
試験例5の結果から、PPARγ遺伝子及びC/EBPα遺伝子の発現が抑制されることで、脂肪細胞への分化が抑制され、脂肪蓄積量の減少につながったことが示された。
【課題】ユーグレナ抽出物の新規な利用方法となる新規な脂肪細胞分化抑制剤、PPARγ発現抑制剤、C/EBPα発現抑制剤、脂肪細胞分化抑制用食品組成物、及び脂肪細胞分化抑制用化粧料組成物を提供する。
【解決手段】ユーグレナ水性溶媒抽出物を有効成分として含有する新規な脂肪細胞分化抑制剤、PPARγ発現抑制剤、C/EBPα発現抑制剤、脂肪細胞分化抑制用食品組成物、及び脂肪細胞分化抑制用化粧料組成物である。例えば、ユーグレナ水性溶媒抽出物は、ユーグレナの水抽出物又は熱水抽出物である。