(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1におけるバイタルセンサでは、相応の精度で脈拍等を検出しようとすると、相応の太さの血管に対して同じ位置から光を安定して当てることが必要となる。つまり、特許文献1のバイタルセンサでは位置決めを正確にする必要がある。加えて、潜水中のダイバーの動作には多くの制限があり、例えば、潜水中に特許文献1のバイタルセンサの位置がずれた際に、そのずれを完全に元の位置に戻すことは困難であると考えられる。また、ダイバーが潜水中に作業を行う際には、特許文献1のバイタルセンサをつけることで、手の動きに相応の制約が生じその作業を迅速に行うことが困難になるおそれもある。
【0005】
本発明は、前記問題点を解決するべくなされたもので、バイタルセンサの位置決めを厳密にしなくても、相応の精度でダイバーの生体情報を得ることを可能とするバイタルモジュール、ダイバーモジュール、及びダイバー監視システムを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、
潜水中のダイバーのバイタル信号を検出するバイタルセンサを備えるバイタルモジュールであって、
前記バイタルセンサを収納する防水されたケーシングと、該ケーシングに収納され、前記バイタル信号を処理して前記ダイバーの生体情報信号を出力する演算ユニット
と、を備え、該バイタルセンサが、アンテナを用いてマイクロ波を前記ダイバーに放射し、且つ該ダイバーからのマイクロ波を受信するマイクロ波送受信部と、該マイクロ波送受信部から出力される検出信号を処理する信号処理部と、を備え、
当該バイタルモジュールが、前記ダイバーの着るダイバースーツの外側から配置され、前記ケーシングが、前記バイタルセンサが前記ダイバーの胸部に配置される
位置において該ダイバーを押圧可能とされていることにより、上記課題を解決したものである。
【0007】
本発明は、ダイバーの生体情報を示す生体情報信号を得るためにマイクロ波を用いている。このため、潜水中にバイタルセンサに入ってくる外来ノイズを、大気中にバイタルセンサがある時よりも低減させることができる。同時に、マイクロ波を用いることで、ダイバーの生体情報である体内振動を高感度に検出することが可能となる。更に、バイタルセンサは、非接触センサでダイバーの肌を露出させる必要もないので、ダイバーの胸部に配置されるという条件だけで、厳密な位置決めを必要としない。
【0008】
なお、前記生体情報信号は、前記ダイバーの呼吸信号と心拍信号とされていてもよい。その場合には、ダイバーの身体状況をより正確に把握することが可能となる。
【0009】
なお、前記マイクロ波送受信部が、パルス状の前記マイクロ波を発生させる発生部と、該発生部から出力される該マイクロ波を放射及び受信するアンテナ部と、を備え、該アンテナ部には、2つの受信アンテナが設けられ、前記信号処理部が、該2つの受信アンテナから得られた前記検出信号の差分を行う差動部と、該差動部から出力される差動出力信号の高周波成分をカットするローパスフィルタ部と、該ローパスフィルタ部から出力されるフィルタ出力信号を調整する調整部と、を備えてもよい。その場合には、バイタルセンサの回路構成としては比較的簡素な構成であり、低電力・低コストとしながら、よりノイズの少ないバイタル信号を得ることが可能となる。
【0010】
なお、前記マイクロ波送受信部が、前記マイクロ波を発生させる発生部と、該発生部から出力される該マイクロ波を放射し、周波数変調された該マイクロ波を受信するアンテナ部と、を備え、前記信号処理部が、前記検出信号に対して直交位相検波を行う検波部と、該検波部から出力される検波信号の周波数を電圧に変換するF/V変換部と、該F/V変換部から出力される電圧信号を積分する積分部と、を備えてもよい。その場合には、バイタル信号はドップラーレーダの原理で検出されるので、信頼性の高いバイタル信号を得ることが可能となる。
【0011】
なお、当該バイタルモジュールが、前記ダイバーの着るダイバースーツの外側
から配置されてい
るので、バイタルモジュールのダイバーへの脱着が容易となる。
【0012】
なお、更に、
前記ケーシングのダイバー側の側面に圧力を検出する第1圧力センサが設けられていてもよい。この場合には、第1圧力センサの出力を考慮して、得られたバイタル信号の適否を判断することが可能となる。
【0013】
なお、更に、
前記ケーシングのダイバー側の側面以外の面に当該バイタルモジュールの外部の圧力を検出する第2圧力センサが設けられていてもよい。この場合には、第2圧力センサの出力を考慮して、得られたバイタル信号の適否を判断することが可能となる。
【0014】
なお、更に、当該バイタルモジュールの状態変化を検知可能とする変化検出センサが設けられていてもよい。この場合には、変化検出センサの出力を考慮して、得られたバイタル信号の適否を判断することが可能となる。
【0015】
なお、前記変化検出センサは、3軸加速度センサと3軸ジャイロセンサと3軸地磁気センサから構成される9軸センサとされていてもよい。この場合には、3軸加速度センサと3軸ジャイロセンサとで、バイタルモジュールを装着したダイバーの微動や向き変化を検出でき、且つ3軸地磁気センサでバイタルモジュールを装着したダイバーの場所や向きを検出でき、得られたバイタル信号の適否をより容易に判断することが可能となる。
【0016】
なお、本発明は、上記のいずれかに記載のバイタルモジュールを備えたダイバーモジュールにおいて、前記バイタルモジュールに通信可能に接続され、前記生体情報信号に従う情報を表示可能な表示装置を備え、該表示装置が前記ダイバー自身で視認可能な位置に配置されることを特徴とするダイバーモジュールともいえる。この場合には、ダイバー自身が生体情報信号に従う情報を自ら確認できるので、ダイバーが潜水時の安全性を確保するように自ら行動することが可能となる。
【0017】
なお、本発明は、上記のいずれかに記載のバイタルモジュール、または上記に記載のダイバーモジュールを備えたダイバー監視システムであって、前記バイタルモジュールが、前記生体情報信号を送信可能な第1通信ユニットを備え、該第1通信ユニットから送信された生体情報信号を受信可能な第2通信ユニットと、該第2通信ユニットから出力される生体情報信号を処理し、前記生体情報信号の時間的な変化を観察可能とする監視処理部と、を有する監視装置を備えることを特徴とするダイバー監視システムともいえる。この場合には、ダイバーの生体情報をダイバーから離れた監視装置で客観的に確認することができる。
【0018】
なお、前記監視装置が、前記ダイバーの潜水前に得られた基準生体情報信号を記憶する記憶部を備え、前記監視処理部が、前記第2通信ユニットから出力される生体情報信号と該基準生体情報信号との比較を行い、該比較した結果を出力する場合には、監視装置でダイバーの状態をより迅速に判断することができる。
【0019】
なお、本発明は、上記に記載のダイバーモジュールを備えたダイバー監視システムであって、前記バイタルモジュールが、前記生体情報信号を送信可能な第1通信ユニットを備え、該第1通信ユニットから送信された生体情報信号を受信可能な第2通信ユニットと、前記ダイバーの潜水前に得られた基準生体情報信号を記憶する記憶部と、該第2通信ユニットから出力される生体情報信号と該基準生体情報信号との比較を行い、該比較した結果を、該第2通信ユニットと前記第1通信ユニットとを介して、前記表示装置に表示させる監視処理部と、を有する監視装置を備えることを特徴とするダイバー監視システムともいえる。この場合には、監視装置でダイバーの状態を判断した結果をダイバー自身に知らせるので、例えばダイバーが緊急性のある事態に巻き込まれても、ダイバー自身が判断をすることなく、迅速な回避行動を開始させることが容易となる。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、バイタルセンサの位置決めを厳密にしなくても、相応の精度でダイバーの生体情報を得ることが可能となる。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明の第1実施形態の一例について、
図1〜
図12を参照して詳細に説明する。
【0023】
図1、
図2に示す如く、本発明の第1実施形態に係るダイバー監視システム100は、1以上(3以上でもよい)のダイバーモジュール102と、各ダイバーモジュール102に防水された通信ケーブルCCで接続された監視装置108と、を備える。ダイバーモジュール102は、
図3(A)に示す如く、潜水中のダイバー(潜水作業者)Diのバイタル信号Sstを検出するバイタルセンサ110(
図2)を備えるバイタルモジュール104と、バイタルモジュール104に通信ケーブルCCで通信可能に接続された表示装置106と、を備える。また、監視装置108は、船SP上に配置されており、監視員が操作可能となっている。
【0024】
以下、各構成について、詳細に説明する。
【0025】
前記ダイバーDiは、
図3(A)に示す如く、全身を覆うダイバースーツDSを着ている。ダイバースーツDSは、ウエットタイプでもよいしドライタイプでもよい(なお、ドライタイプの場合にはダイバースーツDSにもレギュレータが取付けられるが、いずれの図でもレギュレータ及びタンクを省略している)。そして、ダイバーDiは、肩にかかるバンド及び、胸部Db周りのバンドを備えた胸部Dbのほぼ全面を覆うダイバーベストDVをダイバースーツDSの上に着ている。ダイバーベストDVの中央部内側には、バイタルモジュール104が入るポケットPCが設けられている(つまり、バイタルモジュール104は、ダイバーDiの着るダイバースーツDSの外側に配置され、バイタルセンサ110はダイバーDiの胸部Dbに配置される構成となっている)。なお、肩にかかるバンド及び、胸部Db周りのバンドの伸縮調整機構(図示せず)により、ポケットPCに入った状態のバイタルモジュール104のダイバースーツDSへの押圧力がある程度調整可能となっている。
【0026】
また、ダイバーDiは、
図3(A)に示す如く、例えばフルフェイス型のマスクMKを頭部に装着している(潜水深度等の関係から必ずしもフルフェイス型でなくてもよい)。マスクMKは、ダイバーDiの目の位置に該当するゴーグル部分が透明となっている。また、マスクMKには、ダイバーDiの口の位置に該当するマウス部分に呼吸をするためのレギュレータ(図示せず)が設けられている。また、マスクMKには、図示せぬスピーカ及びイヤホンが設けられ、船SP上の監視員及びダイバーDi同士で会話可能となっている(この音声情報は、第1通信ユニット138や第2通信ユニット140を介してやり取りを行ってもよいし、別の通信手段を用いてもよい)。なお、マスクMKのゴーグル部分近傍において、支持部材RDは表示装置106をある程度の範囲で並進移動及び回転傾斜を可能に支持している。このため、表示装置106はダイバーDi自身で視認可能な位置に配置される構成となっている。なお、表示装置は、マスクMKではなく、ダイバーDiの腕や肩や足等に配置されていてもよい。
【0027】
前記バイタルモジュール104は、
図2に示す如く、バイタルセンサ110と、変化検出センサ122と、第1圧力センサ124と、第2圧力センサ126と、演算ユニット128と、第1通信ユニット138と、を備え、これらすべてをケーシング105(
図4(A))内に収納している。ケーシング105は、100m防水の可能な耐圧構造であり、例えば約100mm*100mm未満*50mm未満のサイズとされている。そして、バイタルモジュール104としての重量は、例えば通信ケーブルCCを含まずに100g程度とされている。
【0028】
ケーシング105は、
図4(A)に示す如く、上ケース105Aとベース板105Bとを備えている。上ケース105Aとベース板105Bとは、シール部材SMにより、密封可能とされている。そして、本実施形態では、ケーシング105内部全体(一部でもよい)に樹脂が充填され、防水状態をより確実に確保している。上ケース105Aの側面には、2つの防水型のコネクタCNが設けられ、コネクタCNは第1通信ユニット138に接続されている。また、上ケース105AのコネクタCNが設けられている側面とは異なる側面には、第2圧力センサ126が配置される検出孔105AAが設けられている。ベース板105Bには、
図4(B)に示す如く、上基板Usbと下基板Dsbとが支持されている。上基板Usbには、変化検出センサ122と、演算ユニット128と、第1通信ユニット138と、が配置されている。下基板Dsbには、バイタルセンサ110が配置されている。つまり、バイタルセンサ110が備える2つのアンテナAT1、AT2(後述)とダイバーDiとの間には、回路基板などの電磁波を発生させるおそれのある構成要素がこないような構成とされている。また、ベース板105Bには、
図4(C)に示す如く、第1圧力センサ124が配置される検出孔105BAが設けられている。
【0029】
バイタルセンサ110は、
図5に示す如く、UWB(超広帯域無線)方式バランス型動体センサと称するマイクロ波Mwvを用いたレーダとされている。つまり、バイタルセンサ110は、ダイバーDiの生命維持活動に伴う体内振動(心臓や肺の動きによる微少変位)である生体情報を、マイクロ波Mwvの反射して戻ってくる時間(心臓や肺の動きによる微少変位に比例する値)の相対変化を計測することで求める。これにより、バイタルセンサ110は、ダイバーDiのバイタル信号Sstを検出する構成となっている。具体的に、バイタルセンサ110は、
図5に示す如く、マイクロ波送受信部111と、信号処理部114とを備える。マイクロ波送受信部111は、アンテナAT1、AT2(
図7)を用いてマイクロ波MwvをダイバーDiに放射し、且つダイバーDiからのマイクロ波Mwvを受信する。信号処理部114は、マイクロ波送受信部111から出力される検出信号Sdtを処理する。なお、ここで使用するマイクロ波Mwvは、例えば10.5GHzであり、そのアンテナAT1、AT2からの出力は総務省令電波法施行規則で規定されている微弱無線局の電界強度とされている。このため、バイタルセンサ110に対して無線局の取得が不要であり、バイタルモジュール104を低コストに抑えることができる。また、ここでの電源電圧Vddは、例えば、3.3Vとされている。
【0030】
マイクロ波送受信部111は、
図5に示す如く、発生部112と、アンテナ部113と、を備える。発生部112は、送信信号Ssnであるパルス状のマイクロ波Mwvを発生させている。具体的には、
図6(A)の回路図に示す如く、発生部112は、D型フリップフロップFF1とNOR素子N1、N2に対して、ダイオードD1、D2、コンデンサC1、C2、抵抗R1、R2を組みあわせることで実現することができる。なお、
図6(A)の回路図の符号S1〜S5、Ssnの示す位置で得られる信号のタイミングチャートを
図6(B)に示す。ここで、
図6(B)で示される時間T1は、コンデンサC1、C2と抵抗R1、R2による時定数とD型フリップフロップFF1の閾値電圧に依存し、例えば11μsec程度とすることができる。また、時間T2は、NOR素子N1、N2の遅延と立ち上がり時間に依存し、例えば11nsec程度とすることができる。
【0031】
アンテナ部113は、発生部112から出力されるマイクロ波Mwv(送信信号Ssn)を放射及び受信する。具体的には、
図7の回路図に示す如く、アンテナ部113は、2つのアンテナAT1、AT2とトランジスタTR1、TR2とに対して、ダイオードD3、D4、コイルL1、抵抗R3、R4を組みあわせることで実現することができる。2つのアンテナAT1、AT2からマイクロ波Mwv(送信信号Ssn)がダイバーDiに向けて放射され、且つ2つのアンテナAT1、AT2でダイバーDiから反射して戻ってくるマイクロ波Mwvを受信する。つまり、2つのアンテナAT1、AT2は送信アンテナでもあり、受信アンテナでもある。アンテナ部113は、2つのアンテナAT1、AT2から得られた検出信号Sdt(Sdt1、Sdt2)を出力する。ここで、コイルL1は、2つのアンテナAT1、AT2から放射されるマイクロ波Mwv(送信信号Ssn)を互いに異なる波形として、後述する差動部115でダイバーDiから反射して戻ってきたマイクロ波Mwvが相殺されることを防止している。なお、マイクロ波Mwvを送信する際には、アンテナAT1、AT2のいずれか1つからマイクロ波Mwvが放射されるような構成となっていてもよい。
【0032】
信号処理部114は、
図5に示す如く、差動部115と、ローパスフィルタ部116と、調整部117と、を備える。差動部115は、2つのアンテナAT1、AT2から得られた検出信号Sdt(Sdt1、Sdt2)の差分を行う。差動部115は、差分により、外乱ノイズ等の同相信号を相殺することができる。具体的には、
図8の回路図に示す如く、差動部115は、3つのオペアンプOP1〜OP4に対して、コンデンサC3〜C8、抵抗R5〜R17を組みあわせることで実現することができる。ここで、オペアンプOP4とコンデンサC7、C8、抵抗R14〜R17は、DCサーボ回路を構成している。このDCサーボ回路は、差動部115から出力される差動出力信号SdoのDC成分が電源電圧Vddの半分(1.65V)となるようにフィードバックをかけている。
【0033】
ローパスフィルタ部116は、
図5に示す如く、差動部115から出力される差動出力信号Sdoの高周波成分をカットする。具体的には、
図9の回路図に示す如く、ローパスフィルタ部116は、2次多重帰還形のローパスフィルタであり、1つのオペアンプOP5に対して、コンデンサC9〜C11、抵抗R18〜R22を組みあわせることで実現することができる。また、このオペアンプOP5により、ローパスフィルタ部116は相応の増幅を行っている。ローパスフィルタ部116からは、フィルタ出力信号Sfoが出力される。
【0034】
調整部117は、
図5に示す如く、ローパスフィルタ部116から出力されるフィルタ出力信号Sfoを調整する。調整部117の出力であるバイタル信号Sstは、マイコンあるいはDSPである演算ユニット128で処理される。このため、調整部117では、演算ユニット128の処理に最適な形態となるようにバイタル信号Sstを増幅させる。このバイタル信号Sstの最適化のために、本実施形態では、調整部117を前段部と後段部に分けて示す(調整部117の機能は1つの回路で実現されてもよい)。具体的には、
図10、
図11の回路図に調整部117の前段部と後段部を、それぞれ示す。調整部117の前段部は、1つのオペアンプOP6に対して、コンデンサC12、抵抗R23、R24、可変抵抗VR1を組みあわせることで実現することができる。調整部117の後段部は、1つのオペアンプOP7に対して、コンデンサC13〜C15、抵抗R25〜R30、可変抵抗VR2を組みあわせることで実現することができる。
【0035】
図2に示す変化検出センサ122は、バイタルモジュール104の状態変化を検知可能とするセンサで、ダイバーDiの体動を確認可能としている。具体的に、変化検出センサ122は、例えば、3軸加速度センサと3軸ジャイロセンサと3軸地磁気センサから構成される9軸センサとされている。そして、変化検出センサ122は、マイコンを含み、外部からI
2C通信で、3軸加速度センサ、3軸ジャイロセンサ、3軸地磁気センサそれぞれの検出データをデジタルデータとして外部に出力可能としている。
【0036】
図2に示す第1圧力センサ124は、バイタルモジュール104のダイバースーツDSへの押圧力を確認するために、バイタルモジュール104のケーシング105のダイバー側の側面に設けられている。具体的は、
図4(A)、(C)に示す検出孔105BAに第1圧力センサ124の圧力検出窓が適合するように、第1圧力センサ124がベース板105Bに取り付けられる。第1圧力センサ124には、例えば、MEMS技術を用いて作られたセンサを用いることができる(第2圧力センサ126も同様)。
【0037】
図2に示す第2圧力センサ126は、バイタルモジュール104の外部の圧力(潜水圧)を検出するために、バイタルモジュール104のケーシング105のダイバー側の側面以外の面に設けられている。具体的は、
図4(A)、(B)に示す検出孔105AAに第2圧力センサ126の圧力検出窓が適合するように、第2圧力センサ126が上ケース105Aに取り付けられる。
【0038】
演算ユニット128は、マイコン、あるいはDSPである。
図2に示す如く、バイタルセンサ110、第1圧力センサ124、第2圧力センサ126は、それぞれ演算ユニット128の図示しないA/D変換回路に接続されている。なお、変化検出センサ122からはデジタル信号が出力されるので、演算ユニット128の図示しないI
2C通信ポートに接続されている。演算ユニット128は、バイタルセンサ110からのバイタル信号Sstを処理してダイバーDiの生体情報信号Sbを出力することができる。具体的に、演算ユニット128は、第1フィルタ部130と、第2フィルタ部132と、波形成形部134と、演算処理部136と、を備える。なお、本実施形態では、生体情報信号Sbは、ダイバーDiの呼吸信号Sbrと心拍信号Shbとされている。
【0039】
第1フィルタ部130は、バンドパスフィルタであり、呼吸信号Sbrと心拍信号Shbの周期(例えば1Hz近傍)から大きく外れる低周波領域と高周波領域の周波数成分をカットする。第1フィルタ部130は、波形成形部134に対してBPF出力信号Sbpを出力する。
【0040】
第2フィルタ部132は、3軸加速度センサと3軸ジャイロセンサと3軸地磁気センサそれぞれに対するフィルタを備え、第2フィルタ部132に入力するいずれかのセンサの出力に応じて、適切なフィルタを適用することができる。第2フィルタ部132からの出力は、演算処理部136に入力する。なお、第2フィルタ部がなく、変化検出センサの出力が直接演算処理部に入力されてもよい。
【0041】
波形成形部134は、第1フィルタ部130から出力されるBPF出力信号Sbpを、生体情報信号Sbである呼吸信号Sbrと心拍信号Shbに分離する。信号を分離する際には、FFT等を用いて、時間軸(s)で変化するBPF出力信号Sbp(
図12(A))を一旦、周波数軸(f)で変化する信号(
図12(B))に変換してもよい。なお、呼吸信号Sbrの周波数は、心拍信号Shbの周波数に比べて高く、1Hzを超える値ともなる。
【0042】
演算処理部136は、波形成形部134に接続されている。そして、演算処理部136は、第2フィルタ部132の出力と、第1圧力センサ124の出力と、第2圧力センサ126の出力とに基づいて、生体情報信号Sb(呼吸信号Sbrと心拍信号Shb)に対して、各種の適否判定と処理を行う。例えば、変化検出センサ122、第1圧力センサ124、第2圧力センサ126の出力が異常値を示さず許容範囲内の値である場合には、生体情報信号Sbを、信頼性のあるものとして第1通信ユニット138を介してバイタルモジュール104から出力可能とする。また、演算処理部136は、例えば、第1通信ユニット138を介して、監視装置108(あるいは表示装置106)からの指令に基づき、生体情報信号Sbだけでなく、変化検出センサ122、第1圧力センサ124、及び第2圧力センサ126の出力を監視装置108(あるいは表示装置106)に送信することも可能とされている。更に、演算処理部136は、監視装置108や表示装置106に、各種の指令を行うことも可能とされている。なお、演算処理部136は、第2フィルタ部132の出力と、第1圧力センサ124の出力と、第2圧力センサ126の出力とに基づいて、生体情報信号Sb(呼吸信号Sbrと心拍信号Shb)のノイズの除去と波形成形とを行ってもよい。
【0043】
第1通信ユニット138は、
図2に示す如く、演算ユニット128に接続されており、演算処理部136の適否判断と処理、表示装置106からの指令、及び監視装置108からの指令に基づき、生体情報信号Sbだけでなく各種データの送受信を行う。具体的には、第1通信ユニット138には、例えば終端処理されたツイスト・ペアを使用した、最高10Mbpsの差動データ伝送を規定しているRS485規格(TIA−485)が適用されている(第2通信ユニット140と、表示装置106の通信部(図示せず)も同様)。これにより、バイタルモジュール104と表示装置106と監視装置108とをデージーチェーン接続することが可能であり、生体情報だけでなく、音声情報、表示情報を一元管理することができる。
【0044】
前記表示装置106は、
図2、
図3(A)に示す如く、バイタルモジュール104に通信ケーブルCCを介して通信可能に接続されている。そして、表示装置106は、その表示部106Aに生体情報信号Sbに従う情報を表示可能としている。つまり、表示装置106は、生体情報信号Sbだけでなく、演算処理部136及び監視装置108による生体情報信号Sbに対する判定結果等も表示可能とされている。更に、表示装置106は、変化検出センサ122、第1圧力センサ124、及び第2圧力センサ126の出力を表示することも可能とされている。なお、表示装置106には、表示部106Aや図示しない通信部以外に、入力部106Bが設けられており、バイタルモジュール104や監視装置108に対する各種情報の呼び出しや応答等が可能となっている。
【0045】
前記監視装置108は、
図2に示す如く、第2通信ユニット140と、監視処理部142と、入力部143と、記憶部144と、表示部146と、を備える。第2通信ユニット140は、通信ケーブルCCを介してバイタルモジュール104の第1通信ユニット138と接続されている(つまり、第2通信ユニット140は、第1通信ユニット138から送信された生体情報信号Sbを受信可能とされている)。第2通信ユニット140は、第1通信ユニット138と同様の構成であり、バイタルモジュール104からの指令、表示装置106からの指令、及び監視装置108からの指令に基づき、生体情報信号Sbだけでなく各種データの送受信を行う。
【0046】
監視処理部142には、
図2に示す如く、第2通信ユニット140、入力部143、記憶部144、及び表示部146が接続されている。監視処理部142は、入力部143の指令に従い、第2通信ユニット140、記憶部144、及び表示部146を操作することができる。また、記憶部144から読み出した各種プログラムに従って、各種制御・処理を行うことができる。例えば、監視処理部142は、第2通信ユニット140から出力される生体情報信号Sbを処理し、その結果を表示部146に表示させ、生体情報信号Sbの時間的な変化を観察可能とすることができる。また、監視処理部142は、逆に表示装置106や演算処理部136の指令に従い、自身における処理結果、記憶部144、及び表示部146を操作することもできる。なお、監視処理部142は、FFT等を用いて、時間軸(s)で変化する生体情報信号Sb(
図12(A))を一旦、周波数軸(f)で変化する信号(
図12(B))に変換し、その結果を表示部146に表示させてもよい。
【0047】
図2に示す入力部143は、各種指令の入力、記憶部144に記憶された各種閾値更新、初期値の入力等を行う。また、入力部143は、監視装置108で監視対象とするダイバーモジュール102やバイタルモジュール104を選択することもできる。入力部143には、具体的には、スイッチ、マウス、キーボード等を用いることができる。
【0048】
図2に示す記憶部144は、各種初期情報や各種プログラムを記憶しておくことができる。例えば、記憶部144は、ダイバーDiの潜水前に得られた生体情報を示す基準生体情報信号Sbbを記憶することができる。これにより、監視処理部142は、生体情報信号Sbと基準生体情報信号Sbbとの比較を行い、比較した結果を表示部146に表示させる(出力させる)ことも可能である。その際には、監視処理部142は、その比較した結果を第2通信ユニット140と第1通信ユニット138とを介して、表示装置106に表示させることもできる。
【0049】
図2に示す表示部146は、生体情報信号Sbに従う情報を表示可能としている。つまり、表示部146は、生体情報信号Sbだけでなく、演算処理部136及び監視装置108による生体情報信号Sbに対する判定結果等も表示可能とされている。更に、表示部146は、変化検出センサ122、第1圧力センサ124、及び第2圧力センサ126の出力を表示することも可能とされている。
【0050】
このように、本実施形態では、ダイバーDiの生体情報を示す生体情報信号Sbを得るためにマイクロ波Mwvを用いている。ここで、マイクロ波Mwvは水中では大きく減衰されることから、潜水中にバイタルセンサ110に入ってくる外来ノイズを、大気中にバイタルセンサ110がある時よりも低減させることができる。同時に、マイクロ波Mwvを用いることで、ダイバーDiの生体情報である体内振動(心臓や肺の動きによる微少変位)を高感度に検出することが可能である。更に、バイタルセンサ110は、非接触センサで、特許文献1に示すバイタルセンサとは異なり、ダイバーDiの肌を直接暴露させる必要もないので、ダイバーDiの胸部Dbに配置されるという条件だけで、厳密な位置決めを必要としない。
【0051】
また、本実施形態では、バイタルモジュール104が、ダイバースーツDSの外側に配置されている。このため、バイタルモジュール104のダイバーDiへの脱着が容易である。なお、これに限らず、バイタルモジュールはダイバースーツDSの内側に配置されていてもよい。
【0052】
また、本実施形態では、生体情報信号Sbが、ダイバーDiの呼吸信号Sbrと心拍信号Shbとされていている。このため、この2つの生体情報を用いることで、ダイバーDiの身体状況をより正確に把握することが可能である。なお、これに限らず、生体情報信号Sbとしては、呼吸信号Sbrと心拍信号Shbとのうちのいずれかだけでもよいし、可能であればそれ以外の体内振動を用いるようにしてもよい。
【0053】
また、本実施形態では、マイクロ波送受信部111が、パルス状のマイクロ波Mwvを発生させる発生部112と、発生部112から出力されるマイクロ波Mwvを放射及び受信するアンテナ部113と、を備えている。そして、アンテナ部113には、2つのアンテナAT1、AT2が設けられている。更に、信号処理部114が、2つのアンテナAT1、AT2から得られた検出信号Sdtの差分を行う差動部115と、差動部115から出力される差動出力信号Sdoの高周波成分をカットするローパスフィルタ部116と、ローパスフィルタ部116から出力されるフィルタ出力信号Sfoを調整する調整部117と、を備えている。このため、バイタルセンサ110の回路構成としては比較的簡素な構成であり、低電力・低コストとしながら、よりノイズの少ないバイタル信号Sstを得ることが可能である。
【0054】
また、本実施形態では、更に、バイタルモジュール104のケーシング105のダイバーDi側の側面に圧力を検出する第1圧力センサ124が設けられている。このため、第1圧力センサ124の出力を考慮して、即ち、バイタルモジュール104のダイバーDiへの押圧力がバイタル信号Sstを検出する条件として適正かどうかをもとにして、得られたバイタル信号Sstの適否を判断することが可能である。なお、これに限らず、第1圧力センサが設けられていなくてもよい。
【0055】
また、本実施形態では、更に、バイタルモジュール104のケーシング105のダイバーDi側の側面以外の面にバイタルモジュール104の外部の圧力を検出する第2圧力センサ126が設けられている。このため、第2圧力センサ126の出力を考慮して、即ち、バイタルモジュール104にかかる潜水圧がバイタル信号Sstを検出する条件として適正かどうか(ダイバーDiの潜水環境が適正かどうか)をもとにして、得られたバイタル信号Sstの適否を判断することが可能である。なお、これに限らず、第2圧力センサが設けられていなくてもよい。
【0056】
また、本実施形態では、バイタルモジュール104の状態変化を検知可能とする変化検出センサ122が設けられている。このため、変化検出センサ122の出力を考慮して、即ち、ダイバーDiの体動が許容範囲であるかどうかをもとにして、得られたバイタル信号Sstの適否を判断することが可能となる。しかも、変化検出センサ122は、3軸加速度センサと3軸ジャイロセンサと3軸地磁気センサから構成される9軸センサとされている。このため、3軸加速度センサと3軸ジャイロセンサとで、バイタルモジュール104を装着したダイバーDiの微動や向き変化を検出でき、且つ3軸地磁気センサでバイタルモジュール104を装着したダイバーDiの場所や向きを検出でき、得られたバイタル信号の適否をより容易に判断することが可能である。なお、これに限らず、変化検出センサは9軸センサでなくてもよいし、そもそも変化検出センサが設けられていなくてもよい。
【0057】
また、本実施形態では、ダイバーモジュール102が、バイタルモジュール104に通信可能に接続され、生体情報信号Sbに従う情報を表示可能な表示装置106を備えている。そして、表示装置106がダイバーDi自身で視認可能な位置に配置されている。このため、ダイバーDi自身が生体情報信号Sbに従う情報を自ら確認できるので、ダイバーDiが潜水時の安全性を確保するように自ら行動することが可能である。なお、これに限らず、表示装置を備えないバイタルモジュールだけが、ダイバーDiに装着されていてもよい。
【0058】
また、本実施形態では、バイタルモジュール104が第1通信ユニット138を備えている。そして、監視装置108が、第2通信ユニット140と、第2通信ユニット140から出力される生体情報信号Sbを処理し、生体情報信号Sbの時間的な変化を観察可能とする監視処理部142と、を有する。このため、ダイバーDiの生体情報をダイバーDiから離れた船SP上で監視装置108で監視員が客観的にダイバーDiの状態を確認することができる。これにより、監視員は、例えば音声情報を用いて、ダイバーDiに対して適切な行動を指示することもできる。あるいは、監視員が表示装置106に適切な警告・指示を表示させることもできる。
【0059】
また、本実施形態では、監視装置108が、ダイバーDiの潜水前に得られた基準生体情報信号Sbbを記憶する記憶部144を備えている。そして、監視処理部142が、第2通信ユニット140から出力される生体情報信号Sbと基準生体情報信号Sbbとの比較を行い、比較した結果を出力して表示部146に表示させる。このため、監視員は監視装置108でダイバーDiの状態をより迅速に判断することができる。なお、生体情報信号Sbと基準生体情報信号Sbbとの比較を行った結果は、スピーカ等で監視員やダイバーDiに対して直接音声出力されてもよい。
【0060】
また、本実施形態では、監視処理部142が、生体情報信号Sbと基準生体情報信号Sbbとの比較を行った結果を、第2通信ユニット140と第1通信ユニット138とを介して、表示装置106に表示させることができる。このため、監視装置108でダイバーDiの状態を判断した結果をダイバーDi自身に知らせるので、例えばダイバーDiが緊急性のある事態に巻き込まれても、ダイバーDi自身が判断をすることなく、迅速な回避行動を開始させることが容易である。
【0061】
即ち、本実施形態によれば、バイタルセンサ110の位置決めを厳密にしなくても、相応の精度でダイバーDiの生体情報を得ることが可能である。
【0062】
本発明について第1実施形態を挙げて説明したが、本発明は第1実施形態に限定されるものではない。即ち、本発明の要旨を逸脱しない範囲においての改良並びに設計の変更が可能なことは言うまでもない。
【0063】
例えば、第1実施形態では、バイタルセンサ110が、UWB方式バランス型動体センサと称するマイクロ波Mwvを用いたレーダであって、体内振動(心臓や肺の動きによる微少変位)に比例する出力を得る構成であったが、本発明はこれに限定されるものではない。例えば、
図13に示す第2実施形態の如くであってもよい。第2実施形態でも、バイタルセンサは、マイクロ波Mwvを用いたレーダであるが、ドップラーレーダとされている。つまり、ここでのバイタルセンサは、ダイバーDiの体内振動(心臓や肺の動きによる微少変位)である生体情報を、マイクロ波Mwvの周波数変化で検出し、生体情報信号Sbを求めている。なお、ここでのマイクロ波Mwvは、例えば24GHzとされ、発振周波数の高精度な局部発振器で発生される構成である。
【0064】
本実施形態では、
図13に示す如く、マイクロ波送受信部211が、マイクロ波Mwvを連続(断続でもよい)して発生させる発生部212と、発生部212から出力されるマイクロ波Mwv(送信信号Ssn)を放射し、周波数変調されたマイクロ波Mwvを受信するアンテナ部213と、を備える。そして、信号処理部214は、検出信号Sdtに対して直交位相検波を行う検波部215と、検波部215から出力される検波信号Siqの周波数を電圧に変換するF/V変換部216と、F/V変換部216から出力される電圧信号Svlを積分する積分部217と、を備える。このような構成により、バイタル信号Sstはドップラーレーダの原理で検出されるので、信頼性の高いバイタル信号Sstを得ることが可能である。
ダイバーDiのバイタル信号Sstを検出するバイタルセンサ110を備えるバイタルモジュール104であって、バイタル信号Sstを処理してダイバーDiの生体情報信号Sbを出力する演算ユニット128を備え、バイタルセンサ110は、アンテナAT1、AT2を用いてマイクロ波MwvをダイバーDiに放射し、且つダイバーDiからのマイクロ波Mwvを受信するマイクロ波送受信部111と、マイクロ波送受信部111から出力される検出信号Sdtを処理する信号処理部114と、を備え、バイタルセンサ110はダイバーDiの胸部Dbに配置される。これにより、バイタルセンサの位置決めを厳密にしなくても、相応の精度でダイバーの生体情報を得ることが可能となる。