特許第6201130号(P6201130)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 株式会社ユーテックの特許一覧

特許6201130結晶化方法及び加圧式ランプアニール装置
<>
  • 特許6201130-結晶化方法及び加圧式ランプアニール装置 図000002
  • 特許6201130-結晶化方法及び加圧式ランプアニール装置 図000003
  • 特許6201130-結晶化方法及び加圧式ランプアニール装置 図000004
  • 特許6201130-結晶化方法及び加圧式ランプアニール装置 図000005
  • 特許6201130-結晶化方法及び加圧式ランプアニール装置 図000006
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6201130
(24)【登録日】2017年9月8日
(45)【発行日】2017年9月27日
(54)【発明の名称】結晶化方法及び加圧式ランプアニール装置
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/316 20060101AFI20170914BHJP
   H01L 21/822 20060101ALI20170914BHJP
   H01L 27/04 20060101ALI20170914BHJP
   H01L 21/31 20060101ALI20170914BHJP
【FI】
   H01L21/316 C
   H01L21/316 P
   H01L21/316 B
   H01L27/04 C
   H01L21/31 E
【請求項の数】19
【全頁数】17
(21)【出願番号】特願2013-154869(P2013-154869)
(22)【出願日】2013年7月25日
(65)【公開番号】特開2015-26692(P2015-26692A)
(43)【公開日】2015年2月5日
【審査請求日】2016年5月23日
(73)【特許権者】
【識別番号】595152438
【氏名又は名称】株式会社ユーテック
(74)【代理人】
【識別番号】100110858
【弁理士】
【氏名又は名称】柳瀬 睦肇
(74)【代理人】
【識別番号】100100413
【弁理士】
【氏名又は名称】渡部 温
(72)【発明者】
【氏名】木島 健
(72)【発明者】
【氏名】本多 祐二
【審査官】 長谷川 直也
(56)【参考文献】
【文献】 特開2011−176028(JP,A)
【文献】 特開2004−296681(JP,A)
【文献】 特開2007−142155(JP,A)
【文献】 特開2008−140896(JP,A)
【文献】 特開2011−023454(JP,A)
【文献】 特開平05−299369(JP,A)
【文献】 国際公開第2013/018155(WO,A1)
【文献】 特開平10−189908(JP,A)
【文献】 特開平11−087337(JP,A)
【文献】 特開2009−302353(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/02、21/18−21/20、21/205、
21/26−21/268、21/31−21/32、
21/322−21/326、21/34−21/36、
21/365、21/42−21/428、
21/469−21/479、21/822、21/8229、
21/8242−21/8247、21/84−21/86、
27/04、27/10−27/115、27/28、
51/05、
C23C 18/00−20/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
金属及びCを含有する膜を加圧酸素雰囲気で熱処理することにより、前記膜を酸化して結晶化する結晶化方法において、
前記熱処理する際に、前記膜上に加圧した酸素ガスまたは酸素ガスと不活性ガスの混合ガスを導入し、前記膜上の雰囲気が第1の圧力に到達した時に前記膜上の雰囲気を減圧してHOまたはCOを前記膜上から除去し、前記膜上の雰囲気が第2の圧力に到達した時に前記膜上の雰囲気を加圧し、
前記膜上に前記酸素ガスまたは前記混合ガスを導入した際に障害物によって前記膜上に流れる前記酸素ガスまたは前記混合ガスに乱流またはカルマン渦が形成されることを特徴とする結晶化方法。
但し、a,bは自然数である。
【請求項2】
金属及びCを含有する膜を加圧酸素雰囲気で熱処理することにより、前記膜を酸化して結晶化する結晶化方法において、
前記熱処理する際に、前記膜上に加圧した酸素ガスまたは酸素ガスと不活性ガスの混合ガスを導入し、前記膜上の雰囲気が第1の圧力に到達した時に前記膜上の雰囲気を減圧してHOまたはCOを前記膜上から除去し、前記膜上の雰囲気が第2の圧力に到達した時に前記膜上の雰囲気を加圧し、
前記第1の圧力は9気圧以上であり、
前記第2の圧力は前記第1の圧力の95%以下の圧力で、且つ8.5気圧以上9気圧以下であり、
前記膜上の雰囲気を減圧する際に前記酸素ガスまたは前記混合ガスの導入を停止し、前記膜上の雰囲気を加圧する際に前記酸素ガスまたは前記混合ガスの導入を開始することを特徴とする結晶化方法。
但し、a,bは自然数である。
【請求項3】
金属及びCを含有する膜を加圧酸素雰囲気で熱処理することにより、前記膜を酸化して結晶化する結晶化方法において、
前記熱処理する際に、前記膜上に加圧した酸素ガスまたは酸素ガスと不活性ガスの混合ガスを流しながらHOまたはCOを前記膜上から除去し、
前記膜上に流れる前記酸素ガスまたは前記混合ガスは、障害物によって形成された乱流またはカルマン渦を有することを特徴とする結晶化方法。
但し、a,bは自然数である。
【請求項4】
請求項において、
前記酸素ガスまたは前記混合ガスを流す量は、5リットル/min以上であることを特徴とする結晶化方法。
【請求項5】
請求項またはにおいて、
前記膜上の雰囲気が第1の圧力に到達した時に前記膜上の雰囲気を減圧してHOまたはCOを前記膜上から除去し、前記膜上の雰囲気が第2の圧力に到達した時に前記膜上の雰囲気を加圧することを特徴とする結晶化方法。
【請求項6】
請求項において、
前記第1の圧力は1気圧以上であり、
前記第2の圧力は前記第1の圧力の95%以下の圧力であることを特徴とする結晶化方法。
【請求項7】
請求項1乃至のいずれか一項において、
前記熱処理する際の前記膜の温度は100℃以上であることを特徴とする結晶化方法。
【請求項8】
請求項1乃至のいずれか一項において、
前記熱処理は、前記膜を移動させながら行うことを特徴とする結晶化方法。
【請求項9】
請求項において、
前記移動は、上下移動または回転運動または上下移動と回転運動の組み合せであることを特徴とする結晶化方法。
【請求項10】
請求項1乃至のいずれか一項において、
前記膜は基板上に形成されていることを特徴とする結晶化方法。
【請求項11】
請求項1乃至10のいずれか一項において、
前記膜を酸化して結晶化した結晶化膜は、一般式ABOで表され、Aは、Al、Y、Na、K、Rb、Cs、La、Sr、Cr、Ag、Ca、Pr、Nd、Biおよび周期表のランタン系列の元素からなる群から選択される少なくとも一つの元素を含んでなり、Bは、Al、Ga、In、Nb、Sn、Ti、Ru、Rh、Pd、Re、OSirPt、U、CO、Fe、Ni、Mn、Cr、Cu、Mg、V、Nb、Ta、MOおよびWからなる群から選択される少なくとも一つの元素を含んでなるペロブスカイト物質を含む膜、または、酸化ビスマス層と、ペロブスカイト型構造ブロックとが交互に積層された構造を有するビスマス層状構造強誘電体結晶を含む膜であり、前記ペロブスカイト型構造ブロックは、Li、Na、K、Ca、Sr、Ba、Y、Bi、Pbおよび希土類元素から選ばれる少なくとも1つの元素Lと、Ti、Zr、Hf、V、Nb、Ta、W、MO、Mn、Fe、SiおよびGeから選ばれる少なくとも1つの元素Rと、酸素とによって構成されることを特徴とする結晶化方法。
【請求項12】
処理室と、
前記処理室内に配置され、基板を保持する保持部と、
前記処理室内に加圧した酸素ガスまたは酸素ガスと不活性ガスの混合ガスを導入するガス導入機構と、
前記処理室内を排気するガス排気機構と、
前記保持部に保持された基板を加熱する加熱機構と、
前記ガス導入機構及び前記ガス排気機構を制御する制御部と、
を具備し、
前記制御部は、前記処理室内に加圧した酸素ガスまたは酸素ガスと不活性ガスの混合ガスを導入し、前記処理室内が第1の圧力に到達した時に前記処理室内を減圧し、前記処理室内が第2の圧力に到達した時に前記処理室内を加圧するような加圧酸素雰囲気で前記基板を熱処理するように制御し、
前記ガス導入機構は障害物を有し、
前記基板上に流れる前記酸素ガスまたは前記混合ガスに前記障害物によって乱流またはカルマン渦を形成することを特徴とする加圧式ランプアニール装置。
【請求項13】
処理室と、
前記処理室内に配置され、基板を保持する保持部と、
前記処理室内に加圧した酸素ガスまたは酸素ガスと不活性ガスの混合ガスを導入するガス導入機構と、
前記処理室内を排気するガス排気機構と、
前記保持部に保持された基板を加熱する加熱機構と、
前記ガス導入機構及び前記ガス排気機構を制御する制御部と、
を具備し、
前記制御部は、前記処理室内に加圧した酸素ガスまたは酸素ガスと不活性ガスの混合ガスを導入し、前記処理室内が第1の圧力に到達した時に前記処理室内を減圧し、前記処理室内が第2の圧力に到達した時に前記処理室内を加圧するような加圧酸素雰囲気で前記基板を熱処理するように制御し、
前記第1の圧力は9気圧以上であり、
前記第2の圧力は前記第1の圧力の95%以下の圧力で、且つ8.5気圧以上9気圧以下であり、
前記制御部は、前記処理室内を減圧する際に前記酸素ガスまたは前記混合ガスの前記処理室内への導入を停止し、前記処理室内を加圧する際に前記酸素ガスまたは前記混合ガスの前記処理室内への導入を開始するように、前記ガス導入機構を制御することを特徴とする加圧式ランプアニール装置。
【請求項14】
処理室と、
前記処理室内に配置され、基板を保持する保持部と、
前記処理室内に加圧した酸素ガスまたは酸素ガスと不活性ガスの混合ガスを導入するガス導入機構と、
前記処理室内を排気するガス排気機構と、
前記保持部に保持された基板を加熱する加熱機構と、
前記ガス導入機構及び前記ガス排気機構を制御する制御部と、
を具備し、
前記制御部は、前記基板上に加圧した酸素ガスまたは酸素ガスと不活性ガスの混合ガスを流しながら前記基板を加圧酸素雰囲気で熱処理するように制御し、
前記ガス導入機構は障害物を有し、
前記基板上に流れる前記酸素ガスまたは前記混合ガスに前記障害物によって乱流またはカルマン渦を形成することを特徴とする加圧式ランプアニール装置。
【請求項15】
請求項14において、
前記酸素ガスまたは前記混合ガスを流す量は、5リットル/min以上であることを特徴とする加圧式ランプアニール装置。
【請求項16】
請求項14または15において、
前記制御部は、前記処理室内が第1の圧力に到達した時に前記処理室内を減圧し、前記処理室内が第2の圧力に到達した時に前記処理室内を加圧するように制御することを特徴とする加圧式ランプアニール装置。
【請求項17】
請求項13乃至16のいずれか一項において、
前記保持部を移動させる駆動機構を有し、
前記熱処理は、前記駆動機構によって前記保持部とともに前記基板を移動させながら行うことを特徴とする加圧式ランプアニール装置。
【請求項18】
請求項17において、
前記移動は、上下移動または回転運動または上下移動と回転運動の組み合せであることを特徴とする加圧式ランプアニール装置。
【請求項19】
請求項13乃至18のいずれか一項において、
前記基板上には金属及びCを含有する膜が形成されており、
前記基板を加圧酸素雰囲気で熱処理することにより前記膜を酸化して結晶化することを特徴とする加圧式ランプアニール装置。
但し、a,bは自然数である。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、膜の結晶化方法及び膜を結晶化する加圧式ランプアニール装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の加圧式ランプアニール装置を用いて有機金属材料の一例であるPZT(チタン酸ジルコン酸鉛)強誘電体キャパシタを作製する方法について説明する。
まず、6インチのシリコンウエハ上に熱酸化法によりSiO膜を形成し、このSiO膜上に下部電極を形成する。次いで、この下部電極上にゾルゲル法によりPZT膜を塗布し、このPZT膜上に上部電極を形成する。
【0003】
この後、加圧式ランプアニール装置を用いて加圧酸素雰囲気中で600℃、1分間のRTA処理を行う。以下、詳細に説明する。
【0004】
シリコンウエハを処理室内に導入し、その処理室内に酸素ガスを導入して酸素雰囲気としながら徐々に加圧する。そして、処理室内は1MPa未満の所定の圧力まで加圧され、その圧力に到達した時に処理室内への酸素ガスの導入を停止し、その圧力で処理室内が維持される。
【0005】
次に、ランプ光をシリコンウエハに照射する。これにより、PZT膜が600℃まで急速に加熱され、600℃の温度で1分間保持される。その結果、PZTと酸素が素早く反応され、PZT膜が結晶化される(例えば特許文献1参照)。
【0006】
上記従来の加圧式ランプアニール装置では、PZT膜を急速に加熱して結晶化するときに処理室内への酸素ガスの導入を停止しているため、PZTと酸素が反応した時に発生するCOやHOがPZT膜の表面付近に残存して漂う。その表面付近のCOやHOがPZTの酸化を妨げるので、PZT膜の結晶化状態の面内均一性が悪くなり、結晶化が十分な領域と不十分な領域が面内で混在することになる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特許第4729035号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
金属及びC(a,b:自然数)を含有する膜を酸化する時に発生するCOやHOが酸化の促進の妨げとなるため、当該膜の結晶化状態の面内均一性が悪くなるという課題がある。
【0009】
本発明の一態様は、金属及びCを含有する膜を結晶化した結晶化膜における結晶化状態の面内均一性を向上させることを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
以下に、本発明の種々の態様について説明する。
[1]金属及びCを含有する膜を加圧酸素雰囲気で熱処理することにより、前記膜を酸化して結晶化する結晶化方法において、
前記熱処理する際に、前記膜上に加圧した酸素ガスまたは酸素ガスと不活性ガスの混合ガスを導入し、前記膜上の雰囲気が第1の圧力に到達した時に前記膜上の雰囲気を減圧してHOまたはCOを前記膜上から除去し、前記膜上の雰囲気が第2の圧力に到達した時に前記膜上の雰囲気を加圧することを特徴とする結晶化方法。
但し、a,bは自然数である。
【0011】
[2]上記[1]において、
前記第1の圧力は1気圧以上(好ましくは5気圧以上、より好ましくは9気圧以上)であり、
前記第2の圧力は前記第1の圧力の95%以下の圧力(好ましくは85%以下の圧力)であることを特徴とする結晶化方法。
【0012】
[3]上記[1]または[2]において、
前記膜上の雰囲気を減圧する際に前記酸素ガスまたは前記混合ガスの導入を停止し、前記膜上の雰囲気を加圧する際に前記酸素ガスまたは前記混合ガスの導入を開始することを特徴とする結晶化方法。
【0013】
[4]金属及びCを含有する膜を加圧酸素雰囲気で熱処理することにより、前記膜を酸化して結晶化する結晶化方法において、
前記熱処理する際に、前記膜上に加圧した酸素ガスまたは酸素ガスと不活性ガスの混合ガスを流しながらHOまたはCOを前記膜上から除去することを特徴とする結晶化方法。
但し、a,bは自然数である。
【0014】
[5]上記[4]において、
前記酸素ガスまたは前記混合ガスを流す量は、5リットル/min以上であることを特徴とする結晶化方法。
【0015】
[6]上記[4]または[5]において、
前記膜上の雰囲気が第1の圧力に到達した時に前記膜上の雰囲気を減圧してHOまたはCOを前記膜上から除去し、前記膜上の雰囲気が第2の圧力に到達した時に前記膜上の雰囲気を加圧することを特徴とする結晶化方法。
【0016】
[7]上記[6]において、
前記第1の圧力は1気圧以上(好ましくは5気圧以上、より好ましくは9気圧以上)であり、
前記第2の圧力は前記第1の圧力の95%以下の圧力(好ましくは85%以下の圧力)であることを特徴とする結晶化方法。
【0017】
[8]上記[1]乃至[7]のいずれか一項において、
前記熱処理する際の前記膜の温度は100℃以上であることを特徴とする結晶化方法。
[8']上記[4]乃至[7]のいずれか一項において、
前記熱処理する際の前記膜の温度は100℃以上であることを特徴とする結晶化方法。
【0018】
[9]上記[4]乃至[7]、[8']のいずれか一項において、
前記膜上に流れる前記酸素ガスまたは前記混合ガスは、乱流またはカルマン渦を有することを特徴とする結晶化方法。
【0019】
[10]上記[1]乃至[9]のいずれか一項において、
前記熱処理は、前記膜を移動させながら行うことを特徴とする結晶化方法。
【0020】
[11]上記[10]において、
前記移動は、上下移動または回転運動または上下移動と回転運動の組み合せであることを特徴とする結晶化方法。
【0021】
[12]金属及びCを含有する膜を加圧酸素雰囲気で熱処理することにより、前記膜を酸化して結晶化する結晶化方法において、
前記熱処理する際に、前記膜を移動させながらHOまたはCOを前記膜上から除去することを特徴とする結晶化方法。
但し、a,bは自然数である。
【0022】
[13]上記[12]において、
前記移動は、上下移動または回転運動または上下移動と回転運動の組み合せであることを特徴とする結晶化方法。
【0023】
[14]上記[1]乃至[13]のいずれか一項において、
前記膜は基板上に形成されていることを特徴とする結晶化方法。
【0024】
[15]上記[1]乃至[14]のいずれか一項において、
前記膜を酸化して結晶化した結晶化膜は、一般式ABOで表され、Aは、Al、Y、Na、K、Rb、Cs、La、Sr、Cr、Ag、Ca、Pr、Nd、Biおよび周期表のランタン系列の元素からなる群から選択される少なくとも一つの元素を含んでなり、Bは、Al、Ga、In、Nb、Sn、Ti、Ru、Rh、Pd、Re、OSirPt、U、CO、Fe、Ni、Mn、Cr、Cu、Mg、V、Nb、Ta、MOおよびWからなる群から選択される少なくとも一つの元素を含んでなるペロブスカイト物質を含む膜、または、酸化ビスマス層と、ペロブスカイト型構造ブロックとが交互に積層された構造を有するビスマス層状構造強誘電体結晶を含む膜であり、前記ペロブスカイト型構造ブロックは、Li、Na、K、Ca、Sr、Ba、Y、Bi、Pbおよび希土類元素から選ばれる少なくとも1つの元素Lと、Ti、Zr、Hf、V、Nb、Ta、W、MO、Mn、Fe、SiおよびGeから選ばれる少なくとも1つの元素Rと、酸素とによって構成されることを特徴とする結晶化方法。
【0025】
[16]処理室と、
前記処理室内に配置され、基板を保持する保持部と、
前記処理室内に加圧した酸素ガスまたは酸素ガスと不活性ガスの混合ガスを導入するガス導入機構と、
前記処理室内を排気するガス排気機構と、
前記保持部に保持された基板を加熱する加熱機構と、
前記ガス導入機構及び前記ガス排気機構を制御する制御部と、
を具備し、
前記制御部は、前記処理室内に加圧した酸素ガスまたは酸素ガスと不活性ガスの混合ガスを導入し、前記処理室内が第1の圧力に到達した時に前記処理室内を減圧し、前記処理室内が第2の圧力に到達した時に前記処理室内を加圧するような加圧酸素雰囲気で前記基板を熱処理するように制御することを特徴とする加圧式ランプアニール装置。
【0026】
[17]上記[16]において、
前記第1の圧力は1気圧以上(好ましくは5気圧以上、より好ましくは9気圧以上)であり、
前記第2の圧力は前記第1の圧力の95%以下の圧力(好ましくは85%以下の圧力)であることを特徴とする結晶化方法。
【0027】
[18]上記[16]または[17]において、
前記制御部は、前記処理室内を減圧する際に前記酸素ガスまたは前記混合ガスの前記処理室内への導入を停止し、前記処理室内を加圧する際に前記酸素ガスまたは前記混合ガスの前記処理室内への導入を開始するように、前記ガス導入機構を制御することを特徴とする加圧式ランプアニール装置。
【0028】
[19]処理室と、
前記処理室内に配置され、基板を保持する保持部と、
前記処理室内に加圧した酸素ガスまたは酸素ガスと不活性ガスの混合ガスを導入するガス導入機構と、
前記処理室内を排気するガス排気機構と、
前記保持部に保持された基板を加熱する加熱機構と、
前記ガス導入機構及び前記ガス排気機構を制御する制御部と、
を具備し、
前記制御部は、前記基板上に加圧した酸素ガスまたは酸素ガスと不活性ガスの混合ガスを流しながら前記基板を加圧酸素雰囲気で熱処理するように制御することを特徴とする加圧式ランプアニール装置。
【0029】
[20]上記[19]において、
前記酸素ガスまたは前記混合ガスを流す量は、5リットル/min以上であることを特徴とする加圧式ランプアニール装置。
【0030】
[21]上記[19]または[20]において、
前記制御部は、前記処理室内が第1の圧力に到達した時に前記処理室内を減圧し、前記処理室内が第2の圧力に到達した時に前記処理室内を加圧するように制御することを特徴とする加圧式ランプアニール装置。
【0031】
[22]上記[19]乃至[21]のいずれか一項において、
前記ガス導入機構は障害物を有し、
前記基板上に流れる前記酸素ガスまたは前記混合ガスに前記障害物によって乱流またはカルマン渦を形成することを特徴とする加圧式ランプアニール装置。
【0032】
[23]上記[16]乃至[22]のいずれか一項において、
前記保持部を移動させる駆動機構を有し、
前記熱処理は、前記駆動機構によって前記保持部とともに前記基板を移動させながら行うことを特徴とする加圧式ランプアニール装置。
【0033】
[24]上記[23]において、
前記移動は、上下移動または回転運動または上下移動と回転運動の組み合せであることを特徴とする加圧式ランプアニール装置。
【0034】
[25]処理室と、
前記処理室内に配置され、基板を保持する保持部と、
前記保持部を移動させる駆動機構と、
前記処理室内に加圧した酸素ガスまたは酸素ガスと不活性ガスの混合ガスを導入するガス導入機構と、
前記処理室内を排気するガス排気機構と、
前記保持部に保持された基板を加熱する加熱機構と、
前記駆動機構、前記ガス導入機構及び前記ガス排気機構を制御する制御部と、
を具備し、
前記制御部は、前記保持部とともに前記基板を移動させながら前記基板を加圧酸素雰囲気で熱処理するように制御することを特徴とする加圧式ランプアニール装置。
【0035】
[26]上記[25]において、
前記移動は、上下移動または回転運動または上下移動と回転運動の組み合せであることを特徴とする加圧式ランプアニール装置。
【0036】
[27]上記[16]乃至[26]のいずれか一項において、
前記基板上には金属及びCを含有する膜が形成されており、
前記基板を加圧酸素雰囲気で熱処理することにより前記膜を酸化して結晶化することを特徴とする加圧式ランプアニール装置。
但し、a,bは自然数である。
【発明の効果】
【0037】
本発明の一態様を適用することで、金属及びCを含有する膜を結晶化した結晶化膜における結晶化状態の面内均一性を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0038】
図1】本発明の一態様に係る加圧式ランプアニール装置を模式的に示す断面図である。
図2】(A)〜(C)は図1に示す加圧式ランプアニール装置を用いて金属及びCを含有する膜を酸化して結晶化する結晶化方法を説明する断面図である。
図3】(A)は本発明の一態様に係る加圧式ランプアニール装置を模式的に示す断面図、(B)は(A)に示す処理室内のガスの流れを示す平面図、(C)は(B)に示すガスの流れを模式的に示す図である。
図4】加圧式ランプアニール装置の制御を示す図である。
図5】(A)は比較例のPZT膜の表面を撮影した写真であり、(B)は実施例のPZT膜の表面を撮影した写真である。
【発明を実施するための形態】
【0039】
以下では、本発明の実施形態及び実施例について図面を用いて詳細に説明する。ただし、本発明は以下の説明に限定されず、本発明の趣旨及びその範囲から逸脱することなくその形態及び詳細を様々に変更し得ることは、当業者であれば容易に理解される。従って、本発明は以下に示す実施形態の記載内容及び実施例に限定して解釈されるものではない。
【0040】
(第1の実施形態)
≪加圧式ランプアニール装置≫
図1は、本発明の一態様に係る加圧式ランプアニール装置を模式的に示す断面図である。この加圧式ランプアニール装置は、加圧した状態でランプアニール処理(RTA;rapid thermal anneal)を行うものである。
【0041】
加圧式ランプアニール装置はAl製のチャンバー1を有している。チャンバー1は冷却機構7によって水冷されるように構成されている。チャンバー1内には基板としてのウエハ2を保持する保持部3が設けられている。保持部3の上方には石英ガラス4a,4bが配置されている。石英ガラス4a,4bは、チャンバー内を加圧する際の圧力に耐えられるように形成されている。
【0042】
石英ガラス4a,4bの上にはランプヒータ5が配置されており、このランプヒータ5は金属製の筐体6の内部に配置されている。筐体6の上部には排気ダクト(図示せず)が接続されており、この排気ダクトは筐体6内の熱を排気するものである。
【0043】
保持部3の下方に位置するチャンバー1の下方には放射温度計9が配置されている。チャンバー1内に形成される処理室55は狭い方が好ましい。その理由は、所定の圧力まで加圧するのに必要な時間を短くすることができるからである。
【0044】
チャンバー1内の処理室55は加圧バルブを有する加圧ライン(加圧機構)に接続されており、この加圧ラインは、不活性ガス供給源(例えばアルゴンガス供給源)を備えた加圧ライン、酸素ガス供給源を備えた加圧ライン及び窒素ガス供給源を備えた加圧ラインを有している。
【0045】
また、チャンバー1内の処理室55はバルブ39を備えた圧力調整ラインに接続されており、圧力調整ラインは排気機構を有している。この圧力調整ライン及び上記の加圧ラインによってチャンバー1内の処理室55を所定の圧力(例えば1MPa未満)に加圧できるようになっている。
【0046】
また、加圧式ランプアニール装置は、上記の加圧ライン及び圧力調整ラインを制御する制御部を有している。
この制御部は、処理室55内に加圧した酸素ガスまたは酸素ガスと不活性ガスの混合ガスを導入し、処理室55内が1気圧以上(好ましくは5気圧以上、より好ましくは9気圧以上)の第1の圧力に到達した時に処理室55内を減圧し、処理室55内が第1の圧力の95%以下の圧力(好ましくは90%以下の圧力、より好ましくは85%以下の圧力、さらに好ましくは80%以下の圧力)の第2の圧力に到達した時に処理室55内を加圧するような加圧酸素雰囲気でウエハ2を熱処理するように制御してもよい(第1の制御方法)。例えば、第1の圧力が1気圧以上の場合は第2の圧力が0.9気圧以下であってもよいし、第1の圧力が5気圧以上の場合は第2の圧力が4気圧以下であってもよいし、第1の圧力が10気圧以上の場合は第2の圧力が9気圧以下であってもよい。
【0047】
また、制御部は、処理室55内を減圧する際に前記酸素ガスまたは前記混合ガスの処理室55内への導入を停止し、処理室55内を加圧する際に前記酸素ガスまたは前記混合ガスの処理室55内への導入を開始するように、上記の加圧ライン及び圧力調整ラインを制御してもよい。
【0048】
また、制御部は、ウエハ2上に加圧した酸素ガスまたは酸素ガスと不活性ガスの混合ガスを流しながらウエハ2を加圧酸素雰囲気で熱処理するように制御してもよい(第2の制御方法)。その場合、前記酸素ガスまたは前記混合ガスを流す量は、5リットル/min以上(望ましくは10リットル/min以上)であるとよい。
また、上記の第1の制御方法と第2の制御方法を組合せてもよい。
【0049】
筐体6及びランプヒータ5それぞれは配管を介してドライエアー供給源(図示せず)に接続されている。ドライエアー供給源からドライエアーを筐体内及びランプヒータ内に導入することにより、筐体内及びランプヒータ内に溜まる熱を排気ダクトから排気することができる。
【0050】
なお、本実施形態では、ランプヒータ5をウエハ2の上方に配置し、ランプ光をウエハ2の上面に照射して上面からウエハ2を加熱しているが、これに限定されるものではなく、ランプヒータ5をウエハ2の下方に配置し、ランプ光をウエハ2の下面に照射して下面からウエハ2を加熱してもよいし、ランプヒータ5をウエハ2の上方及び下方の両方に配置し、ランプ光をウエハ2の上面及び下面に照射して両面からウエハ2を加熱してもよい。
【0051】
チャンバー1内の処理室55の平面形状は略円形である。加圧ラインから導入されるガスは、ウエハ2の表面と略平行方向にシャワー状に分散させながらウエハ2上に供給されるようになっている。このウエハ2上に供給されたガスは、ウエハ2の表面と略平行方向に並べられた複数のシャワー状ガス通路から排気されるようになっている。シャワー状ガス通路はチャンバー1に形成されている。このようにガスをシャワー状に分散させながら流し、且つシャワー状ガス通路を通して排気することにより、ウエハ2上に均一性よくガスを供給することが可能となる。
【0052】
チャンバー1の一方側にはゲートバルブ49が配置されており、このゲートバルブ49の近傍にはウエハ2を搬送する搬送ロボット(図示せず)が配置されている。ゲートバルブ49を開いた状態で、チャンバー内の処理室55にウエハ2を搬送ロボットにより搬入、搬出するようになっている。
【0053】
ゲートバルブ49は、ウエハ2を処理室55内に導入するための開口部と、弁体49cを有している。この弁体49cを上下移動させることで開口部の開閉を行うことができるようになっている。
【0054】
≪第1の結晶化方法≫
本発明の一態様に係る結晶化方法について図2(A)〜(C)を参照しつつ説明する。図2(A)〜(C)は、図1に示す加圧式ランプアニール装置を用いて金属及びCを含有する膜を酸化して結晶化する結晶化方法を説明する断面図である。
【0055】
まず、6インチのシリコンウエハ上に熱酸化法によりSiO膜を形成し、このSiO膜上に導電膜(電極)を形成する。次いで、この導電膜上にゾルゲル法により金属及びC(a,b:自然数)を含有する膜(以下、「膜」という。)を塗布する。なお、膜は有機金属材料膜であってもよい。
【0056】
この後、上記加圧式ランプアニール装置を用いて加圧酸素雰囲気中で所定温度(例えば600℃)、所定時間(例えば1分間)のRTA処理を行う。以下、詳細に説明する。
【0057】
図1に示すゲートバルブ49の開口部を開き、搬送ロボットによりウエハ2を処理室55内に導入し、保持部3上にウエハ2を保持する。次いで、ゲートバルブ49の開口部を閉じ、加圧ラインの酸素ガス供給源から酸素ガスを処理室55内に導入する。これと共に、圧力調整ラインのバルブ39を徐々に閉じていくことにより、処理室55内を酸素雰囲気としながら徐々に加圧する。そして、処理室55内が1気圧以上(好ましくは5気圧以上、より好ましくは9気圧以上)の第1の圧力に到達した時に圧力調整ラインによって処理室55内を減圧し、処理室55内が第1の圧力の95%以下の圧力(好ましくは90%以下の圧力、より好ましくは85%以下の圧力、さらに好ましくは80%以下の圧力)である第2の圧力に到達した時に処理室55内を圧力調整ラインによって加圧する。そして再び処理室55内が第1の圧力に到達した時に圧力調整ラインによって処理室55内を減圧する。なお、処理室55内を減圧する際に酸素ガスの導入を停止してもよいし、処理室55内を加圧する際に酸素ガスの導入を開始することにしてもよい。
【0058】
上記の加圧と減圧を繰り返しながら、ランプヒータ5から石英ガラス4a,4bを通してランプ光をウエハ2上の膜に照射する。これにより、膜が所定温度まで急速に加熱され、所定温度で所定時間保持される。その結果、膜中の金属と酸素が素早く反応され、膜が結晶化される。
【0059】
次いで、ランプヒータ5を停止させることにより、膜は急速に冷却される。次いで、加圧ラインの酸素ガス供給源からの酸素の供給を停止し、大気開放ラインの開放バルブを開き、処理室55内を大気圧に戻す。
【0060】
上記の結晶化の過程について図2を参照しつつさらに詳細に説明する。
処理室55内が第1の圧力(例えば10気圧)に到達するまでに膜中の金属と酸素51が反応する(図2(A))。その際に膜中のCと反応したCO52やHO53が膜中から発生する(図2(B))。次いで、処理室55内を減圧し、処理室55内が第2の圧力(例えば8.5気圧)に到達するまでに、膜の表面付近に残存して漂うCO52やHO53は膜上から処理室55の外へ排気される(図2(C))。次いで、処理室55内を加圧し、処理室55内が第1の圧力(例えば10気圧)に到達するまでに膜中の金属と酸素51が反応する(図2(A))。
【0061】
このように処理室55内を加圧するときに膜上にフレッシュな酸素を供給し、金属と酸素51が反応する酸化反応の妨げとなるCO52やHO53などのデガス成分(O以外の酸素、窒素、炭素、水素を含むガス)を、処理室55内を減圧するときに処理室55の外へ排気し、その後に処理室55内を加圧して膜上にフレッシュな酸素を供給することを繰り返す。これにより、膜を酸化する時に発生する酸化反応の妨げとなるCOやHOなどを効果的に除去することができる。その結果、膜の酸化を促進させることができ、膜の結晶化状態の面内均一性を飛躍的に向上させることができる。また、結晶性の良い膜を作製することができる。
【0062】
上記のように膜を酸化して結晶化した結晶化膜は、一般式ABOで表され、Aは、Al、Y、Na、K、Rb、Cs、La、Sr、Cr、Ag、Ca、Pr、Nd、Biおよび周期表のランタン系列の元素からなる群から選択される少なくとも一つの元素を含んでなり、Bは、Al、Ga、In、Nb、Sn、Ti、Ru、Rh、Pd、Re、OSirPt、U、CO、Fe、Ni、Mn、Cr、Cu、Mg、V、Nb、Ta、MOおよびWからなる群から選択される少なくとも一つの元素を含んでなるペロブスカイト物質を含む膜、または、酸化ビスマス層と、ペロブスカイト型構造ブロックとが交互に積層された構造を有するビスマス層状構造強誘電体結晶を含む膜であり、前記ペロブスカイト型構造ブロックは、Li、Na、K、Ca、Sr、Ba、Y、Bi、Pbおよび希土類元素から選ばれる少なくとも1つの元素Lと、Ti、Zr、Hf、V、Nb、Ta、W、MO、Mn、Fe、SiおよびGeから選ばれる少なくとも1つの元素Rと、酸素とによって構成されるとよい。
【0063】
≪第2の結晶化方法≫
第1の結晶化方法は、処理室55内の加圧と減圧を繰り返すことにより、膜を酸化する時に発生するCOやHOを効果的に除去する方法であるのに対し、第2の結晶化方法は、処理室55内に加圧した酸素ガスを流しながら処理室55内を排気することにより、膜を酸化する時に発生するCOやHOを効果的に除去する方法である。この点以外について第2の結晶化方法は第1の結晶化方法と同様である。なお、処理室55内は一定圧力とするとよい。
【0064】
処理室内に酸素ガスを流す量は、5リットル/min以上(望ましくは10リットル/min以上)であるとよい。
【0065】
第2の結晶化方法によれば、膜上に酸素ガスを流すことにより、膜を酸化する時に発生するCOやHOを効果的に除去することができる。その結果、膜の結晶化状態の面内均一性を飛躍的に向上させることができる。また、結晶性の良い膜を作製することができる。
【0066】
≪第3の結晶化方法≫
第3の結晶化方法は、第1の結晶化方法と第2の結晶化方法を組合せたものである。つまり、処理室55内の加圧と減圧を繰り返し、且つ処理室55内に加圧した酸素ガスを流すことにより、膜を酸化する時に発生するCOやHOを効果的に除去することができる。
【0067】
なお、本実施形態では、酸素ガスを処理室55内に導入し、処理室55内を加圧酸素雰囲気としているが、酸素ガスと不活性ガスの混合ガスを処理室55内に導入し、処理室55内を加圧した酸素ガスと不活性ガスの混合雰囲気としてもよい。その場合、酸素ガスと不活性ガスの割合は処理室内の圧力に応じて適宜選択すればよい。
【0068】
(第2の実施形態)
≪加圧式ランプアニール装置≫
図3(A)は、本発明の一態様に係る加圧式ランプアニール装置を模式的に示す断面図であり、図3(B)は、図3(A)に示す処理室内のガスの流れを示す平面図であり、図3(C)は、図3(B)に示すガスの流れを模式的に示す図である。
【0069】
図3(A)に示す加圧式ランプアニール装置は、障害物54を有するガス導入機構である点が図1に示す加圧式ランプアニール装置と異なり、その他の点は図1と同様である。
【0070】
≪結晶化方法≫
本結晶化方法は、加圧した酸素ガスを処理室55内に導入すると障害物54によってウエハ2上に流れる酸素ガス51に乱流またはカルマン渦が形成される点が第1の実施形態と異なり、その点以外については第1の実施形態と同様である。なお、本実施形態では、障害物54を固定しているが、これに限定されることなく、処理室55内で障害物を移動させてもよい。また、カルマン渦とは、流れのなかに障害物を置いたとき、または流体中で固体を動かしたときにその後方に交互にできる渦の列である。
【0071】
詳細には、第1の実施形態による第1〜第3の結晶化方法それぞれにおいて、酸素ガスを処理室55内に導入した際に障害物54によってウエハ2上に流れる酸素ガスに乱流またはカルマン渦が形成される方法である。
【0072】
本実施形態においても第1の実施形態と同様の効果を得ることができる。
【0073】
また、本実施形態では、ウエハ2上に流れる酸素ガスに乱流またはカルマン渦を形成するため、膜を酸化する時に発生するCOやHOをより効果的に除去することができる。
【0074】
(第3の実施形態)
≪加圧式ランプアニール装置≫
本発明の一態様に係る加圧式ランプアニール装置は、保持部を移動させる駆動機構を有する点が図1に示す加圧式ランプアニール装置と異なり、その他の点は図1と同様である。
【0075】
≪結晶化方法≫
本結晶化方法は、前記駆動機構によって保持部とともに基板を移動させながら結晶化を行う点が第1の実施形態と異なり、その点以外については第1の実施形態と同様である。
【0076】
詳細には、第1の実施形態による第1〜第3の結晶化方法それぞれにおいて、前記駆動機構によって保持部とともに基板上の膜を移動させながら膜の結晶化を行う方法である。この移動は、上下移動または回転運動または上下移動と回転運動の組み合せであるとよい。
【0077】
本実施形態においても第1の実施形態と同様の効果を得ることができる。
【0078】
また、本実施形態では、基板上の膜を機械的に移動させることにより、膜の表面付近に残存するCOやHOなどを膜の表面から遠ざけることができ、膜の表面付近の酸素ガスの量を増やすことができる。その結果、膜の酸化を促進させることができる。
【0079】
なお、上述した第1〜第3の実施形態を適宜組合せて実施してもよい。
【実施例】
【0080】
[スピンコート]
Pb30%過剰ゾルゲルPZT溶液(Pb/Zr/Ti=130/55/45)を用い、スピンコートを実施した。これにより、6インチウエハ上にPZT薄膜を作製した。1層当たりの塗布量は5ccとし、スピン条件は以下の条件を用いてPZT膜の塗布を行った。
【0081】
<スピン条件>
0 〜 50 rpmまで、ランプ照射を行いながらSLOPE制御にて30秒で上昇。
50 〜 500 rpmまで、SLOPE制御にて10秒で上昇。
500 〜 2000 rpmまで、SLOPE制御にて10秒で上昇(バックリンス塗布有)。
2000 rpmにて、5秒間保持。
4500 rpmまで上昇させ、7秒間保持。
7500 rpmまで上昇させ、5秒間保持。
なお、SLOPE制御とは、回転数の上昇を段階的に行う制御をいい、回転数を階段状に上昇させる制御、回転数を連続的に上昇させる制御を含む意味である。
【0082】
[乾燥・加圧仮焼成]
塗布毎に、アルコール成分除去を目的とした乾燥工程を実施した。200℃に加熱したホットプレート上で90秒間保持し、乾燥させた。次に、有機成分の分解除去を目的とした加圧仮焼成工程を実施した。まずロータリポンプにて10-3Paまで真空引きを実施した。その後、9.8気圧まで酸素を導入し、第1の実施形態による図1の加圧式ランプアニール装置を用いながら、450℃、150秒間、加圧・加熱処理を実施した。
【0083】
[加圧RTA(Rapid Thermal Anneal)]
第1の実施形態による図1の加圧式ランプアニール装置を用いて、PZT膜の酸化及び結晶化促進のため、9.8気圧、650℃、400秒の加圧RTA処理を実施した。その際、加圧式ランプアニール装置は、図4に示すように制御した。
【0084】
上記の塗布、乾燥、加圧仮焼成、加圧RTAプロセスを5回繰り返した。
【0085】
図4に示す制御方法について以下に詳細に説明する。
処理室55内が9.8気圧の圧力に到達した時に、圧力調整ラインによって処理室55内を減圧し、処理室55内が8.8気圧の圧力に到達した時に処理室55内を圧力調整ラインによって再加圧する。そして再び処理室55内が9.8気圧の圧力に到達した時に、圧力調整ラインによって処理室55内を減圧する。なお、処理室55内を減圧する際には酸素ガスの導入を停止し、処理室55内を加圧する際に酸素ガスの再導入を開始する。また、ランプヒータ5によって基板温度を図4に示すように制御する。
【0086】
このようにして、全膜厚1μmのPZT膜を作製した。この実施例のPZT膜の表面を撮影した写真を図5(B)に示す。
【0087】
(比較例)
上記の450℃、150秒間、加圧・加熱処理及び9.8気圧、650℃、400秒の加圧RTA処理それぞれに加圧と減圧を繰り返す圧力制御を行わずに全膜厚1μmのPZT膜を比較例として作製した。つまり、比較例では、上記の450℃、150秒間、加圧・加熱処理及び9.8気圧、650℃、400秒の加圧RTA処理それぞれの圧力を一定とし、且つ排気を停止した状態で、それぞれの処理を行った。それ以外については、上記の実施例と同様の方法でPZT膜を作製した。この比較例のPZT膜の表面を撮影した写真を図5(A)に示す。
【0088】
図5(A)に示す比較例のPZT膜の表面は黒色でPZT膜の結晶化状態の面内均一性が悪いのに対し、図5(B)に示す実施例のPZT膜の表面は透明で酸化が面内で均一に進んでおり、PZT膜の結晶化状態の面内均一性が向上していることが分かる。
【符号の説明】
【0089】
1 チャンバー
2 シリコンウエハ(基板)
3 保持部
4a,4b 石英ガラス
5 ランプヒータ
6 筐体
7 冷却機構
9 放射温度計
39 圧力調整ラインのバルブ
49 ゲートバルブ
49c 弁体
51 酸素
52 CO
53 H
54 障害物
55 処理室
図1
図2
図3
図4
図5