(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
組換えウマヘルペスウイルス-1(EHV-1)を含む組成物又はワクチンであって、前記組換えEHV-1において糖タンパク質C(gC)遺伝子が欠失しており、前記組換えEHV-1がさらにアミノ酸752位にアスパラギン(N)を含むDNAポリメラーゼ(Pol)を含む、前記組成物又はワクチン。
EHV-1が、RacH株、RacL株、Ab4株、V592株、ケンタッキーD株、438/77株、AB69株、EHV-1 NY03株及び前記の組合せから成る群から選択されるEHV-1株から誘導される、請求項1に記載の組成物又はワクチン。
EHV-1がEHV-1 RacL株から誘導され、該RacL株のDNAポリメラーゼ(Pol)がアミノ酸752位にアスパラギン(N)を含む、請求項1または2に記載の組成物又はワクチン。
EHV-1が、RacH株、RacL株、Ab4株、V592株、ケンタッキーD株、438/77株、AB69株、EHV-1 NY03株及び前記の組合せから成る群から選択されるEHV-1株から誘導される、請求項5に記載の組換えEHV-1。
非ヒト動物でヘルペスウイルスに対する防御応答を誘引する方法であって、請求項1から4のいずれか1項に記載の組成物若しくはワクチンまたは請求項5から7のいずれか1項に記載の組換えEHV-1を非ヒト動物に投与することを含む、前記方法。
【発明を実施するための形態】
【0006】
詳細な説明
本開示及び特に特許請求の範囲では以下に留意されたい:例えば“comprises”、“comprised”、“comprising”などの用語は、米国特許法でそれらに帰属する意味を有し、例えばそれら用語は“includes”、“included”、“including”などを意味することができる。さらに、例えば“consisting essentially of”、及び“consists essentially of”のような用語は、米国特許法でそれらが帰属する意味を有し、例えばそれらは、はっきりと列挙されていない成分を許容するが、先行技術で見出されるか又は本発明の基本的若しくは新規な特徴に影響を与える成分を排除する。
特段の記載がなければ、技術用語は通常的使用にしたがって用いられる。分子生物学における一般的な用語の定義は以下で見出され得る:Benjamin Lewin, Genes V., Oxford University Press, 1994(ISBN0-19-854287-9);Kendrew et al.(eds.), The Encyclopedia of Molecular Biology, Blackwell Science Ltd., 1994(ISBN 0-632-02182-9);及びRobert A. Meyers (ed.), Molecular Biology and Biotechnology: a Comprehensive Desk Reference, VCH Publishers, Inc., 1995(ISBN 1-56081-569-8)。
単数用語の“a”、“an”及び“the”は、文脈が明らかにそうでないことを示さないかぎり複数の対応語を含む。同様に、“or”という語も、文脈が明らかにそうでないことを示さないかぎり“and”を含むことが意図される。“or”という語は具体的な列挙物の任意の1つのメンバーを意味し、当該列挙物の任意の組み合わせもまた含む。
【0007】
本明細書で用いられる“EHV-1 N株”という用語は、そのDNAポリメラーゼのアミノ酸752位にアスパラギン(N)を有する任意のEHV-1株を指す。該EHV-1 N株は、アスパラギン(N)をアミノ酸752位に含むDNAポリメラーゼを含む野生型株でもよい。該EHV-1 N株は、そのDNAポリメラーゼがアミノ酸752位にアスパラギン(N)を有するように操作された変異又は組換えEHV-1株でもよい。
本明細書で用いられる“EHV-1 D株”という用語は、そのDNAポリメラーゼのアミノ酸752位にアスパラギン酸(D)を有する任意のEHV-1株を指す。該EHV-1 D株は、アスパラギン酸(D)をアミノ酸752位に含むDNAポリメラーゼを含む野生型株でもよい。該EHV-1 D株は、そのDNAポリメラーゼがアミノ酸752位にアスパラギン酸(D)を有するように操作された変異又は組換えEHV-1株でもよい。
“動物”によって、哺乳動物、人間、鳥類などが意図される。該動物は、ウマ科の動物(例えばウマ、シマウマ、ロバ)、イヌ科の動物(例えばイヌ、オオカミ、キツネ、コヨーテ、ジャッカル)、ネコ科の動物(例えばライオン、トラ、イエネコ、野生ネコ、他の大型のネコ類、及び他のネコ科の動物(チーター及びオオヤマネコを含む))、ヒツジ類(例えばヒツジ)、ウシ科の動物(例えばウシ、乳牛、バッファロー)、ブタ類(例えばブタ)、鳥類(例えばニワトリ、アヒル、ガン、シチメンチョウ、ウズラ、キジ、オウム、フィンチ、タカ、カラス、ダチョウ、エミュー、及びヒクイドリ)、霊長類(例えば原猿類、メガネザル、有尾猿類、テナガザル、無尾猿類)、及び魚類から成る群から選択できる。“動物”という用語にはまた、全ての発育段階(胚性期及び胎児期を含む)の個々の動物が含まれる。
【0008】
“ポリペプチド”及び“タンパク質”という用語は本明細書では互換的に用いられ、連続するアミノ酸残基のポリマーを指す。
“核酸”、“ヌクレオチド”及び“ポリヌクレオチド”という用語はRNA又はDNA及び前記の誘導体(例えば改変骨格を含むもの)を指す。本発明は、本明細書に記載したポリヌクレオチドに相補的な配列を含むポリヌクレオチドを提供することは理解されよう。本発明のポリヌクレオチドは、種々の方法で(例えば化学的合成、遺伝子クローニングなどによって)調製でき、さらに多様な形態(例えば直鎖状若しくは分枝状、一本鎖若しくは二本鎖、又はそのハイブリッド、プライマー、プローブなど)をとることができる。
“遺伝子”という用語は広く用いられ、生物学的機能と結びついたポリヌクレオチドの任意のセグメントを指す。したがって、遺伝子又はポリヌクレオチドは、ゲノム配列におけるイントロン及びエクソン、又はcDNAにおけるコード配列そのもの、例えばオープンリーディングフレーム(ORF)(開始コドン(メチオニンコドン)から始まり終了シグナル(停止コドン)で終わる)を含む。遺伝子及びポリヌクレオチドはまた、それらの発現を調節する領域(例えば転写開始、翻訳及び転写終了領域)を含むことができる。したがってまたプロモーター及びリボソーム結合領域(概ね、これら調節エレメントはコード配列又は遺伝子の開始コドンの上流約60から250ヌクレオチドの間に存在する(Dorees S M et al.;Pandher K et al.;Chung J Y et al.))、転写ターミネーター(概ね、該ターミネーターはコード配列又は遺伝子の停止コドンの下流約50ヌクレオチド内に配置される(Ward C K et al.))が含まれる。遺伝子又はポリヌクレオチドはまた、mRNA又は機能的RNAを発現するか、又は特異的タンパク質をコードする核酸フラグメントを指し、前記は調節配列を含む。
【0009】
本明細書で用いられるように、“抗原”又は“免疫原”は、宿主動物で特異的な免疫応答を誘発する物質を意味する。該抗原は、生物体全体(死滅、弱毒又は生);生物のサブユニット又は部分;免疫原性特性を有するエピトープ、ポリペプチド、ペプチド、タンパク質又はそのフラグメントを発現する挿入物を含む組換えベクター;宿主動物への提示に際して免疫応答を誘発できる核酸片又はフラグメント;タンパク質、ポリペプチド、ペプチド、エピトープ、ハプテン、又は前記の任意の組合せを含むことができる。或いはまた、該免疫原又は抗原は毒素又は抗毒素を含むことができる。
定義すれば、エピトープは、いったん宿主に投与されたら液性タイプ(B細胞)及び/又は細胞性タイプ(T細胞)の免疫応答を引き起こすことができるという意味で免疫学的に活性な抗原決定基である。これらは、抗原性を有する分子上の特定の化学基又はペプチド配列である。抗体はポリペプチド上の特定の抗原性エピトープと特異的に結合する。エピトープの具体的な非限定的な例には、ポリペプチド中のテトラペプチドからペンタペプチド配列、多糖類中のトリグリコシドからペンタグリコシドの配列が含まれる。動物では、大半の抗原が数個の又は多くの抗原決定基を同時に提示するであろう。そのようなポリペプチドもまた免疫原性ポリペプチドとみなされ、そのエピトープはさらに別に説明するように同定することができる。
【0010】
“単離された”生物学的成分(例えば核酸又はタンパク質又は細胞内小器官)は、当該成分が天然に存在する当該生物の細胞内の他の生物学的成分(例えば他の染色体及び染色体外DNA及びRNA、タンパク質並びに細胞内小器官)から実質的に分離されている、又は精製されている成分を指す。“単離” されている核酸及びタンパク質には標準的な精製方法によって精製された核酸及びタンパク質が含まれる。前記用語はまた、組み換え技術及び化学合成によって調製された核酸及びタンパク質を包含する。
本明細書で用いられる“精製された”という用語は完璧な純度を必要とせず、むしろ前記は相対的用語を意図する。したがって、例えば精製されたポリペプチド調製物は、当該ポリペプチドがその天然の環境に存在するよりも当該ポリペプチドがより濃縮されている調製物である。あるポリペプチド調製物のポリペプチドは、いくつかの実施態様では当該調製物の総ポリペプチド含有量の少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%、少なくとも95%又は、少なくとも98%を占めるように、当該ポリペプチド調製物は実質的に精製される。同じことがポリヌクレオチドにも適用される。本明細書に開示のポリペプチドは当業界で公知の手段のいずれかで精製され得る。
【0011】
本発明は、組換えウイルスベクターウマヘルペスウイルス-1(HEV-1)を含む組成物又はベクターを提供する。ある特徴では、本発明は、変異糖タンパク質C(gC)を含む組換えEHV-1を提供する。別の特徴では、本発明は、アミノ酸752位にアスパラギン(N)を有するDNAポリメラーゼを含む組換えEHV-1を提供する。さらに別の特徴では、本発明は、EHV-1がEHV-1 N株である組換えEHV-1を提供する。該組換えEHV-1 N株は変異gC遺伝子を含むことができる。さらに別の特徴では、変異gC遺伝子及びアミノ酸752位にアスパラギン(N)を有するDNAポリメラーゼを含む。本発明の組成物又はワクチンはさらに医薬的又は獣医的に許容できるベヒクル、希釈剤、アジュバント又は賦形剤を含むことができる。
“組成物”という用語は、いったん宿主(イヌ、ネコ、ウマ及びヒトを含む)に注入されたら、該宿主で免疫応答を誘発する、及び/又は該宿主を白血病から防御する、及び/又は寄生虫の移植を予防できる、及び/又は感染対象動物で疾患の進行を予防できる、及び/又は逃避寄生虫の内部器官への拡散を制限できる任意のワクチン又は免疫学的組成物を含む。前記は、サイトカイン分泌、特にIFN-ガンマ分泌の誘発中に本発明にしたがってワクチン免疫を実施するときに達成できる(IFN-ガンマ分泌の測定方法の例として、Quantikine(商標)(R&D Systems Inc.;カタログ番号#CAIF00)を用いることができよう(Djoba Siawaya JH et al.))。
【0012】
本発明は、アミノ酸752位にアスパラギン(N)を有するDNAポリメラーゼを含む組換えEHV-1を提供する。EHV-1 DNAポリメラーゼのポリペプチドのホモローグは本発明の範囲内であると考える。本明細書で用いられるように、“ホモローグ”という用語には、オルトローグ、アナローグ及びパラローグが含まれる。“アナローグ”という用語は、同じ又は類似の機能を有するが無関係の生物で別個に進化してきた2つのポリヌクレオチド又はポリペプチドを指す。“オルトローグ”という用語は、異なる種に由来する2つのポリヌクレオチド又はポリペプチドを指すが、ただしそれらは共通の先祖遺伝子から種形成によって進化してきた。通常は、オルトローグは同じ又は類似の機能を有するポリペプチドをコードする。“パラローグ”という用語は、ゲノム内の複製によって関係を有する2つのポリヌクレオチド又はポリペプチドを指す。パラローグは、通常は異なる機能を有するが、これらの機能は関連し得る。野生型ポリペプチドのアナローグ、オルトローグ及びパラローグは、翻訳後改変によって、アミノ酸の配列相違によって、又はその両方によって野生型ポリペプチドと相違し得る。特に、本発明のホモローグは、概ね野生型ポリペプチドの全部又は部分と少なくとも80−85%、85−90%、90−95%又は95%、96%、97%、98%、99%の配列同一性を示し、さらに類似の機能を示すであろう。
【0013】
本発明のある特徴では、該組換えEHV-1は、配列番号:2、4、6、37、13、14又は15と少なくとも70%、75%、80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%、99.1%、99.2%、99.3%、99.4%、99.5%、99.6%、99.7%、99.8%又は99.9%の配列同一性を有するポリペプチドのアミノ酸752位又は等価の位置にアスパラギン(N)を含むEHV-1 DNAポリメラーゼを含む。別の特徴では、本発明はEHV-1 DNAポリメラーゼのフラグメント及び変種を提供し、当業者は周知の分子生物学の技術を用いて前記を容易に調製できる。変種は、配列番号:2、4、6、37、13、14又は15に示すアミノ酸配列と少なくとも75%、80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%、99.1%、99.2%、99.3%、99.4%、99.5%、99.6%、99.7%、99.8%又は99.9%同一であるアミノ酸配列を有する相同なポリペプチドである。変種には対立遺伝子変種が含まれる。“対立遺伝子変種”という用語は、タンパク質のアミノ酸配列に変化をもたらし、かつ天然の集団(例えばウイルスの種又は系統)内に存在する多形性を含むポリヌクレオチド又はポリペプチドを指す。そのような天然の対立遺伝子変種は、ポリヌクレオチド又はポリペプチドに典型的には1−5%の多様性をもたらすことができる。対立遺伝子変種は、多数の異なる種で問題の核酸配列をシークェンシングすることによって同定できる(前記は、それらの種で同じ遺伝子の遺伝子座を同定するハイブリダイゼーションプローブを用いることによって容易に実施することができる)。そのような核酸変異及びその結果のアミノ酸多形性、又は天然の対立遺伝子変異の結果であり問題の遺伝子の機能的活性を変化させない変異のいずれか及び全てが本発明の範囲内であると考える。
【0014】
本明細書で用いられるように、“誘導体”又は“変種”という用語は、1つ以上の保存的アミノ酸変異又は他のマイナーな改変を有するポリペプチド又はポリペプチドをコードする核酸を指し、(1)野生型ポリペプチドと比較したとき対応するポリペプチドが実質的に等価の機能を有するか、又は(2)当該ポリペプチドに対して生じた抗体が当該野生型ポリペプチドと免疫反応性であるように、改変されている。
1つ以上の保存的アミノ酸変異又は他のマイナーな改変を有する。これらの変種又は誘導体には、EHV-1 DNAポリメラーゼの一次アミノ酸配列にマイナーな改変を有するポリペプチドが含まれる(そのようなマイナーな改変は、対応する非改変ポリペプチドと比較したとき実質的に等価の活性を有するペプチドを生じ得る)。そのような改変は、部位指定変異誘導による場合のように意図的であっても、又は偶発的であってもよい。“変種”という用語はさらに、前記ポリペプチドが機能して本明細書に規定する免疫学的応答を生じるかぎり、当該配列への欠失、付加及び置換を含む。該改変は、配列番号:2、4、6、37、13、14又は15の752位以外のアミノ酸の位置における任意のアミノ酸変化であり得る。
【0015】
“保存的変種”という用語は、あるアミノ酸残基の別の生物学的に類似する残基による入れ替え、又はコードアミノ酸残基が変化しないか若しくは別の生物学的に類似する残基であるような核酸配列内のヌクレオチドの入れ替えを指す。これに関しては、特に好ましい置換は概して性質が保存的、すなわち、アミノ酸の1つのファミリー内で生じる置換であろう。例えば、アミノ酸は概して以下の4つのファミリーに分割される:(1)酸性:アスパラギン酸及びグルタミン酸;(2)塩基性:リジン、アルギニン、ヒスチジン;(3)非極性:アラニン、バリン、ロイシン、イソロイシン、プロリン、フェニルアラニン、メチオニン、トリプトファン;及び(4)非荷電極性:グリシン、アスパラギン、グルタミン、システイン、セリン、スレオニン、チロシン。フェニルアラニン、トリプトファン及びチロシンは時には芳香族アミノ酸として分類される。保存的変異の例には以下が含まれる:ある疎水性残基(例えばイソロイシン、バリン、ロイシン又はメチオニン)による別の疎水性残基の置換、又はある極性残基による別の極性残基の置換(例えばアルギニンによるリジンの置換、グルタミン酸によるアスパラギン酸の置換、又はグルタミンによるアスパラギンの置換など);又は、生物学的活性に大きな影響をもたない、あるアミノ酸の構造的に関連するアミノ酸による類似の保存的入れ替え。参照分子と実質的に同じアミノ酸配列を有するが、該タンパク質の免疫原性に実質的に影響を及ぼさないマイナーなアミノ酸置換を有するタンパク質は、したがって参照ポリペプチドの定義内である。これらの改変によって生じるポリペプチドは全てここに含まれる。“保存的変異”という用語はまた、非置換親アミノ酸の代わりの置換アミノ酸の使用を含むが、ただし該置換ポリペプチドに対して生じた抗体がまた該非置換ポリペプチドと免疫反応することを条件とする。
【0016】
ポリペプチドのフラグメント及びエピトープを決定する手順、例えばオーバーラップペプチドライブラリーの作製(Hemmer B et al.)、ペプスキャン(Geysen HM Et al., 1984;Geysen HM Et al., 1985;Van der Zee R et al.;Geysen HM)及びアルゴリズム(De Groot A et al.;Hoop T et al.;Parker K et al.)は、煩雑な実験を行うことなく本発明の実施で用いることができる。概して抗体は特定の抗原エピトープに結合する。エピトープの具体的で非限定的な例には、ポリペプチド内の4から5ペプチドの配列、多糖類内の3から4グリコシドの配列が含まれる。動物では大半の抗原が数個の又は多くの抗原決定基を同時に提示するであろう。好ましくは、該エピトープがより大きな分子のタンパク質フラグメントである場合、前記は総タンパク質と実質的に同じ免疫学的活性を有するであろう。
ある特徴では、本発明は、配列番号:2、4、6、37、13、14又は15と少なくとも70%、75%、80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%、99.1%、99.2%、99.3%、99.4%、99.5%、99.6%、99.7%、99.8%又は99.9%の配列同一性を有するポリペプチド、保存的変種、対立遺伝子変種、ホモローグ、又はこれらポリペプチドの1つの連続する少なくとも8又は少なくとも10アミノ酸を含む免疫原性フラグメント、又はこれらポリペプチドの組合せのアミノ酸752位又は等価の位置にアスパラギン(N)を含むEHV-1 DNAポリメラーゼをコードするポリヌクレオチドを提供する。
別の特徴では、本発明は、配列番号:1、3、5又は36に示すヌクレオチド配列を有するポリヌクレオチド又はその変種を提供する。さらにまた別の特徴では、本発明は、配列番号:1、3、5又は36と少なくとも70%、75%、80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%、99.1%、99.2%、99.3%、99.4%、99.5%、99.6%、99.7%、99.8%又は99.9%の配列同一性を有するポリヌクレオチド又はその変種を提供する。
【0017】
本開示のポリヌクレオチドは、特定の宿主のための遺伝暗号、例えば最適化コドン使用頻度の結果としての縮退である、配列を含む。本明細書で用いられるように、“最適化”は、与えられた種でその発現を高めるために遺伝的に操作されるポリヌクレオチドを指す。EHV-1 DNAポリメラーゼをコードする最適化ポリヌクレオチドを提供するために、EHV-1 DNAポリメラーゼ遺伝子のDNA配列は以下のように改変できる:(1)個々の種で高度に発現される遺伝子によって優先されるコドンを含む;(2)前記種においてヌクレオチド塩基組成で実質的に見出されるようなA+T又はG+C含量を含む;(3)前記種の開始配列を形成する;又は(4)RNAの脱安定化、不適切なポリアデニル化、分解及び停止を引き起こすか、又は二次構造ヘアピン若しくはRNAスプライス部位を形成する配列を排除する。前記種のEHV-1 DNAポリメラーゼの発現増加は、真核細胞及び原核細胞又は個々の種のコドン使用頻度の分布頻度を利用することによって達成できる。“優先されるコドンの使用頻度”という用語は、あるアミノ酸を特定するためにヌクレオチドコドンの使用で特定の宿主細胞が示す優先性を指す。20の天然アミノ酸が存在し、その大半が2つ以上のコドンによって特定される。したがって、全ての縮退ヌクレオチド配列が、当該ヌクレオチド配列によってコードされるEVH-1 DNAポリメラーゼのアミノ酸配列が機能的に変更されないかぎり本開示に含まれる。
【0018】
ある特徴では、本発明は変異糖タンパク質C(gC)遺伝子を含む組換えEHV-1を提供する。“変異gC遺伝子”という用語は、発現に際して非機能性gCタンパク質を生じる改変又は操作されたEHV-1のgC遺伝子を指す。該gC遺伝子の改変又は操作には、機能的なgCタンパク質の発現に必須であるgC遺伝子セグメントの変異又は欠失が含まれる。該gC遺伝子の欠失は、gCタンパク質のアミノ末端領域をコードするポリヌクレオチドの欠失でもよい。gCタンパク質の欠失されるアミノ末端領域は、任意の長さ、例えば1−10アミノ酸、又は11−20アミノ酸、又は21−30アミノ酸、又は31−40アミノ酸、又は41−60アミノ酸、又は61−90アミノ酸、又は91−120アミノ酸、又は121−160アミノ酸の領域でもよい。“変異gC遺伝子”という用語はまた、gCタンパク質が発現されないEHV-1の完全なgC遺伝子の欠失を含む。
ある特徴では、本発明は、該gCタンパク質をコードする本来の(野生型の)EHV-1ゲノムの糖タンパク質C(gC)遺伝子が欠失している組換えEHV-1を提供する。“糖タンパク質C(gC)遺伝子”という用語は、EHV-1の糖タンパク質C(gC)、及びそのホモローグ、フラグメント又は変種をコードする任意の遺伝子又はポリヌクレオチドを含む。該gC遺伝子は、配列番号:8、10又は12と少なくとも75%、80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%、99.1%、99.2%、99.3%、99.4%、99.5%、99.6%、99.7%、99.8%又は99.9%の配列同一性を有するgCタンパク質又はその変種をコードすることができる。配列番号:7、9又は11と少なくとも75%、80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%、99.1%、99.2%、99.3%、99.4%、99.5%、99.6%、99.7%、99.8%又は99.9%の配列同一性を有するgC遺伝子もまた本発明に包含される。別の特徴では、本発明は、該gCタンパク質をコードする本来の(野生型の)EHV-1ゲノムの糖タンパク質C(gC)遺伝子が改変又は操作され変異gCタンパク質を生じる組換えEHV-1を提供する。さらにまた別の特徴では、該操作gC遺伝子は、gCタンパク質のN-末端領域が欠失した変異gCタンパク質をコードする。
【0019】
2つのアミノ酸配列間の配列同一性は、NCBI(National Center for Biotechnology Information)ペアワイズblast及びblosum6マトリックスによって標準的パラメーターを用いて決定できる(例えば以下を参照されたい:NCBI(“National Center for Biotechnology Information”(Bethesda, Md., USA))サーバー及びAltschuらの著書(したがって前記著書は該アルゴリズム又はBLAST若しくは BLASTX及びBLOSUM62マトリックスの使用に関して“blasts”という用語によって記述する))。
また別に或いは前記に付け加えれば、例えばヌクレオチド又はアミノ酸配列に関して、“同一性”という用語は2つの配列間の相同性の量的測定値を示すことができる。パーセント配列相同性は以下のように計算できる:(N
ref−N
dif)x100/N
ref、式中N
difはアラインメントを実施した2つの配列中の非同一残基の総数であり、N
refは該配列の一方の残基数である。したがって、DNA配列AGTCAGTCは、配列AATCAATCと75%の配列同一性を有するであろう(N
ref=8;N
dif=2)。
【0020】
また別に或いは前記に加えれば、配列に関する“同一性”は、同一のヌクレオチド又はアミノ酸を有する位置の数を2つの配列の短い方のヌクレオチド又はアミノ酸の数で割ったものを指し、ここで前記2つの配列のアラインメントは、ウィルバーとリップマン(Wilbur and Lipman)のアルゴリズムにしたがい、例えばウィンドウサイズ20ヌクレオチド、ワード長4ヌクレオチド及びギャップペナルティー4並びにコンピューター支援分析を用いて決定できる。アラインメントを含む配列データの解釈は、市販のプログラム(例えばIntelligenetics
TM Suite, Intelligenetics Inc. CA)を便利に用いて実施できる。RNA配列が、DNA配列と類似する、又はある配列同一性度若しくは相同性度を有するというとき、DNA配列中のチミジン(T)はRNA配列中のウラシル(U)と等しいとみなされる。したがってRNA配列は本発明の範囲内であり、DNA配列中のチミジン(T)をRNA配列中のウラシル(U)と等しいと考えることによってDNA配列から誘導することができる。
2つのアミノ酸配列の配列同一性若しくは配列類似性又は2つのヌクレオチド配列間の配列同一性は、Vector NTIソフトウェアパッケージ(Invitrogen, 1600 Faraday Ave., Carlsbad, CA)を用いて決定できる。
【0021】
本明細書に開示する組換えベクターはポリペプチド、その変種又はそのフラグメントをコードするポリヌクレオチドを含むことができる。組換えベクターはプラスミド及びウイルスベクターを含むことができ、in vitro又はin vivo発現に用いることができる。組換えベクターはさらにシグナルペプチドを含むことができる。シグナルペプチドは短いペプチド鎖(3−60アミノ酸長)で、ある種の細胞内小器官(例えば核、ミトコンドリアマトリックス、小胞体、葉緑体、アポプラスト及びペルオキシソーム)へのタンパク質(サイトゾル内で合成される)の翻訳後輸送を指令する。典型的には、天然に存在するEHV-1タンパク質は前駆体(N-末端シグナルペプチド配列及び“成熟”タンパク質ドメインを有する)として翻訳され得る。シグナルペプチドはEHV-1タンパク質から切断できる。ペプチドシグナルは分泌されたタンパク質から切断できる。例えばシグナルペプチドは、組織プラスミノーゲンアクチベータータンパク質(tPA)、特にヒトtPA(S. Friezner et al.;R. Rickles et al.;D. Berg et al.)から、又はシグナルペプチドはインスリン様成長因子1(IGF1)、特にウマIGF1(K. Otte et al.)、イヌIGF1(P. Delafontaine et al.)、ネコIGF1(WO03/022886)、ウシIGF1(S. Lien et al.)、ブタIGF1(M. Muller et al.)、ニワトリIGF1(Y. Kajimoto et al.)、シチメンチョウIGF1(GenBankアクセッション番号AF074980)から切断できる。IGF1のシグナルペプチドは自然のままでも最適化してもよい。最適化は、隠ぺいスプライス部位の除去及び/又はコドン使用頻度の適合化によって達成できる。翻訳時に、プロセッシングされていないポリペプチドは成熟ポリペプチドを生じる切断部位で切断できる。切断部位はVon Heijne(1986)の方法を用いて予想することができる。
【0022】
プラスミドは、DNA転写ユニット、例えば宿主細胞でその複製を可能にする核酸配列、例えば複製起点(原核細胞性又は真核細胞性)を含むことができる。プラスミドはまた1つ以上の選別可能マーカー遺伝子及び当業界で公知の他の遺伝成分を含むことができる。プラスミドの環状形及び線状形が本開示に包含される。
さらに別の特徴では、本発明はポリヌクレオチド配列を含むin vivo発現ベクターに関し、前記ヌクレオチド配列は、EHV-1抗原、ポリペプチド及び/又はその変種若しくはフラグメントを含み、さらに宿主で前記をin vivoで発現する。
該in vivo発現ベクターは、関心のあるポリヌクレオチド又は遺伝子及びそのin vivo発現に必須のエレメントを含む任意の転写ユニットを含むことができる。これらの発現ベクターはプラスミド又は組換えウイルスベクターであり得る。in vivo発現のためには、プロモーターはウイルス又は細胞起源であり得る。ある実施態様では、プロモーターはサイトメガロウイルス(CMV)初期プロモーター(CMV-IEプロモーター)、SV40ウイルス初期若しくは後期プロモーター、又はラウス肉腫ウイルスLTRプロモーター、細胞骨格遺伝子のプロモーター、例えばデスミンプロモーター(Kwissa M et al.)又はアクチンプロモーター(Miyazaki J et al.)であり得る。いくつかの遺伝子が同じプラスミドに存在するとき、それらは同じ転写ユニット又は別個のユニットで提供できる。
【0023】
本明細書で用いられるように、“プラスミド”という用語は、本発明のポリヌクレオチド及び所望の宿主又は標的の細胞又は複数細胞での発現に必要なエレメントを含む任意のDNA転写ユニットを含むことができる。前記に関しては、スーパーコイル若しくは非スーパーコイル、環状プラスミドおよび線状型も本発明の範囲内にあることを特記する。プラスミドはまた、他の転写調節エレメント、例えばイントロンタイプの安定化配列を含むことができる。いくつかの実施態様では、プラスミドは、CMV-IEの第一のイントロン(WO89/01036)、ウサギベータ-グロビン遺伝子のイントロンII(van Ooyen et al.)、組織プラスミノゲンアクチベーターによってコードされるタンパク質のシグナル配列(tPA;Montgomery et al.)、及び/又はポリアデニル化シグナル(ポリA)(特にウシ成長ホルモン(bGH)遺伝子のポリA(US5,122,458)又はウサギベータ-グロビン遺伝子のポリA又はSV40のポリA)を含むことができる。
【0024】
医薬的に許容できるベヒクル又は希釈剤又は賦形剤又はアジュバントの使用は一般的である。Remingtonの著書(Remington’s Pharmaceutical Sciences, by E. W. Martin, Mack Publishing Co., Easton, PA, 15th Edition, 1975)は、本明細書に開示するポリペプチド、プラスミド、ウイルスベクターの医薬的デリバリーに適切な組成物及び処方物を記載する。概して、ベヒクル又は賦形剤の性質は用いられる個々の投与態様に左右されるであろう。例えば、非経口処方物は通常注射可能な液体をベヒクルとして含み、前記には医薬的及び生理学的に許容できる液体、例えば水、生理学的食塩水、緩衝塩溶液、デキストロース水、グリセロールなどが含まれる。固体組成物(例えば凍結乾燥トローチ、散剤、ピル、錠剤又はカプセル形)のためには、通常的な非毒性固体ベヒクル又は希釈剤又は賦形剤又はアジュバントを含むことができる。前記は、例えば医薬等級のマンニトール、ラクトース、デンプン、又はステアリン酸マグネシウムである。生物学的に中性のベヒクル又は希釈剤又は賦形剤又はアジュバントに加えて、投与されるべき免疫原性組成物は、少量の非毒性補助物質、例えば湿潤剤、乳化剤、保存料及びpH緩衝剤など、例えば酢酸ナトリウム又はソルビタンモノラウレートを含むことができる。
【0025】
本発明の組成物又はワクチンは、上記の本発明の任意のポリペプチド又は抗原をコードする組換えベクターを含むことができる。
複数の挿入を別個の挿入部位を用いるか又は同じ挿入部位を用いて実施することができる。同じ挿入部位を用いるときは、それぞれのポリヌクレオチド挿入物(上記の本発明の任意のポリヌクレオチドであり得る)は、同じ及び/又は別個のプロモーターの制御下に挿入され得る。前記挿入は尾対尾、頭対頭、尾対頭、又は頭対尾で実施できる。IRESエレメント(内部リボソーム進入部位、EP0803573参照)もまた利用して、同じ及び/又は別個のプロモーターに作動できるように連結された複数の挿入物を分離させ発現させることができる。
より広く、本発明は、上記のEHV-1ポリペプチド、変種又はフラグメントのポリヌクレオチド又は遺伝子及び前記のin vivo発現に必要なエレメントを含み、宿主でin vivoにて発現させる任意のプラスミド(EP-A2-1001025;Chaudhuri P.)を含むin vivo発現ベクターを包含する。
【0026】
具体的で非限定的な例では、pVR1020又はpVR1012プラスミド(VICAL Inc.;Luke C. et al.;Hartikka J. et al.)、pVR2001-TOPA(又はpVR2001-TOPO)(Oliveira F. et al.)又はpAB110(US 6,852,705)を、ポリヌクレオチド配列の挿入用ベクターとして用いることができる。pVR1020プラスミドはpVR1020から誘導され、ヒトtPAシグナル配列を含む。pVR1020は、バイカル社(Vical, Inc., San Diego, CA)から入手できるプラスミド骨格であり、以前に用いられたことがある(例えば米国特許6,451,769号及び7,078,507号を参照されたい)。Oliveiraらの論文に記載されたように、プラスミドpVR2001-TOPO(又はpVR2001-TOPA)は、クローニング部位にフランキングするトポイソメラーゼを付加し、さらに分泌タンパク質の産生の蓋然性を高める分泌シグナルペプチド(例えば組織プラスミノーゲンアクチベーターシグナルペプチド(tPA))のコードを加えて前記を発現させることによって改変されたpVR1020である(Oliveira F et al.)。
【0027】
各プラスミドは本発明のポリヌクレオチドを含むか、収納するか又は本質的に前記ポリヌクレオチドから成り、該ポリヌクレオチドはプロモーターと作動できるように連結されるか、プロモーターの制御下にあるか、又はプロモーターに依存し、ここで前記プロモーターは有利には発現を所望されるポリヌクレオチドに隣接し得る。概して、真核細胞で機能する強力なプロモーターを利用するのが有利である。有用なプロモーターの一例は、ヒト又はネズミ起源の前初期サイトメガロウイルスプロモーター(CMV-IE)であり、このプロモーターは場合によって別の起源(例えばラット又はモルモット)であり得る。該CMV-IEプロモーターは実際のプロモーター部分を含むことができ、エンハンサー部分と結合していても結合していなくてもよい。以下を参照することができる:EP 260 148、EP 323 597、US 5,168,062、5,385,839及び4,968,615並びにWO 87/03905。該CMV-IEプロモーターは有利にはヒトCMV-IE(Boshart M et al.)又はネズミCMV-IEであり得る。より全般的な関係では、プロモーターはウイルス起源でも細胞起源でもよい。本発明の実施で有利に利用できるCMV-IE以外の強力なウイルスプロモーターは、SV40ウイルスの初期/後期プロモーター又はラウス肉腫ウイルスのLTRプロモーターである。本発明の実施で有利に利用できる強力な細胞性プロモーターは、細胞骨格の遺伝子のプロモーター、例えばデスミンプロモーター(Kwissa et al.)又はアクチンプロモーター(Miyazaki et al.)である。これらプロモーターのサブフラグメント(すなわち適切なプロモーター活性を維持するこれらプロモーターの部分)は本発明の範囲内に含まれ、前記は例えばWO98/00166又はUS6,156,567の切端CMV-IEプロモーターであり、本発明の実施に用いることができる。結果として本発明の実施に有用なプロモーターは、完全長のプロモーターの誘導体及び/又はサブフラグメントを含むことができる。前記誘導体及び/又はサブフラグメントは適切なプロモーター活性を維持し、したがってプロモーターとしての機能を維持し、さらに有利には、当該誘導体又はサブフラグメントが誘導された実際の又は完全長のプロモーターの活性と実質的に類似するプロモーター活性を有することができる(例えば完全長CMV-IEプロモーターの活性と比較したときのUS6,156,567の切端CMV-IEプロモーターの活性と類似する)。したがって、本発明の実施に用いられるCMV-IEプロモーターは、完全長プロモーターのプロモーター部分及び/又は完全長プロモーターのエンハンサー部分と同様にその誘導体及び/又はサブフラグメントを含むか、又は本質的に前記から成るか、又は前記から成り得る。
【0028】
有利には、該プラスミドは他の発現制御エレメントを含むか、又は本質的に前記から成る。安定化配列、例えばイントロン配列、例えばhCMV-IEの第一のイントロン(WO89/01036)、ウサギβ-グロビン遺伝子のイントロンII(van Ooyen et al.)を取り入れるのが特に有利である。プラスミド及びポックスウイルス以外のウイルスベクターのためのポリアデニル化シグナル(ポリA)に関しては、ウシ成長ホルモン(bGH)遺伝子のポリ(A)シグナル(US 5,122,458を参照されたい)、又はウサギβ-グロビン遺伝子のポリ(A)シグナル、又はSV40ウイルスのポリ(A)シグナルが有用であり得る。
より広く言えば、本発明は、上記の1つ以上のEHV-1ポリペプチド、変種又はフラグメントをコードするポリヌクレオチド又は遺伝子を入れた任意の組換えウイルスベクター(前記のin vivo発現に必要な任意のエレメントを含む)を含むin vivo発現ベクターを包含する。
該組換えウイルスベクターは、ヘルペスウイルス、例えば上記のウマヘルペスウイルス-1(EHV-1)であり得る。該EHV-1ベクターは、RacH株、RacL株、Ab4株、V592株、ケンタッキーD株(TACC No. VR-700)、438/77株(ATCC No. VR-2229)、AB69株(ATCC No. VR-2581)、EHV-1 NY03株、又はEHV-1 RacH若しくはRacL株の組合せから誘導できる。ある実施態様では、発現されるべきポリヌクレオチドは、真核細胞で機能するプロモーター(有利にはCMV-IEプロモーター(ネズミ又はヒト)の制御下に挿入される。ポリ(A)配列(例えばウシ成長ホルモン又はウサギβ-グロビン遺伝子ポリアデニル化シグナル)及びターミネーター配列を発現されるべきポリヌクレオチドの下流に挿入できる。
【0029】
ある実施態様では、該ウイルスベクターはニューカッスル病ウイルスであり得る(US2012/052089)。別の実施態様では、該ウイルスベクターは、例えばポックスウイルス、特にアビポックスウイルス、例えば鶏痘ウイルス又はカナリアポックスウイルスから選択できる。ある実施態様では、鶏痘ウイルスはTROVACである(WO96/40241を参照されたい)。別の実施態様では、カナリアポックスはALVACである。これら組換えウイルスベクターの使用及び関心のあるポリヌクレオチド又は遺伝子の挿入は、鶏痘についてはUS 5,174,993;US 5,505,941及びUS 5,766,599に、さらにカナリアポックスについてはUS 5,756,103に完全に記載されている。該ウイルスゲノム内の2つ以上の挿入部位を関心のある複数の遺伝子の挿入に用いることができる。
ポックスウイルスベクター系組換えベクターのためには、ワクシニアウイルス又は弱毒ワクシニアウイルス(例えばMVA(ニワトリ胚線維芽細胞でアンカラ(Ankara)ワクチン株の570回を超える継代後に得られた改変アンカラ株)(以下を参照されたい:Stickl & Hochstein-Mintzel;Sutter et al)、ATCC VR-1508として入手できる;又はNYVAC(US 5,494,807及び米国特許5,494,807号を参照されたい(前記文献は、NYVACの構築、さらにコペンハーゲン株ワクシニアウイルスゲノムから欠失したORFが追加されたNYVACの変種、さらにこの組換え体の挿入部位への異種コード核酸分子の挿入、さらにまた適合プロモーターの使用について考察する)、さらにWO96/40241を参照されたい))、アビポックスウイルス又は弱毒アビポックスウイルス(例えばカナリアポックス、鶏痘、鳩痘(dovepox)、ピジョンポックス、ウズラポックス、ALVAC又はTROVAC(例えば米国特許5,505,941号、5,494,807号を参照されたい)を用いることができる。弱毒カナリアポックスウイルスはUS 5,756,103(ALVAC)及びWO 01/05934に記載されている。弱毒鶏痘株TROVACに関するUS5,766,599も参照できる。アクセス番号VR-111でATCCから入手できるカナリアポックスを照会できる。多数の鶏痘ウイルスワクチン株もまた利用できる。前記は、例えばMERIALから市販されているDIFTOSEC CT株及びINTERVETから市販されているNOBILIS VARIOLEである。その組換え体を作製するために用いられる方法、及びその組換え体の投与の仕方に関する情報については、当業者は、本明細書に引用した文書類及びWO90/12882を参照できる。例えばワクシニアウイルスに関しては、とりわけ米国特許4,769,330号、4,722,848号、4,603,112号、5,110,587号、5,494,807号及び5,762,938号が挙げられ、鶏痘に関しては、とりわけ米国特許5,174,993号、5,505,941号及び5,766,599号が挙げられる。該発現ベクターがワクシニアウイルスであるとき、発現されるべき1つのポリヌクレオチド又は複数のポリヌクレオチドの1つの挿入部位又は複数の挿入部位は、有利にはチミジンキナーゼ(TK)遺伝子又は挿入部位、ヘマグルチニン(HA)遺伝子又は挿入部位、A型封入体(ATI)をコードする領域にある。カナリアポックスの事例では、1つの挿入部位又は複数の挿入部位は、有利にはORF C3、C5及び/又はC6である。MVAウイルスの1つの挿入部位又は複数の挿入部位は、有利には多様な刊行物(以下が含まれる:Carroll M. W. et al.;Stittelaar K. J. et al.;Sutter G. et al.)に記載されているとおりである。これに関しては、完全なMVAゲノムはAntoineの論文(Antoine G., Virology)に記載されていることもまた特記する。前記論文は当業者が他の挿入部位又は他のプロモーターを使用することを可能にする。有利には、発現されるべきポリヌクレオチドは、特定のポックスウイルスプロモーター、例えばワクシニアプロモーター7.5kDa(Cochran et al.)、ワクシニアプロモーターI3L(Riviere et al.)、ワクシニアプロモーターHA(Shida)、牛痘プロモーターATI(Funahashi et al.)、ワクシニアプロモーターH6(Taylor J. et al.;Guo P. et al. J.;Perkus M. et al.)の制御下に挿入される。
【0030】
ここに開示するポリヌクレオチドのいずれも適切な宿主細胞へのDNA導入又は発現ベクターによってin vitroで発現させることができる。該宿主細胞は原核細胞でも真核細胞でもよい。“宿主細胞”という用語はまた、対象宿主細胞の任意の子孫を含む。安定な移転(外来ポリヌクレオチドが宿主細胞で持続的に維持されることを意味する)の方法は当業界では公知である。宿主細胞には、細菌(例えば大腸菌(Escherichia coli))、酵母、昆虫細胞、及び脊椎動物細胞が含まれ得る。真核細胞でDNA配列を発現させる方法は当業界で公知である。in vitro発現のための方法に関しては、組換えバキュロウイルスベクター(例えばオートグラファカリフォルニア核多角体病ウイルス(AcNPV))を本明細書に開示した核酸とともに用いることができる。例えばポリヘドリンプロモーターを昆虫細胞とともに用いることができる。昆虫細胞は、例えばスポドプテラ・フルギペルダ(Spodoptera frugiperda)細胞、例えばアクセッション番号CRL1711によりATCCで入手できるSf9細胞又はSf21細胞(例えば以下を参照されたい:Smith et al.;Pennock et al.;Vialard et al.;Verne A.;O'Reilly et al.;Kidd I. M. & Emery V.C.;EP 0370573;EP 0265785;US 4,745,051)である。発現のために、バキュロゴールドスターターパッケージ(BaculoGold Starter Package(Cat # 21001K)、Pharmingen(Becton Dickinson))をベクターとともに用いることができる。例えば、細菌系でクローニングするときは、誘導性プロモーター(例えばアラビノースプロモーター、バクテリオファージラムダのpL、plac、ptrp、pta(ptrp-lacハイブリッドプロモーター)などを用いることができる。組換えDNAによる宿主細胞の形質転換は当業者に周知の通常の技術によって実施できる。該宿主が原核細胞(例えば大腸菌)である場合、コンピテント細胞(DNA取り込み能力を有する)を指数関数増殖期後に採集した細胞から調製し、続いて当業界で周知の手順を用いてCaCl
2方法により処理できる。また別には、MgCl
2又はRbClを用いてもよい。形質転換はまたエレクトロポレーションによって実施できる。該宿主が真核細胞であるときは、リン酸カルシウム沈殿のようなDNA形質導入方法、通常の機械的方法(例えばマイクロインジェクション、エレクトロポレーション、リポソーム封入プラスミドの挿入)、又はウイルスベクターを用いることができる。真核細胞はまた、L.ロンギパルピス(L. Iongipalpis)ポリヌクレオチド配列と一緒に共同形質転換でき、第二の外来DNA分子は選別可能な表現型(例えばヘルペスシンプレックスチミジンキナーゼ遺伝子)をコードする。別の方法は、真核細胞ウイルスベクター(上記参照)、例えばヘルペスウイルス又はアデノウイルス(例えばイヌアデノウイルス2)を用いて、真核細胞を一過性に形質導入してタンパク質を発現させることができる(Gluzman EA)。さらにまた、トランスフェクション剤、例えばジオレオイル-ホスファチジル-エタノールアミン(DOPE)を利用してもよい。
【0031】
組換え発現させたポリペプチドの単離及び精製は以下を含む通常的手段によって実施できる:調製的クロマトグラフィー(例えばサイズ排除、イオン交換、アフィニティクロマトグラフィー)、選別沈殿及び限外ろ過。用いることができる現況技術の例は以下の文献で見出され得る(ただし前記に限定されない):“Protein Purification Applications”, Second Edition, edited by Simon Roe and available at Oxford University Press。そのような組換え発現ポリペプチドは本開示の部分である。上に記載した本発明の任意のポリペプチド製造方法、特に開示のポリヌクレオチドを含む組換え発現ベクター及び宿主細胞の使用もまた包含される。
本発明の組換えウイルスベクターを含むワクチンは、有利には安定剤とともに凍結乾燥できる。凍結乾燥は、周知の標準的な凍結乾燥手順にしたがって実施できる。医薬的に又は獣医的に許容できる安定化剤は、炭水化物(例えばソルビトール、マンニトール、ラクトース、シュクロース、グルコース、デキストラン、トレハロース)、グルタミン酸ナトリウム(Tsvetkov T et al.;Israeli E et al.)、タンパク質(例えばペプトン、アルブミン、ラクトアルブミン又はカゼイン)、タンパク質含有物質(例えば脱脂乳)(Mills C K et al.;Wolff E et al.)及び緩衝剤(例えばリン酸緩衝剤、アルカリ金属リン酸緩衝剤)であり得る。補助剤を用いて凍結乾燥調製物を可溶化することができる。
【0032】
本発明のいずれのワクチン組成物もまた有利には1つ以上のアジュバントを含むことができる。
プラスミド系ワクチンは、陽イオン脂質、有利にはDMRIE(N-(2-ヒドロキシエチル)-N,N-ジメチル-2,3-ビス(テトラデシロキシ)-1-プロパンアンモニウム;WO96/34109)とともに、さらに有利には中性脂質(例えばDOPE(ジオレオイル-ホスファチジル-アタノールアミン;Behr J. P.))と一緒に処方して、DMRIE-DOPEを形成することができる。ある実施態様では、前記混合物は即席かつ投与前に作成され、適切な混合物とするために有利には約10分から約60分、例えば約30分置くことができる。DOPEを用いるときは、DMRIE/DOPEの比率は95/5から5/95であり、有利には1/1である。プラスミド/DMRIE又はDMRIE-DOPEアジュバントの重量比は、例えば50/1から1/10、10/1から1/5、又は1/1から1/2である。
場合によって、サイトカイン(特にGM-CSF)又はサイトカイン誘発Th1(例えばIL12)を該組成物に添加することができる。これらのサイトカインは、サイトカインをコードするプラスミドとして該組成物に添加してもよい。ある実施態様では、サイトカインはイヌ起源であり、例えば、その遺伝子配列がGenBankデータベースに寄託されてあるGM-CSF(アクセッション番号S49738)である。前記の配列を用いて、WO00/77210で作製されたプラスミドと同様な態様で前記プラスミドを作製することができる。
【0033】
組換えウイルスベクター系ワクチンはfMLP(N-ホルミル-メチオニル-ロイシル-フェニルアラニン;US 6,017,537)及び/又はカルボマー(Carbomaer)アジュバント(Phameuropa Vol. 8, No. 2, June 1996)と混合することができる。当業者はまたUS 2,909,462を参照できる。前記文献は、少なくとも3つのヒドロキシル基(有利には8つを超えない)を有するポリヒドロキシル化化合物で架橋され、少なくとも3つのヒドロキシルの水素が少なくとも2つの炭素原子を有する不飽和脂肪族ラジカルによって置換されてあるアクリルポリマーを記載する。例えば該ラジカルは2から4つの炭素原子を含むもの、例えばビニル、アリル、及び他のエチレン系不飽和基である。該不飽和ラジカルはそれ自体他の置換基、例えばメチルを含むことができる。CARBOPOL(商標)(BF Goodrich, Ohio, USA)の名称で販売される製品が適切である。該製品は、アリルシュクロースで又はアリルペンタエリトリトールで架橋される。それらのうち、有利にはCarbopo(商標)974P、934P及び971Pを挙げることができる。
無水マレイン酸及びアルケニル誘導体のコポリマーのうち、下記のコポリマーEMA(商標)(Monsanto)が有利であり、
【0035】
前記は無水マレイン酸及びエチレンの線状又は架橋コポリマーであり、例えばジビニルエーテルで架橋される。J. Fieldsらの論文を参照できる。
アクリル酸又はメタクリル酸のポリマー及びコポリマーEMA(商標)は、例えば下記式の基本ユニットから形成され、ここで、
−R
1及びR
2(前記は同一又は別個であり、H又はCH3である);
−x=0又は1で、好ましくはx=1であり;
−y=1又は2で、x+y=2である。
コポリマーEMA(商標)については、x=0及びy=2である。カルボマーについては、x=y=1である。
【0036】
これらのポリマーの水への溶解は酸性溶液をもたらし、前記は(好ましくは生理学的pHに)中和され、該ワクチンそのものが取り込まれるアジュバント溶液が提供される。続いて該ポリマーのカルボキシル基は部分的にCOO
-形となる。
ある実施態様では、アジュバント、特にカルボマーの溶液(Pharmeuropa, vol. 8, No.2, June 1996)は、蒸留水で有利には塩化ナトリウムの存在下で調製され、得られた溶液は酸性pHにある。このストック溶液は、前記をNaCl添加水(有利には生理学的食塩水(NaCl 9g/L))の所望の量又はその実質的な部分に(所望の最終濃度を得るために)いくつかの部分ごとに一気に添加することによって稀釈され、同時に又は引き続いて有利にはNaOHにより中和される(pH7.3から7.4)。生理学的pHの前記文献は参照により本明細書に含まれる溶液がワクチンとの混合に用いられ、前記は特に凍結乾燥形、液体形又は凍結形で保存される。
最終ワクチン組成物のポリマー濃度は0.01%から2%w/v、0.06%から1%w/v、又は0.1%から0.6%w/vであり得る。
【0037】
サブユニットワクチンはアジュバントと混合でき、前記は例えば、鉱物油及び/又は植物油及び非イオン性界面活性剤(例えばブロックコポリマー、TWEEN(商標)、SPAN(商標))を基剤とした水中油、水中油中水エマルジョンである。そのようなエマルジョンは特に、下記文献(“Vaccine Design - The Subunit and Adjuvant Approach”, Pharmaceutical Biotechnology, 1995)の147ページに記載されたもの、又はTSエマルジョン(特にTS6エマルジョン)、及びLFエマルジョン(特にLF2エマルジョン)である(TS及びLFエマルジョンの両エマルジョンについてはWO04/024027を参照されたい)。他の適切なアジュバントは、例えばビタミンE、サポニン、及びCARBOPOL(商標)(Noveon;WO 99/51269、WO 99/44633を参照されたい)、水酸化アルミニウム又はリン酸アルミニウム(“Vaccine Design, The subunit and adjuvant approach”, Pharmaceutical Biotechnology, vol. 6, 1995)、生物学的アジュバント、すなわちC4b、特にネズミC4b(Ogata R T et al.)又はウマC4b、GM-CSF(特にウマGM-CSF(US6,645,740))、毒素(すなわちコレラ毒素CTA又はCTB、大腸菌易熱性毒素LTA又はLTB(Olsen C W et al.;Fingerut E et al.;Zurbriggen R et al.;Peppoloni S et al.))、及びCpG(すなわちCpG#2395(Jurk M et al.)、CpG#2142(EP1,221,955の配列番号:890を参照されたい)である。
該組成物又はワクチンはまた、少なくとも1つのEHV-1抗原、例えば不活化EHV-1と結合させることができる。ある具体的な実施態様では、EHV-1株は、RacH株、RacL株、Ab4株、V592株、ケンタッキーD株(TACC No. VR-700)、438/77株(ATCC No. VR-2229)、AB69株(ATCC No. VR-2581)、EHV-1NY03株、又はEHV-1 RacH若しくはRacL株の組合せである。EHV-1のこれらの株は化学的又は物理的方法によって不活化できる。化学的方法は特にBPL、ホルムアルデヒドである。物理的方法は特に超音波処理であり得る。不活化EHV-1ワクチンは、アジュバント(例えばサブユニットワクチンについて先に記載したもの)と混合することができる。
【0038】
本発明の別の特徴は、本明細書に開示するワクチン又は組成物を用いEHV-1に対して宿主をワクチン免疫する方法に関する。
該宿主は任意の動物である。ある実施態様では、宿主はウマである。投与ルートは、例えば筋肉内(IM)又は皮内(ID)又は経皮(TD)又は皮下(SC)であり得る。投与手段は、例えば有針注射筒、又は無針装置、又はエレクトロトランスファー(ET)処置と結合させた有針注射筒、又はET処置と結合させた無針装置であり得る。
プラスミド系ワクチンについては、有利な投与ルートはID又はIMであり得る。この投与は有針注射筒又は無針装置の使用によることができ、前記は、例えばデルモジェット(Dermojet)又はバイオジェクター(Biojector)(Bioject, Oregon, USA)、又はベトジェット(商標)(Vetjet
TM)(Merial)又はビタジェット(商標)(Vitajet
TM)(Bioject Inc.)である(US2006/0034867を参照されたい)。投薬量は50μgから500μg/プラスミドであり得る。DMRIE-DOPEが添加されるときは、100μg/プラスミドを用いることができる。GM-CSF又は他のサイトカインが用いられるときは、このタンパク質をコードするプラスミドは、約200μgから約500μgの投薬量で存在でき、200μgでもよい。用量体積は0.01mLから0.5mLで、例えば0.25mLであり得る。投与はマルチポイント注射により提供できる。
また別には、プラスミド系ワクチンは、エレクトロトランスファー(ET)処置と結合させたIMにより投与され得る。該ET処置は、エレクトロトランスファーのための装置及び製造業者(すなわちSphergen G250 generator(Sphergen SARL, Evry Genopole, France);MedPulser(商標) DNA electroporation system (Innovio Biomedical Corporation, San Diego, California, USA))の仕様書を用いて実施できる。
【0039】
組換えウイルスベクター系については、投与ルートは有利にはSC、IM、TD又はIDであり得る。この投与は有針注射筒又は無針装置を用いて実施でき、前記は、例えばデルモジェット又はバイオジェクター(Bioject, Oregon, USA)、又はベトジェット(商標)(Merial)又はビタジェット(商標)(Bioject Inc.)である。投薬量は約10
4pfuから約10
9pfu /組換えEHVベクターであり得る。用量体積は約0.01mLから0.2mLで、有利には0.1mLである。投与はマルチポイント注射を含むことができる。
IMルートのためには、提供されるワクチンの体積は0.2から2mL、特に約0.5から1mLであり得る。同じ投薬量が本発明のベクターのいずれにも利用される。
サブユニットワクチンについては、投与ルートは有利にはSC又はIM又はTD又はIDであり得る。この投与は有針注射筒又は無針装置を用いて実施でき、前記は、例えばデルモジェット又はバイオジェクター(Bioject, Oregon, USA)、又はベトジェット(商標)(Merial)又はビタジェット(商標)(Bioject Inc.)である。投薬量は約50から500μg、特に約50から約150μg、より好ましくは約50から約100μgであり得る。提供されるサブユニットワクチンの体積は0.2から2mL、特に約0.5から1mLである。
【0040】
ある特徴では、本発明は、プライム-ブースト投与スケジュールを土台とするワクチン戦術に関し、ここで該プライム投与及びブースト投与は、医薬的又は獣医的に許容できる賦形剤、希釈剤、アジュバント又はベヒクル及び本発明の組換えEHV-1を含む組成物を利用する。別の特徴では、本発明は、EHV-1に感受性を有する対象動物又は宿主をワクチン免疫する方法に関し、前記方法はプライム-ブースト投与スケジュールを含む。
プライム-ブースト投与スケジュールは、少なくとも1つの共通の抗原及び/又はその変種又はフラグメントを用いる、少なくとも1回のプライム投与及び少なくとも1回のブースト投与を含む。プライム投与に用いられるワクチンは後のブースターワクチンとして用いられるものと性質が異なっていてもよい。さらにまた、プライム投与及びブースト投与の両方が本発明の組換えEHV-1を含み得ることを特記する。プライム投与は1回以上の投与を含むことができる。同様に、ブースト投与も1回以上の投与を含むことができる。
投与ルート、用量及び体積は先に本明細書で開示されている。
該プライム-ブースト投与は、2から6週間離して、例えば4週間離して実施できる。ある実施態様にしたがえば、1年に2回のブースター又は1年に1回のブースターもまた想定される。
【0041】
ある実施態様では、プライム-ブースト投与スケジュールは、本発明の組換えEHV-1ワクチン又は組成物の少なくとも1回のプライム投与、及びEHV-1抗原を含む不活化ウイルスワクチン、又はEHV-1抗原を発現するプラスミド系ワクチン、又はEHV-1抗原を含むサブユニットワクチン、又は前記の組合せの少なくとも1回のブースト投与を含む。
別の実施態様では、プライム-ブースト投与スケジュールは、EHV-1抗原を含む不活化ウイルスワクチン、又はEHV-1抗原を発現するプラスミド系ワクチン、又はEHV-1抗原を含むサブユニットワクチン、又は前記の組合せの少なくとも1回のプライム投与、及び本発明の組換えEHV-1ワクチン又は組成物の少なくとも1回のブースト投与を含む。
本発明の別の特徴は、本発明のプライム-ブーストワクチン免疫のためのキットに関する。該キットは少なくとも2つのバイアルを含み、第一のバイアルは本発明のプライムワクチン免疫用ワクチンを入れ、さらに第二のバイアルは本発明のブーストワクチン免疫用ワクチンを入れる。該キットは、有利には追加のプライムワクチン免疫用又は追加のブーストワクチン免疫用の追加された第一又は第二のバイアルを含むことができる。
ある実施態様では、該キットは2つのバイアルを含むことができ、1つは本発明のプライムワクチン免疫用プラスミド系ワクチンを入れ、他方のバイアルは本発明のブーストワクチン免疫用組換えウイルスベクター系ワクチンを入れる。
本発明をこれから下記の非限定的な実施例の方法によってさらに説明する。
【0042】
実施例
先行する説明を用いて、当業者は、更なる骨折りを行うことなく本発明を完全に実施し得ると考える。以下の詳細な実施例は単なる例示であり、どのような態様であっても先行する開示を限定するものと解されるべきではない。当業者は、反応物質、反応条件及び技術のいずれに関しても前述の方法から適切な変型をたちどころに認識し得よう。
DNA挿入物、プラスミド及び組換えウイルスベクターの構築は、J. Sambrookらが記載した標準的な分子生物学の技術を用いて実施した(J. Sambrook et al., Molecular Cloning: A Laboratory Manual, 2nd Edition, Cold Spring Harbor Laboratory, Cold Spring Harbor, New York, 1989)。本発明に用いた全ての制限フラグメントは、“ジーンクリーン”(“Geneclean”)キット(BIO 101 Inc., La Jolla, Calif.)を用いて単離された。
【実施例1】
【0043】
細胞株RK13_Polの構築
細胞及びウイルス:
ウサギ腎(RK13)細胞は、10%熱不活化ウシ胎児血清(FBS)、100U/mLペニシリン及び0.1mg/mLストレプトマイシン(1%Pen/Strep)を補充したアール最少必須培養液(Earle’s minimum essential medium;EMEM)で維持した。ウマ皮膚線維芽細胞株(NBL6)は、10%FBS、29mg/mLのL-グルタミン、1%Pen/Strep及び1%非必須アミノ酸(Gibco BRL)を補充したEMEMで維持した。EHV-1株RacL11及びNY03は新鮮なRK13細胞で増殖させた。NY03(非神経性DNAポリメラーゼ型(N752Pol)を保有する)は、2003年にニューヨークの農場で流産した仔ウマから単離された。
細胞株RK13_Polの構築:
Pol陰性RacL11変異体の増殖を支援するために、非神経性ポリメラーゼ型(N752)を発現するRK13_Polと称されるウサギ腎細胞株を先ず初めに作製した。NY03のポリメラーゼオープンリーディングフレーム全体、をウイルス感染RK13細胞から抽出したウイルスゲノムDNAから増幅した。ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)はアキュプライム(Accuprime)DNAポリメラーゼ(Invitrogen, Carlsbad, CA, USA)及びプライマー対PN1/PN2(表1)を用いて実施した。アンプリコン(5’末端でHindIII制限部位とフランキングし、さらに3’末端でBamHI部位及びHAタグとフランキングする)をプラスミドpCDNA3でクローニングしてpCDNA3-Polを作製した。PvuIで消化した後、4μgの組換えプラスミドpCDNA3-Polを線状化し、6ウェルプレートで増殖させたRK13にリポフェクタミン(Lipofectamine 2000;Invitrogen)を用いてトランスフェクトした。トランスフェクト細胞を10%FBS及び1.2mg/mLのG418(Merck)を含むEMEMで増殖させた。各細胞が間接免疫蛍光アッセイ(IFA)でDNAポリメラーゼの発現を示す一細胞クローンを選別し、RK13_Polと名付けた。抗HA MAbを用いたIFAによって、RK13_Polにおけるポリメラーゼの発現が示され(
図13)、さらに10回の継代で安定であることが示された。
【0044】
【表1】
【実施例2】
【0045】
プラスミド及びウイルスの変異導入
ウイルス変異体の作製:
全ての遺伝子操作に通常の相同性組換え方法を利用した。DNAポリメラーゼのどちらかの側の2つの1.7kbフランキングフラグメントを、熱安定性Pfuポリメラーゼ(Promega)及びプライマー対P1/P2及びP3/P4を用いてRacL11ゲノムから増幅させた。別の2つのプライマー対P5/P6及びP7/P8を用いて、HCMV(ヒトサイトメガロウイルス)プロモーター及びEYFP(強化黄色蛍光タンパク質)遺伝子をプラスミドpEYFP-N1から別々に増幅させた。P2及びP5、P3及びP8、並びにP6及びP7の5’末端は21−23bpの相同な配列を保持する。P5及びP8を用いたオーバーラップPCRにより、HCMVプロモーター及びEYFP遺伝子を融合させ、pCR2.1-Topo(Invitrogen)でクローニングしてpCES1を得た。シャトルプラスミドpCR-Topo-P1P4の構築のために、上記2つのホモローグアーム及びpCES1のEYFP発現カセットを、プライマーP1/P4を用いたオーバーラップPCRによって結合させ、pCR2.1-Topoでクローニングした。pCES1を鋳型として、さらにプライマー対P9/P10を用いて、SacII及びNheI制限部位にフランキングされるEYFPカセット、および、上流と下流のLoxP配列を増幅し、pCR2.1-TopoでクローニングしてプラスミドpCES2を得た。プラスミドpCR-Topo-gCを作製するために、5.87kbpのgC含有フラグメント(プライマーgC-1及びgC-2を用いてRacL11ゲノムから増幅させた)をpCR2.1-Topoでクローニングした。SacII及びNheIで消化した後、EYFPカセットをpCES2から遊離させ、さらにpCR-Topo-gCに移してgC遺伝子と置き換え、この組換えシャトルプラスミドをTopo-ΔgC-EYFPと名付けた。プラスミドpCES1、pCES2、pCR-Topo-P1P4及びTopo-ΔgC-EYFPは消化及びシークェンシングによって同定した。このクローニングの模式図は
図2に示されている。
【0046】
DNAポリメラーゼの変異のために、1μgのRacL11ウイルスDNA及び10μgのプラスミドpCR-Topo-P1P4を、6ウェルプレートのRK13_Pol細胞にリン酸カルシウム沈殿によって共同トランスフェクトした。トランスフェクション2日後に、緑色プラークを蛍光顕微鏡(Axiovert 25, Zeiss)下で観察した。2サイクルの凍結融解の後で全ウイルスを採集し、新鮮なRK13_Pol細胞で増殖させ、前記細胞を感染1時間後にEMEM-2%FBS中の1.5%メチルセルロースで重層した。3回精製した後で、均質なPol陰性RacL11変異体(L11_ΔPol EYFPと称する)が得られ、制限フラグメントの長さの多形性分析(RFLP)を用いて同定した。N752Polの再生のために、7kbpのフラグメント(p1p4polと称される)を、アキュプライムタグ(Accuprime Tag)ポリメラーゼ及びプライマーP1/P4を用いてEHV-1 NY03ゲノムから増幅させた。1μgのL11_ΔPol EYFPウイルスDNA及び4μgのp1p4pol PCR生成物をRK13細胞に共同トランスフェクトすることによって、再度、相同組換えを用いてN752 Pol変種を導入し、RacL11変異体L11_D752Nが得られた。ポリメラーゼのD752からN752への変異は780bpのPolフラグメントのシークェンシングによって確認した(
図2D)(前記フラグメントはシークェンシングプライマーpoly1及びpoly2を用いてL11_D752Nから増幅した)。
【0047】
次の工程は、gCのオープンリーディングフレームをL11_D752N変異体から欠失させることであった。簡単に記せば、1μgのL11_D752NウイルスDNA及び10μgのトランスファープラスミドTopo-ΔgC-EYFPをRK13細胞に共トランスフェクションした。gC遺伝子のSacII/NheIフラグメント(1.2kbpの長さ)がEYFPカセットによって置き換えられ、組換えウイルスL11_D752NΔgC EYFPが生成された。L11_D752NΔgC EYFP 及びプラスミドpCAGGS-NLS/CreをRK13細胞に共トランスフェクションしてCreリコンビナーゼを発現させることによってEYFP選別マーカーを切り出した。白色プラークを精製して、gC陰性、非神経性RacL11変異体L11_D752NΔgCを最終的に操作した。L11_D752NΔgC EYFPウイルスDNAとプラスミドpCR-Topo-gCとの間の相同組換えによってgC遺伝子を修復し、gC復帰変異体L11_D752NΔgCrevを得た(
図2)。gC遺伝子の欠失及びgCタンパク質の欠如は、プライマー対gC-1/gC-2及びΔgC-1/ΔgC-2を用いたPCR同定、シークェンシング、及び間接免疫蛍光アッセイ(IFA)によって確認した。
プラスミドの構築及びシークェンシングに用いた全てのプライマーは表1に列挙した。
【0048】
間接免疫蛍光アッセイ(IFA):
RK13_Pol細胞で発現されたDNAポリメラーゼの検出のために、HA Tagに対するモノクローナル抗体(MAb)(H3663, Sigma)を用いた。6ウェルプレートで増殖させたRK13_Pol細胞をリン酸緩衝食塩水(PBS)で洗浄し、PBS中の3.5%パラホルムアルデヒドで室温(RT)にて1時間固定し、続いて30mMグリシン含有PBSに5分インキュベートし、PBS中の0.1%トリトンX-100をさらに5分浸透させた。PBSで洗浄した後、細胞をPBS-3%ウシ血清アルブミン(BSA)で30分、室温でブロッキングした。続いて細胞をPBS-3%BSAで1:10000に稀釈した一次抗体と1時間 RTでインキュベートし、さらにPBSで十二分に洗浄した。PBS-3%BSAで1:2000に稀釈した二次抗体(Alexa Fluor568-結合ヤギ抗マウスIgG, Invitrogen)を添加し、RTで1時間インキュベートした。10分間ずつ3回十分に洗浄した後、蛍光シグナルを倒立蛍光顕微鏡(Axiovert 25, Zeiss)下で精査した。
gCタンパク質の欠如を確認するために、RK13細胞を6ウェルプレートに播種し、野生型RacL11、変異体L11_D752NΔgC又はgC復帰体L11_D752NΔgCrevを0.0001の感染多重度(MOI)で感染させた。感染1時間後に、ウイルスを除去し、感染細胞にEMEM-2%FBS中の1.5%メチルセルロースを重層した。37℃で48時間インキュベートした後、細胞を固定し、上記のようにブロッキングした。EHV-1 gCタンパク質に対するMAb 1G4及びEHV-1 gMタンパク質に対するMAb B8を一次抗体としてそれぞれ1:100及び1:200の稀釈で用いた。二次抗体(Alexa Fluor568-結合ヤギ抗マウスIgG)と1時間インキュベートした後、細胞を洗浄し、プラークを観察した。
【0049】
ウイルス変異体の性状決定:
RacL11ウイルスDNA及びシャトルプラスミドpCR-Topo-P1P4をRK13_Polに共同トランスフェクトすることによって、真性ポリメラーゼ遺伝子をEYFPで置き換えてPol陰性ウイルス変異体L11_ΔPol EYFPを作製した。L11_ΔPol EYFPはRK13_Polでのみ増殖できるが、非補完性RK13細胞では増殖できないことが見出された(
図4)。このことは、DNAポリメラーゼはEHV-1のin vitroウイルス増殖に必須であることを立証する。続いて、神経性D752から非神経性N752遺伝子型への変異を、EHV-1 NY03の非神経性ポリメラーゼ遺伝子のL11_ΔPol EYFPへ復帰によって達成した。一アミノ酸変更は、変異体L11_D752Nの780bpアンプリコンのシークェンシングによって確認した。L11_D752Nをもとにして、gC遺伝子の1222bpフラグメント(ヌクレオチド94位から1315位)を表すSacII/NheI領域をEYFPで置き換え、gC陰性中間体L11_D752NΔgC EYFPを得た。Creの発現によって、最終的にEYFPカセットを切り出し、当該操作変異体L11_D752NΔgCのSacIIとNheI制限部の間に1コピーのLoxP配列(34bp)を残した。gC遺伝子内の当該欠失を確認するために、PCRを実施した。親変異体L11_D752Nから、プライマー対gC-1/gC-2及びΔgC-1/ΔgC-2を用いて5.87kbp及び1.6kbpフラグメントを増幅できたが、しかしながらL11_D752NΔgCからは4.68kbp及び410bpフラグメントが増幅され(
図2)、gC遺伝子内に1.2kbpの欠失が存在することを示唆した。抗EHV-1gCモノクローナル抗体を用いたIFAによって、gCタンパク質は、RacL11又は復帰体L11_D752NΔgCrevに感染した細胞で検出できるが、L11_D752NΔgC感染細胞では検出できず、gCタンパク質の発現が停止したことを示すことができた(
図5)。gC陰性で非神経性RacL11変異体の作製はしたがって成功した。
【実施例3】
【0050】
in vitroウイルス増殖の性状決定
ウイルス吸着アッセイ:
ウイルス吸着アッセイは、Sunらの記載にわずかな改変を加えて実施した(Sun et al., J Gen Virol 77, 493-500, 1996)。6ウェルプレートに播種したRK13細胞単層を4℃で1時間冷却し、RacL11、L11_D752N、L11_D752NΔgC又はL11_D752NΔgCrevをウェル当たり400プラーク形成単位(PFU)のMOIで感染させた。種々の時間にわたって(0、15、30、60、120、240分)吸着させるために、ウイルスは4℃でそのままにした。種々の時点で、感染細胞をPBSで3回洗浄し、2%FBS及び1.5%メチルセルロースを含むEMEMを重層した。3日間37℃でインキュベートした後、細胞を10%ホルムアルデヒドで固定し、0.3%のクリスタルバイオレットで染色した。プラークを数え、240分の時点(100%吸着と設定)と比較した各時点でのウイルス吸着パーセンテージを計算した。
プラークサイズ及び一段階増殖カイネティクス:
プラークサイズを比較するために、6ウェルプレートに増殖させたRK13細胞にRacL11野生型及び変異体L11_D752N、L11_D752NΔgC又はL11_D752NΔgCrevを0.0001のMOIで感染させ、感染2時間後に、2%FBS含有EMEM中の1.5%メチルセルロースを重層した。感染3日後に、抗EHV-1 gMモノクローナル抗体B8を用いIFAによってプラークを可視化させた。各ウイルスについて、50プラークを撮影し、平均プラーク面積をイメージJソフト(http://rsb.info.nih.gov/ij/)を用いて測定した。RacL11によって生じたプラークサイズを100%に設定した。平均パーセンテージ及び標準偏差を3つの独立した実験から計算した。一段階増殖カイネティクスアッセイのために、24枚のプレートに播種したRK13細胞を3のMOIで感染させた。ウイルスを4℃で1時間吸着させ、その後37℃で1.5時間の侵入工程が続いた。PBSで2回洗浄した後、感染細胞を氷冷クエン酸緩衝食塩水(CBS;pH3.0)で3分間処理して表面のウイルスを除去した。種々の時点(感染後0、4、8、12、24、36、48時間)で、上清及び細胞を別々に収集した。通常のプラークアッセイを用いて、細胞外及び細胞結合ウイルス力価を決定した。
in vitro増殖特性:
種々のウイルス変異体の培養細胞におけるin vitro増殖特性を分析した。L11_D752NΔgCの標的細胞との結合能力におけるgC欠失の影響を精査するために、吸着アッセイを実施した。予想したように、L11_D752NΔgCは、野生型RacL11、親ウイルスL11_D752N又は復帰体L11_D752NΔgCrevと比較したとき、RK13細胞に対してより低い効率の結合を示した(
図6)。細胞から細胞へ拡散するL11_D752NΔgCの能力はプラークサイズの比較によって決定した。野生型、親ウイルス及びgC復帰体間で顕著な相違は認められなかったが、しかしながらL11_D752NΔgCによって形成される相対的プラーク面積は他のものの面積よりも10%大きく(p<0.0001)、gCの欠如によりHEV-1の細胞から細胞への拡散はより効率的でさえあることを示唆している。増殖カイネティクスに関しては、L11_D752NΔgCのin vitro複製は、野生型、親ウイルス又はgC復帰体と比較した細胞外力価及び細胞内力価(それぞれ約20倍及び10倍低下した)によって示されるように効率が低下した(
図8)。野生型RacL11、親ウイルスL11_D752N又は修復されたL11_D752NΔgCrevに感染した細胞培養上清のウイルス力価は、感染後約12時間で細胞内力価の値に達した。しかしながら、L11_D752NΔgC感染細胞では、感染性子孫の放出の遅れは、感染の16−18時間後に細胞外力価が細胞内力価を超えるということによって認められた。これらの結果から、L11_D752NΔgCはわずかに大きなプラークを形成できるが、そのin vitro増殖はウイルス結合及び放出において損なわれていると結論することができよう。
【実施例4】
【0051】
マウスのワクチン免疫
野生型RacL11並びに変異体L11_D752N、L11_D752NΔgC及びL11_D752NΔgCrevを27,000rpmで1時間超遠心分離によって精製した。ペレットをPBSに懸濁し、新鮮なRK13細胞で滴定し、適量に小分けして使用まで-70℃で保存した。3週齢の雌のBALB/cマウス(Harlan)をそれぞれ16匹ずつ5グループにランダムに割り当て、互いに環境に順応させるために、生物安全性レベル2の施設で1週間維持した。0日目に全マウスの体重を測定し、0.1mL/10gのキシラジン/ケタミンで麻酔し、4グループの鼻内(IN)に20μLのPBS中に1x10
5 PFUの用量の各ウイルスを接種した。最後のグループは陰性コントロールとして用い、20μLのPBSを投与した。各マウスの体重を接種後(p.i.)14日まで調べた。各グループから3匹のマウスを2日目及び4日目に安楽死させた。肺を取り出し、その一部分を均質化してRK13細胞での標準的な滴定によるウイルス力価の決定に用い、残りを10%ホルムアルデヒドで固定し、組織病理学的分析のために処理した。28日目に、鼻内ルートによりマウスを1x10
5 PFUの用量の野生型RacL11でチャレンジした。個々の体重データは2週間収集した。チャレンジ後(p.c.)2日目及び4日目に、各グループの3匹のマウスを安楽死させ、肺を取り出した。均質化後に肺組織のウイルス力価を新鮮なRK13細胞で決定した。
接種後2日目に、RacL11、L11_D752N又はL11_D752NΔgCrev感染肺の平均ウイルス力価は、それぞれ5366 PFU/mg、3450 PFU/mg及び4800 PFU/mgに達し(
図9)、前記力価間に統計的に有意な相違は認められなかった(pは0.442以上)。この結果は、DNAポリメラーゼにおけるD752からN752への一アミノ酸変更はマウスのEHV-1のin vivo増殖を損なわないことを示し、これは以前の発見(Goodman et al., 2007)と一致した。対照的に、gC陰性変異体L11_D752NΔgCのin vivo複製の効率は有意に低下し(p<0.001)、平均ウイルス力価は肺組織でわずかに0.45 PFU/mgであった。接種後4日目には、L11_D752NΔgC感染マウスからウイルスは回収できなかった。接種後2日目の組織病理学的変化に関しては、野生型RacL11又はポリメラーゼ陰性変異体L11_D752N感染マウスの肺は軽度の化膿性肺炎を示し、好中球浸潤、血管周囲浮腫の亢進並びにリンパ管及び血管周囲領域の炎症性細胞(主としてリンパ球)数の増加を伴ったが、L11_D752NΔgC感染肺及びPBS肺では異常は検出されなかった(
図10)。炎症応答の結果として、RacL11、L11_D752N又は救済ウイルスL11_D752NΔgCrev感染マウスの持続的な体重減少が接種後3日まで観察された。しかしながら、L11_D752NΔgC感染マウスの体重は明白な減少を示さなかった。接種後28日目に、RacL11を全マウスの鼻内にチャレンジした。チャレンジ2日後、RacL11は偽接種マウスの肺で2100PFU/mLの力価まで複製したが、L11_D752NΔgCグループではわずかに18.8PFU/mLであった(
図9)。チャレンジ後2日目のRacL11、L11_D752N又はL11_D752NΔgCrev接種マウスの肺におけるウイルス力価はさらに低くかったが(0.5、0.9及び1.3PFU/mL、
図9)、しかしながら前記は高い増殖効率及びin vivo病原性の代償であった。4日目に、L11_D752NΔgCグループからのウイルスの再単離は不成功であった。これらの結果から、我々は、gC陰性、非神経性変異体L11_D752NΔgCは極めて弱毒化され、マウスで非病原性であるが、防御免疫を付与できると結論した。
【実施例5】
【0052】
ウマのワクチン免疫
ウマ(6から8カ月齢の仔ウマ)をA、B及びCの3グループに分けた。グループAは、gC遺伝子を欠失させた生弱毒EHV-1ウイルス(L11_D752NΔgC)で処置した。グループBは生弱毒EHV-1ウイルス(RacL11)で処置した。グループCはコントロールグループであった。ワクチン接種及びサンプル採取は表2に示すスケジュールにしたがって。
【0053】
【表2】
【0054】
仔ウマは両ワクチンに良好な寛容を示した。前記ワクチンウイルス株はウイルス単離でいずれのサンプルでも検出できなかった。EHV-1に対するSN及びCF抗体力価の欠如によって立証されたように、コントロールのウマはチャレンジの時点まで血清変換を示さなかった。グループA及びBのウマは最初のワクチン接種に対してSN応答を上昇させ、前記は第二のワクチン接種でさらに押し上げられた。両方のウマグループのCF抗体力価は最初のワクチン接種後には低いか又は検出不能のままで、第二のワクチン接種後に増加したが、高レベルには決して到達しなかった(
図11)。
コントロールのウマのチャレンジ後の臨床徴候には、三相発熱応答及び中等度から重度の鼻汁排出を特徴とする呼吸器症状が含まれた。対照的に、高熱が両ワクチングループのウマで単に偶発的に見出され、鼻汁排出は重篤さと持続期間において軽減された。ワクチン接種の顕著な効果は、グループ1及び2の両グループでチャレンジ後の5/8のウマにおけるウイルス血症の完全な欠如であった(
図12)。さらにまた、コントロールのウマと比較して、ワクチン接種グループでウイルス血症の持続期間が短縮された。
図13は、グループAは鼻拭き取り検体でウイルス排出を顕著に軽減するが、グループBにおける鼻のウイルス排出はより変動性であり、しかしながらコントロールのウマと比較してウイルス排出は減少することを示している。
【実施例6】
【0055】
RacL11 gC遺伝子のシークェンシング
RacL11のgC遺伝子のシークェンシングを実施し、それぞれDNA及びタンパク質配列のための配列番号:34及び配列番号:35によって提示される。
記載した方法の厳密な細目は、本開示の範囲を逸脱することなく変更及び改変し得ることは明白であろう。我々は、下記の特許請求の範囲及び趣旨に含まれる全ての改変及び変更を特許請求する。
本明細書で引用及び参照した全ての文書類(“本明細書の引用文書類”)及び本明細書の引用文書類中に引用又は参照されている全ての文書類は、本明細書に記載した任意の製品に関する任意の製造業者の指示書、明細書、製品仕様書、及び製品明細書、並びに本明細書に参照により含まれる一切の文書類と併せて参照により本明細書に含まれ、さらに本発明の実施に用いることができる。