(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
車両ボディに設けたボディ開口部に固定された固定ガラスと、該固定ガラスに設けたガラス開口部を開閉可能な可動ガラスと、該可動ガラスを閉じ位置でロックするロック装置を備え、前記可動ガラスは、前記固定ガラスに設けた一対の案内レール間にスライド可能に支持されて、前記固定ガラスと面一状態で前記ガラス開口部を閉止する閉じ位置と、前記固定ガラスの車室内側面に沿って重ね合わせ状態に位置して前記ガラス開口部を開放する開放位置との間を移動可能としたウィンドであって、
前記ロック装置は、前記案内レールの案内溝に対して深さ方向に進退してロック位置とアンロック位置に移動するロックピンを備えており、前記案内溝に、該ロックピンが前記ロック位置から前記アンロック位置に移動すると、当該ロックピンに側方に突き出して設けた係合部が案内傾斜面に摺接されて当該ロックピンを車室内側へ変位させるロックピン変位部を設けて、
前記ロック装置のロック解除ハンドルを、前記可動ガラスの開き方向に一致する方向に解除操作すると、前記ロックピン変位部において前記ロックピンが前記アンロック位置に移動するとともに車室内側から後方へ案内されることにより、前記可動ガラスの後部側が車室内側に変位しつつ開き側へ案内されて、前記可動ガラスを前記閉じ位置から車室内側へ変位させる構成としたウィンド。
請求項1記載のウィンドであって、前記案内傾斜面は前記ロックピンを車室内側と前記開放位置側との合成方向へ変位させる方向に傾斜して設けられており、前記ロック装置のロック解除ハンドルの解除操作により、前記ロックピンの係合部を前記案内傾斜面に摺接させて、前記可動ガラスを前記閉じ位置から車室内側へ変位させつつ前記開放位置側へ変位させる構成としたウィンド。
請求項1又は2記載のウィンドであって、前記可動ガラスは、その上部及び下部に設けた支持脚部を、前記固定ガラスに設けた上下一対の案内レールの案内溝に挿入して車両前後方向にスライド可能に支持されており、前記案内溝の底面を車幅方向に傾斜させ、該底面に前記各支持脚部を当接させて前記案内溝の側壁部に当接させる構成としたウィンド。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、従来のサイドウィンド30には次のような解決すべき課題があった。
図13に示すようにこの種のサイドウィンド30では、走行時の空気抵抗の低減や騒音の発生を防止するために可動ガラス35が固定ガラス31に対して面一に閉じられる構成とするものがある。このため、この閉じ形態のサイドウィンド30では、可動ガラス35を開く際には、乗員がロック解除ハンドル34aを後方へ押し込み操作(操作S1)してロック装置34を解除した後に、可動ガラス35をその板厚方向車室内側に変位させ(操作S2)、その後車両後方にスライド(操作S3)させて固定ガラスの車室内側に沿って重ね合わせ状態とすることにより開放することができる。
このように従来のサイドウィンド30では、可動ガラス35を開放する際には、乗員は三つの操作S1〜S3を行う必要があり、操作S2の操作方向が他の操作S1,S3とは異なることもあいまって当該可動ガラス35の開放操作が面倒でその取り扱い性を改善する必要があった。
本発明は、係る従来のウィンドの問題を解消するためになされたもので、特に可動ガラスの開操作時の操作性を改善することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記の課題は下記の発明により解決される。
第1の発明は、車両ボディに設けたボディ開口部に固定された固定ガラスと、固定ガラスに設けたガラス開口部を開閉可能な可動ガラスと、可動ガラスを閉じ位置でロックするロック装置を備え、可動ガラスは、固定ガラスに設けた一対の案内レール間にスライド可能に支持されて、固定ガラスと面一状態でガラス開口部を閉止する閉じ位置と、固定ガラスの車室内側面に沿って重ね合わせ状態に位置してガラス開口部を開放する開放位置との間を移動可能としたウィンドである。第1の発明では、ロック装置は、案内レールの案内溝に対して深さ方向に進退してロック位置とアンロック位置に移動するロックピンを備えており、ロックピンには、側方へ突き出す係合部が設けられている。また、案内溝には、ロックピンを車室内側へ変位させるための案内傾斜面を有するロックピン変位部が設けられている。
第1の発明によれば、車両の搭乗者がロック装置のロック解除ハンドルを解除操作すると、その操作力により可動ガラスがその板厚方向車室内側へ変位する。このため、搭乗者は、ロック解除ハンドルを解除操作すれば、その解除操作方向の操作力のみでそのまま可動ガラスが開放位置側に開かれることとなり、従来のような可動ガラスを車室内側に変位させる操作を意識的に行う必要がなくなる。この点は、可動ガラスを閉じる際にも同様であり、可動ガラスを開放位置から移動させれば、そのまま当該可動ガラスが車室外側に変位して固定ガラスと面一状態に閉じられる。このように、第1の発明によれば、搭乗者は可動ガラスに対して一方向(開き方向)に操作力を加えることにより、可動ガラスがその板厚方向(車幅方向)に変位しつつ面方向に移動して開閉されることから、当該サイドウィンドの操作性及び取り扱い性が大幅に高められる。
第1の発明では、ロック装置のロックピンが案内レールに係合して可動ガラスの閉じ位置がロックされる構成とされ、ロック解除ハンドルの解除操作によりロックピンがロック位置からアンロック位置に移動すると、当該移動動作により係合部がロックピン案内部の案内傾斜面に摺接されて当該ロックピンが車室内側へ変位する構成となっている。
係る構成によれば、搭乗者はロック解除ハンドルを解除操作すれば、そのまま(従来の操作S2を行うことなく)可動ガラスが閉じ位置から車室内側に変位することから、搭乗者はロック解除ハンドルに対して解除するための一方向の操作力を加えれば、可動ガラスがそのまま開かれる。
【0006】
第2の発明は、第1の発明において、案内傾斜面は前記ロックピンを車室内側と前記開放位置側との合成方向へ変位させる方向に傾斜して設けられており、前記ロック装置のロック解除ハンドルの解除操作によりロックピンの係合部を案内傾斜面に摺接させて、可動ガラスを閉じ位置から車室内側へ変位させつつ開放位置側へ変位させる構成としたウィンドである。
第2の発明によれば、搭乗者がロック解除ハンドルを解除操作すると、その操作力によりロックピンがアンロック側に移動し、これにより係合部が案内傾斜面に摺接されて当該ロックピンが車室内側へ変位しつつ開放位置側へ案内され、これにより可動ガラスが車室内側に変位しつつ、開放位置側に移動する。このため、搭乗者はロック解除方向の操作力により一層楽に可動ガラスを開放することができる。
第3の発明は、第1又は第2の発明において、可動ガラスは、その上部及び下部に設けた支持脚部を、固定ガラスに設けた上下一対の案内レールの案内溝に挿入して車両前後方向にスライド可能に支持されており、案内溝の底面を車幅方向に傾斜させ、この底面に各支持脚部を当接させて案内溝の側壁部に当接させる構成としたウィンドである。
第3の発明によれば、各支持脚部が傾斜した底面により案内溝の幅方向片側の側壁部に当接した状態に維持されることから、可動ガラス開閉時におけるがたつきを抑制し、また車両走行中等における各支持脚部のがたつき及び異音の発生を防止することができる。
案内溝の底面の傾斜方向は車室外側であっても車室内側であってもよく、また一対の案内レール間で異なる方向に傾斜させてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】本実施形態に係るサイドウィンドの側面図である。本図は、車両右側のサイドウィンドを車室内側から見た状態を示している。
【
図2】上側案内レールを、
図1中矢印(II)方向から見た下面図である。
【
図3】下側案内レールを、
図1中矢印(III)方向から見た平面図である。
【
図4】
図1の(IV)部拡大図であって、ロックピンの案内レールに対する位置関係を示す縦断面図である。本図は、可動ガラスの閉じ位置における状態を示している。
【
図5】ロックピンの案内レールに対する位置関係を示す平面図である。
【
図6】ロックピンが案内レールに対して
図5中(A)に位置する時点の状態を示す縦断面図である。本図は、可動ガラスの閉じ位置における状態を示している。
【
図7】ロックピンが案内レールに対して
図5中(B)に位置する時点の状態を示す縦断面図である。本図は、可動ガラスが車室内側に変位した状態を示している。
【
図8】ロックピンが案内レールに対して
図5中(C)に位置する時点の状態を示す縦断面図である。本図は、可動ガラスが固定ガラスの車室内側に移動した状態を示している。
【
図9】本実施形態に係るサイドウィンドの側面図である。本図では、案内レールの支持構造のみが示されており、ロック装置等については図示が省略されている。
【
図10】
図9中(X)-(X)線断面矢視図であって、第1結合部材の縦断面図である。
【
図11】
図9中(XI)-(XI)線断面矢視図であって、第2結合部材の縦断面図である。
【
図12】従来のサイドウィンドウの側面図である。本図は、車両右側のサイドウィンドを車室内側から見た状態を示している。
【
図13】従来のサイドウィンドにおいて、固定ガラスに対して可動ガラスを開放する際の位置関係を示す横断面図である。
【
図14】右側にサイドウィンドを備えた車両の全体斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
次に、本発明の実施形態を
図1〜
図11に基づいて説明する。以下説明する実施形態では、車両Mの右側部に設けられたサイドウィンド1を例示する。
図1に示すように本実施形態のサイドウィンド1は、車両Mのボディ開口部に開閉不能に嵌め付けた固定ガラス2と、固定ガラス2に設けた開口部2aを開閉可能な可動ガラス10を備えている。この点も従来構成と同様である。
固定ガラス2の車室内側面には、上下一対の案内レール3,4が相互に平行に取り付けられている。この上下一対の案内レール3,4間に可動ガラス10が車両前後方向に移動可能に支持されている。
可動ガラス10の周囲にはガラスフレーム11が取り付けられている。ガラスフレーム11の上部前側には上側の支持脚部12が上方へ突き出す状態に設けられ、下部前側には下側の支持脚部13が下方へ突き出す状態に設けられている。上下の支持脚部12,13は相互に同軸に配置されている。上側の支持脚部12が上側の案内レール3に係合し、下側の支持脚部13が下側の案内レール4に係合してガラスフレーム11ひいては可動ガラス10の前側が案内される。
図2及び
図3に示すように上下の案内レール3,4は、相互に上下対称に構成されている。上下の案内レール3,4には、前側の案内溝3f,4fと後側の案内溝3r,4rが設けられている。可動ガラス10の前側の支持脚部12,13が前側の案内溝3f,4fに挿入されて案内される。可動ガラス10の後側の支持脚部が後側の案内溝3r,4rに挿入されて案内される。後述するように可動ガラス10の後側の支持脚部としては、ロックピン24が用いられる。
前側の案内溝3f,4fを相互に上下で対向させ、後側の案内溝3r,4rを相互に上下で対向させた状態で、当該上下の案内レール3,4が固定ガラス2の車室内側面に固定されている。この上下一対の案内レール3,4は一定の間隔をおいて相互に平行な状態に固定されている。前側の案内溝3f,4f及び後側の案内溝3r,4rの前端部は、それぞれ車室外側に湾曲している。
前側の支持脚部12,13がそれぞれ上下の前側の案内溝3f,4f内を移動し、かつ後側の支持脚部がそれぞれ上下の後側の案内溝3r,4r内を移動することにより、可動ガラス10が固定ガラス2の室内側面に沿って前後に開閉される。
前側の案内溝3f,4fと後側の案内溝3r,4rの前端部がそれぞれ車室外側へ湾曲している。この湾曲範囲に前側の支持脚部12,13及び後側の支持脚部(ロックピン24,24)が進入することにより可動ガラス10が、固定ガラス2と面一となる全閉位置と板厚方向車室内側に変位した開き位置のとの間を変位する。
【0009】
図1に示すように可動ガラス10の後部側には、ロック装置20が取り付けられている。このロック装置20によって、開口部2aに対する可動ガラス10の閉じ状態がロックされる。このロック装置20は、搭乗者が操作するロック解除ハンドル21を備えている。ロック解除ハンドル21は、後方へ向けて押し込み操作可能な状態でガラスフレーム11の車室内側後部に支持されている。ロック解除ハンドル21の後部には、上下一対のL形リンクレバー22,22が上下に回動可能に支持されている。両リンクレバー22,22の回動先端側には、それぞれ連結ロッド23が回転可能に結合されている。両連結ロッド23,23の先端にはそれぞれロックピン24が取り付けられている。上側のロックピン24は、ガラスフレーム11の上部後ろ側から上方へ突き出す状態に設けられている。下側のロックピン24は、ガラスフレーム11の下部後ろ側から下方へ突き出す状態に設けられている。上下のロックピン24,24は、相互に同軸に配置され、かつ上下に進退可能に支持されている。上下のロックピン24,24は、それぞれガラスフレーム11との間に介装した圧縮ばね25により当該ガラスフレーム11から突き出す方向に付勢されている。
L形リンクレバー22,22、連結ロッド23,23、ロックピン24,24及び圧縮ばね25,25は、上下対称に配置されている。
ロック解除ハンドル21を解除方向(
図12のS1方向)に操作すると、上下のリンクレバー22,22が回動して連結ロッド23,23が変位することにより、上下のロックピン24,24がそれぞれ圧縮ばね25に抗して引き込む方向(アンロック側)に変位する。上下のロックピン24,24がアンロック側に変位することにより、当該ロックピン24,24の案内レール3,4に対する係合状態が解除されて可動ガラス10を後方へスライドさせて開くことができる。
【0010】
図2及び
図3に示すように後側の案内溝3r,4rの前部(車室外側へ湾曲した部分)には、それぞれロックピン変位部5が設けられている。このロックピン変位部5は、ロックピン24のアンロック側への変位動作を利用して当該ロックピン24を車室内側かつ後方(開き側)へ案内する機能を有している。ロックピン変位部5の下面には、ロックピン24を車室内側かつ後方へ案内するための案内傾斜面5aが設けられている。この案内傾斜面5aは、車室内側に傾斜する傾斜面と後方に傾斜する傾斜面が合成された三次元的な傾斜面に形成されている。
一方、
図4に示すようにロックピン24の突き出し側の先端には、前側に突き出す円柱体形状の係合部24aと後側に突き出す円柱体形状の係合部24bが相互に同軸かつ一体に設けられている。下側のロックピン24がアンロック側(上方)に変位するとこれと一体で前側の係合部24aと後側の係合部24bがロックピン変位部5の案内傾斜面5aに摺接されつつ上方へ変位する。このため、ロックピン24は車室内側と後方の合成方向に変位しつつアンロック側に変位する。
図5〜
図8には、ロック解除ハンドル21のアンロック操作によるロックピン24の移動状態が示されている。
図5に示すように可動ガラス10の閉じ状態では、ロックピン24は、図中(A)で示すロック位置に位置する。
図6に示すようにこのロック位置(A)では、ロックピン24の先端部は案内溝4r内において車室内側への変位を規制された状態となっている。このため、可動ガラス10は固定ガラス2と面一に位置する閉じ位置にロックされた状態となっている。
【0011】
搭乗者がロック解除ハンドル21をアンロック側へ押し操作(
図12で示すS1操作)すると、上下のロックピン24,24がそれぞれ引き込み方向(アンロック方向)に移動する。
図7に示すように例えば下側のロックピン24がアンロック方向(上方)へ移動すると、その前後の係合部24a,24bがロックピン変位部5の下面に摺接されることにより、当該ロックピン24が車室内側かつ後方へ変位され、その結果ロックピン24は
図5中(B)で示す中間位置を経て(C)で示す開放位置に移動する。上下のロックピン24,24が同時に中間位置(B)を経て開放位置(C)に移動することにより可動ガラス10の後部側が車室内側に変位しつつ後方(開き側)に変位する。
このように、搭乗者はロック解除ハンドル21を
図12中S1で示すロック解除方向(後方)に押し操作すると、上下のロックピン24,24が引き込み方向(アンロック方向)に移動するとともに、車室内側かつ後方へ案内されて可動ガラス10の後部側が車室内側へ変位しつつ開き側へスライドされる。従って、搭乗者はロック解除ハンドル21をアンロック側へ押し操作S1すると、ロック装置20がアンロックされるとともに、可動ガラス10の後部側が車室内側かつ開き側に変位する。従って、搭乗者はロック解除ハンドル21をそのままアンロック側に押し操作れば、可動ガラス10をロック位置から車室内側に変位させて後方の全開位置まで開放することができる。
ロックピン24が
図5中(C)で示す開放位置に移動すると、当該ロックピン24の先端部は案内溝4r内に進入した状態となる。このため、搭乗者はそのままロック解除ハンドル21を後方へ押し操作することにより後側のロックピン24,24を案内溝3r,4r内に沿って後退させ、かつ前側の上下の支持脚部12,13を案内溝3f,4f内に沿って後退させて可動ガラス10を開放位置までスライドさせることができる。可動ガラス10は、固定ガラス2の車室内側に沿って重なり合った状態に開放される。
開放された可動ガラス10は、搭乗者が当該可動ガラス10を前側へスライドさせ、後側のロックピン24,24が中間位置(B)に至った時点で、当該可動ガラス10の後部側を車室外側へ押すことにより閉じ位置(固定ガラス2と面一となる位置)に移動させることができる。可動ガラス10が閉じ位置に移動すると、後側のロックピン24,24が圧縮ばね25によりロック側に移動して、当該可動ガラス10が閉じ位置にロックされる。
【0012】
図8に示すように後側の案内溝4rの底部は、車室内側へ下る方向に傾斜している。この底部傾斜面4aにロックピン24を上方から当接させることにより、当該ロックピン24が車室内側の溝側壁部4bに当接する方向へ案内されるようになっている。この点は、上側の案内溝3rについても同様で、同じく車室内側へ下る方向に傾斜した底部傾斜面が形成されており、上側のロックピン24が車質内側の溝側壁部4bに当接する方向に案内されるようになっている。
また、前側の支持脚部12,13を案内する上下の案内レール3,4の底面についても、同様の傾斜面が設けられており、この底部傾斜面に支持脚部12,13を当接させることにより当該支持脚部12,13が車室内側の溝側壁部4bに当接されるようになっている。
このように前側上下の支持脚部12,13及び上下のロックピン24,24がそれぞれ案内溝3f,4f,3r,4rの車室内側の溝側壁部4bに当接される方向に案内されることにより、可動ガラス10のスムーズなスライド動作が確保されるとともに、車両走行時等における当該可動ガラス10のがたつきや異音の発生が抑制されるようになっている。
【0013】
次に、
図9及び
図10に示すように、上下一対の案内レール3,4は、それぞれ固定ガラス2とは別の部材である第1結合部材6,6を介して車両ボディB側に結合されている。本実施形態の場合、第1結合部材6〜6にはそれぞれ帯板形状の薄鋼板が用いられている。上下の案内レール3,4は、固定ガラス2の車室内側の側面に接着されるとともに、それぞれ前後の2箇所をこの第1結合部材6,6を介して車両ボディBに結合されている。
固定ガラス2は、その周囲に塗布した接着剤7によって車両ボディBの開口部に固定されている。各第1結合部材6の一端側は、この接着剤7を介して固定ガラス2のみならず車両ボディB側に対して直接結合されている。各第1結合部材6の他端側は、案内レール3,4の車室外側の側面に例えば溶接されて剛体結合されている。
このように上下一対の案内レール3,4が、固定ガラス2とは別に第1結合部材6〜6によて直接車両ボディB側に結合されている。このため、例えば固定ガラス2が損傷等を受けた場合であっても案内レール3,4の車両ボディBに対する取り付け状態が維持され、これにより可動ガラス10の取り付け状態を維持することができる。
また、
図9及び
図11に示すように上下一対の案内レール3,4は、同じく固定ガラス2とは異なる第2結合部材8を介して相互に剛体結合されている。第2結合部材8の上部は、上側の案内レール3に溶接されて剛体結合されている。第2結合部材8の下部は、下側の案内レール4に溶接されて剛体結合されている。この第2結合部材8を介して上下の案内レール3,4は相互に一定の間隔をおいて平行に配置された状態に維持されている。なお、上記したように上下の案内レール3,4は固定ガラス2の車室内側の側面に接着により取り付けられている。第2結合部材8も接着により固定ガラス2の車室内側の側面に結合されている。
このように第2結合部材8を介して上下一対の案内レール3,4の相対位置が維持されることから、例えば固定ガラス2が損傷等を受けた場合であっても案内レール3,4の相互に一定の間隔をおいて平行に配置された状態が維持され、これにより可動ガラス10の取り付け状態ひいては前後にスライド操作可能な状態が維持される。
【0014】
以上のように構成した本実施形態のサイドウィンド1によれば、可動ガラス10を開放する際に、搭乗者がロック解除ハンドル21を後方のアンロック方向へ押し操作すると、その押し操作力によって上下のロックピン24,24がアンロック側に引き込まれて当該可動ガラス10のロック状態が解除されるとともに、当該可動ガラス10がその後部側を車室内側に変位させつつ開放側にスライドされる。
このことから、搭乗者はロック解除ハンドル21にアンロック方向(後方)への押し操作力を加えれば、その押し操作力によって可動ガラス10を固定ガラス2に対して面一となる閉じ位置から固定ガラス2の車室内側の側面に沿って重ね合わせ状態となる開放位置までスライドさせることができる。このため、本実施形態のサイドウィンド1によれば、従来のようにロック装置34のアンロック操作方向とは異なる方向の操作(
図13に示す操作S2)を行うことなく、一方向の操作力S1のみを加えれば可動ガラス10を車室内側に変位させて開放することができる。
一方、上下のロックピン24,24がそれぞれ圧縮ばね25によって突き出す方向(ロック方向)に付勢されている。このため、開放された可動ガラス10を前側へスライドさせて閉じる際には、当該ロックピン24,24が前後の係合部24a,24bのロックピン変位部5に対する摺接作用により、
図5中(B)で示す位置から(C)で示す位置まで車室外側に変位しつつロック位置に突き出される。このことから、搭乗者は可動ガラス10を閉じる際にも、当該可動ガラス10の後部を車室外側に変位させる操作をする必要がなく、前方へ向けたスライド操作力のみを加えることにより、当該可動ガラス10を固定ガラス2と面一となる閉じ位置に移動させることができる。可動ガラス10が閉じ位置に移動されると上下のロックピン24,24が自動的に突き出されて当該可動ガラス10の閉じ位置がロックされる。
このように、本実施形態のサイドウィンド1によれば、可動ガラス10に対して一方向の操作力を加えれば固定ガラス2と面一となる閉じ位置と、固定ガラス2の車室内側に沿って重ね合わされた開放位置との間で当該可動ガラス10を移動させることができ、この点で当該可動ガラス10の開閉操作性を高めることができる。
【0015】
また、上下の案内レール3,4に対して可動ガラス10を支持する前側上下の支持脚部12,13及び後側上下のロックピン24,24が案内溝3f,4f,3r,4rの底部傾斜面に当接されてそれぞれ車室内側の溝側壁部4bに当接する状態に保持されることから、当該可動ガラス10のスムーズな開閉動作を実現できるとともに、車両走行時等におけるがたつきや異音の発生を抑制することができる。
さらに、上下一対の案内レール3,4が固定ガラス2に対して接着により取り付けられるとともに、それぞれ前後2箇所において第1結合部材6,6により車両ボディB側に直接結合される構成となっている。このため、例えば固定ガラス2が損傷等を受けた場合であっても上下の案内レール3,4の車両ボディBに対する取り付け状態が維持され、従って可動ガラス10の車両ボディBに対する取り付け状態及びスムーズに開閉される状態を維持することができる。
また、上下の案内レール3,4が第2結合部材8を介して相互に結合されている。この第2結合部材8によって両案内レール3,4の相互に一定の間隔をおいて平行に支持された状態が維持されることから、この点でも可動ガラス10の車両ボディBに対する取り付け状態及びスムーズに開閉される状態を維持することができる。
【0016】
以上説明した実施形態には種々変更を加えることができる。例えば、車両の右側のサイドウィンドを例示したが、左側のサイドウィンドについて例示した可動ガラスを適用することができる。
また、車両Mの後側へスライドさせて開放する可動ガラスを例示したが、逆に前側へスライドさせて開放する形態の可動ガラス、あるいは上方又は下方へスライドさせて開放する形態の可動ガラスについて例示したロックピン変位部5を適用することにより同様の作用効果を得ることができる。
また、ロック解除ハンドル21の解除操作により、ロックピン24をロックピン変位部5の案内傾斜面5aに摺接させて車室内側と開放位置側(後方)との合成方向に変位させる構成を例示したが、車室内側のみへ変位させる構成としてもよい。前者の場合は、案内傾斜面5aの傾斜方向が前記したように車室内側と開放位置側の双方となる三次元的な傾斜面であるのに対して、後者の場合は、車室内側のみに傾斜する二次元的な傾斜面となる。
さらに、車両側部のサイドウィンドに限らず、例えばキャブオーバ型トラックのリヤウィンドについて、例示した可動レール案内構造を適用することにより同様の作用効果を得ることができる。