特許第6201204号(P6201204)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6201204タングステン化合物を用いたタングステン−含有膜の蒸着方法及び前記タングステン化合物を含むタングステン−含有膜蒸着用前駆体組成物
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6201204
(24)【登録日】2017年9月8日
(45)【発行日】2017年9月27日
(54)【発明の名称】タングステン化合物を用いたタングステン−含有膜の蒸着方法及び前記タングステン化合物を含むタングステン−含有膜蒸着用前駆体組成物
(51)【国際特許分類】
   C23C 16/18 20060101AFI20170914BHJP
   C23C 16/16 20060101ALI20170914BHJP
   H01L 21/285 20060101ALI20170914BHJP
   H01L 21/28 20060101ALI20170914BHJP
【FI】
   C23C16/18
   C23C16/16
   H01L21/285 C
   H01L21/28 301R
【請求項の数】15
【全頁数】17
(21)【出願番号】特願2016-515280(P2016-515280)
(86)(22)【出願日】2014年5月26日
(65)【公表番号】特表2016-526100(P2016-526100A)
(43)【公表日】2016年9月1日
(86)【国際出願番号】KR2014004666
(87)【国際公開番号】WO2014189339
(87)【国際公開日】20141127
【審査請求日】2015年11月27日
(31)【優先権主張番号】10-2013-0059238
(32)【優先日】2013年5月24日
(33)【優先権主張国】KR
(31)【優先権主張番号】10-2014-0062800
(32)【優先日】2014年5月26日
(33)【優先権主張国】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】514183215
【氏名又は名称】ユーピー ケミカル カンパニー リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110000877
【氏名又は名称】龍華国際特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】ハン、ウォンソク
(72)【発明者】
【氏名】ユ、ボムサン
(72)【発明者】
【氏名】イ、ホンジュ
【審査官】 吉野 涼
(56)【参考文献】
【文献】 特開2005−139090(JP,A)
【文献】 特開2002−060944(JP,A)
【文献】 D.P.Tate et al,Novel acetylene tungsten carbonyl complexes,J.American Chem. Soc.,米国,1964年,86,3261-3265
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C23C 16/00−16/58
H01L 21/28
H01L 21/285
JSTPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記の化学式1で表されるタングステン化合物を含む気体を基材表面に接触させることを含み、
[化学式1]
上記化学式1において、
〜Rは、それぞれ独立に、HまたはC1−5アルキル基であり
Lは、窒素または酸素が1個〜3個含まれる炭素数0〜5の非環型または環型の中性リガンドである、タングステン化合物を用いたタングステン−含有膜の蒸着方法。
【請求項2】
前記Lは、一酸化炭素(CO)、一酸化窒素(NO)、及びアセトニトリル(CHCN)からなる群より選択されるいずれか一つである、請求項1に記載のタングステン−含有膜の蒸着方法。
【請求項3】
前記タングステン化合物は、W(CO)(HC≡CH)、W(CO)(CHC≡CCH、W(CO)(CHCHC≡CCHCH、W(CO)(CH(CHC≡C(CHCH、W(CO)(HC≡CCH、W(CO)(HC≡CCHCH、W(CO)(HC≡C(CHCH、W(CO)(HC≡C(CHCH、W(CO)(HC≡C(CHCH、W(CO)(CHC≡CCHCH、W(CO)(CHC≡C(CHCH、W(CO)(CHC≡C(CHCH、W(CO)(CHCHC≡C(CHCH、W(CO)(HC≡CCH(CH、W(CO)(HC≡CC(CH、W(CO)(HC≡C(CHCH(CH、W(NO)(HC≡CH)、W(NO)(CHC≡CCH、W(NO)(CHCHC≡CCHCH、W(NO)(CH(CHC≡C(CHCH、W(NO)(HC≡CCH、W(NO)(HC≡CCHCH、W(NO)(HC≡C(CHCH、W(NO)(HC≡C(CHCH、W(NO)(HC≡C(CHCH、W(NO)(CHC≡CCHCH、W(NO)(CHC≡C(CHCH、W(NO)(CHC≡C(CHCH、W(NO)(CHCHC≡C(CHCH、W(NO)(HC≡CCH(CH、W(NO)(HC≡CC(CH、W(NO)(HC≡C(CHCH(CH、W(CHCN)(HC≡CH)、W(CHCN)(CHC≡CCH、W(CHCN)(CHCHC≡CCHCH、W(CHCN)(CH(CHC≡C(CHCH、W(CHCN)(HC≡CCH、W(CHCN)(HC≡CCHCH、W(CHCN)(HC≡C(CHCH、W(CHCN)(HC≡C(CHCH、W(CHCN)(HC≡C(CHCH、W(CHCN)(CHC≡CCHCH、W(CHCN)(CHC≡C(CHCH、W(CHCN)(CHC≡C(CHCH、W(CHCN)(CHCHC≡C(CHCH、W(CHCN)(HC≡CCH(CH、W(CHCN)(HC≡CC(CH、及びW(CHCN)(HC≡C(CHCH(CHからなる群より選択されるいずれか一つである、請求項1または2に記載のタングステン−含有膜の蒸着方法。
【請求項4】
前記タングステン化合物がW(CO)(CHCHC≡CCHCHである、請求項1または2に記載のタングステン−含有膜の蒸着方法。
【請求項5】
前記タングステン−含有膜を蒸着することは、前記タングステン化合物を含む気体を前記基材に接触させると共に、または相互に水素気体、アンモニア気体、酸素気体またはオゾン気体を含有する反応気体を前記基材に接触させることをさらに含む、請求項1から4のいずれか一項に記載のタングステン−含有膜の蒸着方法。
【請求項6】
前記タングステン−含有膜を蒸着することは、有機金属化学気蒸着法(MOCVD)または原子層蒸着法(ALD)により行われる、請求項1から4のいずれか一項に記載のタングステン−含有膜の蒸着方法。
【請求項7】
前記タングステン化合物を含む気体が前記タングステン化合物の熱分解を抑制する安定剤をさらに含むものである、請求項1から6のいずれか一項に記載のタングステン−含有膜の蒸着方法。
【請求項8】
前記安定剤は、ベンゾキノン(benzoquinone)、テトラメチルベンゾキノン(tetramethylbenzoquinone)、クロラニル(chloranil、2,3,5,6−tetrachloro−1,4−benzoquinone)、4−tert−ブチルカテコール(4−tert−butylcatechol)、及び2,2−ジフェニル−1−ピクリルヒドラジル(2,2−diphenyl−1−picrylhydrazyl)からなる群より選択される一つ以上である、請求項7に記載のタングステン−含有膜の蒸着方法。
【請求項9】
下記の化学式1で表されるタングステン化合物を含み、
[化学式1]
上記化学式1において、
〜Rは、それぞれ独立に、HまたはC1−5アルキル基であり
Lは、窒素または酸素が1個〜3個含まれる炭素数0〜5の非環型または環型の中性リガンドである、タングステン−含有膜蒸着用前駆体組成物。
【請求項10】
前記Lは一酸化炭素(CO)、一酸化窒素(NO)、及びアセトニトリル(CHCN)からなる群より選択されるいずれか一つである、請求項9に記載のタングステン−含有膜蒸着用前駆体組成物。
【請求項11】
前記タングステン化合物は、W(CO)(HC≡CH)、W(CO)(CHC≡CCH、W(CO)(CHCHC≡CCHCH、W(CO)(CH(CHC≡C(CHCH、W(CO)(HC≡CCH、W(CO)(HC≡CCHCH、W(CO)(HC≡C(CHCH、W(CO)(HC≡C(CHCH、W(CO)(HC≡C(CHCH、W(CO)(CHC≡CCHCH、W(CO)(CHC≡C(CHCH、W(CO)(CHC≡C(CHCH、W(CO)(CHCHC≡C(CHCH、W(CO)(HC≡CCH(CH、W(CO)(HC≡CC(CH、W(CO)(HC≡C(CHCH(CH、W(NO)(HC≡CH)、W(NO)(CHC≡CCH、W(NO)(CHCHC≡CCHCH、W(NO)(CH(CHC≡C(CHCH、W(NO)(HC≡CCH、W(NO)(HC≡CCHCH、W(NO)(HC≡C(CHCH、W(NO)(HC≡C(CHCH、W(NO)(HC≡C(CHCH、W(NO)(CHC≡CCHCH、W(NO)(CHC≡C(CHCH、W(NO)(CHC≡C(CHCH、W(NO)(CHCHC≡C(CHCH、W(NO)(HC≡CCH(CH、W(NO)(HC≡CC(CH、W(NO)(HC≡C(CHCH(CH、W(CHCN)(HC≡CH)、W(CHCN)(CHC≡CCH、W(CHCN)(CHCHC≡CCHCH、W(CHCN)(CH(CHC≡C(CHCH、W(CHCN)(HC≡CCH、W(CHCN)(HC≡CCHCH、W(CHCN)(HC≡C(CHCH、W(CHCN)(HC≡C(CHCH、W(CHCN)(HC≡C(CHCH、W(CHCN)(CHC≡CCHCH、W(CHCN)(CHC≡C(CHCH、W(CHCN)(CHC≡C(CHCH、W(CHCN)(CHCHC≡C(CHCH、W(CHCN)(HC≡CCH(CH、W(CHCN)(HC≡CC(CH、及びW(CHCN)(HC≡C(CHCH(CHからなる群より選択されるいずれか一つである、請求項9または10に記載のタングステン−含有膜蒸着用前駆体組成物。
【請求項12】
前記タングステン化合物がW(CO)(CHCHC≡CCHCHである、請求項9または10に記載のタングステン−含有膜蒸着用前駆体組成物。
【請求項13】
前記タングステン化合物の熱分解を抑制する安定剤をさらに含む、請求項9から12のいずれか一項に記載のタングステン−含有膜蒸着用前駆体組成物。
【請求項14】
前記安定剤は、ベンゾキノン(benzoquinone)、テトラメチルベンゾキノン(tetramethylbenzoquinone)、クロラニル(chloranil、2,3,5,6−tetrachloro−1,4−benzoquinone)、4−tert−ブチルカテコール(4−tert−butylcatechol)、及び2,2−ジフェニル−1−ピクリルヒドラジル(2,2−diphenyl−1−picrylhydrazyl)からなる群より選択される一つ以上である、請求項13に記載のタングステン−含有膜蒸着用前駆体組成物。
【請求項15】
前記タングステン化合物がW(CO)(CHCHC≡CCHCHであり
前記安定剤が4−tert−ブチルカテコール(4−tert−butylcatechol)である、請求項13に記載のタングステン−含有膜蒸着用前駆体組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願は、タングステン化合物を用いたタングステン−含有膜の蒸着方法及び前記タングステン化合物を含むタングステン−含有膜蒸着用前駆体組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体素子製造において、様々な用途でタングステン(W)−含有膜を用いている。通常、タングステン−含有膜は、化学気蒸着(CVD)技術や原子層蒸着(ALD)技術により形成される。タングステン−含有膜を形成するためのタングステン原料としてヘキサフルオロ化タングステン(WF)が広く用いられてきた。
【0003】
しかし、半導体素子の微細化が進むにつれ、フッ素が含まれないタングステン原料を用いてタングステン−含有膜を形成する必要がある。フッ素を含まない蒸着用前駆体として様々なタングステン化合物が知られているが、フッ素を含まない既に知られているタングステン化合物は蒸着された膜に窒素や酸素が多く含まれる問題があり、望ましくない膜特性を有し得る。
【0004】
例えば、タングステン−含有膜を形成するための一般的な有機金属前駆体としては、タングステンカルボニル化合物[W(CO)]が知られているが、これらの化合物に含まれたカルボニル(CO)リガンドが低い温度でも解離しやすく別途の反応気体がなくても低い温度で熱分解により金属タングステン膜を蒸着するのに有利であるが、タングステン層の物質特性は熱蒸着されたタングステン層へのCO反応副産物の混入により悪化されることがあり、その結果、タングステン層の電気伝導度が低くて問題になり得る[Bing Luo and Wayne L.Gladfelte(2009)、"Chapter7.Chemical Vapor Deposition of Metals:W,Al,Cu and Ru"in Anthony C Jones and Michael L Hitchman(Eds.)"Chemical Vapour Deposition:Precursors",(Page322),Royal Society of Chemistry]。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
これにより、本願は、タングステン化合物を用いたタングステン−含有膜の蒸着方法及び前記タングステン化合物を含むタングステン−含有膜蒸着用前駆体組成物を提供しようとする。
【0006】
しかし、本発明が解決しようとする課題は、以上で言及した課題に限られず、言及されていない更に他の課題は、以下の記載から当業者にとって明確に理解されるべきである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本願の第1の側面は、下記の化学式1で表されるタングステン化合物を含む気体を基材表面に接触させることを含む、タングステン化合物を用いたタングステン−含有膜の蒸着方法を提供する。
【0008】
[化学式1]
【化1】
【0009】
上記の化学式1において、R〜Rは、それぞれ独立に、HまたはC1−5アルキル基を含み、Lは、窒素または酸素が1個〜3個含まれる炭素数0〜5の非環型または環型の中性リガンドを含むものである。
【0010】
本願の第2の側面は、上記の化学式1で表されるタングステン化合物を含むタングステン−含有膜蒸着用前駆体組成物を提供する。
【発明の効果】
【0011】
本願の具体例により、アルキン(alkyne)リガンドを含むタングステン化合物を用いたタングステン−含有膜の蒸着方法及び前記タングステン化合物を含むタングステン−含有膜蒸着用前駆体組成物を用いてタングステン−含有膜を形成することができる。本願の一具体例によりアルキン(alkyne)リガンドを含むタングステン化合物を用いて化学気蒸着法(Chemical Vapor Deposition;CVD)または原子層蒸着法(Atomic Layer Deposition;ALD)を通じてタングステン−含有膜を形成することができ、前記タングステン化合物を含む膜蒸着用組成物を提供することができる。特に、本願の具体例によれば、窒素または酸素不純物が少ないタングステン−含有膜を形成することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本願の製造例1により製造されたタングステン化合物W(CO)(CHCHC≡CCHCHの熱重量分析(thermogravimetric analysis;TGA)グラフである。
図2】本願の製造例1により製造されたタングステン化合物W(CO)(CHCHC≡CCHCHの示差走査熱量計分析(differential scanning calorimetry;DSC)グラフである。
図3A】本願の実施例1において、基材の温度325℃で形成したタングステン−含有膜の断面走査電子顕微鏡(Scanning Electron Microscopy;SEM)イメージである。
図3B】本願の実施例1において、基材の温度325℃で形成したタングステン−含有膜の断面走査電子顕微鏡(Scanning Electron Microscopy;SEM)イメージである。
図3C】本願の実施例1において、基材の温度325℃で形成したタングステン−含有膜の断面走査電子顕微鏡(Scanning Electron Microscopy;SEM)イメージである。
図3D】本願の実施例1において、基材の温度325℃で形成したタングステン−含有膜の断面走査電子顕微鏡(Scanning Electron Microscopy;SEM)イメージである。
図4A】本願の実施例1において、基材の温度350℃で形成したタングステン−含有膜の断面走査電子顕微鏡イメージである。
図4B】本願の実施例1において、基材の温度350℃で形成したタングステン−含有膜の断面走査電子顕微鏡イメージである。
図4C】本願の実施例1において、基材の温度350℃で形成したタングステン−含有膜の断面走査電子顕微鏡イメージである。
図4D】本願の実施例1において、基材の温度350℃で形成したタングステン−含有膜の断面走査電子顕微鏡イメージである。
図5】本願の実施例2において、基材の温度350℃で水素(H)気体を用いて形成したタングステン−含有膜のオージェ(Auger)分析結果である。
図6】本願の実施例2において、基材の温度350℃でアンモニア(NH)気体を用いて形成したタングステン−含有膜のオージェ分析結果である。
図7】本願の実施例3において、安定剤を添加した場合と添加しない場合、それぞれのタングステン−含有膜蒸着用前駆体組成物の熱重量分析(TGA)グラフである。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下では、添付した図面を参照しながら、本願が属する技術分野で通常の知識を有する者が容易に実施できるように本願の実施例を詳しく説明する。ところが、本願は、様々な異なる形態で具現されることができ、ここで説明する実施例に限らない。そして、図面において、本願を明確に説明するために、説明とは関係ない部分は省略しており、明細書の全体を通じて類似した部分に対しては類似した図面符号を付けている。
【0014】
本願明細書の全体において、ある部分が他の部分と「連結」されているという場合、これは「直接的に連結」されている場合だけではなく、その中間に他の素子を介して「電気的に連結」されている場合も含む。
【0015】
本願明細書の全体において、ある部材が他の部材の「上に」位置しているという場合、これは、ある部材が他の部材に接している場合だけではなく、両部材の間にまた他の部材が存在する場合も含む。
【0016】
本願明細書の全体において、ある部分がある構成要素を「含む」という場合、これは、特に反対の記載がない限り、他の構成要素を除くのではなく、他の構成要素をさらに含むことができることを意味する。
【0017】
本願明細書の全体において、使われている程度の用語「約」、「実質的に」などは、言及された意味に固有の製造及び物質許容誤差が提示される場合、その数値で、またはその数値に近接した意味として使われ、本願の理解を助けるために、適確であるか絶対的な数値が言及された開示内容を非良心的な侵害者が不当に用いることを防止するために使われる。
【0018】
本願明細書の全体において、使われている程度の用語「〜(する)ステップ」または「〜のステップ」は、「〜のためのステップ」を意味していない。
【0019】
本願明細書の全体において、マーカッシュ形式の表現に含まれた用語「これらの組み合わせ」は、マーカッシュ形式の表現に記載された構成要素からなる群より選択される一つ以上の混合または組み合わせを意味するものであり、前記構成要素からなる群より選択される一つ以上を含むことを意味している。
【0020】
本願明細書の全体において、「A及び/またはB」の記載は、「AまたはB、またはA及びB」を意味している。
【0021】
本願明細書の全体において、用語「アルキル基」は、それぞれ、線状または分枝状の飽和または不飽和のC1−10またはC1−5アルキル基を含むものであり、例えば、メチル、エチル、プロピル、ブチル、ペンチル、ヘキシル、ヘプチル、オクチル、ノニル、デシル、またはこれらの可能な全ての異性質体を含むものであることができるが、これに限られるものではない。
【0022】
本願明細書の全体において、用語「中性リガンド(L)」は、それぞれ、窒素または酸素のうちで選択されたヘテロ原子が1個〜3個含まれる炭素数0〜5の非環型または環型構造化合物を含むものであり、例えば、非共有電子対を有した原子または分子、CO、CS、NO、CO、CS、NH、HO、アミン、エーテル、アルキルニトリル、イソシアニド(isocyanide)、及びこれらの誘導体からなる群より選択されたものを含むものであることができるが、これに限られるものではない。
【0023】
本願明細書の全体において、用語「配位結合」は、結合に関与する2つの原子のうち、一側原子のみを中心に考えると、結合を形成する電子が形式的に一側原子からのみ提供されている場合の結合を意味するものであって、通常的に錯体(complex)など配位化合物の中心にある中心金属及びその周りにあるリガンドの間には、配位結合(coordinate covalent bond)により結合が形成される。
【0024】
以下、本願の具体例を詳しく説明したが、本願はこれに限られるものではない。
【0025】
本願の第1の側面は、下記の化学式1で表されるタングステン化合物を含む気体を基材表面に接触させることを含む、タングステン化合物を用いたタングステン−含有膜の蒸着方法を提供する。
【0026】
[化学式1]
【化2】
【0027】
上記の化学式1において、R〜Rは、それぞれ独立に、HまたはC1−5アルキル基を含み、Lは、窒素または酸素が1個〜3個含まれる炭素数0〜5の非環型または環型の中性リガンドを含むものである。
【0028】
本願の一具体例において、前記C1−5アルキル基は、メチル基、エチル基、n−プロピル基、iso−プロピル基、n−ブチル基、iso−ブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、n−ペンチル基、iso−ペンチル基、sec−ペンチル基、tert−ペンチル基、neo−ペンチル基、3−ペンチル基、及びこれらの異性質体からなる群より選択されるものを含むものであることができるが、これに限られるものではない。
【0029】
本願の一具体例において、前記Lは、一酸化炭素(CO)、一酸化窒素(NO)、及びアセトニトリル(CHCN)からなる群より選択されるものを含むものであることができるが、これに限られるものではない。
【0030】
本願の一具体例において、前記タングステン化合物は、W(CO)(HC≡CH)、W(CO)(CHC≡CCH、W(CO)(CHCHC≡CCHCH、W(CO)(CH(CHC≡C(CHCH、W(CO)(HC≡CCH、W(CO)(HC≡CCHCH、W(CO)(HC≡C(CHCH、W(CO)(HC≡C(CHCH、W(CO)(HC≡C(CHCH、W(CO)(CHC≡CCHCH、W(CO)(CHC≡C(CHCH、W(CO)(CHC≡C(CHCH、W(CO)(CHCHC≡C(CHCH、W(CO)(HC≡CCH(CH、W(CO)(HC≡CC(CH、W(CO)(HC≡C(CHCH(CH、W(NO)(HC≡CH)、W(NO)(CHC≡CCH、W(NO)(CHCHC≡CCHCH、W(NO)(CH(CHC≡C(CHCH、W(NO)(HC≡CCH、W(NO)(HC≡CCHCH、W(NO)(HC≡C(CHCH、W(NO)(HC≡C(CHCH、W(NO)(HC≡C(CHCH、W(NO)(CHC≡CCHCH、W(NO)(CHC≡C(CHCH、W(NO)(CHC≡C(CHCH、W(NO)(CHCHC≡C(CHCH、W(NO)(HC≡CCH(CH、W(NO)(HC≡CC(CH、W(NO)(HC≡C(CHCH(CH、W(CHCN)(HC≡CH)、W(CHCN)(CHC≡CCH、W(CHCN)(CHCHC≡CCHCH)、W(CHCN)(CH(CHC≡C(CHCH、W(CHCN)(HC≡CCH、W(CHCN)(HC≡CCHCH、W(CHCN)(HC≡C(CHCH、W(CHCN)(HC≡C(CHCH、W(CHCN)(HC≡C(CHCH、W(CHCN)(CHC≡CCHCH、W(CHCN)(CHC≡C(CHCH、W(CHCN)(CHC≡C(CHCH、W(CHCN)(CHCHC≡C(CHCH、W(CHCN)(HC≡CCH(CH、W(CHCN)(HC≡CC(CH、及びW(CHCN)(HC≡C(CHCH(CHからなる群より選択されるものを含むものであることができる。一具体例において、前記タングステン化合物は、W(CO)(CHCHC≡CCHCHを含むものであることができるが、これに限られるものではない。
【0031】
本願の一具体例において、前記タングステン化合物を含む気体が前記タングステン化合物の熱分解を抑制する安定剤をさらに含むものであることができるが、これに限られるものではない。前記安定剤は、前記タングステン化合物に含まれたアルキン(alkyne)の重合反応を抑制することで、前記タングステン化合物の熱分解を抑制するように作用できる。前記安定剤は、このようなアルキン重合反応を抑制するために通常的に用いられる抑制剤を特に制限なく用いることができ、例えば、前記安定剤は、ベンゾキノン(benzoquinone)、テトラメチルベンゾキノン(tetramethylbenzoquinone)、クロラニル(chloranil、2,3,5,6−tetrachloro−1,4−benzoquinone)、4−tert−ブチルカテコール(4−tert−butylcatechol)、及び2,2−ジフェニル−1−ピクリルヒドラジル(2,2−diphenyl−1−picrylhydrazyl)からなる群より選択されたものを含むものであることができるが、これに限られるものではない。
【0032】
本願の一具体例において、前記タングステン化合物を含む気体が前記タングステン化合物の熱分解を抑制する安定剤をさらに含む場合、安定剤を含まない場合に比べてより低い温度でより優れた気化特性を有することができ、温度を高めたときに蒸発せずに残留する熱分解生成物の量を顕著に減少させることができる。
【0033】
本願の一具体例による前記タングステン化合物は、タングステン中心金属とリガンドとの間に結合力が弱い配位結合により連結されている錯体(complex)であるので、比較的低い温度でもリガンドの分解が起こりやすく蒸着温度を低めることができる。同時に、前記タングステン中心金属から分離された中性リガンド(L)及びアルキン(alkyne)は、真空排気を通じて反応チャンバで容易に除去されるので、炭素、窒素、酸素など不純物が形成されたタングステン−含有膜内に残留しない。
【0034】
本願の一具体例において、前記タングステン−含有膜を蒸着することは、前記タングステン誘導体化合物を含む気体を基材に接触させると共に、または相互に水素気体、アンモニア気体、酸素(O)気体またはオゾン(O)気体を含有する反応気体を前記基材に接触させることをさらに含むことができるが、これに限られるものではない。
【0035】
本願の一具体例において、前記タングステン−含有膜を蒸着することは有機金属化学気蒸着法(MOCVD)または原子層蒸着法(ALD)により行われることを含むものであることができるが、これに限られるものではない。
【0036】
本願の一具体例において、前記タングステン化合物−含有気体を基材に接触させることに加えて反応気体を基材に接触させてタングステン−含有膜を基材表面に形成することができる。例えば、前記タングステン化合物−含有気体と反応気体を相互に基材表面に接触させる原子層蒸着(atomic layer deposition;ALD)方法を用いることができるが、これに限られるものではない。例えば、前記タングステン化合物−含有気体と反応気体を同時に基材表面に接触させる化学気蒸着(chemical vapor deposition;CVD)方法を用いることができるが、これに限られるものではない。
【0037】
膜蒸着のためのALD装置またはCVD装置において、本願の一具体例による前記タングステン化合物−含有気体は、バブリング、気体状流量制御方法、直接液体注入方法、または液体移送方法などの知られた方法を用いて基材表面に接触されるものであり得る。
【0038】
本願の一具体例において、前記ALD及びCVD方法に用いられる反応気体としては、水素(H)気体、アンモニア(NH)気体、酸素(O)気体、またはオゾン(O)気体など半導体工程に用いる気体を用いてタングステン−含有膜を形成することができるが、これに限られるものではない。例えば、前記ALD及びCVD方法に水素気体及び/またはアンモニア気体を用いて膜を形成する場合、不純物が少なく含まれたタングステン金属膜を形成することができる。例えば、酸素気体またはオゾン気体を用いて膜を形成する場合、タングステン酸化物膜を形成することができるが、これに限られるものではない。
【0039】
本願の第2の側面は、下記の化学式1で表されるタングステン化合物を含むタングステン−含有膜蒸着用前駆体組成物を提供する。
【0040】
[化学式1]
【化3】
【0041】
〜Rは、それぞれ独立に、HまたはC1−5アルキル基を含み、Lは、窒素または酸素が1個〜3個含まれる炭素数0〜5の非環型または環型の中性リガンドを含むものである。
【0042】
本願の一具体例において、前記C1−5アルキル基は、メチル基、エチル基、n−プロピル基、iso−プロピル基、n−ブチル基、iso−ブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、n−ペンチル基、iso−ペンチル基、sec−ペンチル基、tert−ペンチル基、neo−ペンチル基、3−ペンチル基、及びこれらの異性質体からなる群より選択されるものを含むものであることができるが、これに限られるものではない。
【0043】
本願の一具体例において、前記Lは、一酸化炭素(CO)、一酸化窒素(NO)、及びアセトニトリル(CHCN)からなる群より選択されるものを含むものであることができるが、これに限られるものではない。
【0044】
本願の一具体例によるタングステン化合物は、W(CO)(HC≡CH)、W(CO)(CHC≡CCH、W(CO)(CHCHC≡CCHCH、W(CO)(CH(CHC≡C(CHCH、W(CO)(HC≡CCH、W(CO)(HC≡CCHCH、W(CO)(HC≡C(CHCH、W(CO)(HC≡C(CHCH、W(CO)(HC≡C(CHCH、W(CO)(CHC≡CCHCH、W(CO)(CHC≡C(CHCH、W(CO)(CHC≡C(CHCH、W(CO)(CHCHC≡C(CHCH、W(CO)(HC≡CCH(CH、W(CO)(HC≡CC(CH、W(CO)(HC≡C(CHCH(CH、W(NO)(HC≡CH)、W(NO)(CHC≡CCH、W(NO)(CHCHC≡CCHCH、W(NO)(CH(CHC≡C(CHCH、W(NO)(HC≡CCH、W(NO)(HC≡CCHCH、W(NO)(HC≡C(CHCH、W(NO)(HC≡C(CHCH、W(NO)(HC≡C(CHCH、W(NO)(CHC≡CCHCH、W(NO)(CHC≡C(CHCH、W(NO)(CHC≡C(CHCH、W(NO)(CHCHC≡C(CHCH、W(NO)(HC≡CCH(CH、W(NO)(HC≡CC(CH、W(NO)(HC≡C(CHCH(CH、W(CHCN)(HC≡CH)、W(CHCN)(CHC≡CCH、W(CHCN)(CHCHC≡CCHCH、W(CHCN)(CH(CHC≡C(CHCH、W(CHCN)(HC≡CCH、W(CHCN)(HC≡CCHCH、W(CHCN)(HC≡C(CHCH、W(CHCN)(HC≡C(CHCH、W(CHCN)(HC≡C(CHCH、W(CHCN)(CHC≡CCHCH、W(CHCN)(CHC≡C(CHCH、W(CHCN)(CHC≡C(CHCH、W(CHCN)(CHCHC≡C(CHCH、W(CHCN)(HC≡CCH(CH、W(CHCN)(HC≡CC(CH、及びW(CHCN)(HC≡C(CHCH(CHからなる群より選択されるものを含むものであることができる。前記タングステン化合物は、W(CO)(CHCHC≡CCHCHを含むものであることができるが、これに限られるものではない。
【0045】
本願の一具体例において、前記タングステン化合物を含むタングステン−含有膜蒸着用前駆体組成物を用いて膜を形成することは、有機金属化学気蒸着法(MOCVD)または原子層蒸着法(ALD)により行われることを含むものであることができるが、これに限られるものではない。
【0046】
本願の一具体例において、前記タングステン−含有膜蒸着用前駆体組成物は、前記タングステン化合物の熱分解を抑制する安定剤をさらに含むことができるが、これに限られるものではない。例えば、前記安定剤は、アルキンの重合反応を抑制するものであって、前記重合反応を抑制するために通常的に用いられる抑制剤を特に制限せずに用いることができ、例えば、ベンゾキノン(benzoquinone)、テトラメチルベンゾキノン(tetramethylbenzoquinone)、クロラニル(chloranil、2,3,5,6−tetrachloro−1,4−benzoquinone)、4−tert−ブチルカテコール(4−tert−butylcatechol)、2,2−ジフェニル−1−ピクリルヒドラジル(2,2−diphenyl−1−picrylhydrazyl)などを含むものであることができるが、これに限られるものではない。本願の一具体例によるタングステン−含有膜蒸着用前駆体組成物が安定剤を含む場合、安定剤を含まない場合に比べてより低い温度でより優れた気化特性を有することができ、温度を高めたときに蒸発せずに残留する熱分解生成物の量を顕著に減少させることができる。
【0047】
本願の一具体例によるタングステン−含有膜蒸着用前駆体組成物が前記安定剤を含む場合、前記タングステン化合物と揮発する程度が類似した安定剤を用いることができる。前記タングステン化合物と前記安定剤が、前駆体組成物溶液の組成と同様な割合で揮発すれば、前記前駆体組成物の揮発が進行される間、前記前駆体組成物の組成が比較的一定に維持される。
【0048】
本願の一具体例による前駆体組成物において、前記タングステン化合物がW(CO)(CHCHC≡CCHCHを含み、前記安定剤は4−tert−ブチルカテコールを含むものであることができるが、これに限られるものではない。
【0049】
本願の第2の側面は、タングステン化合物を含むタングステン−含有膜蒸着用前駆体組成物に関し、本願の第1の側面と重複される部分については詳細な説明を省略したが、本願の第1の側面について説明した内容は、本願の第2の側面においてその説明が省略されても同様に適用できる。
【0050】
以下では、本願について実施例を用いてさらに具体的に説明するが、下記実施例は本願の理解を助けるために、例示するだけであり、本願の内容が下記実施例に限られるものではない。
【実施例】
【0051】
<製造例1>W(CO)(CHCHC≡CCHCHの製造。
タングステン前駆体化合物、トリス(3−へキシン)カルボニルタングステン[W(CO)(CHCHC≡CCHCH]は、知られた方法によって合成して得られた[Journal of the American Chemical Society(1963)、85(14)、2174]。得られたタングステン前駆体化合物に対して熱重量分析及び示差走査熱量計分析を行い、その結果は図1及び図2に示した。
【0052】
これに関し、図1は、本実施例により製造されたタングステン化合物の熱重量分析(TGA)グラフであり、図2は、本実施例により製造されたタングステン化合物の示差走査熱量計分析(DSC)グラフである。
【0053】
<実施例1>W(CO)(CHCHC≡CCHCH化合物と水素(H)気体を用いたタングステン−含有膜の形成及び断面分析。
前記製造例1で得られたトリス(3−へキシン)カルボニルタングステン[W(CO)(CHCHC≡CCHCH]気体と水素(H2)気体を相互に基材表面に接触させてタングステン−含有膜を形成した。基材としては、シリコン(Si)ウエハ、シリコン基材上に酸化シリコン(SiO)膜が100nmの厚さで覆われたウエハ、シリコン基材上に窒化シリコン(SiN)膜が50nmの厚さで覆われたウエハ、及びシリコン基材上に窒化チタン(TiN)膜が50nm厚さで覆われたウエハそれぞれを用いた。このとき、前記基材の温度は325℃及び350℃でそれぞれ加熱し、前記製造例1で得られた化合物をステンレススチール(stainless steel)材質の容器に入れ、70℃の温度で前記容器を加熱しながら60sccm(1sccm=1.667×10−8/s)の流速を有するアルゴン気体を運搬気体として用い、前記製造例1で得られた化合物を気化させた。前記基材の平らな面に水平した方向に気体が流れる反応基の工程圧力は0.5torrに調節し、前記タングステン前駆体気体と水素気体を相互に原子層蒸着チャンバ内に置かれた前記基材に接触させた。前記水素気体は60sccmで流した。前記製造例1で得られた化合物気体供給20秒→Ar気体供給10秒→水素気体供給10秒→Ar気体供給10秒の気体供給周期を300回繰り返した後に形成されたタングステン−含有膜の断面を走査電子顕微鏡(SEM)で観察し、その結果を図3A図3D及び図4A図4Dに示した。
【0054】
これに関し、図3A図3Dは、本実施例により前記基材の温度325℃で形成したタングステン−含有膜の断面走査電子顕微鏡イメージであり、図4A図4Dは、本実施例により前記基材の温度350℃で形成した膜の断面走査電子顕微鏡イメージである。図3A図3D及び図4A図4Dで確認できるように、前記基材の温度325℃及び350℃それぞれにおいて、シリコン、酸化シリコン、窒化シリコン、窒化チタン基材の上で全て表面が略平坦なタングステン−含有膜が得られたことを確認することができた。
【0055】
<実施例2>W(CO)(CHCHC≡CCHCH化合物と水素(H)またはアンモニア(NH)気体を用いて形成されたタングステン−含有膜の成分分析。
シリコン(Si)基材の温度は350℃で加熱し、前記製造例1で得られたタングステン化合物W(CO)(CHCHC≡CCHCHをステンレス鋼材質の容器に入れ、70℃の温度で容器を加熱しながら60sccmの流速を有するアルゴン気体を運搬気体として用い、前記製造例1で得られたタングステン−含有化合物を気化させた。反応基の工程圧力(working pressure)は0.5torr(1torr=133.3Pa)に調節し、前記製造例1で得られたタングステン化合物気体と水素気体またはアンモニア気体を相互に前記実施例1のような反応基の内に置かれた前記シリコン基材に接触させた。前記水素気体または前記アンモニア気体は500sccmの流速で流した。前記製造例1で得られた化合物気体供給10秒→Ar気体供給10秒→水素気体またはアンモニア気体供給20秒→Ar気体供給10秒の気体供給周期を300回繰り返すことで、タングステン−含有膜を形成した。以後、オージェ分光器を用いて前記形成されたタングステン−含有膜の深さによる炭素、窒素、酸素及びタングステンの含量を分析し、図5及び図6に示した。
【0056】
これに関し、図5は、本実施例により基材の温度350℃で水素(H)気体を用いて形成したタングステン−含有膜のオージェ(Auger)分析結果であり、図6は、本実施例により基材の温度350℃でアンモニア(NH)気体を用いて形成したタングステン−含有膜のオージェ分析結果である。図5及び図6で確認できるように、水素気体を用いた場合とアンモニア気体を用いた場合、いずれもシリコン基材上にタングステン含量が約75%であるタングステン−含有膜が形成されたことが分かった。
【0057】
<実施例3>4−tert−butylcatechol(TBC)安定剤が添加されたW(CO)(CHCHC≡CCHCHを含むタングステン−含有膜蒸着用前駆体組成物の熱重量分析(TGA)。
CVDまたはALDの目的で用いられる前駆体組成物の安全性を向上させるために、前記製造例1で製造されたタングステン化合物W(CO)(CHCHC≡CCHCHに4−tert−butylcatechol(TBC)を3,000ppm添加した、タングステン−含有膜蒸着用前駆体組成物の熱重量分析(TGA)を実施した。
【0058】
このとき、前記タングステン−含有膜蒸着用前駆体組成物サンプルを約5mg取り、アルミナ試料容器に入れた後、10℃/minの昇温速度で500℃まで熱重量分析測定を行い、その測定された結果を図7に示した。
【0059】
図7に示したように、TBC安定剤を含むタングステン−含有膜蒸着用前駆体組成物のTGAグラフにおいて、T1/2(温度による重量減少において元の試料の1/2重量に到逹するときに該当する温度)は205℃であって、TBCを含まないもののT1/2(212℃)に比べて7℃低くなったことが分かる。また、前記TBC安定剤を含むタングステン−含有膜蒸着用前駆体組成物の蒸発後の残余量が10.18%で、TBCを含まないものの残余量が16.96%であるのに比べて大きく減少したことが分かる。上記のような結果から、TBC安定剤を含むタングステン−含有膜蒸着用前駆体組成物がより低い温度でより優れた気化特性を有するということ及び温度を高めたときに蒸発せずに残る熱分解生成物の量が顕著に減少するということを確認することができる。したがって、CVDまたはALD方法を用いて基材にタングステン−含有膜を形成するために、前記安定剤をさらに含む前記タングステン−含有膜蒸着用前駆体組成物を用いる場合、前記組成物が熱的に安定してタングステン化合物前駆体を基材表面までさらに効率よく運搬することができる。
【0060】
安定剤を含むタングステン−含有膜蒸着用前駆体組成物を用いてタングステン−含有膜を製造する場合、ステンレス鋼材質の容器にTBCが含まれたタングステン−含有膜蒸着用前駆体組成物を入れること以外には、前記実施例1及び2と同一の方法を用いてタングステン−含有膜を形成することができる。安定剤(例えば、TBC)が含まれたタングステン−含有膜蒸着用前駆体組成が入ったステンレス鋼材質の容器は、前記実施例1及び2と同様に70℃の温度で加熱することもでき、これより低い温度の約63℃〜約70℃区間で選択された温度で加熱することもできるが、これに限られるものではない。
【0061】
前述した本願の説明は例示のためのものであり、本願が属する技術分野の通常の知識を有する者は、本願の技術的思想や必須的な特徴を変更しなくても、他の具体的な形態に容易に変形が可能であるということが理解できるだろう。よって、以上で記述した実施例は全ての面において例示的なものであり、限定的なものではないことを理解するべきである。例えば、単一型に説明されている各構成要素は分散して実施されることができると共に、これと同様に、分散したものと説明されている構成要素も、結合された形態に実施されることができる。
【0062】
本発明の範囲は、前記の詳細な説明よりは、後述する特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲の意味及び範囲、さらに、その均等概念から導出される全ての変更または変形された形態が本発明の範囲に含まれるものと解釈されるべきである。
図1
図2
図3a
図3b
図3c
図3d
図4a
図4b
図4c
図4d
図5
図6
図7