特許第6201214号(P6201214)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6201214飛行高度制御装置、飛行高度制御方法およびプログラム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6201214
(24)【登録日】2017年9月8日
(45)【発行日】2017年9月27日
(54)【発明の名称】飛行高度制御装置、飛行高度制御方法およびプログラム
(51)【国際特許分類】
   B64C 13/18 20060101AFI20170914BHJP
   B64C 39/02 20060101ALI20170914BHJP
【FI】
   B64C13/18 G
   B64C13/18 H
   B64C39/02
【請求項の数】9
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2013-267875(P2013-267875)
(22)【出願日】2013年12月25日
(65)【公開番号】特開2015-123793(P2015-123793A)
(43)【公開日】2015年7月6日
【審査請求日】2016年7月29日
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)平成25年度、総務省、「電波資源拡大のための研究開発」のうち「無人航空機を活用した無線中継システムと地上ネットワークとの連携及び共用技術の研究開発」委託研究産業技術力強化法第19条の適用を受ける特許出願
(73)【特許権者】
【識別番号】599108264
【氏名又は名称】株式会社KDDI総合研究所
(74)【代理人】
【識別番号】100114258
【弁理士】
【氏名又は名称】福地 武雄
(74)【代理人】
【識別番号】100125391
【弁理士】
【氏名又は名称】白川 洋一
(72)【発明者】
【氏名】小峯 敏彦
(72)【発明者】
【氏名】本間 寛明
(72)【発明者】
【氏名】渡辺 伸吾
【審査官】 前原 義明
(56)【参考文献】
【文献】 特開昭50−011609(JP,A)
【文献】 特開2013−139256(JP,A)
【文献】 特開2008−060994(JP,A)
【文献】 特開2009−033730(JP,A)
【文献】 国際公開第2010/110191(WO,A1)
【文献】 特開2014−091335(JP,A)
【文献】 米国特許第08116763(US,B1)
【文献】 特表2008−533761(JP,A)
【文献】 特開2010−183129(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B64C 13/18
B64C 39/02
B64C 13/20
B64C 45/02
B64C 47/08
H04W 84/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
無線通信装置を搭載する飛行体の飛行高度を制御する飛行高度制御装置であって、
前記飛行体に搭載されている無線通信装置および地上の無線通信装置の間で行なわれる無線通信で使用されているチャネルの品質を測定する無線品質測定部と、
前記測定したチャネルの品質に基づいて、前記飛行体に搭載されている無線通信装置の送信機会が得られるか否かを判断し、前記送信機会が得られる前記飛行体の飛行高度を決定する飛行高度決定部と、を備え、
前記飛行体を前記決定した高度で飛行させることを特徴とする飛行高度制御装置。
【請求項2】
前記飛行高度決定部は、前記判断の結果、前記送信機会が得られない場合は、飛行高度を上げる一方、前記送信機会が得られる場合は、飛行高度を維持し、または下げることを特徴とする請求項1記載の飛行高度制御装置。
【請求項3】
前記飛行高度決定部は、前記地上の無線通信装置から送信された信号の受信品質が要求品質を満たしている場合は、飛行高度を維持し、または上げる一方、前記受信品質が要求品質を満たしていない場合は、飛行高度を下げることを特徴とする請求項1記載の飛行高度制御装置。
【請求項4】
前記飛行高度決定部は、雑音電力が前記地上の無線通信装置から発せられた干渉電力より小さい場合は、飛行高度を維持し、または上げる一方、雑音電力が前記干渉電力よりも大きい場合は、飛行高度を下げることを特徴とする請求項1記載の飛行高度制御装置。
【請求項5】
前記無線品質測定部は、前記飛行体に搭載されている無線通信装置および地上の無線通信装置の間で行なわれるWi−Fi(Wireless Fidelity)通信で使用されているチャネルの品質を測定し、
前記飛行高度決定部は、Wi−Fiのプリアンブルを復調でき、一定時間内に第1の閾値以上の受信電力が一定割合以上得られている場合に、送信機会が得られないと判断するWi−FiのCS(Carrier Sense)判定を行なう一方、Wi−Fiのプリアンブルを復調できなかった信号または前記チャネルで非Wi−Fiの信号を受信し、一定時間内に第2の閾値以上の受信電力が一定割合以上得られている場合に、送信機会が得られないとする非Wi−FiのCS判定を行なうことを特徴とする請求項1記載の飛行高度制御装置。
【請求項6】
前記飛行高度決定部は、前記Wi−FiのCS判定の結果、送信機会が得られない場合は、飛行高度を上げる一方、前記Wi−FiのCS判定の結果、送信機会が得られる場合は、飛行高度を維持し、または下げることを特徴とする請求項5記載の飛行高度制御装置 。
【請求項7】
前記無線品質測定部は、前記飛行体に搭載されている無線通信装置および地上の無線通信装置の間で行なわれるWi−Fi(Wireless Fidelity)通信で使用されているチャネルの品質を測定し、
前記飛行高度決定部は、飛行高度とWi−Fiのプリアンブルを復調できた信号に対する受信電力とが対応する情報、および飛行高度とWi−Fiのプリアンブルを復調できなかった信号または前記チャネルで受信した非Wi−Fiの信号に対する受信電力とが対応する情報から構成されるテーブルを用いて、Wi−Fiのプリアンブルを復調できた信号の受信電力が第1の閾値以上となる飛行高度、またはWi−Fiのプリアンブルを復調できなかった信号または前記チャネルで受信した非Wi−Fiの信号の受信電力が第2の閾値以上となる飛行高度を選定することを特徴とする請求項1記載の飛行高度制御装置。
【請求項8】
無線通信装置を搭載する飛行体の飛行高度を制御する飛行高度制御方法であって、
無線品質測定部が、前記飛行体に搭載されている無線通信装置および地上の無線通信装置の間で行なわれる無線通信で使用されているチャネルの品質を測定するステップと、
飛行高度決定部が、前記測定したチャネルの品質に基づいて、前記飛行体に搭載されている無線通信装置の送信機会が得られるか否かを判断し、前記送信機会が得られる前記飛行体の飛行高度を決定するステップと、を備え、
前記飛行体を前記決定した高度で飛行させることを特徴とする飛行高度制御方法。
【請求項9】
無線通信装置を搭載する飛行体の飛行高度を制御する飛行高度制御装置のプログラムであって、
前記飛行体に搭載されている無線通信装置および地上の無線通信装置の間で行なわれる無線通信で使用されているチャネルの品質を測定する処理と、
前記測定したチャネルの品質に基づいて、前記飛行体に搭載されている無線通信装置の送信機会が得られるか否かを判断し、前記送信機会が得られる前記飛行体の飛行高度を決定する処理と、
前記飛行体を前記決定した高度で飛行させる処理と、の一連の処理をコンピュータに実行させることを特徴とするプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、無線通信装置を搭載する飛行体の飛行高度を制御する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
近時、自然災害の発生によって、交通手段や通信手段が遮断された孤立地域と迅速にネットワークを確立したり、火山、火事現場、高放射能地域などの人が立ち入ることが困難な危険地域でデータの収集や通信路確保を行なったりするための手段として、パイロットが搭乗せず、自律飛行が可能なUAS(Unmanned Aircraft System:無人航空機システムともいう)が提案されている。
【0003】
このようなUASでは、例えば、Wi−Fi(Wireless Fidelity)通信を用いることができる。Wi−Fiでは、通信しようとしているキャリアに対し、他のユーザが通信をしているかどうかを確認し(キャリアセンス)、他のユーザが通信をしていないタイミングで送信を行なう。
【0004】
非特許文献1において、受信機は、規格に準拠したOFDM(Orthogonal Frequency-Division Multiplexing)信号を6Mbit/s時の受信感度(20MHzチャネル間隔の場合は[−82dBm]、10MHzチャネル間隔の場合は[−85dBm])以上のレベルで受信したとき、20MHzチャネル間隔の場合には4μs以内、また、10MHzチャネル間隔の場合には8μs以内に、90%以上の確率でCCA(Clear Channel Assessment)にBusyを表示させる。Wi−Fiのプリアンブル部分を受信しなかった場合には、受信機は、最も低い伝送速度での受信感度を20dBほど超える受信レベルに対して、CS(Carrier Sense)信号としてBusyを保持する。
【0005】
例えば、10MHzのとき、Wi−Fiのプリアンブル部分を受信した場合には、8μsの間に[−85dBm]以上の受信電力が90%以上の確率で得られている場合には、Busyと判定する(以下、「Wi−FiのCS判定」と呼称する)。一方、Wi−Fiプリアンブル部分を受信しなかった場合には、8μsの間に[−65dBm]以上の受信電力が90%以上の確率で得られている場合には、Busyと判定する(以下、「非Wi−FiのCS判定」と呼称する)。このように、Busyと判定する際には、Wi−FiのCS判定に用いる閾値と、非Wi−FiのCS判定に用いる閾値とが異なっている。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0006】
【非特許文献1】ARIB STD-T71 5.2版,“広帯域移動アクセスシステム(CSMA)”
【非特許文献2】IEEE Std 802.11-2007,“IEEE Standard for Information technology-Telecommunications and information exchange between systems-Local and metropolitan area networks - Specific requirements, Part 11 : Wireless LAN Medium Access Control(MAC) and Physical Layer(PHY) Specifications”
【非特許文献3】小峯,本間,定,藤本,福原,樫木,渡辺,竹内“無人飛行機による耐遅延型メッセージ蓄積配信システムの提案”,2013年電子情報通信学会通信ソサエティ大会, B-3-17
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上述したような従来の技術では、無線通信装置を搭載した無人航空機等の飛行体と地表の通信端末との間は見通しを確保し易く、高い受信電力を得易い。このため、上空を飛行する飛行体は、広範囲に存在する地表のWi−Fi装置からの信号を受信すると、キャリアセンスによりBusyと判定され易く、送信機会がなかなか得られない場合が生ずる。
【0008】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであり、無線通信装置を搭載した飛行体の飛行高度を制御することによって、飛行体からの送信機会を確保し、スループットの向上、通信時間の短縮、飛行時間の短縮および飛行体の燃料消費またはバッテリ消費の削減を図ることができる飛行高度制御装置、飛行高度制御方法およびプログラムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
(1)上記の目的を達成するために、本発明は、以下のような手段を講じた。すなわち、本発明の飛行高度制御装置は、無線通信装置を搭載する飛行体の飛行高度を制御する飛行高度制御装置であって、前記飛行体に搭載されている無線通信装置および地上の無線通信装置の間で行なわれる無線通信で使用されているチャネルの品質を測定する無線品質測定部と、前記測定したチャネルの品質に基づいて、前記飛行体に搭載されている無線通信装置の送信機会が得られるか否かを判断し、前記送信機会が得られる前記飛行体の飛行高度を決定する飛行高度決定部と、を備え、前記飛行体を前記決定した高度で飛行させることを特徴とする。
【0010】
このように、チャネルの品質に基づいて、飛行体に搭載されている無線通信装置の送信機会が得られるか否かを判断し、送信機会が得られる飛行体の飛行高度を決定し、飛行体を決定した高度で飛行させるので、飛行体に搭載されている無線通信装置の送信機会を確実に得ることが可能となる。その結果、システム全体のスループットが向上し、通信時間が短縮し、飛行時間が短縮し、飛行体の燃料消費またはバッテリ消費が削減される。
【0011】
(2)また、本発明の飛行高度制御装置において、前記飛行高度決定部は、前記判断の結果、前記送信機会が得られない場合は、飛行高度を上げる一方、前記送信機会が得られる場合は、飛行高度を維持し、または下げることを特徴とする。
【0012】
このように、送信機会が得られない場合は、飛行高度を上げるので、通信状況を、送信機会が得られないと判断されない状況に変更することが可能となる。これにより、飛行体に搭載されている無線通信装置の送信機会を確実に得ることが可能となる。一方、送信機会が得られる場合は、飛行高度を維持し、または下げるので、受信電力に応じて地表の見通しにあり干渉となる無線送信装置の数を変化させることが可能となる。
【0013】
(3)また、本発明の飛行高度制御装置において、前記飛行高度決定部は、前記地上の無線通信装置から送信された信号の受信品質が要求品質を満たしている場合は、飛行高度を維持し、または上げる一方、前記受信品質が要求品質を満たしていない場合は、飛行高度を下げることを特徴とする。
【0014】
このように、地上の無線通信装置から送信された信号の受信品質が要求品質を満たしている場合は、飛行高度を維持し、または上げるので、干渉のレベルに応じて地表の見通しにあり干渉となる無線送信装置の数を変化させることが可能となる。一方、受信品質が要求品質を満たしていない場合は、飛行高度を下げるので、受信電力を高め、地表の見通しにあって干渉となる無線通信装置の数を減少させることが可能となる。
【0015】
(4)また、本発明の飛行高度制御装置において、前記飛行高度決定部は、雑音電力が前記地上の無線通信装置から発せられた干渉電力より小さい場合は、飛行高度を維持し、または上げる一方、雑音電力が前記干渉電力よりも大きい場合は、飛行高度を下げることを特徴とする。
【0016】
このように、雑音電力が地上の無線通信装置から発せられた干渉電力より小さい場合は、飛行高度を維持し、または上げるので、送信機会が得られるかどうかに応じて地表の見通しにあって干渉となる無線送信装置の数を変化させることが可能となる。一方、雑音電力が干渉電力よりも大きい場合は、飛行高度を下げるので、通信品質の低下を防止することが可能となる。
【0017】
(5)また、本発明の飛行高度制御装置において、前記無線品質測定部は、前記飛行体に搭載されている無線通信装置および地上の無線通信装置の間で行なわれるWi−Fi(Wireless Fidelity)通信で使用されているチャネルの品質を測定し、前記飛行高度決定部は、Wi−Fiのプリアンブルを復調でき、一定時間内に第1の閾値以上の受信電力が一定割合以上得られている場合に、送信機会が得られないと判断するWi−FiのCS(Carrier Sense)判定を行なう一方、Wi−Fiのプリアンブルを復調できなかった信号または前記チャネルで非Wi−Fiの信号を受信し、一定時間内に第2の閾値以上の受信電力が一定割合以上得られている場合に、送信機会が得られないとする非Wi−FiのCS判定を行なうことを特徴とする。
【0018】
このように、Wi−Fiのプリアンブルを復調でき、一定時間内に第1の閾値以上の受信電力が一定割合以上得られている場合に、送信機会が得られないと判断するWi−FiのCS判定を行なう一方、Wi−Fiのプリアンブルを復調できなかった信号または前記チャネルで非Wi−Fiの信号を受信し、一定時間内に第2の閾値以上の受信電力が一定割合以上得られている場合に、送信機会が得られないとする非Wi−FiのCS判定を行なうので、Wi−FiのCS判定がBusyである場合、飛行高度を上げることによって受信電力が減少し、Wi−Fiのプリアンブルを復調できなくなる信号が、Wi−Fiであるにもかかわらず非Wi−Fiの信号と認識されることとなる。その結果、Wi−FiのCS判定がBusyでなくなり、Wi−Fiにおいて送信機会を得ることが可能となる。
【0019】
(6)また、本発明の飛行高度制御装置において、前記飛行高度決定部は、前記Wi−FiのCS判定の結果、送信機会が得られない場合は、飛行高度を上げる一方、前記Wi−FiのCS判定の結果、送信機会が得られる場合は、飛行高度を維持し、または下げることを特徴とする。
【0020】
このように、Wi−FiのCS判定の結果、送信機会が得られない場合は、飛行高度を上げるので、通信状況を、送信機会が得られないと判断されない状況に変更することが可能となる。一方、Wi−FiのCS判定の結果、送信機会が得られる場合は、飛行高度を維持し、または下げるので、受信電力を高め、地表の見通しにあって干渉となる無線通信装置の数を減少させることが可能となる。
【0021】
(7)また、本発明の飛行高度制御装置において、前記無線品質測定部は、前記飛行体に搭載されている無線通信装置および地上の無線通信装置の間で行なわれるWi−Fi(Wireless Fidelity)通信で使用されているチャネルの品質を測定し、前記飛行高度決定部は、飛行高度とWi−Fiのプリアンブルを復調できた信号に対する受信電力とが対応する情報、および飛行高度とWi−Fiのプリアンブルを復調できなかった信号または前記チャネルで受信した非Wi−Fiの信号に対する受信電力とが対応する情報から構成されるテーブルを用いて、Wi−Fiのプリアンブルを復調できた信号の受信電力が第1の閾値以上となる飛行高度、またはWi−Fiのプリアンブルを復調できなかった信号または前記チャネルで受信した非Wi−Fiの信号の受信電力が第2の閾値以上となる飛行高度を選定することを特徴とする。
【0022】
このように、テーブルを用いて、Wi−Fiのプリアンブルを復調できた信号の受信電力が第1の閾値以上となる飛行高度、またはWi−Fiのプリアンブルを復調できなかった信号または前記チャネルで受信した非Wi−Fiの信号の受信電力が第2の閾値以上となる飛行高度を選定するので、処理負荷を軽減し、消費電力を削減することができる。その結果、通信時間が短縮し、飛行時間が短縮し、飛行体の燃料消費またはバッテリ消費が削減される。
【0023】
(8)また、本発明の飛行高度制御方法は、無線通信装置を搭載する飛行体の飛行高度を制御する飛行高度制御方法であって、無線品質測定部が、前記飛行体に搭載されている無線通信装置および地上の無線通信装置の間で行なわれる無線通信で使用されているチャネルの品質を測定するステップと、飛行高度決定部が、前記測定したチャネルの品質に基づいて、前記飛行体に搭載されている無線通信装置の送信機会が得られるか否かを判断し、前記送信機会が得られる前記飛行体の飛行高度を決定するステップと、を備え、前記飛行体を前記決定した高度で飛行させることを特徴とする。
【0024】
このように、チャネルの品質に基づいて、飛行体に搭載されている無線通信装置の送信機会が得られるか否かを判断し、送信機会が得られる飛行体の飛行高度を決定し、飛行体を決定した高度で飛行させるので、飛行体に搭載されている無線通信装置の送信機会を確実に得ることが可能となる。その結果、システム全体のスループットが向上し、通信時間が短縮し、飛行時間が短縮し、飛行体の燃料消費またはバッテリ消費が削減される。
【0025】
(9)また、本発明のプログラムは、無線通信装置を搭載する飛行体の飛行高度を制御する飛行高度制御装置のプログラムであって、前記飛行体に搭載されている無線通信装置および地上の無線通信装置の間で行なわれる無線通信で使用されているチャネルの品質を測定する処理と、前記測定したチャネルの品質に基づいて、前記飛行体に搭載されている無線通信装置の送信機会が得られるか否かを判断し、前記送信機会が得られる前記飛行体の飛行高度を決定する処理と、前記飛行体を前記決定した高度で飛行させる処理と、の一連の処理をコンピュータに実行させることを特徴とする。
【0026】
このように、チャネルの品質に基づいて、飛行体に搭載されている無線通信装置の送信機会が得られるか否かを判断し、送信機会が得られる飛行体の飛行高度を決定し、飛行体を決定した高度で飛行させるので、飛行体に搭載されている無線通信装置の送信機会を確実に得ることが可能となる。その結果、システム全体のスループットが向上し、通信時間が短縮し、飛行時間が短縮し、飛行体の燃料消費またはバッテリ消費が削減される。
【発明の効果】
【0027】
本発明によれば、飛行体に搭載されている無線通信装置の送信機会を確実に得ることが可能となる。その結果、システム全体のスループットが向上し、通信時間が短縮し、飛行時間が短縮し、飛行体の燃料消費またはバッテリ消費が削減される。
【図面の簡単な説明】
【0028】
図1】本実施形態に係る飛行高度制御装置の概略構成を示すブロック図である。
図2】本実施形態に係る飛行高度制御装置の動作例を示すフローチャートである。
図3】実施例1の概念を示す図である。
図4】Wi−Fiと非Wi−Fiの高度とRSSIとの関係を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0029】
本発明者らは、Wi−Fi(Wireless Fidelity)および非Wi−FiのCS判定で、Busyとされる閾値が異なる点に着目し、Wi−FiのCS(Carrier Sense)判定がBusyである場合は、飛行体の飛行高度を上げることによって、Wi−Fiの信号であっても受信電力が減少し、プリアンブルの復調ができなくなり、非Wi−Fiの信号として認識され、Wi−Fiの送信機会が得られることを見出し、本発明をするに至った。
【0030】
すなわち、本発明の飛行高度制御装置は、無線通信装置を搭載する飛行体の飛行高度を制御する飛行高度制御装置であって、前記飛行体に搭載されている無線通信装置および地上の無線通信装置の間で行なわれる無線通信で使用されているチャネルの品質を測定する無線品質測定部と、前記測定したチャネルの品質に基づいて、前記飛行体に搭載されている無線通信装置の送信機会が得られるか否かを判断し、前記送信機会が得られる前記飛行体の飛行高度を決定する飛行高度決定部と、を備え、前記飛行体を前記決定した高度で飛行させることを特徴とする。
【0031】
この構成により、本発明者らは、飛行体に搭載されている無線通信装置の送信機会を確実に得ることを可能とした。さらに、システム全体のスループットを向上させ、通信時間を短縮し、飛行時間を短縮し、飛行体の燃料消費またはバッテリ消費を削減することを可能とした。以下、本発明の実施形態について、図面を参照しながら具体的に説明する。
【0032】
図1は、本実施形態に係る飛行高度制御装置の概略構成を示すブロック図である。無線品質測定部1は、CS閾値情報を入力し、CS情報、受信品質情報および干渉情報を出力する。CS閾値情報は、Wi−Fiと非Wi−FiのBusy判定を行なうための閾値であり、内部メモリ等から取得する。CS情報は、Wi−Fi通信を行なっているチャネルにおいて、Wi−Fiと非Wi−Fiの受信品質を測定し、それぞれBusyであるか否かを判断した(キャリアセンスを実施した)結果である。この値は、Wi−Fiにおける標準仕様に従って算出される。なお、Wi−Fiチップで算出した値を取得しても良いし、無線のパケットをキャプチャしてこの値を算出しても良い。また、CS情報を、Wi−Fiと非Wi−Fiの受信品質およびCS閾値情報としても良い。
【0033】
受信品質情報は、通信しているAP/STAのRSSI、SINR、SNRなどの受信品質を示す情報である。干渉情報は、Wi−Fi通信を行なっているチャネルにおいて、自装置と通信しているAP/STA以外の装置からの受信品質である。
【0034】
飛行高度決定部3は、CS情報、受信品質情報、干渉情報、要求品質情報、雑音情報、高度情報、要求高度情報などを入力し、制御情報を出力する。要求品質情報は、Wi−Fiにおいて要求される通信品質であり、RSSI、SINR、SNRなどがこれに該当する。雑音情報は、自装置の雑音電力であり、熱雑音などがこれに該当する。高度情報は、飛行体、例えば、無人航空機の現在の高度を示す情報である。要求高度情報は、飛行体の飛行すべき高度の範囲を示す情報である。制御情報は、航空機を上昇させるか、または高度を維持するかを示す情報である。
【0035】
飛行高度制御部5は、入力した制御情報に基づいて、飛行体の飛行高度を制御する。なお、本実施形態では、自律飛行が可能な無人航空機(例えば、UAE)を例にとって説明する。
【0036】
図2は、本実施形態に係る飛行高度制御装置の動作例を示すフローチャートである。まず、現在の飛行高度が、要求高度の範囲を満たしているかどうかを判断する(ステップS1)。現在の飛行高度が、要求高度の範囲を満たしていない場合は、要求高度を満たすように、無人航空機の飛行高度を制御する(ステップS2)。一方、ステップS1において、要求高度の範囲を満たしている場合は、通信しているAP/STAからの受信品質が、要求品質を満たしているかどうかを判断する(ステップS3)。ステップS3において、通信しているAP/STAからの受信品質が、要求品質を満たしていない場合は、受信電力を高め、地表の見通しにあって干渉となるWi−Fi装置の数を少なくするために、高度を下げて(ステップS4)、終了する。
【0037】
一方、ステップS3において、通信しているAP/STAからの受信品質が、要求品質を満たしている場合は、雑音(電力)が干渉(電力)よりも大きいかどうかを判断する(ステップS5)。雑音(電力)が干渉(電力)よりも大きい場合は、通信品質(例えば、SINR)が低下することを防止するために、高度を下げて(ステップS4)、終了する。一方、ステップS5において、雑音(電力)が干渉(電力)よりも大きくない場合は、Wi−FiのCS判定結果がBusyであるかどうかを判断する(ステップS6)。
【0038】
ステップS6において、Wi−FiのCS判定結果がBusyでない場合は、受信電力を高め、地表の見通しにあって干渉となるWi−Fi装置の数を少なくするために、高度を下げて(ステップS4)、終了する。一方、ステップS6において、Wi−FiのCS判定結果がBusyである場合は、非Wi−FiのCS判定結果がBusyであるかどうかを判断し(ステップS7)、非Wi−FiのCS判定結果がBusyでない場合は、受信電力を高め、地表の見通しにあって干渉となるWi−Fi装置の数を少なくするために、高度を下げて(ステップS4)、終了する。一方、ステップS7において、非Wi−FiのCS判定結果がBusyである場合は、干渉を減らすために、飛行高度を上げて(ステップS8)、終了する。なお、以上説明したステップS1〜S7の判断は、どのような順番で行なっても構わない。
【実施例1】
【0039】
図3は、実施例1の概念を示す図である。Wi−Fiと非Wi−FiでCS判定を行なう場合、閾値は異なる。例えば、Wi−Fiの閾値は、「−85dBm」であり、非Wi−Fiの閾値は、「−65dBm」である。すなわち、非Wi−Fiの方が、Busyと判定される条件が緩いこととなる。実施例1では、この差を利用して無人航空機の飛行高度を制御する。
【0040】
すなわち、Wi−FiのCS判定がBusyである場合、飛行高度を上げることによって、受信電力が減少する。これにより、Wi−Fiのプリアンブルを復調できなくなる信号が、非Wi−Fiの信号として認識されることとなる。これにより、Wi−Fiおよび非Wi−Fiを共にBusy判定とならないように飛行高度を制御する。
【実施例2】
【0041】
実施例2では、実施例1のように、飛行高度の上下の候補の算出を、過去に算出した履歴を用いて行ない、最終的に飛行高度を決定する。この構成により、履歴との平均をとるので、瞬時に得られる結果に依存されずに飛行高度を決定することが可能となる。
【実施例3】
【0042】
実施例3では、CS情報を、Wi−Fiと非Wi−Fiの受信品質およびCS閾値情報とする。飛行高度決定部3は、事前に保持している対応情報、CS情報、高度情報を用いて高度を決定しても良い。この対応情報とは、図4に示すように、事前に保持している飛行高度と、Wi−Fiの受信品質、および飛行高度と非Wi−Fiの受信品質の関係を表わす情報である。測定したWi−Fiおよび非Wi−Fiの受信品質情報と飛行高度情報から、対応情報を補正し、補正された対応表を用いて、Wi−Fiおよび非Wi−FiのBusy判定を行なうための閾値となる高度を求める。対応表の補正は、測定したWi−Fiおよび非Wi−Fiの受信品質と、保有している対応表に記載のWi−Fiおよび非Wi−Fiの受信品質の差分をオフセットすることにより行なう。また、対応表の補正は、対応表で表わされる高度と受信品質との傾きを測定した高度と受信品質の傾きに一致させることにより行なっても良い。なお、この補正は必ずしもする必要はない。
【0043】
また、対応表は、事前に保持したのもではなく、飛行高度を変化させ、測定したWi−Fiおよび非Wi−Fiの受信品質情報と高度情報とから作成し、それに基づいて高度を決定しても良い。
【実施例4】
【0044】
実施例4では、無人航空機の1度のフライトで、本装置に入力される情報を保持し、オフラインで本装置を用いて飛行高度を決定する。そして、次回のフライト時に飛行高度を設定する。
【実施例5】
【0045】
実施例5では、飛行高度決定部3の機能を、地上の装置が行なう。この場合、飛行高度決定部3への入力情報や、飛行高度決定部3からの出力情報を無人航空機と地上の装置との間で通信する。また、地上の装置が無線品質測定部を備え、飛行高度決定部に測定結果を入力しても良い。これは、特に、災害時に避難所で利用する場合、地上のほとんどのWi−Fi装置が停止しており、かつ、遮蔽物のないグラウンド等で利用することが想定され、上空と地上の特性が一致することが想定されるためである。この場合、地上の装置から無人航空機に対して飛行高度を指示するため、当該地上装置と通信するために適した飛行高度を迅速に通知することができる。また、無人航空機側に装置を設ける必要がなくなり、ペイロード、消費電力の観点からも有効である。
【0046】
なお、Wi−Fi装置が、隠れ端末を回避し、安定した通信を確保するためRTS/CTSを送信する場合があるが、RTSの送信機会を得ることができない場合でも、本発明により送信機会を得ることができ、当該チャネルを占有して通信することが可能となる。
【符号の説明】
【0047】
1 無線品質測定部
3 飛行高度決定部
5 飛行高度制御部
図1
図2
図3
図4