(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、歯科用CT撮影の場合は、被写体がFOVからはみ出すことが多いため(例えば特許文献1参照)、数値的な誤差が生じる。その結果、歯科用CT撮影は、被写体のFOVからのはみ出し方に依存して定数であるはずのaの値が著しく変動する。
【0007】
ここで一例として、FOVが広い全歯CT撮影モードで頭部ファントムを撮影して得られた測定画像を従来の再構成アルゴリズムで再構成した再構成ボリュームデータを
図15(a)に示し、FOVが狭い局所CT撮影モードで同一の頭部ファントムを撮影して得られた測定画像を従来の再構成アルゴリズムで再構成した再構成ボリュームデータを
図15(b)に示す。
【0008】
また、
図15の再構成ボリュームデータの各注目点に対応する各ボクセル値を
図16に示す。注目点1は前歯のエナメル質であり、注目点2は前歯の象牙質であり、注目点3は歯列内側の軟組織であり、注目点4は歯列外側の軟組織である。
図16から明らかなように、FOVの大きさが異なり被写体のFOVからのはみ出し方が異なることで、同一の注目点に対応するボクセル値が変動している。
【0009】
本発明は、上記の状況に鑑み、被写体がFOVからはみ出し、そのはみ出し方が互いに異なる複数の撮影モード間でのボクセル値の変動を抑えることができる画像再構成装置、画像再構成方法、及びX線撮影装置を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成するために本発明に係る画像再構成装置は、X線が照射された領域に対応する測定画像を対数変換して投影画像を得る対数変換処理手段と、前記投影画像の横方向端部に所定の画素値を外挿し、外挿後の前記投影画像に対して高周波強調フィルタを畳み込み積分する積分処理手段とを備え、被写体がFOVからはみ出し、そのはみ出し方が互いに異なる複数の撮影モードでの前記測定画像それぞれを再構成する場合に、前記高周波強調フィルタの長さを前記複数の撮影モード間で統一している構成としている。
【0011】
また、被写体がFOVからはみ出し、そのはみ出し方が互いに異なる複数の撮影モードでの前記測定画像それぞれを再構成する場合に、前記高周波強調フィルタの長さが外挿前の前記投影画像の横方向画素数のN倍であり、外挿後の前記投影画像の横方向画素数が外挿前の前記投影画像の横方向画素数の(N+1)倍以上であることが望ましい。
【0012】
また、上記目的を達成するために本発明に係る画像再構成方法においては、X線が照射された領域に対応する測定画像を対数変換して投影画像を得る対数変換処理ステップと、前記投影画像の横方向端部に所定の画素値を外挿し、外挿後の前記投影画像に対して高周波強調フィルタを畳み込み積分する積分処理ステップとを備え、被写体がFOVからはみ出し、そのはみ出し方が互いに異なる複数の撮影モードでの前記測定画像それぞれを再構成する場合に、前記高周波強調フィルタの長さを前記複数の撮影モード間で統一している。
【0013】
また、上記目的を達成するために本発明に係るX線撮影装置においては、被写体に対してX線を照射するX線照射部と、前記被写体を透過したX線を検出するX線検出部と、前記X線検出部の検出結果に基づく測定画像を再構成する上記構成の画像再構成装置とを備える構成としている。
【発明の効果】
【0014】
本発明によると、高周波強調フィルタの長さを、被写体がFOVからはみ出し、そのはみ出し方が互いに異なる複数の撮影モード間で統一しているので、被写体のFOVからのはみ出し方に依存して上記式(1)における定数aの値が変動することを抑えることができる。これにより、被写体がFOVからはみ出し、そのはみ出し方が互いに異なる複数の撮影モード間でのボクセル値の変動を抑えることができる。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明の実施形態について図面を参照して以下に説明する。
【0017】
まず始めに、本発明の一実施形態に係るX線撮影装置の本体部1(以下、「X線撮影装置の本体部1」と称す)の構成について
図1を参照して説明する。
図1はX線撮影装置1の本体部の外観を示す図であり、
図1(a)は上面図、
図1(b)は正面図、
図1(c)は側面図である。
【0018】
X線撮影装置の本体部1は、歯科用あるいは耳鼻科用等のX線撮影装置の本体部であって、床面に載置されるベース2と、ベース2から鉛直方向に立設された下部ポール3と、鉛直方向にスライド可能に下部ポール3に接続される上部ポール4と、上部ポール4の上端部に固定されている固定アーム5と、回転可能に固定アーム5に接続される旋回アーム6と、上部ポール4の中央部に固定されており被写体(例えば歯など)を含む人体の頭部を保持する頭部保持部7とを備えている。実施形態では、固定アーム5が上部ポール4に固定されているが、例えば、X線撮影装置の本体部1を設置する部屋の壁や天井に固定アーム5が直接あるいは部屋の壁や天井との距離を調整することができる調整機構を介して取り付けられる態様であってもよい。
【0019】
旋回アーム6は、被写体に対してX線を照射するX線照射部8と、被写体を透過したX線を検出するX線検出部9とを対向して配置している。本実施形態では、X線検出部9として、照射されたX線に応じて電気信号を生成する変換素子が二次元状に配置されている二次元X線検出器を用いる。
【0020】
X線撮影装置の本体部1の撮影モードは特に限定されないが、例えば、パノラマ撮影モードやCT撮影モードを挙げることができる。パノラマ撮影モードでは、X線照射部8及びX線検出部9が歯列弓の形状に沿った所定の軌跡を描くように、旋回アーム6の旋回軸を旋回軸に垂直な方向(X方向、Y方向)に移動させ、旋回アーム6を旋回軸回りに旋回させながら断層撮影を行う。CT撮影モードでは、頭部の対象撮影領域(FOV)を中心にして旋回アーム6を回転させながら、対象撮影領域(FOV)の断層撮影を行う。
【0021】
ここで、パノラマ撮影モードについて
図2を参照してより詳細に説明する。
図2はパノラマ撮影モードの標準(成人用)軌道を示している。パノラマ撮影モードの標準(成人用)軌道では、X線照射部8及びX線検出部9が仮想歯列弓201の形状に沿った所定の軌跡を描いてX線ビームの軌跡が包絡線状の軌跡202になるように、X線照射部8及びX線検出部9が配置されている旋回アーム6を、撮影開始位置P1から
図2に示す軌道に沿って撮影終了位置P2まで移動させる。撮影開始位置P1と撮影終了位置P2との間における旋回アーム6の旋回角度は約220度である。なお、撮影終了位置P2を除く
図2に示された旋回アーム6の位置は被写体の撮影領域の左半分における各撮影位置である。X線照射部8のX線焦点8Aから射出されるX線は、X線照射部8に設けられているX線絞り8Bによって絞られ、X線検出部9上でのX線ビーム幅Wが調整される。
【0022】
パノラマ撮影モードは、上述した標準(成人用)軌道の他に、小児用軌道、直行軌道、顎関節撮影軌道、上顎洞撮影軌道などを有していることが好ましい。小児用軌道は、仮想歯列弓201の形状が小さくなる点が標準軌道と異なっている。直行軌道は、各撮影位置でのX線ビームが患者歯列弓203の歯と歯の間を通過するようにしている点が標準軌道と異なっている。顎関節撮影軌道(側面)は、X線照射部8及びX線検出部9が仮想歯列弓201の両端部分(顎関節撮影可能部分)の形状に沿った所定の軌跡を描くように旋回アーム6を移動させる点が標準軌道と異なっている。顎関節撮影軌道(正面)は、X線照射部8及びX線検出部9が仮想線204の形状に沿った所定の軌跡を描くように旋回アーム6を移動させる点が標準軌道と異なっている。上顎洞撮影軌道は、X線照射部8及びX線検出部9が仮想線205の形状に沿った所定の軌跡を描くように旋回アーム6を移動させる点が標準軌道と異なっている。
【0023】
続いて、CT撮影モードについて
図3〜
図8を参照してより詳細に説明する。なお、
図3〜
図8において
図2と同一の部分には同一の符号を付す。
【0024】
局所CT撮影モードは、歯顎領域内の上下歯牙領域全体よりも狭い特定の領域を撮影対象とするCT撮影モードである。局所CT撮影モードのFOVは例えば直径51mm高さ55mmの円柱形状の空間領域である。
図3は局所CT撮影モードの軌道を示している。局所CT撮影モードでは、
図3に示すように、X線検出部9の中心がX線照射部8と旋回アーム6の旋回軸中心206とを結ぶラインの延長線上にくるように旋回アーム6を旋回させながら複数の撮影位置で撮影が行われる。また、局所CT撮影モードでは、通常、
図3に示すように、旋回アーム6の旋回軸中心206は定位置になっている。なお、
図3には撮影位置として4箇所が図示されているが、これはあくまで例示であり撮影位置は図示された箇所に限定されるものではない。
【0025】
局所CT撮影モードは、後述する全歯CT撮影モードや全顎CT撮影モードに比べてX線検出部9上でのX線ビーム幅Wが狭いため、X線検出部9のサイズが小さくても実施可能である。
【0026】
なお、局所CT撮影モードでは、撮影対象部位(関心領域)の中心を何処に設定するかに応じて旋回アーム6の旋回軸中心206の位置を変えるようにしており、通常、
図3に示すように、撮影対象部位(関心領域)の中心と旋回アーム6の旋回軸中心206の位置とが一致するように位置調整がなされる。局所CT撮影モードにおける撮影対象部位(関心領域)の中心は任意に設定することができる。
図3に示した位置設定の他にも、例えば、
図4に示すように撮影対象部位(関心領域)の中心208を仮想歯列弓201上の前歯の位置に設定することもでき、
図5に示すように撮影対象部位(関心領域)の中心208を仮想歯列弓201上の左顎の位置に設定することもでき、
図6に示すように撮影対象部位(関心領域)の中心208を仮想歯列弓201上の右第2小臼歯の位置に設定することもでき、その他種々の位置設定が可能である。
【0027】
全歯CT撮影モードは、上下歯牙領域全体を撮影対象とするCT撮影モードである。全歯CT撮影モードのFOVは例えば直径97mm高さ100mmの円柱形状の空間領域である。
図7は全歯CT撮影モードの軌道を示している。全歯CT撮影モードでは、
図7に示すように、X線検出部9の中心がX線照射部8と旋回アーム6の旋回軸中心206とを結ぶラインの延長線上にくるように旋回アーム6を旋回させながら複数の撮影位置で撮影が行われる。また、全歯CT撮影モードでは、通常、
図7に示すように、旋回アーム6の旋回軸中心206は定位置になっている。なお、
図7には撮影位置として4箇所が図示されているが、これはあくまで例示であり撮影位置は図示された箇所に限定されるものではない。
【0028】
全歯CT撮影モードは、上述した局所CT撮影モードに比べて撮影対象が広範囲になりX線検出部9上でのX線ビーム幅Wが広くなるため、その広いX線ビーム幅Wに見合ったX線検出部9のサイズを必要とする。
【0029】
全顎CT撮影モードは、歯顎領域の全ての範囲を撮影対象とするCT撮影モードである。全顎CT撮影モードのFOVは例えば直径161mm高さ100mmの円柱形状の空間領域である。
図8は全顎CT撮影モードの軌道を示している。全顎CT撮影モードでは、
図8に示すように、X線検出部9の中心がX線照射部8と旋回アーム6の旋回軸中心206とを結ぶラインの延長線上からずれるように旋回アーム6を旋回させながら複数の撮影位置で撮影が行われる。また、全顎CT撮影モードでは、通常、
図8に示すように、旋回アーム6の旋回軸中心206は定位置になっている。なお、
図8には撮影位置として4箇所が図示されているが、これはあくまで例示であり撮影位置は図示された箇所に限定されるものではない。
【0030】
全顎CT撮影モードは、X線検出部9の中心をX線照射部8と旋回アーム6の旋回軸中心206とを結ぶラインの延長線上からずらして撮影を行っているので、上述した全歯CT撮影モードよりもFOV207を拡大することができる。したがって、X線検出部9のサイズアップを抑えながら歯顎領域の全ての範囲を撮影対象とすることができる。
【0031】
なお、全顎CT撮影モードにおいて、X線検出部9をサイズアップして、X線検出部9上でのX線ビーム幅Wを
図8に示す場合よりも拡大し、FOVを例えば直径230mm高さ164mmの円柱形状の空間領域にすることで、歯顎領域の全ての範囲のみならず、頭頸部領域の全ての範囲を撮影対象とすることも可能である。
【0032】
上述したパノラマ撮影モード及びCT撮影モードでは、撮影時に患者歯列弓203が想定した位置(
図2、
図3、
図7、
図8に図示した位置)に存在することで、撮影者が意図していた通りの撮影を行うことができる。患者歯列弓203の想定した位置への位置合わせを容易に実現する方法としては、例えば、光ビームを利用する方法を挙げることができる。当該光ビームとしては、例えば、頭の正中線の位置を示す正中線光ビーム、眼窩下縁と外耳道を結ぶ線の位置を示す水平線光ビーム、犬歯の位置(断層撮影の基準位置)を示す断層基準線光ビームなどがあり、これらの光ビームの出力部をX線撮影装置に設け、これらの光ビームを参考にして患者が頭の位置を微調整するとよい。
【0033】
また、旋回アーム6から離れた位置に設置するセファロ用ユニット(不図示)を用い、セファロ撮影モードでの撮影が行えるようにしてもよい。セファロ用ユニットは、被写体を透過 したX線を検出して、被写体をセファロ撮影するためのセファロ用X線検出部と、頭部を固定するための頭部固定部とを備える。セファロ撮影は、歯科矯正の診断等に用いられ、頭部規格X線撮影法(セファロ撮影法)を用いて撮影する。セファロ撮影では、例えば、頭部固定部のイヤーロッドを頭部の左右の外耳孔部に挿入して固定し、旋回アーム6に設けられたX線照射部8からX線を照射して、被写体を透過したX線をセファロ用X線検出部で検出する。
【0034】
本発明の一実施形態に係るX線撮影装置は、X線撮影装置の本体部1の他に、
図9に示す画像処理装置10も備えている。
【0035】
画像処理装置10は、ROM102やHDD107に格納されているプログラムに従って画像処理装置10全体を制御するCPU101と、固定的なプログラムやデータを記録するROM102と、作業メモリを提供するRAM103と、X線撮影装置の本体部1内に格納されX線撮影装置の本体部1の各部を制御する制御部(不図示)との間で通信を行うための通信インターフェース部104と、画像データを一時的に記憶するVRAM105と、VRAM105に記憶された画像データに基づいて画像を表示する表示部106と、前記制御部及びCPU101が協働してX線撮影動作を制御するための撮影制御プログラム、再構成画像を生成するための画像再構成処理プログラム等の各種プログラム、各種プログラムを実行する際に用いられる各種パラメータの設定値、並びに、再構成画像データ等の各種データを記憶するHDD107と、キーボード、ポインティングデバイス等の入力部108とを備えている。
【0036】
画像処理装置10と前記制御部との通信方法は、有線通信でもよく、無線通信でもよく、有線と無線を組み合わせた通信であってもよい。画像処理装置10としては、例えば、パーソナルコンピュータを挙げることができる。なお、画像処理装置10は、画像処理以外に、X線撮影装置の本体部1の遠隔操作、画像表示も行う。HDD107に記憶されている各プログラムは、画像処理装置10にプリインストールされていてもよく、光ディスク等の記憶媒体に格納された形態で流通されて画像処理装置10にインストールされてもよく、ネットワークを介して流通されて画像処理装置10にインストールされてもよい。
【0037】
画像再構成処理プログラムを実行すると、画像処理装置10は画像再構成処理装置として機能する。
【0038】
X線検出部9から出力され、画像処理装置10が受信する画像は、測定画像と呼ばれる。測定画像の各画素値は、X線検出部9の各検出素子に到達したX線量子の個数に比例した値を表しているとみなすことができる。
【0039】
ここで、FOVが広い全歯CT撮影モードで頭部ファントムを撮影して得られた測定画像を
図10(a)に示し、FOVが狭い局所CT撮影モードで同一の頭部ファントムを撮影して得られた測定画像を
図10(b)に示す。また、FOVが広い全歯CT撮影モードでのX線が照射された領域に対応する測定画像を
図11(a)に示し、FOVが狭い局所CT撮影モードでのX線が照射された領域に対応する測定画像を
図11(b)に示す。
図11(a)は
図10(a)と同一であり、
図11(b)は
図10(b)からX線が照射された領域のみを切り取った画像である。
【0040】
画像再構成処理プログラムで使用される再構成アルゴリズムは、X線量子の個数ではなく、X線の線減弱係数の線積分を用いて断面を再構成する。このため、画像再構成処理において、X線が照射された領域に対応する測定画像は、次の式(2)によって線減弱係数の線積分の分布を示す画像(投影画像)に対数変換される。
【数2】
ここで、iは画素のラベルであり、I
0(i)は被写体が存在しないときの測定画像の画素値であり、I(i)は今回再構成を所望する被写体を置いたときの測定画像の画素値であり、sはX線の経路であり、μ(s)は位置sにおける線減弱係数である。
【0041】
さらに、画像再構成処理において、投影画像の横方向端部に所定の画素値が外挿され、外挿後の前記投影画像に対して高周波強調フィルタを畳み込み積分する積分処理が行われる。
【0042】
本実施形態では、全歯CT撮影モード及び局所CT撮影モードの双方において、外挿後の投影画像の横方向画素数を、
図12に示すように全歯CT撮影モードでの外挿前の投影画像の横方向画素数の3倍に統一し、また高周波強調フィルタの長さを全歯CT撮影モードでの外挿前の投影画像の横方向画素数の2倍に統一している。なお、
図12では、投影画像の縦方向を限定しているが、実際の画像再構成処理においてはX線が照射された領域全てが用いられる。
【0043】
これに対して、従来では、
図13に示すように、全歯CT撮影モードにおいて、外挿後の投影画像の横方向画素数を全歯CT撮影モードでの外挿前の投影画像の横方向画素数の定数倍(例えば3倍)にし、局所CT撮影モードにおいて、外挿後の投影画像の横方向画素数を局所CT撮影モードでの外挿前の投影画像の横方向画素数の定数倍(例えば3倍)にし、また全歯CT撮影モードでの高周波強調フィルタの長さを全歯CT撮影モードでの外挿前の投影画像の横方向画素数の定数倍(例えば2倍)にし、局所CT撮影モードでの高周波強調フィルタの長さを局所CT撮影モードでの外挿前の投影画像の横方向画素数の定数倍(例えば2倍)にしている。なお、
図13では、投影画像の縦方向を限定しているが、実際の画像再構成処理においてはX線が照射された領域全てが用いられる。
【0044】
畳み込み積分は、本来は負の無限大から正の無限大までを積分区間とする。しかし、実際はどこかで積分を打ち切らなければならない。
【0045】
ここで、
図13に示す従来例のように、全歯CT撮影モードと局所CT撮影モードとで、外挿後の投影画像の横方向画素数及び高周波強調フィルタの長さが異なれば、積分を打ち切るタイミングがずれ、その結果、上記式(1)における定数aの値が大きく変動することになる。
【0046】
一方、
図12に示す本実施形態のように、全歯CT撮影モード及び局所CT撮影モードの双方において、外挿後の投影画像の横方向画素数を全歯CT撮影モードでの外挿前の投影画像の横方向画素数の3倍に統一し、また高周波強調フィルタの長さを全歯CT撮影モードでの外挿前の投影画像の横方向画素数の2倍に統一すれば、積分を打ち切るタイミングを揃えることができ、その結果、上記式(1)における定数aの値が変動することを抑えることができる。これにより、
図14に示すように、
図12に示す本実施形態(
図14中の本発明)は
図13に示す従来例(
図14中の従来)に比べて全歯CT撮影モード及び局所CT撮影モード間でのボクセル値の変動を抑えることができる。なお、
図14中の各注目点は
図15で示した各注目点と同様である。
【0047】
ボクセル値はCT値に変換され、CT値の具体的な値から歯の齲蝕の有無などが歯科医によって診断されることが多い。しかしながら、CT値を逆変換してボクセル値に戻してボクセル値の具体的な値に基づいてX線撮影装置1が歯の齲蝕の有無などを自動診断することも可能である。この自動診断を実施する場合、本実施形態のように全歯CT撮影モード及び局所CT撮影モード間でのボクセル値の変動を抑えることで自動診断の精度を向上させることができる。
【0048】
上述した実施形態では、外挿後の投影画像の横方向画素数を全歯CT撮影モードでの外挿前の投影画像の横方向画素数の3倍に統一し、高周波強調フィルタの長さを全歯CT撮影モードでの外挿前の投影画像の横方向画素数の2倍に統一したが、高周波強調フィルタの長さは、全歯CT撮影モードでの外挿前の投影画像の横方向画素数の2倍に限定されることは無く、他の定数倍であってもよい。外挿後の投影画像の横方向画素数は、高周波強調フィルタの長さが全歯CT撮影モードでの外挿前の投影画像の横方向画素数のN倍である場合に、全歯CT撮影モードでの外挿前の投影画像の横方向画素数の(N+1)倍以上にするとよい。高周波強調フィルタの長さを全歯CT撮影モードでの外挿前の投影画像の横方向画素数の定数倍に統一すると、高周波強調フィルタの長さが長くなるので、アーチファクトの発生を低減することができる。
【0049】
また上述した実施形態とは異なり、全歯CT撮影モード及び局所CT撮影モードの双方において、高周波強調フィルタの長さを局所CT撮影モードでの外挿前の投影画像の横方向画素数の定数倍に統一してもよい。外挿後の投影画像の横方向画素数は、高周波強調フィルタの長さが局所CT撮影モードでの外挿前の投影画像の横方向画素数のN倍である場合に、局所CT撮影モードでの外挿前の投影画像の横方向画素数の(N+1)倍以上にするとよい。この場合、外挿後の投影画像の横方向画素数が全歯CT撮影モードでの外挿前の投影画像の横方向画素数を下回らないように上記の定数倍を設定する。高周波強調フィルタの長さを局所CT撮影モードでの外挿前の投影画像の横方向画素数の定数倍に統一すると、高周波強調フィルタの長さが短くなるので、畳み込み積分を実行する際に画像処理装置10にかかる負担を低減することができる。
【0050】
また上述した実施形態及び上述した変形例とは異なり、全歯CT撮影モード及び局所CT撮影モードの双方において、高周波強調フィルタの長さを外挿前の投影画像の横方向画素数の定数倍以外の値に統一してもよい。この場合、トレードオフの関係にあるアーチファクトの発生と畳み込み積分を実行する際に画像処理装置10にかかる負担とを所望の関係に調整することができる。
【0051】
また上述した実施形態では、外挿後の投影画像の横方向画素数及び高周波強調フィルタの長さの統一について、全歯CT撮影モード及び局所CT撮影モードのみについて述べたが、被写体がFOVからはみ出す他の撮影モード(例えば全顎CT撮影モードなど)が搭載されている場合には、被写体がFOVからはみ出す他の撮影モードについても外挿後の投影画像の横方向画素数及び高周波強調フィルタの長さを統一する。
【0052】
また上述した実施形態では、右側外挿部の全ての画素値を外挿前の投影画像の右側端部の画素値と同一に設定し、左側外挿部の画素値を外挿前の投影画像の左側端部の画素値から左方向に進むにつれて平方根関数的に減少し零に至るように設定しているが、当該設定に限定されることは無く、例えば右側外挿部の全ての画素値を外挿前の投影画像の右側端部の画素値と同一に設定し、左側外挿部の全ての画素値を外挿前の投影画像の左側端部の画素値と同一に設定してもよい。