(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記予測部は、測定された製品セメント中の対象成分濃度および操作されたクリンカダストの比率の変化量を用い、将来の前記製品セメント中の対象成分濃度およびクリンカダストの添加量を予測し、
前記添加比率算出部は、前記クリンカダストの添加比率を算出し、
前記添加指示部は、前記算出された添加比率で前記クリンカダストを、仕上ミル投入前の粉砕前クリンカまたは仕上ミル排出後の原料セメントへ添加することを指示することを特徴とする請求項1または請求項2記載の添加量制御装置。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、これらの方法では、添加材添加後の生成物の成分が目標値を越えないようにすることはできても、添加材の添加量を適切に制御することはできない。
【0008】
添加材添加後の生成物に含まれる特定成分が目標値を超えないように、添加材の添加量を計算すると、複数の解が得られる。生成物の成分が目標値を超えないようにするだけで良ければ、複数の解のどれもが正解である。しかし、実際にはコストや置き場容量の制約により、添加材の使用量を最大に、あるいは最小にしたいという要求がある。
【0009】
例えば、従来より塩素等を焼成工程から除去するため、塩素バイパスシステムが用いられている。塩素等が焼成工程に残留すると、セメント製造設備におけるプレヒータの閉塞等の問題を引き起こす原因となりうる。塩素バイパスシステムでは、セメントキルンの窯尻から最下段サイクロンに至るまでのキルン排ガス流路より、燃焼ガスの一部を抽気して塩素等を除去している。
【0010】
塩素バイパスシステムからは、燃焼ガスから分離された塩化カリウム等を含む微粉が発生する。この微粉はクリンカダストと呼ばれている。クリンカダストの多くは、セメント製造工程の仕上工程にてセメントの品質を損なわない範囲でセメントに適量添加され、有効に再利用されている。
【0011】
近年、産業廃棄物の有効利用を進めたことで、セメント原料あるいは燃料の塩素含有量は増大している。その結果、クリンカダストの塩素濃度も上昇し、その塩素濃度の変動幅も大きくなっている。また、クリンカダスト発生量も増加の傾向にある。このような事情により、セメントの品質を適切に保ちつつ、仕上工程におけるクリンカダスト添加量を最大にしたいという要求がある。
【0012】
また、原料工程においても同様に、コストや置き場容量の制約により、生成物の成分が目標値を超えないようにしつつ、ある特定の原料(添加材)の添加量が最大または最小になるようにしたい、という要求がある。
【0013】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであり、目標値を超えないように添加材添加後の生成物中の対象成分濃度を管理しつつ、添加材の添加量を適切に制御できる添加量制御装置および添加量制御プログラムを提供することを目的とする。なお、本発明は添加材の数を問わずに適用できるが、成分の異なる2種以上の添加材を添加する場合に特に有効である。
【課題を解決するための手段】
【0014】
(1)上記の目的を達成するため、本発明の添加量制御装置は、セメント製造工程で対象成分を含む添加材の量を制御する添加量制御装置であって、測定された生成物中の対象成分濃度を取得する濃度取得部と、前記測定された生成物中の対象成分濃度および過去に操作された添加材の添加比率の変化量を用い、プロセスモデルに基づいて、将来の前記生成物中の対象成分濃度および将来にわたる前記添加材の添加量を予測する予測部と、前記予測された生成物中の対象成分濃度が所定の目標値を一方側に超える超過分および前記予測された添加材の添加量に応じた評価に基づいて、現在添加すべき前記添加材の添加比率を算出する添加比率算出部と、前記算出された添加比率で前記添加材の添加を指示する添加指示部と、を備えること特徴としている。これにより、生成物中の対象成分濃度が目標値を超えないように管理しつつ、添加材の添加量を適切に制御できる。
【0015】
(2)また、本発明の添加量制御装置は、前記添加比率算出部が、前記予測された生成物中の対象成分濃度が所定の目標値を一方側に超える超過分に対する評価量と前記予測された添加材の添加量に対する評価量とを合計した総合的な評価量に基づいて、現在添加すべき前記添加材の添加比率を算出することを特徴としている。これにより、生成物中の対象成分濃度と添加材の添加量との状態を総合的に評価し、現在添加すべき添加材の添加比率を適切に算出できる。
【0016】
(3)また、本発明の添加量制御装置は、前記添加比率算出部が、前記予測された生成物中の対象成分濃度が所定の目標値を大きい側に超える超過分が大きいほど低い評価とすることを特徴としている。これにより、対象成分濃度が目標値を超えることを低い評価とし、目標値を超えないように制御することができる。
【0017】
(4)また、本発明の添加量制御装置は、前記添加比率算出部が、前記予測された添加材の添加量が大きいほど高い評価とすることを特徴としている。これにより、合計添加量が大きくなる制御が選択されやすくなる。その結果、たとえば生成物中の対象成分濃度を所定の目標値に到達する手前まで素早く添加材の添加量を制御できる。
【0018】
(5)また、本発明の添加量制御装置は、前記予測部および前記添加比率算出部が、2種以上の前記添加材のそれぞれについて過去のデータから前記予測、評価および算出を行なうことを特徴としている。これにより、合計添加量の大きくなる添加材間の比率が選ばれ、優先すべき添加材が決まる。その結果、所定条件に従う対象成分濃度を維持しつつ合計添加量を最大化する制御を選ぶことができる。
【0019】
(6)また、本発明の添加量制御装置は、前記予測部が、測定された製品セメント中の対象成分濃度および操作されたクリンカダストの比率の変化量を用い、将来の前記製品セメント中の対象成分濃度およびクリンカダストの添加量を予測し、前記添加比率算出部は、前記クリンカダストの添加比率を算出し、前記添加指示部が、前記算出された添加比率で前記クリンカダストを、仕上ミル投入前の粉砕前クリンカまたは仕上ミル排出後の精粉セメントへ添加することを指示することを特徴としている。これにより、製品セメント中の対象成分濃度を目標値以下に抑えながらクリンカダストの添加量を最大化することができる。
【0020】
(7)また、本発明の添加量制御装置は、前記対象成分濃度が、塩素濃度、鉛濃度およびアルカリ濃度の少なくとも一つであることを特徴としている。これにより、塩素濃度、鉛濃度およびアルカリ濃度の少なくとも一つである対象成分濃度を目標値以下に抑えた製品セメントが得られ、製品の品質を一定以上に維持することができる。
【0021】
(8)また、本発明の添加量制御装置は、前記測定された対象成分濃度が所定の上限値を超えたときには、前記算出された添加材の添加比率から所定値を引いた値を新たな前記添加材の添加比率とする非定常制御部を更に備えていることを特徴としている。このように非定常状態においては、クリンカダストの添加量を急速に低減し、製品セメントの品質の維持を優先できる。
【0022】
(9)また、本発明の添加量制御プログラムは、セメント製造工程で対象成分を含む添加材の量を制御する添加量制御プログラムであって、測定された生成物中の対象成分濃度を取得する処理と、前記測定された生成物中の対象成分濃度および過去に操作された添加材の添加比率の変化量を用い、プロセスモデルに基づいて、将来の前記生成物中の対象成分濃度および将来にわたる前記添加材の添加量を予測する処理と、前記予測された生成物中の対象成分濃度が所定の目標値を一方側に超える超過分および前記予測された添加材の添加量に応じた評価に基づいて、現在添加すべき前記添加材の添加比率を算出する処理と、前記算出された添加比率で前記添加材の添加を指示する処理と、をコンピュータに実行させることを特徴としている。これにより、生成物中の対象成分濃度が目標値を超えないように管理しつつ、添加材の添加量を適切に制御できる。
【発明の効果】
【0023】
本発明によれば、セメント製造工程で添加材の量を制御する際に、生成物中の対象成分濃度が目標値を超えないように管理しつつ、添加材の添加量を適切に制御できる。
【発明を実施するための形態】
【0025】
次に、本発明の実施の形態について、図面を参照しながら説明する。説明の理解を容易にするため、各図面において同一の構成要素に対しては同一の参照番号を付し、重複する説明は省略する。以下の実施形態の説明において、主原料とは、添加材を添加される対象となるセメント材料であり、たとえば仕上ミル粉砕後のクリンカに石膏を加えた材料(原料セメント)である。添加材とは、対象成分を含み、セメント製造工程において主原料に添加される材料であり、たとえばクリンカダスト、産業廃棄物由来の原料であるリサイクル原料等である。生成物とは、主原料に添加材を添加されることで生成されるものであり、たとえばすべてのクリンカダストを添加し終えたセメントである。また、主にクリンカダストを添加材とする実施形態を例として本発明を説明しているが、本発明はこれに限定されるものではない。
【0026】
[セメント仕上工程プラントの構成]
図1は、セメント仕上工程プラント100の構成を示す概略図である。
図1に示すように、セメント仕上工程プラント100は、クリンカサイロ120、石膏添加設備125、クリンカダストサイロ128、計量器130、FIC135、仕上ミル140、セパレータ145、クリンカダストサイロ150、計量器160、FIC165、サンプラ170、分析装置175、セメントサイロ180および制御計算機(添加量制御装置)190を備えている。図中の実線の矢印は材料の流れを示しており、破線の矢印は情報の流れを示している。
【0027】
クリンカサイロ120は、セメントクリンカを一時的に蓄積するためのサイロである。石膏添加設備125は、セメントクリンカに石膏を添加する。クリンカダストサイロ128は、回収したクリンカダストを一時的に蓄積するサイロである。クリンカダストサイロ128は、ミル投入前に添加されるクリンカダストK1を蓄積する。計量器130は、FIC135の制御に従ってクリンカダストK1を計量し、計量されたクリンカダストを仕上ミル140に投入する。FIC(Flow Indication Controller)135は、流量指示調節計であり、セメントクリンカと石膏が混合された主原料の混合材料に新たに添加するクリンカダストの計量および投入を制御する。
【0028】
仕上ミル140は、セメントクリンカを微粉砕する粉砕機である。セパレータ145は、仕上ミル140を通過したセメントを粗粉と微粉に分け、粗粉を再び仕上ミル140に戻す分級機である。なお、仕上ミル140による粉砕後のセメントを原料セメントと呼称する。
【0029】
クリンカダストサイロ150は、回収したクリンカダストを一時的に蓄積するサイロである。クリンカダストサイロ150は、精粉添加されるクリンカダストK2を蓄積する。クリンカダストK2の成分は、クリンカダストK1の成分とは異なっている。
【0030】
計量器160、FIC165の制御に従ってクリンカダストK2を計量し、計量されたクリンカダストK2を原料セメントに添加する。FIC165は、流量指示調節計であり、新たに原料セメントに添加するクリンカダストK2の計量および投入を制御する。なお、上記の例のように仕上ミル工程前後にクリンカダストK1、K2をそれぞれ添加するのが好ましい。
【0031】
サンプラ170は、原料セメントにクリンカダストK2が添加されて得られた製品セメントをサンプリングし、サンプルを分析装置175へ供給する。分析装置175は、製品セメントの対象成分の濃度を分析する。対象成分濃度の測定値は、制御計算機190へ送信する。
【0032】
セメントサイロ180は、製品セメントを蓄積するサイロである。制御計算機190は、混合材料および原料セメントへそれぞれクリンカダストK1、K2を添加して製品セメントを得る工程を制御する装置である。制御計算機190の詳細については以下に説明する。
【0033】
[添加量制御装置の構成]
図2は、制御計算機(添加量制御装置)190の機能的構成を示すブロック図である。
図2に示すように、制御計算機190は、濃度取得部191、予測部194、添加比率算出部195、非定常制御部197および添加指示部198を備えている。
【0034】
濃度取得部191は、測定された製品セメント(生成物)中の対象成分濃度を取得する。対象成分濃度としては、塩素濃度、鉛濃度、アルカリ濃度が挙げられる。なお、制御対象は、いずれかの濃度のみとしてもよいし、両方としてもよい。
【0035】
塩素はJISで基準値が決められており、コンクリートとした際の塩害を防ぐため、基準値以下で管理されなければならない。塩害とは、コンクリート中に存在する塩化物イオンの作用により骨材が腐食し、コンクリート構造物が損傷(錆汁、ひび割れ、かぶりコンクリートの剥離、鋼材断面積の減少等)を受けることをいう。鉛はJISで基準値は決められてないが、コンクリートから溶出して環境汚染の原因となるため、ある基準値以下で管理すべき成分である。アルカリは、JISで基準値が決められており、基準値以下で管理されている。アルカリ量が多いセメントを使用したコンクリートはアルカリ骨材反応を起こし、コンクリートを劣化させてひび割れを起こす。
【0036】
予測部194は、測定された製品セメント中の対象成分濃度および過去に操作されたクリンカダスト(添加材)の添加比率の変化量を用い、プロセスモデルに基づいて、将来の製品セメント中の対象成分濃度および将来にわたるクリンカダストの添加量を予測する。複数のクリンカダストを添加する場合には、各クリンカダストの添加量を予測する。
【0037】
添加比率算出部195は、予測された製品セメント中の対象成分濃度が所定の目標値を一方側に超える超過分および予測されたクリンカダストの添加量に応じた評価に基づいて、現在添加すべき添加材の添加比率を算出する。これにより、生成物中の対象成分濃度が目標値を超えないように管理しつつ、添加材の添加量を適切に制御できる。添加比率算出部195は、予測された製品セメント中の対象成分濃度が所定の目標値を大きい側に超える超過分が大きいほど低く、予測された添加材の添加量が大きいほど高い評価とすることが好ましい。これにより、対象成分濃度が目標値を超える制御は選択されにくくなり、合計添加量が大きくなる制御が選択されやすくなる。なお、上記は一例であり、予測された製品セメント中の対象成分濃度が所定の目標値を小さい側に超える超過分が大きいほど低く、予測された添加材の添加量が小さいほど高い評価とする場合があってもよい(例は後述)。
【0038】
なお、予測部194および添加比率算出部195は、2種以上のクリンカダスト(添加材)のそれぞれについて過去のデータから予測、評価および算出を行なうことが好ましい。これにより、合計添加量の大きくなる添加材間の比率が選ばれ、優先すべき添加材が決まる。その結果、所定条件に従う対象成分濃度を維持しつつ合計添加量を最大化する制御を選ぶことができる。成分構成の異なる2種のクリンカダストをできるだけ多く添加しようとする場合には、各ダストの成分およびクリンカダストの成分が変動することから、作業者の判断のみでは複数種のクリンカダスト間の比率の調整が困難であり、そのような場合にこそ上記のような予測、評価および算出が有効となる。なお、上記の予測方法、評価および添加比率の算出方法の詳細については後述する。
【0039】
非定常制御部197は、測定された製品セメントの対象成分濃度が所定の上限値を超えたときには、上限値の超過が1回目であれば、アラームを出力し、決定されたクリンカダストの添加比率から所定値を引いた値を新たなクリンカダストの添加比率とする。上限値は、現場の状況に応じて任意に設定できる値である。上限値の超過が2回目であれば、アラームの出力後、上限超過1回目に設定した添加比率より小さい所定値を新たなクリンカダストの添加比率として設定する。このように非定常状態においては、クリンカダストの添加量を急速に低減し、製品セメントの品質の維持を優先できる。
【0040】
添加指示部198は、算出された添加比率でクリンカダストの添加をFIC135、165へ指示する。
【0041】
[添加材の例]
図3は、各クリンカダストとその成分の一例を表すテーブルである。
図3に示す例では、典型的なクリンカダストの成分濃度に対して、クリンカダストK1の塩素成分および微量成分の濃度はいずれも高く、クリンカダストK2の塩素成分は、高くも低くもない中レベルであり、その微量成分は低い。なお、微量成分とは、塩素に比べて微量な鉛等の成分を指す。なお、
図3に示す各クリンカダストK1、K2とその成分は、後述する「工場実機での実施例」で用いられる2種のクリンカダストとその成分と同じである。
【0042】
[添加量制御装置の動作]
次に、上記のように構成された制御計算機(添加量制御装置)190の動作を説明する。
図4は、制御計算機190によるモデル予測制御動作の一例を示すグラフである。
図4の例では、対象成分を塩素とし、クリンカダストK1を添加し、製品セメントの塩素濃度を目標値に近づけている。この例では、60分ごとに製品セメントの塩素濃度の分析結果を受信し、10分ごとにクリンカダストK1の添加比率を算出している。
【0043】
A.まず、製品セメントの塩素濃度の分析結果受信時において、以下のように動作する。
(A1)製品セメントの塩素分析値を取得する。
(A2)現在の塩素分析値から目標値までの参照軌跡を計算し、分析値から目標値にどのように近づけるかを決定する。
(A3)プロセスモデルを用いて、過去のクリンカダストK1の添加比率から将来の製品セメント中の塩素濃度の応答を予測する。
(A4)予測値が参照軌跡に一致するようなクリンカダストK1の添加比率を将来にわたって最適化計算する。この際に予測値が目標値を超えた分は低い評価とし、合計のクリンカダストの添加量が大きいほど高い評価とする。
(A5)計算したクリンカダストK1の添加比率のうち、今回分のみを設定する。
【0044】
B.次に、製品セメントの塩素濃度の分析結果を受信後、次回の受信までの間では、以下のように動作する。
(B1)過去のクリンカダストK1の添加比率より、10分後の塩素の予測値を計算する。
(B2)予測値から目標値に参照軌跡を計算し、10分後の予測値から目標値にどのように近づけるか決定する。
(B3)プロセスモデルを用いて、過去のクリンカダストK1の添加比率から将来の製品セメント中の塩素濃度の応答を予測する。
(B4)予測値が参照軌跡に一致するようなクリンカダストK1の添加比率を将来にわたって最適化計算する。この際に予測値が目標値を超えた分は低い評価とし、合計のクリンカダストの添加量が大きいほど高い評価とする。
(B5)計算したクリンカダストK1の添加比率のうち、今回分のみを設定する。
(B6)さらに10分後、(B1)から(B5)の手順を繰り返す。以上の制御計算機190の動作は、プログラムにより実行される。なお、上記の例では、1種類のクリンカダストの添加比率を計算しているが、2種類のクリンカダストの添加比率を計算する場合であっても過去の2種類のクリンカダストの添加比率から予測値を算出し、今回のそれぞれの添加比率を計算可能である。
【0045】
[クリンカダスト処理量のシミュレーション]
上記のような動作により得られるクリンカダストの処理量(添加量)をシミュレーションにより評価する。
図5は、シミュレーション結果を示す図である。
図5は、クリンカダスト処理量と対象成分濃度との関係を示しており、グラフの縦軸はクリンカダストK1の合計処理量を表し、横軸はクリンカダストK2の合計処理量を表している。
図5に示す傾きをもつ一点鎖線は、製品セメント中の塩素濃度の目標値を示す線である。また、傾きをもつ破線は、製品セメント中の微量成分濃度の目標値を示す線である。
【0046】
これらは、クリンカダストK1の成分濃度/クリンカダストK2の成分濃度により傾きが決まり、製品セメント中の濃度の目標値とクリンカ(クリンカダスト添加前のクリンカ)中の濃度の差(対象成分濃度余裕)により、傾きは変わらず直線の切片が変化する。また、
図5に示す縦軸に平行な破線は、クリンカダストK2の年間発生量を示しており、クリンカダストK2の処理量はこれに制約される。
【0047】
図中の丸(●)が製品セメント中の対象成分(塩素,微量成分)の濃度が目標値に対して最大の点である。この点では、クリンカダストK1の処理量は約600t、クリンカダストK2の処理量は約200t程度となり、結果としてクリンカダストK1の優先処理がなされた状態となっている。
【0048】
図中の四角(■)が合計のクリンカダスト処理量が最大となる点である。この点では、クリンカダストK1の処理量は約350t、クリンカダストK2の処理量は750t程度となり、結果としてクリンカダストK2の優先処理がなされた状態となっている。そして、塩素濃度は目標値に至る直前付近で維持されているが、微量成分は目標値まで余裕がある状態となっている。従来のモデル予測制御では製品セメント中の対象成分濃度を最大とする状態(●)を計算できるが、クリンカダストの処理量を最大にする状態(■)を計算することはできない。
【0049】
[基礎となるモデル予測制御]
(対象成分濃度の予測モデル)
制御計算機190の動作の基礎となるモデル予測制御を説明する。
図6(a)、(b)はいずれも、モデル予測制御を示す模式図である。
図7は、ステップ応答の例を示す図である。製品セメント中の対象成分濃度の予測には、ステップ応答モデルを使用する。ステップ応答モデルには、それぞれのクリンカダストの添加比率をステップ状に変化させたときの製品セメント中の対象成分濃度の変化量を測定した結果を用いる。ステップ応答モデルを用いたモデル予測制御(Model Predictive Control:MPC)として動的行列制御(Dynamic Matrix Control:DMC)について以下に説明するが、ARXモデルなどの統計モデルを用いたモデル予測制御として一般化モデル予測制御(Generalized Predictive Control:GPC)を用いてもよい。
【0050】
現時点をkとし、式(1.1)のステップ応答モデルを用いてp時点先の対象成分濃度の予測値を計算できる。
【数1】
【0051】
式(1.1)を現時点kより過去の操作により決まる自由応答と、未来の操作により決まる強制応答に分けて書き直すと、式(1.2)となる。
【数2】
【0052】
ここで、式(1.3)に現時点kにおけるセメント分析値とモデルによる予測値との差を外乱d(k)として定義する。
【数3】
【0053】
将来の外乱は測定できないため、式(1.4)のように現時点kでの外乱がp時点先の将来にわたり一定に加わると仮定する。
【数4】
【0054】
式(1.4)の外乱を式(1.3)に加えると、式(1.5)となる。
【数5】
【0055】
D時点より先のステップ応答行列がa
D=a∞となるならば、式(1.5)の右辺3項目は式(1.6)となる。
【数6】
【0056】
ここで、k+1からp時点先までの予測値は、ベクトルと行列表現を用いて式(1.7)で表現できる。
【数7】
【0057】
n
u入力n
y出力の多入出力系の場合は、ステップ応答行列と入出力ベクトルを以下のように拡張することで対応できる。
【数8】
【0058】
(評価関数)
製品セメントの対象成分濃度の現在値から目標値に対してどのように近づけたいかを式(1.8)の参照軌跡で定義する。
【数9】
【0059】
参照軌跡にはたとえば一次遅れのステップ応答係数を用いて、現在値から目標値までの応答を計算する。将来の応答の予測区間である予測ホライズン(Np)と操作変化幅の計算区間である制御ホライズン(Nu)を用いて、通常のモデル予測制御の評価関数は式1.9で定義され、この評価関数を最小とするような操作量を算出する。
【数10】
【0060】
ただし、偏差の重みである目標指向係数(Ψ)と、操作変化幅に対する重みである操作抑制係数(λ)は以下のように個別に設定することもできるが、通常はΨ
1=Ψ
2=…=Ψ
Np,λ
1=λ
2=…=λ
Npとする。
【数11】
【0061】
(操作量の計算)
操作量の上下限制約(u
min,u
max)と操作変化幅の上下限制約(Δu
min,Δu
max)をそれぞれ考慮する場合、これを式(1.10)の二次計画最適化問題として計算すればよい。
【数12】
【0062】
ここで、長さn
u・N
uの操作量ベクトルと操作量の上下限ベクトル、操作変化量の上下限ベクトルを以下のように定義する。
【数13】
【0063】
これを用いると、式(1.10)のそれぞれのパラメータは以下のようになる。
【数14】
【0064】
ただし、I
Nuはn
u・n
uの単位行列である。
【0065】
[特徴的な制御]
クリンカダスト処理量を最大化するため、モデル予測制御の評価関数に式(2.1)のクリンカダスト処理量を導入する。ここで、Aは処理量最大化係数と定義する。
【数15】
【0066】
この評価関数を導入することにより、クリンカダスト処理量を最大化できるが、このままでは製品セメント中の対象成分濃度が目標値を超過しても処理量を最大化するよう動作するため、併せて式(2.2)に示す対象成分濃度の目標値超過量に対するペナルティを導入する。ここで、Bは目標超過ペナルティ係数と定義する。
【数16】
【0067】
ここで、式(2.2)は以下の条件を満たす目標値に対する超過分である。
【数17】
【0068】
これにより、新たなモデル予測制御の評価関数は式(2.4)で定義できる。
【数18】
【0069】
従来のモデル予測制御では、目標値に対して制御結果は上下にばらつくが、対象成分濃度の場合、目標値に達しない場合は問題ないが超過分は品質上問題である。この評価関数を使用することにより、クリンカダスト処理量を最大としつつ、対象成分濃度を目標値以下で管理することが可能となる。なお、上記の式(2.4)では、係数Aが負となることで、クリンカダストの処理量が大きいほどペナルティJ(k)は小さくなり、その制御の評価は高くなる。
【0070】
また、目標超過ペナルティは対象成分濃度分析値あるいは予測値が目標値を超過した場合にのみ働き、これに基づいて制御計算機190は、素早く目標値以下にするよう添加比率を制御する。これにより、製品セメント中の対象成分濃度が目標値を超過した場合に強制的に添加比率を下げるような定常制御の中での非定常制御的な動作が可能となる。
【0071】
式(1.9)と式(2.4)を合わせた評価関数を用い、それぞれの重みを調整することで「対象成分濃度最大化(クリンカダストK1優先)」と「クリンカダスト処理量最大化(クリンカダストK2優先)」の2つの制御を容易に切り替えることができる。
【0072】
本発明の優れた効果を明確にするために、従来の制御方法と本発明の制御方法の結果の差異についてシミュレーションを行なった。
【0073】
[第1のシミュレーション]
まず、手動制御、PID制御、モデル予測制御、超過分評価による制御および本発明の制御における1入力1出力での制御動作を確認するため、以下のような条件でシミュレーションを実施した。
【0074】
シミュレーションは、対象成分濃度の目標値、クリンカ持込成分の濃度およびクリンカダストの対象成分濃度について、実際の工場におけるセメント仕上工程プラントで使用している値と同じ値を設定して行った。
【0075】
また、プロセスモデルを「むだ時間+一次遅れモデル」で構成し、モデルパラメータは実際の工場におけるセメント仕上工程プラントで使用している値と同じものを設定した。
【0076】
(手動制御のシミュレーション)
図8は、手動制御による時間に対する対象成分濃度およびクリンカダストの添加量を示すグラフである。図では横軸を1日分で示し、縦軸を一定基準による百分率で示している。手動制御シミュレーションではオペレータによる手動制御を仮定し、分析値に応じてクリンカダストの添加量を徐々に変更した。制御周期を60[min]とし、対象成分濃度が目標値以下の場合は添加量を10だけ増加させ、目標値を超過した場合には添加量を20だけ減少させた。
【0077】
図8に示すように、手動制御ではクリンカダスト添加量を適切に制御することができないことから、手動制御では対象成分濃度のばらつきが大きくなった。
【0078】
(PID制御のシミュレーション)
図9は、PID制御による時間に対する対象成分濃度およびクリンカダストの添加量を示すグラフである。図では横軸を1日分で示し、縦軸を一定基準による百分率で示している。PID制御では、制御周期を60[min]とし、比例ゲインを0.05[-]、積分時間を5[min]、微分時間を0[min]に設定した。
【0079】
図9に示すように、PID制御のような通常のフィードバック制御では、対象成分濃度が目標値に収束せず、クリンカダスト添加量が極端に多い時間と少ない時間に分かれていた。したがって、通常のフィードバック制御では、むだ時間が長いプロセスを良好に制御することは困難である。また、複数のクリンカダストを同時に添加して複数の対象成分濃度を制御するような多入力多出力制御に対応することはできない。
【0080】
次に、通常のモデル予測制御と本発明の制御で、目標値を4時間ごとに±25上下に変更した場合のシミュレーションを行なった。対象成分濃度が目標値以下の場合と目標値超過の場合でクリンカダスト添加量の違いがあるか否かを確認した。また、それらの場合における対象成分濃度の目標値への追従性を確認した。
【0081】
(通常のモデル予測制御のシミュレーション)
図10は、通常のモデル予測制御によるシミュレーションを行なった場合の時間に対する対象成分濃度およびクリンカダスト添加量を示すグラフである。シミュレーションは1日分を行なった。図では横軸を1日分で示し、縦軸を一定基準による百分率で示している。目標指向係数、操作抑制係数、ペナルティ係数および処理量最大化係数を最適になるように設定し、モデル予測制御のシミュレーションを実施した。
【0082】
図10のシミュレーション結果が示すように、モデル予測制御では、目標値を下げたことにより対象成分濃度が目標値を超過した場合も、目標値を上げたことにより対象成分濃度が目標値以下となった場合も、符号が逆になっただけで同じ量のクリンカダスト添加量を計算している。これにより、目標超過時と目標以下時の追従性はほぼ同等である。そのため対象成分濃度が目標値を超過した場合の下げ操作も遅く、目標値を超過した状態が長く続く。よって対象成分濃度が目標値以下になるように管理するような場合には不適である。
【0083】
(超過分評価による制御のシミュレーション)
図11は、超過分評価による制御によるシミュレーションを行なった場合の時間に対する対象成分濃度およびクリンカダスト添加量を示すグラフである。シミュレーションは1日分を行なった。図では横軸を1日分で示し、縦軸を一定基準による百分率で示している。超過分評価による制御とは、対象成分濃度の目標値からの超過分のみを評価して添加材の添加量を決定する制御方法である(特許文献1参照)。目標指向係数、操作抑制係数
およびペナルティ係数を最適になるように設定し、対象成分濃度が目標値以下になるように管理する超過分評価による制御のシミュレーションを行なった。
【0084】
図11のシミュレーション結果が示すように、超過分評価による制御方法では、目標を超過した場合に素早くクリンカダストの添加量を下げている。その結果、対象成分濃度も目標値以下に素早く追従しているが、添加量を下げすぎて対象成分濃度が一時的に目標値以下で推移している(破線囲み参照)。この方法では対象成分濃度を目標値以下とすることはできても、添加材の添加量を最大化するといった制御はできない。
【0085】
(本発明の制御のシミュレーション)
図12は、本発明の制御によるシミュレーションを行なった場合の時間に対する対象成分濃度およびクリンカダスト添加量を示すグラフである。シミュレーションは1日分を行なった。図では横軸を1日分で示し、縦軸を一定基準による百分率で示している。本発明の制御では、目標指向係数、操作抑制係数、ペナルティ係数および処理量最大化係数を最適になるよう設定し、対象成分濃度が目標値以下になるよう管理すると同時にクリンカダスト添加量最大化を考慮している。
【0086】
図12のシミュレーション結果が示すように、目標値を下げたことにより対象成分濃度が目標超過になった場合に、素早くクリンカダストの添加量を下げている。しかし、対象成分濃度が目標値以下になるまで下げすぎてはおらず、クリンカダスト添加量が最大となるように適切な添加量が維持されている。また、目標値を上げたときも目標値を超過しないぎりぎりの添加量を設定しているため追従性も早く、対象成分濃度も目標値以下で管理することができている(破線囲み参照)。
【0087】
(総括)
以上のシミュレーションの結果によれば、従来のモデル予測制御では、制御量である対象成分濃度が目標値以下になるように管理することができない。超過分評価による方法では、対象成分濃度が目標値以下になるように管理することはできるが、クリンカダスト添加量の最大化までは考慮されていない。本発明の制御では、「対象成分濃度を目標値以下で管理する」ことと、「クリンカダスト添加量を最大化する」ことを同時に行なえる。この点に従来の制御とは異なる格別の優位性がある。
【0088】
[第2のシミュレーション(外乱があった場合の動作シミュレーション)]
次に、従来の制御方法と本発明の制御方法のそれぞれについて以下のようにシミュレーションを実施した。そして、1入力1出力での実際のプロセスに近い制御での性能の違いを確認した。このシミュレーションでは
図13に示すように、外乱として、対象成分のクリンカ持込分によりその濃度が±7.5変動したと仮定し、クリンカダスト添加量と成分超過量を確認した。
【0089】
図14、
図15、および
図16は、それぞれ通常のモデル予測制御のシミュレーション、超過分評価による制御のシミュレーション、および本発明による制御のシミュレーションを行なった場合の、時間に対する対象成分濃度およびクリンカダスト添加量を示すグラフである。シミュレーションは1日分を行なった。図では横軸を1日分で示し、縦軸を一定基準による百分率で示している。
【0090】
ただし、シミュレーション条件を同じにし、上限値を75に設定し、対象成分濃度が上限値を超過しないぎりぎりの目標値を、それぞれの制御において適切に設定した。そして、各場合のクリンカダスト添加量の違いを比較した。なお、結果の比較を容易にするために、各シミュレーション結果の統計量を表1に示す。
【表1】
【0091】
(通常のモデル予測制御)
通常のモデル予測制御では、目標値と対象成分濃度の平均値がほぼ一致しており、対象成分濃度を目標値で管理することは可能である。しかしながら対象成分濃度を上限値以下で管理するためには、対象成分濃度のばらつきに応じて目標値を大きく下側に設定しなければならない。これにより当然クリンカダストの処理量も減少する。実際にはクリンカ成分濃度は、日によってもばらつきの大きさが異なり、ばらつきに応じて都度目標値を変更することは困難である。
【0092】
(超過分評価による制御)
超過分評価による制御では、目標値と上限値が近い値となり、目標値を上限値付近に設定しておけば上限値以下で管理することは可能である。しかしながら、対象成分濃度が目標値を下回る時間が長く、結果としてクリンカダストの添加量は少なくなっている。また同じ理由で対象成分濃度の平均値も低くなっている。
【0093】
(本発明による制御)
一方、本発明による制御は、通常のモデル予測制御や超過分評価による制御と比べ、対象成分濃度は高く、クリンカダスト添加量も多くなっている。本発明の制御では、「対象成分濃度を上限値以下で管理する」ことと、「クリンカダスト添加量を最大化する」ことを同時に行なえる。この点に従来の制御とは異なる格別の優位性がある。
【0094】
[工場実機での実施例]
セメント仕上工程プラントにおいて、対象成分の異なるK1とK2の2種類のクリンカダストを同時に添加し、従来の制御および本発明の制御方法を用いて制御結果の比較を行なった。上記のクリンカダストK1およびK2の各成分は、
図3に示す例と同じである。
【0095】
従来の制御では、オペレータが所定の目標値に対して手動制御を行なった。一方、本発明の制御では、過去のデータから製品セメントの対象成分濃度(塩素、鉛)を予測し、製品セメントの対象成分濃度を目標値超過分が大きいほど低く、クリンカダストの処理量が大きいほど高く、評価する条件でクリンカダストの添加量を決定することを繰り返す自動制御を行なった。製品セメントの対象成分濃度(塩素、鉛)の測定値を受信する間隔は、60[min]とした。
【0096】
図17、18は、それぞれ比較例(手動制御)および実施例(自動制御)を示すグラフである。
図17、18は、それぞれ2日分のトレンドを示している。グラフの縦軸はそれぞれ製品セメントの塩素濃度、微量成分濃度、クリンカダストの添加量を一定基準により百分率で示したものであり、横軸は時間である。また表2に比較例と実施例の統計量を示す。
【表2】
【0097】
表2を見ると、比較例に対して実施例では、クリンカダストK1、K2の合計添加量の平均は67[%]増加した。また、製品セメントの成分の標準偏差は、塩素で39[%]、微量成分で40[%]改善された。
【0098】
実施例(
図18)では、濃度の薄いクリンカダストK2を添加量上限まで添加し、残りの成分余裕に対してクリンカダストK1の添加量を変更している。これにより、多入力多出力系の制御においては、添加するクリンカダストのうち、処理量が最大となる組み合わせを計算できることを確認した。
【0099】
実施例(
図18)では、製品セメントの対象成分濃度が目標値を大幅に超過する事態を防止できている。また、製品セメントの塩素濃度の変動が小さく、目標値に近い値を取ることができている。これにより、本発明が実際のセメントプラントにおいても適応可能であり、「製品セメントの対象成分濃度の安定化」と「クリンカダスト処理量最大化」を同時に実現できることを確認した。
【0100】
なお、以上の実施形態では、クリンカと石膏との混合材料または仕上ミル通過後の原料セメントに対してクリンカダストを添加するケースを対象としており、クリンカダストを添加材とし、製品セメントを生成物とし、塩素または微量成分を対象成分として本発明を適用しているが、このようなケース以外のセメント製造工程においても本発明は適用可能である。
【0101】
たとえば、脱硝剤を添加材とし、焼成排ガスを生成物とし、NOxを対象成分としてNOxを規制値以下で管理し、脱硝剤の使用量を最小限とすることでコストを削減してもよい。セメント生産により排出する排ガス中のNOxは、環境汚染の原因となるため排出規制値が決められており、規制値以下でNOxを管理しなくてはならない。通常、焼成工程から発生した排ガスに脱硝剤を噴霧添加することでNOxを分解処理するが、脱硝剤は高価であるため、添加量はなるべく最小となるよう制御したい事情がある。
【0102】
また、リサイクル原料(産業廃棄物由来の原料)を添加材とし、セメント調合原料を生成物とし、何らかの成分を対象成分として原料調合制御し、リサイクル原料を最大限使用するように運用することもでき、効率的に産業廃棄物を有効利用できる。この場合には、原料成分を制御変数、セメント調合原料を生成物とし、各原料比率を操作変数、リサイクル原料を添加材として、本発明の制御を適用できる。対象成分にはカルシウム、シリカ、アルミ、鉄、硫黄、マグネシウム等、十数種が挙げられる。
【0103】
原料工程では、複数の原料を調合することで、所定の成分のセメント原料を製造する。原料調合制御において、生成する原料の成分を目標範囲内で制御しつつ、特定の原料の使用量を最小に制御することも可能である。これにより、コストを抑えたセメント原料の製造ができる。
【0104】
また、上記の例では対象成分濃度が目標値を上に超過しないように制御するが、対象成分濃度を目標値を下に超過しないよう目標値以上で管理した方が良い場合もある。そのような例として、セメントブレーンの制御が考えられる。ブレーンは、仕上ミルで粉砕された製品セメントの比表面積で、セメントの性能に影響するためある一定の範囲に保つ必要がある。ブレーンを高くすると仕上ミルの消費電力が大きくなるため、目標値以上でかつ最小の値をとるように制御することが考えられる。