(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6201309
(24)【登録日】2017年9月8日
(45)【発行日】2017年9月27日
(54)【発明の名称】アクスルハウジングの取付構造
(51)【国際特許分類】
B60G 11/10 20060101AFI20170914BHJP
【FI】
B60G11/10
【請求項の数】4
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2012-273394(P2012-273394)
(22)【出願日】2012年12月14日
(65)【公開番号】特開2014-118002(P2014-118002A)
(43)【公開日】2014年6月30日
【審査請求日】2015年10月29日
(73)【特許権者】
【識別番号】000003997
【氏名又は名称】日産自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100083806
【弁理士】
【氏名又は名称】三好 秀和
(74)【代理人】
【識別番号】100100712
【弁理士】
【氏名又は名称】岩▲崎▼ 幸邦
(74)【代理人】
【識別番号】100101247
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 俊一
(74)【代理人】
【識別番号】100095500
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 正和
(74)【代理人】
【識別番号】100098327
【弁理士】
【氏名又は名称】高松 俊雄
(72)【発明者】
【氏名】柴田 聡
【審査官】
鈴木 敏史
(56)【参考文献】
【文献】
米国特許第02678819(US,A)
【文献】
米国特許第02280347(US,A)
【文献】
特開平11−291731(JP,A)
【文献】
欧州特許出願公開第02130688(EP,A1)
【文献】
欧州特許出願公開第01894754(EP,A1)
【文献】
欧州特許出願公開第01334848(EP,A1)
【文献】
米国特許出願公開第2013/292919(US,A1)
【文献】
米国特許第4519590(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60G 1/00−99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
アクスルハウジングとリーフスプリングとの間にスプリングシートを介装したアクスルハウジングの取付構造であって、
前記スプリングシートは、底部から立ち上がる側壁部を備え、
前記スプリングシートと前記アクスルハウジングとの間に補強部材が介装され、この補強部材は、前記スプリングシートの前記側壁部が下方から入り込む逃げ部が形成されていることを特徴とするアクスルハウジングの取付構造。
【請求項2】
前記逃げ部は貫通孔であることを特徴とする請求項1に記載のアクスルハウジングの取付構造。
【請求項3】
前記リーフスプリングを間に挟んで前記スプリングシートと反対側に下部スプリングシートが配置され、この下部スプリングシートに、Uボルトの前記アクスルハウジングの上部を覆う湾曲部から下方に延びる直線部の先端側が連結され、
前記補強部材に前記Uボルトの直線部が入り込むUボルト用逃げ部が形成されていることを特徴とする請求項1または2に記載のアクスルハウジングの取付構造。
【請求項4】
前記Uボルト用逃げ部は、補強部材の上縁に形成された切欠であることを特徴とする請求項3に記載のアクスルハウジングの取付構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両におけるアクスルハウジングの取付構造に関する。
【背景技術】
【0002】
従来のアクスルハウジングの取付構造としては、下記特許文献1に記載されたものが知られている。このアクスルハウジングの取付構造は、アクスルハウジングとリーフスプリングとの間にスプリングシートを介装し、スプリングシートの上部にアクスルハウジングを載置するためのフランジ部を形成している。スプリングシートにフランジ部を形成することで、アクスルハウジングとスプリングシートとの間の接合面積を広くしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平11−291731号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
このように、従来のアクスルハウジングの取付構造では、スプリングシートのフランジ部により、アクスルハウジングとスプリングシートとの間の接合面積を広くして、剛性変化に対応している。ところが、この場合には、アクスルハウジンが載置されるスプリングシートのフランジ部と、リーフスプリング上に載置されるスプリングシートの底部との間隔が比較的大きくなる。このため、駆動力によってアクスルハウジングからスプリングシートに入力される荷重が比較的大きくなり、アクスルハウジングの支持剛性が充分とは言えないものとなっている。
【0005】
そこで、本発明は、アクスルハウジングの支持剛性をより高めることを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、アクスルハウジングとリーフスプリングとの間に位置するスプリングシートと、アクスルハウジングとの間に補強部材が介装され、補強部材は、スプリングシートの
側壁部が下方から入り込む逃げ部が形成されていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、アクスルハウジングとスプリングシートとの間に補強部材を介装することで、アクスルハウジングの支持剛性が高まる。その際、補強部材の逃げ部にスプリングシートの
側壁部が下方から入り込むことで、補強部材がスプリングシートに対してより下方位置となってアクスルハウジングもより下方のスプリングシートに近付けることができる。これにより、駆動力によってアクスルハウジングからスプリングシートへ入力される荷重がより小さくなり、アクスルハウジングの支持剛性をより高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】本発明の一実施形態に係る車両に適用されるアクスルハウジングの取付構造を示す斜視図である。
【
図2】
図1のアクスルハウジングの取付構造におけるアクスルハウジング、スプリングシート及び補強板の分解斜視図である。
【
図3】
図1のアクスルハウジングの取付構造におけるスプリングシートに補強板を結合した状態を示す斜視図である。
【
図4】
図1のアクスルハウジングの取付構造におけるリーフスプリングや下部スプリングシートを省略した正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づき説明する。
図1は、本発明の一実施形態に係わる、車両に適用されるアクスルハウジングの取付構造を示す。
図1において、デファレンシャルギアや車軸を収容するリアアクスルハウジング1は、アクスルハウジングを構成しており、長手方向(車幅方向)両側にて、車両前後方向に長い左右一対のリーフスプリング3に、連結具5を介して連結している。
【0010】
連結具5は、リアアクスルハウジング1とリーフスプリング3との間に介装されるスプリングシート7と、リーフスプリング3を間に挟んでスプリングシート7と反対側に位置する下部スプリングシート9と、2本のUボルト11とを含んでいる。
【0011】
スプリングシート7は、
図2に示すように、スプリングシート本体13と車両前後方向両側に位置する一対の側板15,17とを備えている。スプリングシート本体13は、車両前後方向に長いほぼ長方形状の底部13aと、底部13aの車幅方向両側縁から上方に屈曲して立ち上がる左右一対の側壁部13bと有する。
【0012】
側壁部13bは、車両前後方向両側が上方に向けて突出する突出部13b1,13b2を備えている。突出部13b1,13b2を有することで、側壁部13bの車両前後方向中央部に凹部となる平面部13b3が形成される。平面部13b3は、ほぼ水平となって車両前後方向に延設されている。このようなスプリングシート本体13の車幅方向の長さは、リーフスプリング3の車幅方向の幅寸法に対しほぼ同等か若干短い。
【0013】
スプリングシート7の側板15,17は、スプリングシート本体13の左右の突出部13b1相互間及び、左右の突出部13b2相互間にそれぞれ挟持されるようにして配置している。その際、側板15,17の車幅方向両側縁をスプリングシート本体13の突出部13b1,13b2の内面に溶接接合し、下縁をスプリングシート本体13の底部13aの上面に溶接接合している。
【0014】
そして、本実施形態では、スプリングシート7とリアアクスルハウジング1との間に、
図2に示すような補強部材としての補強板19を介装している。補強板19は、
図5に示すように、リアアクスルハウジング1の円形の外周面に内側の凹曲面19aがほぼ密接する断面円弧形状としている。このような補強板19を、
図3にも示すように、スプリングシート本体13の前後の突出部13b1,13b2相互間に収容配置した状態で、補強板19の凹曲面19a側にリアアクスルハウジング1を収容配置する。
【0015】
このとき、補強板19の凸曲面となる外周面は、スプリングシート本体13の突出部13b1,13b2の互いに対向する側の凹曲面部13b4,13b5に接触し、補強板19の最下端部19b(
図5)は底部13aよりも僅かに上方に位置している。また、スプリングシート本体13の車両前方側の突出部13b1の高さは、車両後方側の突出部13b2の高さより高い。これに対応して補強板19の車両前方側の上縁の車幅方向中央部における端部19cが、端部19cに対して車幅方向両側の端部19d及び車両後方側の上縁の端部19eよりも上方位置となっている。
【0016】
また、一対の側板15,17のうち車両前方側の側板15は、上部が車両前方側(
図5中で左側)に向けて僅かに屈曲してその屈曲部の内面15aを補強板19の外周面に接触させている。一方、車両後方側の側板17は、その全体を上部が下部よりも車両前方側となるよう傾斜させており、その前端部17aを補強板19の外周面に接触させている。
【0017】
そして、本実施形態における補強板19には、該補強板19をスプリングシート7上にセットして接合固定した状態で、車幅方向のほぼ中心部でかつ最下端部19bを中心として車両前後方向の一定領域に、貫通孔19fを設けている。貫通孔19fは、車両上下方向から見た平面視でほぼ正方形状を呈しており、車幅方向長さが、スプリングシート本体13の車幅方向長さより長くなっている。
【0018】
その際、貫通孔19fの車幅方向両側縁部19f1は、スプリングシート本体13の側壁部13bよりも車幅方向外側に位置している。これにより、貫通孔19fには、スプリングシート7の一部であるスプリングシート本体13の平面部13b3が下方から入り込んだ状態となる。すなわち、貫通孔19fは、スプリングシート7の一部が下方から入り込む逃げ部を構成している。この場合、補強板19の最下端部19b(
図5)が、前述したようにスプリングシート本体13の底部13aよりも僅かに上方に位置しつつ、スプリングシート本体13の平面部13b3よりも下方に位置している。
【0019】
また、補強板19は、
図2、
図3に示すように車両前方側の上縁における車幅方向中央の端部19cとその車幅方向両側の端部19dとの間に、切欠としての切欠凹部19gを形成している。このような切欠凹部19gは、
図4、
図6に示すように、Uボルト11の直線部11bの一部が入り込むUボルト用逃げ部を構成している。
【0020】
図6に示すように、Uボルト11は、アクスルハウジング1の上部を覆う円弧形状の湾曲部11aと、湾曲部11aの両端から下方に延びる互いに平行な一対の直線部11bとを備えている。湾曲部11aがアクスルハウジング1の上部を覆った状態では、湾曲部11aとアクスルハウジング1との間に、緩衝材となる断面円弧形状のシート材21を介装している。
【0021】
図1に示す下部スプリングシート9は、車両上下方向から見た平面視では矩形状であり、車幅方向の長さがリーフスプリング3の車幅方向の幅寸法より長く、車両前後方向の長さがアクスルハウジング1の直径より充分長い。これにより下部スプリングシート9は、
図1のように取り付けた状態では、車幅方向両端がリーフスプリング3の車幅方向両側縁より外側に突出し、車両前後方向両端がアクスルハウジング1よりも車両前後方向に突出する。
【0022】
そして、下部スプリングシート9の上記車幅方向両端かつ車両前後方向両端の四隅に形成してあるボルト挿入孔に、Uボルト11の直線部11bの先端側(下端側)を挿入し、下部スプリングシート9の下方に突出する端部のねじ部に図示しないナットを締結する。その際、本実施形態では、車両前方側(
図6中で左側)の直線部11bの湾曲部11a近傍の一部位が、
図4、
図6に示すように切欠凹部19gに入り込む。また、この締結状態では、
図5に示すように、スプリングシート本体13の平面部13b3が、補強板19の貫通孔19fに下方から入り込む。
【0023】
このように本実施形態は、アクスルハウジング1を、スプリングシート7を介してリーフスプリング3に結合固定する際、スプリングシート7とアクスルハウジング1との間に補強板19を介装している。補強板19を設けることで、アクスルハウジング1の支持剛性を高めることができる。
【0024】
その際、本実施形態では、補強板19の貫通孔19fにスプリングシート本体13の平面部13b3が下方からが入り込んでおり、この入り込んだ分補強板19がスプリングシート7に対してより下方に位置することになる。補強板19がスプリングシート7に対してより下方に位置することで、補強板19上のアクスルハウジング1もスプリングシート7に対してより下方に位置し、アクスルハウジング1とスプリングシート7との上下方向の位置関係がより接近する。
【0025】
すなわち、
図5に示すように、アクスルハウジング1の中心Oとスプリングシート7の下面との間隔Hが、貫通孔19fを設けない場合に比較して小さくなる。貫通孔19fを設けない場合には、補強板19の最下端部19bがスプリングシート本体13の平面部13b3上に位置することになる。したがって、貫通孔19fを設けている本実施形態の場合には、駆動力によってアクスルハウジング1からスプリングシート7へ入力される荷重がより小さくなり、アクスルハウジング1の支持剛性をより一層高めることができる。支持剛性を高めることで、車両の操縦安定性が向上する。
【0026】
また、本実施形態では、スプリングシート7の一部(平面部13b3)が下方から入り込む逃げ部を貫通孔19fとしている。これにより、逃げ部を、補強板19の下面を例えば研削して薄肉とする場合よりも、スプリングシート7の一部(平面部13b3)をより確実に逃がすことができる。また、貫通孔19fとすることで軽量化も達成できる。なお、貫通孔19fの代わりに、上記したように補強板19の下面を例えば研削して薄肉として逃げ部を構成してもよい。
【0027】
また、本実施形態では、補強板19に、Uボルト11の直線部11bが入り込むUボルト用逃げ部となる切欠凹部19gを形成している。この切欠凹部19gに、Uボルト11の直線部11bが入り込むことで、Uボルト11と補強板19との干渉を避けている。ここで、補強板19は、アクスルハウジング1に対し、Uボルト11を避けた位置の車両前後方向の端部19c,19d,19eや車幅方向両側の側縁19hに沿って溶接固定する。
【0028】
この場合、特に車両前方側の端部19dは、切欠凹部19gを設けることによって、Uボルト11と補強板19との干渉を避けつつ、より上方に延出させることが可能となる。つまり、端部19dのアクスルハウジング1に対する溶接位置を、より上方の荷重負荷時に変位がより小さなアクスルハウジング1の中心に近い位置とすることができる。これにより、端部19dのアクスルハウジング1に対する溶接部位の耐久性が向上する。
【0029】
また、本実施形態では、上記したUボルト用逃げ部は、補強板19の上縁に形成された切欠凹部19gとしている。すなわち、補強板19の上縁に切欠凹部19gを形成するという簡素な構成で、溶接部位となる端部19dをアクスルハウジング1の中心により近い位置とすることができる。
【符号の説明】
【0030】
1 アクスルハウジング
3 リーフスプリング
7 スプリングシート
9 下部スプリングシート
11 Uボルト
11a Uボルトの湾曲部
11b Uボルトの直線部
19 補強板(補強部材)
19f 補強板の貫通孔(スプリングシートの一部が下方から入り込む逃げ部)
19g 補強板の切欠凹部(切欠、Uボルト用逃げ部)