特許第6201360号(P6201360)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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  • 特許6201360-照明用電源及び照明装置 図000002
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6201360
(24)【登録日】2017年9月8日
(45)【発行日】2017年9月27日
(54)【発明の名称】照明用電源及び照明装置
(51)【国際特許分類】
   H05B 37/02 20060101AFI20170914BHJP
【FI】
   H05B37/02 J
【請求項の数】4
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2013-61115(P2013-61115)
(22)【出願日】2013年3月22日
(65)【公開番号】特開2014-186870(P2014-186870A)
(43)【公開日】2014年10月2日
【審査請求日】2015年9月15日
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】000003757
【氏名又は名称】東芝ライテック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100108062
【弁理士】
【氏名又は名称】日向寺 雅彦
(72)【発明者】
【氏名】北村 紀之
(72)【発明者】
【氏名】赤星 博
(72)【発明者】
【氏名】大武 寛和
(72)【発明者】
【氏名】高橋 雄治
【審査官】 松本 泰典
(56)【参考文献】
【文献】 特開2012−085507(JP,A)
【文献】 特開2012−155864(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2012/0032605(US,A1)
【文献】 特開2011−119237(JP,A)
【文献】 特開2012−034569(JP,A)
【文献】 特開2012−216485(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2008/0074058(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H05B 37/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
照明光源の一端と電気的に接続される第1出力端子と、
前記照明光源の他端と電気的に接続される第2出力端子と、
高電位端子と、前記第2出力端子を介して前記照明光源の他端と電気的に接続される低電位端子と、を有し、交流電圧を整流した電圧を前記高電位端子と前記低電位端子との間に出力する整流回路と、
前記高電位端子と電気的に接続された第1主電極と、前記第1出力端子を介して前記照明光源の前記一端と電気的に接続される第2主電極と、前記第1主電極と前記第2主電極との間に流れる電流を制御するための制御電極と、を有し、前記照明光源に供給する電流を制御する定電流素子と、
一端が前記第2主電極及び前記第1出力端子と電気的に接続された第1分圧抵抗と、
一端が前記第1分圧抵抗の他端と電気的に接続され、他端が前記低電位端子及び前記第2出力端子と電気的に接続された第2分圧抵抗と、
前記第1分圧抵抗と前記第2分圧抵抗との接続点と前記低電位端子との間に電気的に接続され、前記第1分圧抵抗に流れる電流を調整する定電流回路と、
を備え、
前記制御電極は、前記第1分圧抵抗と前記第2分圧抵抗との接続点と電気的に接続されている照明用電源。
【請求項2】
前記整流回路によって整流された電圧を平滑化し、直流電圧に変換して前記第1主電極に供給する平滑コンデンサと、
前記第1分圧抵抗に対して並列に接続されたコンデンサと、
をさらに備え、
前記第1分圧抵抗と前記コンデンサとの時定数は、前記交流電圧の半周期以下である請求項1記載の照明用電源。
【請求項3】
前記定電流素子は、ノーマリオン形である請求項1または2に記載の照明用電源。
【請求項4】
照明光源を有する照明負荷と、
前記照明負荷に電力を供給する請求項1〜3のいずれか1つに記載の照明用電源と、
を備えた照明装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、照明用電源及び照明装置に関する。
【背景技術】
【0002】
照明装置において、照明光源は白熱電球や蛍光灯から省エネルギー・長寿命の光源、例えば発光ダイオード(Light-emitting diode:LED)などの発光素子への置き換えが進んでいる。こうした光源に電力を供給する照明用電源において、入力電圧の歪みに起因する輝度の変化(チラツキ)を抑制することが望まれる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2011−119237号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
入力電圧の歪みに起因する輝度の変化を抑制した照明用電源及び照明装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の実施形態によれば、第1出力端子と、第2出力端子と、整流回路と、定電流素子と、第1分圧抵抗と、第2分圧抵抗と、定電流回路と、を備えた照明用電源が提供される。前記第1出力端子は、照明光源の一端と電気的に接続される。前記第2出力端子は、前記照明光源の他端と電気的に接続される。前記整流回路は、高電位端子と、前記第2出力端子を介して前記照明光源の他端と電気的に接続される低電位端子と、を有し、交流電圧を整流した電圧を前記高電位端子と前記低電位端子との間に出力する。前記定電流素子は、前記高電位端子と電気的に接続された第1主電極と、前記第1出力端子を介して前記照明光源の前記一端と電気的に接続される第2主電極と、前記第1主電極と前記第2主電極との間に流れる電流を制御するための制御電極と、を有し、前記照明光源に供給する電流を制御する。前記第1分圧抵抗は、一端が前記第2主電極及び前記第1出力端子と電気的に接続される。前記第2分圧抵抗は、一端が前記第1分圧抵抗の他端と電気的に接続され、他端が前記低電位端子及び前記第2出力端子と電気的に接続される。前記定電流回路は、前記第1分圧抵抗と前記第2分圧抵抗との接続点と前記低電位端子との間に電気的に接続され、前記第1分圧抵抗に流れる電流を調整する。前記制御電極は、前記第1分圧抵抗と前記第2分圧抵抗との接続点と電気的に接続されている。
【発明の効果】
【0006】
本発明の実施形態によれば、入力電圧の歪みに起因する輝度の変化を抑制した照明用電源及び照明装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】実施形態に係る照明装置を模式的に表す回路図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下に、各実施の形態について図面を参照しつつ説明する。
なお、図面は模式的または概念的なものであり、各部分の厚みと幅との関係、部分間の大きさの比率などは、必ずしも現実のものと同一とは限らない。また、同じ部分を表す場合であっても、図面により互いの寸法や比率が異なって表される場合もある。
なお、本願明細書と各図において、既出の図に関して前述したものと同様の要素には同一の符号を付して詳細な説明は適宜省略する。
【0009】
図1は、実施形態に係る照明装置を模式的に表す回路図である。
図1に表したように、照明装置10は、照明用電源12と、照明負荷14と、を備えている。
照明負荷14は、照明光源16を有する。照明光源16には、例えば、LEDが用いられる。照明光源16には、例えば、順方向降下電圧を有する発光素子が用いられる。照明負荷14は、照明用電源12からの出力電圧VOUTの印加、及び、出力電流IOUTの供給により、照明光源16を点灯させる。また、照明負荷14は、出力電圧VOUT及び出力電流IOUTの少なくともいずれかを変化させて調光することができる。なお、出力電圧VOUT、出力電流IOUTの値は、照明光源16に応じて規定される。
【0010】
照明用電源12は、交流電源2及び調光器3と接続されている。なお、本願明細書において、「接続」とは、電気的な接続を意味し、物理的に接続されていない場合や他の要素を介して接続されている場合も含むものとする。
【0011】
交流電源2は、例えば、商用電源である。調光器3は、交流電源2の交流の電源電圧VINから導通角制御した交流電圧VCTを生成する。照明用電源12は、調光器3から供給される交流電圧VCTを出力電圧VOUTに変換して照明負荷14に出力することにより、照明光源16を点灯させる。また、照明用電源12は、導通角制御された交流電圧VCTに同期して、照明光源16の調光を行う。なお、調光器3は、必要に応じて設けられ、省略可能である。調光器3が設けられていない場合には、交流電源2の電源電圧VINが、照明用電源12に供給される。以下では、調光器3が接続されている場合を例に説明を行う。
【0012】
調光器3の導通角制御には、例えば、交流電圧のゼロクロスから交流電圧の絶対値が最大値となる期間において導通する位相を制御する位相制御(leading edge)の方式と、交流電圧の絶対値が最大値となってから交流電圧がゼロクロスする期間において遮断する位相を制御する逆位相制御(trailing edge)の方式とがある。
【0013】
位相制御する調光器3は、回路構成が簡単であり、比較的大きな電力負荷を扱うことができる。しかし、トライアックが使用されている場合は、軽負荷動作が困難で、電源電圧が一時的に低下するいわゆる電源ディップが発生すると不安定動作に陥りやすい。また、容量性負荷を接続した場合は、突入電流が発生するため容量性負荷との相性が悪いなどの特徴がある。
【0014】
一方、逆位相制御する調光器3は、軽負荷でも動作可能であり、容量性負荷を接続しても突入電流が発生せず、また電源ディップが発生しても動作が安定である。しかし、回路構成が複雑であり、温度が上昇し易いため、重負荷に向かない。また、誘導性負荷を接続した場合は、サージが発生するなどの特徴がある。
【0015】
本実施形態では、調光器3として、電源電圧VINを供給する一対の電源ラインの一方に直列に挿入された構成を例示しているが、他の構成でもよい。
【0016】
照明用電源12は、交流電圧を直流に変換する整流回路20と、調光器3が位相制御するのに必要な定電流を流す定電流回路22と、出力電圧VOUTを生成するDC−DCコンバータ24と、出力電流IOUTを制御する電流制御回路26と、を有する。
【0017】
整流回路20には、調光器3によって導通角制御された交流電圧VCTが入力される。整流回路20は、交流電圧VCTを全波整流し、交流電圧VCTから脈流の電圧を生成する。整流回路20は、例えば、ダイオードブリッジである。整流回路20は、ダイオードブリッジに限定されない。整流回路20は、調光器3から入力される交流電圧を整流できればよい。
【0018】
整流回路20の高電位端子20aと低電位端子20bとの間には、平滑コンデンサ30が接続されている。平滑コンデンサ30は、整流回路20によって整流された脈流電圧を平滑化し、脈流電圧を直流電圧VREに変換する。また、整流回路20の一対の入力端には、交流電圧VCTに含まれるノイズを低減させるフィルタコンデンサ32が接続されている。
【0019】
定電流回路22は、例えば、トランジスタ34、抵抗35、ツェナーダイオード36、チョークコイル37、及び、ダイオード38を有する。抵抗35とツェナーダイオード36とは、トランジスタ34をバイアスする。トランジスタ34は、例えばFETであり、ノーマリオン形の素子である。トランジスタ34のドレインは、チョークコイル37を介して、整流回路20の高電位端子20aに接続されている。
【0020】
トランジスタ34のソースは、並列に接続された抵抗35とツェナーダイオード36とを介して、整流回路20の低電位端子20bに接続されている。トランジスタ34のゲートは、整流回路20の低電位端子20bに接続されている。また、整流回路20の高電位端子20aは、ダイオード38を介して、DC−DCコンバータ24に接続される。
【0021】
定電流回路22は、例えば、調光器3の位相回路を動作させる定電流を流す回路である。位相回路と比較してインピーダンスの小さい素子を整流回路20の負荷として接続することにより、後段のDC−DCコンバータ24の入力インピーダンスの影響を抑制して、調光器3を安定に動作させることができる。
【0022】
DC−DCコンバータ24は、例えば、出力素子40、定電流素子41、整流素子42、インダクタ43、出力素子40を駆動する帰還巻き線(駆動素子)44、結合コンデンサ45、分圧抵抗46、47、出力コンデンサ48、バイアス抵抗49を有している。
【0023】
出力素子40及び定電流素子41は、例えば電界効果トランジスタ(FET)であり、例えば高電子移動度トランジスタ(High Electron Mobility Transistor:HEMT)であり、ノーマリオン形の素子である。すなわち、この例では、定電流素子41のドレインが、第1主電極であり、ソースが、第2主電極であり、ゲートが、制御電極である。
【0024】
定電流素子41のソースは、照明光源16に対して直列に接続される。定電流素子41のゲートは、定電流素子41のドレイン−ソース間に流れる電流を制御するための電極である。定電流素子41のドレインは、例えば、出力素子40を介して平滑コンデンサ30に接続される。平滑コンデンサ30は、平滑化した直流電圧VREを定電流素子41のドレインに供給する。
【0025】
出力素子40のドレインは、定電流回路22を介して、整流回路20の高電位端子20aに接続される。出力素子40のソースは、定電流素子41のドレインに接続される。出力素子40のゲートは、結合コンデンサ45を介して、帰還巻き線44の一端に接続される。
【0026】
定電流素子41のソースは、インダクタ43の一端と帰還巻き線44の他端とに接続される。定電流素子41のゲートには、定電流素子41のソース電位を分圧抵抗46、47で分圧した電圧が入力される。定電流素子41のソースは、インダクタ43を介して照明光源16に接続される。分圧抵抗46は、照明光源16に対して並列に接続される。すなわち、定電流素子41のゲートには、照明光源16の電圧(順方向電圧)を分圧抵抗46、47で分圧した電圧が入力される。出力素子40のゲートと定電流素子41のゲートには、それぞれ保護ダイオードが接続される。
【0027】
バイアス抵抗49は、出力素子40のドレインと定電流素子41のソースとの間に接続され、分圧抵抗46、47に直流電圧を供給する。その結果、定電流素子41のゲートには、ソースよりも低い電位が供給される。
【0028】
分圧抵抗46には、コンデンサ50とツェナーダイオード52とが、それぞれ並列に接続されている。分圧抵抗46、コンデンサ50及びツェナーダイオード52は、ローパスフィルタとして機能する。
【0029】
分圧抵抗46とコンデンサ50との時定数は、例えば、電源電圧VIN(交流電圧)の半周期以下である。すなわち、分圧抵抗46とコンデンサ50との時定数は、例えば、120Hz以下である。また、分圧抵抗46とコンデンサ50との時定数は、例えば、出力素子40のスイッチング周波数の周期以上である。例えば、出力素子40のスイッチング周波数が1MHzで、電源電圧VINの周波数が60Hzである場合、分圧抵抗46とコンデンサ50との時定数は、1μsec以上8.3msec以下である。例えば、上記の時定数を満足するように、コンデンサ50の容量が設定される。
【0030】
インダクタ43と帰還巻き線44とは、インダクタ43の一端から他端に増加する電流が流れるとき、出力素子40のゲートに正極性の電圧が供給される極性で磁気結合している。
【0031】
整流素子42は、定電流素子41のソースと整流回路20の低電位端子20bとの間に、低電位端子20bから定電流素子41の方向を順方向として接続されている。
【0032】
インダクタ43の他端は、高電位出力端子12aに接続され、整流回路20の低電位端子20bは、低電位出力端子12bに接続される。また、出力コンデンサ48は、高電位出力端子12aと低電位出力端子12bとの間に接続される。
【0033】
照明負荷14は、高電位出力端子12aと低電位出力端子12bとの間に、出力コンデンサ48と並列に接続される。DC−DCコンバータ24は、平滑コンデンサ30によって生成された直流電圧VREを直流の出力電圧VOUTに変換し、照明負荷14に出力する。
【0034】
電流制御回路26は、例えば、トランジスタ60と、抵抗61〜63と、ダイオード64、65と、コンデンサ66と、ツェナーダイオード67と、を有する。この例において、トランジスタ60は、pnpトランジスタである。トランジスタ60は、ノーマリオン形の素子である。トランジスタ60は、npnトランジスタやFETなどでもよい。トランジスタ60は、ノーマリオフ形でもよい。
【0035】
抵抗61の一端は、分圧抵抗46、47の接続点に接続されている。抵抗61の他端は、ダイオード64のアノードに接続されている。ダイオード64のカソードは、トランジスタ60のエミッタに接続されている。ダイオード65のアノードは、トランジスタ60のベースに接続されている。ダイオード65のカソードは、トランジスタ60のエミッタに接続されている。
【0036】
コンデンサ66は、トランジスタ60のエミッタと整流回路20の低電位端子20bとの間に接続されている。抵抗62は、トランジスタ60のベースと整流回路20の低電位端子20bとの間に接続されている。ツェナーダイオード67は、トランジスタ60のベースと整流回路20の低電位端子20bとの間に接続されている。すなわち、ツェナーダイオード67は、抵抗62に対して並列に接続されている。トランジスタ60のコレクタは、整流回路20の低電位端子20bに接続されている。
【0037】
抵抗63の一端は、トランジスタ60のベースに接続されている。抵抗63の他端には、所定の直流電圧が印加される。これにより、トランジスタ60のベースには、ツェナーダイオード67の降伏電圧に応じた実質的に一定の電圧が印加される。これにともない、トランジスタ60のエミッタ−コレクタ間に、実質的に一定の電流が流れる。このように、トランジスタ60は、定電流素子として機能する。電流制御回路26は、例えば、分圧抵抗46に流れる電流を調整する。電流制御回路26は、例えば、分圧抵抗46に流れる電流を実質的に一定にする。すなわち、電流制御回路26は、定電流回路である。
【0038】
次に、照明用電源12の動作について説明する。
まず、調光器3の調光度がほぼ100%に設定され、入力される電源電圧VINがほぼそのまま伝達される場合、すなわちDC−DCコンバータ24に最も高い直流電圧VREが入力される場合について説明する。
【0039】
電源電圧VINが、照明用電源12に供給されるとき、出力素子40及び定電流素子41は、ノーマリオン形の素子であるため、いずれもオンしている。そして、出力素子40、定電流素子41、インダクタ43、出力コンデンサ48の経路で電流が流れ、出力コンデンサ48が充電される。出力コンデンサ48の両端の電圧、すなわち高電位出力端子12aと低電位出力端子12bとの間の電圧は、照明用電源12の出力電圧VOUTとして、照明負荷14の照明光源16に供給される。なお、出力素子40及び定電流素子41がオンしているため、整流素子42には、逆電圧が印加される。整流素子42には、電流は流れない。
【0040】
出力電圧VOUTが所定電圧に達すると、照明光源16に出力電流IOUTが流れ、照明光源16が点灯する。このとき、出力素子40、定電流素子41、インダクタ43、出力コンデンサ48及び照明光源16の経路で電流が流れる。例えば、照明光源16がLEDの場合、この所定電圧は、LEDの順方向電圧であり、照明光源16に応じて定まる。また、照明光源16が消灯した場合、出力電流IOUTが流れないため、出力コンデンサ48は、出力電圧VOUTの値を保持する。
【0041】
DC−DCコンバータ24に入力される直流電圧VREは、出力電圧VOUTと比較して十分に高い。すなわち、入出力間の電位差ΔVは、十分に大きい。このため、インダクタ43を流れる電流は増加していく。帰還巻き線44は、インダクタ43と磁気結合しているため、帰還巻き線44には、結合コンデンサ45側を高電位とする極性の起電力が誘起される。そのため、出力素子40のゲートには、結合コンデンサ45を介してソースに対して正の電位が供給され、出力素子40はオンの状態を維持する。
【0042】
定電流素子41を流れる電流が上限値を超えると、定電流素子41のドレイン・ソース間電圧は、急激に上昇する。そのため、出力素子40のゲート・ソース間電圧がしきい値電圧よりも低くなり、出力素子40はオフする。上限値は、定電流素子41の飽和電流値であり、定電流素子41のゲートに入力される電位により規定される。定電流素子41のゲート電位は、バイアス抵抗49を介して分圧抵抗46、47に供給される直流電圧、照明光源16の電圧、分圧抵抗46、47の分圧比、及び、電流制御回路26による電流調整によって設定される。なお、上記のとおり、定電流素子41のゲート電位は、ソースに対して負電位のため、飽和電流値を適正値に制限することができる。
【0043】
インダクタ43は、整流素子42、出力コンデンサ48及び照明負荷14の経路で電流を流し続ける。このとき、インダクタ43は、エネルギーを放出するため、インダクタ43の電流は、減少していく。このため、帰還巻き線44には、結合コンデンサ45側を低電位とする極性の起電力が誘起される。出力素子40のゲートには、結合コンデンサ45を介してソースに対して負の電位が供給され、出力素子40はオフの状態を維持する。
【0044】
インダクタ43に蓄積されていたエネルギーがゼロになると、インダクタ43を流れる電流はゼロになる。帰還巻き線44に誘起される起電力の方向が再び反転し、結合コンデンサ45側を高電位とする起電力が誘起される。これにより、出力素子40のゲートにソースよりも高い電位が供給され、出力素子40が再びオンする。これにより、上記の出力電圧VOUTが所定電圧に達した状態に戻る。
【0045】
以後、上記の動作を繰り返す。これにより、出力素子40のオン及びオフへの切替が自動的に繰り返されて、照明光源16には電源電圧VINを降下した出力電圧VOUTが供給される。すなわち、照明用電源12においては、出力素子40のスイッチング周波数が、分圧抵抗46、47及び電流制御回路26によって設定される。また、照明光源16に供給される電流は、定電流素子41により上限値の制限された定電流となる。そのため、照明光源16を安定に点灯させることができる。
【0046】
調光器3の調光度が100%よりも小さい値に設定され、入力される交流電圧VCTが導通角制御されて伝達される場合、すなわちDC−DCコンバータ24に高い直流電圧VREが入力される場合についても、出力素子40が発振を継続できる場合は、上記と同様である。調光器3の調光度に応じて、DC−DCコンバータ24に入力される直流電圧VREの値が変化して、出力電流IOUTの平均値を制御することができる。従って、調光度に応じて、照明負荷14の照明光源16を調光することができる。
【0047】
また、調光器3の調光度がさらに小さい値に設定される場合、すなわちDC−DCコンバータ24に入力される直流電圧VREがさらに低い場合には、出力素子40がオンしてもインダクタ43の両端の電位差が小さいため、インダクタ43を流れる電流が増加することができない。したがって、出力素子40は、オフの状態にならず、一定の直流電流を出力する。すなわち、照明用電源12は、調光器3の調光度が小さい場合、すなわち、入出力間の電位差ΔVが小さい場合、シリーズレギュレータのような動作をする。
【0048】
このように、照明用電源12は、電位差ΔVが所定値よりも大きいとスイッチング動作し、電位差ΔVが小さいと、シリーズレギュレータのような動作をする。電位差ΔVが大きい場合は、電位差ΔVと電流との積が大きく、シリーズレギュレータの動作を行うと損失が大きくなる。したがって、電位差ΔVが大きい場合に、スイッチング動作をすることは、低消費電力化に適する。また、電位差ΔVが小さい場合は、損失は小さいため、シリーズレギュレータとして動作をすることは問題ない。
【0049】
また、照明用電源12では、電位差ΔVが所定値よりも小さいときは、出力素子40はオフの状態にならずにオンの状態を継続したまま電流が振動して、電流の平均値で照明負荷14の照明光源16を点灯させる。また、電位差ΔVがさらに小さいときは、出力素子40は、オンの状態を継続したまま、直流電流を照明負荷14に出力して照明光源16を点灯させる。その結果、照明用電源12では、出力電流をゼロまで連続的に変化させることができる。例えば、照明装置10において、照明負荷14の照明光源16をスムーズに消灯させることができる。
【0050】
照明用電源12では、電位差ΔVに応じて、出力素子40のスイッチング動作時における最大値から、出力素子40のオンの状態を継続したまま直流電流を出力する際の最小値まで出力電流IOUTを連続的に変化させることができる。例えば、照明装置10において、照明光源16を連続的に0〜100%の範囲で調光することができる。
【0051】
照明用電源12では、バイアス抵抗49からの直流電圧及び照明光源16の電圧を分圧抵抗46、47で分圧して定電流素子41のゲートに入力することにより、出力素子40のスイッチング周波数を設定している。照明光源16の電圧は、電源電圧VINや交流電圧VCTなどの入力電圧が歪んでも、ある程度安定する。従って、上記のように、バイアス抵抗49からの直流電圧及び照明光源16の電圧を分圧抵抗46、47で分圧して定電流素子41のゲートに入力することで、特別な制御リファレンスなどを用意することなく、入力電圧の歪みに起因する照明光源16の輝度の変化を抑制することができる。例えば、照明光源16のチラツキを抑制することができる。例えば、入力電圧の変動にともなう照明光源16の電圧の変動を抑えることができる。
【0052】
照明用電源12では、分圧抵抗46に対してコンデンサ50を並列に接続し、ローパスフィルタを形成している。そして、照明用電源12では、分圧抵抗46とコンデンサ50との時定数を、例えば、電源電圧VINの半周期以下としている。これにより、例えば、出力素子40のスイッチングにともなって、定電流素子41のゲート電位が変動してしまうことを抑制することができる。例えば、インダクタ43が介在していても、分圧抵抗46、47に現れるようになり、定電流素子41のゲート電位をより安定させることができる。すなわち、照明光源16の輝度の変化をより適切に抑制することができる。例えば、スイッチング周波数を高くし、コンデンサ50の容量を小さくする。これにより、例えば、応答性が高くなり、比較的広い範囲の電流リプルを抑えることができる。
【0053】
また、照明用電源12では、分圧抵抗46に電流制御回路26を接続し、分圧抵抗46に流れる電流が、実質的に一定になるようにしている。これにより、例えば、定電流素子41のゲート電位をより安定させることができる。
【0054】
また、電流制御回路26のトランジスタ60をノーマリオン形とする。これにより、例えば、電流制御回路26が動作していない状態において、定電流素子41のゲートに負電位を入力できなくなり、定電流素子41をオフ状態にすることができる。例えば、照明用電源12の動作が停止した際に、出力素子40及び定電流素子41を速やかに停止させる方向に動かすことができる。例えば、点灯開始時(電源電圧VINの供給開始時)に高い出力電圧VOUTが照明光源16に印加され、一時的に意図しない高い輝度で照明光源16が点灯してしまうことを抑制することができる。
【0055】
以上、具体例を参照しつつ実施形態について説明したが、それらに限定されるものではなく、種々の変形が可能である。
【0056】
例えば、出力素子40及び定電流素子41はGaN系HEMTには限定されない。例えば、半導体基板に炭化珪素(SiC)や窒化ガリウム(GaN)やダイヤモンドのようなワイドバンドギャップを有する半導体(ワイドバンドギャップ半導体)を用いて形成した半導体素子でもよい。ここで、ワイドバンドギャップ半導体とは、バンドギャップが約1.4eVのヒ化ガリウム(GaAs)よりもバンドギャップの広い半導体をいう。例えば、バンドギャップが1.5eV以上の半導体、リン化ガリウム(GaP、バンドギャップ約2.3eV)、窒化ガリウム(GaN、バンドギャップ約3.4eV)、ダイアモンド(C、バンドギャップ約5.27eV)、窒化アルミニウム(AlN、バンドギャップ約5.9eV)、炭化ケイ素(SiC)などが含まれる。このようなワイドバンドギャップ半導体素子は、耐圧を等しくする場合、シリコン半導体素子よりも小さくできるために寄生容量が小さく、高速動作が可能なため、スイッチング周期を短くすることができ、巻線部品やコンデンサなどの小形化が可能となる。
【0057】
上記実施形態では、出力素子40と定電流素子41とをカスコード接続し、出力素子40でスイッチングを行い、定電流素子41で電流の制御を行っている。これに限ることなく、例えば、定電流素子41のみで、スイッチングと電流の制御とを行ってもよい。また、照明用電源12は、例えば、スイッチングを行うことなく、入力された直流電圧VREの電流制御のみを定電流素子41で行って、照明光源16に供給してもよい。例えば、上述のように、入出力間の電位差ΔVが小さい場合には、スイッチングを行わなくてもよい。
【0058】
なお、照明光源16はLEDに限らず、例えば、有機EL(Electro-Luminescence)やOLED(Organic light-emitting diode)などでもよい。照明負荷14には、複数の照明光源16が直列又は並列に接続されていてもよい。
【0059】
本発明のいくつかの実施形態および実施例を説明したが、これらの実施形態または実施例は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態または実施例は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態または実施例やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0060】
2…電源、 3…調光器、 10…照明装置、 12…照明用電源、 12a…高電位出力端子、 12b…低電位出力端子、 14…照明負荷、 16…照明光源、 20…整流回路、 20a…高電位端子、 20b…低電位端子、 22…定電流回路、 24…DC−DCコンバータ、 26…電流制御回路、 30…平滑コンデンサ、 32…フィルタコンデンサ、 34…トランジスタ、 35…抵抗、 36…ツェナーダイオード、 37…チョークコイル、 38…ダイオード、 40…出力素子、 41…定電流素子、 42…整流素子、 43…インダクタ、 44…帰還巻き線、 45…結合コンデンサ、 46、47…分圧抵抗、 48…出力コンデンサ、 49…バイアス抵抗、50…コンデンサ、52…ツェナーダイオード、 60…トランジスタ、 61〜63…抵抗、 64、65…ダイオード、 66…コンデンサ、 67…ツェナーダイオード
図1