(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上記特許文献1の技術では、データ受信コイル自体には特に特徴がなく、別途打ち消しコイルが必要であった。
【0007】
そこで、本発明は、データ通信の性能を向上できる構成を有した非接触通信コイルを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するために本発明の一態様に係る非接触通信コイルは、第1の通信部と、前記第1の通信部に直列接続される第2の通信部と、を備え、他のコイルに流れる電流によって前記第1の通信部及び前記第2の通信部に互いに逆方向の誘起電圧が発生する構成としている。
【0009】
このような構成によれば、他のコイルに流れる電流によって非接触通信コイルに誘起される誘起電圧を抑制できる。従って、他のコイルによる影響を抑えてデータ通信の性能を向上できる。
【0010】
また、上記構成において、前記第1の通信部は、長手方向に延在して前記長手方向に垂直な軸周りに巻かれた巻線を前記長手方向が周方向となるよう巻いて構成され、前記第2の通信部は、前記周方向に巻いた巻線であることとしてもよい。
【0011】
また、上記構成において、前記第1の通信部は、前記第2の通信部に比して前記他のコイルの近くに配されることとしてもよい。
【0012】
また、上記いずれかの構成において、前記第1の通信部及び前記第2の通信部の各中心軸は同心であることとしてもよい。これにより、非接触通信コイルの最外形サイズに対する通信エリアを広くすることができる。
【0013】
また、上記いずれかの構成において、前記第1の通信部及び前記第2の通信部の各外形サイズは同一であることとしてもよい。これにより、非接触通信コイルの最外形サイズに対する通信エリアを広くすることができる。
【0014】
また、本発明の一態様に係る非接触給電装置は、上記いずれかの構成の非接触通信コイルと、前記他のコイルである送電コイル及び前記送電コイルに結合された共振コイルと、を備えた構成としている。
【0015】
このような構成によれば、送電コイル及び共振コイルに流れる電流により非接触通信コイルに誘起される誘起電圧を抑制でき、これらのコイルによる影響を抑えてデータ通信性能を向上できる。
【0016】
また、本発明の一態様に係る非接触給電装置は、上記いずれかの構成の非接触通信コイルと、前記他のコイルであって共振コイルと共用された送電コイルと、を備えた構成としている。
【0017】
このような構成によれば、共振コイルと共用された送電コイルに流れる電流により非接触通信コイルに誘起される誘起電圧を抑制でき、送電コイルによる影響を抑えてデータ通信性能を向上できる。
【0018】
また、本発明の一態様に係る非接触受電装置は、上記いずれかの構成の非接触通信コイルと、前記他のコイルである受電コイル及び前記受電コイルに結合された共振コイルと、を備えた構成としている。
【0019】
このような構成によれば、受電コイル及び共振コイルに流れる電流により非接触通信コイルに誘起される誘起電圧を抑制でき、これらのコイルによる影響を抑えてデータ通信性能を向上できる。
【発明の効果】
【0020】
本発明の非接触通信コイルによると、他のコイルによる影響を抑えてデータ通信の性能を向上できる。
【発明を実施するための形態】
【0022】
<第1実施形態>
以下に本発明の一実施形態について図面を参照して説明する。本発明の第1実施形態に係る給電装置と受電装置を電気自動車の充電に適用した場合の例を
図1に示す。
【0023】
図1に示す例では、充電スタンドや駐車場などにおいて、電気自動車25が駐車する箇所の地面に給電装置10が配置されており、受電装置20は電気自動車25の底面に配置される。給電装置10に対して受電装置20が対向して所定距離以内で離れた状態にて、給電装置10は磁界を放射し、受電装置20はその磁界を受けて電力を供給される。また、給電装置10と受電装置20の間では、給電の開始/停止の通知、給電状況の通知、互いの情報の交換などのために通信が行われる。
【0024】
給電装置10と受電装置20の具体的な構成を示すブロック図を
図2に示す。
図2に示すように、給電装置10は、発振部11と、駆動部12と、変調部13と、通信コイル14と、受信部15と、制御部16と、送電コイルL1と、共振コイルL2と、共振コンデンサC1を備えている。また、受電装置20は、受電コイルL3と、共振コンデンサC2と、抵抗R1と、切替スイッチSW1と、受電回路21を備えている。
【0025】
発振部11は、送電のための放射磁界の周波数を有する高周波信号を発生する。駆動部12は、発振部11により発生した高周波信号をスイッチングによって増幅し、送電コイルL1に高周波の電流を流す。変調部13は、受電装置20へデータを送信するときに、駆動部12を制御することによって放射磁界にASK(amplitude shift keying)変調を行う。
【0026】
送電コイルL1は、高周波電流が流れることにより、送電のための磁界を放射する。共振コイルL2は、共振コンデンサC1と共振回路を構成する。共振コイルL2は、送電コイルL1が放射した磁界を受け、共振電流が流れることにより、送電のためのより大きな磁界を放射する。
【0027】
通信コイル14(非接触通信コイル)は、受電装置20からのデータ受信のためのコイルであり、送電コイルL1及び共振コイルL2から放射される磁界の影響を受けずにデータ受信を行える。通信コイル14の詳細な構成については後述する。
【0028】
受信部15は、受電装置20からデータを受信するために、通信コイル14で受信した信号をデータに復調する。
【0029】
制御部16は、発振部11、駆動部12、変調部13、及び受信部15などの給電装置10の各部を制御する。
【0030】
ここで、給電装置10から受電装置20への送電について説明すると、給電装置10における送電コイルL1に高周波電流を流すと、送電コイルL1と結合している共振コイルL2に共振電流が流れ、送電のための磁界が放射される。そして、受電装置20側では、この放射された磁界を受電コイルL3にて受け、受電コイルL3に発生する誘導起電力を電力として取り出す。受電回路21は、取り出された電力を例えばバッテリに充電する。
【0031】
なお、
図2に示すように受電装置20には共振コンデンサC2を設けて、受電コイルL3と共振回路を構成することが望ましいが、共振コンデンサC2は必須ではない。また、受電装置20側にも給電装置10と同様に、受電コイルとは別に共振コイルを設けてもよい。
【0032】
また、給電装置10から受電装置20へのデータ通信について説明すると、給電装置10側では、変調部13による制御によって共振コイルL2から放射される磁界に変調を行う。そして、受電装置20側では、この放射された磁界を受電コイルL3にて受け、受電コイルL3で誘起電圧が発生する。受電回路21は、この発生した誘起電圧の変化からデータを取り出す。
【0033】
また、受電装置20から給電装置10へのデータ通信について説明すると、受電装置20側では、抵抗R1に接続された切替スイッチSW1を送信データに応じて切替えることにより受電コイルL3の負荷インピーダンスを変化させ、受電コイルL3から磁界を放射する。そして、給電装置10側では、この放射された磁界を通信コイル14で受け、受信部15は通信コイル14で発生する誘起電圧の変化を検出することでデータを取り出す。
【0034】
次に、通信コイル14の構成について説明する。
図3に示すように、給電装置10においては、共振コイルL2、送電コイルL1、及び通信コイル14は、互いに近接させて平面視で重なるように設けられる。なお、
図3では、各コイルを便宜上線分で示しているが、実際には当然に各コイルは太さを有する。
【0035】
通信コイル14は、共振コイルL2及び送電コイルL1に近い位置に配置される近接受信部141と、共振コイルL2及び送電コイルL1から遠い位置に配置される遠方受信部142から構成される。近接受信部141と遠方受信部142は直列に接続される。近接受信部141の一端はグランドに接続され、遠方受信部142の一端は受信部15(
図2)に接続される。
【0036】
図3に示す近接受信部141は、
図4に展開図を示すように、長手方向に延在して該長手方向に直交する軸S周りに一端が開口するコの字型に巻かれた巻線コイルを、長手方向が周方向となるように1回巻いたものである。送電コイルL1及び共振コイルL2に流れる電流による磁束(例えば
図3の磁束M1)が近接受信部141に鎖交する。即ち、
図4に示す巻線で囲まれた領域Pを磁束が通過する。
【0037】
図3に示す遠方受信部142は、近接受信部141の周方向に1回巻いた巻線で構成され、近接受信部141と中心軸を略同心として、且つ外径を略等しくしている。送電コイルL1及び共振コイルL2に流れる電流による磁束(例えば
図3の磁束M2)が遠方受信部142に鎖交する。また、送電コイルL1及び共振コイルL2より遠方に位置する受電装置20からデータ送信のために放射される磁束(例えば
図3に示す磁束M3)が遠方受信部142に鎖交する。
【0038】
ここで、送電コイルL1及び共振コイルL2に流れる電流による磁束の鎖交によって遠方受信部142に発生する誘起電圧をe1、送電コイルL1及び共振コイルL2に流れる電流による磁束の鎖交によって近接受信部141に発生する誘起電圧をe2、及び受電装置20から放射される磁束の鎖交によって遠方受信部142に発生する誘起電圧をe3とすると、通信コイル14に発生する誘起電圧は、e1−e2+e3で表される。即ち、e1と−e2は互いに逆方向の誘起電圧となる。なお、受電装置20から放射される磁束は近接受信部141には鎖交しないので、当該磁束によって近接受信部141に誘起電圧は発生しない。
【0039】
本実施形態では、e1=e2、即ち、送電コイルL1及び共振コイルL2に流れる電流による磁束の鎖交によって遠方受信部142に発生する誘起電圧と、送電コイルL1及び共振コイルL2に流れる電流による磁束の鎖交によって近接受信部141に発生する誘起電圧の大きさが等しくなるように設計している。これにより、通信コイル14に発生する誘起電圧はe3となり、受電装置20からデータとして放射される磁束による誘起電圧のみを取り出すことができる。従って、送電コイルL1及び共振コイルL2からの放射磁界の影響を受けずに、データ受信の信頼性を高めることができる。
【0040】
上記のように各誘起電圧の大きさを等しくする(e1=e2)には、近接受信部141の幅(
図4の例では幅W)、近接受信部141の長手方向を周方向とする巻き数、及び遠方受信部142の巻き数を調整すればよい。
【0041】
図3に示す例では近接受信部141の長手方向を周方向とする巻き数は1回としているが、複数回としてもよい。例えば、
図4に示したコの字型に巻かれた巻線コイルを、長手方向を周方向とするように2回巻いて構成した場合の近接受信部141を、
図5に示す。
図5の例では、半径方向に2つの層が形成される構造となる。
【0042】
また、
図3に示す例では遠方受信部142は巻き数を1回としているが、これに限らず、複数回としてもよい。複数回としたほうがデータ受信電圧の向上のために望ましい。
【0043】
また、
図4に示す例では近接受信部141として、コの字型に巻いた巻線コイルを用いたが、上記誘起電圧の条件を満たすのであれば、例えば
図6に示すように近接受信部141を、外形が略長方形状となるよう軸S周りに巻いた巻線コイルを長手方向を周方向とするように1回以上巻いた構成としてもよい。
【0044】
また、
図3に示す例では、近接受信部141と遠方受信部142は、中心軸を略同心とし、且つ外径も略同一(即ち外形サイズを略同一)としている。この条件は必須ではないが、これは、通信コイル14の最外形サイズに対する遠方受信部142のサイズ、即ち通信エリアを広くできるためであり望ましい。
【0045】
なお、上記実施形態では、通信コイル14をデータ受信に用いる例を示したが、通信コイル14をデータ送信に用いてもよい。これにより、送電コイルL1及び共振コイルL2に流れる電流の影響を受けずに、高速なデータ送信を行うことが可能となる。
【0046】
また、上記実施形態では、送電と通信コイル14によるデータ受信は同じ周波数を使用することを前提としているが、異なる周波数を用いても有効性は同じである。
【0047】
<第2実施形態>
本発明の第2実施形態に係る給電装置の構成を
図7に示す。
図7に示す給電装置30は、発振部31と、駆動部32と、通信コイル33と、通信回路34と、制御部35と、共振コンデンサC3と、送電コイルL4を備えている。
【0048】
本実施形態の第1実施形態(
図2)との相違点は、送電コイルL4を共振コイルと共用し、共振コンデンサC3と送電コイルL4により共振回路を構成することである。送電コイルL4に共振電流が流れることにより、磁界が放射されて受電装置(不図示)に送電される。
【0049】
また、駆動部32により変調を行ってデータ送信するのではなく、通信コイル33と通信回路34を用いてデータの送受信を行う。
【0050】
通信コイル33は、第1実施形態と同様に、送電コイルL4に近い位置に配置される近接受信部と、近接受信部に直列接続されて送電コイルL4から遠い位置に配置される遠方受信部とから構成される。
【0051】
送電コイルL4に流れる電流による磁束の鎖交によって近接受信部及び遠方受信部に発生する逆方向の各誘起電圧の大きさは等しくなるように設計される。これにより、受電装置(不図示)からデータとして放射される磁束の鎖交によって遠方受信部に発生する誘起電圧のみを取り出すことができる。従って、送電コイルL4に流れる電流の影響を受けずに、データ受信の信頼性が向上する。
【0052】
また、通信コイル33をデータ送信に用いる場合は、送電コイルL4に流れる電流の影響を受けずに、高速なデータ送信を行うことができる。
【0053】
<第3実施形態>
本発明の第3実施形態に係る受電装置の構成を
図8に示す。本実施形態は、通信コイルを給電装置ではなく、受電装置側に適用した例である。
図8に示す受電装置40は、通信コイル41と、受信部42と、受電回路43と、制御部44と、共振コンデンサC4と、共振コイルL5と、受電コイルL6と、抵抗R2と、切替スイッチSW2を備えている。
【0054】
給電装置(不図示)から送電のため磁界が放射されると、共振コイルL5がこの磁界を受け、共振コンデンサC4と共振コイルL5から構成される共振回路に共振電流が流れる。共振電流により共振コイルL5に結合された受電コイルL6に誘導起電力が発生し、誘導起電力が電力として取り出される。
【0055】
また、送信データに応じて抵抗R2に接続された切替スイッチSW2を切替えることにより、受電コイルL6の負荷インピーダンスを変化させてデータ送信を行う。
【0056】
通信コイル41は、受電コイルL6及び共振コイルL5に近い位置に配置される近接受信部と、近接受信部に直列接続されて受電コイルL6及び共振コイルL5から遠い位置に配置される遠方受信部とから構成される。
【0057】
受電コイルL6及び共振コイルL5に流れる電流による磁束の鎖交によって近接受信部及び遠方受信部に発生する逆方向の各誘起電圧の大きさは等しくなるように設計される。これにより、給電装置(不図示)からデータとして放射される磁束の鎖交によって遠方受信部に発生する誘起電圧のみを取り出すことができる。従って、受電コイルL6及び共振コイルL5に流れる電流の影響を受けずに、データ受信の信頼性が向上する。
【0058】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明の趣旨の範囲内であれば、実施形態は種々変形が可能である。