(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6201400
(24)【登録日】2017年9月8日
(45)【発行日】2017年9月27日
(54)【発明の名称】半導体ウエハプロセス用吸着プレート
(51)【国際特許分類】
H01L 21/683 20060101AFI20170914BHJP
【FI】
H01L21/68 P
【請求項の数】5
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2013-91896(P2013-91896)
(22)【出願日】2013年4月25日
(65)【公開番号】特開2014-216440(P2014-216440A)
(43)【公開日】2014年11月17日
【審査請求日】2016年2月15日
(73)【特許権者】
【識別番号】000005234
【氏名又は名称】富士電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100161562
【弁理士】
【氏名又は名称】阪本 朗
(72)【発明者】
【氏名】中矢 博樹
【審査官】
内田 正和
(56)【参考文献】
【文献】
国際公開第2012/043349(WO,A1)
【文献】
特開平01−129438(JP,A)
【文献】
特開2008−147591(JP,A)
【文献】
特開2002−196300(JP,A)
【文献】
特開2007−258444(JP,A)
【文献】
特開2012−089647(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/683
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
裏面の最外周部に環状補強リブを備え、裏面内周のウエハ凹部に平坦な底面を有する半導体ウエハを裏面側で減圧吸着により保持するために、前記ウエハ凹部底面の平坦面に密着する凸部表面を備える吸着プレートが、前記凸部表面の外周から2mm以上5mm以内の円周上に配置される複数の最外周吸着孔を備え、前記複数の最外周吸着孔が円周形の連続溝の底部に配置され、前記円周形の連続溝の開口部の前記半導体ウエハと接する部分の表面エッジに面取りが施されていることを特徴とする半導体ウエハプロセス用吸着プレート。
【請求項2】
加熱機能を有する前記吸着プレートが、前記半導体ウエハを裏面で吸着支持する際、該半導体ウエハの前記補強リブ部の底面と側面とが吸着プレート面に均等に近接するための外周凹部構造を備えることを特徴とする請求項1に記載の半導体ウエハプロセス用吸着プレート。
【請求項3】
前記複数の最外周吸着孔が等間隔で対称配置されていることを特徴とする請求項1または2に記載の半導体ウエハプロセス用吸着プレート。
【請求項4】
前記複数の最外周吸着孔が10個以上20個以下であることを特徴とする請求項1または2に記載の半導体ウエハプロセス用吸着プレート。
【請求項5】
前記複数の最外周吸着孔の開口部直径が1.5mm以上2.5mm以下であることを特徴とする請求項1または2に記載の半導体ウエハプロセス用吸着プレート。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、裏面の外周部が環状に厚く、裏面の内周部が凹部状に薄いリブ付き半導体ウエハを吸着支持する半導体ウエハプロセス用吸着プレートに関する。特には、リブ付きウエハ用の加熱機能をもった半導体ウエハプロセス用吸着プレートに関する。
【背景技術】
【0002】
パワー半導体装置ではオン動作時に電流が半導体基板の厚さ方向に流れるので、通電抵抗を小さくして低損失とするためには、半導体基板の厚さはデバイス耐圧が許容できる範囲で薄いほど好ましい。このため、近年、耐圧1700Vのパワー半導体装置ではウエハ厚さは200μm以下であり、耐圧が600V以下のパワー半導体装置ではウエハ厚さは100μm以下となっている。このようなパワー半導体装置の製造プロセスには、現在、直径6インチ用のウエハプロセス技術が適用されているが、ウエハ径の大口径化とともに直径8インチ以上のウエハプロセスでも問題なく流すことのできる技術の確立が求められている。
【0003】
大口径ウエハのウエハプロセスでは、処理中にウエハの割れ欠けが多くなり易く、またウエハが反りやすいため、これらがその後のプロセス処理の作業効率、良品率に影響を及ぼす。これらの問題を防ぐために、ウエハプロセスへの投入時は、600μm以上の厚いウエハで投入し、ウエハの表面側に必要なプロセス処理を施した後、
図2に示すように、ウエハ3の主要部である中央のみを裏面側から研削して凹部状に薄いウエハ凹部1とした後、表面側に必要な残りのウエハプロセス処理と裏面側に必要なプロセス処理を施す製造方法が既に知られている。この製造方法によれば、プロセス投入時の厚い基板のままウエハの外周部を環状に残して補強リブとする(以降、裏面に補強リブを有するウエハをリブ付きウエハと略称する)ことができるので、ウエハ厚さを実質的に薄くしながら、ウエハプロセス中でのウエハ割れを少なくすることができる(特許文献1)。
【0004】
半導体ウエハの表面側にプロセス処理を施す際には、半導体ウエハ用吸着プレート(または支持板)上に、表面側を上にしてウエハを載置しウエハの反対側の面(裏面とする)を真空吸着することにより支持固定してプロセス処理を行う。この吸着支持は真空吸着法または静電吸着法などによって行われ、プロセスに応じて最適な吸着方法が選択される。前記リブ付きウエハ3では、裏面の補強リブに妨げられずに適切に吸着保持を行うために、
図9に示すように、破線で示すウエハ3の裏面のウエハ凹部1にはめ込まれる凸部11を有する吸着プレート10を必要とする。ウエハ3は吸着プレート10に設けられた複数の貫通孔12を介して図示しない真空装置によって吸引、支持される(特許文献2、3)。
【0005】
真空吸着には、吸着プレート10に複数の吸着用の貫通孔を有する多数孔(もしくは多数溝)構造を利用するタイプと、吸着プレート10に多孔質材料を用いる多孔質(ポーラス)構造を利用するタイプとがある。多数孔構造は吸着能力が高く、多孔質構造はウエハ面に均等に吸着力が作用するためウエハに変形が加わりにくいという特徴をそれぞれ有する。
【0006】
例えばフォトレジストのベーキング処理または有機パッシベーション膜の硬化処理などの加熱を必要とする処理では、ウエハの表面温度分布を均一にするために、ウエハを吸着プレートの平坦面にできる限り均一に密着させて吸着プレート10からウエハ面への熱の伝達を均等にしている。そのためには、吸着力が高い多数孔構造の吸着プレートを用いるのが好ましい。さらに、ウエハ裏面のウエハ凹部と吸着プレートの凸状部の直径の差(クリアランス)を10mm以下のできるだけ小さい値にすることが熱伝達の点から好ましいということも記載されている(特許文献4)。またさらに、特許文献2ではリブ付きウエハに対応した多孔質構造の吸着プレートについても記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開平5−121384号公報(請求項1)
【特許文献2】特開2009−246199号公報(要約)
【特許文献3】特開2007−258444号公報(要約)
【特許文献4】特開2009−206417号公報(段落0037、0039)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、前述した外周に補強リブを有しその内周にウエハ凹部を備えるウエハ(リブ付きウエハ)を、該ウエハ凹部に嵌る凸部を備える吸着プレートで密着させ吸着支持する場合、直径8インチ以上の大口径ウエハでは、特にウエハ凹部1のウエハ厚さが150μm以下になると、リブ付きウエハであってもウエハの反りや薄さに起因するたわみを示すことが多くなる。
【0009】
このような大口径リブ付きウエハ3に反りやたわみがある場合、吸着プレート10の最外周吸着孔より外周側では、リブ付きウエハ3はその反りにより吸着プレート10の凸部11から浮くため、特に吸着プレートを加熱する場合にウエハ外周部で温度が低下する原因となっていた。また、前記のリブ付きウエハ3の補強リブ2部分は吸着プレート10の凸部11平坦面には直接的には密着せず離れているので、加熱された吸着プレート10による熱の伝達が、補強リブ2に対しては、元来充分とは言えず、補強リブ2の温度はウエハ中心に比べて低下することが避けられない。
【0010】
すなわち、大口径リブ付きウエハ3と吸着プレート10とが吸着保持される場合、ウエハプロセス処理中に吸着プレート10によって加熱されるウエハ表面の温度分布に関して、密着性低下と補強リブによる温度低下とに起因して、特にリブ付きウエハ3の外周部側の表面温度がウエハ中心部に比べて低下し易くなる。
図10は、130℃で凸部表面の温度が均一になるように加熱された吸着プレート10に、ウエハ凹部1底部の厚さを120μmに加工した
図2に示す8インチ径のリブ付きウエハ3を吸着支持させた際の、ウエハ外周部表面の温度分布を示すグラフ図である。縦軸は測定したウエハの表面温度(126℃〜131℃の範囲)、横軸は吸着プレート10の凸部11の外周エッジ上のウエハ表面位置を0として、この(0)位置から、ウエハ内周方向を+(プラス)、外周方向を−(マイナス)で表した+8mmから−8mmの距離範囲を示す。また、この
図10では吸着プレート10の凸部11の外周エッジから+5.5mmの位置に吸着プレート10の最外周吸着孔が設けられたデータであることを一点鎖線で示している。吸着プレート10の凸部11とウエハ凹部1とが接触している最外周吸着孔(+5.5mm位置)ではウエハ温度は130℃と設定どおりであるが、ウエハの反りによりウエハ外周部が吸着プレートから浮いているため、最外周吸着孔から外周方向へむかって徐々にウエハ表面温度が低下している。そして、前記外周エッジ(0mm位置)ではウエハ表面温度は約128℃と設定温度より約2℃低下している。さらに、吸着プレートの凸部11面に元来接触しないウエハ部分(吸着プレート10の凸部11の外周エッジより外側(−位置)でリブ2を含む部分のウエハ)では当然ながら温度低下(約128℃から127℃の範囲へ)が更に大きくなっている。なおこの検討において、最外周吸着孔は8個であるがウエハは吸着プレートから浮いていない事を確認している。
【0011】
このようなウエハの外周部の温度低下がウエハ外周部のチップの不良率に及ぼす影響を
図11に示す。
図11から、温度低下が1.5℃を超えるとウエハ外周部のチップの不良発生率が急激に増加していることが分かる。ここで、
図9に示す従来の吸着プレートの場合、ウエハ外周部の温度低下は約2℃であるので、ウエハ外周部の温度低下がチップの不良率に確実に影響を及ぼしていることが分かる。また、ウエハ外周部のチップの不良率を低減するためには、デバイスチップをウエハプロセスで量産する際のウエハ外周部の温度低下は1.0℃以下に抑える必要があることも分かる。
【0012】
本発明は、以上説明した点を考慮してなされたものである。本発明は、裏面の外周部が環状に厚く、内周部が凹部状に薄いリブ付き半導体ウエハであっても、ウエハ裏面内周のウエハ凹部が加熱吸着プレートに密着性よく吸着され、ウエハ外周部の温度低下も1℃以内に抑えられるような半導体ウエハプロセス用吸着プレートを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明によれば、裏面の最外周部に環状補強リブを備え、裏面内周のウエハ凹部に平坦な底面を有する半導体ウエハを裏面側で減圧吸着により保持するために、前記ウエハ凹部底面の平坦面に密着する凸部表面を備える吸着プレートが、前記凸部表面の外周から2mm以上5mm以内の円周上に配置される複数の最外周吸着孔を備える半導体ウエハプロセス用吸着プレートとする。前記吸着プレートが、前記半導体ウエハを裏面で吸着支持する際、該半導体ウエハの前記補強リブ部の底面と側面とが吸着プレート面に均等に近接するための外周凹部構造を備えることが好ましい。また、前記複数の最外周吸着孔が等間隔に配置されていることもより好ましい。前記複数の最外周吸着孔が10個以上20個以下であることも好適である。また、前記複数の最外周吸着孔の開口部直径が1.5mm以上2.5mm以下であることが好ましい。また、前記複数の最外周吸着孔が、円周形の連続溝の底部に配置される構造とすることもできる。また、前記複数の最外周吸着孔、あるいは前記円周形の連続溝の開口部であって、前記半導体ウエハと接する部分の表面エッジに面取りが施されていることも好ましい。さらには、前記吸着プレートが加熱機能を有していると良い。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、ウエハ裏面の外周部が環状に厚く、ウエハ裏面の内周にウエハ凹部をもつリブ付き半導体ウエハであっても、ウエハ裏面内周のウエハ凹部が加熱吸着プレートに密着性よく吸着され、ウエハ外周部の温度低下も1℃以内に抑えられるような半導体ウエハプロセス用吸着プレートを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】本発明の吸着プレートの上面図(a)と破線で示すリブ付きウエハを保持した吸着プレートのA1−A2線断面図(b)である。
【
図2】裏面の外周に補強リブを残し、中央が凹部状に薄く研削されたウエハ凹部を有するリブ付きウエハの上面図(a)と(a)のC1−C2線断面図(b)である。
【
図3】本発明と従来の加熱機能を有する各吸着プレートで、吸着プレートの凸部エッジを規準位置(0)として、吸着させたウエハの規準位置からの距離と温度との関係グラフ図である。
【
図4】反り曲率一定としたときの、プレート凸部エッジ−最外周吸着孔間距離と、プレート凸部エッジでのウエハの低下温度との関係図である。
【
図5】本発明と従来の吸着プレートの吸着孔の位置によるウエハ反り量の違いを模式的に表した吸着プレートとリブ付きウエハの要部断面図である。
【
図6】本発明の吸着プレートの外周部に設けた外周凹部構造とウエハの補強リブの位置関係を表した吸着プレートとリブ付きウエハの要部断面図である。
【
図7】本発明の前記
図1と異なり吸着孔と円周溝を有する吸着プレートの上面図(a)と破線で示すリブ付きウエハを保持した吸着プレートのD1−D2線断面図(b)である。
【
図8】吸着プレートを貫通する吸着孔のウエハとの接触面側の開口部近辺の要部断面図である。
【
図9】従来の吸着プレートの上面図(a)と破線で示すリブ付きウエハを保持した吸着プレートのB1−B2線断面図(b)である。
【
図10】従来の加熱機能を有する各吸着プレートで、吸着プレートの凸部エッジを規準位置(0)として、吸着させたウエハの規準位置からの距離と温度との関係グラフ図である。
【
図11】吸着され加温されたウエハの外周部の低下温度とウエハ外周部における不良発生率との関係図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の半導体ウエハプロセス用吸着プレートにかかる実施例について、図面を参照して詳細に説明する。本明細書および添付図面においては、同様の構成には同一の符号を付し、重複する説明を省略する。また、実施例で説明される添付図面は、見易くまたは理解し易くするために正確なスケール、寸法比で描かれていない。本発明はその要旨を超えない限り、以下に説明する実施例の記載に限定されるものではない。
【実施例1】
【0017】
図1に、本発明の吸着プレートの上面図(a)と、直径8インチのリブ付き半導体ウエハ3を吸着支持したA1−A2線断面図(b)を示す。吸着プレート20は、最外周の内側近傍の一面側に、半導体ウエハ3の環状の補強リブ2が間隙をおいて嵌る環状の外周凹部5を備えている。吸着プレート20の、前記環状の外周凹部5の内周側の円形状の凸部4の表面には、凸部4の外周近傍に、この外周円と同心円周上に、吸着孔6が複数個、対称的な配置で設けられており、大口径ウエハ3を吸着させた場合にも、ウエハの反りによるウエハ周辺の密着力低下を抑えている。加工技術が許す範囲で、吸着プレート20の凸部4表面の最外周が好ましく、例えば
図1では、凸部4外径が半径95mm、半径91mmの同心円周上の表面に等間隔の対称的な配置で12個の最外周吸着孔6が設けてられている。この最外周吸着孔6は、同心円周上に少なくとも10個以上、等間隔で対称的に配置されることが望ましい。
図1に示すように、さらに内側の複数の同心円周上に吸着孔6aが複数個配置されることも好ましい。
【0018】
図3は、本発明と従来の加熱機能を有する各吸着プレートの凸部の外周エッジを規準位置(0)として、黒い◆印(従来)と白い□印(本発明)で示すように、吸着させたウエハの規準位置(0)からの距離とウエハ表面の測定温度との関係をプロットしたグラフ図である。従来の吸着プレート(前記
図9)の黒い◆印によりプロットしたデータは前記
図10のものと同じであり、比較のため示した。この黒い◆印により示されるウエハ3の外周部の温度分布データは、吸着孔12と凸部11の外周エッジとの間の距離が、凸部11の半径が95mmで最外周吸着孔12が形成される同心円が半径89.5mmから計算して、95−89.5=5.5mmの場合の従来の温度分布データである。従来の吸着プレートにかかるウエハ3の外周部の表面温度分布の温度低下幅は127℃〜130℃であり、温度低下幅は吸着プレートの凸部4の外周エッジで約2℃、またこれより2mm外側で約3℃程度である。
【0019】
一方、本発明にかかる実施例の吸着プレート(前記
図1)のウエハ3の外周部の表面温度分布データは、凸部半径95mm、最外周吸着孔6を半径91mmの外周円上に配置、すなわち、吸着孔6と凸部4の外周エッジとの間の距離が4mmとした場合のものである。
図3から、本発明にかかるウエハ3の外周部の表面温度分布は129℃〜130℃であり、温度低下幅は吸着プレートの凸部4の外周エッジ位置で約0.5℃、また−2mmの位置でも1℃以内におさまっている。
図3には示されていないが、前記4mmより内周側から中心部にかけての温度分布は密着度が充分高いので、ほぼ130℃が維持されていることは言うまでもない。
【0020】
図4は吸着プレート凸部の最外周吸着孔と凸部の外周エッジとの間の距離と吸着プレート凸部の外周エッジ位置でのウエハの温度低下との関係をシミュレーション計算により求めたグラフ図である。
図4は最外周吸着孔と凸部の外周エッジとの間の距離だけを原因とする温度低下であるので、前述の実測値よりは小さい温度低下量となっているが、
図4からも温度低下を1℃以下にするには、少なくとも最外周吸着孔と凸部の外周エッジとの間の距離は5mm以内(約温度低下1℃)が必要であり、他のばらつき要因も併せて考慮すると、同距離は4mm以内が好ましいことが言える。また、最外周吸着孔と凸部の外周エッジとの間の距離は2mm以上であると良い。これより小さくなると、作製時や使用時に機械的強度上で問題が出るためである。
【0021】
図5に、本発明と従来の吸着プレート10、20について、凸部外周エッジからの最外周吸着孔6、12までの距離によるウエハ3の反りに及ぼす影響を示す。
凸部外周エッジからの距離が短い本発明にかかる最外周吸着孔6の場合のウエハ3の反り(実線)は、同じく距離が遠い従来の吸着孔12の場合の反り(点線)より小さいことを示している。またさらに、複数個の吸着孔6の凸部表面内の配置について、吸着プレート20の凸部4の外周エッジからの距離を均等にするだけでなく、円周上に対称的、等間隔に配置することも、吸着プレート20の凸部4表面での密着性のバラつきを抑えられるので好ましい。
【0022】
次に、
図6に、本発明にかかる外周凹部構造5を有する吸着プレート20の外周部近傍の断面図を補強リブ付きウエハ3とともに示す。
図6では、吸着プレート20の外周凹部構造5の内面と、吸着したウエハの補強リブ2との距離をできるだけ小さくすることにより、吸着プレート20の加熱時に外周凹部構造5からの輻射熱によって、補強リブ2の温度低下を少なくすることができる構造を示している。リブ付きウエハ3の裏面のウエハ凹部1底面と補強リブ2との段差が500μmになるように加工し、外周凹部構造5の底部と補強リブ2の距離14(両矢印)を一定となるようにする。リブ付きウエハ3の加工精度と、ウエハの薄さによるたわみを考慮し、外周凹部構造5深さは補強リブ2と接触しない範囲で小さくする。例えば、0.8mm程度の深さとする。また、同様に、リブ付きウエハ3のリブ2の最外周エッジと外周凹部構造5側面の距離13について、リブ付きウエハ3の加工精度が許す範囲で小さい。例えば、補強リブ2の幅が3mmの場合、外周凹部構造5の幅が4mm程度となることが好ましい。ここで、外周凹部構造5の外周側の側面は、吸着されたリブ付きウエハ3表面より高い位置とすることが好ましい。
【0023】
次に吸着孔の開口径15の大きさについて説明する。吸着孔の開口径15は、小さすぎると吸着力が足りず、大きすぎると大きい吸着力によりウエハが歪むことがあるので、いずれも好ましくない。また吸着孔の開口径15が大きすぎると、ウエハ3と吸着プレート20との熱膨張係数の差に起因する擦り傷がウエハの接触面に生成されるリスクも高まる。このため、吸着孔の開口径15は1〜3mm、好ましくは1.5〜2.5mmの範囲であると良い。また、
図7に示すような最外周を円状に沿って連続溝16として形成される吸着構造は
図1の吸着孔だけのものよりはウエハ表面に擦り傷がつきやすいが、吸着力はウエハの外周に均等に働くので、温度むらに関しては
図1に示す吸着プレートより好ましい。一方、形成される前記擦り傷のリスクを小さくするためという観点では、連続溝16を設けず、できるだけ吸着孔の個数は少ない吸着構造が好ましい。ただし、最外周吸着孔の数が8個以下ではウエハの浮きが発生して温度むらの原因となる場合があるため好ましくなく、最外周吸着孔の数は10〜20個であることが好ましい。
【0024】
さらに、ウエハと接触する吸着孔や円状の連続溝は前記擦り傷防止のため、
図8に示すような面取17を設けることも好ましい(実施例は角度45度、幅0.1mm程度)。
【符号の説明】
【0025】
1 ウエハ凹部
2 補強リブ
3 リブ付きウエハ
4、11 凸部
5 外周凹部
6、12 吸着孔
10、20 吸着プレート
13 外周凹部構造側面とリブの距離
14 外周凹部構造底部とリブの距離
15 開口径
16 連続溝