(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記第2素子のゲートとドレインとの間に、前記ドレイン側にカソードが接続し前記ゲート側にアノードが接続するように接続した、所定のアバランシェ耐圧を有する第2ダイオードと、
前記第2素子のゲートと、当該半導体装置の外部に接続するゲート端子とに接続している前記第2抵抗と、
をさらに備えることを特徴とする請求項2に記載の半導体装置。
【背景技術】
【0002】
従来から、高周波デバイス用半導体素子には、半導体材料として窒化物系化合物半導体、たとえば窒化ガリウム(GaN)系化合物半導体が用いられている(以下、GaN系半導体素子とする)。GaN系半導体素子では、半導体基板の表面に、例えば有機金属化学気相蒸着(MOCVD:Metal−Organic Chemical Vapor Deposition)法を用いて形成されたバッファ層やGaNドープ層が設けられている。最近では、高周波用途に加え、電力用のパワーデバイスにも適用可能であるという認識から、高耐圧、大電流を扱うデバイスの検討も行われている。
【0003】
GaN系半導体素子の一種に高電子移動度トランジスタ(HEMT:High Electron Mobility Transistor)がある。HEMTは、たとえばGaN層と窒化アルミニウムガリウム(AlGaN)層とが積層した構成を有する。GaN層のAlGaN層との界面には、2次元電子ガス(2DEG:Two Dimensional Electron Gas)が発生する。この2DEGは、AlGaN層のAl組成比と層厚とを調整することによってそのキャリア濃度を制御することができる。HEMTでは、2DEG層が電流を流す経路となる。そして、HEMTでは、AlGaN層の表面の一部に、AlGaN層に対してショットキー特性を有するゲート電極が配置されており、ゲート電圧の制御によって2DEG層からなる経路のオンオフを行う。HEMTにおいて、ゲート電圧が0Vのときに、ソース−ドレイン間が導通するタイプをノーマリオン型と呼ぶ。一方、ゲート電圧が0Vのときには、ソース−ドレイン間が非導通であり、ゲート電圧を正電圧にしたときに導通するタイプをノーマリオフ型と呼ぶ。以下、GaN系化合物半導体からなるHEMT等をGaN−HEMT等と呼ぶ。
【0004】
応用回路で用いる素子には、応用回路の安全動作の観点からは、ノーマリオフ型であることが望まれる場合がある。HEMTをノーマリオフ型にするために、ゲート電極直下にフッ素等のイオンを注入したりプラズマ照射をしたりして部分的に2DEG層を無くしたり、エッチング等によってゲート電極直下のAlGaN層の厚さが部分的に薄くなるようにしたりする技術がある。また、ゲートリークを防止するために、ゲート電極下に絶縁膜をつける場合もある。ノーマリオフ型のHEMTでは、ゲートがオフ状態のときには、ソース−ドレイン間に電圧が印加されると、ゲート端から2DEG層が空乏化して高耐圧を維持することが可能である。したがって、HEMTは、大電力用の、高耐圧の半導体素子として機能するので、近年、高周波で高効率の電力用半導体素子としてさかんに開発が進んでいる。また、2DEG層を導通層として用いた、高耐圧ショットキーバリアダイオード(Schottky Barrier Diode:SBD)も同様に開発されている。
【0005】
電力用半導体素子として使用するためには、上記のような高速で動作し、導通抵抗が低いということは大きなメリットである。その一方で、電力用半導体素子には、さまざまな負荷が加わっても破壊しないという高い信頼性が要求されている。半導体素子の基本的な特性にアバランシェ耐量(アバランシェ耐圧)がある。アバランシェ耐量とは、素子にアバランシェ耐量以上の電圧が印加されてソース−ドレイン間がアバランシェ降伏によってブレークダウンしても、所定の電流までは壊れない、という耐量を示すものである。たとえば非特許文献1では、GaN−HEMTを用いて、TLP(Transmission line pulser)測定と呼ばれる、短時間の電圧ストレスを印加したときの電流電圧特性を調べている。このとき、GaN−HEMTは、ある電圧で急激に負性抵抗が発生し、その後アバランシェ破壊せずに破壊に至っており、アバランシェ耐量が低いと考えられる。
【0006】
GaN−HEMTのほかの課題として、コラプスと呼ばれる現象があげられる。コラプスとは、素子に高電圧を印加すると、順方向抵抗が初期値よりも、たとえば数倍程度にまで上昇してしまう現象である。コラプスが生じると、素子における電力損失が増加してしまう。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下に、図面を参照して本発明に係る半導体装置の実施の形態を詳細に説明する。なお、この実施の形態によりこの発明が限定されるものではない。また、各図面において、同一または対応する要素には適宜同一の符号を付している。さらに、図面は模式的なものであり、各要素の寸法の関係などは、現実のものとは異なる場合があることに留意する必要がある。図面の相互間においても、互いの寸法の関係や比率が異なる部分が含まれている場合がある。
【0013】
非特許文献1では、GaN−HEMTの特性を開示している。本発明者らが、非特許文献1と同様のTLP測定を、GaN−SBDに対して行ったところ、非特許文献1の場合と同様に、急激な負性抵抗特性が確認され、アバランシェ破壊せずにほぼ瞬時破壊した。
【0014】
大電流素子はデバイスサイズが比較的大きいため、このような負性抵抗特性があると、全体の大きさに対してごくわずかの領域に膨大な電流が集中して瞬時破壊してしまう。たとえば、素子には静電気(ESD:electrostatic discharge)耐量として短時間に素子に過電圧が印加されても壊れないことが要求されるが、アバランシェ耐量が低い上記の特性では十分なESD耐量を確保することは困難である。
【0015】
図9は、GaN−HEMTにおけるストレス電圧とコラプスとの関係を示す図である。横軸はソース−ドレイン間のストレス電圧、縦軸はコラプスの程度を示している。ここで、コラプスの程度は、たとえば順方向抵抗の初期値に対する、コラプスによって増加した順方向抵抗の比で表される。
【0016】
図9に示すように、ストレス電圧が増加すると或る電圧V1でコラプスが急激に増大する。このような電圧V1をコラプス増大電圧という。また、ストレス電圧がさらに増加すると破壊電圧V2で素子は破壊する。GaN−HEMTでは、サージや静電気でコラプス増大電圧V1より高い過電圧が掛ると、コラプスが急激に増大し、さらに高い過電圧が掛ると、アバランシェ破壊せずに破壊電圧V2で瞬時破壊する。
【0017】
これに対して、以下に説明する実施の形態に係る半導体装置は、コラプスによる抵抗の増大を抑制できるとともに高い破壊耐量を有するので、信頼性の高い半導体装置となる。
【0018】
(実施の形態1)
図1は、本発明の実施の形態1に係る半導体装置の回路構成図である。
図1に示すように、半導体装置100は、第1素子1と、第2素子2と、第1ダイオード3と、第1抵抗4と、保護用ダイオード5と、ソース端子Sと、ゲート端子Gと、ドレイン端子Dとを備えている。
【0019】
第1素子1は、窒化物系化合物半導体で構成されたノーマリオン型のHEMTであり、ソース電極1a、ゲート電極1b、およびドレイン電極1cを備えている。
図2は、第1素子1であるHEMTの模式的な断面図である。
図2に示すように、第1素子1は、たとえばシリコンからなる基板1d上に、窒化物系化合物半導体で構成されたバッファ層1e、電子走行層としてのGaN層1f、電子供給層としての、GaNよりもバンドギャップが広いAlGaN層1gとが順次積層した構成を有している。AlGaN層1g上には、AlGaN層1gとショットキー接触するゲート電極1bと、AlGaN層1gとオーミック接触するソース電極1a、ドレイン電極1cとが形成されている。ソース電極1aとドレイン電極1cとはゲート電極1bを挟むように配置されている。ソース電極1a、ゲート電極1b、およびドレイン電極1cが形成されていないAlGaN層1gの表面の領域は、たとえばSiNからなるパッシベーション膜1hで保護されている。
【0020】
GaN層1fのAlGaN層1gとの界面には2DEG層1faが形成されている。これによって、第1素子1であるHEMTはノーマリオン型のHEMTとして動作する。ここで、第1素子1は、ソース−ドレイン間の耐圧がたとえば200V以上の高耐圧の素子である。
【0021】
第2素子2は、たとえばシリコン系半導体材料からなるMOS(Metal Oxide Semiconductor)型のFET(Field Effect Transistor)等のトランジスタであって、ソース電極2a、ゲート電極2b、およびドレイン電極2cを備えている。第2素子2は、ソース−ドレイン間の耐圧がたとえば50V以下であり、第1素子1よりも耐圧が低い低耐圧の素子である。ドレイン電極2cが第1素子1のソース電極1aに接続している。すなわち、第1素子1と第2素子2とは直列に接続している。
【0022】
第1ダイオード3は、アノード電極3aとカソード電極3bとを備えており、第1素子1のゲート電極1bとドレイン電極1cとの間に、ドレイン電極1c側にカソード電極3bが接続するように接続している。第1ダイオード3は、たとえば600V程度の所定のアバランシェ耐圧を有するものである。第1ダイオード3はPN接合ダイオードやショットキーダイオードであるが、特に限定はされない。
【0023】
ゲート抵抗である第1抵抗4は、第1ダイオード3が接続されたゲート電極である第1素子1のゲート電極1bと、第2素子2のソース電極2aとの間に接続している。このように、この半導体装置100は、第1素子1と第2素子2とが直列接続され、かつ第1素子1のゲート電極1bと第2素子2のソース電極2aとが接続しているカスコード接続の構成を含んでいる。
【0024】
保護用ダイオード5は、アノード電極5aとカソード電極5bとを備えており、第1素子のゲート電極1bとソース電極1aとの間に、ソース電極1a側にカソード電極5bが接続するように接続している。
【0025】
ソース端子Sは第2素子2のソース電極2aに接続し、ゲート端子Gは第2素子2のゲート電極2bに接続し、ドレイン端子Dは第1素子1のドレイン電極1cに接続している。ソース端子S、ゲート端子G、およびドレイン端子Dはこの半導体装置100全体の端子として外部に接続する。たとえば、ゲート端子Gは外部のゲート駆動回路に接続する。
【0026】
この半導体装置100の動作を説明する。まず、ソース端子S−ドレイン端子D間に順電圧を印加する場合について説明する。ゲート端子Gにゲート電圧を印加しない状態では、第2素子2はオフ状態であるから、ソース端子S−ドレイン端子D間に電流が流れず、この半導体装置100はオフ状態である。つぎに、ゲート端子Gにしきい値以上のゲート電圧を印加すると、第2素子2がオン状態となり、ソース端子S−ドレイン端子D間に電流が流れる。このように、この半導体装置100はノーマリオフ型のFETとして動作する。
【0027】
つぎに、半導体装置100のソース端子S−ドレイン端子D間に逆電圧を印加する場合について説明する。逆電圧を高めていくと、第1ダイオード3のアノード電極3a−カソード電極3b間にも逆電圧が掛る。その後、第1ダイオード3のアノード−カソード間電圧がアバランシェ耐圧を越えると、第1ダイオード3がブレークダウンしてカソード電極3bからアノード電極3aへアバランシェ電流が流れる。このアバランシェ電流はゲート抵抗である第1抵抗4にも流れる。すると、第1抵抗4によって電圧降下が発生し、第1素子1のゲート電極1bにゲート電圧が掛かる。ゲート電圧がしきい値以上になると第1素子1がオン状態となる。このとき、保護用ダイオード5がゲート電極1bとソース電極1aとの間に接続しているので、ゲート電極1bに順電流が流れないようになっている。
【0028】
このように第1素子1がオン状態となると、第2素子2のソース−ドレイン間に掛る逆電圧が高まり、第2素子2のソース−ドレイン間がブレークダウンしてソース−ドレイン間に電流が流れる。その結果、第1素子1のソース−ドレイン間にはそれ以上の逆電圧が掛らなくなる。
【0029】
ここで、この半導体装置100では、第1ダイオード3のアバランシェ耐圧が、第1素子1の破壊電圧よりも低く、かつコラプス増大電圧よりも低く設定されている。その結果、半導体装置100に逆電圧を印加しても、第1素子1にコラプス増大電圧よりも高い電圧が掛る前に第1ダイオード3がブレークダウンし、さらに第2素子2がブレークダウンして、第1素子1のソース−ドレイン間にはコラプス増大電圧よりも高い逆電圧が掛らなくなる。
【0030】
図3は、半導体装置100の特性を説明する図である。横軸はドレイン電圧を示し、縦軸はドレイン電流を示している。領域Sは第1素子1のコラプスが増大する領域を示している。VB1は第1素子1の破壊電圧、VB2は第1ダイオード3のアバランシェ耐圧、VB3は第1素子のコラプス増大電圧をそれぞれ示している。
【0031】
仮に、第1ダイオード3が無い場合には、半導体装置100のソース端子S−ドレイン端子D間に逆電圧を印加すると、ドレイン電圧は第1素子1のコラプス増大電圧に到達し、第1素子1のコラプスが急激に増大する。さらにドレイン電圧が増加して第1素子1の破壊電圧に到達すると、第1素子1が破壊してしまう。
【0032】
しかしながら、本実施の形態1に掛る半導体装置100では、ドレイン電圧が第1素子1のコラプス増大電圧に到達する前に第1ダイオード3がブレークダウンして、ドレイン電圧がそれ以上増加することが抑制される。したがって、仮に静電気などによりサージ電圧が半導体装置100に掛ったとしても、第1素子1のコラプスの増大、さらには破壊が防止される。その結果、半導体装置100は高い破壊耐量を有する装置となる。
【0033】
(実施の形態2)
図4は、本発明の実施の形態2に係る半導体装置の回路構成図である。
図4に示すように、半導体装置200は、
図1に示す半導体装置100の構成に、さらに第2抵抗6と、第2ダイオード7と、保護用ダイオード8,9,10とを追加した構成を有する。
【0034】
第2抵抗6は、第2素子2のゲート電極2bと、半導体装置200のゲート端子Gとに接続している。第2ダイオード7は、アノード電極7aとカソード電極7bとを備えている。第2ダイオード7は、第2素子2のゲート電極2bとドレイン電極2cとの間に、ドレイン電極2c側にカソード電極7bが接続するように接続している。第2ダイオード7は、所定のアバランシェ耐圧を有するものである。第2ダイオード7はPN接合ダイオードやショットキーダイオードであるが、特に限定はされない。
【0035】
保護用ダイオード8,9,10は、それぞれ、アノード電極8a,9a,10aとカソード電極8b,9b,10bとを備えている。保護ダイオード8は、第2素子2のゲート電極2bと第1ダイオード7との間に、アノード電極7a側にアノード電極8aが接続するように接続している。保護ダイオード9は、第2素子2のゲート電極2bとソース電極2aとの間に、ソース電極2a側にカソード電極9bが接続するように接続している。保護ダイオード10は、第2素子2のゲート電極2bと保護ダイオード9との間に、アノード電極9a側にアノード電極10aが接続するように接続している。
【0036】
この半導体装置200のソース端子S−ドレイン端子D間に逆電圧を印加すると、第1ダイオード3のアノード−カソード間電圧がアバランシェ耐圧を越えたときに、第1ダイオード3がブレークダウンしてカソード電極3bからアノード電極3aへアバランシェ電流が流れ、その後、第1抵抗4によって第1素子1のゲート電極1bにゲート電圧が掛って第1素子1がオン状態となる点は、半導体装置100の場合と同様である。
【0037】
半導体装置200の場合は、第1素子1がオン状態となると、第2ダイオード7のアノード電極7a−カソード電極7b間に逆電圧が掛る。その後、第2ダイオード7のアノード−カソード間電圧がアバランシェ耐圧を越えると、第2ダイオード7がブレークダウンして、カソード電極7bからアノード電極7aへアバランシェ電流が流れる。このアバランシェ電流は第2素子2のゲート抵抗である第2抵抗6にも流れる。すると、第2抵抗6によって第2素子2のゲート電極2bにゲート電圧が掛って第2素子2がオン状態となる。これによって第1素子1のソース電位がゲート電位と近づいて第1素子1もオン状態となって電流が流れる。その結果、第1素子1のソース−ドレイン間にはそれ以上の逆電圧が掛らなくなる。なお、保護用ダイオード9は、第2素子2のゲート電圧がソース電圧に対して正電圧になった場合に、ゲート電流が流れないように機能する。保護用ダイオード8、10はそれぞれ第2ダイオード7、保護用ダイオード9の保護用ダイオードである。
【0038】
本実施の形態2に係る半導体装置200では、半導体装置100と同様に、ドレイン電圧が第1素子1のコラプス増大電圧に到達する前に第1ダイオード3がブレークダウンしてドレイン電圧のそれ以上の増加が抑制される。したがって、仮に静電気などによりサージ電圧が半導体装置200に掛ったとしても、第1素子1のコラプスの増大、さらには破壊が防止される。その結果、半導体装置200は高い破壊耐量を有する装置となる。
【0039】
さらに、上述したように、半導体装置100では第2素子2のソース−ドレイン間がブレークダウンしてソース−ドレイン間に電流が流れる。これに対して、半導体装置200では第2素子2がオン状態となってソース−ドレイン間に電流が流れるので、より大きな電流を流すことができる。なお、上記動作の実現のために、第2ダイオード7のアバランシェ耐圧は、第2素子2のソース−ドレイン間のアバランシェ耐圧より低くなっている。たとえば、第2素子2のソース−ドレイン間耐圧が30Vである場合、第2ダイオード7のアバランシェ耐圧は30Vより低い。
【0040】
(実施の形態3)
図5は、本発明の実施の形態3に係る半導体装置の回路構成図である。
図5に示すように、半導体装置300は、
図1に示す半導体装置100の構成において、第1ダイオード3および第1抵抗4の接続位置を変更し、保護用ダイオード5を削除し、さらに第3抵抗12と、保護用ダイオード9,10,11とを追加した構成を有する。
【0041】
第1ダイオード3は、第2素子2のゲート電極2bと第1素子1のドレイン電極1cとの間に、ドレイン電極1c側にカソード電極3bが接続するように接続している。また、第1抵抗4は、第2素子2のゲート電極2bと、半導体装置200のゲート端子Gとに接続している。
【0042】
第3抵抗12は、第1素子1のゲート電極1bと第2素子2のソース電極2aとの間に接続しており、カスコード接続における第1素子1に対するゲート抵抗として機能する。保護用ダイオード11は、アノード電極11aとカソード電極11bとを備えており、第2素子2のゲート電極2bと第1ダイオード3との間に、アノード電極3a側にアノード電極11aが接続するように接続している。保護ダイオード9,10は、
図4に示す半導体装置200における保護ダイオード9,10と同様の位置に接続されている。
【0043】
この半導体装置300のソース端子S−ドレイン端子D間に逆電圧を印加すると、第1ダイオード3のアノード−カソード間電圧がアバランシェ耐圧を越えたときに、第1ダイオード3がブレークダウンしてカソード電極3bからアノード電極3aへアバランシェ電流が流れる。その後、第1抵抗4によって第2素子2のゲート電極2bにゲート電圧が掛って第2素子2がオン状態となる。その結果、第1素子1のソース−ドレイン間にはそれ以上の逆電圧が掛らなくなる。なお、保護用ダイオード9は、第2素子2のゲート電圧がソース電圧に対して正電圧になった場合にゲート電流が流れないように機能する。保護用ダイオード11、10はそれぞれ第1ダイオード3、保護用ダイオード9の保護用ダイオードである。
【0044】
本実施の形態3に係る半導体装置300では、ドレイン電圧が第1素子1のコラプス増大電圧に到達する前に、第1ダイオード3がブレークダウンしてドレイン電圧がそれ以上増加することが抑制される。したがって、仮に静電気などによりサージ電圧が半導体装置300に掛ったとしても、第1素子1のコラプスの増大、さらには破壊が防止される。その結果、半導体装置300は高い破壊耐量を有する装置となる。
【0045】
上述した実施の形態3に係る半導体装置300では、第1ダイオード3に過大な負荷をかけない、または第1ダイオード3を小型化するためには、できるだけゲート抵抗である第1抵抗4の抵抗値を大きくすることが好ましい。たとえば、第1ダイオード3に流れるアバランシェ電流を100mAに設定する場合、これによって第2素子2をオン状態にするように第1抵抗4の抵抗値を設定する必要がある。たとえば、100mAのアバランシェ電流による第1抵抗4の電圧降下を10V以上にするためには、第1抵抗4の抵抗値を100Ω以上にする。
【0046】
一方、半導体装置300のスイッチング速度の高速化のためには、寄生容量による寄生効果の低減のために、第1抵抗4の抵抗値を小さくすることが好ましい。たとえば、第1抵抗4の抵抗値が10Ωのときに、第1抵抗4の電圧降下を10V以上にするためには、第1ダイオード3に流れるアバランシェ電流を1A以上とする。
【0047】
このように、第1抵抗4の抵抗値が大きいとゲート信号の速度が低下するが、その速度低下により遅延した信号は第2素子2によって増幅されるため、第1素子1のスイッチング動作への影響は最小限となる。すなわち、実施の形態3に係る半導体装置300の構成における全体としてのスイッチング動作の速度を決める抵抗値は第1抵抗4と第3抵抗12とによって決まるようになる。そのため、第1抵抗4の抵抗値を大きくしても、第3抵抗12の抵抗値を小さくすることで、半導体装置300の全体としてのスイッチング速度の低下を抑えることができる。
【0048】
なお、実施の形態1に係る半導体装置100の場合、ゲート駆動回路に接続する側のゲート端子Gと第2素子2のゲート電極2bとの間にゲート抵抗を挿入しない構成である。このため、ゲート駆動回路側からすると、半導体装置100を駆動する場合は、単体のHEMTを駆動する場合と比較して、駆動する素子がHEMTからMOSFETである第2素子2に変わったことでノーマリオフ動作となる以外の特段の変化はない。したがって、半導体装置100は、高速動作により適するものである。
【0049】
半導体装置100の実際の駆動状況においては、HEMTである第1素子1のゲート電極1bに接続された第1抵抗4が、装置のスイッチング速度に影響を与える。しかし、もともと第1素子1のゲート電位はソース電位と等しくなっていることから、半導体装置100のスイッチング動作時の電圧変化は第1素子1のソース電位の電位変化によって行われる。ソース電位の変化に伴う電流の充放電は第1素子1のチャネルや第2素子2を通じて行われるので、第1抵抗4の抵抗値が半導体装置100のスイッチング特性に直接影響を及ぼしにくいという状況になっている。このように、MOSFETとHEMTとのカスコード接続においてのスイッチング速度は、MOSFETのゲート抵抗とHEMTのゲート抵抗とによって制御されるものの、HEMTのゲート抵抗に全面的には依存しない。
【0050】
また、実施の形態2に係る半導体装置200の場合、第2ダイオード7は低耐圧のダイオードで良いことから、アバランシェ電流を大きくすることが可能である。その結果、第2抵抗6の抵抗値を小さくすることができるので、高速動作に適するものである。たとえば、第1ダイオード3のアバランシェ耐圧が600Vであり、第2素子2のソース−ドレイン間耐圧が30Vである場合、第2ダイオード7のアバランシェ耐圧は30V程度より小さくてよい。したがって、実施の形態3の構成のように、第2素子2のゲート電極2bと第1素子1のドレイン電極1cとの間に第1ダイオード3が挿入される構成と比較して、第2ダイオード7のアバランシェ耐圧は20分の1より小さい値でよいことになる。このことは、同じサイズのダイオードを使用すると、第1ダイオード3を使用する場合に比べて約20倍より大きい電流が流せる。その結果として、ゲート抵抗を約20分の1だけ小さく設定することが可能となり、実質的にゲート抵抗を大幅に低抵抗化できて、高速スイッチングが可能となる。ゆえに、ゲート抵抗によるスイッチング速度の制御範囲が大幅に広がる。
【0051】
ところで、上述した第1ダイオード3や第2ダイオード7は、第1素子1や第2素子2とは別のチップで構成してもよいが、第1素子1や第2素子2を含むチップ上にモノリシックに形成してもよい。この場合、各ダイオードはチップ上にたとえばポリシリコンで形成される。
【0052】
図6は、チップ上にダイオードを形成する場合の構成図である。
図7は、
図6のA−A線断面図である。
図6に示すチップ1000は、第1素子1または第2素子2が形成される活性部1001と、活性部1001に形成された素子のソース電極、ゲート電極、ドレイン電極にそれぞれ接続されるソースパッド1002、ゲートパッド1003、ドレインパッド1004と、を備えている。
【0053】
さらに、
図7に示すように、チップ1000は、素子がその上部に形成される基板1005と、基板1005上に形成された、素子が形成される窒化物系化合物半導体層1006と、窒化物系化合物半導体層1006上に形成された絶縁膜1007と、を備えている。
【0054】
ここで、
図6、7に示すように、第1ダイオード3または第2ダイオード7であるPN接合ダイオード3Aは、チップ1000の絶縁膜1007上に、ゲートパッド1003とドレインパッド1004とを接続するようにモノリシックに形成されている。このPN接合ダイオード3Aは、ポリシリコンで形成された複数のPN接合ダイオードが直列接続した構成を有する。このような構成の場合、電気的接続のためのワイヤボンディングが少なくなるため、パッド面積や組み立て工程が削減できるというメリットがある。
【0055】
(実施の形態4)
図8は、本発明の実施の形態4に係る半導体装置の回路構成図である。
図8に示すように、半導体装置400は、
図1に示す半導体装置100の構成において、第2素子2を第2素子13に置き換え、ソース端子S、ドレイン端子Dをそれぞれアノード端子A、カソード端子Cに置き換え、ゲート端子Gを削除した構成を有する。
【0056】
第2素子13は、たとえばPN接合型やSBD型のダイオードであって、アノード電極13a、カソード電極13bを備えている。第2素子13は、アノード−カソード間の耐圧がたとえば50V以下であり、第1素子1よりも耐圧が低い低耐圧の素子である。カソード電極13bは、第1素子1のソース電極1aおよび保護用ダイオード5のカソード電極5bに接続している。このように、第1素子1と第2素子13とは直列に接続している。また、第1抵抗4は、第1ダイオード3が接続されたゲート電極である第1素子1のゲート電極1bと、第2素子13のアノード電極13aとの間に接続している。アノード電極13aはさらにアノード端子Aに接続している。カソード端子Cは第1素子1のドレイン電極1cに接続している。
【0057】
このように、この半導体装置400は、第1素子1と第2素子13とが直列接続され、かつ第1素子1のゲート電極1bと第2素子13のアノード電極13aとが接続しているカスコード接続の構成を含み、カスコードダイオードとして機能する。
【0058】
半導体装置400のアノード端子A−カソード端子C間に逆電圧を印加したときに、第1ダイオード3のアノード−カソード間電圧がアバランシェ耐圧を越えると、第1ダイオード3がブレークダウンしてカソード電極3bからアノード電極3aへアバランシェ電流が流れる。このアバランシェ電流はゲート抵抗である第1抵抗4にも流れる。すると、第1抵抗4によって電圧降下が発生し、第1素子1のゲート電極1bにゲート電圧が掛かる。ゲート電圧がしきい値以上になると第1素子1がオン状態となる。このとき、保護用ダイオード5がゲート電極1bとソース電極1aとの間に接続しているので、ゲート電極1bに順電流が流れないようになっている。
【0059】
このように第1素子1がオン状態となると、第2素子13のアノード−カソード間に掛る逆電圧が高まり、第2素子13のアノード−カソード間がブレークダウンして電流が流れる。その結果、第1素子1のソース−ドレイン間にはそれ以上の逆電圧が掛らなくなる。
【0060】
この半導体装置400では、第1ダイオード3のアバランシェ耐圧が、第1素子1の破壊電圧よりも低く、かつコラプス増大電圧よりも低く設定されている。その結果、半導体装置400に逆電圧を印加しても、第1素子1にコラプス増大電圧よりも高い電圧が掛る前に第1ダイオード3がブレークダウンし、さらに第2素子13がブレークダウンして、第1素子1のソース−ドレイン間にはコラプス増大電圧よりも高い逆電圧が掛らなくなる。したがって、仮に静電気などによりサージ電圧が半導体装置400に掛ったとしても、第1素子1のコラプスの増大、さらには破壊が防止される。その結果、半導体装置400は高い破壊耐量を有する装置となる。
【0061】
なお、第2素子13がSBD型であれば、オン抵抗が小さいので好ましい。一方、第2素子13がPN接合型であれば、リーク電流が小さいので好ましい。
【0062】
以上のように、本発明にかかる半導体装置は、破壊耐量などの信頼性が強く要求されるインバータなどの電力変換装置や種々の産業用機械などの電源装置、エンジンの燃焼制御を行うイグナイタなど大きなサージの入りやすい回路などに使用されるパワー半導体装置に有用である。
【0063】
なお、上記実施の形態では、第1ダイオードのアバランシェ耐圧は、第1素子のコラプス増大電圧より低いが、本発明はこれに限られず、第1ダイオードのアバランシェ耐圧が第1素子の破壊電圧より低ければ、高い破壊耐量を有する、信頼性の高い半導体装置となる。
【0064】
また、上記実施の形態では、第1素子はHEMTであるが、第1素子はノーマリオン型のトランジスタであれば特に限定されず、たとえばJFET(Junction FET)でもよい。
【0065】
また、上記実施の形態により本発明が限定されるものではない。上述した各構成要素を適宜組み合わせて構成したものも本発明に含まれる。また、さらなる効果や変形例は、当業者によって容易に導き出すことができる。よって、本発明のより広範な態様は、上記の実施の形態に限定されるものではなく、様々な変更が可能である。