特許第6201431号(P6201431)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6201431端末装置のプログラム及びオーディオ信号処理システム
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6201431
(24)【登録日】2017年9月8日
(45)【発行日】2017年9月27日
(54)【発明の名称】端末装置のプログラム及びオーディオ信号処理システム
(51)【国際特許分類】
   H04S 7/00 20060101AFI20170914BHJP
【FI】
   H04S7/00 300
【請求項の数】6
【全頁数】22
(21)【出願番号】特願2013-113741(P2013-113741)
(22)【出願日】2013年5月30日
(65)【公開番号】特開2014-233024(P2014-233024A)
(43)【公開日】2014年12月11日
【審査請求日】2016年3月22日
(73)【特許権者】
【識別番号】000004075
【氏名又は名称】ヤマハ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100125689
【弁理士】
【氏名又は名称】大林 章
(74)【代理人】
【識別番号】100121108
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 太朗
(72)【発明者】
【氏名】須山 明彦
(72)【発明者】
【氏名】青木 良太郎
【審査官】 菊池 充
(56)【参考文献】
【文献】 特表2012−529213(JP,A)
【文献】 特開平08−272380(JP,A)
【文献】 特開2002−341865(JP,A)
【文献】 特開2006−074589(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2012/0075957(US,A1)
【文献】 米国特許第05784467(US,A)
【文献】 米国特許出願公開第2002/0166439(US,A1)
【文献】 米国特許出願公開第2007/0274528(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04S 1/00− 7/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
利用者が指示を入力可能な入力部と、端末装置の向いている方向を検出する方向センサと、オーディオ信号処理装置と通信を行う第1通信部と、プロセッサとを備え、仮想音源の位置を利用者が指定可能な任意の空間の境界上に指定することが可能な端末装置のプログラムであって、
前記プロセッサを、
音を視聴する所定位置において、当該端末装置が仮想音源の方向である第1方向を向いていることを利用者が前記入力部を用いて入力すると、前記方向センサの出力信号に基づいて前記第1方向を示す第1方向情報を取得する取得部と、
前記所定位置を示す所定位置情報、前記第1方向情報、及び前記仮想音源が配置される前記空間の境界を示す境界情報に基づいて、前記仮想音源の位置を示す仮想音源位置情報を生成する位置情報生成部と、
前記第1通信部を用いて、前記仮想音源位置情報を前記オーディオ信号処理装置に送信させる第1制御部として、
機能させる端末装置のプログラム。
【請求項2】
前記第1方向は所定の目標に対する角度であり、
前記取得部を、更に、当該端末装置が前記所定の目標を向いていることを利用者が前記入力部を用いて入力すると、前記方向センサの出力信号に基づいて特定される角度をリセットするように機能させる請求項1に記載の端末装置のプログラム。
【請求項3】
仮想音源の位置を利用者が指定可能な任意の空間の境界上に指定することが可能であって、利用者が指示を入力可能な入力部と、外部装置と通信を行う第1通信部と、端末装置の向いている方向を検出する方向センサと、音を視聴する所定位置において、当該端末装置が仮想音源の方向である第1方向を向いていることを利用者が前記入力部を用いて入力すると、前記方向センサの出力信号に基づいて前記第1方向を示す第1方向情報を取得する取得部と、前記第1通信部を用いて前記第1方向情報を送信させる第1制御部とを備えた端末装置と共に用いられるオーディオ信号処理装置であって、
前記端末装置と通信を行う第2通信部と、
前記所定位置を示す所定位置情報、前記第1方向情報、及び前記仮想音源が配置される前記空間の境界を示す境界情報に基づいて、前記仮想音源の位置を示す仮想音源位置情報を生成する第1位置情報生成部と
数のスピーカの各々の位置を示すスピーカ位置情報、前記所定位置情報及び前記仮想音源位置情報に基づいて、前記所定位置において前記仮想音源から音が出ているように聞こえるように入力オーディオ信号に音響効果を付与した出力オーディオ信号を生成する信号生成部と、
前記端末装置から送信された前記第1方向情報を前記第2通信部が受信すると、当該第1方向情報を前記第1位置情報生成部に供給する第2制御部とを備える、
ことを特徴とするオーディオ信号処理装置。
【請求項4】
前記第1方向は所定の目標に対する角度であり、
前記取得部は、更に、当該端末装置が前記所定の目標を向いていることを利用者が前記入力部を用いて入力すると、前記方向センサの出力信号に基づいて特定される角度をリセットして前記第1方向を示す前記第1方向情報を取得することを特徴とする請求項3に記載のオーディオ信号処理装置。
【請求項5】
複数のスピーカの各々に出力オーディオ信号を供給するオーディオ信号処理装置と、仮想音源の位置を利用者が指定可能な任意の空間の境界上に指定することが可能な端末装置とを有し、
前記端末装置は、
利用者が指示を入力可能な入力部と、
前記オーディオ信号処理装置と通信を行う第1通信部と、
当該端末装置の向いている方向を検出する方向センサと、
音を視聴する所定位置において、当該端末装置が仮想音源の方向である第1方向を向いていることを利用者が前記入力部を用いて入力すると、前記方向センサの出力信号に基づいて前記第1方向を示す第1方向情報を取得する取得部と、
前記所定位置を示す所定位置情報、前記第1方向情報、及び前記仮想音源が配置される前記空間の境界を示す境界情報に基づいて、前記仮想音源の位置を示す仮想音源位置情報を生成する第1位置情報生成部と、
前記第1通信部を用いて、前記仮想音源位置情報を前記オーディオ信号処理装置に送信させる第1制御部とを備え、
前記オーディオ信号処理装置は、
前記端末装置と通信を行う第2通信部と、
前記複数のスピーカの各々の位置を示すスピーカ位置情報、前記所定位置情報及び前記仮想音源位置情報に基づいて、前記所定位置において前記仮想音源から音が出ているように聞こえるように入力オーディオ信号に音響効果を付与した前記出力オーディオ信号を生成する信号生成部と、
前記端末装置から送信された前記仮想音源位置情報を前記第2通信部が受信すると、当該仮想音源位置情報を前記信号生成部に供給する第2制御部とを備える、
ことを特徴とするオーディオ信号処理システム。
【請求項6】
前記第1方向は所定の目標に対する角度であり、
前記取得部は、更に、当該端末装置が前記所定の目標を向いていることを利用者が前記入力部を用いて入力すると、前記方向センサの出力信号に基づいて特定される角度をリセットする、
ことを特徴とする請求項5に記載のオーディオ信号処理システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、仮想音源の位置を指定する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
複数のスピーカで合成音像による音場を形成するオーディオ信号処理装置が知られている。例えば、オーディオソースにはDVD(Digital Versatile Disc)のように5.1チャンネル等のマルチチャンネル音声信号が記録されているものがある。このようなオーディオソースを再生するオーディオ信号処理システムが一般家庭でも普及しつつある。マルチチャンネルのオーディオソースを再生においては、リスニングルーム内の推奨位置に各スピーカが配置され、利用者が予め定められた基準位置で視聴した場合に、サラウンドなどの音響再生効果が得られる。
音響再生効果は、複数のスピーカが推奨位置に配置され、基準位置で利用者が視聴することを前提としているため、利用者が基準位置とは異なる位置で視聴すると、所望の音響効果を得ることができない。特許文献1には、利用者が視聴する位置の位置情報に基づいて、所望の音響効果が得られるようにオーディオ信号を補正する技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2000−354300号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、音像を利用者が望む位置に定位させる音響効果を実現させたい場合がある。しかしながら、利用者が視聴位置において仮想音源の位置を指定する技術は従来提案されていなかった。
【0005】
本発明は、上述した事情に鑑みてなされたものであり、利用者が視聴位置において仮想音源の位置を簡易に指定することなどを解決課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上述した課題を解決するため、本発明に係る端末装置のプログラムは、利用者が指示を入力可能な入力部と、端末装置の向いている方向を検出する方向センサと、オーディオ信号処理装置と通信を行う第1通信部と、プロセッサとを備え、仮想音源の位置を利用者が指定可能な任意の空間の境界上に指定することが可能な端末装置のプログラムであって、前記プロセッサを、音を視聴する所定位置において、当該端末装置が仮想音源の方向である第1方向を向いていることを利用者が前記入力部を用いて入力すると、前記方向センサの出力信号に基づいて前記第1方向を示す第1方向情報を取得する取得部と、前記所定位置を示す所定位置情報、前記第1方向情報、及び前記仮想音源が配置される前記空間の境界を示す境界情報に基づいて、前記仮想音源の位置を示す仮想音源位置情報を生成する位置情報生成部と、前記第1通信部を用いて、前記仮想音源位置情報を前記オーディオ信号処理装置に送信させる第1制御部として、機能させる。
【0007】
この発明によれば、基準位置と異なる所定位置で、音を視聴する場合に、所定位置において仮想音源の方向である第1方向に向けて端末装置を操作するだけで、仮想音源の位置を利用者が指定可能な任意の空間の境界上に指定する仮想音源位置情報をオーディオ信号処理装置に送信することができる。
ここで、所定位置情報及び境界情報の少なくとも一方は、端末装置の記憶部に記憶されていてもよいし、あるいは、オーディオ信号処理装置などの外部装置から取得してもよい。また、「空間」は水平方向に高さ方向を加えた3次元であってもよいし、あるいは、高さ方向を除いた水平方向のみの2次元であってもよい。「利用者が指定可能な任意の空間」はリスリングルームの形状であってもよいし、リスリングルームが5m四方の空間である場合に、利用者がその内部で指定する任意の空間、例えば、3m四方の空間であってもよい。また、基準位置を中心とする任意の半径の球や円であってもよい。さらに、「利用者が指定可能な任意の空間」がリスリングルームの形状である場合、「空間の境界」はリスリングルームの壁であってもよい。
【0008】
また、上述した端末装置のプログラムにおいて、前記第1方向は所定の目標に対する角度であり、前記取得部を、更に、当該端末装置が前記所定の目標を向いていることを利用者が前記入力部を用いて入力すると、前記方向センサの出力信号に基づいて特定される角度をリセットするように機能させることが好ましい。この発明によれば、方向センサとして、相対的な方向を検出する加速度センサやジャイロセンサを用いる場合に、所定の目標を基準として角度をリセットするので、所定の目標を基準とする角度を得ることができる。
【0009】
次に、本発明に係るオーディオ信号処理装置は、仮想音源の位置を利用者が指定可能な任意の空間の境界上に指定することが可能であって、利用者が指示を入力可能な入力部と、外部装置と通信を行う第1通信部と、端末装置の向いている方向を検出する方向センサと、音を視聴する所定位置において、当該端末装置が仮想音源の方向である第1方向を向いていることを利用者が前記入力部を用いて入力すると、前記方向センサの出力信号に基づいて前記第1方向を示す第1方向情報を取得する取得部と、前記第1通信部を用いて前記第1方向情報を送信させる第1制御部とを備えた端末装置と共に用いられるオーディオ信号処理装置であって、前記端末装置と通信を行う第2通信部と、前記所定位置を示す所定位置情報、前記第1方向情報、及び前記仮想音源が配置される前記空間の境界を示す境界情報に基づいて、前記仮想音源の位置を示す仮想音源位置情報を生成する第1位置情報生成部と、複数のスピーカの各々の位置を示すスピーカ位置情報、前記所定位置情報及び前記仮想音源位置情報に基づいて、前記所定位置において前記仮想音源から音が出ているように聞こえるように入力オーディオ信号に音響効果を付与した出力オーディオ信号を生成する信号生成部と、 前記端末装置から送信された前記第1方向情報を前記第2通信部が受信すると、当該第1方向情報を前記第1位置情報生成部に供給する第2制御部とを備えることを特徴とする。
【0010】
この発明によれば、オーディオ信号処理装置は、端末装置から受信した第1方向情報に基づいて仮想音源位置情報を生成し、更に、スピーカ位置情報、所定位置情報及び仮想音源位置情報に基づいて、所定位置において仮想音源から音が出ているように聞こえるように入力オーディオ信号に音響効果を付与した出力オーディオ信号を生成するから、利用者は、例えば、リスニングルーム内の任意の場所で、所望の方向から仮想音源の音を聞くことが可能となる。
【0011】
また、上述したオーディオ信号処理装置において、前記第1方向は所定の目標に対する角度であり、前記取得部を、更に、当該端末装置が前記所定の目標を向いていることを利用者が前記入力部を用いて入力すると、前記方向センサの出力信号に基づいて特定される角度をリセットするように機能させることが好ましい。
【0012】
次に、本発明に係るオーディオ信号処理システムは、複数のスピーカの各々に出力オーディオ信号を供給するオーディオ信号処理装置と、仮想音源の位置を利用者が指定可能な任意の空間の境界上に指定することが可能な端末装置とを有し、前記端末装置は、利用者が指示を入力可能な入力部と、前記オーディオ信号処理装置と通信を行う第1通信部と、 当該端末装置の向いている方向を検出する方向センサと、音を視聴する所定位置において、当該端末装置が仮想音源の方向である第1方向を向いていることを利用者が前記入力部を用いて入力すると、前記方向センサの出力信号に基づいて前記第1方向を示す第1方向情報を取得する取得部と、前記所定位置を示す所定位置情報、前記第1方向情報、及び前記仮想音源が配置される前記空間の境界を示す境界情報に基づいて、前記仮想音源の位置を示す仮想音源位置情報を生成する第1位置情報生成部と、前記第1通信部を用いて、前記仮想音源位置情報を前記オーディオ信号処理装置に送信させる第1制御部とを備え、前記オーディオ信号処理装置は、前記端末装置と通信を行う第2通信部と、前記複数のスピーカの各々の位置を示すスピーカ位置情報、前記所定位置情報及び前記仮想音源位置情報に基づいて、前記所定位置において前記仮想音源から音が出ているように聞こえるように入力オーディオ信号に音響効果を付与した前記出力オーディオ信号を生成する信号生成部と、前記端末装置から送信された前記仮想音源位置情報を前記第2通信部が受信すると、当該仮想音源位置情報を前記信号生成部に供給する第2制御部とを備えることを特徴とする。
【0013】
この発明によれば、基準位置と異なる所定位置で、音を視聴する場合に、所定位置において仮想音源の方向である第1方向に向けて端末装置を操作するだけで、第1方向を示す第1方向情報をオーディオ信号処理装置に送信することができる。そして、オーディオ信号処理装置は、第1方向情報に基づいて仮想音源位置情報を生成し、更に、スピーカ位置情報、所定位置情報及び仮想音源位置情報に基づいて、所定位置において仮想音源から音が出ているように聞こえるように入力オーディオ信号に音響効果を付与した出力オーディオ信号を生成するから、利用者は、例えば、リスニングルーム内の任意の場所で、所望の方向から仮想音源の音を聞くことが可能となる。
【0014】
上述したオーディオ信号処理システムにおいて、前記第1方向は所定の目標に対する角度であり、前記取得部は、更に、当該端末装置が前記所定の目標を向いていることを利用者が前記入力部を用いて入力すると、前記方向センサの出力信号に基づいて特定される角度をリセットすることが好ましい。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】実施形態に係るオーディオ信号処理システム1Aの構成例を示すブロック図である。
図2】リスニングルーム内のスピーカSP1〜SP5、基準位置Pref及び所定位置Pの配置を示す平面図である。
図3】端末装置10のハードウェア構成の一例を示すブロック図である。
図4】ジャイロセンサで測定される角度を説明するための説明図である。
図5】オーディオ信号処理装置20のハードウェア構成の一例を示すブロック図。
図6】スピーカSP1〜SP5の距離を測定する際のマイクロフォンMの配置を示す平面図である。
図7】複数のスピーカSP1〜SP5と基準位置Prefとの間の距離の測定処理の内容を示すフローチャートである。
図8】距離の測定結果によって分かるスピーカの位置を示す説明図である。
図9】方向測定処理の処理内容を示すフローチャートである。
図10】方向測定処理において表示部に表示される画像の一例を示す説明図である。
図11】方向測定処理において表示部に表示される画像の一例を示す説明図である。
図12】スピーカSP3の位置を算出の一例を示す説明図である。
図13】仮想音源の位置の指定処理の内容を示すフローチャートである。
図14】仮想音源の位置の指定処理において表示部に表示される画像の一例を示す説明図である。
図15】仮想音源の位置の指定処理において表示部に表示される画像の一例を示す説明図である。
図16】仮想音源位置情報の算出を説明するための説明図である。
図17】オーディオ信号処理システム1Aの機能構成を示す機能ブロック図である。
図18】オーディオ信号処理システム1Bの機能構成を示す機能ブロック図である。
図19】オーディオ信号処理システム1Cの機能構成を示す機能ブロック図である。
図20】基準位置から等距離の円上に仮想音源を配置する場合において、仮想音源位置の算出を説明するための説明図である。
図21】3次元にスピーカSP1〜SP7及び仮想音源を配置した例を示す斜視図である。
図22】端末装置の画面上で仮想音源を配置する例を示す説明図である。
図23】変形例に係る仮想音源位置情報の算出を説明するための説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の実施形態について図面を参照しつつ説明する。
<オーディオ信号処理システムの構成>
図1に、第1実施形態に係るオーディオ信号処理システムの構成例を示す。オーディオ信号処理システム1Aは、スマートフォンなどの端末装置10と、オーディオ信号処理装置20と、スピーカSP1〜SP5とを備える。端末装置10は、例えば、スマートフォンなどの通信機器であり、オーディオ信号処理装置20と通信可能である。通信の形態は無線又は有線のいずれであってあってもよいが、例えば、無線LAN(Local Area Network)を介して通信が可能である。また、端末装置10は、インターネット上の所定のサイトからアプリケーションプログラムをダウンロードすることができる。そのようなアプリケーションプログラムには、仮想音源の位置を指定するプログラム、複数のスピーカSP1〜SP5の各方向を測定するために用いるプログラム、あるいは利用者の位置を特定するためのプログラムが含まれ得る。
【0017】
オーディオ信号処理装置20は、いわゆるマルチチャネルアンプである。オーディオ信号処理装置20は、入力オーディオ信号IN1〜IN5に音響効果を付与した出力オーディオ信号OUT1〜OUT5を生成し、OUT1〜OUT5をスピーカSP1〜SP5に供給する。スピーカSP1〜SP5は、オーディオ信号処理装置20と有線又は無線にて接続されている。
【0018】
図2に、オーディオ信号処理システム1Aのリスニングルーム内のスピーカSP1〜SP5の配置例を示す。この例では、5つのスピーカSP1〜SP5がリスニングルーム内に配置されているが、スピーカの数は、5つに限らず、4つ以下であってもよいし、6つ以上であってもよい。この場合、入力オーディオ信号の数は、4つ以下であってもよいし、6つ以上であってもよい。例えば、サブウーハのスピーカを追加することによって、いわゆる5.1サラウンドシステムとしてもよい。
【0019】
このオーディオ信号処理システム1Aにおいては、リスニングルーム内のスピーカSP1〜SP5の各位置を示すスピーカ位置情報は既知である。利用者Aがあらかじめ定められた位置(以下「基準位置Pref」と称する。)で、スピーカSP1〜SP5から放音された音を視聴した場合に所望の音響効果が得られる。この例では、スピーカSP1は基準位置Prefの正面に配置され、スピーカSP2は基準位置Prefの右斜め前方に配置され、スピーカSP3は基準位置Prefの右斜め後方に配置され、スピーカSP4は基準位置Prefの左斜め後方に配置され、スピーカSP5は基準位置Prefの左斜め前方に配置される。
また、利用者Aは基準位置Prefと異なる所定位置Pで視聴するものとする。そして、所定位置Pの位置を示す所定位置情報は既知である。スピーカ位置情報及び所定位置情報は、例えば、基準位置Prefを原点するXY座標で与えられる。
【0020】
図3に、端末装置10のハードウェア構成の一例を示す。端末装置10は、装置全体の制御中枢として機能するCPU100、アプリケーションプログラムなどを記憶したりCPU100の作業領域として機能するメモリ110、利用者が指示を入力する操作部120、操作内容などを表示する表示部130、外部と通信を行う通信インターフェース140、ジャイロセンサ151、加速度センサ152、及び方位センサ153を備える。
【0021】
ジャイロセンサ151は、図4に示すように端末装置10の姿勢を直交するX軸、Y軸、及びZ軸の回転角であるピッチ角(pitch)、ロール角(roll)、及びヨー角(yaw)を出力する。これらの角度から、端末装置10の向いている方向を特定することができる。加速度センサ152は、端末装置10に加えられた加速度の成分を直交するX軸、Y軸、及びZ軸について測定する。この場合、加速度センサ152が測定する加速度は、三次元ベクトルで表わされ、三次元ベクトルに基づいて端末装置10の向いている方向を特定することができる。方位センサ153は、例えば、地磁気を検出することにより、方位を測定する。この方位により、端末装置10の向いている方向を特定することができる。但し、ジャイロセンサ151及び加速度センサ152が出力する信号は、端末装置10の有する3軸の座標系であって、リスニングリームに固定の座標系では無い。従って、ジャイロセンサ151及び加速度センサ152で測定される方向は相対的なものとなる。即ち、リスニングルーム内に固定されている何らかの目標物を基準とし、基準に対する角度が相対的な方向として得られる。一方、方位センサ153が出力する信号は、地球上の方位であり、絶対的な方向を示す。
【0022】
CPU100は、アプリケーションプログムを実行することによって、ジャイロセンサ151、加速度センサ152、及び方位センサ153のうち少なくとも一つの出力を用いて、端末装置10を向けた方向を測定する。この例の端末装置10は、ジャイロセンサ151、加速度センサ152、及び方位センサ153を備えるが、このうちの少なくとも一つを備えるものであってもよい。ジャイロセンサ151及び加速度センサ152は、角度を出力する。角度はなんらかの基準に対する値である。基準は、リスニングルーム内の目標物であればどのようなものであってもよいが、この例では、複数のスピーカSP1〜SP5のうち第1番目に方向を測定するスピーカとする。この点の詳細は、後述する。
一方、方位センサ153を用いて、複数のスピーカSP1〜SP5の方向を測定する場合は、基準の方向の入力は不要である。方位センサ153からは、絶対的な方向を示す値が出力されるからである。
【0023】
図5に示されるオーディオ信号処理装置20は、装置全体の制御中枢として機能するCPU210、外部と通信を実行する通信インターフェース220、プログラムやデータを記憶するとともにCPU210の作業領域として機能するメモリ230、マイクロフォンなどの外部装置からの信号を入力してCPU210に供給する外部インターフェース240、基準信号Sr1〜Sr5を生成する基準信号生成回路250、選択回路260及びm個の処理ユニットU1〜Umを備える。m個の処理ユニットU1〜Um及びCPU210は、複数のスピーカSP1〜SP5の各位置を示すスピーカ位置情報、所定位置Pを示す所定位置情報及び仮想音源の位置を示す仮想音源位置情報(座標情報)に基づいて、入力オーディオ信号IN1〜IN5に音響効果を付与した出力オーディオ信号OUT1〜OUT5を複数のスピーカSP1〜SP5の各々について生成する。
【0024】
ここで、j(jは1≦j≦mを満たす任意の自然数)番目の処理ユニットUjは、仮想音源化部300、周波数補正部310、ゲイン分配部320、及び加算器331〜335を有する。なお、他の処理ユニットU1、U2、…Uj-1、Uj+1、…Umは、処理ユニットUjと同様に構成されている。
【0025】
仮想音源化部300は、入力オーディオ信号IN1〜IN5に基づいて、仮想音源のオーディオ信号を生成する。この例では、m個の処理ユニットU1〜Umを備えるので、m個の仮想音源に対応した出力オーディオ信号OUT1〜OUT5を生成することができる。仮想音源化部300は、5個のスイッチSW1〜SW5とミキサ301とを備える。CPU210は仮想音源化部300を制御する。より具体的には、CPU210は、メモリ230にm個の仮想音源を管理する仮想音源管理テーブルを記憶しておき、仮想音源管理テーブルを参照して仮想音源化部300を制御する。仮想音源管理テーブルには、各仮想音源について、どの入力オーディオ信号IN1〜IN5をミキシングすればよいかを表わすデータ(例えば、ミキシングするチャネルを示すチャネル識別子や、それぞれのチャネルについてミキシングするか否かを表わす論理値など)が格納されている。そして、CPU210は、仮想音源管理テーブルを参照して入力オーディオ信号IN1〜IN5のうちミキシングの対象となる入力オーディオ信号に対応するスイッチを順次にオンにして、ミキシングの対象となる入力オーディオ信号を取り込む。例えば、ミキシングの対象となる入力オーディオ信号がIN1、IN2及びIN5である場合、まず、CPU210は、入力オーディオ信号IN1に対応するスイッチSW1をオンにし、他のスイッチSW2〜SW5をオフにする。次に、CPU210は、入力オーディオ信号IN2に対応するスイッチSW2をオンにし、他のスイッチSW1、SW3〜SW5をオフにする。その次に、CPU210は、入力オーディオ信号IN5に対応するスイッチSW5をオンにし、他のスイッチSW1〜SW4をオフにする。
【0026】
周波数補正部310は、仮想音源化部300の出力信号に周波数補正を施す。具体的には、CPU210の制御の下、周波数補正部310は、仮想音源の位置から基準位置Prefまでの距離にしたがって、距離が遠いほど、高域の周波数成分を大きく減衰させるように周波数特性を補正する。これは、仮想音源から基準位置Prefまでの距離が大きいほど、高周波成分の減衰量が大きくなるという音響特性を再現するためである。
【0027】
メモリ230は、減衰量テーブルをあらかじめ記憶している。減衰量テーブルには、仮想音源から基準位置Prefまでの距離と各周波数成分の減衰量との関係を表わすデータが格納されている。一方、仮想音源管理テーブルには、それぞれの仮想音源の位置を示す仮想音源位置情報が格納されている。仮想音源位置情報は、例えば、基準位置Prefを原点とする三次元直交座標や二次元直交座標で与えられる。なお、仮想音源位置情報を極座標で表してもよい。この例では、仮想音源位置情報は、二次元直交座標の座標情報で与えられるものとする。
【0028】
CPU210は、第1に、メモリ230が記憶した仮想音源管理テーブルの内容を読み出し、読み出した仮想音源管理テーブルの内容に基づいて、それぞれの仮想音源から基準位置Prefまでの距離を算出し、第2に、減衰量テーブルを参照して算出した基準位置Prefまでの距離に応じた各周波数の減衰量を取得し、第3に、取得した減衰量に応じた周波数特性が得られるように周波数補正部310を制御する。
【0029】
ゲイン分配部320は、CPU210の制御の下、周波数補正部310の出力信号を各スピーカSP1〜SP5に分配して、分配した複数のオーディオ信号Aj[1]〜Aj[5]を出力する。各スピーカSP1〜SP5に対するオーディオ信号のゲインは、スピーカSP1〜SP5と仮想音源との間の距離が遠いほど小さくなる。これにより、あたかも仮想音源の位置として設定された場所から音が放射されているかような音場を形成することができる。例えば、各スピーカSP1〜SP5に対するオーディオ信号Aj[1]〜Aj[5]のゲインは、スピーカSP1〜SP5と仮想音源との間の距離の逆数に比例する。あるいは、ゲインが、スピーカSP1〜SP5と仮想音源との間の距離の二乗あるいは四乗の逆数に比例する構成であってもよい。なお、仮想音源との間の距離がほぼ0であるスピーカSP1〜SP5が存在する場合は、それ以外のスピーカSP1〜SP5に対するオーディオ信号Aj[1]〜Aj[5]のゲインを0にする。
【0030】
メモリ230は、例えば、スピーカ管理テーブルを記憶している。スピーカ管理テーブルには、各スピーカSP1〜SP5の識別子と対応づけて位置を示すスピーカ位置情報及び基準位置Prefとの間の距離を示す情報が格納される。スピーカ位置情報は、例えば、基準位置Prefを原点とする三次元直交座標、二次元直交座標、あるいは極座標などによって表わされる。
【0031】
CPU210は、第1に、メモリ230に格納した仮想音源管理テーブルとスピーカ管理テーブルとを参照して、各スピーカSP1〜SP5と各仮想音源との間の距離を算出し、第2に、算出した距離に基づいて各スピーカSP1〜SP5に対するオーディオ信号のゲインを算出し、ゲインを指定する制御信号を各処理ユニットU1〜Umに供給する。
【0032】
処理ユニットUjの加算器331〜335は、ゲイン分配部320から出力されるオーディオ信号Aj[1]〜Aj[5]と、前段の処理ユニットUj-1から供給されるオーディオ信号Oj-1[1]〜Oj-1[5]とを加算して、オーディオ信号Oj[1]〜Oj[5]を出力する。これにより、処理ユニットUmから出力されるオーディオ信号Om[k](kは1から5までの任意の自然数)は、Om[k]=A1[k]+ A2[k]+…+Aj[k]+…+Am[k]となる。
【0033】
基準信号生成回路250は、CPU210の制御の下、基準信号Sr1〜Sr5を生成して選択回路260に出力する。CPU210は、複数のスピーカSP1〜SP5の各距離を測定する際に、基準信号Sr1〜Sr5を生成するように基準信号生成回路250を生成する。また、CPU210は、複数のスピーカSP1〜SP5の各距離を測定する場合に基準信号Sr1〜Sr5を選択する一方、音響効果を付与する場合にオーディオ信号Om[1]〜Om[5]を選択して得た出力オーディオ信号OUT1〜OUT5を複数のスピーカSP1〜SP5の各々に供給するように選択回路260を制御する。
【0034】
<オーディオ信号処理システムの動作>
次に、オーディオ信号処理システムの動作を、スピーカの位置の特定と、仮想音源の位置の指定とに分けて説明する。
<スピーカの位置の特定処理>
スピーカの位置の特定処理では、第1に、複数のスピーカSP1〜SP5と基準位置Prefとの間の各距離を測定し、第2に、複数のスピーカSP1〜SP5の各方向を測定し、第3に、測定された距離及び方向に基づいて、複数のスピーカSP1〜SP5の各位置を特定する。
【0035】
距離の測定においては、図6に示すようにマイクロフォンMを基準位置Prefに配置し、マイクロフォンMをオーディオ信号処理装置20に接続する。マイクロフォンMの出力信号は外部インターフェース240を介してCPU210に供給される。図7に、オーディオ信号処理装置20のCPU210が実行する複数のスピーカSP1〜SP5と基準位置Prefとの間の距離の測定処理の内容を示す。
【0036】
まず、CPU210は、測定が終了していないスピーカを一つ特定する(S1)。次に、CPU210は、基準信号Sr1〜Sr5を生成するように基準信号生成回路250を制御すると共に、基準信号Sr1〜Sr5を順次選択して各出力オーディオ信号OUT1〜OUT5を複数のスピーカSP1〜SP5の各々に出力するように選択回路260を制御する(S2)。この後、CPU210はマイクロフォンMの出力信号に基づいて、測定対象となるスピーカと基準位置Prefとの間の距離を算出し、スピーカの識別子と対応づけて算出した距離をスピーカ管理テーブルに記録する(S3)。次に、CPU210は、全てのスピーカについて測定が終了したか否かを判定する(S4)。測定が終了していないスピーカがある場合には、CPU210は処理をステップS1に戻し、全てのスピーカについて測定が終了するまで、ステップS1からステップS4までの処理を繰り返す。このようにして、基準位置Prefから複数のスピーカSP1〜SP5までの距離が測定される。
【0037】
例えば、基準位置PrefからスピーカSP1までの距離がLであったとする。この場合、図8に示すようにスピーカSP1は、基準位置Prefから半径Lの円上に存在することが分かるが、その位置は不明である。そこで、本実施形態では、端末装置10を用いて、基準位置Prefから見たスピーカSP1の方向を測定することによって、スピーカSP1の位置を特定する。
【0038】
図9に端末装置10のCPU100が実行する方向測定処理の処理内容を示す。この例では、ジャイロセンサ151及び加速度センサ152の少なくとも一方を用いて複数のスピーカSP1〜SP5の各方向を特定するものとする。上述したようにジャイロセンサ151及び加速度センサ152は角度を出力する。この例の角度の基準は、第1番目に方向を測定するスピーカとする。
【0039】
方向測定処理のアプリケーションが起動されると、CPU100は、利用者に第1番目のスピーカに端末装置10を向けて設定操作を行うように促す画像を表示部130に表示させる(S20)。例えば、スピーカSP1の方向を第1番目に設定する場合、CPU100は、図10に示すようにスピーカSP1に向けた矢印を表示部130に表示する。
次に、CPU100は、利用者によって設定操作がなされたか否かを判定する(S21)。具体的には、図10に示す設定ボタンB(上述した操作部120の一部)を利用者が押下したか否かを判定する。設定操作がなされていない場合は、CPU100は、設定操作がなされるまで判定を繰り返し、設定操作がなされると測定角度をリセットする(S22)。即ち、基準位置PrefからスピーカSP1に向かう方向を0度とする。
【0040】
この後、CPU100は、次のスピーカに端末装置10を向けて設定操作を行う設定操作を行うように促す画像を表示部130に表示させる(S23)。例えば、スピーカSP2の方向を第2番目に設定する場合、CPU100は、図11に示すようにスピーカSP2に向けた矢印を表示部130に表示させる。
【0041】
次に、CPU100は、利用者によって設定操作がなされたか否かを判定する(S24)。具体的には、図11に示す設定ボタンBを利用者が押下したか否かを判定する。設定操作がなされていない場合は、CPU100は、設定操作がなされるまで判定を繰り返し、設定操作がなされると、測定対象のスピーカの基準に対する角度をメモリ110に記憶する(S25)。
【0042】
この後、CPU100は、全てのスピーカについて測定が終了したか否かを判定する(S26)。測定が終了していないスピーカがある場合には、CPU100は処理をステップS23に戻し、全てのスピーカについて測定が終了するまで、ステップS23からステップS26までの処理を繰り返す。そして、全てのスピーカについて方向の測定が終了すると、CPU100は、通信インターフェース140を用いて測定結果をオーディオ信号処理装置20に送信する。このようにして、複数のスピーカSP1〜SP5の各方向が測定される。なお、上述した例では測定結果をまとめてオーディオ信号処理装置20に送信したが、一つのスピーカの方向が測定される度に、測定結果をオーディオ信号処理装置20に送信してもよい。但し、第1番目の測定対象であるスピーカSP1の方向は、他のスピーカSP2〜SP5の角度の基準となり、角度は0度であるので、測定結果の送信を省略してもよい。
【0043】
このように複数のスピーカSP1〜SP5の各方向を基準に対する角度として特定する場合に、基準を複数のスピーカSP1〜SP5の一つとすることで、利用者の負担を軽減することができる。仮に、角度の基準が複数のスピーカSP1〜SP5のいずれにも該当せず、リスニングルーム内に配置されている何らかの目標であるとすれば、利用者は当該目標に端末装置10を向けて、所定の操作を行うことにより、角度のリセットを実行し、端末装置10を複数のスピーカSP1〜SP5の各々に向けて所定の操作を行うことにより、方向の指定を行う必要がある。即ち、目標に端末装置10を向けることが必要となるが、目標を複数のスピーカSP1〜SP5のいずれか一つにすることによって、入力操作を簡略化できる。
【0044】
次に、オーディオ信号処理装置20のCPU210は、通信インターフェース220を用いて複数のスピーカSP1〜SP5の各方向を取得すると、複数のスピーカSP1〜SP5の各方向と各距離に基づいて、複数のスピーカSP1〜SP5の各位置を算出する。
例えば、図12に示すようにスピーカSP3の方向が角度θであって、距離がL3であるとする。この場合,CPU210は、以下に示す式に従ってスピーカSP3の座標(x3,y3)をスピーカ位置情報として算出する。
(x3,y3)=(L3sinθ,L3cosθ)
なお、他のスピーカSP1,SP2,SP4,SP5についても同様に座標(x,y)を計算する。
このようにCPU210は、基準位置Prefから複数のスピーカSP1〜SP5までの各距離と、複数のスピーカSP1〜SP5の各方向とに基づいて、複数のスピーカSP1〜SP5の各位置を示すスピーカ位置情報を算出する。
【0045】
<仮想音源の位置の指定処理>
次に、仮想音源の位置の指定処理について説明する。本実施形態では、端末装置10を用いて仮想音源の位置の指定を行う。
図13に、端末装置10のCPU100が実行する仮想音源の位置の指定処理の内容を示す。まず、CPU100は、表示部130に仮想音源の対象となるチャンネルの選択を促す画像を表示させ、利用者がチャネルを選択するとこれを取得する(S30)。例えば、CPU100は、図14に示す画面を表示部130に表示させる。この例では、仮想音源数は5個であり、「1」〜「5」の番号が割り当てられている。チャネルはプルダウンメニューによって選択できるようになっている。図14では仮想音源番号5に対応するチャネルをプルダウンメニューで表示している。チャネルとしては、センタ、右フロント、左フロント、右サラウンド、左サラウンドがある。利用者がプルダウンメニューを選択すると、CPU100は選択されたチャネルを取得する。
【0046】
次に、CPU100は、所定位置Pにおいて目標に端末装置10を向けて設定操作を行うように促す画像を表示部130に表示させる(S31)。ここで、目標は、スピーカの位置の特定処理においてスピーカの角度の基準と一致させることが好ましい。具体的には、第1番目に設定を行うスピーカSP1である。
【0047】
次に、CPU100は、利用者によって設定操作がなされたか否かを判定する(S32)。具体的には、図10に示す設定ボタンBを利用者が押下したか否かを判定する。設定操作がなされていない場合は、CPU100は、設定操作がなされるまで判定を繰り返し、設定操作がなされると測定角度をリセットする(S33)。即ち、所定位置Pから所定の目標であるスピーカSP1に向かう方向を0度とする。
【0048】
この後、CPU100は、端末装置10を所定位置Pから仮想音源を配置したい方向に向けて設定操作を行うように促す画像を表示部130に表示させる。例えば、CPU100は、図15に示す画面を表示部130に表示させる(S34)。
次に、CPU100は、利用者によって設定操作がなされたか否かを判定する(S35)。具体的には、図15に示す設定ボタンBを利用者が押下したか否かを判定する。設定操作がなされていない場合は、CPU100は、設定操作がなされるまで判定を繰り返し、設定操作がなされると、仮想音源の所定の目標に対する角度を第1方向情報としてメモリ110に記憶する(S36)。
【0049】
次に、CPU100は、仮想音源の位置を算出する(S37)。仮想音源の位置の算出には、仮想音源の方向を示す第1方向情報、所定位置Pの位置を示す所定位置情報、及び境界情報を用いる。
本実施形態において、仮想音源は利用者が指定可能な任意の空間の境界に沿って配置することが可能である。この例の空間はリスニングルームであり、空間の境界はリスニングルームの壁である。ここでは、空間を二次元で表すものとする。空間の境界(リスニングルームの壁)を二次元で示す境界情報は、予めメモリ110に記憶されている。境界情報は、利用者が端末装置10に入力してもよいし、あるいは、オーディオ信号処理装置20で管理する境界情報を端末装置10転送してこれをメモリ110に記憶してもよい。なお、境界情報は、各スピーカSP1〜SP5の大きさを考慮して、リスニングルーム内に配置可能な最大の位置を囲う長方形を表すものであってもよい。
【0050】
図16は仮想音源位置Vの算出を説明するための説明図である。この例では、所定位置情報は(xp,yp)であり、基準位置Prefを原点するXY座標で示され、既知である。また、指定情報はリスニングルームの壁の位置を示し、右側の壁は(xv,ya)で表すことができる。但し-k<ya<+kであり、k及びxvは既知である。また、所定の目標であるスピーカSP1の位置を示すスピーカ位置情報は(0,yc)であり既知である。さらに、所定位置Pから見た所定の目標であるスピーカSP1と仮想音源位置Vとのなす角度をθa、所定位置Pから見た目標とX軸の負方向とのなす角をθb、所定位置Pから見た所定の目標とX軸の正方向とのなす角をθc、基準位置Prefから見た仮想音源位置VとX軸の正方向とのなす角をθvとする。
【0051】
まず、θb及びθcは以下に示す式(1)及び式(2)で与えられる。
θb=atan{(yc-yp)/xp}……式(1)
θc=180-θa-θb……式(2)
【0052】
次に、yvは以下に示す式(3)で与えられる。
yv=sinθc+yp
=yp+sin(180-θa-θb)
=yp+sin[180-θa-atan{(ya-yp)/xp}]……式(3)
よって、仮想音源位置Vを示す仮想音源位置情報は、(xv, yp+sin[180-θa-atan{(ya-yp)/xp}])となる。
【0053】
説明を図13に戻す。この後、CPU100は、仮想音源位置情報と所定位置情報を設定結果としてオーディオ信号処理装置20に送信する(S38)。なお、オーディオ信号処理装置20において所定位置情報を既に記憶している場合には、仮想音源位置情報のみを設定結果としてオーディオ信号処理装置20に送信すればよい。
【0054】
オーディオ信号処理装置20のCPU210は、通信インターフェース220を用いて、設定結果を受信すると、スピーカ位置情報、所定位置情報、及び仮想音源位置情報に基づいて、仮想音源位置Vから音が聞こえるように処理ユニットU1〜Umを制御する。この結果、端末装置10を用いて、指定したチャネルの音が、仮想音源位置Vから聞こえるように出力オーディオ信号OUT1〜OUT5が生成される。
【0055】
このように複数のスピーカSP1〜SP5の角度の基準と、仮想音源の角度の基準とを一致させることにより、仮想音源の方向の特定を複数のスピーカSP1〜SP5の各方向の特定と同じ処理で実行することができる。このため、2つの処理を共通化できるので同じプログラムモジュールを用いることが可能となる。また、利用者Aは共通の目標(この例では、スピーカSP1)で角度をリセットすることになるので、個別の目標を記憶しておく必要がない。
【0056】
<オーディオ信号処理システム1Aの機能構成>
上述したようにオーディオ信号処理システム1Aは、端末装置10とオーディオ信号処理装置20とを含んで構成され、各種の機能を分担している。図17にオーディオ信号処理システム1Aにおいて端末装置10とオーディオ信号処理装置20とで分担する機能を示す。
【0057】
端末装置10は、利用者Aが指示を入力可能な入力部F11と、オーディオ信号処理装置20と通信を行う第1通信部F15と、端末装置10の向いている方向を検出する方向センサF12と、取得部F13と、第1位置情報生成部F14と、第1制御部F16とを備える。
ここで、入力部F11は、上述した操作部120に対応しており、第1通信部F15は、上述した通信インターフェース140に対応している。また、方向センサF12は、ジャイロセンサ151、加速度センサ152、及び方位センサ153に対応している。
次に、取得部F13はCPU100に対応しており、音を視聴する所定位置Pにおいて、当該端末装置10が仮想音源の方向である第1方向を向いていることを利用者が入力部F11を用いて入力すると(上述したS35)、方向センサF12の出力信号に基づいて第1方向を示す第1方向情報を取得する(上述したS36)。なお、取得部F13は、第1方向が所定の目標(例えば、スピーカSP1)に対する角度である場合、端末装置10が所定の目標を向いていることを利用者が入力部F11を用いて入力すると、方向センサF12の出力信号に基づいて特定される角度をリセットすることが好ましい。
次に、第1位置情報生成部F14はCPU100に対応しており、所定位置Pを示す所定位置情報、第1方向情報、及び仮想音源が配置される空間の境界を示す境界情報に基づいて、仮想音源の位置を示す仮想音源位置情報を生成する(上述したS37)。
次に、第1制御部F16はCPU100に対応しており、第1通信部F15を用いて、仮想音源位置情報をオーディオ信号処理装置20に送信させる(上述したS38)。
【0058】
一方、オーディオ信号処理装置20は、端末装置10と通信を行う第2通信部F21と、信号生成部F22と、第2制御部F23と、記憶部F24とを備える。
まず、第2通信部F21は通信インターフェース220に相当し、記憶部F24はメモリ230に相当する。
次に、信号生成部F22はCPU210及び処理ユニットU1〜Umに相当し、複数のスピーカSP1〜SP5の各々の位置を示すスピーカ位置情報、所定位置情報及び仮想音源位置情報に基づいて、所定位置Pにおいて仮想音源から音が出ているように聞こえるように入力オーディオ信号IN1〜IN5に音響効果を付与した出力オーディオ信号OUT1〜OUT5を生成する。
次に、第2制御部F23は、端末装置10から送信された仮想音源位置情報を第2通信部が受信すると、仮想音源位置情報を信号生成部F22に供給する。
また、記憶部F24には、スピーカ位置情報、所定位置情報、及び仮想音源位置情報が記憶される。なお、スピーカ位置情報及び所定位置情報は、オーディオ信号処理装置20で算出してもよいし、あるいは、端末装置10で算出し、これをオーディオ信号処理装置20に転送してもよい。
【0059】
以上説明したように、本実施形態によれば、利用者Aは、スピーカ位置情報の基準となる基準位置Prefと異なる所定位置Pで、複数のスピーカSP1〜SP5から放音される音を視聴する場合に、所定位置Pにおいて仮想音源の方向である第1方向に向けて端末装置10を操作するだけで、仮想音源を予め定められた空間の境界上に配置することができる。そして、信号生成部F22は、スピーカ位置情報、所定位置情報及び仮想音源位置情報に基づいて、所定位置Pにおいて仮想音源から音が出ているように聞こえるように入力オーディオ信号IN1〜IN5に音響効果を付与した出力オーディオ信号OUT1〜OUT5を生成するから、利用者Aはリスニングルーム内の任意の場所で、所望の方向から仮想音源の音を聞くことが可能となる。
【0060】
<変形例>
本発明は、上述した実施形態に限定されるものではなく、以下に述べる各種の変形が可能である。また、各変形例と上述した実施形態は適宜組み合わせることができる。
【0061】
(1)上述した実施形態では、端末装置10で仮想音源位置情報を生成し、これをオーディオ信号処理装置20に送信したが、本発明はこれに限定されるものではなく、第1方向情報をオーディオ信号処理装置20に送信し、仮想音源位置情報をオーディオ信号処理装置20で生成してもよい。
図18に変形例に係るオーディオ信号処理システム1Bの構成例を示す。オーディオ信号処理システム1Bは、端末装置10の第1位置情報生成部F14を削除し、オーディオ信号処理装置20に第1位置情報生成部F14を設けた点を除いて、図17に示すオーディオ信号処理システム1Aと同様に構成されている。
オーディオ信号処理システム1Bの端末装置10において、第2制御部F23は端末装置10から送信された第1方向情報を第2通信部F21が受信すると、第1方向情報を第1位置情報生成部F14に供給する。また、所定位置を示す所定位置情報、端末装置10から受信した第1方向情報、及び仮想音源が配置される前記空間の境界を示す境界情報に基づいて、仮想音源の位置を示す仮想音源位置情報を生成する。
この変形例によれば、端末装置10は、第1方向情報のみを生成すればよいので、端末装置10の処理負荷を軽減することができる。
【0062】
(2)上述した実施形態では、端末装置10で仮想音源位置情報を生成し、これをオーディオ信号処理装置20に送信したが、本発明はこれに限定されるものではなく、端末装置10で基準位置Pから見た仮想音源の方向を示す第2方向情報を生成し、これをオーディオ信号処理装置20に送信し、仮想音源位置情報をオーディオ信号処理装置20で生成してもよい。
図19に変形例に係るオーディオ信号処理システム1Cの構成例を示す。オーディオ信号処理システム1Cは、端末装置10において第1位置情報生成部F14の替わりに方向変換部F17を設け、オーディオ信号処理装置20において第2位置情報生成部F25を設けた点を除いて、図17に示すオーディオ信号処理システム1Aと同様に構成されている。
【0063】
オーディオ信号処理システム1Cの端末装置10において、方向変換部F17はCPU100に相当し、基準位置Prefを示す基準位置情報、所定位置Pを示す所定位置情報、及び仮想音源が配置される空間の境界を示す境界情報に基づいて、所定位置Pから見た仮想音源の方向である第1方向を示す第1方向情報を基準位置Prefから見た仮想音源の方向である第2方向を示す第2方向情報に変換する。
【0064】
具体的には、図16を参照して説明したように、仮想音源位置情報は、(xv, yp+sin[180-θa-atan{(ya-yp)/xp}])となる。基準位置Prefから見た仮想音源の角度θvは以下の式で与えられる。
θv=atan(yv/xv) ……式(4)
yvは式(3)で表すことができるので、
θv=atan[{yp+sin(180-θa-atan((ya-yp)/xp))}/xv] ……式(5)
式(5)において、θvは第2方向情報であり、θaは所定位置Pから見た仮想音源の方向である第1方向を示す第1方向情報であり、xvは仮想音源が配置される空間の境界を示す境界情報である。
第1制御部F16は、第1通信部F15を用いて、第2方向情報である角度θvをオーディオ信号処理装置20に送信させる。
【0065】
また、オーディオ信号処理システム1Bのオーディオ信号処理装置20において、第2位置情報生成部F25はCPU210に相当し、境界情報、及び第2通信部F21を用いて受信した第2方向情報に基づいて、仮想音源の位置を示す仮想音源位置情報を生成する。
上述した式(4)より、yv/xv=tanθvであるから、yv=xv・tanθvとなる。xvは境界情報として与えられているので、CPU210は、仮想音源位置情報(xv,yv)を生成することができる。なお、境界情報は、端末装置10から受信したものであってもよいし、利用者Aがオーディオ信号処理装置20に対して入力したものであってもよい。あるいは、境界情報は、各スピーカSP1〜SP5の大きさを考慮して、リスニングルーム内に配置可能な最大の位置を囲う長方形を表すものであってもよい
信号生成部F22は、第2位置情報生成部F25で生成した仮想音源位置情報の他、スピーカ位置情報及び所定位置情報を用いて、所定位置Pにおいて仮想音源から音が出ているように聞こえるように入力オーディオ信号IN1〜IN5に音響効果を付与した出力オーディオ信号OUT1〜OUT5を生成する。
【0066】
この変形例によれば、上述した実施形態と同様に、利用者Aは、所定位置Pで視聴する場合に、所定位置Pにおいて仮想音源の方向である第1方向に向けて端末装置10を操作するだけで、仮想音源を予め定められた空間の境界上に配置することができる。また、オーディオ信号処理装置20に送信されるのは、基準位置Prefから見た仮想音源の方向である。オーディオ信号処理装置20において、基準位置Prefからの距離と方向とに基づいてスピーカ位置情報を生成し、境界情報が後述するように基準位置Prefからの距離で与えられる場合には、仮想音源位置情報を生成するプログラムモジュールはスピーカ位置情報を生成するプログラムモジュールと共通化することができる。
【0067】
(3)上述した実施形態では、仮想音源が配置される空間の境界の一例としてリスニングルームの壁を取り上げて説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、基準位置Prefから等距離にある空間を境界としてもよい。
図20を参照して、基準位置Prefから等距離にある円上に仮想音源を配置する場合の仮想音源位置Vの算出方法について説明する。円の半径をRとすると、円は式(6)で表すことができる。
R2=y2+x2……式(6)
また、所定位置Pと仮想音源位置情報(xv,yv)とを通る直線は、y=tanθc.・x+bとなる。この直線は座標(xp,yp)を通るので、上記式に代入すると、b=yp-tanθc・xpを得る。よって式(7)が得られる。
y=tanθc.・x+(yp-tanθc・xp) ……式(7)
【0068】
端末装置10の第1位置情報生成部F14は、例えば、式(6)及び式(7)の連立方程式を解くことによって、仮想音源位置情報(xv,yv)を算出することができる。
なお、上述した変形例(1)で説明したオーディオ信号処理システム1Bの端末装置10において、方向変換部F17は、式(8)を用いて第1方向の角度θaを第2方向の角度θvに変換することができる。
θv=atan(yv/(R2-yv2)1/2) ……式(8)
【0069】
(4)上述した実施形態では、複数のスピーカSP1〜SP5の各位置を示すスピーカ位置情報をオーディオ信号処理装置20で生成したが、本発明はこれに限定されるものではなく、端末装置10でスピーカ位置情報を生成してもよい。この場合、オーディオ信号処理装置20から複数のスピーカSP1〜SP5の各距離を端末装置10に送信し、端末装置10において、複数のスピーカSP1〜SP5の各方向と各距離とに基づいて、スピーカ位置情報を算出してもよい。更に、端末装置10で生成したスピーカ位置情報をオーディオ信号処理装置20に送信すればよい。
【0070】
(5)上述した実施形態では、複数のスピーカSP1〜SP5の各方向の測定において、スピーカSP1を所定の目標とし、所定の目標に対する角度を方向として出力した。本発明は、これに限定されるものではなく、リスニングルームに配置されているなんらかの目標を基準とし、基準に対する角度を方向として測定してもよい。
例えば、リスニングルーム内にテレビが配置されている場合に、端末装置10は、テレビを目標とし、目標に対する角度を方向として出力してもよい。
【0071】
(6)上述した実施形態では、複数のスピーカSP1〜SP5及び仮想音源が、2次元に配置されているものとしたが、図21に示すように3次元に複数のスピーカSP1〜SP7及び仮想音源を配置してもよい。この例では、基準位置Prefから見て、左前方の斜め上にスピーカSP6が配置され、右前方の斜め上にスピーカSP7が配置されている。このように3次元に複数のスピーカSP1〜SP7が配置されている場合であっても、複数のスピーカSP1〜SP7の各方向を、所定の目標であるスピーカSP1を基準として各スピーカSP2〜SP7の角度を測定すればよい。また、端末装置10において所定位置Pから見た仮想音源の第1方向及び境界情報から仮想音源位置情報を算出し、これをオーディオ信号処理装置20に送信してもよいし、あるいは、第1方向を基準位置Prefから見た仮想音源の方向である第2方向に変換し、オーディオ信号処理装置20に送信してもよい。
【0072】
(7)上述した実施形態では、端末装置10を仮想音源の方向に向けて入力部F11を操作することによって、仮想音源位置情報を生成したが、本発明はこれに限定されるものではなく、画面をタップすることによって、仮想音源の位置を特定してもよい。
例えば、図22(A)に示すようにリスニングルーム内の複数のスピーカSP1〜SP5を画面に表示し、利用者Aに仮想音源を画面上に配置することを促してもよい。この場合、利用者Aが画面をタップすると、CPU100は、タップ位置に基づいて仮想音源位置情報を生成してもよい。あるいは、図22(B)に示すようにカーソルCを表示し、利用者Aが仮想音源を配置したい位置にカーソルCを移動させ、設定ボタンBを操作することを促してもよい。
【0073】
(8)上述した実施形態では、仮想音源は利用者が指定可能な任意の空間の境界に沿って配置することが可能であり、そのような空間の一例としてリスニングルームの形状を一例として説明した。ここで、リスニングルームの形状を規定値として端末装置10のメモリ110に記憶しておき、利用者が端末装置10を操作することによって、利用者が規定値で表される空間を任意に変更できるようにしてもよい。例えば、端末装置10を下向きにあおると、空間の相似を保ち縮小し、上向きにあおると、空間の相似を保ち拡大するようにしてもよい。この場合、端末装置10のCPU100は、ジャイロセンサ151のピッチ角(図4参照)を検出し、空間を利用者の指示に従って縮小拡大し、その結果を境界情報に反映させてもよい。このような操作系を採用することによって、利用者は、簡易な操作で空間の境界をスケーラブルに相似変化させることが可能となる。
【0074】
(9)上述した実施形態では、端末装置10を用いて仮想音源の第1方向を指定する際に、所定位置から目標であるスピーカSP1に端末装置10を向けて設定操作を行うことにより、角度のリセットを行ったが(図13に示すS31〜S33)、本発明はこれに限定されるものではなく、角度をリセットできるのであれば、どのような方法を採用してもよい。例えば、図23に示すように、所定位置Pにおいて、利用者Uが基準位置Prefから所定の目標を見た方向Q1と平行な方向Q2に端末装置10を向けて設定操作することによって、角度をリセットしてもよい。
この場合、測定した角度をθdとすると、θc=90-θdとなるので、
yv=sinθc+yp
=yp+sin(90-θd)
よって、仮想音源位置Vを示す仮想音源位置情報は、(xv, yp+sin(90-θd))となる。
【符号の説明】
【0075】
1A,1B,1C…オーディオ信号処理システム、10…端末装置、20…オーディオ信号処理装置、F11…入力部、F12…方向センサ、F13…取得部、F14…第1位置情報生成部、F15…第1通信部、F16…第1制御部、F17…方向変換部、F21…第2通信部、F22…信号生成部、F23…第2制御部、F24…記憶部、F25…第2位置情報生成部。
図1
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