(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6201462
(24)【登録日】2017年9月8日
(45)【発行日】2017年9月27日
(54)【発明の名称】電動式移動棚の安全バー装置
(51)【国際特許分類】
A47B 53/02 20060101AFI20170914BHJP
B65G 1/10 20060101ALI20170914BHJP
【FI】
A47B53/02 501G
B65G1/10 D
【請求項の数】5
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2013-141164(P2013-141164)
(22)【出願日】2013年7月4日
(65)【公開番号】特開2015-12982(P2015-12982A)
(43)【公開日】2015年1月22日
【審査請求日】2016年6月27日
(73)【特許権者】
【識別番号】000139780
【氏名又は名称】株式会社イトーキ
(74)【代理人】
【識別番号】100074561
【弁理士】
【氏名又は名称】柳野 隆生
(74)【代理人】
【識別番号】100124925
【弁理士】
【氏名又は名称】森岡 則夫
(74)【代理人】
【識別番号】100141874
【弁理士】
【氏名又は名称】関口 久由
(74)【代理人】
【識別番号】100163577
【弁理士】
【氏名又は名称】中川 正人
(72)【発明者】
【氏名】高橋 洋二
【審査官】
大谷 純
(56)【参考文献】
【文献】
特開平05−301606(JP,A)
【文献】
特開2012−074393(JP,A)
【文献】
特開2009−179474(JP,A)
【文献】
実開平04−066932(JP,U)
【文献】
実開昭62−100036(JP,U)
【文献】
特開平09−235005(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A47B 53/02
B65G 1/10
H01H 13/00−13/88
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数台の移動棚をそれらの収納面に対して直交する方向に敷設されたレールに沿って移動可能に配置し、隣接する移動棚の間に作業通路を形成し、該作業通路に面する移動棚の台車枠に非常停止機能を付与する電動式移動棚の安全バー装置であって、
前記台車枠の側面に沿って取付ける長尺のベース部材と、
前記ベース部材の外側に位置する作動部材と、
前記ベース部材に対して作動部材を変位可能に保持する保持機構体と、
前記ベース部材の内部に取付けたリミットスイッチと、
前記ベース部材の内部であって長手方向に取付け、前記リミットスイッチの操作部と前記作動部材の裏面に当接する部分を有する板ばねと、
を備えたことを特徴とする電動式移動棚の安全バー装置。
【請求項2】
複数台の移動棚をそれらの収納面に対して直交する方向に敷設されたレールに沿って移動可能に配置し、隣接する移動棚の間に作業通路を形成し、該作業通路に面する移動棚の台車枠に非常停止機能を付与する電動式移動棚の安全バー装置であって、
前記台車枠の側面に沿って外側からネジで取付ける長尺のベース部材と、
前記ベース部材の外側に位置し、前記ネジを挿通する作業穴を設けた作動部材と、
前記ベース部材に対して作動部材を水平方向移動可能に摺動案内するとともに、該作動部材が突出する方向に弾性付勢する複数の保持機構体と、
前記ベース部材の内部に取付けたリミットスイッチと、
前記ベース部材の内部に取付け、前記リミットスイッチの操作部と前記作動部材の裏面に当接する部分を有する板ばねと、
を備えたことを特徴とする電動式移動棚の安全バー装置。
【請求項3】
前記リミットスイッチは、サーフェイス・マウント型のタクタイルスイッチであり、前記ベース部材の内面に沿って設ける配線基板に半田付けするともに、前記板ばねの基部を配線基板に固定し、該板ばねの遊端部には前記タクタイルスイッチの操作ボタンに当接する作動部を屈曲形成するとともに、前記作動部材の裏面に当接する圧接部を屈曲形成してなる請求項1又は2記載の電動式移動棚の安全バー装置。
【請求項4】
前記配線基板の両側部に前記タクタイルスイッチをそれぞれ半田付けするとともに、該配線基板の中央部に左右対称形の前記板ばねの中央基部を固定し、両側の作動部をそれぞれ前記タクタイルスイッチの操作ボタンに位置させ、更に配線基板の両端には前記タクタイルスイッチに接続するコネクタをネジ止め若しくは半田付けして固定してなる請求項3記載の電動式移動棚の安全バー装置。
【請求項5】
前記保持機構体は、前記ベース部材の基板に設けた開口を貫通し、裏面側へ突出した状態で該基板に保持したカラー組体と、前記作動部材の基板裏面に突設し、前記カラー組体の中心孔に摺動可能に貫通するロッド組体と、前記カラー組体と作動部材の基板裏面との間で前記ロッド組体に巻装した圧縮コイルばねと、前記カラー組体から突出したロッド組体の先端に設けたストッパーとよりなり、前記台車枠には前記保持機構体を挿通する逃がし穴を設けてなる請求項1〜4何れか1項に記載の電動式移動棚の安全バー装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電動式移動棚の安全バー装置に係わり、更に詳しくは作業通路内で移動中の移動棚を緊急停止させ、若しくは移動棚を移動させないようにするための電動式移動棚の安全バー装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、複数台の移動棚をそれらの収納面に対して直交する方向に敷設されたレールに沿って移動可能に配置し、各移動棚は駆動モータによって独立に移動可能であり、あるいは集合した複数の移動棚群が一体となって移動可能であり、特定の移動棚又は特定の移動棚を起点として複数の移動棚群を移動させることにより、特定の移動棚と移動しない隣接する移動棚の間に作業通路を形成し、該通路内に作業者が入って収納面から物品を出し入れすることができる電動式移動棚装置は各種提供されている。
【0003】
通常時の移動棚の移動操作は、各移動棚の正面の制御パネルに設けられたスイッチの操作によって行うが、作業通路内の作業者とは別の作業者がこの操作を行い、不意に移動棚が移動をすると危険である。従って、この種の電動式移動棚装置には、作業通路内に作業者が入っている場合、又は作業通路内に障害物が存在する場合に、不意に移動棚が移動して作業者や障害物に移動棚が衝突することを防止するために、移動棚の台車枠に接触すると作動し、移動棚を非常停止させることができる安全バーが備えられている。
【0004】
例えば、特許文献1には、電動式移動棚装置の各移動棚の移動方向側面にリミットスイッチに関係づけて取付ける安全バー取付構造であって、リミットスイッチは取付用の螺軸とその先端から突出した出没可能な操作ピンを有し、該リミットスイッチの螺軸を移動棚の取付面に開口した取付孔に内方から挿通するとともに、該螺軸に外方寄りにフランジ部を有する保持部材の中心螺孔を螺合して締着し、前記操作ピンの先端に当止板を有するビスを螺合するとともに、該当止板と前記螺軸若しくは保持部材間にコイルばねを圧縮介装し、断面略コ字形の長尺部材の両端縁を対向方向に折曲して係止縁を形成した安全バーを、その係止縁を前記保持部材のフランジ部に係止するとともに、内面に前記ビス頭を当接して装着してなる構造が開示されている。しかし、この構造は、リミットスイッチの本体部を台車枠の内側に配置し、外側からリミットスイッチの螺軸に保持部材を螺合するため、取付作業に手間がかかる。また、安全バーを保持部材のフランジ部に、リミットスイッチの操作ピンを押し込んで作動させるのに十分な移動量を待たせた状態で係止し、螺軸部分に設けた操作ピンの復帰用の小さなコイルばねで枠体から離れる方向に弾性付勢しているだけであるので、安全バーの作動時の姿勢が不安定になる。
【0005】
また、特許文献2には、安全バーの作動時の案内と復帰用の弾性付勢手段をリミットスイッチとは独立して設け、安全バーの動作を安定にした構造が提供されている。その構造の一つは、移動棚の台車枠に貫通させてスリーブ状案内部材を取付け、断面略コ字形の案内バーの裏面側に突設したロッドを前記スリーブに貫通させ、該ロッドの内端に抜止め用の係止部を設けるとともに、前記案内バーの裏面と案内部材との間で前記ロッドにコイルスプリングを巻回した構造である。リミットスイッチは、安全バーの内部に固定し、リミットスイッチの操作ピンが台車枠に当たるようになっている。この場合、安全バーの動作は安定するが、前記同様に台車枠の位置側での作業が必要であり、やはら取付作業性が悪い。もう一つは、台車枠に外側から取付ける取付基板の上縁に安全バーの上縁を蝶着するとともに、前記取付基板に固定した板ばねで安全バーを突出方向に弾性付勢し、リミットスイッチを取付基板に取付け、その操作ピンが安全バーの裏面に当たる構造である。しかし、この構造は、取付基板と安全バーを複数の蝶番で連結し、また通常状態で安全バーが必要以上に突出しないように、下端部にストップバネを設ける必要があり、駆動機構が複雑になり、また台車枠へ取付けるには、ストップバネを解除して安全バーを開放して取付基板を露出させ、台車枠に取付基板をネジ止めする必要があり、その取付作業は簡単とは言えない。何れもリミットスイッチの操作ピンが、作動時に台車枠や安全バーに直接当たる構造であるので、衝撃が大きければ破損することも考えられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】実公平8−900号公報
【特許文献2】特公平8−9411号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
そこで、本発明が前述の状況に鑑み、解決しようとするところは、必要部品をユニット化して移動棚の台車枠に外側から簡単な作業で取付けることが可能であり、また安全バーの動作が安定であるとともに、安全バーが作動した後の復帰が確実であり、更に操作ピンのストロークが短い小型のリミットスイッチを用いてコストダウンを図ることが可能な電動式移動棚の安全バー装置を提供する点にある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、前述の課題解決のために、複数台の移動棚をそれらの収納面に対して直交する方向に敷設されたレールに沿って移動可能に配置し、隣接する移動棚の間に作業通路を形成し、該作業通路に面する移動棚の台車枠に非常停止機能を付与する電動式移動棚の安全バー装置であって、前記台車枠の側面に沿って取付ける長尺のベース部材と、前記ベース部材の外側に位置する作動部材と、前記ベース部材に対して作動部材を変位可能に保持する保持機構体と、前記ベース部材の内部に取付けたリミットスイッチと、前記ベース部材の内部
であって長手方向に取付け、前記リミットスイッチの操作部と前記作動部材の裏面に当接する部分を有する板ばねと、を備えたことを特徴とする電動式移動棚の安全バー装置を構成した(請求項1)。
【0009】
また、本発明は、複数台の移動棚をそれらの収納面に対して直交する方向に敷設されたレールに沿って移動可能に配置し、隣接する移動棚の間に作業通路を形成し、該作業通路に面する移動棚の台車枠に非常停止機能を付与する電動式移動棚の安全バー装置であって、前記台車枠の側面に沿って外側からネジで取付ける長尺のベース部材と、前記ベース部材の外側に位置し、前記ネジを挿通する作業穴を設けた作動部材と、前記ベース部材に対して作動部材を水平方向移動可能に摺動案内するとともに、該作動部材が突出する方向に弾性付勢する複数の保持機構体と、前記ベース部材の内部に取付けたリミットスイッチと、前記ベース部材の内部に取付け、前記リミットスイッチの操作部と前記作動部材の裏面に当接する部分を有する板ばねと、を備えたことを特徴とする電動式移動棚の安全バー装置を構成した(請求項2)。
【0010】
また、前記リミットスイッチは、サーフェイス・マウント型のタクタイルスイッチであり、前記ベース部材の内面に沿って設ける配線基板に半田付けするともに、前記板ばねの基部を配線基板に固定し、該板ばねの遊端部には前記タクタイルスイッチの操作ボタンに当接する作動部を屈曲形成するとともに、前記作動部材の裏面に当接する圧接部を屈曲形成してなることが好ましい(請求項3)。
【0011】
そして、前記配線基板の両側部に前記タクタイルスイッチをそれぞれ半田付けするとともに、該配線基板の中央部に左右対称形の前記板ばねの中央基部を固定し、両側の作動部をそれぞれ前記タクタイルスイッチの操作ボタンに位置させ、更に配線基板の両端には前記タクタイルスイッチに接続するコネクタをネジ止め若しくは半田付けして固定してなることがより好ましい(請求項4)。
【0012】
ここで、前記保持機構体は、前記ベース部材の基板に設けた開口を貫通し、裏面側へ突出した状態で該基板に保持したカラー組体と、前記作動部材の基板裏面に突設し、前記カラー組体の中心孔に摺動可能に貫通するロッド組体と、前記カラー組体と作動部材の基板裏面との間で前記ロッド組体に巻装した圧縮コイルばねと、前記カラー組体から突出したロッド組体の先端に設けたストッパーとよりなり、前記台車枠には前記保持機構体を挿通する逃がし穴を設けてなることが好ましい(請求項5)。
【発明の効果】
【0013】
以上にしてなる請求項1に係る発明の電動式移動棚の安全バー装置は、複数台の移動棚をそれらの収納面に対して直交する方向に敷設されたレールに沿って移動可能に配置し、隣接する移動棚の間に作業通路を形成し、該作業通路に面する移動棚の台車枠に非常停止機能を付与する電動式移動棚の安全バー装置であって、前記台車枠の側面に沿って取付ける長尺のベース部材と、前記ベース部材の外側に位置する作動部材と、前記ベース部材に対して作動部材を変位可能に保持する保持機構体と、前記ベース部材の内部に取付けたリミットスイッチと、前記ベース部材の内部
であって長手方向に取付け、前記リミットスイッチの操作部と前記作動部材の裏面に当接する部分を有する板ばねと、を備えたので、必要部品がユニット化され、リミットスイッチの操作部を板ばねを介して操作することにより、作動部材に偏った外力が加わって傾いた姿勢になっても確実にリミットスイッチの操作部を押すことができ、更にリミットスイッチに過度な負荷がかからず、破損、故障の発生率を大幅に低減できる。
【0014】
請求項2に係る発明の電動式移動棚の安全バー装置は、複数台の移動棚をそれらの収納面に対して直交する方向に敷設されたレールに沿って移動可能に配置し、隣接する移動棚の間に作業通路を形成し、該作業通路に面する移動棚の台車枠に非常停止機能を付与する電動式移動棚の安全バー装置であって、前記台車枠の側面に沿って外側からネジで取付ける長尺のベース部材と、前記ベース部材の外側に位置し、前記ネジを挿通する作業穴を設けた作動部材と、前記ベース部材に対して作動部材を水平方向移動可能に摺動案内するとともに、該作動部材が突出する方向に弾性付勢する複数の保持機構体と、前記ベース部材の内部に取付けたリミットスイッチと、前記ベース部材の内部に取付け、前記リミットスイッチの操作部と前記作動部材の裏面に当接する部分を有する板ばねと、を備えたので、必要部品がユニット化され、移動棚の台車枠に外側から簡単な作業で取付けることができ、また安全バー装置を構成する作動部材の動作が安定であるとともに、作動部材が押されて作動した後の復帰が確実であり、更にリミットスイッチの操作部を板ばねを介して操作することにより、作動部材に偏った外力が加わって傾いた姿勢になっても確実にリミットスイッチの操作部を押すことができ、更にリミットスイッチに過度な負荷がかからず、破損、故障の発生率を大幅に低減できる。また、リミットスイッチを操作するための板ばねで、作動部材の復帰動作を補助することができるので、前記保持機構体と共に作動部材の動作を安定化させることができる。
【0015】
請求項3によれば、前記リミットスイッチは、サーフェイス・マウント型のタクタイルスイッチであり、前記ベース部材の内面に沿って設ける配線基板に半田付けするともに、前記板ばねの基部を配線基板に固定し、該板ばねの遊端部には前記タクタイルスイッチの操作ボタンに当接する作動部を屈曲形成するとともに、前記作動部材の裏面に当接する圧接部を屈曲形成してなるので、安価で小型の汎用タクタイルスイッチを用いて省スペースが図れ、しかも配線基板に半田付けで固定するのでコストダウンが図れ、また小型で操作ボタンのストロークが短いタクタイルスイッチを用いるにも係わらず、板ばねを介して操作ボタンを操作するので、大きな作動部材の動作を板ばねで吸収することができ、タクタイルスイッチに過大な負荷がかからない。
【0016】
請求項4によれば、前記配線基板の両側部に前記タクタイルスイッチをそれぞれ半田付けするとともに、該配線基板の中央部に左右対称形の前記板ばねの中央基部を固定し、両側の作動部をそれぞれ前記タクタイルスイッチの操作ボタンに位置させ、更に配線基板の両端には前記タクタイルスイッチに接続するコネクタをネジ止め若しくは半田付けして固定してなるので、配線基板にタクタイルスイッチとコネクタを集中してコンパクトにまとめることができ、特に配線路が形成されたプリント配線基板を用いれば、タクタイルスイッチとコネクタの電気接続作業の手間が省け、更にコネクタを利用して複数のタクタイルスイッチ、更には直列に配した複数の安全バー装置を簡単に接続することができる。また、板ばねは左右対称形であり、中央の基部を配線基板に固定するので、作動部材が変位して板ばねの両圧接部に応力が加わって弾性変形したとしても、中央基部の固定部にはバランス良く力が作用するので、固定部の耐久性が高くなる。
【0017】
請求項5によれば、前記保持機構体は、前記ベース部材の基板に設けた開口を貫通し、裏面側へ突出した状態で該基板に保持したカラー組体と、前記作動部材の基板裏面に突設し、前記カラー組体の中心孔に摺動可能に貫通するロッド組体と、前記カラー組体と作動部材の基板裏面との間で前記ロッド組体に巻装した圧縮コイルばねと、前記カラー組体から突出したロッド組体の先端に設けたストッパーとよりなり、前記台車枠には前記保持機構体を挿通する逃がし穴を設けてなるので、台車枠に安全バー装置を取付けるときに、前記保持機構体を逃がし穴に挿通し、前記作動部材の作業穴からネジとドライバーを挿入してベース部材を台車枠にネジ止めするといった外側からのみの簡単な作業で取付けることができ、また保持機構体を逃がし穴に挿通することで、台車枠に対するベース部材の位置決めが正確にでき、それにより通常のネジを用いる場合には台車枠に形成した螺孔、タッピンネジを用いる場合には台車枠に形成した下穴の位置を確認しなくても締結できる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】本発明に係る電動式移動棚の全体斜視図である。
【
図2】本発明の安全バー装置の全体分解斜視図である。
【
図3】移動棚の台車枠と本発明の安全バー装置の関係を示す斜視図である。
【
図4】本発明の安全バー装置の要部拡大斜視図である。
【
図5】移動棚の台車枠に本発明の安全バー装置を取付けた状態を示し、(a)は通常の状態を示す縦断面図、(b)は作動部材が押し込まれた非常停止の状態を示す縦断面図である。
【
図6】移動棚の台車枠に本発明の安全バー装置を取付ける状態を示す省略縦断面図である。
【
図7】本発明のタクタイルスイッチ周りの構造を示す部分縦断正面図である。
【
図8】同じく本発明のタクタイルスイッチ周りの構造を示す部分縦断平面図である。
【
図9】同じく本発明のタクタイルスイッチ周りの構造を示す部分縦断側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
次に、添付図面に示した実施形態に基づき、本発明を更に詳細に説明する。
図1は本発明に係る電動式移動棚を示し、
図2〜
図9は本発明の安全バー装置の詳細を示し、図中1は移動棚、2は収納面、3はレール、4は作業通路、5は台車枠、6は安全バー装置、7はベース部材、8は作動部材、9は保持機構体、10はリミットスイッチ、11は板ばねをそれぞれ示している。
【0020】
本発明に係る電動式移動棚は、
図1に示すように、複数台の移動棚1をそれらの収納面2に対して直交する方向に敷設されたレール3に沿って移動可能に配置し、各移動棚は駆動モータによって独立に移動可能であり、あるいは集合した複数の移動棚群が一体となって移動可能であり、特定の移動棚1又は特定の移動棚1を起点として複数の移動棚群を移動させることにより、特定の移動棚1Aと移動しない隣接する移動棚1Bの間に作業通路4を形成し、該通路4内に作業者が入って収納面2から物品を出し入れすることができるものである。そして、前記移動棚1の作業通路4に面する台車枠5に沿って、非常停止機能を付与する安全バー装置6を設けるのである。
【0021】
本発明の安全バー装置6は、
図2〜
図4に示すように、前記台車枠5の側面に沿って外側からネジで取付ける長尺のベース部材7と、前記ベース部材7の外側に位置し、前記ネジ12を挿通する作業穴13を設けた作動部材8と、前記ベース部材7に対して作動部材8を水平方向移動可能に摺動案内するとともに、該作動部材8が突出する方向に弾性付勢する複数の保持機構体9と、前記ベース部材7の内部に取付けたリミットスイッチ10と、前記ベース部材7の内部に取付け、前記リミットスイッチ10の操作部と前記作動部材8の裏面に当接する部分を有する板ばね11とを備えたものである。
【0022】
そして、安全バー装置6は、
図3及び
図6に示すように、前述の各部材を組み付けてユニット化した後、前記移動棚1の台車枠5の側面に外側から作業で複数のネジ12,…を用いて前記ベース部材7を締結する。具体的には、
図4に示すように、前記ベース部材7は、基板14の上下に外側(台車枠5から離れる方向)へ直角に折曲板15,15を形成した断面コ字形の長尺部材であり、前記基板14には所定の間隔で複数の取付孔16,…が形成されている。一方、前記作動部材8は、基板17の上下に内側(台車枠5に接近する方向)へ直角に折曲板18,18を形成した断面コ字形の長尺部材であり、前記ベース部材7を外被する大きさとなっており、前記基板17には前記取付孔16,…と対応する位置に作業穴13,…を形成したものである。また、前記台車枠5の側面には、
図3、
図5及び
図6に示すように、予め前記ベース部材7の取付孔16,…と対応する位置に下穴19,…を形成するとともに、前記ベース部材7から突出した少なくとも2つ以上の保持機構体9,…を挿通する逃がし穴20,…を形成している。そして、ユニット化された前記安全バー装置6を、前記台車枠5の各逃がし穴20にそれぞれ保持機構体9を挿通して位置決めし、前記作動部材8の作業穴13から前記ネジ12を先端に装着したドライバーを挿入し、前記ベース部材7の取付孔16に通して前記台車枠5の下穴19に螺合する。ここで、前記ネジ12をタッピンネジとしたが、下穴19の代わりに螺孔を形成しておき、通常のネジ12を螺合しても良い。
【0023】
更に詳しくは、前記保持機構体9は、
図3〜
図5に示すように、前記ベース部材7の基板14に設けた開口21を貫通し、裏面側へ突出した状態で該基板14に保持したカラー組体22と、前記作動部材8の基板17裏面に突設し、前記カラー組体22の中心孔23に摺動可能に貫通するロッド組体24と、前記カラー組体22と作動部材8の基板17裏面との間で前記ロッド組体24に巻装した圧縮コイルばね25と、前記カラー組体22から突出したロッド組体24の先端に設けたストッパー26とよりなる。前記作動部材8が、
図5(a)の通常の状態から、非常に前記圧縮コイルばね25による弾性付勢力に抗して押されると、
図5(b)のように前記ロッド組体24が前記カラー組体22で摺動案内されて押し込まれ、前記ストッパー26がカラー組体22の内端から離れ、前記作動部材8の基板17裏面にベース部材7の両折曲板15,15が当接するとともに、前記作動部材8の両折曲板18,18が台車枠5の側面に当接するまで変位する。前記作動部材8に加わる外力が無くなると、前記圧縮コイルばね25による弾性付勢力によって作動部材8が押し出され、前記ストッパー26がカラー組体22の内端に当接するまで変位して元の姿勢に復帰する。
【0024】
図4、
図7及び
図8に示すように、前記リミットスイッチ10は、サーフェイス・マウント型のタクタイルスイッチであり、前記ベース部材7の内面に沿って設ける配線基板27に半田付けするともに、前記板ばね11の基部11Aを配線基板27に固定し、該板ばね11の遊端部には前記タクタイルスイッチ10の操作ボタン10Aに当接する作動部11Bを屈曲形成するとともに、前記作動部材8の基板17裏面に当接する圧接部11Cを屈曲形成している。
【0025】
具体的には、前記配線基板27の両側部に前記タクタイルスイッチ10,10をそれぞれ半田付けするとともに、該配線基板27の中央部に左右対称形の前記板ばね11の中央基部11Aを固定し、両側の作動部11B,11Bをそれぞれ前記タクタイルスイッチ10,10の操作ボタン10A,10Aに位置させている。前記板ばね11は、中央部の基部11Aが平板状であり、そこから外側へ湾曲してU字状に膨らんで前記圧接部11Cを形成し、該圧接部11Cから内側にU字状に湾曲して前記作動部11Bを形成し、該作動部11Bから先端部にかけて再び外側へ膨らんで前記圧接部11Cを形成している。つまり、二つの圧接部11C,11Cの中間に作動部11Bを有するのである。前記圧接部11C,11Cは、前記作動部材8の基板17裏面に常時圧接しており、また前記作動部11Bは通常は前記タクタイルスイッチ10の操作ボタン10Aから若干離れた位置にあり、前記作動部材8が非常時に押されると、前記圧接部11C,11Cが押されて板ばね11が撓み、やがて作動部11Bが前記タクタイルスイッチ10の操作ボタン10Aに接触して該操作ボタン10AがOFFからON、あるいはONからOFFに切り替わり、非常停止信号が発生して移動棚1が非常停止する。更に、前記作動部材8が押し込まれても、前記板ばね11が変形するだけであり、該板ばね11の弾性変形力以上の外力が操作ボタン10Aに加わることはない。
【0026】
また、前記配線基板27の両端には前記タクタイルスイッチ10,10に接続するコネクタ28,28をネジ止め若しくは半田付けして固定している。ここで、前記配線基板27を、予め配線路が形成されたプリント配線基板とし、前記タクタイルスイッチ10,10とコネクタ28,28を半田付けすることにより、パーツの固定と相互配線を同時に行うようにすれば、コストダウンが図れる。また、この配線基板27に前記タクタイルスイッチ10,10とコネクタ28,28を設けたものを複数用意し、前記ベース部材7に所定間隔毎に取付けるようにすれば良い。ここで、前記配線基板27に、前記板ばね11の中央基部11Aを固定するには、
図4に示すように、ネジ29を板ばね11の中央基部11Aと配線基板27に設けた通孔30,31に挿通し、ベース部材7の基板14に形成した下穴若しくは螺孔32に螺合して、同時にベース部材7とも固定する。あるいは、配線基板27と前記板ばね11の中央基部11Aをリベットで固定し、配線基板27を両面粘着テープでベース部材7の基板14に接着して取付けても良い。尚、前記ネジ29でベース部材7の基板14に、配線基板27と板ばね11を取付ける場合には、前記ネジ29の先端が基板14から突出しないようにするか、若しくは前記台車枠5の側面に該ネジ29の先端を逃がす孔を設けておくことが必要である。
【0027】
前記コネクタ28には、配線コード33の図示しないコネクタを接続し、複数のタクタイルスイッチ10,…を接続する。ここで、
図9に示すように、配線コード33は前記ベース部材7の内部で下側折曲板15に沿って配線すれば邪魔になることはない。
【0028】
最後に、
図4及び
図5に基づいて、前記保持機構体9の構造を更に詳細に説明する。前記カラー組体22は、中心孔23を有する内側カラー34と該内側カラー34に外嵌する外側カラー35とからなる。前記内側カラー34は、前記ベース部材7の基板14に形成した円形の開口21に嵌挿する軸部34Aと前記基板14の内面に当接するフランジ部34Bとを有し、前記外側カラー35は、外径が前記フランジ部34Bと略同じ筒状のものである。先ず、前記内側カラー34の軸部34Aを前記ベース部材7の開口21に、内側から嵌挿し、前記フランジ部34Bを基板14の内面に当接する。それから、前記内側カラー34の軸部34Aに外側カラー35を外嵌して基板14の裏面に当接し、前記フランジ部34Bとで基板14を挟み込んで保持する。前記内側カラー34の軸部34Aと外側カラー35は特に固定する必要はないが、互いに密嵌する寸法が好ましく、また多少余裕のある嵌め合い寸法で接着剤を介在させて固定しても良い。前記カラー組体22を前記ベース部材7の基板14に貫通状態で固定した状態では、前記内側カラー34の軸部34Aと外側カラー35の端面は面一になっている。
【0029】
前記ロッド組体24は、前記作動部材8の基板17の裏面に直角に突設するボルト36と、該ボルト36の軸部36Aに外挿する金属製のスリーブ37とからなる。前記ボルト36の軸部36Aは、前記作動部材8の基板17の裏面に溶接固定したナット部材38に螺合して突設する。前記ナット部材38は、フランジ部38Aを前記作動部材8の基板17の裏面に溶接し、該フランジ部38Aの中央部に突設した雌ねじ部38Bを有し、該雌ねじ部38Bに前記ボルト36の軸部36Aを螺合する。また、前記ボルト36の軸部36Aには前記スリーブ37を外挿するとともに、頭部36Bとスリーブ37との間に平ワッシャ39を挟んだ状態で、前記軸部36Aを螺合すると、前記スリーブ37が前記ナット部材38の雌ねじ部38Bに圧接した状態で、一体なったロッド組体24が構成される。このロッド組体24の長さは、前記カラー組体22の長さよりも長く設定され、前記内側カラー34のフランジ部34Bと、前記作動部材8の基板17裏面に固定したナット部材38のフランジ部38Aとの間で、前記スリーブ37に前記圧縮コイルばね25を巻回している。前記ストッパー26は、前記ボルト36の頭部36Bと平ワッシャ39で構成されている。ここで、前記ボルト36の頭部36Bとスリーブ37の外径は、前記外側カラー35の外径よりも小さく設定し、前記開口21を通過できるようになっている。
【0030】
前記保持機構体9によって、前記ベース部材7と作動部材8とを連結した状態では、
図3に示すように、前記ロッド組体24とストッパー26は、ベース部材7の基板14から大きく突出している。ここで、前記ロッド組体24を長くすることによって、前記ロッド組体24を安定して摺動案内できるのである。また、前記ロッド組体24の内側カラー34のフランジ部34Bは、前記圧縮コイルばね25の弾性付勢力によって常にベース部材7の基板14に押し付けられ、また前記外側カラー35は、前記ストッパー26を構成する平ワッシャ39に当接するので、前記内側カラー34の軸部34Aに固定していなくても脱落することはない。
【符号の説明】
【0031】
1,1A、1B 移動棚、 2 収納面、
3 レール、 4 作業通路、
5 台車枠、 6 安全バー装置、
7 ベース部材、 8 作動部材、
9 保持機構体、 10 リミットスイッチ(タクタイルスイッチ)、
10A 操作ボタン、 11 板ばね、
11A 基部、 11B 作動部、
11C 圧接部、 12 ネジ、
13 作業穴、 14 基板、
15 折曲板、 16 取付孔、
17 基板、 18 折曲板、
19 下穴、 20 逃がし穴、
21 開口、 22 カラー組体、
23 中心孔、 24 ロッド組体、
25 圧縮コイルばね、 26 ストッパー、
27 配線基板、 28 コネクタ、
29 ネジ、 30 通孔、
31 通孔、 32 螺孔、
33 配線コード、 34 内側カラー、
34A 軸部、 34B フランジ部、
35 外側カラー、 36 ボルト、
36A 軸部、 36B 頭部、
37 スリーブ、 38 ナット部材、
38A フランジ部、 38B 雌ねじ部、
39 平ワッシャ。