(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、上記した特許文献1記載の方法では、ユーザの使用環境が不明であるため、画一的に稼働時間でメンテナンス時期を判断すると、部品の消耗や性能低下の予測が不確実になるという問題があった。例えば、過酷な環境で使用している場合には、稼働時間が短くてもメンテナンスが早期に必要となる。このため、メンテナンス時期を報せるための稼働時間に達していない状態で性能低下が現れたとしても、その性能低下を早期に検出して報せることができないという問題があった。そして、この問題を解消するためにメンテナンス時期を報せるタイミングを早めてしまうと、メンテナンス時期を報せるタイミングが早過ぎて不要なメンテナンスが発生してしまうおそれがあった。
【0005】
また、上記した特許文献2記載の方法では、機械の故障を検出することはできるが、ユーザの使用環境を考慮して正確に機械の故障を判定することはできなかった。このため、上記した特許文献1記載の方法と同様に、機械故障の判定が不確実になるという問題があった。
【0006】
このように、従来の方法では、メンテナンス時期を報せるタイミングが早過ぎて不要なメンテナンスが発生したり、メンテナンス時期を報せるタイミングが遅過ぎるために異常状態又は故障状態まで使い続けてしまうことで機械の使用ができなくなって作業が滞る上に修理コストが嵩んだり、といった問題があった。
【0007】
そこで、本発明は、メンテナンスの必要性などを診断するに当たり、精度の高い診断を可能とするとともに、ユーザの使用環境を考慮して機械の故障を未然に防ぐことができる空気圧縮機を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、上記した課題を解決するためになされたものであり、以下を特徴とする。
【0009】
(請求項1)
請求項1に記載の発明は、以下の点を特徴とする。
すなわち、請求項1に記載の空気圧縮機は、圧縮空気を生成して貯留可能な空気圧縮機であって、圧縮空気を生成するためのシリンダを備えた圧縮機構と、前記圧縮機構を駆動させるモータと、前記圧縮機構によって生成した圧縮空気を貯留するためのタンクと、前記圧縮機構による圧縮時間、前記モータの消費電流値、前記モータの回転数の少なくともいずれかの検出結果を基に空気圧縮機の状態を自己診断する自己診断手段と、電源電圧、温度、タンク圧、標高、湿度の少なくともいずれかの環境情報を検出する環境情報検出手段と、
前記自己診断手段の開始契機となるスイッチと、を備え、
前記スイッチが操作されたときに、前記環境情報検出手段は、前記自己診断手段による前記自己診断の実行前に環境情報を検出
し、前記自己診断手段は、前記環境情報検出手段により検出された環境情報が所定の条件を満たしていないと判断した場合には、環境情報が所定の条件を満たしていないことを報知して、自己診断を実行せず、また、前記自己診断手段は、自己診断中に前記空気圧縮機が操作されたり圧縮空気が使用されたりしたときに、自己診断がキャンセルされたことを報知して、自己診断をキャンセルすることを特徴とする。
【0010】
【0011】
【発明の効果】
【0012】
請求項1に記載の発明は上記の通りであり、圧縮機構による圧縮時間、モータの消費電流値、モータの回転数の少なくともいずれかの検出結果を基に空気圧縮機の状態を自己診断する自己診断手段と、電源電圧、温度、タンク圧、標高、湿度の少なくともいずれかの環境情報を検出する環境情報検出手段と、を備え、前記環境情報検出手段は、前記自己診断手段による前記自己診断の実行前に環境情報を検出する。すなわち、自己診断によってメンテナンスの必要性などを診断するに当たり、圧縮性能に影響のある環境情報を事前に検出するため、環境情報に応じて正確に自己診断を行うことができる。
【0013】
例えば、環境情報として電源電圧を使用した場合、電源電圧が低い場合には圧縮性能が低下していても機械の故障や部品の損耗によるものではない。よって、このような場合には、圧縮性能の低下が機械の故障や部品の損耗とは別の理由で発生していることが判断できるので、余計なメンテナンスの報知を省略することができる。
【0014】
このような構成によれば、メンテナンスの必要性などを診断するに当たり、精度の高い診断が可能となるので、適切にメンテナンス時期を報知することができる。例えば、メンテナンス時期を報せるタイミングが早過ぎて不要なメンテナンスが発生したり、メンテナンス時期を報せるタイミングが遅過ぎるために異常状態又は故障状態まで使い続けてしまうことで機械の使用ができなくなって作業が滞る上に修理コストが嵩んだり、といった問題が発生しない。
【0015】
また、環境情報を検出することで、環境情報に問題があれば、最適な環境での使用をユーザに促すことができる。例えば、極端な性能低下を誘発する延長コードの多用や低温環境等の環境情報を検出してユーザに報せることも可能となるので、機械の故障や部品の損耗を未然に防ぐことができる。
【0016】
また、
前記自己診断手段は、前記環境情報検出手段により検出された環境情報が所定の条件を満たしていないと判断した場合には、環境情報が所定の条件を満たしていないことを報知する。すなわち、環境情報が所定の条件を満たしていない場合(例えば、電源電圧が低過ぎるなど)には、圧縮性能の低下が見込まれるため、自己診断が不正確となるおそれがある。例えば、自己診断によって圧縮性能の低下が検出されても、その原因が環境条件のみによるものか、環境条件に加えて機械の故障や部品の損耗が発生しているためなのかの判断ができない場合がある。このような状態で自己診断結果を報知しても、ユーザにとって有益でない可能性があるため、環境情報が所定の条件を満たしていないと判断した場合には環境情報が所定の条件を満たしていないことを報知する。そして、環境情報が所定の条件を満たしている環境で再度自己診断を行うように促すことができる。
【0017】
また、
前記自己診断手段は、前記環境情報検出手段により検出された環境情報が所定の条件を満たしていないと判断した場合には、自己診断を実行しない。すなわち、環境情報が所定の条件を満たしていない場合(例えば、電源電圧が低過ぎるなど)には、圧縮性能の低下が見込まれるため、自己診断が不正確となるおそれがある。例えば、自己診断によって圧縮性能の低下が検出されても、その原因が環境条件のみによるものか、環境条件に加えて機械の故障や部品の損耗が発生しているためなのかの判断ができない場合がある。このような状態で自己診断結果を報知しても、ユーザにとって有益でない可能性があるため、環境情報が所定の条件を満たしていないと判断した場合には自己診断を実行しない。そして、環境情報が所定の条件を満たしている環境で再度自己診断を行うように促すことができる。
【発明を実施するための形態】
【0019】
本実施形態に係る空気圧縮機10は、圧縮空気を生成して貯留可能に形成されており、
図1に示すように、圧縮空気を生成するためのシリンダを備えた圧縮機構11と、前記圧縮機構11によって生成した圧縮空気を貯留するためのタンク14と、を備えている。
【0020】
圧縮機構11は、空気圧縮機10に内蔵されたモータ12によって駆動されるものであり、圧縮ピストンをシリンダ内で往復動させることでシリンダ内に導入された空気を圧縮するものである。このようにシリンダ内で圧縮された圧縮空気はタンク14に送られて貯留される。貯留された圧縮空気は、エア取り出し部13に接続された外部機器(例えば圧縮空気式の打ち込み工具)に供給されて使用される。
【0021】
空気圧縮機10の上面には、
図1(a)及び
図3に示すように、操作パネル15が設けられている。この操作パネル15は、空気圧縮機10を操作するための各種のボタンや、空気圧縮機10の状態を表示するためのLED等を備えている。
【0022】
この空気圧縮機10の動作は、空気圧縮機10に内蔵された制御装置100(
図2参照)によって制御される。制御装置100は、特に図示しないが、CPUを中心に構成され、ROM、RAM、I/O等を備えている。そして、CPUがROMに記憶されたプログラムを読み込むことで、各種の入力装置及び出力装置を制御するように構成されている。
【0023】
(入力装置)
制御装置100の入力装置としては、
図2に示すように、温度検出手段20、圧力検出手段21、電流検出手段22、電圧検出手段23、モータ回転数検出手段24、電源スイッチ30、充填モード切替スイッチ31、運転モード切替スイッチ32が設けられている。なお、入力装置としては、この
図1に示す入力装置に限定されず、他の入力装置を備えていてもよい。
【0024】
(温度検出手段20)
温度検出手段20は、制御装置100を構成するインバータ基板の周囲温度を測定する温度検出回路である。この温度検出手段20が測定した温度は、制御装置100に信号として出力され、空気圧縮機10の状態を確認するために使用される。この温度検出手段20は、空気圧縮機10の環境情報を検出する環境情報検出手段の1つである。
【0025】
(圧力検出手段21)
圧力検出手段21は、タンク14内の圧力を検出するためのものであり、具体的にはタンク14内に設けられた圧力センサである。この圧力検出手段21で計測された圧力値は、制御装置100に信号として出力されて処理される。この圧力検出手段21は、空気圧縮機10の環境情報を検出する環境情報検出手段の1つである。
【0026】
(電流検出手段22)
電流検出手段22は、モータ12に供給される電流値を測定するためのものである。この電流検出手段22で計測された電流値は、制御装置100に信号として出力されて処理される。なお、電流検出手段22が計測する電流値は、モータ12の電源側(空気圧縮機10に供給される電源)の電流値であってもよい。
【0027】
(電圧検出手段23)
電圧検出手段23は、空気圧縮機10への入力電圧を検出するためのものである。この電圧検出手段23で計測された電圧値は、制御装置100に信号として出力されて処理される。この電圧検出手段23は、空気圧縮機10の環境情報を検出する環境情報検出手段の1つである。
【0028】
(モータ回転数検出手段24)
モータ回転数検出手段24は、モータ12の回転数を検出するものであり、例えば角位置センサなどで構成される。このモータ回転数検出手段24で計測された回転数は、制御装置100に信号として出力されて処理される。
【0029】
(標高検出手段25)
標高検出手段25は、空気圧縮機10が設置されている標高を検出するためのものである。この標高検出手段25で計測された標高値は、制御装置100に信号として出力されて処理される。この標高検出手段25は、空気圧縮機10の環境情報を検出する環境情報検出手段の1つである。
【0030】
(湿度検出手段26)
湿度検出手段26は、空気圧縮機10が設置されている周囲の湿度を検出するためのものである。この湿度検出手段26で計測された湿度は、制御装置100に信号として出力されて処理される。この湿度検出手段26は、空気圧縮機10の環境情報を検出する環境情報検出手段の1つである。
【0031】
(電源スイッチ30)
電源スイッチ30は、空気圧縮機10を起動するためのスイッチであり、上述した操作パネル15に配設されている。この電源スイッチ30が押下されて空気圧縮機10が起動すると、圧縮機構11が作動して圧縮空気がタンク14に貯留され、空気圧縮機10を使用可能な状態となる。
【0032】
(充填モード切替スイッチ31)
充填モード切替スイッチ31は、空気圧縮機10の充填モードを設定するためのスイッチである。すなわち、本実施形態に係る空気圧縮機10は、使用環境に合わせてモータ12の回転数の制御範囲を変更可能となっており、充填モード切替スイッチ31を押下することでモータ12の回転数の制御範囲を設定できるようになっている。本実施形態に係る空気圧縮機10は、充填モードとして、通常モードと、前記通常モードよりも前記モータ12の回転数を抑制した静音モードと、前記通常モードよりも前記モータ12の回転数を上げた急速充填モードと、を備えている。充填モード切替スイッチ31の押下が検出されると、その押下信号は制御装置100(後述する充填モード設定手段140)に出力されて処理される。
【0033】
(運転モード切替スイッチ32)
運転モード切替スイッチ32は、空気圧縮機10の運転モードを設定するためのスイッチである。すなわち、本実施形態に係る空気圧縮機10は、使用目的に合わせて圧力制御範囲を変更可能となっており、運転モード切替スイッチ32を押下することでこの圧力制御範囲を任意の範囲に設定できるようになっている。例えば、タンク14内の圧力を1.1〜1.5MPaとするか、2.5〜3.0MPaとするか、3.2〜4.0MPaとするか、3.9〜4.4MPaとするか、を選択して設定できるようになっている。運転モード切替スイッチ32の押下が検出されると、その押下信号は制御装置100(後述する運転モード設定手段150)に出力されて処理される。
【0034】
(出力装置)
制御装置100の出力装置としては、
図2に示すように、モータ12と、電源表示LED35と、充填モード表示LED36と、運転モード表示LED37と、吐出レベルLED38と、表示手段39と、報知手段40と、が設けられている。なお、出力装置としては、この
図2に示す出力装置に限定されず、他の出力装置を備えていてもよい。
【0035】
(モータ12)
モータ12は、上述したように、圧縮機構11を駆動させて圧縮ピストンをシリンダ内で往復動させるものである。このモータ12は、制御装置100(後述する駆動制御手段110)によって駆動制御されることで、圧縮動作を開始したり停止したりするように形成されている。
【0036】
(電源表示LED35)
電源表示LED35は、前述した電源スイッチ30が押下されて空気圧縮機10が起動している場合に点灯するものである。また、電源スイッチ30が押下されて空気圧縮機10がシャットダウンされている場合には消灯する。
【0037】
(充填モード表示LED36)
充填モード表示LED36は、前述した充填モード切替スイッチ31が押下されて選択された充填モードを表示するためのものである。
【0038】
(運転モード表示LED37)
運転モード表示LED37は、前述した運転モード切替スイッチ32が押下されて選択された運転モードを表示するためのものである。
【0039】
(吐出レベルLED38)
吐出レベルLED38は、後述する自己診断手段160が自己診断を行った結果を表示するものであり、例えば、自己診断結果が問題ない場合には点灯し、自己診断結果に問題がある場合(吐出レベルが低下している場合)には点滅するように制御される。
【0040】
(表示手段39)
表示手段39は、圧力検出手段21が検出したタンク14内の圧力値などを表示するためのものである。本実施形態においては、2桁の7セグメントディスプレイが用いられており、数値をデジタル表示できるようになっている。
【0041】
なお、表示手段39は3桁以上の7セグメントディスプレイであってもよいし、7セグメントディスプレイに限らず高画素数のディスプレイ(タッチパネル含む)であってもよい。
【0042】
(報知手段40)
報知手段40は、空気圧縮機10のエラーなどを報知する手段である。例えば、ブザーなどの聴覚表示を行う装置や、LEDなどの視覚表示を行う装置である。
【0043】
(制御装置100)
次に、制御装置100について詳述する。
制御装置100は、上記した各種装置を制御するものであり、駆動制御手段110、時間計測手段120、記憶手段130、充填モード設定手段140、運転モード設定手段150、自己診断手段160、などの各手段として機能する。
なお、制御装置100としては、上記した各手段に限定されるものではなく、他の手段を含んでいても良い。
【0044】
(駆動制御手段110)
駆動制御手段110は、モータ12を制御することにより、圧縮機構11による圧縮動作を制御するためのプログラムである。この駆動制御手段110は、圧力検出手段21が検出したタンク14内の空気圧力を参照し、タンク14内の空気圧力が適切な圧力となるようにモータ12の作動をオン・オフする。
【0045】
具体的には、圧縮機構11の駆動を開始させるためのオン圧と、圧縮機構11の駆動を停止させるためのオフ圧とが予め決められており、駆動制御手段110は、圧力検出手段21が検出したタンク14内の空気圧力がこのオン圧またはオフ圧に到達したか否かを判定し、到達した場合にモータ12の作動をオン・オフする。
【0046】
このとき、オン圧及びオフ圧は、後述する運転モード設定手段150によって設定された運転モードによって決定される。例えば圧力制御範囲を3.2〜4.0MPaとする運転モードの場合、3.2MPaがオン圧となり、4.0MPaがオフ圧となる。この場合、タンク14内の圧縮空気が使用され、タンク14内の圧力が3.2MPa(オン圧)まで低下したら、タンク14内の圧力が4.0MPa(オフ圧)になるまでモータ12を作動させて空気を圧縮する。この動作を繰り返すことで、タンク14内の空気圧力が適切な圧力となるように制御する。
【0047】
なお、圧縮動作を行う際のモータ12を回転数は、後述する充填モード設定手段140によって設定された充填モードによって決定される。例えば、モータ12の回転速度は、通常モードであれば最大2900min^−1に制限され、静音モードであれば最大1800min^−1に制限され、急速充填モードであれば最大3400min^−1に制限されるように制御される。このような制御により、例えば夜間や住宅街での作業時には静音モードを使用することで騒音を抑制することができ、また、圧縮空気を早く使用したい場合などは急速充填モードを使用することで時間を短縮することができるようになっている。
【0048】
(時間計測手段120)
時間計測手段120は、所定のタイミングからの時間を測定するための手段である。例えばCPUタイマなどを使用して構成される。
【0049】
(記憶手段130)
記憶手段130は、不揮発性のメモリを備えて構成され、プログラムやデータを記憶している。
【0050】
(充填モード設定手段140)
充填モード設定手段140は、空気圧縮機10の充填モードを設定するためのものである。具体的には、充填モード切替スイッチ31の押下が検出されたときに、その押下信号を受信し、充填モードを切り替える処理を実行する。充填モード設定手段140によって設定された充填モードは記憶手段130などに記憶され、駆動制御手段110によるモータ12の駆動制御に使用される。
【0051】
(運転モード設定手段150)
運転モード設定手段150は、空気圧縮機10の運転モードを設定するためのものである。具体的には、運転モード切替スイッチ32の押下が検出されたときに、その押下信号を受信し、運転モードを切り替える処理を実行する。運転モード設定手段150によって設定された運転モードは記憶手段130などに記憶され、駆動制御手段110によるモータ12の駆動制御に使用される。
【0052】
(自己診断手段160)
自己診断手段160は、圧縮機構11による圧縮時間を基に空気圧縮機の状態を自己診断するものである。この自己診断手段160の処理については後ほど詳述する。
【0053】
(自己診断処理の実行フロー)
次に、本実施形態に係る自己診断処理について具体的に説明する。
本実施形態に係る空気圧縮機10は、前述したように自己診断手段160を備えており、この自己診断手段160が自己診断を行った結果をユーザに報せることで、機械の故障や性能低下をユーザに報せることができるようになっている。また、この自己診断手段160は、自己診断の実行前に環境情報(電源電圧、温度、タンク圧、標高、湿度)を取得し、現在の環境が自己診断可能な環境条件であるかをチェックするようになっている。この自己診断処理について、
図4及び
図5のフローを参照しながら説明する。
【0054】
まず、
図4に示すステップS100において、電源スイッチ30が3秒以上長押しされたことを検出する(本実施形態においては、電源スイッチ30が3秒以上長押しされたことを契機として自己診断処理を開始する)。なお、自己診断処理の開始は、他の操作(他のスイッチの操作など)を契機としてもよい。そして、ステップS101に進む。
【0055】
ステップS101では、環境条件を取得する。具体的には、温度検出手段20が検出した温度、圧力検出手段21が検出したタンク圧、電圧検出手段23が検出した電源電圧、標高検出手段25が検出した標高、湿度検出手段26が検出した湿度、のそれぞれの値を取得する。なお、本実施形態においては、電源電圧、温度、タンク圧、標高、湿度をすべて取得しているが、本発明の実施形態としてはこれに限らず、これらのうちの少なくともいずれかを取得すればよい。そして、ステップS102に進む。
【0056】
ステップS102では、環境情報検出手段により検出された環境情報(電源電圧、温度、タンク圧、標高、湿度)が所定の条件を満たしているかがチェックされる。この所定の条件は、空気圧縮機10の推奨使用環境を基に予め設定されている。そして、所定の条件を満たしている場合には、ステップS103へ進む。一方、所定の条件を満たしていない場合には、ステップS117(
図5参照)に進む。
【0057】
ステップS117に進んだ場合、環境条件が所定の条件を満たしていないこと(空気圧縮機10の使用や自己診断に適していないこと)を報知手段40によって報知し、自己診断を実行せずに処理を終了する。
【0058】
一方、ステップS103へ進んだ場合、充填モードを自己診断用の充填モード(例えば通常モード)に移行させ、モータ12の駆動を開始して自己診断を開始する。そして、ステップS104に進む。
【0059】
ステップS104では、キャンセル条件を満たしたかがチェックされる。例えば、自己診断中にスイッチが操作されたり、圧縮空気が使用されたり、といったことを検出したときにキャンセル条件を満たしたと判断される。キャンセル条件を満たした場合には、ステップS116(
図5参照)に進む。一方、キャンセル条件を満たしていない場合には、ステップS105に進む。
ステップS116に進んだ場合、自己診断がキャンセルされたことを報知手段40によって報知し、ステップS114へ進む。
【0060】
一方、ステップS105に進んだ場合、タンク圧が閾値圧に到達したかがチェックされる。閾値圧は、オン圧とオフ圧の間の値で予め設定されている。タンク圧が閾値圧に到達した場合(初回のみ)には、ステップS106へ進む。一方、タンク圧が閾値圧に到達していない場合や、タンク圧がすでに閾値圧に到達してステップS106を通過している場合には、ステップS107に進む。
【0061】
ステップS106では、時間計測手段120による時間計測を開始するとともに、電圧検出手段23による電圧測定を開始し、積算処理を開始する。すなわち、本実施形態では、閾値圧からオフ圧に到達するまでの時間を計測することで自己診断を行うこととしているので、自己診断用のデータ収集を開始する。そして、ステップS107に進む。
なお、閾値圧からオフ圧に到達する前の所定の圧力を設定して、閾値圧からこの所定の圧力に到達するまでの時間を計測してもよい。
【0062】
ステップS107では、タンク圧がオフ圧に到達したかがチェックされる。オフ圧に到達していない場合には、ステップS104へ戻る。一方、オフ圧に到達した場合には、ステップS108に進む。
【0063】
ステップS108では、モータ12の駆動が停止される。また、時間計測手段120による時間計測や、電圧検出手段23による電圧測定も停止される。そして、ステップS109(
図5参照)に進む。
【0064】
ステップS109では、電圧検出手段23による電圧測定の積算結果を参照する。具体的には、タンク圧が閾値圧からオフ圧に到達するまでの間の平均電圧を算出する。そして、ステップS110に進む。
【0065】
ステップS110では、ステップS109で算出した平均電圧が閾値電圧(例えば90V)未満であるかがチェックされる。平均電圧が閾値電圧未満である場合には、ステップS115へ進む。一方、平均電圧が閾値電圧未満でない場合には、ステップS111に進む。
【0066】
ステップS115に進んだ場合、環境条件が所定の条件を満たしていないこと(空気圧縮機10の使用や自己診断に適していないこと)を報知手段40によって報知し、ステップS114に進む。
【0067】
一方、ステップS111に進んだ場合、時間計測手段120の計測結果、すなわち、タンク圧が閾値圧からオフ圧に到達するまでの時間が閾値時間以下であるかがチェックされる。計測時間が閾値時間以下である場合には、ステップS112へ進む。一方、計測時間が閾値時間以下でない場合には、ステップS113に進む。
【0068】
ステップS112に進んだ場合、正しい環境条件で自己診断を行った結果、機械の故障や性能低下が見られないので、吐出レベルLED38を点灯して、自己診断に合格したことをユーザに報知する。そして、ステップS114に進む。
【0069】
ステップS113に進んだ場合、正しい環境条件で自己診断を行った結果、機械の故障や性能低下の可能性があるので、吐出レベルLED38を点滅させて、自己診断に不合格であることをユーザに報知する。そして、ステップS114に進む。
ステップS114では、ステップS103において変更した充填モードを基に戻し、処理が終了する。
【0070】
(まとめ)
以上説明したように、本実施形態によれば、圧縮機構11による圧縮時間を基に空気圧縮機10の状態を自己診断する自己診断手段160と、電源電圧、温度、タンク圧、標高、湿度を検出する環境情報検出手段20,21,23,25,26と、を備え、前記環境情報検出手段20,21,23,25,26は、前記自己診断手段160による前記自己診断の実行前に環境情報を検出する。すなわち、自己診断によってメンテナンスの必要性などを診断するに当たり、圧縮性能に影響のある環境情報を事前に検出するため、環境情報に応じて正確に自己診断を行うことができる。
【0071】
例えば、環境情報として電源電圧を使用した場合、電源電圧が低い場合には圧縮性能が低下していても機械の故障や部品の損耗によるものではない。よって、このような場合には、圧縮性能の低下が機械の故障や部品の損耗とは別の理由で発生していることが判断できるので、余計なメンテナンスの報知を省略することができる。
【0072】
このような構成によれば、メンテナンスの必要性などを診断するに当たり、精度の高い診断が可能となるので、適切にメンテナンス時期を報知することができる。例えば、メンテナンス時期を報せるタイミングが早過ぎて不要なメンテナンスが発生したり、メンテナンス時期を報せるタイミングが遅過ぎるために異常状態又は故障状態まで使い続けてしまうことで機械の使用ができなくなって作業が滞る上に修理コストが嵩んだり、といった問題が発生しない。
【0073】
また、環境情報を検出することで、環境情報に問題があれば、最適な環境での使用をユーザに促すことができる。例えば、極端な性能低下を誘発する延長コードの多用や低温環境等の環境情報を検出してユーザに報せることも可能となるので、機械の故障や部品の損耗を未然に防ぐことができる。
【0074】
また、前記自己診断手段160は、前記環境情報検出手段20,21,23,25,26により検出された環境情報が所定の条件を満たしていないと判断した場合には、環境情報が所定の条件を満たしていないことを報知し、自己診断を実行しない。すなわち、環境情報が所定の条件を満たしていない場合(例えば、電源電圧が低過ぎるなど)には、圧縮性能の低下が見込まれるため、自己診断が不正確となるおそれがある。例えば、自己診断によって圧縮性能の低下が検出されても、その原因が環境条件のみによるものか、環境条件に加えて機械の故障や部品の損耗が発生しているためなのかの判断ができない場合がある。このような状態で自己診断結果を報知しても、ユーザにとって有益でない可能性があるため、環境情報が所定の条件を満たしていないと判断した場合には、環境情報が所定の条件を満たしていないことを報知し、自己診断を実行しない。そして、環境情報が所定の条件を満たしている環境で再度自己診断を行うように促すことができる。
【0075】
なお、本実施形態においては、環境情報が所定の条件を満たしていないと判断した場合には、自己診断を実行しないこととしているが、これに限らず、環境情報が所定の条件を満たしていないことをユーザに報知した上で自己診断を実行するようにしてもよい。
【0076】
また、本実施形態に係る自己診断手段160は、圧縮機構11による圧縮時間を基に空気圧縮機10の状態を自己診断することとしたが、これに代えて、または、これに加えて、モータ12の消費電流値、または、モータ12の回転数を基に、空気圧縮機10の状態を自己診断してもよい。すなわち、圧縮機構11による圧縮時間、モータ12の消費電流値、モータ12の回転数の少なくともいずれかの検出結果を基に空気圧縮機10の状態を自己診断するようにすればよい。
なお、環境情報として部品の状態情報(たとえば圧縮機構11の温度、モータ12の電圧や回転数)を使用してもよい。