特許第6201477号(P6201477)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6201477
(24)【登録日】2017年9月8日
(45)【発行日】2017年9月27日
(54)【発明の名称】積層コンデンサ
(51)【国際特許分類】
   H01G 4/232 20060101AFI20170914BHJP
   H01G 4/12 20060101ALI20170914BHJP
   H01G 4/30 20060101ALI20170914BHJP
【FI】
   H01G4/12 352
   H01G4/12 349
   H01G4/30 301B
   H01G4/30 301E
【請求項の数】14
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2013-150599(P2013-150599)
(22)【出願日】2013年7月19日
(65)【公開番号】特開2015-23173(P2015-23173A)
(43)【公開日】2015年2月2日
【審査請求日】2016年2月16日
(73)【特許権者】
【識別番号】000003067
【氏名又は名称】TDK株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100113435
【弁理士】
【氏名又は名称】黒木 義樹
(74)【代理人】
【識別番号】100124062
【弁理士】
【氏名又は名称】三上 敬史
(74)【代理人】
【識別番号】100145012
【弁理士】
【氏名又は名称】石坂 泰紀
(72)【発明者】
【氏名】尾上 通
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 淳
(72)【発明者】
【氏名】玉木 賢也
【審査官】 小池 秀介
(56)【参考文献】
【文献】 特開平09−260184(JP,A)
【文献】 特開2000−164451(JP,A)
【文献】 特開2013−073989(JP,A)
【文献】 特開2008−153294(JP,A)
【文献】 特開2008−218707(JP,A)
【文献】 特開昭64−068915(JP,A)
【文献】 特開2007−165477(JP,A)
【文献】 特開2009−253010(JP,A)
【文献】 米国特許第05388024(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01G 4/00−4/015
4/02−4/224
4/232
4/255−4/40
13/00−17/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
互いに略平行に延びるように対向する第1及び第2の側面と、互いに略平行に延びるように対向すると共に前記第1及び第2の側面同士を接続する第1及び第2の主面と、前記第1及び第2の側面同士並びに前記第1及び第2の主面同士を接続する第1及び第2の端面とを有する素体と、
前記素体のうち前記第1の端面側に配置された第1の端子電極と、
前記素体のうち前記第2の端面側に配置された第2の端子電極と、
前記素体内に位置すると共に、前記第1の端面から露出する端部が前記第1の端子電極と接続された少なくとも一つの第1の内部電極と、
前記第1及び第2の主面の対向方向で前記第1の内部電極と対向するように前記素体内に位置すると共に、前記第2の端面から露出する端部が前記第2の端子電極と接続された少なくとも一つの第2の内部電極とを備え、
前記第1及び第2の側面はそれぞれ、互いに対向する一対の側縁を有し、前記一対の側縁のうち一方の側縁が他方の側縁よりも短く、
前記第1の主面は、前記第1及び第2の側面の前記各一方の側縁同士を連結すると共に、その全体が前記第1及び第2の主面の対向方向において前記第2の主面と重なり合い、
前記第2の主面は、前記第1及び第2の側面の前記各他方の側縁同士を連結し、
前記第1及び第2の端面は、前記第1及び第2の側面の対向方向から見て、前記第2の主面から前記第1の主面に向かうにつれて互いに近づくように傾斜しており、
前記第1の端子電極は、前記第1の端面上に配置された第1の部分と、前記第1の部分から連続的に引き出されて前記第1の主面上に配置された第2の部分とを有するが、前記第2の主面上には配置されておらず、前記第1及び第2の側面の対向方向から見て全体としてL字形状を呈しており
前記第2の端子電極は、前記第2の端面上に配置された第3の部分と、前記第3の部分から連続的に引き出されて前記第1の主面上に配置された第4の部分とを有するが、前記第2の主面上には配置されておらず、前記第1及び第2の側面の対向方向から見て全体としてL字形状を呈しており
前記第1及び第3の部分はそれぞれ、前記第1及び第2の側面の対向方向から見て、前記第1及び第2の端面の対向方向における厚さが前記第2の主面から前記第1の主面に向かうにつれて大きい、積層コンデンサ。
【請求項2】
複数の前記第1の内部電極と、複数の前記第2の内部電極とは、前記第1及び第2の主面の対向方向で交互に並んでおり、
前記第1及び第2の内部電極の対向面積は、前記第1及び第2の主面の対向方向において略同一である、請求項1に記載の積層コンデンサ。
【請求項3】
前記第1の端子電極は、前記第1及び第2の主面の対向方向に沿って拡がる平面状の第1の外表面を含み、
前記第2の端子電極は、前記第1及び第2の主面の対向方向に沿って拡がる平面状の第2の外表面を含み、
前記第1及び第2の外表面は、互いに略平行で、且つ、前記第1及び第2の端面の対向方向において対向している、請求項1又は2に記載の積層コンデンサ。
【請求項4】
前記第1及び第2の外表面は、前記第1及び第2の側面並びに前記第1及び第2の主面に関して略直交するように延びている、請求項に記載の積層コンデンサ。
【請求項5】
前記第1及び第2の端面の対向方向において、前記第1及び第2の端子電極の長さは、前記第2及び第4の部分の離間距離よりも大きい、請求項1〜のいずれか一項に記載の積層コンデンサ。
【請求項6】
前記第1及び第2の側面の対向方向における前記第1及び第2の端面の幅が、前記第1及び第2の側面の前記他方の側縁よりも大きい、請求項1〜のいずれか一項に記載の積層コンデンサ。
【請求項7】
回路基板内に積層コンデンサが埋め込まれた積層コンデンサの実装構造であって、
前記積層コンデンサは、
互いに略平行に延びるように対向する第1及び第2の側面と、互いに略平行に延びるように対向すると共に前記第1及び第2の側面同士を接続する第1及び第2の主面と、前記第1及び第2の側面同士並びに前記第1及び第2の主面同士を接続する第1及び第2の端面とを有する素体と、
前記素体のうち前記第1の端面側に配置された第1の端子電極と、
前記素体のうち前記第2の端面側に配置された第2の端子電極と、
前記素体内に位置すると共に、前記第1の端面から露出する端部が前記第1の端子電極と接続された少なくとも一つの第1の内部電極と、
前記第1及び第2の主面の対向方向で前記第1の内部電極と対向するように前記素体内に位置すると共に、前記第2の端面から露出する端部が前記第2の端子電極と接続された少なくとも一つの第2の内部電極とを備え、
前記第1及び第2の側面はそれぞれ、互いに対向する一対の側縁を有し、前記一対の側縁のうち一方の側縁が他方の側縁よりも短く、
前記第1の主面は、前記第1及び第2の側面の前記各一方の側縁同士を連結すると共に、その全体が前記第1及び第2の主面の対向方向において前記第2の主面と重なり合い、
前記第2の主面は、前記第1及び第2の側面の前記各他方の側縁同士を連結し、
前記第1及び第2の端面は、前記第1及び第2の側面の対向方向から見て、前記第2の主面から前記第1の主面に向かうにつれて互いに近づくように傾斜しており、
前記第1の端子電極は、前記第1の端面上に配置された第1の部分と、前記第1の部分から連続的に引き出されて前記第1の主面上に配置された第2の部分とを有し、
前記第2の端子電極は、前記第2の端面上に配置された第3の部分と、前記第3の部分から連続的に引き出されて前記第1の主面上に配置された第4の部分とを有し、
前記第1及び第3の部分はそれぞれ、前記第1及び第2の側面の対向方向から見て、前記第1及び第2の端面の対向方向における厚さが前記第2の主面から前記第1の主面に向かうにつれて大きく、
前記回路基板内には第1及び第2のビア導体が設けられており、
前記第1のビア導体の一端は前記第1の部分のうち前記第1の主面側の領域と接続されており、
前記第2のビア導体の一端は前記第3の部分のうち前記第1の主面側の領域と接続されている、実装構造
【請求項8】
前記第1の端子電極は、前記第2の主面上には配置されておらず、前記第1及び第2の側面の対向方向から見て全体としてL字形状を呈しており、
前記第2の端子電極は、前記第2の主面上には配置されておらず、前記第1及び第2の側面の対向方向から見て全体としてL字形状を呈している、請求項7に記載の実装構造。
【請求項9】
前記第1の端子電極は、前記第1の部分から連続的に引き出されて前記第2の主面上に配置された第5の部分をさらに有し、
前記第2の端子電極は、前記第3の部分から連続的に引き出されて前記第2の主面上に配置された第6の部分をさらに有する、請求項7に記載の実装構造。
【請求項10】
複数の前記第1の内部電極と、複数の前記第2の内部電極とは、前記第1及び第2の主面の対向方向で交互に並んでおり、
前記第1及び第2の内部電極の対向面積は、前記第1及び第2の主面の対向方向において略同一である、請求項7〜9のいずれか一項に記載の実装構造。
【請求項11】
前記第1の端子電極は、前記第1及び第2の主面の対向方向に沿って拡がる平面状の第1の外表面を含み、
前記第2の端子電極は、前記第1及び第2の主面の対向方向に沿って拡がる平面状の第2の外表面を含み、
前記第1及び第2の外表面は、互いに略平行で、且つ、前記第1及び第2の端面の対向方向において対向している、請求項7〜10のいずれか一項に記載の実装構造。
【請求項12】
前記第1及び第2の外表面は、前記第1及び第2の側面並びに前記第1及び第2の主面に関して略直交するように延びている、請求項11に記載の実装構造。
【請求項13】
前記第1及び第2の端面の対向方向において、前記第1及び第2の端子電極の長さは、前記第2及び第4の部分の離間距離よりも大きい、請求項7〜12のいずれか一項に記載の実装構造。
【請求項14】
前記第1及び第2の側面の対向方向における前記第1及び第2の端面の幅が、前記第1及び第2の側面の前記他方の側縁よりも大きい、請求項7〜13のいずれか一項に記載の実装構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、積層コンデンサに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1は、直方体形状を呈する素体と、互いに対向するように素体内に配置された一対の内部電極と、素体の両端部にそれぞれ配置された端子電極とを備えるセラミック部品を開示している。一方の内部電極は、素体の一方の端面に露出し、一方の端子電極と接続されている。他方の内部電極は、素体の他方の端面に露出し、他方の端子電極と接続されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2012−028456号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の目的は、端子電極と内部電極との接続性を向上させ、接続不良を抑制することが可能な積層コンデンサを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の一つの観点に係る積層コンデンサは、互いに略平行に延びるように対向する第1及び第2の側面と、互いに略平行に延びるように対向すると共に第1及び第2の側面同士を接続する第1及び第2の主面と、第1及び第2の側面同士並びに第1及び第2の主面同士を接続する第1及び第2の端面とを有する素体と、素体のうち第1の端面側に配置された第1の端子電極と、素体のうち第2の端面側に配置された第2の端子電極と、素体内に位置すると共に、第1の端面から露出する端部が第1の端子電極と接続された第1の内部電極と、第1及び第2の主面の対向方向で第1の内部電極と対向するように素体内に位置すると共に、第2の端面から露出する端部が第2の端子電極と接続された第2の内部電極とを備え、第1及び第2の内部電極は、第1及び第2の主面の対向方向で対向し、第1及び第2の側面はそれぞれ、互いに対向する一対の側縁を有し、一対の側縁のうち一方の側縁が他方の側縁よりも短くなっており、第1の主面は、第1及び第2の側面の各一方の側縁同士を連結すると共に、その全体が第1及び第2の主面の対向方向において第2の主面と重なり合い、第2の主面は、第1及び第2の側面の各他方の側縁同士を連結し、第1及び第2の端面は、第1及び第2の側面の対向方向から見て、第2の主面から第1の主面に向かうにつれて互いに近づくように傾斜しており、第1の主面の全体は、第1及び第2の主面の対向方向において第2の主面と重なり合っており、第1の端子電極は、第1の端面上に配置された第1の部分と、第1の部分から連続的に引き出されて第1の主面上に配置された第2の部分とを有し、第2の端子電極は、第2の端面上に配置された第3の主部と、第3の部分から連続的に引き出されて第1の主面上に配置された第4の部分とを有し、第1及び第3の部分はそれぞれ、第1及び第2の側面の対向方向から見て、第1及び第2の端面が並ぶ方向における厚さが第2の主面から第1の主面に向かうにつれて大きい。
【0006】
本発明の一つの観点に係る積層コンデンサでは、各端面からそれぞれ内部電極の端部が露出しており、各端面が第1及び第2の側面の対向方向から見て傾斜している。そのため、本発明の一つの観点に係る積層コンデンサによれば、各内部電極の端部の露出面積が増大する傾向にある。従って、各内部電極の端部と各端子電極とが十分に固着するので、各内部電極の端部と各端子電極との接続性が向上する。その結果、端子電極と内部電極との間の接続不良(ルーズコンタクト)を抑制することが可能となる。
【0007】
第1の端子電極は、第1及び第2の主面の対向方向に沿って拡がる平面状の第1の外表面を含み、第2の端子電極は、第1及び第2の主面の対向方向に沿って拡がる平面状の第2の外表面を含み、第1及び第2の外表面は、互いに略平行で、且つ、第1及び第2の端面の対向方向において対向していてもよい。この場合、第1及び第2の端面の対向方向において、第1の主面の幅は第2の主面の幅よりも小さいが、第1の主面側での積層コンデンサの幅と、第2の主面側での積層コンデンサの幅とが、略同じとなる。そのため、第1の主面側における第1及び第2の端子電極の大きさ(面積)を大きくすることができる。従って、第1の主面側を実装面とする場合に、積層コンデンサの回路基板等への実装が容易となる。
【0008】
第1及び第2の外表面は、第1及び第2の側面並びに第1及び第2の主面に関して略直交するように延びていてもよい。
【0009】
第1及び第2の端面の対向方向において、第1及び第2の端子電極の長さは、第2及び第4の部分の離間距離よりも大きくてもよい。この場合、第1の主面側において第1及び第2の端子電極の面積が十分に確保される。そのため、積層コンデンサを回路基板等に実装する際に、第1及び第2の端子電極と回路基板等の端子電極との接触領域を大きくできる。その結果、積層コンデンサと回路基板等との電気的接続をより確実に行うことができる。特に、積層コンデンサを回路基板等に埋め込む実装構造においては、回路基板等に貫通孔(ビアホール)を形成する際に、レーザビームが積層コンデンサの端子電極に照射される。このとき、第1の主面側における第1及び第2の端子電極の面積が十分に確保されているので、レーザビームが第1及び第2の端子電極に照射されやすい。そのため、レーザビームにより素体にダメージが生ずる虞を小さくすることが可能となる。
【0010】
第1及び第2の側面の対向方向における第1及び第2の端面の幅が、第1及び第2の側面の他方の側縁よりも大きくてもよい。この場合、素体の長手方向に沿って延びる第1及び第2の端面に第1及び第2の端子電極が配置される。そのため、素体内において電流経路が短くなり、寄生インダクタンスが小さくなる。その結果、積層コンデンサにおいて、等価直列インダクタンス(ESL:Equivalent Series Inductance)を効果的に低減することが可能となる。
【0011】
第1の端子電極は、第1の部分から連続的に引き出されて第2の主面上に配置された第5の部分をさらに有し、第2の端子電極は、第3の部分から連続的に引き出されて第2の主面上に配置された第6の部分をさらに有してもよい。この場合、第1の主面に第2及び第4の部分が配置されると共に、第2の主面に第5及び第6の部分が配置されるので、第1の主面又は第2の主面を実装面とすることができる。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、外部電極と内部電極との接続性を向上させ、接続不良を抑制することが可能な積層コンデンサを提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1図1は、本実施形態に係る積層コンデンサを示す斜視図である。
図2図2は、図1のII−II線断面図である。
図3図3は、図1の積層コンデンサが基板に実装された実装構造を示す断面図である。
図4図4は、本実施形態に係る積層コンデンサの他の例を示す斜視図である。
図5図5は、図4のV−V線断面図である。
図6図6は、図4の積層コンデンサが基板に実装された実装構造を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明の実施形態について図面を参照して説明するが、以下の本実施形態は、本発明を説明するための例示であり、本発明を以下の内容に限定する趣旨ではない。説明において、同一要素又は同一機能を有する要素には同一符号を用いることとし、重複する説明は省略する。
【0015】
積層コンデンサ1は、図1及び図2に示されるように、素体10と、素体10内に配置された内部電極12A,12Bと、素体10の両端部側に配置された端子電極14A,14Bとを備える。積層コンデンサ1の長さLは例えば0.4mm〜1.6mm程度に設定でき、積層コンデンサ1の幅Wは例えば0.2mm〜0.8mm程度に設定でき、積層コンデンサ1の高さHは例えば0.10mm〜0.35mm程度に設定できる。
【0016】
素体10は、一対の端面10a,10bと、一対の主面10c,10dと、一対の側面10e,10fとを有する6面体である。一対の主面10c,10dは、互いに略平行に延びるように対向している。主面10c及び主面10dの幅は共に同じであるが、主面10cの長さは、主面10dの長さよりも小さい。主面10c,10dの対向方向から見て、主面10dの一部は主面10cの全体と重なり合っている。
【0017】
一対の側面10e,10fは、互いに略平行に延びるように対向している。側面10e,10fの対向方向から見て、本実施形態における側面10e,10fは、上底が下底よりも短い台形状を呈している。すなわち、側面10e,10fはそれぞれ、上底及び下底となる一対の対向する側縁を有しており、上底が短辺をなし、下底が上底よりも長い長辺をなしている。側面10e,10fにおいて、各上底及び各下底を結ぶ一対の側縁は、下底から上底に向かうにつれて互いに近づき合う斜辺となっている。側面10e,10fの上底(短辺)同士は、主面10cによって連結されている。側面10e,10fの下底(長辺)同士は、主面10dによって連結されている。
【0018】
一対の端面10a,10bはそれぞれ、素体10の両端部に位置している。具体的には、端面10aは、主面10c,10d及び側面10e,10fの一端側においてこれらを連結している。端面10bは、主面10c,10d及び側面10e,10fの他端側においてこれらを連結している。側面10e,10fの対向方向から見て、端面10aは、主面10dから主面10cに向かうにつれて端面10bに近づくように傾斜している。側面10e,10fの対向方向から見て、端面10bは、主面10dから主面10cに向かうにつれて端面10aに近づくように傾斜している。すなわち、端面10a,10bは、主面10dから主面10cに向かうにつれて互いに近づき合っている。
【0019】
積層コンデンサ1は、いわゆる低背型コンデンサとして構成されている。すなわち、素体10において、主面10c,10dの間の寸法(素体10の高さ)h(図2参照)は、端面10a,10bの間の最大寸法(素体10の長さ)L(図1参照)、及び側面10e,10fの間の寸法(素体10の幅)W(図1参照)よりも小さい。
【0020】
素体10は、複数の長方形板状の誘電体層(図示せず)と、複数の(本実施形態では2つの)内部電極12Aと、複数の(本実施形態では2つの)内部電極12Bとが所定の順序に従って積層された積層体である。内部電極12Aと内部電極12Bとは、誘電体層の積層方向(主面10c,10dの対向方向)(以下、「積層方向」という。)において、交互に並ぶように素体10内に配置されている。内部電極12Aと内部電極12Bとは、少なくとも一層の誘電体層を挟むように対向配置されている。実際の積層コンデンサ1では、複数の誘電体層は、焼成により、互いの間の境界が視認できない程度に一体化されている。
【0021】
内部電極12Aは、矩形状を呈しており、主電極部12Aと、引き出し部12Aとを有している。内部電極12Bは、矩形状を呈しており、主電極部12Bと、引き出し部12Bとを有している。主電極部12A,12A同士は、積層方向から見て重なり合っている。
【0022】
引き出し部12Aは、主電極部12Aのうち端面10a側の端部から端面10aにかけて延びている。引出部12Aの端面10a側の端部は、端面10aに露出しており、端子電極14A(後述する焼付電極層14A)と接続されている。そのため、内部電極12Aと端子電極14Aとは、電気的に接続されている。引出部12Aの端面10a側の露出面は、積層方向に対して傾斜しており、本実施形態において端面10aと略平行に傾斜している。
【0023】
引き出し部12Bは、主電極部12Bのうち端面10b側の端部から端面10bにかけて延びている。引出部12Bの端面10b側の端部は、端面10bに露出しており、端子電極14B(後述する焼付電極層14B)と接続されている。そのため、内部電極12Bと端子電極14Bとは、電気的に接続されている。引出部12Bの端面10b側の露出面は、積層方向に対して傾斜しており、本実施形態において端面10bと略平行に方向に沿って傾斜している。
【0024】
図2に示されるように、素体10の最上部(主面10cに最も近い位置)に配置された内部電極12Aと、素体10の最下部(主面10dに最も近い位置)に配置された内部電極12Bとの間の内層寸法を「D1」とする。素体10の主面10cを構成する誘電体層の最上層(保護層)と、素体10の最上部に配置された内部電極12Aとの間の外層寸法を「D2」とする。素体10における外層寸法D2の部分は、複数の誘電体層が積層されて構成されている。素体10の主面10dを構成する誘電体層の最下層と、素体10の最下部に配置された内部電極12Bとの間の外層寸法を「D3」とする。素体10における外層寸法D3の部分は、複数の誘電体層が積層されて構成されている。
【0025】
素体10においては、内層寸法D1と外層寸法D2とが略等しく、内層寸法D1と外層寸法D3とが略等しい。すなわち、内層の厚みと、それを挟む一対の外層の厚みとは略等しい。ここでいう「略等しい」とは、例えば5μm程度の誤差を含む。
【0026】
端子電極14Aは、図1及び図2に示されるように、端面10aの全体と、主面10cのうち端面10a側の領域とを覆っている。端子電極14Aは、素体10の表面上に配置されており、端面10aから主面10cにわたって素体10の稜部を回り込むように連続して延びている。すなわち、端子電極14Aは、側面10e,10fの対向方向から見てL字形状を呈しており、端面10a上に配置された主部14Aと、主部14Aから連続的に引き出されて主面10c上に配置された引出部14Aとを有する。
【0027】
主部14Aにおいては、側面10e,10fの対向方向から見て、端面10a,10bの対向方向における厚さが主面10dから主面10cに向かうにつれて大きくなっている。主部14Aのうち端面10a,10bの対向方向(素体10の長手方向)と交差する外表面S1は、本実施形態において矩形状を呈する平面であり、積層コンデンサ1の一方の端面をなしている。
【0028】
端子電極14Bは、図1及び図2に示されるように、端面10bの全体と、主面10cのうち端面10b側の領域とを覆っている。端子電極14Bは、素体10の表面上に配置されており、端面10bから主面10cにわたって素体10の稜部を回り込むように連続して延びている。すなわち、端子電極14Bは、側面10e,10fの対向方向から見てL字形状を呈しており、端面10b上に配置された主部14Bと、主部14Bから連続的に引き出されて主面10c上に配置された引出部14Bとを有する。
【0029】
主部14Bにおいては、側面10e,10fの対向方向から見て、端面10a,10bの対向方向における厚さが主面10dから主面10cに向かうにつれて大きくなっている。主部14Bのうち端面10a,10bの対向方向(素体10の長手方向)と交差する外表面S2は、本実施形態において矩形状を呈する平面であり、積層コンデンサ1の他方の端面をなしている。
【0030】
外表面S1,S2は共に、主面10c,10dの対向方向に沿って略平行に延びている。外表面S1,S2は、端面10a,10bの対向方向において、互いに対向している。本実施形態において、外表面S1,S2は、主面10c,10d及び側面10e,10fに関して略直交するように延びている。
【0031】
本実施形態において、図2に示されるように、端面10a,10bの対向方向(素体10の長手方向)における端子電極14Aの長さX1は、端面10a,10bの対向方向における端子電極14A,14Bの離間距離Yよりも大きくてもよい。本実施形態において、図2に示されるように、端面10a,10bの対向方向(素体10の長手方向)における端子電極14Bの長さX2は、端面10a,10bの対向方向における端子電極14A,14Bの離間距離Yよりも大きくてもよい。
【0032】
端子電極14Aは、焼付電極層14Aと、めっき層14Aとを有する。端子電極14Bは、焼付電極層14Bと、めっき層14Bとを有する。焼付電極層14A,14Bは、素体10の表面に直接接するように素体10の表面上に配置されている。焼付電極層14A,14Bは、金属(例えば、Cu、Ni、Ag、Pd、Au、又はPtなど)と、ガラス成分(例えば、ホウケイ酸ガラスなど)とを含有する導電性ペーストを素体10に付与し、その導電性ペーストを所定の温度で焼き付けることで形成される。焼付電極層14A,14Bのガラス成分の含有比率は、例えば5〜10%である。すなわち、焼付電極層14A,14Bは、Cu、Ni、Ag、Pd、Au又はPtを主成分として含んでいる。焼付電極層14A,14Bの厚さは、例えば1μm以上である。
【0033】
めっき層14Aは、焼付電極層14Aの表面全体を覆うように焼付電極層14Aの表面上に配置されている。めっき層14Bは、焼付電極層14Bの表面全体を覆うように焼付電極層14Bの表面上に配置されている。めっき層14A,14Bは、Cu、Ag、Au、Ni、Pd又はSnを主成分として含んでいる。めっき層14A,14Bは、複数の層により構成されていてもよい。この場合、めっき層14A,14Bを構成す各層は、同種の材料又は異種の材料により形成されていてもよい。めっき層14A,14Bの厚さは、例えば5μm以上である。
【0034】
続いて、図3を参照して、積層コンデンサ1の実装構造について説明する。図3に示されるように、積層コンデンサ1は、基板(回路基板)100に埋め込まれて実装される。基板100は、絶縁性の複数の樹脂シート102が積層されて構成されている。基板100は、基板100の表面に形成された電極104A,104Bと、ビア導体106A,106Bとを備える。ビア導体106A,106Bはそれぞれ、基板100に形成された各貫通孔(ビアホール)108A,108B内に充填されている。
【0035】
ビア導体106Aのうち基板100の内部側の端部は、端子電極14Aのうち主面10c側の部分と接続されている。ビア導体106Aのうち基板100の外部側の端部は、電極104Aと接続されている。ビア導体106Bのうち基板100の内部側の端部は、端子電極14Bのうち主面10c側の部分と接続されている。ビア導体106Bのうち基板100の外部側の端部は、電極104Bと接続されている。
【0036】
続いて、積層コンデンサ1を基板100に埋め込む方法について説明する。まず、積層コンデンサ1を内部に配置した状態で複数の樹脂シート102を積層して、積層コンデンサ1を基板100の内部に埋め込む。次に、レーザビームを用いて基板100に貫通孔108A,108Bを形成する。このとき、レーザビームは、端子電極14A,14Bのうち主面10c側の部分に向けて照射される。その結果、貫通孔108A,108Bを介して、端子電極14A,14Bが外部に露出する。
【0037】
次に、無電解めっきにより、貫通孔108A,108B内にビア導体106A,106Bを形成する。次に、ビア導体106Aと接続されるように、基板100上に電極104Aを形成すると共に、ビア導体106Bと接続されるように、基板100上に電極104Bを形成する。こうして、積層コンデンサ1の内部電極12A,12Bがそれぞれ、端子電極14A,14B及びビア導体106A,106Bを介して、電極104A,104Bと電気的に接続される。
【0038】
以上のような本実施形態では、各端面10a,10bからそれぞれ内部電極12A,12Bの端部が露出しており、各端面10a,10bが側面10a,10bの対向方向から見て傾斜している。内部電極12A,12Bの厚みは通常数μm程度と非常に薄いが、この場合には、本実施形態に係る積層コンデンサ1によれば、各内部電極12A,12Bの端部の露出面積が増大する傾向にある。従って、各内部電極12A,12Bの端部と各端子電極14A,14Bとが十分に固着するので、各内部電極12A,12Bの端部と各端子電極14A,14Bとの接続性が向上する。その結果、端子電極14A,14Bと内部電極12A,12Bとの間の接続不良(ルーズコンタクト)を抑制することが可能となる。
【0039】
本実施形態では、外表面S1,S2は、互いに平行で、且つ、端面10a,10bの対向方向において対向している。また、外表面S1,S2は、主面10c,10d及び側面10e,10fに関して略直交するように延びている。そのため、端面10a,10bの対向方向において、主面10cの幅は主面10dの幅よりも小さいが、主面10c側での積層コンデンサ1の幅と、主面10d側での積層コンデンサ1の幅とが、略同じとなる。そのため、主面10c側における端子電極14A,14Bの大きさ(面積)を大きくすることができる。従って、本実施形態に係る積層コンデンサ1によれば、主面10c側を実装面とする場合に、積層コンデンサ1の基板への実装が容易となる。
【0040】
本実施形態では、端面10a,10bの対向方向(積層コンデンサ1の長手方向)において、端子電極14A,14Bの長さX1,X2が、引出部14A,14Bの離間距離Yよりも大きい。この場合、主面10c上において端子電極14A,14Bの面積が十分に確保される。そのため、積層コンデンサ1を基板100に実装する際に、端子電極14A,14Bと基板100の端子電極との接触領域を大きくできる。その結果、積層コンデンサ1と基板100との電気的接続をより確実に行うことができる。特に、積層コンデンサ1を基板100に埋め込む実装構造においては、基板100に貫通孔(ビアホール)108A,108Bを形成する際に、レーザビームが積層コンデンサ1の端子電極14A,14Bに照射される。このとき、主面10c側において端子電極14A,14Bの面積が十分に確保されているので、レーザビームが端子電極14A,14Bに照射されやすい。そのため、レーザビームにより素体10にダメージが生ずる虞を小さくすることが可能となる。
【0041】
本実施形態では、主面10c,10dの間の寸法(素体10の高さ)hが、端面10a,10bの間の最大寸法(素体10の長さ)L、及び側面10e,10fの間の寸法(素体10の幅)Wよりも小さい。そのため、積層コンデンサ1は、いわゆる低背型の積層コンデンサとして構成される。加えて、端子電極14A,14Bが主面10c,10dに配置されているので、積層コンデンサ1を基板100に内蔵した状態で実装することが可能となる。ところで、積層コンデンサ1を基板100に埋め込む実装構造においては、積層コンデンサ1の端子電極14A,14Bが露出するようにレーザビームを用いて基板100に貫通孔(ビアホール)108A,108Bを形成し、貫通孔108A,108B内にそれぞれビア導体106A,106Bを埋め込むことにより、ビア導体106A,106Bと積層コンデンサ1の端子電極14A,14Bとが接続される。このような実装構造では、端子電極14A,14Bの電流ループ距離が短くなるため、等価直列インダクタンス(ESL)を低くできる。
【0042】
本実施形態では、素体10において、内層寸法D1と外層寸法D2とが略等しく、内層寸法D1と外層寸法D3とが略等しい。この場合、外層寸法D2,D3が比較的大きくなるので、外層部分が保護層として機能する。従って、積層コンデンサ1において構造欠陥の発生を抑制できる。加えて、このような積層コンデンサ1では、静電容量を確保できる。
【0043】
本実施形態では、端子電極14A,14Bがそれぞれ、素体10の表面に配置された焼付電極層14A,14Bを有している。そのため、素体10の表面に位置する焼付電極層14A,14Bに内部電極12A,12Bが接続されるので、端子電極14A,14Bと内部電極12A,12Bとをより確実に接続することができる。
【0044】
以上、本発明の実施形態について詳細に説明したが、本発明は上記した実施形態に限定されるものではない。例えば、図4及び図5に示されるように、積層コンデンサ2において、側面10e,10fの対向方向における端面10a,10bの幅が、端面10a,10bの対向方向における側面10e,10fの最大幅よりも大きくてもよい。すなわち、端面10a,10bの間の最大寸法(素体10の長さ)L(図4参照)は、側面10e,10fの間の寸法(素体10の幅)W(図4参照)よりも小さくてもよい。この場合、素体10の長手方向に沿って延びる端面10a,10bに端子電極14A,14Bが配置される。そのため、素体10内において電流経路が短くなり、寄生インダクタンスが小さくなる。その結果、積層コンデンサ2において、等価直列インダクタンス(ESL:Equivalent Series Inductance)を効果的に低減することが可能となる。
【0045】
本実施形態では、端子電極14Aが、端面10aから主面10cにわたって素体10の稜部を回り込むように連続して延びていると共に、端子電極14Bが、端面10bから主面10cにわたって素体10の稜部を回り込むように連続して延びていた。すなわち、端子電極14A,14Bは、側面10e,10fの対向方向から見てL字形状を呈していた。しかしながら、端子電極14A,14Bの形状はこれに限られない。具体的には、図4及び図5に示される積層コンデンサ2のように、端子電極14Aが、主部14Aから連続的に引き出されて主面10d上に配置された引出部14Aをさらに有し、端面10aから主面10c,10dにわたって素体10の稜部を回り込むように連続して延びていてもよい。同様に、端子電極14Bが、主部14Bから連続的に引き出されて主面10d上に配置された引出部14Bをさらに有し、端面10aから主面10c,10dにわたって素体10の稜部を回り込むように連続して延びていてもよい。すなわち、端子電極14A,14Bは、側面10e,10fの対向方向から見てC字形状を呈していてもよい。この場合、主面10cに引出部14A,14Bが配置されると共に、主面10dに引出部14A,14Bが配置されるので、主面10c,10dを実装面とすることができる。この場合、図6に示されるように、基板100に実装された積層コンデンサ2において、引出部14A,14Aのそれぞれに接続されるビア導体106Aを形成すると共に、引出部14B,14Bのそれぞれに接続されるビア導体106Bを形成してもよい。
【符号の説明】
【0046】
1,2…積層コンデンサ、10…素体、10a,10b…端面、10c,10d…主面、10e,10f…側面、12A,12B…内部電極、14A,14B…端子電極、14A,14B…主部、14A,14B…引出部。
図1
図2
図3
図4
図5
図6