(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6201493
(24)【登録日】2017年9月8日
(45)【発行日】2017年9月27日
(54)【発明の名称】フロントフェンダ
(51)【国際特許分類】
B62D 25/16 20060101AFI20170914BHJP
B62D 31/02 20060101ALI20170914BHJP
B62D 47/02 20060101ALI20170914BHJP
B60K 15/03 20060101ALI20170914BHJP
【FI】
B62D25/16 A
B62D31/02 A
B62D47/02
B60K15/03 B
【請求項の数】4
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2013-160692(P2013-160692)
(22)【出願日】2013年8月1日
(65)【公開番号】特開2015-30354(P2015-30354A)
(43)【公開日】2015年2月16日
【審査請求日】2016年7月6日
(73)【特許権者】
【識別番号】000000170
【氏名又は名称】いすゞ自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100068021
【弁理士】
【氏名又は名称】絹谷 信雄
(72)【発明者】
【氏名】片平 正芳
【審査官】
須山 直紀
(56)【参考文献】
【文献】
特開2004−322819(JP,A)
【文献】
特開平11−348690(JP,A)
【文献】
特開2002−274442(JP,A)
【文献】
米国特許出願公開第2003/0209922(US,A1)
【文献】
実開昭60−090019(JP,U)
【文献】
実開昭58−156017(JP,U)
【文献】
特開平11−278308(JP,A)
【文献】
特開2010−149641(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B62D 25/16
B60K 15/03
B62D 31/02
B62D 47/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両前輪の一部を覆って車外と車室とを仕切るフロントフェンダであって、
前記前輪の前方に位置するフロアパネルから上方に向かって延設されると共に、その後側面を前記前輪の外周面に臨ませた第1縦板部と、
前記前輪の後方に位置するフロアパネルから上方に向かって延設されると共に、その前側面を前記前輪の外周面に臨ませた第2縦板部と、
前記前輪の側方に位置するフロアパネルから上方に向かって延設されると共に、その側面を前記前輪の側面と対向させて、前記第1縦板部と前記第2縦板部とを連続させる第3縦板部と、
前記第1縦板部の後側面、前記第2縦板部の前側面、前記第3縦板部の横側面に固定されて前記前輪の外周面を覆う横板部と、
前記横板部の上部に配置された燃料タンクと、
前記第1縦板部、前記第2縦板部、前記第3縦板部の上端部に取り付けられて前記燃料タンクの上部を覆う蓋部と、を備える
ことを特徴とするフロントフェンダ。
【請求項2】
前記第1縦板部、前記第2縦板部又は、前記第3縦板部の少なくとも一つの上端部にブラケットが設けられ、前記蓋部が当該ブラケットを介して固定される
請求項1に記載のフロントフェンダ。
【請求項3】
前記蓋部の縁部に、前記第1縦板部、前記第2縦板部又は、前記第3縦板部の少なくとも一つの車室側上端部を覆うリップ部が設けられた
請求項1又は2に記載のフロントフェンダ。
【請求項4】
前記横板部及び、前記燃料タンクの底部が、前記前輪の外周に沿って屈曲して形成される
請求項1から3の何れか一項に記載のフロントフェンダ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、フロントフェンダに関し、特に、バス等のフロントフェンダに関する。
【背景技術】
【0002】
バス等においては、地面からフロアパネルまでのクリアランスを低く設定した、いわゆる低床バスが多用されている。このような低床バスでは、地上高の確保が難しいため、例えば、燃料タンク等をフロントフェンダの後方に配置する構造が採用されている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2010−149641号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、フロントフェンダの後方に燃料タンクを配置すると、車室スペースが狭められてしまう課題がある。そのため、燃料タンクが配置されたフロントフェンダ後方のスペースを有効に活用すべく、燃料タンク上部に乗客用シートを設ける構造が知られている。しかしながら、燃料タンクは車両前後方向に延在するため、燃料タンク上部には乗客が車両進行方向に対して横向きに着座する、いわゆる横向きシートしか設けられない課題もある。
【0005】
本発明の目的は、フロントフェンダ後方の車室スペースを効果的に確保することができるフロントフェンダを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上述の目的を達成するため、本発明のフロントフェンダは、車両前輪の一部を覆って車外と車室とを仕切るフロントフェンダであって、前記前輪の前方に位置するフロアパネルから上方に向かって延設されると共に、その後側面を前記前輪の外周面に臨ませた第1縦板部と、前記前輪の後方に位置するフロアパネルから上方に向かって延設されると共に、その前側面を前記前輪の外周面に臨ませた第2縦板部と、前記前輪の側方に位置するフロアパネルから上方に向かって延設されると共に、その側面を前記前輪の側面と対向させて、前記第1縦板部と前記第2縦板部とを連続させる第3縦板部と、前記第1縦板部の後側面、前記第2縦板部の前側面、前記第3縦板部の横側面に固定されて前記前輪の外周面を覆う横板部と、前記横板部の上部に配置された燃料タンクと、前記第1縦板部、前記第2縦板部、前記第3縦板部の上端部に取り付けられて前記燃料タンクの上部を覆う蓋部と、を備えることを特徴とする。
【0007】
また、前記第1縦板部、前記第2縦板部又は、前記第3縦板部の少なくとも一つの上端部にブラケットが設けられ、前記蓋部が当該ブラケットを介して固定されてもよい。
【0008】
また、前記蓋部の縁部に、前記第1縦板部、前記第2縦板部又は、前記第3縦板部の少なくとも一つの車室側上端部を覆うリップ部が設けられてもよい。
【0009】
前記横板部及び、前記燃料タンクの底部が、前記前輪の外周に沿って屈曲して形成されてもよい。
【発明の効果】
【0010】
本発明のフロントフェンダによれば、フロントフェンダ後方の車室スペースを効果的に確保することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】本発明の一実施形態に係る車両の一例を示す模式的な左側面図である。
【
図2】本発明の一実施形態に係るフロントフェンダを示す模式的な分解斜視図である。
【
図3】本発明の一実施形態に係るフロントフェンダが車両に組み付けられた状態を示す模式的な斜視図である。
【
図4】本発明の一実施形態に係る横板部及び、燃料タンクを示す模式的な縦断面図である。
【
図5】本発明の一実施形態に係る右方ブラケットを示す模式的な縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、添付図面に基づいて、本発明の一実施形態に係るフロントフェンダを説明する。同一の部品には同一の符号を付してあり、それらの名称および機能も同じである。したがって、それらについての詳細な説明は繰返さない。
【0013】
まず、
図1に基づいて、本実施形態に係る車両の一例であるバス1について説明する。バス1の車体左側面には、左前輪2よりも前方側に前乗降口4が形成されると共に、左前輪2と左後輪3との間に中乗降口5が形成されている。車室床面を構成するフロアパネル80は、前乗降口4の開口下縁及び中乗降口5の開口下縁と略同一の高さで設けられている。すなわち、本実施形態のバス1は、車体の地上高を低く設定した、いわゆる低床バスとして構成されている。
【0014】
次に、
図2〜5に基づいて、本実施形態に係るフロントフェンダ10の詳細構成について説明する。
【0015】
図2はフロントフェンダ10の分解斜視図であり、
図3はフロントフェンダ10が車両に組み付けられた状態を示す斜視図である。なお、
図2中において、符号40は図示しない車体の横フレームに固定された一対の左方ブラケットを示している。また、
図3中において、符号4は前乗降口、符号80はフロアパネル、符号90は車体外壁パネルを示している。
【0016】
図2に示すように、フロントフェンダ10は、左前輪2の前側外周面に臨む前方縦板部11と、左前輪2の後側外周面に臨む後方縦板部12と、左前輪2の右側面と対向する側方縦板部13と、左前輪2の上側外周面に臨む横板部14と、横板部14上に配置される燃料タンク15と、燃料タンク15の上部を覆う蓋部16とを備えている。
【0017】
前方縦板部11は、本発明の第1縦板部の一例であって、例えばスチール、鉄等の金属材料で略平板状に形成されている。前方縦板部11は、その平板面を車両幅方向と略平行にした状態で、フロアパネル80(
図3参照)の上面から上方に向かって延設されている。また、前方縦板部11は、その左側縁部を車体外壁パネル90(
図3参照)の車室側面に溶接等で固定されている。さらに、前方縦板部11の上端部には、前方ブラケット30をボルトで固定するための複数のボルト挿通穴11Aが形成されている。なお、前方縦板部11の上下方向の長さは、その上端が横板部14上に載置された燃料タンク15の上面縁部に近接する長さで形成されている。
【0018】
後方縦板部12は、本発明の第2縦板部の一例であって、例えばスチール、鉄等の金属材料で略平板状に形成されている。後方縦板部12は、その平板面を車両幅方向と略平行にした状態で、フロアパネル80(
図3参照)の上面から上方に向かって延設されている。また、後方縦板部12は、その左側縁部を車体外壁パネル90(
図3参照)の車室側面に溶接等で固定されている。さらに、後方縦板部12の上端部には、後方ブラケット31をボルトで固定するための複数のボルト挿通穴(不図示)が形成されている。なお、後方縦板部12の上下方向の長さは、前方縦板部11と略同一の長さで形成されている。
【0019】
側方縦板部13は、本発明の第3縦板部の一例であって、例えばスチール、鉄等の金属材料で略平板状に形成されている。側方縦板部13は、その平板面を車両前後方向と略平行にした状態で、フロアパネル80(
図3参照)の上面から上方に向かって延設されている。また、側方縦板部13は、その前側縁部を前方縦板部11の右側縁部に溶接等で固定されると共に、その後側縁部を後方縦板部12の右側縁部に溶接等で固定されて、これら前方縦板部11と後方縦板部12とを連続させる。さらに、側方縦板部13の上端部には、側方ブラケット32をボルトで固定するための複数のボルト挿通穴13Aが形成されている。なお、側方縦板部13の上下方向の長さは、前方縦板部11及び、後方縦板部12と略同一の長さで形成されている。
【0020】
横板部14は、例えばスチール、鉄等の金属材料で略平板状に形成されている。この横板部14は、左前輪2の上側外周面の形状に沿うように、略水平の水平面部14Aと、水平面部14Aの前方端から下方に傾斜する前方傾斜面部14Bと、水平面部14Aの後方端から下方に傾斜する後方傾斜面部14Cとを有する。横板部14は、その左側縁部を車体外壁パネル90(
図3参照)の車室側面に溶接等で固定されると共に、その前側縁部を前方縦板部11の後側面、後側縁部を後方縦板部12の前側面、右側縁部を側方縦板部13の左側面にそれぞれ溶接等によって固定されている。これにより、左前輪2の外周の一部を覆うタイヤアーチ部が構成されている。
【0021】
燃料タンク15は、例えば樹脂材料等で形成されており、横板部14の上面に図示しない固定用バンド等を介して取り付けられている。燃料タンク15は、その上面部15A、前側面部15B及び、後側面部15Cを略矩形状に形成されると共に、その底面部15Fを横板部14の上面に沿うように屈曲して形成されている。また、燃料タンク15は、その右側面部15D及び、左側面部15Eの下縁を横板部14の上面に沿うように切り欠いて形成されている。
【0022】
より詳しくは、
図4に示すように、燃料タンク15の内部には、水平面部14Aの上方に位置する略直方体の貯留室Aと、前方傾斜面部14Bの上方に位置して貯留室Aよりも下方に延びる貯留室Bと、後方傾斜面部14Cの上方に位置して貯留室Aよりも下方に延びる貯留室Cとが形成されている。すなわち、燃料タンク15は、水平面部14Aからの高さを抑えつつ、下方に延びる貯留室B,Cによって、その容量を効果的に確保するように構成されている。
【0023】
蓋部16は、例えば樹脂材料等で形成されており、
図2に示すように、上面視で略矩形状に形成されると共に、その前側縁部、左側縁部及び、後側縁部には下方に延びるリップ部16Aが一体的に形成されている。このリップ部16Aは、各縦板部11〜13の上端側(ボルト等)を覆う目隠しとして機能する。また、蓋部16には、複数のボルト挿入穴50が形成されると共に、蓋部16の右側縁部には、車体外壁パネル90(
図3参照)との隙間を封鎖する左側シール部材17が設けられている。
【0024】
図5に示すように、側方ブラケット32は、側方縦板部13に取り付けられる下部ブラケット33と、蓋部16が取り付けられる上部ブラケット34とを備えて構成されている。なお、前方ブラケット30及び、後方ブラケット31(何れも
図2にのみ示す)は、この側方ブラケット32と略同一構造で構成されるため、これらの詳細な説明は省略する。
【0025】
下部ブラケット33は、縦方向の取付け部33A及び、横方向の固定部33Bを有する断面略L字状に形成されている。取付け部33Aには、ボルト挿通穴33Dが形成されると共に、その裏面にはナット部材33Cが設けられている。下部ブラケット33は、ボルト挿通穴33D及び、側方縦板部13のボルト挿通穴13Aにボルト60を挿入すると共に、このボルト60を裏面のナット部材33Cと締結することで、側方縦板部13の上端部に取り付けられている。
【0026】
上部ブラケット34は、互いに対向する横方向の固定部34A及び、取付け部34Bを含む断面略U字状に形成されている。上部ブラケット34は、開口部が車室側に向けられた状態で、その固定部34Aを下部ブラケット33の固定部33Bに溶接等で固定されている。取付け部34Bには、ボルト挿通穴34Cが形成されると共に、その裏面にはナット部材34Dが設けられている。蓋部16の上部ブラケット34への取付けは、ボルト挿通穴34C及び、蓋部16のボルト挿通穴50にボルト61を挿入すると共に、このボルト61を裏面のナット部材34Dと締結することで行われる。
【0027】
次に、本実施形態に係るフロントフェンダ10による作用効果を説明する。
【0028】
本実施形態のフロントフェンダ10では、フロアパネル80から上方に延設された三枚の縦板部11〜13及び、これら縦板部11〜13に固定される横板部14によって、左前輪2を覆うタイヤアーチ部が構成されると共に、燃料タンク15が横板部14の上面に配置されている。すなわち、燃料タンク15をフロントフェンダ10の後方に配置することなく、フロントフェンダ10内に収容するように構成されている。
【0029】
したがって、本実施形態のフロントフェンダ10によれば、フロントフェンダ10後方の車室スペースを広く確保できると共に、このフロントフェンダ10後方の車室スペースに前向き乗客用シートを効果的に設けることが可能になる。
【0030】
また、本実施形態のフロントフェンダ10では、三枚の縦板部11〜13、横板部14及び、蓋部16がそれぞれ別体に形成されている。これにより、予め三枚の縦板部11〜13をフロアパネル80に取付け、且つ、これら縦板部11〜13に横板部14を固定してタイヤアーチ部を構成しておけば、その後は、燃料タンク15を横板部14に載置して、蓋部16をボルト締結によりブラケット32,40に固定するのみで、車体への組み付けを容易に行うことができるように構成されている。
【0031】
すなわち、三枚の縦板部11〜13や蓋部16を一体的に形成した場合は、車体への組み付け時に、その下縁部とフロアパネル80との位置決め作業や固定作業等、多くの工程が必要になるが、本実施形態のフロントフェンダ10によれば、これらの工程を大幅に省略することが可能になる。
【0032】
したがって、本実施形態のフロントフェンダ10によれば、車体への位置決め作業等が不要となり、車体への組み付け性を効果的に向上することができる。
【0033】
なお、本発明は、上述の実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、適宜変形して実施することが可能である。
【0034】
例えば、フロントフェンダ10は、左前輪2を覆うものに限定されず、右前輪(不図示)を覆うフロントフェンダとして構成することもできる。また、バス1は、低床バスに限定されず、乗降口とフロアパネルとの間にステップが存在する高床バスにも適用することが可能である。
【符号の説明】
【0035】
1 バス
2 左前輪
10 フロントフェンダ
11 前方縦板部
12 後方縦板部
13 側方縦板部
14 横板部
15 燃料タンク
16 蓋部
16A リップ部
30 前方ブラケット
31 後方ブラケット
32 側方ブラケット
40 左方ブラケット
80 フロアパネル
90 車体外壁パネル