特許第6201499号(P6201499)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6201499
(24)【登録日】2017年9月8日
(45)【発行日】2017年9月27日
(54)【発明の名称】分析装置
(51)【国際特許分類】
   G01N 23/223 20060101AFI20170914BHJP
【FI】
   G01N23/223
【請求項の数】3
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2013-163720(P2013-163720)
(22)【出願日】2013年8月7日
(65)【公開番号】特開2015-31668(P2015-31668A)
(43)【公開日】2015年2月16日
【審査請求日】2015年11月11日
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】000001993
【氏名又は名称】株式会社島津製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100098671
【弁理士】
【氏名又は名称】喜多 俊文
(74)【代理人】
【識別番号】100102037
【弁理士】
【氏名又は名称】江口 裕之
(72)【発明者】
【氏名】岸本 匠平
【審査官】 越柴 洋哉
(56)【参考文献】
【文献】 特開昭54−019207(JP,A)
【文献】 特開昭62−280645(JP,A)
【文献】 実開平06−084362(JP,U)
【文献】 特開昭55−104748(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 23/00−23/227
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
真空容器の内部を真空にするためのポンプと、
前記真空容器の内部を大気圧にするためのノーマルクローズ電磁弁と、
前記ポンプに電源からの電力を供給するON状態か、前記ポンプに電源からの電力を供給しないOFF状態かのいずれかの状態とする電源スイッチと、
前記電源スイッチに制御信号を出力するとともに、前記ノーマルクローズ電磁弁を開状態とする際には前記ノーマルクローズ電磁弁に電力を供給する制御基板とを備える分析装置であって、
所定量の電力を蓄える充電回路を備え、
前記真空容器と前記ポンプが直接的に連結されており、
前記ON状態の際に前記ポンプに電源から電力が供給されなくなったときには、前記ノーマルクローズ電磁弁に前記充電回路から所定量の電力を供給することで、前記真空容器の内部を大気圧にすることを特徴とする分析装置。
【請求項2】
前記充電回路は、前記ノーマルクローズ電磁弁を開状態とするための第一所定量の電力を蓄える第一コンデンサと、
前記第一コンデンサによって開状態となった前記ノーマルクローズ電磁弁の開状態を維持するための第二所定量の電力を蓄える第二コンデンサとを有することを特徴とする請求項1に記載の分析装置。
【請求項3】
前記真空容器の内部には、試料が配置されるようになっており、
前記試料にX線を照射するX線管と、
前記試料からの蛍光X線の強度を検出する検出器とを備えることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の分析装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ノーマルクローズ電磁弁を制御する分析装置に関し、特に真空容器の内部に配置された試料を分析するエネルギー分散型蛍光X線分析装置に関する。
【背景技術】
【0002】
試料中に含まれる元素の濃度を算出するために、エネルギー分散型蛍光X線分析装置が用いられている(例えば、特許文献1参照)。
図3は、従来のエネルギー分散型蛍光X線分析装置の構成の一例を示す概略構成図である。エネルギー分散型蛍光X線分析装置101は、試料Sが内部に配置される分析チャンバ(真空容器)20と、分析チャンバ20に取り付けられたX線管(図示せず)及び検出器(図示せず)と、真空オプション150と、エネルギー分散型蛍光X線分析装置101全体を制御するメイン基板(制御基板)30とを備える。
【0003】
分析チャンバ20は、四角形板状の試料ベース23と、四角形板状の上面を有する四角筒形状の上部チャンバ(試料室)21と、V字形状の筐体を有する下部チャンバ(測定室)22とを有する。試料ベース23の中央部には、円形状の開口が形成されている。上部チャンバ21の一つの側壁の下面と試料ベース23の上面側の一辺とが軸となるように、上部チャンバ21は試料ベース23に対して回転可能に取り付けられている。また、下部チャンバ22は、開口を塞ぐように試料ベース23の下面側に取り付けられている。そして、上部チャンバ21と下部チャンバ22との内部は、真空オプション150と真空用配管25を介して連結されている。
【0004】
このような分析チャンバ20によれば、上部チャンバ21を開くことにより、試料Sの分析面が開口を塞ぐように試料Sを配置することができ、試料Sを配置した後、上部チャンバ21を閉めて、上部チャンバ21と下部チャンバ22との内部を真空オプション150によって高真空に排気したり、試料Sを分析した後、上部チャンバ21と下部チャンバ22との内部に真空オプション150によって外気を導入したりすることができるようになっている。
【0005】
ここで、上部チャンバ21と下部チャンバ22との内部を所定のタイミングで高真空にしたり大気圧にしたりする真空オプション150について説明する。真空オプション150は、流路ブロック51と、ロータリポンプ(RP)60と、スイッチボックス(電源スイッチ)61と、AC電源(交流電源)62と、ノーマルクローズ電磁弁(NC電磁弁、定格24V、250mA)70と、ピラニゲージ(真空計)81と、圧力センサ82を有する中継基板(制御基板)180とを備える。
【0006】
流路ブロック51には、流路ブロック51を貫通する主流路52と、主流路52の第一地点と外部とが連結された第一流路53と、主流路52の第二地点と外部とが連結された第二流路54と、主流路52の第三地点と外部とが連結された第三流路55とが形成されている。そして、主流路52の一端部は、真空用配管25と連結されるとともに、主流路52の他端部は、ピラニゲージ81と連結されている。
【0007】
第一流路53は、ロータリポンプ60と連結されており、ロータリポンプ60は、スイッチボックス61を介してAC電源62と電気的に接続されている。そして、スイッチボックス61は、メイン基板30と電気的に接続されている。これにより、ロータリポンプ60は、メイン基板30からの制御信号によってスイッチボックス61がON状態になることで、AC電源62から電力が供給されて作動し、一方、メイン基板30からの制御信号によってスイッチボックス61がOFF状態になることで、AC電源62からの電力供給が止まり、動作を停止するようになっている。
【0008】
第二流路54は、NC電磁弁70と連結されている。NC電磁弁70は、電力が供給されていないときには閉状態となっており、電力が供給されたときに開状態に変化する弁であって、中継基板180と電気的に接続されている。これにより、NC電磁弁70は、中継基板180から電力が供給されるまで、閉状態(遮断状態)となっており、中継基板180から所定のタイミングで電力が供給されると、開状態(流通状態)になり、第二流路54内に外気を導入するようになっている。
【0009】
第三流路55は、中継基板180に設けられた圧力センサ82と連結されている。また、中継基板180にはピラニゲージ81が電気的に接続されている。そして、中継基板180は、メイン基板30とも電気的に接続されている。
【0010】
このような真空オプション150によれば、ユーザが分析を開始するときには、上部チャンバ21の内部に試料Sを配置した後、上部チャンバ21を閉めて、メイン基板30から制御信号をスイッチボックス61に出力することで、スイッチボックス61をON状態にする。これにより、ロータリポンプ60は、AC電源62から電力が供給されて作動し、上部チャンバ21と下部チャンバ22の内部を高真空に排気する。なお、このとき、NC電磁弁70は閉状態になっている。
【0011】
その後、ユーザが分析を終了するときには、メイン基板30から制御信号をスイッチボックス61と中継基板180とに出力することで、スイッチボックス61をOFF状態にするとともに、中継基板180からNC電磁弁70に電力が供給される。これにより、ロータリポンプ60は、動作を停止するとともに、NC電磁弁70は開状態になり、第二流路54内に外気が導入される。そして、中継基板180からNC電磁弁70に電力が供給されている間、NC電磁弁70は開状態を維持し、上部チャンバ21と下部チャンバ22との内部が大気圧になる。圧力センサ82が大気圧になったことを検知すると、中継基板180からNC電磁弁70への電力供給を停止してNC電磁弁70は閉状態に戻る。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【特許文献1】特開2006−242663号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
しかしながら、上述したようなエネルギー分散型蛍光X線分析装置101では、分析を行っている最中に停電が発生すると、ロータリポンプ60にAC電源62から電力が供給されなくなり、ロータリポンプ60は動作を停止する。このとき、上部チャンバ21と下部チャンバ22との内部は高真空状態であるため、ロータリポンプ60から上部チャンバ21と下部チャンバ22との内部にオイル等の物質が移動することになるが、停電が発生しているため、大気圧にするためのNC電磁弁70に電力を供給することができず、上部チャンバ21と下部チャンバ22との内部がオイル等の物質によって汚れるということがあった。
そこで、本発明は、停電が発生しても、真空容器の内部が汚れることを防止することができる分析装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
上記課題を解決するためになされた本発明の分析装置は、真空容器の内部を真空にするためのポンプと、前記真空容器の内部を大気圧にするためのノーマルクローズ電磁弁と、前記ポンプに電源からの電力を供給するON状態か、前記ポンプに電源からの電力を供給しないOFF状態かのいずれかの状態とする電源スイッチと、前記電源スイッチに制御信号を出力するとともに、前記ノーマルクローズ電磁弁を開状態とする際には前記ノーマルクローズ電磁弁に電力を供給する制御基板とを備える分析装置であって、所定量の電力を蓄える充電回路を備え、前記ON状態の際に前記ポンプに電源から電力が供給されなくなったときには、前記ノーマルクローズ電磁弁に前記充電回路から所定量の電力を供給することで、前記真空容器の内部を大気圧にするようにしている。
【0015】
本発明の分析装置によれば、分析を行っている最中に停電が発生すると、電源からポンプへの電力供給が止まってポンプは動作を停止する。このとき、停電中のためノーマルクローズ電磁弁に外部から電力を供給することはできないが、充電回路から所定量の電力が供給される。これにより、ノーマルクローズ電磁弁は開状態になり、真空容器の内部に外気が導入される。その結果、真空容器の内部が大気圧になり、ポンプから真空容器内へのオイル等の物質の移動を防止することができる。
【発明の効果】
【0016】
以上のように、本発明の分析装置によれば、停電が発生した際に真空容器の内部が汚れることを防止することができる。
【0017】
(他の課題を解決するための手段及び効果)
また、上記の発明において、前記充電回路は、前記ノーマルクローズ電磁弁を開状態とするための第一所定量の電力を蓄える第一コンデンサと、前記第一コンデンサによって開状態となった前記ノーマルクローズ電磁弁の開状態を維持するための第二所定量の電力を蓄える第二コンデンサとを有するようにしてもよい。
本発明の分析装置によれば、ノーマルクローズ電磁弁を開状態とするためには高い電力が必要となり、ノーマルクローズ電磁弁の開状態を維持するためには低い電力で充分であるため、その役割を個別のコンデンサに与えることができる。
【0018】
さらに、上記の発明において、前記真空容器の内部には、試料が配置されるようになっており、前記試料にX線を照射するX線管と、前記試料からの蛍光X線の強度を検出する検出器とを備えるようにしてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】本発明のエネルギー分散型蛍光X線分析装置の一例を示す概略構成図。
図2図1に示す充電回路の回路図。
図3】従来のエネルギー分散型蛍光X線分析装置を示す概略構成図。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明の実施形態について図面を用いて説明する。なお、本発明は、以下に説明するような実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々の態様が含まれることはいうまでもない。
【0021】
図1は、本発明に係るエネルギー分散型蛍光X線分析装置の構成の一例を示す概略構成図である。なお、上述したエネルギー分散型蛍光X線分析装置101と同様のものについては、同じ符号を付している。
エネルギー分散型蛍光X線分析装置1は、試料Sが内部に配置される分析チャンバ(真空容器)20と、分析チャンバ20に取り付けられたX線管(図示せず)及び検出器(図示せず)と、真空オプション50と、エネルギー分散型蛍光X線分析装置1全体を制御するメイン基板(制御基板)30とを備える。
【0022】
真空オプション50は、流路ブロック51と、ロータリポンプ(RP)60と、スイッチボックス(電源スイッチ)61と、AC電源(交流電源)62と、ノーマルクローズ電磁弁(NC電磁弁、定格24V、250mA)70と、ピラニゲージ(真空計)81と、圧力センサ82を有する中継基板(制御基板)80と、充電回路85とを備える。ここで、図2は、図1に示す充電回路85の回路図である。
【0023】
充電回路85は、第一コンデンサ85bと第二コンデンサ85cとリレー85aとを有する。第一コンデンサ85bは、NC電磁弁70を開状態とするための第一所定量(例えば24V)の電力を蓄えることが可能なものである。また、第二コンデンサ85cは、第一コンデンサ85bによって開状態となったNC電磁弁70の開状態を維持するための第二所定量(例えば12V)の電力を蓄えることが可能なものである。そして、リレー85aは、24Vの電力が供給されなくなったときには、1pinと5pinとを導通するように構成されている。
【0024】
このような充電回路85によれば、中継基板80から24Vの電力が供給されることで、第一コンデンサ85bと第二コンデンサ85cとに所定量の電力が蓄えられていく。そして、第一コンデンサ85bと第二コンデンサ85cとに所定量の電力が蓄えられた後、中継基板80から24Vの電力が供給されなくなったとき、つまり停電が発生したときには、リレー85aは1pinと5pinとを導通し、NC電磁弁70に第一コンデンサ85bから電力が供給され、NC電磁弁70が開状態になり、その後、第二コンデンサ85cから電力が供給され、開状態が所定時間(例えば3分)維持されるようになっている。
【0025】
ここで、真空オプション50の動作について説明する。ユーザが分析を開始するときには、上部チャンバ21の内部に試料Sを配置した後、上部チャンバ21を閉めて、メイン基板30から制御信号をスイッチボックス61に出力することで、スイッチボックス61をON状態にする。これにより、ロータリポンプ60は、AC電源62から電力が供給されて作動し、上部チャンバ21と下部チャンバ22との内部を高真空に排気する。一方、中継基板80から24Vの電力が供給されることで、第一コンデンサ85bと第二コンデンサ85cとに所定量の電力が蓄えられていく。
【0026】
ユーザが分析を終了するときには、メイン基板30から制御信号をスイッチボックス61と中継基板80とに出力することで、スイッチボックス61をOFF状態にするとともに、中継基板80からNC電磁弁70に24Vの電力が供給される。これにより、ロータリポンプ60は、動作を停止するとともに、NC電磁弁70は開状態になり、第二流路54内に外気が導入される。そして、中継基板80からNC電磁弁70に24Vの電力が供給されている間、NC電磁弁70は開状態を維持し、上部チャンバ21と下部チャンバ22との内部が大気圧になる。圧力センサ82が大気圧になったことを検知すると、中継基板80からNC電磁弁70に24Vの電力を供給することを停止し、NC電磁弁70は閉状態に戻る。
【0027】
そして、本発明に係る真空オプション50によれば、分析を行っている最中に、停電が発生すると、ロータリポンプ60にAC電源62から電力が供給されなくなり、ロータリポンプ60は動作を停止する。また、充電回路85にも中継基板80から24Vの電力が供給されなくなる。その結果、リレー85aは1pinと5pinとを導通する。そして、NC電磁弁70に第一コンデンサ85bから電力が供給され、NC電磁弁70は開状態になり、その後、第二コンデンサ85cから電力が供給され、開状態が所定時間(例えば3分)維持される。これにより、第二流路54内に外気が導入され、上部チャンバ21と下部チャンバ22との内部が大気圧になる。
【0028】
以上のように、本発明のエネルギー分散型蛍光X線分析装置1によれば、使用中に停電が発生しても、上部チャンバ21と下部チャンバ22との内部がロータリポンプ60のオイル等によって汚れることを防止することができる。
【産業上の利用可能性】
【0029】
本発明は、ノーマルクローズ電磁弁を制御する分析装置に利用することができる。
【符号の説明】
【0030】
1 エネルギー分散型蛍光X線分析装置(分析装置)
20 分析チャンバ(真空容器)
30 メイン基板(制御基板)
60 ロータリポンプ
61 スイッチボックス(電源スイッチ)
62 AC電源
70 ノーマルクローズ電磁弁
80 中継基板(制御基板)
85 充電回路
図1
図2
図3