(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6201522
(24)【登録日】2017年9月8日
(45)【発行日】2017年9月27日
(54)【発明の名称】ごみ処理システム
(51)【国際特許分類】
B09B 3/00 20060101AFI20170914BHJP
C02F 11/06 20060101ALI20170914BHJP
C02F 3/28 20060101ALI20170914BHJP
C02F 11/00 20060101ALI20170914BHJP
【FI】
B09B3/00 303Z
B09B3/00 CZAB
B09B3/00 Z
C02F11/06 B
C02F3/28 A
C02F11/00 C
【請求項の数】2
【全頁数】7
(21)【出願番号】特願2013-173604(P2013-173604)
(22)【出願日】2013年8月23日
(65)【公開番号】特開2015-39690(P2015-39690A)
(43)【公開日】2015年3月2日
【審査請求日】2016年8月19日
(73)【特許権者】
【識別番号】501370370
【氏名又は名称】三菱重工環境・化学エンジニアリング株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100134544
【弁理士】
【氏名又は名称】森 隆一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100064908
【弁理士】
【氏名又は名称】志賀 正武
(74)【代理人】
【識別番号】100108578
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 詔男
(74)【代理人】
【識別番号】100126893
【弁理士】
【氏名又は名称】山崎 哲男
(74)【代理人】
【識別番号】100149548
【弁理士】
【氏名又は名称】松沼 泰史
(72)【発明者】
【氏名】水谷 洋
(72)【発明者】
【氏名】長 克美
(72)【発明者】
【氏名】尾田 誠人
(72)【発明者】
【氏名】松田 友紀
【審査官】
大島 彰公
(56)【参考文献】
【文献】
特開2009−285612(JP,A)
【文献】
特開昭56−127109(JP,A)
【文献】
特開2005−249262(JP,A)
【文献】
特開2003−268379(JP,A)
【文献】
特開2012−254393(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B09B 3
C02F 3,11
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
高水分有機性廃棄物を含む廃棄物を焼却処理する前段において前記廃棄物を貯留するごみピットと、
前記ごみピットの下部に設けられ、前記廃棄物に含まれる含有機物液が貯留される液溜りと、
前記液溜りから供給される前記含有機物液をメタン発酵させるメタン発酵槽と、
前記ごみピットに前記廃棄物を投入する搬入口と前記液溜りとの間に設けられ、前記メタン発酵槽におけるメタン発酵を促進させる発酵促進装置であって、前記ごみピットに貯留された前記廃棄物を加温する加温装置を有する発酵促進装置と、
前記液溜りと前記メタン発酵槽とを直接的に接続して、前記含有機物液を前記メタン発酵槽に送る含有機物液ラインと、を有することを特徴とするごみ処理システム。
【請求項2】
前記発酵促進装置として、前記廃棄物を破砕する破砕装置を設けたことを特徴とする請求項1に記載のごみ処理システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、厨芥ごみ(生ごみ、食品廃棄物、有機性汚泥)などの低質ごみを含む廃棄物を焼却処理するごみ処理システムに関する。
【背景技術】
【0002】
厨芥ごみなどの水分の多い(発熱量の低い)いわゆる低質ごみは、ごみ処理設備において不安定燃焼の原因となっている。そのために、厨芥ごみを含む廃棄物は、焼却の前段にて貯留されるごみピットの中でクレーンにより繰り返し撹拌混合されることが一般的である。これにより、発熱量の高い高質・中質ごみと低質ごみとが撹拌混合され、水分が均等化される。
【0003】
一方、厨芥ごみは有機物を多く含むため、これを資源化する試みも多くなされている。例えば、厨芥ごみの資源化の手法としては、事前に廃棄物より分別した厨芥ごみをメタン発酵させてバイオガスを取り出して熱量を有効に活用する方法が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第5039634号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、ごみピット内では厨芥ごみが部分的に液状化して底部のごみ汚水とともに溜まっていくため、底部のごみ汚水などとともに排水処理の負荷を上げたり、炉内に噴霧されて熱量を損失させている。
【0006】
一方、メタン発酵を行うためには搬入される廃棄物の分別の種類を増やす必要があり、相当な労力を要する。また、分別が徹底されていない場合は、各々の設備にてトラブルの原因となったり、大掛かりな前処理設備(不適物選別設備)が必要となる。
【0007】
この発明は、このような事情を考慮してなされたもので、その目的は、廃棄物からのエネルギー回収効率を向上させることができるごみ処理システムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の目的を達成するために、この発明は以下の手段を提供している。
本発明のごみ処理システムは、高水分有機性廃棄物を含む廃棄物を焼却処理する前段において前記廃棄物を貯留するごみピットと、前記ごみピットの下部に設けられ、前記廃棄物に含まれる含有機物液が貯留される液溜りと、前記液溜りから供給される前記含有機物液をメタン発酵させるメタン発酵槽と、
前記ごみピットに前記廃棄物を投入する搬入口と前記液溜りとの間に設けられ、前記メタン発酵槽におけるメタン発酵を促進させる発酵促進装置であって、前記ごみピットに貯留された前記廃棄物を加温する加温装置を有する発酵促進装置と、前記液溜りと前記メタン発酵槽とを直接的に接続して、前記含有機物液を前記メタン発酵槽に送る含有機物液ラインと、を有することを特徴とする。
【0009】
上記構成によれば、メタン発酵槽にて含有機物液をメタン発酵させてエネルギー回収を行うため、廃棄物からのエネルギー回収効率を向上させることができる。
また、高水分有機性廃棄物は他の廃棄物と一括して収集され、ごみピット内で可溶化されて含有機物液が分離されるため、高水分有機性廃棄物の資源化が容易となる。
また、焼却処理される水分が減少するため、不安定燃焼を防止することができる。
【0011】
上記構成によれば、高水分有機性廃棄物の可溶化を促進させることができる。即ち、高水分有機性廃棄物に含まれる含有機物液の分離の速度を高めることができる。
また、加温装置によって高水分有機性廃棄物を可溶化温度にまで加温することができる。
【0012】
上記ごみ処理システムにおいて、前記発酵促進装置として、前記廃棄物を破砕する破砕装置を設けることが好ましい。
【0013】
上記構成によれば、ビニールなどの発酵不適物を含む高水分有機性廃棄物を破砕することによって、高水分有機性廃棄物を可溶化しやすい性状に加工することができる。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、メタン発酵槽にて含有機物液をメタン発酵させてエネルギー回収を行うため、廃棄物からのエネルギー回収効率を向上させることができる。
また、高水分有機性廃棄物は他の廃棄物と一括して収集され、ごみピット内で可溶化されて含有機物液が分離されるため、高水分有機性廃棄物の資源化が容易となる。
また、焼却処理される水分が減少するため、不安定燃焼を防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】本発明の実施形態のごみ処理システムの概略構成図である。
【
図2】本発明の実施形態のごみ処理システムのごみピット周辺の概略構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の実施形態について図面を参照して詳細に説明する。
本実施形態のごみ処理システム1(ごみ処理施設)は、処理の上流側より順に、ごみピット2と、焼却炉3(ストーカ炉)と、ボイラ4と、減温塔5と、ろ過式集じん器6と、触媒反応塔7と、誘引送風機8と、煙突9と、を有している。ごみピット2は、廃棄物W(ごみ)を焼却炉3の前段において廃棄物Wを貯留する空間である。ごみピット2周辺、即ち廃棄物Wを焼却炉3に受け入れる前の処理システムの構成については、後で詳述する。
【0019】
焼却炉3は、耐火煉瓦で囲まれたストーカを有し、乾燥・撹拌しながらごみを焼却する炉である。ボイラ4は、廃棄物を燃焼させることによって発生した熱を回収する熱源機器である。減温塔5は、ボイラ4を通過した排ガスに水を噴霧して急冷する設備である。ろ過式集じん器6は、ダイオキシン類などの有害物質を除去する設備である。触媒反応塔7は、排ガスに含まれるNOxなどの窒素酸化物を触媒の働きで窒素と水にして除去する設備である。誘引送風機8は、排ガスを煙突9へ送るための設備である。
【0020】
ごみ処理システム1の構成は、上記した構成に限ることはなく、適宜変更することが可能である。例えば、焼却炉3として流動床炉を用いてもよいし、廃棄物を焼却して出た廃熱を用いて発電を行う蒸気タービン発電機を追加してもよい。
【0021】
次に、本実施形態のごみ処理システム1のごみピット2について説明する。
図2に示すように、ごみピット2は、厨芥ごみ(高水分有機性廃棄物)を含む廃棄物Wを貯留可能な空間である。ごみピット2は、例えばトラックなどによって廃棄物Wを搬入するための搬入口であるプラットホーム11を有している。
【0022】
ごみピット2の天井には、ごみピット2に貯留された廃棄物を搬送可能なごみクレーン17が設置されている。ごみクレーン17は、ごみピット2から廃棄物Wを吊り上げて焼却炉3側に供給する搬送装置である。具体的には、ごみクレーン17で吊り上げられた廃棄物Wは、ごみホッパ12及びフィーダ13を介して焼却炉3(
図1を参照)に供給される。
【0023】
ごみピット2の下部には液溜り14が設けられている。即ち、ごみピット2の底部は、液体Lが溜まるとともに、溜められた液体Lを取り出しやすい形状となっている。具体的には、ごみピット2は、平坦形状の底面と、この底面より下方に一段下がった形状の液溜り14と、を有している。
【0024】
ごみピット2には、破砕装置15が設けられている。破砕装置15は、ごみピット2に投入される廃棄物Wを破砕可能な位置に設けられている。換言すれば、破砕装置15は、プラットホーム11と液溜り14との間に設けられている。
破砕装置15としては、2軸破砕手段、ハンマー破砕手段、圧縮破砕手段などを用いた破砕装置15を採用することができる。破砕装置15は、粗破砕を行う装置と微破砕を行う装置の2段階破砕としてもよい。
【0025】
なお、プラットホーム11から廃棄物Wを投入する際は、破砕装置15が厨芥ごみを含んだ廃棄物Wを受けるようにしてもよいし、厨芥ごみのみが破砕装置15に受け入れられるように、事前に分別してもよい。即ち、有機性廃棄物と、それ以外の廃棄物とを分別し、有機性廃棄物のみを破砕する構成としてもよい。
【0026】
ごみピット2の側部には、加温装置16が設けられている。加温装置16は、ごみピット2の底部に貯留した廃棄物Wを加温するための装置である。加温装置16としては、ごみピット2内に直接蒸気を吹き込む手段や、蒸気・温水による間接加温手段を採用することができる。また、焼却炉3の廃熱を利用してもよい。
【0027】
ごみピット2の液溜り14には、含有機物液ライン18を介してメタン発酵槽19が接続されている。メタン発酵槽19は、発酵槽内の嫌気性菌(微生物)に高分子有機物を分解させて、メタンガス(バイオガス)、二酸化炭素、硫化水素を発生させる設備である。ここで発生したメタンガスは発電装置等に送給され利用することができる。
【0028】
含有機物液ライン18は、液溜り14の底面近傍の側面に形成された排出口20と、排出口20に設けられたスクリーン(図示せず)と、を有している。排出口20は、液溜り14の底面近傍の側面のみならず、底面に設ける構成としてもよい。
【0029】
含有機物液ライン18には、可溶化有機物移送装置22が設けられている。可溶化有機物移送装置22は、液溜り14に溜められた液体Lをメタン発酵槽19に移送するための装置であり、例えば、ポンプやコンベアを採用することができる。
【0030】
次に、本実施形態のごみ処理システム1の作用について説明する。
まず、トラックなどの搬送手段によって搬送されてきた厨芥ごみを含む廃棄物Wがプラットホーム11より破砕装置15を介してごみピット2に投入される。廃棄物Wには、高質ごみである新聞紙、ちり紙などの紙類や、低質ごみである厨芥ごみなどの高水分有機性廃棄物が含まれている。廃棄物Wに含まれる高水分有機性廃棄物としては、厨芥ごみの他に、食品廃棄物や有機性汚泥を挙げることができる。
【0031】
廃棄物Wは、破砕装置15によって破砕されて、ビニールなどの生物発酵不適物が破砕されて、可溶化しやすい性状に加工される。即ち、破砕装置15によって、廃棄物W中の厨芥ごみは、可溶化されやすくなり後のメタン発酵に適した性状となる。換言すれば、破砕装置15は発酵促進装置として機能する。
一方、ごみピット2中の廃棄物Wに含まれる紙類などの一部の高質ごみは、厨芥ごみとして持ち込まれる脂質や、厨芥ごみの可溶化により発生するアンモニアなどのメタン発酵阻害物質を吸収し、保持することでこれらメタン発酵阻害物質のメタン発酵槽19への流入を防止する。
ごみピット2に廃棄物Wを投入する際は、厨芥ごみのみが破砕装置15に受け入れられるように、事前に分別してもよい。これにより、紙類などの水分の低い高質ごみ、中間の水分の中質ごみの形状を留めておくことができ、ごみピット2内に設置するごみクレーン17での移送への悪影響を無いものとすることができる。
【0032】
次いで、ごみピット2に貯留された廃棄物Wは、加温装置16によって加温される。即ち、廃棄物Wは可溶化しやすい温度まで加熱される。具体的には、可溶化に適した温度である30°〜40°まで加温される。即ち、加温装置16は、破砕装置15と同様に、発酵促進装置として機能する。
【0033】
上記した、破砕工程、加温工程を経て、廃棄物W中の厨芥ごみは可溶化され、流動性を有する液状となる。これにより、ごみ汚水などとともにごみピット2の底部及び液溜り14に溜る。この液体Lは、有機物を含む液体(含有機物液)である。次いで、含有機物液は、可溶化有機物移送装置22によって回収され、メタン発酵槽19に送られる。破砕された発酵不適物は、可溶化した厨芥ごみと、必然的に分離される。
【0034】
メタン発酵槽19に導入された含有機物液は、メタン発酵槽19内の嫌気性菌の作用により、メタンガス(バイオガス)、二酸化炭素、硫化水素などに分解される。メタン発酵槽19にて発生したメタンガスは、発電、ボイラ4などに利用することができる。
【0035】
一方、可溶化しなかった廃棄物Wは、ごみクレーン17により焼却炉3に送られて処理される。即ち、ごみクレーン17で掴むことができない廃棄物Wがメタン発酵槽19に送られる。
【0036】
上記実施形態によれば、厨芥ごみを可溶化することによって得られた含有機物液をメタン発酵槽19にてメタン発酵させてエネルギー回収を行うため、廃棄物Wからのエネルギー回収効率を向上させることができる。
【0037】
また、厨芥ごみは他の廃棄物Wと一括して収集され、ごみピット2内で可溶化されて含有機物液が分離されるため、厨芥ごみの資源化が容易となる。
また、焼却処理される水分が減少するため、不安定燃焼を防止することができる。
【0038】
また、発酵促進装置として機能する破砕装置15を設けてビニールなどの発酵不適物を含む厨芥ごみを破砕することによって、厨芥ごみを可溶化しやすい性状に加工することができる。
また、発酵促進装置として機能する加温装置16を設けたことによって、厨芥ごみを可溶化温度にまで加温することができる。
【0039】
また、可溶化された含有機物液がごみピット2底部を流れる際に、ごみピット2内に貯留されたその他の廃棄物Wがスクリーンの役割を果たすことによって、資源化に送られる含有機物液と可溶化しない不適物との分離を促進させることができる。
また、廃棄物Wに含まれる紙類などの一部の高質ごみがメタン発酵阻害物質を吸い取ることによって、それらの全量がメタン発酵槽19に流入することがなくなる。これにより、メタン発酵運転の安定運転が可能となる。
【0040】
なお、本発明の技術範囲は上記の実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において、種々の変更を加えることが可能である。また、上記複数の実施形態で説明した特徴を任意に組み合わせた構成であってもよい。
【符号の説明】
【0041】
1 ごみ処理システム
2 ごみピット
3 焼却炉
4 ボイラ
5 減温塔
6 ろ過式集じん器
7 触媒反応塔
8 誘引送風機
9 煙突
11 プラットホーム(搬入口)
12 ごみホッパ
13 フィーダ
14 液溜り
15 破砕装置
16 加温装置
17 ごみクレーン
18 含有機物液ライン
19 メタン発酵槽
20 排出口
22 可溶化有機物移送装置
L 液体
W 廃棄物