特許第6201532号(P6201532)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6201532
(24)【登録日】2017年9月8日
(45)【発行日】2017年9月27日
(54)【発明の名称】半導体装置
(51)【国際特許分類】
   H01L 25/07 20060101AFI20170914BHJP
   H01L 25/18 20060101ALI20170914BHJP
   H01L 23/29 20060101ALI20170914BHJP
   H01L 23/40 20060101ALI20170914BHJP
【FI】
   H01L25/04 C
   H01L23/36 A
   H01L23/40 Z
【請求項の数】6
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2013-180021(P2013-180021)
(22)【出願日】2013年8月30日
(65)【公開番号】特開2015-50267(P2015-50267A)
(43)【公開日】2015年3月16日
【審査請求日】2016年7月13日
(73)【特許権者】
【識別番号】000005234
【氏名又は名称】富士電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100105854
【弁理士】
【氏名又は名称】廣瀬 一
(74)【代理人】
【識別番号】100103850
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 秀▲てつ▼
(72)【発明者】
【氏名】飯塚 祐二
【審査官】 井上 和俊
(56)【参考文献】
【文献】 特開2004−247684(JP,A)
【文献】 実公昭46−008326(JP,Y1)
【文献】 実開昭54−082352(JP,U)
【文献】 特開2012−119618(JP,A)
【文献】 特開2006−128260(JP,A)
【文献】 特開2007−073743(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 25/07
H01L 23/29
H01L 23/40
H01L 25/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
半導体チップと外部電極を有する半導体素子と、
該半導体素子が固定されている放熱フィンと、
該放熱フィンが固定され、冷却媒体が通流される冷却媒体通路を有する外部冷却体と、
を備え、
前記半導体素子は突出した放熱部を有し、該放熱部が前記放熱フィンに挿入されて固定され、
該放熱フィンは、該放熱フィンの外周面に形成した雄ねじ部と前記外部冷却体に形成した雌ねじ部との螺合により前記外部冷却体に固定されていることを特徴とする半導体装置。
【請求項2】
前記半導体素子は、前記放熱部に形成した雄ねじ部と前記放熱フィンに形成した雌ねじ部との螺合により前記放熱フィンに固定されていることを特徴とする請求項1に記載の半導体装置。
【請求項3】
前記外部冷却体に複数の前記半導体素子が固定されていることを特徴とする請求項1に記載の半導体装置。
【請求項4】
複数の前記半導体素子が有する前記外部電極をそれぞれ接続する外部接続端子を備え、半導体回路が構成されていることを特徴とする請求項に記載の半導体装置。
【請求項5】
記半導体素子は、前記半導体チップが樹脂封止されることにより形成されていることを特徴とする請求項1に記載の半導体装置。
【請求項6】
前記半導体素子の封止用樹脂の表面の一部にAl、AlN、Si、Si0、BNの何れか1つで形成される表面保護膜を有し、側面の一部に沿面距離を確保する凹凸部が形成されていることを特徴とする請求項に記載の半導体装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、パワーデバイス、高周波用途のスイッチングICなどの半導体装置に関し、特にパワー半導体素子を搭載した半導体装置に関する。
【背景技術】
【0002】
パワーデバイスは、電力変換用途のスイッチングデバイスとして用いられている。従来のパワーデバイスとしては、例えば特許文献1に記載されているものが知られている。このパワーデバイスの構成は、図3に示すように、ベース101aおよび放熱フィン101bで構成される良熱伝導体の材質で製作されたヒートシンク101のベース101a上に半導体チップ102を実装した絶縁基板103が固着され、半導体チップ102および絶縁基板103が樹脂ケース104で囲まれて構成された単体のモジュールを形成する。また、各々の半導体チップの表面電極には通常アルミニウムワイヤ105などが接合されることにより、回路パターン106を有する絶縁基板との間の導通を保持する構成を有する。
また、特許文献2に記載されているように、複数の半導体装置用ユニットを弾性接着剤でボルト締めユニットに収納し、このボルト締めユニットを冷却体にマウントするようにした半導体装置が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2007−194442号公報
【特許文献2】特開2011−142124号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、上記特許文献1に記載されている従来例では、パワー半導体装置は通常インバータなどの電力変換装置で用いられる。このためには、例えばフルブリッジ回路を構成するために、図3に示した樹脂ケース104の上端を閉塞する蓋体107を貫通して上方に突出する端子108を基板又はバスバーのような配線体で接続し、個別の半導体装置間の配線を行う。さらに、出力側や入力側(電源側)の接続を外部と行う必要がある。
これらの条件と装置の全体外形の制約から半導体装置の必要外形が定まり、用途に応じて前述の半導体装置の内部構造における絶縁基板103の枚数、これら間の接続が付随して定まる関係となる。
【0005】
近年の電力変換装置の需要の高まりと、半導体チップ102の特性改善の向上により、需要に応じて定格別に形式を充実させる場合、半導体チップ102、絶縁基板103、樹脂ケース104、蓋体107および端子108を必要容量に応じて用意する必要がある。
このような背景により、絶縁基板103の外形とヒートシンク101上で絶縁基板103を相互接続する構成種別が増大している。このため、製造に必要な治工具種別が増加する一方で、必要需要の変化が早くなってきており、個別の生産設備、治工具類の使用期間は短くなる傾向がある。
【0006】
これらの状況は、コスト低減を図る上での阻害要件であり、加えて品質安定化の観点でも量産効率を下げる要因となっている。したがって、これらの半導体装置の安価な供給が困難な状況が生じつつある。
そこで、本発明では、上記従来例の問題点に着目してなされたものであり、半導体装置を構成する基本構造を共通化して、生産効率の向上を図り、安価で装置適用が容易な半導体装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために、本発明に係る半導体装置の態様は、半導体チップと外部電極を有する半導体素子と、該半導体素子が固定されている放熱フィンと、該放熱フィンが固定され、冷却媒体が通流される冷却媒体通路を有する外部冷却体と、を備え、前記半導体素子は突出した放熱部を有し、該放熱部が前記放熱フィンに挿入されて固定され、該放熱フィンは、該放熱フィンの外周面に形成した雄ねじ部と前記外部冷却体に形成した雌ねじ部との螺合により前記外部冷却体に固定されている。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、半導体装置の基本構成を共通化することができ、必要定格に応じた一体化を行うとともに、放熱フィンをも一体化することで様々なニーズに則した構成を実現することができる。したがって、生産効率の向上を図り、安価で装置適用が容易で、さらに冷却性能を向上させることができる半導体装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本発明に係る半導体装置の一実施形態を示す断面図である。
図2図1の半導体素子を示す拡大断面図である。
図3】従来例を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の一実施形態について図面を伴って説明する。
図1は本発明に係る半導体装置の第1の実施形態の全体構成を示す断面図、図2図1の半導体素子を示す拡大断面図である。
図1において、1は半導体装置であって、この半導体装置1は、半導体素子2と、この半導体素子2を固定支持する放熱フィン3と、放熱フィン3を1つ以上載置する外部冷却体4とを備えている。
【0012】
半導体素子2は、図2に示すように、ベース基板11を有する。このベース基板11は、例えば熱伝導率の高いセラミックスで構成される絶縁基板12と、この絶縁基板12の上面に形成された比較的厚みが厚い銅板で構成される配線パターン用板部13と、下面に形成された同様に銅製の放熱部14とを備えている。
配線パターン用板部13上には絶縁ゲートバイポーラトランジスタ(IGBT)、パワーMOSFET(Power Metal-Oxide Semiconductor Field-Effect Transistor)等のパワー半導体スイッチング素子を内蔵する半導体チップ15が実装されている。
【0013】
放熱部14は、直径が高さより長い円柱状に形成され、外周面に機械加工によって雄ねじ部14aが形成されている。
また、配線パターン用板部13の上方には、所定間隔を保って、半導体素子2の配線接続を行う配線パターン16aを形成した配線基板16が平行に配置されている。この配線基板16には、半導体チップ15の上面に形成された電極に直接接触するポスト電極16bが形成されている。また、半導体チップ15上の電極に接続端子17が接続されているとともに、配線パターン用板部13にも接続端子18が接続され、配線基板16上にも上方に突出する接続端子19が接続されている。
【0014】
さらに、ベース基板11、半導体チップ15、配線基板16がエポキシ樹脂のような熱硬化性樹脂材による封止樹脂20で覆われている。この封止樹脂20は、ベース基板11の絶縁基板12の外周側を覆って上方に延長し、外側面に寸法制約のために沿面距離を確保する凹凸部20aが形成されている。この封止樹脂20の外周面には、Al、AlN、Si、SiO、BNなどの無機材料で構成される表面保護膜21を形成することが好ましい。
【0015】
このようにして、1つの半導体チップ15を備えた半導体素子2が構成されている。
放熱フィン3は、高さより直径が長いとともに、この直径が半導体素子2の封止樹脂20の外径より長く設定された円柱体30aを有する。この円柱体30aの下面側にはフィン部30bが形成され、上部側には上面中央位置から半導体素子2の放熱部14に形成した雄ねじ部14aが螺合する雌ねじ部30cが形成されているとともに、外周面に雄ねじ部30dが形成されている。
【0016】
そして、放熱フィン3の雌ねじ部30cは、有効ねじ部の長さが少なくとも半導体素子2の放熱部14における雄ねじ部14aを螺合させ、有効ねじ部の底部に雄ねじ部14aの下端が達したときに、絶縁基板12の下面が放熱フィン3の上面から所定距離離間した状態となるように設定されている。
そして、上記構成を有する半導体素子2がその放熱部14の雄ねじ部14aを放熱フィン3に形成された雌ねじ部30cに螺合させ、封止樹脂20の底面が放熱フィン3の上面に対して所定距離離間するように固定される。
【0017】
また、外部冷却体4は、図1に示すように、例えば直方体形状に形成され、その幅方向および高さ方向の中央部に長手方向に延長して冷却媒体が通流される冷却媒体通路4aが形成されている。また、外部冷却体4には、上面から冷却媒体通路4aに達する貫通孔4bおよび4cが長手方向に所定間隔を開けて穿設され、これら貫通孔4bおよび4cの内周面に前述した放熱フィン3に形成した雄ねじ部30dが螺合する雌ねじ部4dが形成されている。
【0018】
ここで、貫通孔4bおよび4cの深さは、放熱フィン3の円柱体30aの高さより深く形成され、半導体素子2の絶縁基板12の下面が外部冷却体4の上面と略一致する程度に設定されている。また、冷却媒体としては、空気等の冷却気体や水等の冷却液体などの任意の冷媒を適用することができる。
そして、半導体素子2を支持した放熱フィン3を例えば2組用意し、これら2組の放熱フィン3を、図1に示すように、外部冷却体4の貫通孔4bおよび4cに形成した雌ねじ部4dに螺合させて、放熱フィン3の上面が外部冷却体4の上面より下側となって、フィン部30bが冷却媒体通路4aに対面する位置まで挿通する。
【0019】
この状態で、2つの半導体素子2から突出する接続端子17、18および19が整列するように位置調整し、これら接続端子17、18および19の間を接続して所望の半導体回路を構成する外部接続端子40が半田付け、溶接等で接合されている。
この外部接続端子40は、各半導体素子2の接続端子17、18および19を個別に接続する例えばバスバーで構成される平板状の接続板部41、42および43と、これら接続板部41、42および43に接続された外部端子部44、45および46とで構成されている。
【0020】
そして、半導体素子2の接続端子17〜19を外部接続端子40で接続した状態で、例えば絶縁樹脂材でなる外部筐体50で覆うことにより、2in1形式の半導体モジュールとなる冷却機能を備えた半導体装置1が構成される。
このように、上記実施形態によると、半導体チップ15を内蔵し、放熱部14を突出させた1以上の半導体素子2を放熱フィン3に支持し、この放熱フィン3を外部冷却体4に、放熱フィン3が冷却媒体に接触するように固定している。このため、半導体素子2および放熱フィン3を共通化することができ、様々なニーズに則した構成の半導体装置1を容易に製作することができ、生産効率の向上を図ることができる。
【0021】
また、半導体チップ15の発熱が放熱部14を介し、放熱フィン3を介して直接冷却媒体に放熱することができ、効率の良い放熱効果を発揮することができる。しかも、個別の半導体素子2を外部冷却体4で複合化して、半導体装置の大容量化を容易に行うことができる。
このとき、各半導体素子2の放熱部14に雄ねじ部14aを形成し、この雄ねじ部14aを放熱フィン3に形成した雌ねじ部30cに螺合させて一体化する。そして、半導体素子2を一体化した放熱フィン3に雄ねじ部30dを形成し、この雄ねじ部30dを外部冷却体4に形成した雌ねじ部4dに螺合させて一体化する。
【0022】
したがって、半導体素子2の放熱部14と放熱フィン3との接合および放熱フィン3と外部冷却体4との接合が雄ねじ部および雌ねじ部で行われるので、接触面積を増加させて熱伝導率を高めることができ、半導体チップ15を効率よく安定に冷却することができる。
しかも、半導体素子2の放熱フィン3への装着および放熱フィン3の外部冷却体4への装着が治工具を用いることなく、半導体素子2の雄ねじ部14aを放熱フィン3の雌ねじ部30cに螺合させ、放熱フィン3の雄ねじ部30dを外部冷却体4の雌ねじ部4dに螺合させるだけで容易に行うことができる。
【0023】
そして、複数の半導体素子2が放熱フィン3を介して外部冷却体4に支持された状態で、外部筐体50で半導体素子2同士を覆うので、半導体素子2および放熱フィン3の回動が阻止されて半導体素子2および放熱フィン3が抜け出すことを確実に防止することができる。
因みに、前述した従来例のように、半導体チップ102を搭載した絶縁基板103を直接ヒートシンク101のベース101aに半田付け等によって接合する場合には、位置決めのための治工具が必要となる。また、放熱用部材とベース101aとの間に半田を介在させる必要があり、放熱用部材とベース101aとを直接接触させることができないとともに、複数の絶縁基板103をベース101aに接合する場合に、平坦度を確保しながら接合することができない。
【0024】
しかしながら、本実施形態では、上述したように、半導体素子2の放熱部14を放熱フィン3に螺合させ、この放熱フィン3を外部冷却体4に螺合させるので、位置決め用の治工具を必要とすることなく、複数の半導体素子2を複合化して一体化させた半導体装置を構成することができる。
なお、上記実施形態においては、半導体チップ15と接続端子17〜19との接続をポスト電極16bおよび配線基板16を介して行う場合について説明した。しかしながら、本発明は、上記構成に限定されるものではなく、前述した従来例のようにアルミニウムワイヤを使用した接合構造を有する半導体素子でも突出した放熱部を有しさえすれば、上記実施形態と同様に構成することができる。
【0025】
また、上記実施形態においては、半導体素子2が絶縁基板12を有するベース基板11を備えている場合について説明したが、これに限定されるものではなく、突出した放熱部を有する構成であれば、絶縁基板12を有さないスタッド型の非絶縁半導体素子であっても、上記と同様に放熱フィン3に装着することができる。
また、上記実施形態では、半導体素子2の突出した放熱部14を冷却フィン3に螺合させる場合について説明したが、これに限定されるものではなく、放熱部14を冷却フィン3に穿設した挿通孔に挿入して嵌合させたり、ロウ付け等の接合方法で接合したりして固定するようにしてもよい。
【0026】
同様に、冷却フィン3と外部冷却体4との連結も螺合に限らず、外部冷却体4に冷却フィン3を挿入して嵌合させたり、ロウ付け等の接合方法で接合したりして固定するようにしてもよい。
また、上記実施形態では、放熱部14及び冷却フィン3は、それぞれ冷却フィン3及び外部冷却体4に螺合させるため円柱状にしていたが、上述の様に穿設した挿通孔に挿入して嵌合させる場合は、放熱部14及び冷却フィン3は円柱状に限らず角柱状などにしてもよい。
【0027】
また、上記実施形態では、外部冷却体4に2つの半導体素子2を装着する場合について説明したが、これに限定されるものではなく、装着する半導体素子数を増加させる場合には、外部冷却体4に半導体素子数に応じた貫通孔を形成してその内周面に雌ねじ部4dを形成すればよいものである。
また、上記実施形態では、半導体素子2にスイッチング素子を内蔵する1つの半導体チップを有する場合について説明したが、これに限定されるものではなく、ベース基板11上に2以上の半導体チップを実装するようにしてもよい。
【符号の説明】
【0028】
1…半導体装置、2…半導体素子、3…放熱フィン、4…外部冷却体、4a…冷却媒体通路、4b,4c…貫通孔、4d…雌ねじ部、11…ベース基板、12…絶縁基板、13…配線パターン部、14…放熱部、14a…雄ねじ部、15…半導体チップ、16…配線基板、17〜19…接続端子、20…封止樹脂、21…表面保護膜、30a…円柱体、30b…フィン部、30c…雌ねじ部、30d…雄ねじ部、40…外部接続端子、50…外部筐体
図1
図2
図3