(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【背景技術】
【0002】
強誘電体メモリ(Ferroelectric Random Access Memory、FRAM(登録商標)、FeRAM)では、強誘電体容量を記憶素子として使用しており電源オフ時であっても情報を保持できるため、ICカードの記憶媒体等として使用されている。
【0003】
図1は、従来の強誘電体メモリセルの一例の回路ブロック図である。
図2(a)は
図1に示す強誘電体メモリセルの平面図であり、
図2(b)は
図2(a)のA−A´線に沿う断面図であり、
図2(c)は
図2(a)のB−B´線に沿う断面図である。
【0004】
強誘電体メモリセル100は、2T2C(2トランジスタ2キャパシタ)型メモリセルであり、第1トランジスタ11と、第1強誘電体容量12と、第2トランジスタ21と、第2強誘電体容量22とを有する。第1強誘電体容量12は、IrOx膜である上部電極121(以下、TELとも称する)と、Pt膜である下部電極(以下、BELとも称する)122と、上部電極と下部電極との間に配置されるPZT(ジルコン酸チタン酸鉛)膜である強誘電体123とを有する。第2強誘電体容量22は、IrOx膜である上部電極221と、Pt膜である下部電極222と、上部電極と下部電極との間に配置されるPZT膜である強誘電体223とを有する。強誘電体メモリセル100は、センスアンプ101と、第1ビットライン接地用トランジスタ102と、第2ビットライン接地用トランジスタ103と、ビットライン共通トランジスタ104とに接続される。第1トランジスタ11及び第2トランジスタ21は半導体基板105に形成される。上部電極121は強誘電体123の半導体基板105の反対側の面に配置され、下部電極122は強誘電体123の半導体基板105と対向する面に配置される。上部電極221は強誘電体223の半導体基板105の反対側の面に配置され、下部電極222は強誘電体223の半導体基板105と対向する面に配置される。
【0005】
第1トランジスタ11のソースは第1ビットラインBLに接続され、第1トランジスタ11のゲートはワード線WLに接続され、第1トランジスタ11のドレインは第1強誘電体容量12の上部電極221に接続される。第2トランジスタ21のソースは第2ビットラインBLBに接続され、第2トランジスタ21のゲートはワード線WLに接続され、第2トランジスタ21のドレインは第2強誘電体容量22の上部電極221に接続される。
【0006】
第1強誘電体容量12の上部電極は第1トランジスタ11のドレインに接続され、第1強誘電体容量12の下部電極122はプレート線PLに接続される。第2強誘電体容量22の上部電極221は第2トランジスタ21のドレインに接続され、第2強誘電体容量22の下部電極222はプレート線PLに接続される。第1強誘電体容量12及び第2強誘電体容量22の上部電極221と第1トランジスタ11及び第2トランジスタ21のドレインはそれぞれ、金属配線341及び342を介して接続される。第1強誘電体容量12及び第2強誘電体容量22の下部電極が共にプレート線PLに接続されることにより、第1強誘電体容量12及び第2強誘電体容量22の電気特性を互いに近づけることができる。
【0007】
センスアンプ101は、第1ビットラインBL及び第2ビットラインBLBに接続される。センスアンプ101は、第1ビット線BL及び第2ビット線BLBに流れる電荷を電圧に変換し、変換した電圧の差を電源電圧VDDまで増幅する。
【0008】
第1ビットライン接地用トランジスタ102及び第2ビットライン接地用トランジスタ103のソースはそれぞれ接地される。第1ビットライン接地用トランジスタ102及び第2ビットライン接地用トランジスタ103のドレインはそれぞれ第1ビットラインBL及び第2ビットラインBLBに接続される。第1ビットライン接地用トランジスタ102及び第2ビットライン接地用トランジスタ103のゲートは共通の配線に接続される。ビットライン共通トランジスタ104のソース及びドレインはそれぞれ第1ビットラインBL及び第2ビットラインBLBに接続される。
【0009】
強誘電体メモリセル100の書き込みは、第1強誘電体容量12及び第2強誘電体容量22に正又は負の電圧を印加して分極させることにより実行される。また、強誘電体メモリセル100の読み出しは、第1強誘電体容量12及び第2強誘電体容量22に正電圧を印加したときの分極反転電流を検出することにより実行される。
【0010】
書き込み動作においては、ワード線WLを選択状態にして、第1トランジスタ11及び第2トランジスタ21をオンする。ビット線BLとプレート線PLとの間に正又は負の電圧が加えられると、第1強誘電体容量12又は第2強誘電体容量22にこの電圧が印加され、所望のデータが書き込まれる。第1強誘電体容量12に「0」を書き込む場合は、第1ビット線BLを0Vとし、プレート線PLを電源電圧VDDにする。また第1強誘電体容量12に「1」を書き込む場合は、第1ビット線BLを電源電圧VDDとし、プレート線PLを0Vに設定する。第2強誘電体容量22に「0」を書き込む場合は、第2ビット線BLBを0Vとし、プレート線PLを電源電圧VDDにする。また第2強誘電体容量22に「1」を書き込む場合は、第2ビット線BLBを電源電圧VDDとし、プレート線PLを0Vに設定する。書き込み動作後に第1トランジスタ11及び第2トランジスタ21がオフされた後でも、第1強誘電体容量12及び第2強誘電体容量22の分極は保持されるので、書き込まれたデータは不揮発データとして保持される。
【0011】
図3(a)は読み出し動作時の動作を示すタイミングチャートであり、
図3(b)〜(e)はそれぞれ
図3(a)に示す動作における印加電圧と分極量との関係を示す図である。
図3(b)〜(e)において、黒丸は第1強誘電体容量12の動作を示し、白丸は第2強誘電体容量22の動作を示す。また、
図3(b)〜(e)において、横軸は第1強誘電体容量12及び第2強誘電体容量22に印加される電圧を示し、縦軸は分極量を示す。
図3(a)〜(e)では、第1強誘電体容量12には「1」が記憶され、第2強誘電体容量22には「0」が記憶される。すなわち、第1強誘電体容量12の残留分極は分極反転するPタームであり、第2強誘電体容量22の残留分極は分極反転しないUタームである。
【0012】
読み出し動作においては、まず、ワード線WLを選択状態にして、第1トランジスタ11及び第2トランジスタ21をオンする。このとき、第1強誘電体容量12及び第2強誘電体容量22には電荷が蓄積されていないので、
図2(a)の(1)及び
図2(b)に示すように、第1ビット線BL及び第2ビット線BLBの電位は変化しない。
【0013】
次いで、
図3(a)の(2)及び
図3(c)に示すように、プレート線PLを電源電圧VDDに設定する。このとき、第1ビット線BL及び第2ビット線BLBは略0Vに保たれており、第1強誘電体容量12及び第2強誘電体容量22には正電圧が印加される。
【0014】
第1強誘電体容量12には「1」が記憶されているので、第1強誘電体容量12に印加される電圧は書き込み時と反対極性であるために、分極の反転が起こり、大きな反転電荷が第1ビット線BLに流れる。一方、第2強誘電体容量22には「0」が記憶されているので、第2強誘電体容量22に印加される電圧は書き込み時と同一の極性であるために、分極の反転は起こらず、比較的小さな電荷が第2ビット線BLBに流れる。センスアンプ101は、第1ビット線BL及び第2ビット線BLBに流れる電荷を電圧に変換し、変換した電圧の差を電源電圧VDDまで増幅する。
【0015】
次いで、
図3(a)の(3)及び
図3(d)に示すように、プレート線PLを0Vに設定する。プレート線PLを0Vに設定すると、第1ビット線BLの電圧は電源電圧VDDであるので、第1強誘電体容量12には、電源電圧VDDの反転電圧が印加される。一方、第2ビット線BLBの電圧は0Vであるので、第2強誘電体容量22に印加される電圧は0Vになる。
【0016】
そして、
図3(a)の(4)及び
図3(e)に示すように、第1ビット線BLの電圧を0Vに設定すると、第1強誘電体容量12に印加される電圧も0Vに戻る。
【0017】
また、強誘電体メモリに使用される強誘電体容量の経年劣化を示す種々の経年劣化モデルが知られている。
【0018】
図4(a)は保持特性の劣化を概略的に示す図であり、
図4(b)は疲労を概略的に示す図であり、
図4(c)はインプリント現象を概略的に示す図である。
図4(a)〜4(c)において、横軸は強誘電体容量に印加される電圧を示し、縦軸は強誘電体容量の分極量を示す。
図4(a)〜4(c)において、破線は電気特性の劣化が生じていないヒステリシス曲線を示す。
図4(a)において、実線は保持特性の劣化が生じたときのヒステリシス曲線を示し、
図4(b)において、実線は疲労が生じたときのヒステリシス曲線を示し、
図4(c)において、実線はインプリント現象が起きたときのヒステリシス曲線を示す。
【0019】
図4(a)に示す保持特性の劣化は、強誘電体容量の分極量が経時的に減少するものである。保持特性は、リテンション(Retention)特性とも称される。
図4(b)に示す疲労は、強誘電体容量が分極反転を繰り返すことにより分極量が減少するものである。疲労は、ファティーグ(Fatigue)とも称される。
図4(c)に示すインプリント現象は、強誘電体容量が一方の方向に分極させた状態を長時間維持していると、ヒステリシス曲線が一方の電圧方向に変位して、反対方向に分極し難くなるものである。すなわち、強誘電体容量に「1」が記憶された状態を長時間維持していると、強誘電体容量は「0」を記憶し難くなり、強誘電体容量に「0」が記憶された状態を長時間維持していると、強誘電体容量は「1」を記憶し難くなる。
【0020】
図5(a)は強誘電体容量に「0」が記憶された状態を長時間維持していた場合のヒステリシス曲線の変位を示す図であり、
図5(b)は強誘電体容量に「1」が記憶された状態を長時間維持していた場合のヒステリシス曲線の変位を示す図である。
図5(a)及び5(b)において、横軸は強誘電体容量に印加される電圧を示し、縦軸は強誘電体容量の分極量を示す。また、
図5(a)及び5(b)において、実線はインプリント現象が起きていない強誘電体容量のヒステリシス曲線を示し、破線はインプリント現象が起きている強誘電体容量のヒステリシス曲線を示す。また、
図5(a)及び5(b)において、矢印Aはインプリント現象が起きている強誘電体容量のヒステリシス曲線と縦軸の負方向との交点を示し、矢印Bはインプリント現象が起きている強誘電体容量のヒステリシス曲線と横軸の正方向との交点を示す。また、
図5(a)及び5(b)において、矢印Cはインプリント現象が起きている強誘電体容量のヒステリシス曲線の印加電圧及び分極量の極大値を示す。また、
図5(a)及び5(b)において、矢印Dはインプリント現象が起きている強誘電体容量のヒステリシス曲線と縦軸の正方向との交点を示し、矢印Eはインプリント現象が起きている強誘電体容量のヒステリシス曲線と横軸の負方向との交点を示す。また、
図5(a)及び5(b)において、矢印Fはインプリント現象が起きている強誘電体容量のヒステリシス曲線の印加電圧及び分極量の極小値を示す。
【0021】
図5(a)に示すように、強誘電体容量に「0」が記憶された状態を長時間維持していた場合、ヒステリシス曲線は、インプリント現象により横軸の負方向に変位するので、矢印Eで示されるヒステリシス曲線の負方向の電圧の絶対値が大きくなる。強誘電体容量に記憶されたデータを「0」から「1」に書き換えるとき、強誘電体容量はヒステリシス曲線のD、E、F及びAの順に遷移するので、矢印Eで示される電圧の絶対値が大きくなると、「0」から「1」に書き換え難くなる。また、矢印Aで示されるヒステリシス曲線の負方向の分極量の絶対値がインプリント現象により小さくなるので、Pタームが減少することになり、強誘電体容量に記憶されたデータを「0」から「1」が書き換えられた場合でも「1」を読み出し難くなる。
【0022】
図5(b)に示すように、強誘電体容量に「1」が記憶された状態を長時間維持していた場合、ヒステリシス曲線は、インプリント現象により横軸の正方向に変位するので、矢印Eで示されるヒステリシス曲線の正方向の電圧の絶対値が大きくなる。強誘電体容量に記憶されたデータを「1」から「0」に書き換えるとき、強誘電体容量はヒステリシス曲線のA、B、C及びDの順に遷移するので、矢印Bで示される電圧の絶対値が大きくなると、「1」から「0」に書き換え難くなる。また、矢印Dで示されるヒステリシス曲線の正方向の分極量の絶対値がインプリント現象により大きくなるので、Uタームが増加することになり、強誘電体容量に記憶されたデータを「1」から「0」が書き換えられた場合でも「0」を読み出し難くなる。
【発明を実施するための形態】
【0029】
以下図面を参照して、本発明に係るメモリセル、メモリ及び半導体装置について説明する。但し、本発明の技術的範囲はそれらの実施の形態に限定されず、特許請求の範囲に記載された発明との均等物に及ぶ点に留意されたい。
【0030】
図6は、第1実施形態に係る強誘電体メモリセルの回路ブロック図である。
図7(a)は
図6に示す強誘電体メモリセルの平面図であり、
図7(b)は
図7(a)のA−A´線に沿う断面図であり、
図7(c)は
図7(a)のB−B´線に沿う断面図である。
【0031】
強誘電体メモリセル1は、
図1を参照して説明した強誘電体メモリセル100と同様に、第1トランジスタ11と、第1強誘電体容量12と、第2トランジスタ21と、第2強誘電体容量22とを有する。強誘電体メモリセル1は、第2強誘電体容量22の下部電極222が第2トランジスタ21のドレインに接続され、第2強誘電体容量22の上部電極221がプレート線PLに接続されることが強誘電体メモリセル100と相違する。第2強誘電体容量22の下部電極222は、金属配線層351を介して第2トランジスタ21のドレインに接続される。また、第2強誘電体容量22の上部電極221は、金属配線層352を介してプレート線PLに接続される。
【0032】
強誘電体メモリセル1では、第1強誘電体容量12と第2強誘電体容量22との間でプレート線PLに接続される電極が反対になっている。第1強誘電体容量12では、下部電極122がプレート線PLに接続されているのに対し、第2強誘電体容量22では、上部電極221プレート線PLに接続されている。以下、下部電極がプレート線PLに接続されている状態をBELドライブと称し、上部電極がプレート線PLに接続されている状態をTELドライブと称する。
【0033】
本発明の発明者は、強誘電体メモリセル1のように第1強誘電体容量12と第2強誘電体容量22との間でプレート線PLに接続される電極を反対にすることにより、寿命に達した後に読み出されるデータを制御することができることを見出した。以下、プレート線PLに接続される電極を反対にすることにより、寿命に達した後に読み出されるデータが制御可能である理由を説明する。
【0034】
図8は、BELドライブである強誘電体メモリセルと、TELドライブである強誘電体メモリセルの加速度試験の結果を示す図である。
図8において、横軸は加速度試験の経過時間を示し、縦軸は寿命に達したと判定された強誘電体メモリセルの個数を対数表示で示す。
【0035】
図8に示す加速度試験は、プレート線PLから電圧を印加して実施された。すなわち、TELドライブである強誘電体メモリセルでは、プレート線PLから上部電極を介して電圧が印加され、BELドライブである強誘電体メモリセルでは、プレート線PLから下部電極を介して電圧が印加された。
【0036】
図8に示す加速度試験は、強誘電体メモリセルをBELドライブからTELドライブにすることにより、強誘電体メモリセルの寿命が指数関数的に短くなることを示している。これは、データの読み出し及び書き込みのために、プレート線に電圧を周期的に印加し続けると、TELドライブである強誘電体メモリセルの寿命は、BELドライブである強誘電体メモリセルの寿命よりも非常に短くなることを示している。
【0037】
第1強誘電体容量12の上部電極121及び第2強誘電体容量22の上部電極221はそれぞれIrOx膜であり、第1強誘電体容量12の下部電極122及び第2強誘電体容量22の下部電極222はそれぞれPt膜である。また、第1強誘電体容量12の強誘電体123及び第2強誘電体容量22の強誘電体223はそれぞれ、PZT膜である。上部電極121及び221と強誘電体123及び223との間の界面にはそれぞれ、IrOx膜とPZT膜とが反応することにより反応膜が形成される。一方、Pt膜は安定な膜であるため、下部電極122及び222と強誘電体123及び223との間の界面には、反応膜が形成され難い。
【0038】
第1強誘電体容量12のように、BELドライブである場合、データを読み出すときなどにプレート線PLに電圧が印加されると、下部電極122から上部電極121に向かって電流が流れるので、電子は上部電極121から下部電極122に向かって流れる。電子が上部電極121から下部電極122に向かって流れるとき、上部電極121の内部のIrOxが電子により強誘電体123の内部に押し出される。しかしながら、IrOxは、分子量が比較的大きいために、電子により移動され難い。また、IrOx膜とPZT膜とが反応することにより上部電極121と強誘電体123との間の界面に反応膜が形成されているので、上部電極121の内部のIrOxは、強誘電体123の内部に更に押し出され難くなる。
【0039】
第2強誘電体容量22のように、TELドライブである場合、データを読み出すときなどにプレート線PLに電圧が印加されると、上部電極221から下部電極222に向かって電流が流れるので、電子は下部電極222から上部電極221に向かって流れる。電子が下部電極222から上部電極221に向かって流れるとき、下部電極222の内部のPtが電子により強誘電体223の内部に押し出される。Ptは、IrOxと比較すると分子量が小さいため、IrOxと比較すると電子により移動され易い。また、下部電極222と強誘電体223との間の界面に反応膜が形成され難いので、反応膜が形成されているBELドライブと比較して、Ptは強誘電体223の内部に更に押し出され易くなる。
【0040】
BELドライブである第1強誘電体容量12では、上部電極121の内部のIrOxが強誘電体123の内部に押し出され難いので、電気特性の劣化すなわちインプリント現象は起き難いと考えられる。一方、TELドライブである第2強誘電体容量22では、下部電極222の内部のPtが強誘電体123の内部に押し出され易いので、電気特性の劣化すなわちインプリント現象は起き易いと考えられる。
【0041】
図9(a)及び9(b)はそれぞれ、強誘電体メモリセル1に記憶されるデータが「0」である場合にインプリント現象が起きていない状態での第1強誘電体容量12及び第2強誘電体容量22のヒステリシス曲線を示す。
図9(c)及び9(d)はそれぞれ、強誘電体メモリセル1に記憶されるデータが「0」である場合に第2強誘電体容量22がインプリント現象が起きている状態での第1強誘電体容量12及び第2強誘電体容量22のヒステリシス曲線を示す。
図9(a)〜9(d)において、横軸は強誘電体容量に印加される電圧を示し、縦軸は強誘電体容量の分極量を示す。
【0042】
図9(a)及び9(b)に示すように、インプリント現象が起きていないとき、強誘電体メモリセル1の読み出し動作では、第1強誘電体容量12から電荷量Q
10が流れ、第2強誘電体容量22から電荷量Q
20が流れる。第2強誘電体容量22から流れる電荷量Q
20は、第1強誘電体容量12から流れる電荷量Q
10より大きいので、強誘電体メモリセル1に記憶されるデータは「0」であると判定される。
【0043】
図9(d)に示すように、TELドライブである第2強誘電体容量22には「1」が記憶されているので、インプリント現象が起きると、第2強誘電体容量22のヒステリシス曲線は横軸の正方向に変位する。第2強誘電体容量22のヒステリシス曲線が横軸の正方向に変位することにより、強誘電体メモリセル1の読み出し動作時に第2強誘電体容量22から流れる電荷量Q
21はインプリント現象が起きていないときの電荷量Q
20よりも大きく減少する。強誘電体メモリセル1の読み出し動作時に第2強誘電体容量22から流れる電荷量Q
21が第1強誘電体容量12から流れる電荷量Q
11よりも小さくなったとき、強誘電体メモリセル1に記憶されるデータは、誤判定されて「1」であると判定される。
【0044】
このように、強誘電体メモリセル1に記憶されるデータが「0」である場合にインプリント現象が起きてヒステリシス曲線が変位すると、強誘電体メモリセル1から読み出されるデータは「1」であると判定されることになる。
【0045】
図10(a)及び10(b)はそれぞれ、強誘電体メモリセル1に記憶されるデータが「1」である場合にインプリント現象が起きていない状態での第1強誘電体容量12及び第2強誘電体容量22のヒステリシス曲線を示す。
図10(c)及び10(d)はそれぞれ、強誘電体メモリセル1に記憶されるデータが「1」である場合に第2強誘電体容量22のインプリント現象が起きている状態での第1強誘電体容量12及び第2強誘電体容量22のヒステリシス曲線を示す。
図10(a)〜10(d)において、横軸は強誘電体容量に印加される電圧を示し、縦軸は強誘電体容量の分極量を示す。
【0046】
図10(a)及び10(b)に示すように、インプリント現象が起きていないとき、強誘電体メモリセル1の読み出し動作では、第1強誘電体容量12から電荷量Q
12が流れ、第2強誘電体容量22から電荷量Q
22が流れる。第1強誘電体容量12から流れる電荷量Q
12は、第2強誘電体容量22から流れる電荷量Q
22より大きいので、強誘電体メモリセル1に記憶されるデータは「1」であると判定される。
【0047】
図10(d)に示すように、TELドライブである第2強誘電体容量22には「0」が記憶されているので、インプリント現象が起きると、第2強誘電体容量22のヒステリシス曲線は横軸の負方向に変位する。第2強誘電体容量22のヒステリシス曲線が横軸の負方向に変位することにより、強誘電体メモリセル1の読み出し動作時に第2強誘電体容量22から流れる電荷量Q
23はインプリント現象が起きていないときの電荷量Q
22よりも減少する。しかしながら、強誘電体メモリセル1の読み出し動作時に第2強誘電体容量22から流れる電荷量Q
23が第1強誘電体容量12から流れる電荷量Q
13よりも小さいことは、インプリント現象が起きても変わらない。
【0048】
強誘電体メモリセル1に記憶されるデータが「1」である場合にインプリント現象が起きた場合、強誘電体メモリセル1から読み出されるデータは、誤判定されることなく「1」であると判定されることになる。
【0049】
強誘電体メモリセル1では、記憶されるデータが「0」である場合及び記憶されるデータが「1」である場合のいずれの場合でも、インプリント現象が起きて寿命に達した後に読み出されるデータは、「1」であると判定されることになる。
【0050】
また、強誘電体メモリセル1では、第2強誘電体容量22は、TELドライブであるので、BELドライブである第1強誘電体容量12よりも早く寿命に達する。
【0051】
図11は、第2実施形態に係る強誘電体メモリセルの回路ブロック図である。
【0052】
強誘電体メモリセル2は、第1強誘電体容量12がTELドライブであり、第2強誘電体容量22がBELドライブである。すなわち、強誘電体メモリセル2は、第1強誘電体容量12及び第2強誘電体容量22の接続関係が強誘電体メモリセル1の接続関係と反対になっている。強誘電体メモリセル2では、第1強誘電体容量12の下部電極が第1トランジスタ11のドレインに接続され、第1強誘電体容量12の上部電極がプレート線PLに接続される。また、強誘電体メモリセル2では、第2強誘電体容量22の上部電極が第2トランジスタ21のドレインに接続され、第2強誘電体容量22の下部電極がプレート線PLに接続される。
【0053】
強誘電体メモリセル2では、記憶されるデータが「1」であるときに、TELドライブである第1強誘電体容量12に「1」が記憶されている。TELドライブである第1強誘電体容量12は、BELドライブである第2強誘電体容量22よりもインプリント現象によるヒステリシスの変位が早く進行する。第1強誘電体容量12のインプリント現象が起きて、第1強誘電体容量12のヒステリシス曲線は正方向に変位して、強誘電体メモリセル1の読み出し動作時に第1強誘電体容量12から流れる電荷は経時的に小さくなる。強誘電体メモリセル1の読み出し動作時に第1強誘電体容量12から流れる電荷量が第2強誘電体容量22から流れる電荷量よりも小さくなったとき、強誘電体メモリセル2に記憶されるデータは、誤判定されて「0」であると判定される。
【0054】
強誘電体メモリセル2では、記憶されるデータが「0」であるときに、TELドライブである第1強誘電体容量12に「0」が記憶されている。第1強誘電体容量12のインプリント現象が起きると、第1強誘電体容量12のヒステリシス曲線は負方向に変位して、強誘電体メモリセル1の読み出し動作時に第1強誘電体容量12から流れる電荷は経時的に小さくなる。しかしながら、強誘電体メモリセル1の読み出し動作時に第1強誘電体容量12から流れる電荷量が第2強誘電体容量22から流れる電荷量よりも小さいことは、インプリント現象が起きても変わらない。強誘電体メモリセル1に記憶されるデータが「0」である場合にインプリントが起きた場合でも、強誘電体メモリセル1から読み出されるデータは、誤判定されることなく「0」であると判定されることになる。
【0055】
強誘電体メモリセル2では、記憶されるデータが「0」である場合及び記憶されるデータが「1」である場合のいずれの場合でも、インプリント現象が起きて寿命に達した後に読み出されるデータは、「0」であると判定されることになる。
【0056】
強誘電体メモリセル1では、寿命に達した後に読み出されるデータは「1」であり、強誘電体メモリセル2では、寿命に達した後に読み出されるデータは「0」であり、寿命に達した後に読み出されるデータを選択的に制御できる。
【0057】
強誘電体メモリセル1では、TELドライブである第2強誘電体容量22の寿命が短くなり、強誘電体メモリセル2では、TELドライブである第1強誘電体容量12の寿命が短くなる。強誘電体メモリセル1及び2では、TELドライブである強誘電体容量を有するので、BELドライブのみで形成される従来の強誘電体メモリセル100よりも寿命を短くできる。
【0058】
図12は、強誘電体メモリセル1を搭載した半導体装置30の回路ブロック図である。
【0059】
半導体装置30は、強誘電体メモリセル1と、論理回路ブロック31と、論理回路ブロックリセット回路32と、反転素子33とを有する。
【0060】
強誘電体メモリセル1には「0」が記憶されている。しかしながら、強誘電体メモリセル1が寿命に達した後に強誘電体メモリセル1から読み出されるデータは「1」である。強誘電体メモリセル1から読み出されるデータは、反転素子33を介して論理回路ブロックリセット回路32に入力される。
【0061】
論理回路ブロックリセット回路32は、反転素子33から「0」が入力されると、論理回路ブロック31の動作をリセットする構成を有する。論理回路ブロックリセット回路32は、強誘電体メモリセル1が寿命に達する前は反転素子33を介して「1」が入力されるが、強誘電体メモリセル1が寿命に達した後は反転素子33を介して「0」が入力される。論理回路ブロック31は、強誘電体メモリセル1が寿命に達した後に論理回路ブロックリセット回路32によってリセットされるので、所望のリセット状態にすることができる。
【0062】
図13は、強誘電体メモリセル1を搭載した半導体装置40の回路ブロック図である。
【0063】
半導体装置40は、一対の強誘電体メモリセル1と、論理回路ブロック41と、論理回路ブロックリセット回路42と、NAND素子43とを有する。論理回路ブロックリセット回路42は、論理回路ブロックリセット回路32の同様に「0」が入力されると、論理回路ブロック41の動作をリセットする構成を有する。
【0064】
半導体装置40では、一対の強誘電体メモリセル1の双方が寿命に達した後に、論理回路ブロック41が論理回路ブロックリセット回路42によってリセットされる。半導体装置40では、一対の強誘電体メモリセル1の何れかの寿命が所望の寿命よりも短い場合でも、他方の強誘電体メモリセル1が寿命に達するまで、論理回路ブロック41がリセットされるおそれはない。半導体装置40では、所望の寿命よりも早く論理回路ブロック41がリセットされる可能性を低くすることができる。
【0065】
図14は、強誘電体メモリセル1及び2を搭載した半導体装置50の回路ブロック図である。
【0066】
半導体装置50は、強誘電体メモリセル1及び2と、論理回路ブロック51と、論理回路ブロック51の内部に配置されるセルフ寿命タイマ情報生成部52とを有する。
【0067】
強誘電体メモリセル1は、「0」が記憶されているが、寿命に達した後は反転データである「1」が読み出される。強誘電体メモリセル2は、「1」が記憶されているが、寿命に達した後は反転データである「0」が読み出される。セルフ寿命タイマ情報生成部52は、強誘電体メモリセル1から「1」が入力され且つ強誘電体メモリセル2から「0」が入力されると、セルフ寿命タイマ情報を生成する構成を有する。論理回路ブロック51は、セルフ寿命タイマ情報生成部52がセルフ寿命タイマ情報を生成すると、半導体装置50の外部にセルフ寿命タイマ信号を出力する構成を有する。
【0068】
半導体装置50は、半導体装置50に搭載される他の素子よりも寿命が短い強誘電体メモリセル1及び2が寿命に達した後にセルフ寿命タイマ信号を出力するので、他の素子が寿命に達する前にセルフ寿命タイマ信号を出力することができる。
【0069】
図15は、強誘電体メモリセル1を搭載した半導体装置60の回路ブロック図である。
【0070】
半導体装置60は、3つの強誘電体メモリセル1と、論理回路ブロック61と、論理回路ブロック61の内部に配置されるセルフ寿命タイマ情報生成部62とを有する。
【0071】
強誘電体メモリセル1は、「0」が記憶されているが、寿命に達した後は反転データである「1」が読み出される。セルフ寿命タイマ情報生成部62は、3つの強誘電体メモリセル1の全てから「1」が入力されると、セルフ寿命タイマ情報を生成する構成を有する。論理回路ブロック61は、セルフ寿命タイマ情報生成部62がセルフ寿命タイマ情報を生成すると、半導体装置60の外部にセルフ寿命タイマ信号を出力する構成を有する。
【0072】
半導体装置60では、3つの強誘電体メモリセル1の何れか2つの強誘電体メモリセル1の寿命が所望の寿命よりも短い場合でも、他の強誘電体メモリセル1が寿命に達するまで、論理回路ブロック41がリセットされるおそれはない。半導体装置60では、所望の寿命よりも早くセルフ寿命タイマ信号を出力する可能性を低くできる。
【0073】
図16は、強誘電体メモリセル1及び2を搭載した半導体装置70の回路ブロック図である。
【0074】
半導体装置70は、認証データ記憶部72と、一般データ記憶部73とを有するメモリブロック71を有する。
【0075】
認証データ記憶部72は、複数の強誘電体メモリセル1と、複数の強誘電体メモリセル2とを有する。認証データ記憶部72は、ID番号、パスワード等の半導体装置70を使用するユーザに固有なデータを記憶する。一般データ記憶部73は、半導体装置70の使用履歴等のデータを記憶する。
【0076】
認証データ記憶部72に配置される強誘電体メモリセル1及び2を適当に配置することにより、認証データ記憶部72に配置される強誘電体メモリセル1及び2が全て寿命が達した後に、所望のデータを読み出すことができる。例えば、複数の強誘電体メモリセル1及び2が交互に配置された8ビットの記憶領域を認証データ記憶部72が有する場合、複数の強誘電体メモリセル1及び2が全て寿命が達した後は、8ビットの記憶領域から「01010101」を読み出すことができる。
【0077】
強誘電体メモリセル1、2及び100を混載したメモリでは、記憶される情報に応じて、強誘電体メモリセルを使い分けることができる。また、強誘電体メモリセル100のセル領域の面積は、強誘電体メモリセル1及び2のセル領域の面積より小さいので、強誘電体メモリセル100を強誘電体メモリセル1及び2と混載させることにより、メモリの面積を小さくすることができる。
【0078】
強誘電体メモリセル1及び2では、強誘電体容量の上部電極はIrOx膜であり、誘電体容量の下部電極はPt膜であるが、強誘電体容量の上部電極及び下部電極はそれぞれ、他の金属膜にしてもよい。TELドライブよりもBELドライブの方がインプリント現象が起き易い金属膜が採用される場合、強誘電体容量が寿命に達した後に読み出されるデータは、強誘電体メモリセル1及び2が寿命に達した後に読み出されるデータと反対のデータになる。
【0079】
また、強誘電体メモリセル1及び2では、強誘電体容量の上部電極及び下部電極を形成する金属膜を相違させることで、TELドライブ時の寿命とBELドライブ時の寿命とを相違させている。しかしながら、強誘電体容量の上部電極と強誘電体の間の界面の面積と強誘電体容量の下部電極と強誘電体の間の界面の面積とを相違させるなど、他の方法によってTELドライブ時の寿命とBELドライブ時の寿命とを相違させてもよい。
【0080】
また、半導体装置30及び40では、強誘電体メモリセル1は、論理回路ブロック31及び41をそれぞれリセットするために使用されるが、他の半導体装置、又は他の機器に搭載される装置に搭載される回路のフェールセーフ回路として使用してもよい。