(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0015】
図1〜
図8を参照して、透明導電性積層体、および、タッチパネルの一実施形態について説明する。本実施形態において、透明導電性積層体は、タッチパネルの構成部材の1つである。
【0016】
[透明導電性積層体の構成]
図1を参照して、透明導電性積層体の構成について説明する。
図1に示されるように、透明導電性積層体10は、透明な基板11と、基板11を挟んで互いに対向する2つの樹脂層12a,12bと、基板11および樹脂層12a,12bを挟んで互いに対向する2つの透明電極層13a,13bとを備えている。基板11の表面には、樹脂層12aと透明電極層13aとが、この順に積層されている。基板11の裏面には、樹脂層12bと透明電極層13bとが、この順に積層されている。透明電極層13aは、第1の透明電極層の一例であり、透明電極層13bは、第2の透明電極層の一例である。
【0017】
基板11は、例えば、ガラス板や樹脂フィルムである。ガラス板の形成材料や樹脂フィルムの形成材料は、透明電極層の成膜工程、および、その後工程において、基板に要求される強度を満たす材料であれば、特に限定されない。樹脂フィルムの形成材料は、例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリカーボネート、ポリエーテルスルホン、ポリスルホン、ポリアリレート、環状ポリオレフィン、ポリイミドからなる群から選択される少なくとも1つである。基板11の厚さは、10μm以上200μm以下であることが好ましい。基板11の厚さがこうした範囲であれば、透明導電性積層体10の薄型化が図られ、また、基板11の可撓性も得られる。
【0018】
基板11は、種々の添加剤や安定剤を含んでもよい。添加剤や安定剤としては、例えば、帯電防止剤、可塑剤、滑剤、または、易接着剤等が挙げられる。基板11に対しては、基板11に積層される層と基板11との密着性を向上させるために、前処理としてコロナ処理、低温プラズマ処理、イオンボンバード処理、または、薬品処理等が施されてもよい。
【0019】
樹脂層12a,12bは、透明導電性積層体10の機械的強度を向上させる機能と、紫外領域の波長を有する光である紫外線を吸収する機能とを有する。なお、紫外領域の波長は、約200nm〜約380nmであり、可視領域の波長は、約380nm〜約780nmである。
【0020】
樹脂層12a,12bは、アクリル系モノマー、および、アクリル酸ビニルエステルモノマーと紫外線吸収剤とが共重合した樹脂を含む。
アクリル系モノマーは、紫外領域の波長の光を受けて重合するモノマーであって、例えば、カルボキシル基含有モノマー、シアノアクリレートモノマー、アクリル酸エステルモノマー、アクリル酸ビニルエステルモノマーからなる群から選択される少なくとも1つである。アクリル系モノマーは、上記群から選択される1つであってもよいし、上記群から選択される2つ以上であってもよい。
【0021】
カルボキシル基含有モノマーは、例えば、アクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸からなる群から選択されるいずれか1つである。
シアノアクリレート系モノマーは、例えば、アクリロニトリル、(メタ)アクリロニトリルからなる群から選択されるいずれか1つである。
【0022】
アクリル酸エステルモノマーは、例えば、メチルアクリレート、メチル(メタ)アクリレート、エチルアクリレート、エチル(メタ)アクリレート、プロピルアクリレート、プロピル(メタ)アクリレート、ブチルアクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、アクリロニトリル、(メタ)アクリロニトリル、(メタ)アクリル酸グリシジル、テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート、ヒドロキシエチルアクリレート、ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、ヒドロキシプロピルアクリレート、ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、ヒドロキシブチルアクリレート、ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、イソボルニルアクリレートからなる群から選択される少なくとも1つである。アクリル酸エステルモノマーは、上記群から選択される1つであってもよいし、上記群から選択される2つ以上であってもよい。
【0023】
アクリル酸ビニルエステルモノマーは、例えば、アクリル酸アルケニルエステル、(メタ)アクリル酸アルケニルエステルからなる群から選択される少なくとも1つである。アクリル酸アルケニルエステルは、例えば、ビニルアクリレート、イソプロペニルアクリレートからなる群から選択される少なくとも1つである。(メタ)アクリル酸アルケニルエステルは、例えば、ビニル(メタ)アクリレート、イソプロペニル(メタ)アクリレートからなる群から選択される少なくとも1つである。アクリル酸ビニルエステルモノマーは、1種の化合物を単独でもちいてもよいし、2種以上の化合物を併用してもよい。
【0024】
紫外線吸収剤としては、例えば、ベンゾフェノン系、ベンゾトリアゾール系、ベンゾエート系、サリシレート系、トリアジン系、または、シアノアクリルレート系等の紫外線吸収剤が挙げられる。紫外線吸収剤は、重合性のビニル基を有していることが好ましく、例えば、2−(2’−ヒドロキシ−5’−メタクリルオキシエチルフェニル)2H−ベンゾトリアゾール、2−ヒドロキシ−4−(メタクリルオキシ)ベンゾフェノン、フェニル−5−メタクリルオキシメチルサリシレートからなる群から選択される少なくとも1つである。紫外線吸収剤は、上記群から選択される1つであってもよいし、上記群から選択される2つ以上であってもよい。
【0025】
紫外線吸収剤と共重合されるアクリル酸ビニルエステルモノマーは、先に例示したアクリル酸ビニルエステルモノマーから選択される少なくとも1つである。
アクリル酸ビニルエステルモノマーと紫外線吸収剤とが共重合した樹脂の平均分子量は、30万以下である。紫外線吸収剤と共重合されるモノマーがアクリル酸ビニルエステルモノマーであって、共重合体の平均分子量が30万以下であれば、アクリル酸ビニルエステルモノマーと紫外線吸収剤とが共重合した樹脂において、アクリル系モノマーに対する相溶性が得られる。その結果、樹脂層12a,12bの表面におけるスジの発生が抑えられる。
【0026】
アクリル酸ビニルエステルモノマーと紫外線吸収剤とが共重合した樹脂の平均分子量は、1000以上であることが好ましい。通常、樹脂が添加剤を含むとき、樹脂と添加剤との組み合わせによっては、例えば、高温で樹脂が硬化される際などに、添加剤のブリードアウトが起こる場合がある。添加剤のブリードアウトは、樹脂層12a,12bにおいてヘイズの上昇を招くため、好ましくない。この点で、アクリル酸ビニルエステルモノマーと紫外線吸収剤とが共重合した樹脂の平均分子量が1000以上であれば、ブリードアウトの発生が抑制される。そのため、透明導電性積層体10においてヘイズの上昇が抑えられる。なお、アクリル酸ビニルエステルモノマーと紫外線吸収剤とが共重合した樹脂の平均分子量は、5000以上であることがより好ましい。アクリル酸ビニルエステルモノマーと紫外線吸収剤とが共重合した樹脂の平均分子量が5000以上であれば、ブリードアウトの発生は、さらに抑制される。
【0027】
樹脂層12a,12bの厚みは限定されないが、0.5μm以上15μm以下であることが好ましい。
樹脂層12a,12bの形成方法には、塗工液を用いた塗工が採用され、その塗工液には、樹脂層12a,12bの固形分を含む。樹脂層12a,12bを形成するための塗工液は、アクリル系モノマーと、アクリル酸ビニルエステルモノマーと紫外線吸収剤とが共重合した樹脂と、溶剤とを含む。
【0028】
塗工液に含まれる溶剤は、アクリル系モノマーと、アクリル酸ビニルエステルモノマーと紫外線吸収剤とが共重合した樹脂とを、溶解、あるいは、分散する液体であれば、特に限定されない。溶剤の具体例としては、エタノール、イソプロピルアルコール、イソブチルアルコール、ベンゼン、トルエン、キシレン、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、酢酸エチル、酢酸n−ブチル、酢酸イソアミル、乳酸エチル、メチルセロソルブ、エチルセロソルブ、ブチルセロソルブ、メチルセロソルブアセテート、または、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート等が挙げられる。これらの溶剤は、1種類の溶剤を単独で用いてもよいし、2種類以上の溶剤を混合して用いてもよい。
【0029】
アクリル系モノマー(A)とアクリル酸ビニルエステルモノマーと紫外線吸収剤とが共重合した樹脂(B)と溶剤(C)との配合比率は、A:B:C=20重量%以上60重量%以下:5重量%以上40重量%以下:20重量%以上60重量%以下であることが好ましい。配合比率が上記の範囲であれば、紫外線の吸収機能を樹脂層12a,12bに適切に付加でき、かつ、ブリードアウトの発生が抑えられる。
【0030】
透明電極層13a,13bの材料としては、透明導電性積層体10に要求される特性や用途に応じて種々の材料が使用できる。例えば、透明電極層13a,13bの材料としては、酸化インジウム、酸化亜鉛、および、酸化スズのいずれか1つ、または、それらの2種類もしくは3種類の混合酸化物が挙げられる。また、上記の材料に、さらに添加物が加えられてもよい。また例えば、透明電極層13a,13bは、金属製のナノワイヤー等の繊維状の金属から形成されてもよい。
【0031】
透明電極層13a,13bは、所定の形状にパターニングされている。例えば、透明電極層13aは、X方向に延びる複数の導電領域が、X方向と直交するY方向に間をあけて並設されたパターンを有する。そして、透明電極層13aと対向する透明電極層13bは、Y方向に延びる複数の導電領域が、X方向に間をあけて並設されたパターンを有する。導電領域は、例えば、直線形状や、複数のひし形が一方向に繋げられた形状に形成される。隣接する導電領域の間の領域は、導電領域と絶縁された非導電領域となる。導電領域の各々は、導電領域に形成される静電容量の変化を、電流の変化によって検出する回路に接続されている。人の指等が導電領域に接近すると、静電容量が変化する。この静電容量の変化が検出されることに基づいて、人の指等の接触位置が判定される。
【0032】
透明導電性積層体10は、波長400nmにおける光線透過率が60%以上であり、かつ、波長365nmにおける光線透過率が20%以下であることが好ましい。光線透過率が上記の範囲であると、紫外線によってレジストが露光されるときに、一方のレジストに吸収されなかった光が他方のレジストに達することが的確に抑えられる。また、こうした効果を高めるためには、樹脂層12a,12bの波長400nmにおける光線透過率が80%以上であり、かつ、波長365nmにおける光線透過率が20%以下であることが好ましい。
【0033】
また、透明導電性積層体10の積層方向において、透明電極層13aの導電領域と透明電極層13bの導電領域とが重なる部分と、透明電極層13aの非導電領域と透明電極層13bの非導電領域とが重なる部分との全光線透過率の差は、1.5%以下であり、かつ、透過色相b*差は、2.0以下であることが好ましい。全光線透過率、および、透過色相差が上記の範囲内であれば、透明電極層13aと透明電極層13bとが互いに異なるパターンに形成された場合でも、パターン形状が目立たなくなるため、タッチパネルにおける視認性が向上する。
【0034】
また、透明導電性積層体10にて、150℃、30分間における熱収縮率は、0.5%以下であることが好ましい。熱収縮率が上記の範囲内であれば、透明電極層13a,13bの形成工程やレジストの乾燥工程において、これらに加えられる熱によって積層体が収縮することが抑えられる。その結果、透明電極層13aと透明電極層13bとのパターンの位置ずれが抑えられる。
【0035】
図2に示されるように、基板11の表面側の透明電極層13aには、接着層を介してガラス等からなるカバー層30等が積層されて、タッチパネル31が構成される。カバー層30の表面が、人の指等の接触面となる。さらに、基板11の裏面側の透明電極層13bには、液晶パネル等の表示パネル32が積層されて、タッチパネル31と表示パネル32とから表示装置33が構成される。
【0036】
[透明導電性積層体の製造方法]
図3〜
図8を参照して、透明導電性積層体の製造方法について説明する。
図3に示されるように、まず、基板11の表面に樹脂層12aが形成され、基板11の裏面に樹脂層12bが形成される。
【0037】
樹脂層12a,12bは、主成分である樹脂等を溶剤に溶解させた塗工液が基板11に塗布された後に、硬化されることによって形成される。塗布方法としては、ダイコーター、カーテンフローコーター、ロールコーター、リバースロールコーター、グラビアコーター、ナイフコーター、バーコーター、スピンコーター、または、マイクログラビアコーター等の公知の塗布方法が用いられる。
【0038】
図4に示されるように、次に、基板11の表面側において、樹脂層12aの面上に透明導電層14aが形成され、基板11の裏面側において、樹脂層12bの面上に透明導電層14bが形成される。
【0039】
透明導電層14a,14bは、公知の成膜方法によって形成される。例えば、透明導電層14a,14bが酸化インジウムスズ(ITO)から形成される場合には、透明導電層14a,14bは、真空蒸着法、スパッタリング等の物理的気相析出法やCVD法等の化学的気相析出法等によって形成される。また、透明導電層14a,14bが繊維状の金属から形成される場合には、繊維状の金属が分散された溶液が公知の塗布法や印刷法によって基板11に塗布されることにより、透明導電層14a,14bが形成される。
【0040】
なお、基板11の表面側において、樹脂層12aと透明導電層14aとが連続して形成された後に、基板11の裏面側において、樹脂層12bと透明導電層14bとが連続して形成されてもよい。要は、レジストが形成される前に、基板11の表面に、樹脂層12aと透明導電層14aとを備え、基板11の裏面に、樹脂層12bと透明導電層14bとを備える積層体が形成されればよい。
【0041】
図5に示されるように、次に、基板11の表面側において、透明導電層14aの面上にレジスト15aが形成され、基板11の裏面側において、透明導電層14bの面上にレジスト15bが形成される。
【0042】
レジスト15a,15bとしては、ネガ型のレジストを用いてもよいし、ポジ型のレジストを用いてもよい。レジスト15a,15bには、公知の材料が用いられ、レジスト15a,15bは、公知の方法によって形成される。
【0043】
図6に示されるように、次に、レジスト15a,15bに光を照射する2つの光源18a,18bの間に、レジスト15a,15bが形成された積層体が配置される。光源18a,18bは、紫外領域の波長の光と可視領域の波長の光とからなる光を発する。基板11の表面側においてレジスト15aと光源18aとの間には、レジスト15aに近い方から、透明電極層13aのパターンに応じたパターンを有するマスク16aと、可視領域の波長の光を遮断する光学フィルター17aとが、この順に配置される。基板11の裏面側において、レジスト15bと光源18bとの間には、レジスト15bに近い方から、透明電極層13bのパターンに応じたパターンを有するマスク16bと、可視領域の波長の光を遮断する光学フィルター17bとが、この順に配置される。
【0044】
そして、光源18aからレジスト15aに対して光が照射されてレジスト15aが露光されるとともに、光源18bからレジスト15bに対して光が照射されてレジスト15bが露光される。レジスト15aの露光とレジスト15bの露光とは、同時に行われる。あるいは、レジスト15aの露光と、レジスト15bの露光とは、レジスト15aの現像前、かつ、レジスト15bの現像前であれば、各別に行われてもよい。このとき、光学フィルター17a,17bによって可視領域の波長の光が遮断されるため、レジスト15a,15bは、光源18a,18bから発せられた光のうちの紫外領域の波長の光によって露光される。
【0045】
ここで、樹脂層12a,12bは紫外線を吸収する機能を有しているため、光源18aから光学フィルター17aを介してレジスト15aに照射された光のうち、レジスト15aに吸収されなかった光は、樹脂層12a,12bに吸収される。また、光源18bから光学フィルター17bを介してレジスト15bに照射された光のうち、レジスト15bに吸収されなかった光は、樹脂層12a,12bに吸収される。したがって、一方のレジストに照射された光が積層体を透過して他方のレジストを感光させることが抑えられる。
【0046】
また、光学フィルター17a,17bによって遮断される光の波長と、樹脂層12a,12bが吸収する光の波長とが調整されることによって、露光光と樹脂層12a,12bが吸収する光との波長が合わせられるため、レジスト15a,15bの露光と不要な露光光の吸収とが的確に行われる。
【0047】
図7に示されるように、次に、レジスト15a,15bがネガ型の場合には、レジスト15a,15bの露光によって感光していない部分が現像液によって除去される。あるいは、レジスト15a,15bがポジ型の場合には、レジスト15a,15bの露光によって感光した部分が現像液によって除去される。これにより、レジスト15a,15bに、マスク16a,16bに応じたパターンが形成される。すなわち、レジスト15a,15bに、透明電極層13a,13bのパターンとして設定されたパターンが形成される。
【0048】
図8に示されるように、次に、レジスト15aのパターンに応じて、透明導電層14aの露出部分がエッチングされ、レジスト15bのパターンに応じて、透明導電層14bの露出部分がエッチングされる。エッチング方法は、公知の方法が用いられる。これにより、透明導電層14aがパターニングされて透明電極層13aが形成され、透明導電層14bがパターニングされて透明電極層13bが形成される。透明導電層14a,14bの残存部分が、透明電極層13a,13bにおける導電領域となり、透明導電層14a,14bの除去部分が、透明電極層13a,13bにおける非導電領域となる。そして、レジスト15a,15bが除去されることにより、透明導電性積層体10が得られる。
【0049】
なお、上記の各工程は、ロール・ツー・ロール方式によって行われることが好ましい。これによれば、透明導電性積層体を効率よく製造することができるため、透明導電性積層体10の製造にかかる時間が短縮される。
【0050】
なお、
図9に示されるように、樹脂層12a,12bは、いずれか一方が割愛されてもよい。
図9は、樹脂層12bが割愛された透明導電性積層体20を示す。要は、樹脂層は、基板11と透明電極層13aとの間、および、基板11と透明電極層13bとの間の少なくとも一方に設けられていればよい。また、透明導電性積層体10は、基板11と透明電極層13a,13bとの間に、他の層を備えていてもよい。他の層としては、例えば、透明導電性積層体10における可視光の透過特性を調整するための層等が挙げられる。
【0051】
また、
図10に示されるように、基板11が複数の層を有していてもよい。
図10に示される透明導電性積層体21では、基板11が2つの副基板11a,11bと、副基板11aと副基板11bとを貼り合わせる粘着層22とから構成される。粘着層22に用いられる樹脂としては、アクリル系樹脂、シリコーン系樹脂、または、ゴム系樹脂等が挙げられる。粘着層22には、クッション性や透明性に優れた樹脂を用いることが好ましい。
【0052】
こうした透明導電性積層体の製造方法では、副基板11aの表面に樹脂層12aと透明導電層14aとが積層され、副基板11bの表面に樹脂層12bと透明導電層14bとが積層される。そして、各構成部材が積層された副基板11aの裏面と副基板11bの裏面とが粘着層22によって貼り合わせられる。以後、先の
図5〜
図8に示される工程と同様の工程を経て透明導電性積層体21が製造される。
【0053】
(実施例)
上述した透明性導電性積層体が有する特性について、以下に挙げる具体的な実施例、および、比較例を用いて説明する。
【0054】
<実施例1>
アクリル系モノマーとしてペンタエリスリトールテトラアクリレートを用い、アクリル酸ビニルエステルモノマーとしてラウリルアクリレートを用い、紫外線吸収剤として2−(2’−ヒドロキシ−5’−メタクリルオキシエチルフェニル)2H−ベンゾトリアゾールを用いた。そして、アクリル酸ビニルエステルモノマーと紫外線吸収剤とを、重合開始剤として2−2’−アゾビスイソブチロニトリルを用いるラジカル重合反応によって共重合させて、平均分子量が約1000である共重合体を得た。次いで、溶剤としてメチルイソブチルケトンを用い、アクリル系モノマー、共重合体、および、溶剤の配合比が、40重量%:20重量%:40重量%となる条件でこれらを攪拌し、樹脂層を形成するための塗工液を得た。
【0055】
基材として厚さが125μmのポリエチレンテレフタレートフィルムを用い、樹脂層を形成するための塗工液を基材の表面にマイクログラビア法を用いて塗布した。そして、樹脂層を形成するための塗工液からなる塗膜を80度の窒素雰囲気下で2分間乾燥して、厚さが5μmの樹脂層を、実施例1の樹脂層として得た。
【0056】
次いで、酸化インジウムスズ(ITO)からなる厚さが20nmの透明導電層を、スパッタリング法を用いて樹脂層の上に形成した。そして、透明導電層をパターニングすることによって、実施例1の透明導電性積層体を得た。
【0057】
<製造条件>
アクリル系モノマー :ペンタエリスリトールテトラアクリレート(ライトアクリレートPE−4A:共栄社化学)
アクリル酸ビニルエステルモノマー :ラウリルアクリレート(ライトアクリレートL−A:共栄社化学)
紫外線吸収剤 :2−(2’−ヒドロキシ−5’−メタクリルオキシエチルフェニル)2H−ベンゾトリアゾール(DAINSORB T−31:大和化成)
溶剤 :メチルイソブチルケトン(和光純薬)
共重合体の平均分子量 :約1000
アクリル系モノマー、共重合体、溶剤の配合比:[アクリル系モノマー:共重合体:溶剤]=[40重量%:20重量%:40重量%]
樹脂層の形成方法 :マイクログラビア
樹脂層の膜厚 :5μm
塗膜の乾燥温度 :80度
基板材料 :ポリエチレンテレフタレート
基板厚さ :125μm
透明導電層の形成材料 :酸化インジウムスズ(ITO)
透明導電層の形成方法 :スパッタリング
透明導電層の膜厚 :20nm
<実施例2>
樹脂層を形成するための塗工液に含まれる共重合体の平均分子量を約5000とし、それ以外の条件を実施例1と同じくして実施例2の樹脂層、および、実施例2の透明導電性積層体を得た。
【0058】
<実施例3>
樹脂層を形成するための塗工液に含まれる共重合体の平均分子量を約1万とし、それ以外の条件を実施例1と同じくして実施例3の樹脂層、および、実施例3の透明導電性積層体を得た。
【0059】
<実施例4>
樹脂層を形成するための塗工液に含まれる共重合体の平均分子量を約5万とし、それ以外の条件を実施例1と同じくして実施例4の樹脂層、および、実施例4の透明導電性積層体を得た。
【0060】
<実施例5>
樹脂層を形成するための塗工液に含まれる共重合体の平均分子量を約30万とし、それ以外の条件を実施例1と同じくして実施例5の樹脂層、および、実施例5の透明導電性積層体を得た。
【0061】
<実施例6>
樹脂層を形成するための塗工液に含まれる共重合体の平均分子量を約500とし、それ以外の条件を実施例1と同じくして実施例6の樹脂層、および、実施例6の透明導電性積層体を得た。
【0062】
<比較例1>
樹脂層を形成するための塗工液に含まれる共重合体の平均分子量を約50万とし、それ以外の条件を実施例1と同じくして比較例1の樹脂層、および、比較例1の透明導電性積層体を得た。
【0063】
<比較例2>
アクリル酸ビニルエステルモノマーに代わり、エチレングリコールジグリシジルエーテルと紫外線吸収剤とを、重合開始剤として2−2’−アゾビスイソブチロニトリルを用いるラジカル重合反応によって共重合させて、平均分子量が約10000である比較例2の共重合体を得た。次いで、溶剤としてメチルイソブチルケトンを用い、アクリル系モノマー、比較例2の共重合体、および、溶剤の配合比が、40重量%:20重量%:40重量%となる条件でこれらを攪拌し、比較例2の樹脂層を形成するための塗工液を得た。そして、塗工液以外の条件を実施例1と同じくして比較例2の樹脂層、および、比較例2の透明導電性積層体を得た。
【0064】
<評価方法>
実施例1から実施例6の樹脂層、および、比較例1、比較例2の樹脂層の各々に対し、写像性測定器(日本電色工業社製、NDH−2000)を用い、JIS−K7105−1981に準拠して、ヘイズ値を測定した。この際に、常温常圧(23℃1気圧)の雰囲気におけるヘイズと、150℃にて1時間加熱した後のヘイズとを測定した。また、常温常圧の雰囲気におけるヘイズをH1とし、加熱処理後のヘイズをH2として、下記式1に従ってヘイズ上昇値(ΔHaze)を算出した。そして、ヘイズ上昇値が0.1%以下である水準は、加熱処理後にヘイズの増加がなかった水準であると判定し、ヘイズ上昇値が0.1%を越える水準は、加熱処理後にヘイズが増加した水準であると判定した。
【0065】
ΔHaze=H2−H1
また、実施例1から実施例6の樹脂層の表面、および、比較例の樹脂層の表面に対し、つや消し黒色塗料を塗布した後、蛍光灯(三波長蛍光灯)直下にて樹脂層の表面を目視にて確認し、樹脂層の表面にスジ状の斑があるか否かを判定した。
【0066】
実施例1〜6、比較例1,2の透明導電性積層体を、上記の評価方法にて評価した結果を、表1に示す。
【0067】
【表1】
表1に示されるように、共重合体の平均分子量が30万を越える比較例1は、樹脂層の表面にスジの発生が確認された。また、紫外線吸収剤と共重合されるモノマーがエチレングリコールジグリシジルエーテルであって、共重合体の平均分子量が30万以下である比較例2においても、樹脂層の表面にスジの発生が確認された。
【0068】
これに対して、共重合体の平均分子量が30万以下である実施例1〜6は、いずれもスジの発生が確認されなかった。したがって、紫外線吸収剤と共重合されるモノマーがアクリル酸ビニルエステルモノマーであって、共重合体の平均分子量が30万以下であれば、樹脂層の表面におけるスジの発生が抑えられることが示された。
【0069】
また、共重合体の平均分子量が1000よりも小さい実施例6は、加熱処理後にヘイズが上昇した。一方、共重合体の平均分子量が1000以上である実施例1〜5は、加熱処理後にヘイズの変化は確認されなかった。したがって、樹脂層に含まれる共重合体の平均分子量が1000以上であれば、ヘイズの上昇が抑えられることが示された。さらに、共重合体の平均分子量が5000以上である実施例2〜5は、いずれもヘイズ上昇値が0.05%以下であって、ヘイズの上昇の抑制が非常に良好であることが認められた。
【0070】
以上説明したように、本実施形態によれば、以下の効果が得られる。
(1)樹脂層12a,12bが、樹脂層12a,12bに紫外線を吸収する機能を付加するための添加剤として、アクリル酸ビニルエステルモノマーと紫外線吸収剤とが共重合した樹脂を含む。そして、上記共重合した樹脂の平均分子量は、30万以下である。これによれば、共重合した樹脂のアクリル系モノマーに対する相溶性が向上する。その結果、樹脂層12a,12bの形成工程において、樹脂層12a,12bの表面にスジが発生することが抑えられる。
【0071】
(2)上記共重合した樹脂の平均分子量が、1000以上であるため、ブリードアウトの発生が抑制されて、透明導電性積層体10におけるヘイズの上昇が抑えられる。したがって、透明導電性積層体10およびタッチパネル31の透明性の低下が抑えられる。