特許第6201543号(P6201543)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6201543
(24)【登録日】2017年9月8日
(45)【発行日】2017年9月27日
(54)【発明の名称】車体下部フレーム構造
(51)【国際特許分類】
   B62D 21/02 20060101AFI20170914BHJP
【FI】
   B62D21/02 A
【請求項の数】3
【全頁数】7
(21)【出願番号】特願2013-184322(P2013-184322)
(22)【出願日】2013年9月5日
(65)【公開番号】特開2015-51667(P2015-51667A)
(43)【公開日】2015年3月19日
【審査請求日】2016年8月3日
(73)【特許権者】
【識別番号】000000170
【氏名又は名称】いすゞ自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100068021
【弁理士】
【氏名又は名称】絹谷 信雄
(72)【発明者】
【氏名】沼垂 能永
(72)【発明者】
【氏名】中川 洋
【審査官】 川村 健一
(56)【参考文献】
【文献】 実開昭63−098872(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B62D 17/00 − 25/08
B62D 25/14 − 29/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車体下部に互いに間隔を隔てながら車体前後方向に延設された一対のサイドフレームと、
前記一対のサイドフレーム間に車体幅方向に延設されたクロスメンバと、
前記サイドフレームと前記クロスメンバとを連結するジョイント部材と、を備え、
前記ジョイント部材が、前記クロスメンバの車体幅方向の端部及び前記サイドフレームの車体内側の側部に固定される基部と、当該基部から車体幅方向に突出して前記サイドフレームに固定される突出部と、を含む車体下部フレーム構造であって、
前記クロスメンバが車体前方又は車体後方に向けて開口する縦断面U字状に形成され、
前記基部の少なくとも一部が前記クロスメンバの開口部に嵌め込まれ、
前記突出部が前記サイドフレームの下部に固定される
ことを特徴とする車体下部フレーム構造。
【請求項2】
前記突出部が前記サイドフレームの下部に沿って車体幅方向に延びる一対の横縁部を有すると共に、当該一対の横縁部が前記サイドフレームの下部に固定される
請求項1に記載の車体下部フレーム構造。
【請求項3】
前記基部が前記サイドフレームの側部に沿って車体上下方向に延びる一対の縦縁部を有すると共に、当該一対の縦縁部が前記サイドフレームの側部に固定される
請求項1又は2に記載の車体下部フレーム構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車体下部フレーム構造に関し、特に、バス等の車体下部フレーム構造を構成するサイドフレームとクロスメンバとの連結に関する。
【背景技術】
【0002】
バス等においては、地面からフロアパネルまでのクリアランスを低く設定した、いわゆる低床バスが多用されている。このような低床バスの車体下部フレーム構造は、車体前後方向に延設された一対のサイドフレーム間に複数本のクロスメンバを車体幅方向に架設して構成されている。(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2001−180534号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
バス等においては、車体重量の低減を図るために、クロスメンバを軽量化する要請がある。しかしながら、クロスメンバを軽量化すると、サイドフレームとクロスメンバとのジョイント部分に、車体前後方向及び車体上下方向の外力(例えば、捻り力等)が大きく作用する。そのため、ジョイント部分の結合強度を十分に向上させなければ、下部フレーム構造全体の剛性を確保できない可能性がある。
【0005】
本発明の目的は、サイドフレームとクロスメンバとのジョイント部分の結合強度を向上させて、下部フレーム構造全体の剛性を効果的に確保することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上述の目的を達成するため、本発明の車体下部フレーム構造は、車体下部に互いに間隔を隔てながら車体前後方向に延設された一対のサイドフレームと、前記一対のサイドフレーム間に車体幅方向に延設されたクロスメンバと、前記サイドフレームと前記クロスメンバとを連結するジョイント部材とを備え、前記ジョイント部材が、前記クロスメンバの車体幅方向の端部及び前記サイドフレームの車体内側の側部に固定される基部と、当該基部から車体幅方向に突出して前記サイドフレームの下部又は上部に固定される突出部とを含むことを特徴とする。
【0007】
また、前記突出部が前記サイドフレームの下部又は上部に沿って車体幅方向に延びる一対の横縁部を有すると共に、当該一対の横縁部が前記サイドフレームの下部又は上部に固定されてもよい。
【0008】
また、前記基部が前記サイドフレームの側部に沿って車体上下方向に延びる一対の縦縁部を有すると共に、当該一対の縦縁部が前記サイドフレームの側部に固定されてもよい。
【0009】
前記クロスメンバが車体前方又は車体後方に向けて開口する縦断面U字状に形成され、前記基部の少なくとも一部が前記クロスメンバの開口部に嵌め込まれ、前記突出部が前記サイドフレームの下部に固定されてもよい。
【発明の効果】
【0010】
本発明の車体下部フレーム構造によれば、サイドフレームとクロスメンバとのジョイント部分の結合強度を向上させて、下部フレーム構造全体の剛性を効果的に確保することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本発明の一実施形態に係る車両(バス)の一例を示す模式的な左側面図である。
図2】本発明の一実施形態に係る車体下部フレーム構造を斜め下方から視た模式的な斜視図である。
図3】本発明の一実施形態に係る車体下部フレーム構造のジョイント部分を斜め下方から視た模式的な斜視図である。
図4】本発明の一実施形態に係る車体下部フレーム構造のジョイント部分を示す模式的な分解斜視図である。
図5】一般的な車体下部フレーム構造を斜め下方から視た模式的な斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、添付図面に基づいて、本発明の一実施形態に係る車体下部フレーム構造を説明する。同一の部品には同一の符号を付してあり、それらの名称および機能も同じである。したがって、それらについての詳細な説明は繰返さない。
【0013】
まず、図1に基づいて、本実施形態に係る車両の一例であるバス1について説明する。バス1の車体左側面には、左前輪2よりも前方側に前乗降口4が形成されると共に、左前輪2と左後輪3との間に中乗降口5が形成されている。車室床面を構成するフロアパネル80は、前乗降口4の開口下縁及び中乗降口5の開口下縁と略同一の高さで設けられている。すなわち、本実施形態のバス1は、車体の地上高を低く設定した、いわゆる低床バスとして構成されている。
【0014】
次に、図2〜4に基づいて、本実施形態に係る車体下部フレーム構造10の詳細構成について説明する。
【0015】
図2は車体下部フレーム構造10を斜め下方から視た斜視図、図3はサイドフレーム11とクロスメンバ12とのジョイント部分を斜め下方から視た斜視図、図4はジョイント部分の分解斜視図である。なお、図3中において、符号20は車体外壁の下端縁部を構成するスカート部、符号21は車体上下方向に延設された縦フレームを示している。
【0016】
図2に示すように、車体下部フレーム構造10は、車体下部の左右両端に車体前後方向に延設された一対のサイドフレーム11と、一対のサイドフレーム11間に車体幅方向に延設された複数本のクロスメンバ12と、サイドフレーム11とクロスメンバ12とを連結する複数対のジョイント部材15と、クロスメンバ12と交差しながら車体前後方向に延設された複数本のサイドメンバ13とを備えて構成されている。
【0017】
図3に示すように、サイドフレーム11は、例えば金属材料等で縦断面略矩形状に形成されると共に、その上面部には縦フレーム21の下端部が溶接等により固定されている。また、サイドフレーム11の車体外側の側面部には、スカート部20が溶接等により固定されている。なお、サイドフレーム11の縦断面形状は、略矩形状に限定されず、例えば、車体外側に開口する略U字状に形成されてもよい。
【0018】
クロスメンバ12は、例えば金属材料等で縦断面略U字状に形成されると共に、その開口部を車体後方(又は、前方)に向けた状態で一対のサイドフレーム11間に架設されている。また、クロスメンバ12の開口部内にはジョイント部材15が固定されると共に、その上面部にはフロアパネル80が載置されている。なお、クロスメンバ12の縦断面形状は、略U字状に限定されず、例えば、縦断面略U字状のインナ部材とアウタ部材とを互いに接合することで略矩形状に形成されてもよい。
【0019】
ジョイント部材15は、例えば金属材料等で形成されており、クロスメンバ12の車体幅方向の端部、サイドフレーム11の車体内側の側面部11A及び、サイドフレーム11の下面部11Bに固定されて、これらサイドフレーム11とクロスメンバ12とを連結する。
【0020】
より詳しくは、図4に示すように、ジョイント部材15は、平板部材をクロスメンバ12の開口形状に沿うように略矩形状に折り曲げて形成した基部15Aと、基部15Aの側面部をサイドフレーム11の側面部11A及び下面部11Bの形状に沿うように略L字状に切り欠いて形成した突出部15Bとを備えて構成されている。このように、基部15Aの側面部を略L字状に切り欠くことで、基部15Aには車体上下方向に直線状に延びる一対の縦縁部15Cが形成されると共に、突出部15Bには車体幅方向に直線状に延びる一対の横縁部15Dが形成される。
【0021】
サイドフレーム11とクロスメンバ12とを連結する際は、基部15Aをクロスメンバ12の開口部内に嵌め込むと共に、その外周面の所定箇所をクロスメンバ12の開口内周面に溶接固定する(図3(b)参照)。さらに、一対の縦縁部15Cをサイドフレーム11の側面部11Aにそれぞれ溶接固定すると共に、一対の横縁部15Dをサイドフレーム11の下面部11Bにそれぞれ溶接固定する(図3(a),(b)参照)。
【0022】
すなわち、基部15Aの外周面とクロスメンバ12の開口内周面との結合力によって、クロスメンバ12とジョイント部材15とが強固に固定されると共に、縦縁部15Cとサイドフレーム11の側面部11Aとの結合力及び、横縁部15Dとサイドフレーム11の下面部11Bとの結合力によって、サイドフレーム11とジョイント部材15とが強固に固定されるように構成されている。
【0023】
次に、本実施形態に係る車体下部フレーム構造10による作用効果を説明する。
【0024】
一般的な車体下部フレーム構造は、例えば図5に示すように、略平板台形状の補強部材150をサイドフレーム110の上面に固定すると共に、クロスメンバ120の下面を補強部材150の上面に固定することで、これらサイドフレーム110とクロスメンバ120とを連結させている。このようなジョイント構造によれば、車体前後方向に作用する捻り力等に対しては結合強度を確保できるが、車体上下方向に作用する捻り力等に対しては結合強度を十分に確保できない可能性がある。そのため、クロスメンバ120の軽量化等に柔軟に対応できない課題がある。
【0025】
これに対し、本実施形態の車体下部フレーム構造10では、基部15Aの外周面とクロスメンバ12の開口内周面との結合力によって、クロスメンバ12とジョイント部材15とが互いに強固に固定されている。さらに、一対の縦縁部15Cとサイドフレーム11の側面部11Aとの結合力及び、一対の横縁部15Dとサイドフレーム11の下面部11Bとの結合力によって、サイドフレーム11とジョイント部材15とが互いに強固に固定されている。
【0026】
すなわち、各部材間の結合箇所を増加させることで、車体前後方向及び車体上下方向に作用する捻り力等に対してジョイント部分の結合強度を効果的に確保するように構成されている。
【0027】
したがって、本実施形態の車体下部フレーム構造10によれば、サイドフレーム11とクロスメンバ12とのジョイント部分の結合強度を確実に向上することが可能となり、下部フレーム構造全体の剛性を効果的に確保することができる。また、ジョイント部分の結合強度が向上することで、クロスメンバ12の軽量化等にも柔軟に対応することが可能になる。
【0028】
また、本実施形態の車体下部フレーム構造10では、ジョイント部材15は、基部15Aがクロスメンバ12の開口部内に嵌め込まれると共に、突出部15Bがサイドフレーム11の下面部11Bに固定されている。すなわち、フロアパネル80を載置するクロスメンバ12の上面部及び、サイドフレーム11の上面部が略同一平面となるように構成されている。
【0029】
したがって、本実施形態の車体下部フレーム構造10によれば、フロアパネル80の設置面積が効果的に増加されて、車体フロア構造全体の強度を確実に向上することができる。
【0030】
なお、本発明は、上述の実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、適宜変形して実施することが可能である。
【0031】
例えば、ジョイント部材15の突出部15Bをサイドフレーム11の上面部に固定するように構成してもよい。この場合も、車体上下方向及び車体前後方向の外力等に対して、ジョイント部分の結合強度を効果的に確保することができる。また、バス1は、低床バスに限定されず、乗降口とフロアパネルとの間にステップが介在する高床バスにも適用することが可能である。
【符号の説明】
【0032】
10 車体下部フレーム構造
11 サイドフレーム
12 クロスメンバ
13 サイドメンバ
15 ジョイント部材
15A 基部
15B 突出部
15C 縦縁部
15D 横縁部
80 フロアパネル
図1
図2
図3
図4
図5