特許第6201548号(P6201548)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6201548
(24)【登録日】2017年9月8日
(45)【発行日】2017年9月27日
(54)【発明の名称】回転機械
(51)【国際特許分類】
   F01D 25/24 20060101AFI20170914BHJP
   F01K 7/18 20060101ALI20170914BHJP
【FI】
   F01D25/24 T
   F01D25/24 G
   F01K7/18 A
【請求項の数】7
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2013-186486(P2013-186486)
(22)【出願日】2013年9月9日
(65)【公開番号】特開2015-52311(P2015-52311A)
(43)【公開日】2015年3月19日
【審査請求日】2016年7月8日
(73)【特許権者】
【識別番号】514030104
【氏名又は名称】三菱日立パワーシステムズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100134544
【弁理士】
【氏名又は名称】森 隆一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100064908
【弁理士】
【氏名又は名称】志賀 正武
(72)【発明者】
【氏名】瀬戸山 正幸
(72)【発明者】
【氏名】松本 和幸
【審査官】 高吉 統久
(56)【参考文献】
【文献】 実開平04−132407(JP,U)
【文献】 特開昭57−093607(JP,A)
【文献】 実開昭59−014901(JP,U)
【文献】 特開昭59−153901(JP,A)
【文献】 特開2005−315122(JP,A)
【文献】 特開平06−002504(JP,A)
【文献】 実開昭57−182204(JP,U)
【文献】 実開昭62−043102(JP,U)
【文献】 米国特許第5575618(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F01D 9/06
F01D 25/24
F01K 7/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
内周面に複数の静翼が設けられているケーシングと、
外周面に複数の動翼が設けられて、前記ケーシング内において回転自在に支持されているロータと、を備え、
前記ケーシングには、主流体を導入する主流入口と、
前記主流入口と連通し、前記ロータの軸方向に沿う主流路と、
前記主流入口よりも前記軸方向の下流側に設けられて補助流体を導入する補助入口と、
前記補助入口に連通して前記ロータの周方向に沿って延びている補助流路と、
前記補助流路と前記主流路とを連通させる複数の連通部と、
が形成され、
前記補助流路には、前記補助入口から流入する前記補助流体を周方向の一方側と他方側とに所定の割合で分岐させて案内する分岐部が設けられ、
前記連通部は、前記補助流路における前記軸方向の下流側の側面から、前記軸方向の下流側に向いつつ前記ロータに対する径方向内側に向って延びて前記軸方向に対して傾斜しており、前記主流路中で、前記動翼と、前記動翼に対して前記軸方向の下流側に隣接する前記静翼との間の位置に接続されていることを特徴とする回転機械。
【請求項2】
前記分岐部は、前記補助流路内の周方向における前記補助入口と同じ位置に、前記補助入口に向かって突出する突出部を有することを特徴とする請求項1に記載の回転機械。
【請求項3】
前記突出部は、前記補助入口に向かって漸次縮径して形成されることを特徴とする請求項2に記載の回転機械。
【請求項4】
前記突出部は、前記補助入口に向かって前記周方向の一方側及び他方側から傾斜する傾斜面が前記軸方向に延びて形成されることを特徴とする請求項2に記載の回転機械。
【請求項5】
前記補助流路は、前記主流路に連通する連通部を周方向に複数有し、
前記補助入口からの距離が遠くなるにしたがって、流路面積が次第に縮小するよう形成されることを特徴とする請求項1から請求項4のいずれか一項に記載の回転機械。
【請求項6】
前記補助入口は、ケーシングの周方向において離間して複数配置されることを特徴とする請求項1から請求項5のいずれか一項に記載の回転機械。
【請求項7】
前記ケーシングは蒸気タービンケーシングであり、
前記ロータは蒸気タービンロータであり、
前記主流体は主蒸気であり、
前記補助流体が過負荷蒸気であることを特徴とする請求項1から請求項6のいずれか一項に記載の回転機械。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、回転機械に関する。
【背景技術】
【0002】
蒸気タービンは、蒸気タービンケーシング内に蒸気を流入させ、流入させた蒸気に仕事をさせることで蒸気タービンロータを回転させている。蒸気タービンケーシング内では、蒸気が仕事をする過程で圧力が徐々に低下してしまう。そこで、蒸気タービンの中段から蒸気をさらに供給することで、蒸気タービンケーシング内中段以降の圧力を高めて蒸気タービンの出力を向上させる構造が知られている。
【0003】
例えば、特許文献1には、蒸気供給源からの蒸気を蒸気タービンの上流側から流入させる蒸気加減弁と、蒸気を蒸気タービンの中段から流入させる過負荷蒸気加減弁とを備える構造が開示されている。この蒸気タービンは、定格運転時では蒸気加減弁の開度を調整することで蒸気タービンの上流側から蒸気を流入させている。そして、蒸気加減弁よりも下流側に配置された過負荷蒸気加減弁の開度を調整することで、蒸気タービンの中段から蒸気を流入させている。これにより、蒸気タービンの上流側から流入させた蒸気の圧力が低下している蒸気タービンの中段に高圧の蒸気を流入させることで、蒸気タービンの出力を向上させている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平06−002504号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、流体である蒸気を、回転機械である蒸気タービンの中段から流入させる場合は、蒸気タービンケーシング内のロータ周りに均一に蒸気を導入することが好ましい。これは、ロータに対して、その周方向での偏荷重等の余計な負荷をかけることなく効率的にロータを回転させるためである。
【0006】
本発明は、上記要望に応えるためになされたものであって、回転機械の中段から流体を流入させる場合に、ロータの回転効率を向上できる回転機械を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、本発明は以下の手段を提案している。
本発明の第一の態様に係る回転機械は、内周面に複数の静翼が設けられているケーシングと、外周面に複数の動翼が設けられて、前記ケーシング内において回転自在に支持されているロータと、を備え、前記ケーシングには、主流体を導入する主流入口と、前記主流入口と連通し、前記ロータの軸方向に沿う主流路と、前記主流入口よりも前記軸方向の下流側に設けられて補助流体を導入する補助入口と、前記補助入口に連通して前記ロータの周方向に沿って延びている補助流路と、前記補助流路と前記主流路とを連通させる複数の連通部と、が形成され、前記補助流路には、前記補助入口から流入する前記補助流体を周方向の一方側と他方側とに所定の割合で分岐させて案内する分岐部が設けられ、前記連通部は、前記補助流路における前記軸方向の下流側の側面から、前記軸方向の下流側に向いつつ前記ロータに対する径方向内側に向って延びて前記軸方向に対して傾斜しており、前記主流路中で、前記動翼と、前記動翼に対して前記軸方向の下流側に隣接する前記静翼との間の位置に接続されていることを特徴とする。
【0008】
このような構成の回転機械によれば、分岐部を補助流路に設けていることで、補助入口から導入する補助流体を補助流路内で所定の割合に周方向の一方側と他方側とに分岐させて案内することができる。そのため、補助流路に導入する補助流体が、環状の補助流路内の一方側か他方側のいずれか一方に意図せず集中的に偏って流れてしまうような偏流を生じながら導入されることを防止できる。したがって、補助流路内に補助流体を均一に流通させることができる。即ち、主流路を流れる主流体に補助流体を混入させる場合に、ロータの周方向の異なる位置からも均等に補助流体を流入させることができる。そのため、主流体と補助流体とが主流路でミキシングされる際の損失が周方向の異なる位置によってばらつくことを抑えることができる。これにより、ロータに不要な負荷を生じさせずに、回転機械の中段から補助流体を流入させる場合に、ロータの回転効率を向上できる。
【0009】
また、本発明の他の態様に係る回転機械は、前記分岐部は、前記補助流路内の周方向における前記補助入口と同じ位置に、前記補助入口に向かって突出する突出部を有していてもよい。
【0010】
このような構成の回転機械によれば、補助流路内の周方向における補助入口と同じ位置に突出部が形成されていることで、補助入口から導入される補助流体を突出部に衝突させて補助流路内に流すことが容易にできる。即ち、補助入口から導入された補助流体は突出部の形状に沿って補助流路に流入する。そのため、突出部の形状を調整することで、補助流体を周方向の一方側と他方側とに所定の割合で分岐させて案内することが容易にできる。これにより、分岐部を容易に設けることができ、補助流路に導入される補助流体が一方側か他方側かのどちらかに偏流してしまうことを容易に防止できる。
【0011】
さらに、本発明の他の態様に係る回転機械は、前記突出部は、前記補助入口に向かって漸次縮径して形成されていてもよい。
【0012】
このような構成の回転機械によれば、突出部を補助入口に向かって漸次縮径して形成することで、補助入口から導入される補助流体が突出部に衝突した際に、頂点から放射状に均等に広がるように分岐させることができる。そのため、補助流体を補助流路内に周方向の一方側と他方側とに均等な割合で分岐させて案内して流通させることが容易にできる。
【0013】
また、本発明の他の態様に係る回転機械は、前記突出部は、前記補助入口に向かって前記周方向の一方側及び他方側から傾斜する傾斜面が前記軸方向に延びて形成されていてもよい。
【0014】
このような構成の回転機械によれば、突出部に一方側及び他方側から傾斜する傾斜面が形成されていることで、補助入口から導入される補助流体が突出部に衝突した際に、傾斜面に沿って周方向の一方側と他方側とに均等に広がるように分岐させることができる。これにより、補助流体を補助流路内に周方向の一方側と他方側とに均等な割合で分岐させて案内して流通させることがより確実かつ容易にできる。
【0015】
また、本発明の他の態様に係る回転機械は、前記補助流路は、前記主流路に連通する連通部を周方向に複数有し、前記補助入口からの距離が遠くなるにしたがって、流路面積が次第に縮小するよう形成されていてもよい。
【0016】
このような構成の回転機械によれば、補助流路が、補助入口が形成されている位置から距離が遠くなるにしたがって補助流路の流路面積が次第に縮小するよう形成されていることで、補助流路内を流通する補助流体の流速は、補助入口が形成されている位置から距離が遠くなるにしたがって速くなる。そのため、連通部の形成されている位置によらず、連通部を介して主流路に流入される補助流体の流量を一定に近づけることができる。したがって、主流体と補助流体とが主流路でミキシングされる際の損失が周方向の異なる位置によってばらつくことをより確実に抑えることができる。これにより、ロータの周方向での偏荷重等が生じず、回転機械の中段から補助流体を流入させる場合に、ロータの回転効率をより向上できる。
【0017】
さらに、本発明の他の態様に係る回転機械は、前記補助入口は、ケーシングの周方向において離間して複数配置されていてもよい。
【0018】
このような構成の回転機械によれば、補助入口が、ケーシングの周方向に離間して複数配置されていることで、補助流路内の周方向の異なる場所から補助流体を導入することができる。そのため、補助流路内を流通する補助流体をより均一に近い状態で流通させることが容易にできる。
【0019】
さらに、本発明の他の態様に係る回転機械は、前記ケーシングは蒸気タービンケーシングであり、前記ロータは蒸気タービンロータであり、前記主流体は主蒸気であり、前記補助流体が過負荷蒸気であってもよい。
【0020】
このような構成の回転機械によれば、蒸気タービンとして過負荷蒸気を効率的に使用することができ、蒸気タービンの中段から流体を流入させる場合に、蒸気タービンロータの回転効率を向上できる。
【発明の効果】
【0021】
本発明の回転機械によれば、ロータの周方向での偏荷重等が生じさせず、回転機械の中段から流体を流入させる場合に、ロータの回転効率を向上できる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
図1】本発明に係る第一実施形態における蒸気タービンを示す模式図である。
図2】本発明に係る第一実施形態における高圧タービンを示す模式図である。
図3】本発明に係る第一実施形態における高圧タービンにおける補助流路を示す図2の領域IIIにおける断面図である。
図4】本発明に係る第一実施形態における高圧タービンの軸方向と直交する断面図である。
図5】本発明に係る第一実施形態における分岐部を示す模式図である。
図6】本発明に係る分岐部の第一変形例を示す模式図である。
図7】本発明に係る分岐部の第二変形例を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明に係る第一実施形態について図1及び図2を参照して説明する。
本発明の第一実施形態に係る回転機械である蒸気タービン1を用いる蒸気タービンプラント100について、図1を参照して説明する。
図1に示すように、蒸気タービンプラント100は、軸線Oを中心に回転するロータ11と、ロータ11に接続される蒸気タービン1と、図示しない蒸気供給源から流体である蒸気Sを蒸気タービン1に供給する蒸気供給管12と、蒸気供給管12から分岐して蒸気タービン1の上流側に蒸気Sを供給する主蒸気分岐管13と、蒸気供給管12から分岐して主蒸気分岐管13よりも下流側で蒸気タービン1の中段に蒸気Sを供給する過負荷蒸気分岐管14と、蒸気タービン1の下流側に接続されて蒸気を排出する蒸気排出管15とを備えている。
【0024】
ここで、蒸気タービン1において、蒸気Sが流入する入口側を上流側(例えば、図1図2における紙面左側)とし、蒸気Sが排出される出口側を下流側(例えば、図1図2における紙面右側)とする。
【0025】
蒸気供給管12は、蒸気供給管12内を流通する蒸気Sの流通量を調整する供給弁を有している。蒸気供給管12は、供給弁の開放量を調整することで、蒸気タービン1に供給する蒸気Sの供給量を調整する。
主蒸気分岐管13は、蒸気供給源から蒸気供給管12を介して供給される蒸気Sのうち、蒸気タービン1の定格負荷となる流量の蒸気Sを蒸気タービン1の上流側まで供給する。主蒸気分岐管13は、蒸気タービン1の上流側への蒸気Sの供給量を調整する蒸気調整弁を有している。
過負荷蒸気分岐管14は、蒸気供給源から蒸気供給管12を介して供給される蒸気Sのうち、定格負荷となる流量を超えた分の蒸気Sを、蒸気タービン1の中段まで供給する。過負荷蒸気分岐管14は、蒸気供給管12よりも下流側の蒸気タービン1の中段への蒸気Sを供給し、蒸気Sの供給量を調整する過負荷蒸気調整弁を有している。
蒸気排出管15は、蒸気タービン1で仕事をした蒸気を蒸気タービン1から排出する。
【0026】
なお、本実施形態では、蒸気タービン1の入口から供給される蒸気Sであり、主蒸気分岐管13を介して供給されている蒸気Sを主流体である主蒸気S1とする。また、蒸気タービン1の中段に供給される蒸気Sであり、過負荷蒸気分岐管14を介して供給されている蒸気Sを補助流体である過負荷蒸気S2とする。
【0027】
図2に示すように、蒸気タービン1は、蒸気タービンケーシング2と、蒸気タービンケーシング2を貫通するように軸線Oに沿って延びる蒸気タービンロータ3と、ロータ11を軸線O回りに回転可能に支持する軸受部4とを備えている。
ここで、蒸気タービン1とは、流体である蒸気Sのエネルギーを回転動力として取り出す外燃機関であって、発電所における発電機等に連結して用いられる装置である。
【0028】
図3に示すように、蒸気タービンケーシング2は、内部に形成された流路内に主蒸気S1を流通させる。蒸気タービンケーシング2は、蒸気タービンロータ3を外側から覆うケーシングである。蒸気タービンケーシング2は、内周面に静翼21が設けられている。蒸気タービンケーシング2は、内側のケーシングであり分割可能な円筒形状をなす内車室22と、内車室22を径方向の外側から覆う外車室23とを有している。さらに、蒸気タービンケーシング2には、入口で主蒸気S1を導入する主流入口24と、主流入口24と連通して蒸気タービンロータ3の軸方向に沿う主流路25とが形成されている。蒸気タービンケーシング2には、主流入口24よりも軸方向の下流側に設けられて過負荷蒸気S2を導入する補助入口26と、補助入口26及び主流路25に連通して蒸気タービンロータ3の周方向に沿う環状の補助流路27とが形成されている。
蒸気タービンロータ3は、ロータ11と一体に接続され、蒸気タービンケーシング2内において軸線O回りに回転自在に支持されている回転軸である。蒸気タービンロータ3は、外周面に動翼31が設けられている。
軸受部4は、ジャーナル軸受装置及びスラスト軸受装置を備えている。
【0029】
主流入口24は、主蒸気分岐管13を介して供給される主蒸気S1を蒸気タービンケーシング2内に供給する。主流入口24は、主蒸気分岐管13と接続されて、蒸気タービン1における蒸気タービンケーシング2の入口に形成されている。
主流路25は、主流入口24から流入した主蒸気S1を軸方向に沿って蒸気タービン1の上流側から下流側に向かって流通させる。主流路25は、蒸気タービンケーシング2内の内車室22に、主流入口24から下流側に向かって蒸気タービンロータ3の軸方向に沿って形成されている。即ち、主流路25は、蒸気タービンロータ3周りに環状をなして、軸方向に沿って蒸気タービンケーシング2内に延在して形成されている。そして、主流路25には蒸気タービンロータ3に設けられた動翼31と、蒸気タービンケーシング2に設けられた静翼21とが配置されている。
【0030】
図3及び図4に示すように、補助入口26は、過負荷蒸気分岐管14を介して供給される過負荷蒸気S2を蒸気タービンケーシング2内に供給している。補助入口26は、過負荷蒸気分岐管14と接続されて、主流入口24よりも軸方向の下流側である蒸気タービンケーシング2の中段に外車室23を貫通して内車室22まで形成されている。補助入口26が形成される蒸気タービンケーシング2の中段は、主流入口24よりも軸方向の下流側であって蒸気タービン1の入口と出口の中間であればよく、使用される蒸気タービン1に応じて適宜設定されればよい。また、補助入口26は、蒸気タービンケーシング2の周方向において離間して複数配置されている。本実施形態においては、補助入口26は、蒸気タービンケーシング2の周方向に180°離れて二カ所配置されている。
【0031】
補助流路27は、補助入口26から流入した過負荷蒸気S2を蒸気タービンロータ3の周方向に流通させてから、主流路25に供給する。補助流路27は、主流路25を径方向外側から覆うよう蒸気タービンロータ3の周方向に沿って延びるよう内車室22に環状に形成されている。補助流路27は、補助入口26が形成されている位置からの距離が遠くなるにしたがって、補助流路27の径方向の断面積である流路面積が次第に縮小するよう形成されている。具体的には、本実施形態では、補助流路27は、補助入口26と連通している位置から離れるにつれて徐々に細く形成されており、180度反対側に設けられたもう一方の補助入口26に近づくにしたがって徐々に流路断面が元に戻るよう形成されている。即ち、補助入口26が形成されている位置から周方向に90度離れた位置で最も過負荷蒸気S2の流通量が少なくなるよう流路面積が最も小さく形成されている。補助流路27は、補助入口26から流入する過負荷蒸気S2を補助流路27内の周方向の一方側と他方側とに所定の割合に分岐して案内する突出部10(分岐部)が形成されている。また、補助流路27は、径方向内側の流路内面に主流路25と連通する連通部20が複数形成されている。
ここで、補助流路27の周方向の一方側とは図4における反時計回り方向とし、周方向の他方側を図4における時計回り方向とする。
【0032】
突出部10は、補助入口26から流入する過負荷蒸気S2を周方向の一方側と他方側とに所定の割合で分岐させて案内させる分岐部である。本実施形態では、突出部10は、補助入口26から導入された過負荷蒸気S2を一方側と他方側とに均等に分岐させるよう形成されている。具体的には、本実施形態では突出部10は、補助流路27内の径方向内側の面の周方向における補助入口26と同じ位置に形成されている。そして、突出部10は、図5に示すように、補助入口26に向かって漸次縮径するよう円錐状に突出して形成されている。
【0033】
連通部20は、補助流路27と主流路25とを連通して形成される流路である。具体的には、軸線Oを中心として周方向に離間した10箇所に補助流路27から主流路25に向かって径方向に延びて形成されている。連通部20は、図3に示すように、補助流路27の軸方向の下流側の側面から、補助流路27及び主流路25にそれぞれ交差するよう軸方向の下流側に向かって傾斜しながら形成されている。
【0034】
次に、上記構成の本実施形態の回転機械である蒸気タービン1の作用について説明する。
上記のような実施形態の蒸気タービンプラント100では、蒸気供給源からの蒸気Sが蒸気供給管12を介して蒸気タービン1に供給される。具体的には、蒸気供給管12を流通する蒸気Sは、供給弁が開放されていることで、主蒸気分岐管13及び過負荷蒸気分岐管14に供給される。主蒸気分岐管13まで供給された蒸気Sは、主蒸気S1として、蒸気タービン1に定格運転させるように蒸気タービンケーシング2内に供給される。即ち、蒸気Sは、蒸気調整弁によって供給量が調整されながら、主蒸気S1として蒸気タービン1の入口に形成された主流入口24から主流路25内に導入される。主流路25に導入された主蒸気S1は、主流路25を流通することで膨張しながら、動翼31に衝突して下流側に向かって流通する。これにより、蒸気タービンロータ3を回転させて蒸気Sのエネルギーを回転動力として取り出している。
【0035】
また、過負荷蒸気分岐管14まで供給された蒸気Sは、過負荷蒸気S2として、蒸気供給管12を介して供給される蒸気Sのうち、主蒸気S1として蒸気タービン1の入口から蒸気タービンケーシング2内に供給される流量を超えた分の蒸気Sである。具体的には、過負荷蒸気S2は、過負荷蒸気調整弁によって供給量が調整されながら、過負荷蒸気S2として蒸気タービン1の中段に形成された二カ所の補助入口26から同時に補助流路27内に導入される。補助入口26から補助流路27内に導入された過負荷蒸気S2は、補助入口26と同じ位置にある突出部10に衝突し、補助流路27内を周方向の一方側と他方側とに均等に分かれて流入する。補助流路27内に過負荷蒸気S2が流通すると、補助流路27に形成された複数の連通部20から均等に過負荷蒸気S2は主流路25に流入し、主流路25内で主蒸気S1と混入することで主流路25内の中段よりも下流側の圧力を高めている。これによって、蒸気タービン1は下流側の圧力状態を向上させて、出力を向上させている。
【0036】
このような蒸気タービン1によれば、分岐部である突出部10を補助流路27に設けていることで、補助入口26から導入する過負荷蒸気S2を補助流路27内で所定の割合である均等な割合に周方向の一方側と他方側とに分岐させて案内することができる。そのため、補助流路27に導入する補助流体である過負荷蒸気S2が、環状の補助流路27内の一方側か他方側のいずれか一方に意図せず集中的に偏って流れてしまうような偏流を生じながら導入されることを防止できる。したがって、補助流路27内に過負荷蒸気S2を均一に流通させることができる。即ち、主流路25を流れる主蒸気S1に、補助流路27を流通する過負荷蒸気S2を混入させる場合に、蒸気タービンロータ3の周方向の異なる位置の複数の連通部20から均等に過負荷蒸気S2を流入させることができる。そのため、主蒸気S1と過負荷蒸気S2とが主流路25でミキシングされる際の損失が周方向の異なる位置によってばらつくことを抑えることができる。これにより、蒸気タービンロータ3の周方向での偏荷重等の不要な負荷を生じさせず、蒸気タービン1の中段から過負荷蒸気S2を流入させる場合に、蒸気タービンロータ3の回転効率を向上できる。
【0037】
また、補助流路27内の周方向における補助入口26と同じ位置に突出部10が形成されていることで、補助入口26から導入される過負荷蒸気S2を突出部10に衝突させて補助流路27内に流すことが容易にできる。即ち、補助入口26から導入された過負荷蒸気S2は突出部10の形状に沿って補助流路27に流入する。そのため、突出部10の形状を調整することで、過負荷蒸気S2を周方向の一方側と他方側とに所定の割合で分岐させて案内することが容易にできる。これにより、分岐部を容易に設けることができ、補助流路27に導入される過負荷蒸気S2が一方側か他方側かのどちらかに偏流してしまうことを容易に防止できる。
【0038】
さらに、突出部10を補助入口26に向かって漸次縮径するよう突出する円錐状に形成することで、補助入口26から導入される過負荷蒸気S2が突出部10に衝突した際に、円錐状の頂点から放射状に均等に広がるように分岐させることができる。そのため、過負荷蒸気S2を補助流路27内に周方向の一方側と他方側とに均等な割合で分岐させて案内して流通させることが容易にできる。
【0039】
また、補助流路27が、補助入口26が形成されている位置から距離が遠くなるにしたがって補助流路27の径方向の断面積である流路面積が次第に縮小するよう形成されていることで、補助流路27内を流通する過負荷蒸気S2の流速は、補助入口26が形成されている位置から距離が遠くなるにしたがって速くなる。
補助流路27の周方向にわたって複数形成されている連通部20から過負荷蒸気S2が主流路25に供給されることで、補助流路27内を流通する過負荷蒸気S2の流量は減少する。ところが、補助入口26が形成されている位置から距離が遠くなるにしたがって流速が速くなるように補助流路27が形成されていることで、流量の減少に伴う補助流路27内を流通する過負荷蒸気S2の流速の低下を防止できる。そのため、連通部20の形成されている位置によらず、連通部20を介して主流路25に流入される過負荷蒸気S2の流量を一定に近づけることができる。したがって、主蒸気S1と過負荷蒸気S2とが主流路25でミキシングされる際の損失が周方向の異なる位置によってばらつくことをより確実に抑えることができる。これにより、蒸気タービンロータ3の周方向での偏荷重等が生じず、蒸気タービン1の中段から過負荷蒸気S2を流入させる場合に、蒸気タービンロータ3の回転効率をより向上できる。
【0040】
さらに、補助入口26が、蒸気タービンケーシング2の周方向に離間して複数配置されていることで、補助流路27内の周方向の異なる場所から過負荷蒸気S2を導入することができる。そのため、補助流路27内を流通する過負荷蒸気S2をより均一に近い状態で流通させることが容易にできる。
また、本実施形態のように、二か所の補助入口26を180度離れた位置に配置することで、一方の補助入口26から導入される過負荷蒸気S2が十分に補助流路27内に流通されなくとも、効率的に補助流路27内に過負荷蒸気S2を導入することができる。
【0041】
次に、図6を参照して突出部101の第一変形例について説明する。
第一変形例においては第一実施形態と同様の構成要素には同一の符号を付して詳細な説明を省略する。この第一変形例の突出部101は、形状について第一実施形態と相違する。
【0042】
即ち、図6に示すように、第一変形例の突出部101は、補助入口26に向かって周方向の一方側および他方側から傾斜する傾斜面101aが軸方向に延びて三角柱状に形成されている。即ち、突出部101は、補助流路27の径方向内側の面の周方向の一方側及び他方側から均等に徐々に立ちあがることで矩形状の傾斜面101aが形成され、軸に直交する平面で切った時の断面が三角形状をなす三角柱状に形成されている。
【0043】
このように、突出部101に一方側及び他方側から傾斜する傾斜面101aが形成されていることで、補助入口26から導入される過負荷蒸気S2が突出部101に衝突した際に、三角形状の頂点から傾斜面101aに沿って周方向の一方側と他方側とに均等に広がるように分岐させることができる。そのため、過負荷蒸気S2を補助流路27内に周方向の一方側と他方側とに均等な割合で分岐させて案内して流通させることがより確実かつ容易にできる。
【0044】
次に、図7を参照して突出部102の第二変形例について説明する。
第二変形例においては実施形態と同様の構成要素には同一の符号を付して詳細な説明を省略する。この第二変形例の突出部102も、形状について第一実施形態と相違する。
【0045】
即ち、図7に示すように、第二変形例の突出部102は、実施形態における突出部102の頂点が補助流路27と連通部20の入口との接続部分である軸線O方向の下流側に向かって延びるよう形成されている。即ち、突出部102は、補助入口26に向かって漸次縮径しつつ、軸方向の下流側の向かって突出するよう延びている。
【0046】
このように、突出部102が補助入口26に向かって漸次縮径しつつ、軸方向の下流側である連通部20の入口に向かって突出するよう延びていることで、連通部20が補助流路27の軸方向の側面に接続されていても、導入される過負荷蒸気S2の流れを分岐させることができる。即ち、本実施形態のように、連通部20が、補助流路27から軸方向の下流側に向かって傾斜しながら形成されている場合であっても、確実に導入される過負荷蒸気S2を周方向の一方側と他方側も所定の割合で分岐させて案内することができる。
【0047】
以上、本発明の実施形態について図面を参照して詳述したが、各実施形態における各構成及びそれらの組み合わせ等は一例であり、本発明の趣旨から逸脱しない範囲内で、構成の付加、省略、置換、及びその他の変更が可能である。また、本発明は実施形態によって限定されることはなく、特許請求の範囲によってのみ限定される。
【0048】
なお、本実施形態や変形例で分岐部である突出部10、101、102が補助入口26から導入される過負荷蒸気S2を分岐させる所定の割合とは、均等な割合であることに限定されるものではなく、1対9のように一方側か他方側のいずれか一方側に偏って流すような割合や、10対0のように一方側か他方側のいずれか一方側にのみ流通させるような割合であってもよい。
また、補助流路27は、本実施形態のように、蒸気タービンロータ3の周方向に環状に形成されていることに限定されるものではなく、例えば、蒸気タービンロータ3の周方向に180°離れた二カ所の補助入口26から軸線を中心として対称をなして円弧状に形成されていたり、複数箇所の補助入口26から異なる長さの円弧状をなして複数の流路として形成されていたりしても良い。
また、本発明に係る回転機械は、本実施形態の蒸気タービン1に限定されるものではなく、例えば、ガスタービンや遠心圧縮機等にも用いることができる。即ち、流通させる流体も主蒸気S1や過負荷蒸気S2に限定されるものではなく、使用される回転機械に応じて適当な流体が適宜選択されればよい。
さらに、分岐部は突出部10、101、102に限定されるものではなく、流入する補助流体である過負荷蒸気S2の流れを調整できるものであればよい。
また、補助入口26は、本実施形態のように、蒸気タービンケーシング2の周方向に離間して2か所に設けられることに限定されるものではなく、例えば、一カ所であってもよく、二箇所以上であってもよい。
【符号の説明】
【0049】
100…蒸気タービンプラント O…軸線 S…蒸気 S1…主蒸気 S2…過負荷蒸気 1…蒸気タービン 11…ロータ 12…蒸気供給管 13…主蒸気分岐管 14…過負荷蒸気分岐管 15…蒸気排出管 2…蒸気タービンケーシング 3…蒸気タービンロータ 4…軸受部 21…静翼 22…内車室 23…外車室 24…主流入口 25…主流路 26…補助入口 27…補助流路 10…突出部 20…連通部 31…動翼 101…突出部 101a…傾斜面 102…突出部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7