(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明の繊維は、ポリフェニレンスルフィドを主成分とすることが重要である。そうすることにより、優れた耐熱性、難燃性および耐薬品性を得ることができる。主成分とするとは、全体の85質量%以上を占めることをいう。
【0013】
また、本発明のPPS繊維は、繊維表面から繊維直径方向に向かって1μm以下の領域の繊維表面部の結晶性と、繊維断面中央部の結晶性を比較すると、繊維表面部の少なくとも一部が繊維断面中央部よりも結晶性が低いことが重要である。
【0014】
一般的な紡糸で得られる繊維は、繊維断面の中央から表面に近づくほど配向や結晶性が高くなる繊維構造をとる。この理由としては、紡糸口金から紡出された繊維は、繊維表面から内部に向かって冷却が進行していくため、冷却により流動性が低下する繊維表面に紡糸応力が集中し、配向結晶化が進んでいくためである。
このため、繊維全体では結晶性が低い繊維であっても、熱接着性に寄与する肝心の繊維表面は結晶性が高く、十分な熱接着性を得ることができなかった。
【0015】
本発明では、繊維表面部と繊維断面の中央部において、繊維表面部の少なくとも一部の結晶性が繊維断面の中央部の結晶性よりも低い、すなわち一般的な紡糸で得られる繊維構造とは反対の繊維構造を形成することで、熱寸法安定性を有しながら、極めて熱接着性に優れる繊維を得ることができる。
【0016】
本発明のPPS樹脂におけるp−フェニレンスルフィド単位の含有量としては、93モル%以上が好ましい。p−フェニレンスルフィド単位を93モル%以上、より好ましくは95モル%以上含有することで、曳糸性や機械的強度に優れた繊維とすることができる。
【0017】
PPS樹脂の含有量としては、耐熱性、耐薬品性などの点から、85質量%以上が好ましく、より好ましくは90質量%以上、さらに好ましくは95質量%以上である。
【0018】
またPPS樹脂には、本発明の効果を損なわない範囲でPPS樹脂以外の熱可塑性樹脂をブレンドしてもよい。PPS樹脂以外の熱可塑性樹脂としては、例えば、ポリエーテルイミド、ポリエーテルスルホン、ポリスルホン、ポリフェニレンエーテル、ポリエステル、ポリアリレート、ポリアミド、ポリアミドイミド、ポリカーボネート、ポリオレフィン、ポリエーテルエーテルケトンなどを挙げることができる。
【0019】
また、PPS樹脂には、本発明の効果を損なわない範囲で、結晶核剤、艶消し剤、顔料、防カビ剤、抗菌剤、難燃剤または親水剤等を添加してもよい。
【0020】
本発明のPPS繊維の平均単繊維繊度としては、0.5〜10dtexが好ましい。平均単繊維繊度を0.5dtex以上、より好ましくは1dtex以上、さらに好ましくは2dtex以上とすることにより、繊維の曳糸性を保ち、紡糸中に糸切れが多発するのを抑えることができる。また、平均単繊維繊度を10dtex以下、より好ましくは5dtex以下、さらに好ましくは4dtex以下とすることで、紡糸口金単孔当たりの溶融樹脂の吐出量を抑え繊維に対して十分な冷却を施すことができ、繊維間の融着による紡糸性の低下を抑えることができる。また、不織布としたときの目付ムラを抑え、表面の品位を優れたものとすることができる。また不織布をフィルター等に適用する場合のダスト捕集性能の観点からも、平均単繊維繊度は10dtex以下が好ましく、より好ましくは5dtex以下、さらに好ましくは4dtex以下である。
【0021】
本発明のPPS複合繊維は、マルチフィラメント、モノフィラメントあるいは短繊維のいずれでも使用することができ、織物や不織布等のあらゆる布帛を構成する繊維として用いることができる。中でも本発明のPPS複合繊維は、不織布の構成繊維として用いることが好ましい。不織布においては、構成繊維同士が熱接着することで不織布の強度に資するからである。
【0022】
不織布としては例えば、ニードルパンチ不織布、湿式不織布、スパンレース不織布、スパンボンド不織布、メルトブロー不織布、レジンボンド不織布、ケミカルボンド不織布、サーマルボンド不織布、トウ開繊式不織布、エアレイド不織布等を挙げることができる。中でも、生産性や機械的強度に優れるスパンボンド不織布が好ましい。
【0023】
また本発明のPPS繊維から構成される不織布は、熱接着することで高い機械的強度が得られることから、熱接着により一体化してなることが好ましい。
【0024】
本発明の不織布の目付としては、10〜1000g/m
2が好ましい。本発明の不織布の目付を10g/m
2以上、より好ましくは100g/m
2以上、さらに好ましくは200g/m
2以上とすることにより、実用に供し得る機械的強度の不織布を得ることができる。一方、本発明の不織布の目付を1000g/m
2以下、より好ましくは700g/m
2以下、さらに好ましくは500g/m
2以下とすることにより、適度な通気性を有し、フィルター等で使用する場合に高圧損となることを抑制することができる。
【0025】
本発明の繊維から構成される不織布においては、不織布のたて引張強力、たて引張伸度および目付から、次式にて算出される目付当たりの強伸度積が25以上であることが好ましい。
目付当たりの強伸度積=たて引張強力(N/5cm)×たて引張伸度(%)/目付(g/m
2)
【0026】
目付当たりの強伸度積を25以上、より好ましくは35以上、さらに好ましくは40以上とすることにより、過酷な環境下でも使用できる機械的強度を有する不織布となる。また上限は特に定めるものではないが、不織布が硬くなり取り扱い性が悪化するのを防ぐ点から、目付当たりの強伸度積は100以下が好ましい。
【0027】
次に、本発明のPPS繊維および不織布を製造する方法について、好ましい態様を説明する。
【0028】
本発明のPPS複合繊維を得る方法としては、例えばポリフェニレンスルフィドを主成分とする樹脂を成分Aとし、ポリフェニレンスルフィドを主成分とし、成分Aよりもメルトフローレート(以下、メルトフローレートを「MFR」と略記することがある。)が大きい樹脂を成分Bとしたとき、成分Aおよび成分Bから構成される複合繊維とし、紡糸応力を成分Aに集中させ、成分Bの配向や結晶性を抑制し、かつ成分Bの少なくとも一部を繊維表面に露出させることで本発明の結晶構造を有するPPS繊維を得ることができる。
【0029】
成分Aは、ASTM D1238−70(測定温度315.5℃、測定荷重5kg荷重)に準じて測定するMFRが50〜300g/10分であることが好ましい。MFRを50g/10分以上、より好ましくは100g/10分以上とすることで、適度な流動性をとり、溶融紡糸において口金の背面圧の上昇を抑え、牽引延伸する際の糸切れも抑えることができる。一方、MFRを300g/10分以下、より好ましくは225g/10分以下とすることで、重合度あるいは分子量を適度に高くとり、実用に供し得る機械的強度や耐熱性を得ることができる。
【0030】
一方、成分BのMFR(上記ASTM D1238−70に準じて測定するもの)は、成分Aよりも高い(粘度が低い)ことが必要である。成分BのMFRから成分AのMFRを差し引いた差が、好ましくは10g/10分以上、より好ましくは50g/10分以上、さらに好ましくは100g/10分以上とすることにより、成分Bの紡糸応力負担を軽減させ、配向結晶性を抑制することができる。
【0031】
一方、成分BのMFRから成分AのMFRを差し引いた差を、好ましくは1000g/10分以下、より好ましくは500g/10分以下、さらに好ましくは200g/10分以下とすることにより、適度な流動性を有し安定した紡糸が可能となる。
【0032】
本発明のPPS複合繊維における成分Bの占める割合としては、5〜70質量%が好ましい。成分Bの占める割合を5質量%以上、より好ましくは10質量%、さらに好ましくは15質量%以上とすることにより、効率良く強固な熱接着を得ることができる。一方、成分Bの占める割合を70質量%以下、より好ましくは50質量%以下、さらに好ましくは30質量%以下とすることにより、機械的強度の低下を抑制することができる。
【0033】
本発明のPPS複合繊維における複合形態としては、成分Bが繊維表面の少なくとも一部を形成していることが必要である。成分Bが繊維表面に露出することで熱接着性に寄与するためである。
【0034】
また、本発明のPPS複合繊維において成分Aは、繊維の長手方向に連続的に配置されていることが好ましい。成分Aを繊維の長手方向に連続的に配置することにより、紡糸応力をより効果的に成分Aに集中させ、成分Bの配向や結晶性を抑制することができる。
【0035】
本発明のPPS複合繊維の複合形態としては例えば、繊維断面において円形状の成分Aが中心を同じくするドーナツ形状の成分Bに包まれる芯鞘型、成分Aの中心と成分Bの中心がずれている芯鞘偏心型、成分Aを島成分、成分Bを海成分とする海島型、両成分が並列した並列型、両成分が放射状に交互に配列された放射型、成分Bが成分Aの周囲に数個配置される多葉型等をあげることができる。なかでも、成分Bが繊維表面全体を占めかつ繊維の曳糸性に優れる芯鞘型が好ましい。
【0036】
本発明のPPS複合繊維を製造する方法には、公知の溶融紡糸方法を採用することができる。例えば芯鞘型複合繊維の場合、芯成分用のPPS樹脂と鞘成分用のPPS樹脂をそれぞれ別の押出機で溶融、計量し、芯鞘型複合口金へ供給、溶融紡糸し、糸条を従来公知の横吹き付けや環状吹き付け等の冷却装置を用いて冷却した後、油剤を付与し、引き取りローラを介して未延伸糸として巻取機に巻取る。繊維の形態として短繊維を得たい場合は、巻取った未延伸糸を、公知の延伸機にて周速の異なるローラ群間で延伸し、押し込み型の捲縮機などで捲縮を付与した後に、ECカッターなどのカッターで所望の長さに切断すればよい。繊維の形態として長繊維を得たい場合は、延伸機にて延伸後、巻取り、必要に応じて、撚糸加工、仮撚糸加工等の加工を行うとよい。
【0037】
次に、本発明の不織布の好ましい態様としてスパンボンド法による複合繊維不織布を製造する方法を、以下に説明する。
【0038】
スパンボンド法は、樹脂を溶融し、紡糸口金から紡糸した後、冷却固化した糸条に対し、エジェクターで牽引、延伸し、移動するネット上に捕集して不織ウェブ化した後、熱接着する工程を要する製造方法である。
【0039】
紡糸口金やエジェクターの形状としては、丸形や矩形等種々のものを採用することができる。なかでも、圧縮エアの使用量が比較的少なく、糸条同士の融着や擦過が起こりにくい点から矩形口金と矩形エジェクターの組み合わせが好ましい。
【0040】
溶融し紡糸する際の紡糸温度は、290〜380℃が好ましく、より好ましくは295〜360℃、さらに好ましくは300〜340℃である。紡糸温度を上記範囲内とすることで、安定した溶融状態とし、優れた紡糸安定性を得ることができる。
【0041】
成分Aおよび成分Bをそれぞれ別の押出機にて、溶融、計量し、複合紡糸口金へと供給し、複合繊維として紡出する。
【0042】
紡出された複合繊維の糸条を冷却する方法としては例えば、冷風を強制的に糸条に吹き付ける方法、糸条周りの雰囲気温度にて自然冷却する方法、紡糸口金とエジェクター間の距離を調整する方法、またはこれらの組み合わせを採用することができる。また、冷却条件は、紡糸口金の単孔あたりの吐出量、紡糸する温度、雰囲気温度等を考慮し適宜調整し採用することができる。
【0043】
次に、冷却固化した糸条は、エジェクターから噴射する圧縮エアにて牽引、延伸される。エジェクターでの牽引、延伸の方法や条件は特に限定されるものでは無いが、エジェクターから噴射する圧縮エアを少なくとも100℃以上に加熱し、この加熱した圧縮エアによって紡糸速度3,000m/分以上で牽引、延伸する方法、または紡糸口金下面からエジェクターの圧縮エア噴出口までの距離を450〜650mmとなるように配設し、エジェクターの圧縮エア(常温)にて、5,000m/分以上、6,000m/分未満の紡糸速度で牽引、延伸する方法がPPS複合繊維の結晶化を効率的に促進できる点で好ましい。
【0044】
続いて、延伸により得られたPPS複合繊維を移動するネット上に捕集して不織ウェブ化し、得られた不織ウェブを熱接着により一体化することにより不織布を得ることができる。
【0045】
熱接着の方法としては例えば、上下一対のロール表面にそれぞれ彫刻が施された熱エンボスロール、片方のロール表面がフラット(平滑)なロールと他方のロール表面に彫刻が施されたロールとの組み合わせからなる熱エンボスロール、上下一対のフラット(平滑)ロールの組み合わせからなる熱カレンダーロールなど各種ロールによる熱圧着や、不織ウェブの厚み方向に熱風を通過させるエアスルー方式を適用することが出来る。中でも、機械的強度を向上させながら適度な通気性も保持できる熱エンボスロールを用いた熱接着を好ましく採用することができる。
【0046】
熱エンボスロールに施される彫刻の形状としては、円形、楕円形、正方形、長方形、平行四辺形、ひし形、正六角形および正八角形などを用いることができる。
【0047】
熱エンボスロールの表面温度については、本発明のPPS複合繊維は熱接着性に極めて優れることから、従来よりも低い温度で熱接着することができ、熱エンボスロールの表面温度としては、PPSの融点に対し−150〜−5℃とすることが好ましい。熱エンボスロールの表面温度をPPSの融点に対し−150℃以上、より好ましくは−100℃以上、さらに好ましくは−50℃以上とすることで、十分に熱接着させ不織布の剥離や毛羽の発生を抑えることができる。また、熱エンボスロールの表面温度をPPSの融点に対し−5℃以下とすることにより、繊維の融解により圧着部に穴あきが発生するのを防ぐことができる。
【0048】
熱接着時の熱エンボスロールの線圧としては200〜1500N/cmが好ましい。熱エンボスロールの線圧を200N/cm以上、より好ましくは300N/cm以上とすることで、十分に熱接着させシートの剥離や毛羽の発生を抑えることができる。一方、熱エンボスロールの線圧を1500N/cm以下、より好ましくは1000N/cm以下とすることで、彫刻の凸部が不織布にくい込んでロールから不織布が剥離しにくくなったり不織布が破断するのを防ぐことができる。
【0049】
熱エンボスロールによる接着面積としては8〜40%が好ましい。接着面積を8%以上、より好ましくは10%以上、さらに好ましくは12%以上とすることで、不織布として実用に供しうる強度を得ることができる。一方、接着面積を40%以下、より好ましくは30%以下、さらに好ましくは20%以下とすることで、フィルムライクとなり通気性などの不織布としての特長が得られ難くなるのを防ぐことができる。ここでいう接着面積とは、一対の凹凸を有するロールにより熱接着する場合は、上側ロールの凸部と下側ロールの凸部とが重なって不織ウェブに当接する部分の不織布全体に占める割合のことを言う。また、凹凸を有するロールとフラットロールにより熱接着する場合は、凹凸を有するロールの凸部が不織ウェブに当接する部分の不織布全体に占める割合のことを言う。
【0050】
また熱接着前の不織ウェブに対し、搬送性向上や不織布の厚みコントロールを目的とし、温度70〜120℃、線圧50〜700N/cmでカレンダーロールによる仮接着を行う工程を施すこともできる。カレンダーロールとしては、上下金属ロールの組み合わせや金属ロールと樹脂あるいはペーパーロールとの組み合わせのものを用いることができる。
【実施例】
【0051】
次に、実施例に基づき本発明を具体的に説明する。ただし、本発明はこれらの実施例のみに限定されるものではない。本発明の技術的範囲を逸脱しない範囲において、様々な変形や修正が可能である。
【0052】
[測定方法]
(1)メルトフローレート(MFR)(g/10分)
使用した樹脂のMFRは、ASTM D1238−70に準じて測定温度315.5℃で、測定荷重5kgの条件で測定した。
【0053】
(2)平均単繊維繊度(dtex)
ネット上に捕集した不織ウェブからランダムに小片サンプル10個を採取し、マイクロスコープで500〜1000倍の表面写真を撮影し、各サンプルから10本ずつ、計100本の繊維の幅を測定し平均値を算出した。単繊維の幅平均値を、丸形断面形状を有する繊維の平均直径とみなし、使用する樹脂の固形密度から長さ10,000m当たりの重量を平均単繊維繊度として、小数点以下第二位を四捨五入して算出した。
【0054】
(3)紡糸速度(m/分)
繊維の平均単繊維繊度F(dtex)と各条件で設定した紡糸口金単孔から吐出される樹脂の吐出量D(以下、単孔吐出量と略記する:g/分)から、次の式に基づき、紡糸速度V(m/分)を算出した。
V=(10000×D)/F
【0055】
(4)結晶性
ネット上に捕集した不織ウェブから採取した繊維を、樹脂(ビスフェノール系エポキシ樹脂、24時間硬化)に包埋し、ミクロトームにより繊維断面を厚み2.0μmに切片化した試料を作製し、この試料をレーザーラマン分光法にて、以下の条件で得られるラマンスペクトルから、フェニル環−S伸縮バンド(1080cm
−1付近)の半値幅を求めた。PPSのフェニル環−S伸縮バンド(1080cm
-1付近)は結晶化による秩序性の増大にともない、振動周りの環境が均一化することにより、ラマンバンドの半値幅は小さくなるため、求めた半値幅の値(小さい方が高結晶)で結晶性を評価した。
・装置:近赤外ラマン分光装置 (Photon Design)
・条件:測定モード :顕微ラマン
対物レンズ:×100
ビーム径 :1μm
クロススリット:200μm
光源:YAGレーザー/1064nm
レーザーパワー :1W
回折格子 :Single 300(半値幅:900)gr/mm
スリット :100μm
検出器 :InGaAs/日本ローパーラマン分光
測定位置:(1)繊維表面(繊維直径で繊維表面を基準(0)とした時に0〜
1.0μmの領域)
(2)繊維断面中央(直径/2)
【0056】
(5)不織布の目付(g/m
2)
JIS L1913(2010年)6.2「単位面積当たりの質量」に基づき、20cm×25cmの試験片を、試料の幅1m当たり3枚採取し、標準状態におけるそれぞれの質量(g)を量り、その平均値を1m
2当たりの質量(g/m
2)で表した。
【0057】
(6)不織布の目付当たりの強伸度積
JIS L1913(2010年)の6.3.1に準じ、サンプルサイズ5cm×30cm、つかみ間隔20cm、引張速度10cm/minの条件でたて方向3点の引張試験を行い、サンプルが破断した時の強力をたて引張強力(N/5cm)、また最大荷重時のサンプルの伸びを1mm単位まで測定し、この伸び率(元の長さに対する伸びた長さ)をたて引張伸度(%)とし、たて引張強力(N/5cm)とたて引張伸度(%)のそれぞれの平均値について小数点以下第一位を四捨五入して算出した。続いて、算出したたて引張強力(N/5cm)とたて引張伸度(%)、また(5)で求めた目付(g/m
2)から、以下の式より小数点以下第一位を四捨五入して目付当たりの強伸度積を算出した。
目付当たりの強伸度積=たて引張強力(N/5cm)×たて引張伸度(%)/目付(g/m
2)
【0058】
(7)不織布の熱収縮率(%)
JIS L1913(2010年)6.10.3「乾熱寸法変化率」に準じて測定した。恒温乾燥機内の温度を200℃とし、10分間熱処理した。
【0059】
[実施例1]
(成分A)
100モル%の線状ポリフェニレンスルフィド樹脂(東レ社製、品番:E2280、MFR:160g/10分)を、窒素雰囲気中で160℃の温度で10時間乾燥して、成分Aとして用いた。
【0060】
(成分B)
100モル%の線状ポリフェニレンスルフィド樹脂(東レ社製、品番:M2588、MFR:300g/10分)を、窒素雰囲気中で160℃の温度で10時間乾燥して、成分Bとして用いた。
【0061】
(紡糸・不織ウェブ化)
上記成分Aを芯成分用の押出機で、上記成分Bを鞘成分用の押出機でそれぞれ溶融し、成分Aと成分Bとの質量比が80:20となるように計量し、紡糸温度315℃で、孔径φ0.55mmの矩形芯鞘型紡糸口金から単孔吐出量1.37g/分で芯鞘型複合繊維を紡出した。紡出した繊維を室温20℃の雰囲気下で冷却固化し、前記口金からの距離550mmの位置に設置した矩形エジェクターに通し、空気加熱器で200℃の温度に加熱した空気をエジェクター圧力0.17MPaでエジェクターから噴射させ、糸条を牽引、延伸し、移動するネット上に捕集して不織ウェブ化した。得られた芯鞘型複合長繊維の平均単繊維繊度は2.9dtex、紡糸速度は4,797m/分、結晶性は繊維断面中央よりも繊維表面が低く、紡糸性は1時間の紡糸において糸切れ0回と良好であった。
【0062】
(仮接着・熱接着)
引き続き、インライン上に設置された金属製の上下一対のカレンダーロールを用い線圧200N/cmおよび仮接着温度90℃で上記不織ウェブを仮接着した。次いで、金属製で水玉柄の彫刻がなされた上ロールおよび金属製でフラットな下ロールから構成される上下一対の接着面積12%のエンボスロールで、線圧1000N/cm、熱接着温度200℃で熱接着し、芯鞘型複合長繊維不織布を得た。得られた芯鞘型複合長繊維不織布の目付は260g/m
2、目付当たりの強伸度積は54、熱収縮率はたて方向で0.1%、よこ方向で0.0%であった。
【0063】
[実施例2]
(成分A)
実施例1で用いたものと同様のPPS樹脂を成分Aとして用いた。
(成分B)
実施例1で用いたものと同様のPPS樹脂を成分Bとして用いた。
【0064】
(紡糸・不織ウェブ化)
エジェクター圧力を0.15MPaとしたこと以外は実施例1と同様にして、芯鞘型複合紡糸、不織ウェブ化を行った。得られた芯鞘型複合長繊維の平均単繊維繊度は3.2dtex、紡糸速度は4,317m/分、結晶性は繊維断面中央よりも繊維表面が低く、紡糸性は1時間の紡糸において糸切れ0回と良好であった。
【0065】
(仮接着・熱接着)
引き続き、実施例1と同様にして上記不織ウェブに仮接着および熱接着を施して芯鞘型複合長繊維不織布を得た。得られた芯鞘型複合長繊維不織布の目付は260g/m
2、目付当たりの強伸度積は51、熱収縮率はたて方向で0.1%、よこ方向で0.1%であった。
【0066】
[実施例3]
(成分A)
実施例1で用いたものと同様のPPS樹脂を成分Aとして用いた。
(成分B)
実施例1で用いたものと同様のPPS樹脂を成分Bとして用いた。
【0067】
(紡糸・不織ウェブ化)
実施例1と同様にして、芯鞘型複合紡糸、不織ウェブ化を行った。得られた芯鞘型複合長繊維の平均単繊維繊度は2.9dtex、紡糸速度は4,797m/分、結晶性は繊維断面中央よりも繊維表面が低く、紡糸性は1時間の紡糸において糸切れ0回と良好であった。
【0068】
(仮接着・熱接着)
引き続き、熱接着温度を140℃としたこと以外は実施例1と同様にして上記不織ウェブに仮接着および熱接着を施して芯鞘型複合長繊維不織布を得た。得られた芯鞘型複合長繊維不織布の目付は260g/m
2、目付当たりの強伸度積は62、熱収縮率はたて方向で0.1%、よこ方向で0.0%であった。
【0069】
[実施例4]
(成分A)
実施例1で用いたものと同様のPPS樹脂を成分Aとして用いた。
(成分B)
実施例1で用いたものと同様のPPS樹脂を成分Bとして用いた。
【0070】
(紡糸・不織ウェブ化)
実施例1と同様にして、芯鞘型複合紡糸、不織ウェブ化を行った。得られた芯鞘型複合長繊維の平均単繊維繊度は2.9dtex、紡糸速度は4,797m/分、結晶性は繊維断面中央よりも繊維表面が低く、紡糸性は1時間の紡糸において糸切れ0回と良好であった。
【0071】
(仮接着・熱接着)
引き続き、熱接着温度を240℃としたこと以外は実施例1と同様にして上記不織ウェブに仮接着および熱接着を施して芯鞘型複合長繊維不織布を得た。得られた芯鞘型複合長繊維不織布の目付は260g/m
2、目付当たりの強伸度積は50、熱収縮率はたて方向で0.1%、よこ方向で0.1%であった。
【0072】
[比較例1]
(成分A)
実施例1で用いたものと同様のPPS樹脂を成分Aとして用いた。
(成分B)
成分Bは用いなかった。
【0073】
(紡糸・不織ウェブ化)
上記成分Aを押出機で溶融、計量し、紡糸温度315℃で、孔径φ0.50mmの矩形単一成分紡糸口金から単孔吐出量1.37g/分で紡出した。以降は実施例2と同様にして、紡糸、不織ウェブ化を行った。得られた単一成分型長繊維の平均単繊維繊度は2.4dtex、紡糸速度は4,920m/分、結晶性は繊維断面中央よりも繊維表面が高く、紡糸性は1時間の紡糸において糸切れ0回と良好であった。
【0074】
(仮接着・熱接着)
引き続き、エンボスロールの熱接着温度を260℃としたこと以外は実施例1と同様にして上記不織ウェブに仮接着および熱接着を施して、単一成分型長繊維不織布を得た。得られた単一成分型長繊維不織布の目付は260g/m
2、目付当たりの強伸度積は4、熱収縮率はたて方向で0.0%、よこ方向で0.1%であった。
【0075】
【表1】
【0076】
表1に示すように、実施例1〜4の繊維表面の結晶性が低いPPS繊維で得られた芯鞘型複合長繊維不織布は、比較例1の単一成分型長繊維不織布と比較し、目付当たりの強伸度積が大幅に向上し、機械的強度に優れるものであった。