特許第6201577号(P6201577)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ いすゞ自動車株式会社の特許一覧

<>
  • 特許6201577-診断装置 図000002
  • 特許6201577-診断装置 図000003
  • 特許6201577-診断装置 図000004
  • 特許6201577-診断装置 図000005
  • 特許6201577-診断装置 図000006
  • 特許6201577-診断装置 図000007
  • 特許6201577-診断装置 図000008
  • 特許6201577-診断装置 図000009
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6201577
(24)【登録日】2017年9月8日
(45)【発行日】2017年9月27日
(54)【発明の名称】診断装置
(51)【国際特許分類】
   F01N 3/023 20060101AFI20170914BHJP
【FI】
   F01N3/023 K
【請求項の数】5
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2013-201197(P2013-201197)
(22)【出願日】2013年9月27日
(65)【公開番号】特開2015-68202(P2015-68202A)
(43)【公開日】2015年4月13日
【審査請求日】2016年8月3日
(73)【特許権者】
【識別番号】000000170
【氏名又は名称】いすゞ自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100068021
【弁理士】
【氏名又は名称】絹谷 信雄
(72)【発明者】
【氏名】塙 哲史
(72)【発明者】
【氏名】中田 輝男
(72)【発明者】
【氏名】内山 正
(72)【発明者】
【氏名】藤江 英和
(72)【発明者】
【氏名】村澤 直人
【審査官】 今関 雅子
(56)【参考文献】
【文献】 特開2012−122399(JP,A)
【文献】 特開2013−083241(JP,A)
【文献】 特開2013−068197(JP,A)
【文献】 特開2014−185541(JP,A)
【文献】 特開2011−179467(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F01N 3/00−3/38、9/00−11/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
内燃機関から排出される排気中の粒子状物質を捕集するフィルタと、
前記フィルタの下流側に設けられ、電極間に付着した粒子状物質を流れる電流値から粒子状物質量を検出すると共に、電極間に付着した粒子状物質が所定量に達すると当該粒子状物質を燃焼除去する再生が可能なセンサと、
前記センサの再生終了から次の再生開始までの実インターバルを演算する実インターバル演算手段と、
前記フィルタの捕集能力が正常と仮定し、前記内燃機関から排出されて当該フィルタを通過する排気中の粒子状物質スリップ量を推定するスリップ量推定手段と、
前記粒子状物質スリップ量に基づいて、前記センサの再生終了から次の再生開始までの推定インターバルを演算する推定インターバル演算手段と、
前記実インターバルと前記推定インターバルとを比較して、前記フィルタの少なくとも故障を判定する判定手段と、を備え
前記判定手段は、前記実インターバルと前記推定インターバルとの比が所定の上限閾値を下回ると、前記フィルタを故障と判定する
ことを特徴とする診断装置。
【請求項2】
前記判定手段は、前記推定インターバルの演算が終了してから所定の閾値時間が経過しても、前記センサの再生が開始されない場合は、前記フィルタを正常と判定する
請求項1に記載の診断装置。
【請求項3】
前記判定手段は、前記実インターバルの演算が終了してから所定の閾値時間が経過しても、前記推定インターバルの演算が終了しない場合は、前記フィルタを故障と判定する
請求項1又は2に記載の診断装置。
【請求項4】
前記スリップ量推定手段は、前記内燃機関の運転状態に応じて変化する吸排気状態量を入力値として含むモデル式から前記粒子状物質スリップ量を推定する
請求項1からの何れか一項に記載の診断装置。
【請求項5】
前記内燃機関の始動時に前記センサを強制的に再生させる
請求項1からの何れか一項に記載の診断装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、診断装置に関し、特に、内燃機関の排気系に設けられる排気浄化フィルタの故障診断に関する。
【背景技術】
【0002】
ディーゼルエンジン等の排気系に設けられる排気浄化フィルタとして、排気中に含まれる煤等の粒子状物質(Particulate Matter:PM)を捕集するディーゼル・パティキュレイト・フィルタ(Diesel Particulate Filter:DPF)が知られている。
【0003】
DPFのPM捕集能力が破損等により劣化すると、DPFで捕集されずにスリップしたPMが大気に放出されて、排ガス規制値を満たさなくなる可能性がある。そのため、DPFの故障を車載状態(On-Board)で診断する要請がある。
【0004】
DPFの故障を判定する技術としては、例えば、DPFの下流側に抵抗型PMセンサを設けて、センサ値と基準閾値と比較する手法が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2009−144577号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
一般的に、抵抗型PMセンサは、一対の電極間に付着する導電性のPMによって、電極間の抵抗値が変化することを利用してPM量を検出している。しかしながら、抵抗型PMセンサでは、排気温度や排気流量の影響を受けると電極間に付着したPMの電気抵抗が変化するため、正確なPM量を検出できない可能性がある。そのため、抵抗型PMセンサのセンサ値に基づいた診断手法では、DPFの劣化を正確に判定できない課題がある。
【0007】
本発明の目的は、DPFの故障を高精度に判定できる診断装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上述の目的を達成するため、本発明の内燃機関の診断装置は、内燃機関から排出される排気中の粒子状物質を捕集するフィルタと、前記フィルタの下流側に設けられ、電極間に付着した粒子状物質を流れる電流値から粒子状物質量を検出すると共に、電極間に付着した粒子状物質が所定量に達すると当該粒子状物質を燃焼除去する再生が可能なセンサと、前記センサの再生終了から次の再生開始までの実インターバルを演算する実インターバル演算手段と、前記フィルタの捕集能力が正常と仮定し、前記内燃機関から排出されて当該フィルタを通過する排気中の粒子状物質スリップ量を推定するスリップ量推定手段と、前記粒子状物質スリップ量に基づいて、前記センサの再生終了から次の再生開始までの推定インターバルを演算する推定インターバル演算手段と、前記実インターバルと前記推定インターバルとを比較して、前記フィルタの少なくとも故障を判定する判定手段と、を備えることを特徴とする。
【0009】
また、前記判定手段は、前記推定インターバルの演算が終了してから所定の閾値時間が経過しても、前記フィルタの再生が開始されない場合は、前記フィルタを正常と判定することが好ましい。
【0010】
また、前記判定手段は、前記実インターバルの演算が終了してから所定の閾値時間が経過しても、前記推定インターバルの演算が終了しない場合は、前記フィルタを故障と判定することが好ましい。
【0011】
また、前記判定手段は、前記実インターバルと前記推定インターバルとの差が所定の上限閾値を下回ると、前記フィルタを故障と判定してもよい。
【0012】
また、前記判定手段は、前記実インターバルと前記推定インターバルとの比が所定の上限閾値を下回ると、前記フィルタを故障と判定してもよい。
【0013】
また、前記スリップ量推定手段は、前記内燃機関の運転状態に応じて変化する吸排気状態量を入力値として含むモデル式から前記粒子状物質スリップ量を推定することが好ましい。
【0014】
また、前記内燃機関の始動時に前記センサを強制的に再生させることが好ましい。
【発明の効果】
【0015】
本発明の診断装置によれば、DPFの故障を高精度に判定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】本発明の一実施形態に係る診断装置が適用されたエンジンの吸排気系を示す模式的な全体構成図である。
図2】(a)は、本実施形態の抵抗型PMセンサの要部を示す模式的な斜視図、(b)は、抵抗型PMセンサのセンサ再生信号を示す図である。
図3】本実施形態のECU40を示す機能ブロック図である。
図4】本実施形態の故障診断の一例を説明する図である。
図5】本実施形態の故障診断の一例を説明する図である。
図6】本実施形態の故障診断の一例を説明する図である。
図7】本実施形態の診断装置による制御内容を示すフローチャートである。
図8】本実施形態の診断装置による制御内容を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、添付図面に基づいて、本発明の一実施形態に係る診断装置を説明する。同一の部品には同一の符号を付してあり、それらの名称および機能も同じである。したがって、それらについての詳細な説明は繰返さない。
【0018】
図1に示すように、ディーゼルエンジン(以下、単にエンジンという)10には、吸気マニホールド10aと排気マニホールド10bとが設けられている。吸気マニホールド10aには新気を導入する吸気通路11が接続され、排気マニホールド10bには排気を大気に放出する排気通路12が接続されている。
【0019】
吸気通路11には、吸気上流側から順に、エアクリーナ13、MAFセンサ31、過給機のコンプレッサ14a、インタークーラ15、吸気温度センサ32、吸気酸素濃度センサ33、ブースト圧センサ34等が設けられている。排気通路12には、排気上流側から順に、過給機のタービン14b、排気酸素濃度センサ35、空燃比センサ36、排気温度センサ37、排気後処理装置50等が設けられている。なお、図1中において、符号38はエンジン回転センサ、符号39はアクセル開度センサを示している。
【0020】
排気後処理装置50は、触媒ケース50a内に排気上流側から順に、酸化触媒(Diesel Oxidation Catalyst:DOC)51と、DPF52とを配置して構成されている。また、DOC51の排気上流側には排気管内噴射装置53、DPF52の下流側には、DPF52を通過した排気中のPM量を検出する抵抗型PMセンサ20が設けられている。
【0021】
排気管内噴射装置53は、電子制御ユニット(以下、ECU)40から出力される指示信号に応じて、排気通路12内に未燃燃料(主にHC)を噴射する。なお、エンジン10の多段噴射によるポスト噴射を用いる場合は、この排気管内噴射装置53を省略してもよい。
【0022】
DOC51は、例えば、コーディエライトハニカム構造体等のセラミック製担体表面に触媒成分を担持して形成されている。DOC51は、排気管内噴射装置53又はポスト噴射によってHCが供給されると、これを酸化して排気温度を上昇させる。
【0023】
DPF52は、例えば、多孔質性の隔壁で区画された多数のセルを排気の流れ方向に沿って配置し、これらセルの上流側と下流側とを交互に目封止して形成されている。DPF52は、排気中のPMを隔壁の細孔や表面に捕集すると共に、PM堆積量が所定量に達すると、これを燃焼除去するいわゆるフィルタ強制再生が実行される。フィルタ強制再生は、排気管内噴射装置53又はポスト噴射によってDOC51に未燃燃料(HC)を供給し、DPF52に流入する排気温度をPM燃焼温度(例えば、約600℃)まで昇温することで行われる。
【0024】
抵抗型PMセンサ20は、図2(a)に示すように、絶縁基板21上に電圧が印加される櫛歯状の一対の電極22を備えており、電極22間の抵抗値が導電性のPMの付着により変化することを利用してPM量を検出する。また、抵抗型PMセンサ20は、図示しないヒータを備えており、図2(b)に示すように、電極22間に付着したPMが所定量まで堆積すると、これをヒータで加熱して燃焼除去するセンサ再生が行われる。このセンサ再生信号(開始信号・終了信号)は、電気的に接続されたECU40に出力される。
【0025】
ECU40は、エンジン10や排気管内噴射装置53等の各種制御を行うもので、公知のCPUやROM、RAM、入力ポート、出力ポート等を備えて構成されている。
【0026】
また、ECU40は、図3に示すように、実再生インターバル演算部41と、エンジン排出PM量演算部42と、PMスリップ量演算部43と、センサPM堆積量演算部44と、推定再生インターバル演算部45と、DPF故障正常判定部46とを一部の機能要素として有する。これら各機能要素は、一体のハードウェアであるECU40に含まれるものとして説明するが、これらのいずれか一部を別体のハードウェアに設けることもできる。
【0027】
実再生インターバル演算部41は、本発明の実インターバル演算手段の一例であって、抵抗型PMセンサ20の再生終了から次の再生開始までの期間(以下、この期間を実再生インターバルINTactという)を演算する。実再生インターバルINTactは、抵抗型PMセンサ20から入力される再生開始信号及び再生終了信号に基づいて演算される。
【0028】
エンジン排出PM量演算部42は、エンジン10から排出される排気中のPM量(以下、エンジン排出PM量EGPM_outという)をリアルタイムで演算する。エンジン排出PM量EGPM_outは、例えば、各種センサ31〜39等で検出される吸排気系の酸素濃度O2、空燃比λ、排気温度T等を入力値として含むモデル式等から求めることができる。また、予め実験等により作成したPM排出量マップ(不図示)から、センサ38,39等で検出されるエンジン回転数Nやアクセル開度Qに基づいたエンジン10の運転状態に対応する値を読み取ることで求めてもよい。
【0029】
PMスリップ量演算部43は、本発明のスリップ量推定手段の一部を構成するもので、DPF52で捕集されずに通過するPM量(以下、PMスリップ量DPFPM_slpという)をリアルタイムで演算する。より詳しくは、ECU40には、予め実験等により求めたDPF52のPM捕集能力が正常と仮定した場合のPMスリップ率SLP%が記憶されている。PMスリップ量DPFPM_slpは、エンジン排出PM量推定部42で演算されるエンジン排出PM量EGPM_outに、PMスリップ率SLP%を乗算することで得られる。
【0030】
なお、PMスリップ率SLP%は、DPF52が溶損等により故障する直前の状態を基準に設定することが好ましい。これにより、後述する故障診断において、DPF52からスリップするPM量が排ガス基準値等を超える直前で故障を確実に検知することが可能になる。
【0031】
センサPM堆積量演算部44は、PMスリップ量演算部43でリアルタイムに演算されるPMスリップ量DPFPM_slpに基づいて、抵抗型PMセンサ20の電極22間に堆積するPM堆積量SENSPM_depを演算する。PM堆積量SENSPM_depは、例えば、PMスリップ量DPFPM_slp、排気温度T、排気流量Q等を入力値として含むモデル式から求めることができる。排気流量Qは、MAFセンサ31の検出値及びエンジン10の燃料噴射量等から演算するか、あるいは図示しない排気流量センサから直接的に取得してもよい。
【0032】
推定再生インターバル演算部45は、本発明の推定インターバル演算手段の一部を構成するもので、DPF52のPM捕集能力が正常と仮定した場合の、抵抗型PMセンサ20の再生終了から次の再生開始までの期間(以下、この期間を推定再生インターバルINTestという)を演算する。より詳しくは、推定再生インターバル演算部45は、抵抗型PMセンサ20の再生終了から、センサPM堆積量演算部44で演算されるPM堆積量SENSPM_depの積算値がセンサ再生開始閾値に達するまでの期間を推定再生インターバルINTestとして演算するように構成されている。
【0033】
DPF故障正常判定部46は、本発明の判定手段の一例であって、実再生インターバル演算部41で演算された実再生インターバルINTactと、推定再生インターバル演算部45で演算された推定再生インターバルINTestとに基づいて、DPF52の故障又は正常を判定する。以下、具体的な判定手法を図4〜6に基づいて説明する。
【0034】
図4に示す判定手法は、実再生インターバルINTactと推定再生インターバルINTestとの差を用いるものである。この判定手法では、実再生インターバルINTactと推定再生インターバルINTestとの差ΔINTが、予め定めた上限閾値ΔTMAX下回ると、DPF52を故障と判定する。上限閾値ΔTMAXは、例えば、溶損等によりDPF52を通過するPMスリップ量が排ガス基準値を満たさなくなる直前の状態(故障直前の正常品)を基準に設定されることが好ましい。
【0035】
図5に示す判定手法は、実再生インターバルINTactと推定再生インターバルINTestとの比を用いるものである。この判定手法では、実再生インターバルINTactを推定再生インターバルINTestで除算した比率%INTが、予め定めた上限閾値TMAX%下回ると、DPF52を故障と判定する。上限閾値TMAX%は、図4の例と同様に、DPF52を通過するPMスリップ量が排ガス基準値を満たさなくなる直前の状態を基準に設定されることが好ましい。
【0036】
図6に示す判定手法は、診断時間の短縮化及び、診断回数の増加を目的とするものである。図6(a)では、推定再生インターバルINTestの演算が終了してから所定の閾値時間が経過しても、次のセンサ再生開始信号が入力されない場合は、DPF52を正常と判定する。これにより、DPF52が正常な場合に、実再生インターバルINTactの演算終了を待つことなく、DPF52の正常な状態を早期に判定することが可能になる。
【0037】
図6(b)では、実再生インターバルINTactの演算が終了してから所定の閾値時間が経過しても、推定再生インターバルINTestの演算が終了しない場合は、DPF52を故障と判定する。これにより、DPF52の劣化が著しい場合に、推定再生インターバルINTestの演算終了を待つことなく、DPF52の故障を早期に検知することが可能になる。
【0038】
次に、図7,8に基づいて、本実施形態の診断装置による制御フローを説明する。なお、本制御はエンジン10のイグニッションキー操作:ONと同時にスタートする。
【0039】
図7に示すように、ステップ(以下、ステップを単にSと記載する)100では、抵抗型PMセンサ20の電極22間に付着したPM堆積量に関係なくセンサ強制再生が実行される。S110では、センサ強制再生が終了したか否かが判定される。センサ強制再生が終了した場合(Yes)は、S120に進み、n回目(n=1)の推定再生インターバルINTest及び、実再生インターバルINTactの演算が開始される。
【0040】
S130では、推定再生インターバルINTestの演算を終了したか否かが判定される。推定再生インターバルINTestの演算を終了したことを示す終了フラグF1がオン(F1=1)になっている場合(Yes)は、後述する図8のS300に進む。一方、推定再生インターバルINTestの演算が終了していない場合(No)は、S140に進む。
【0041】
S140では、n回目(n=1)のセンサ再生が開始されたか否かが判定される。センサ再生が開始された場合(Yes)は、実再生インターバルINTactの演算が終了するので、S150で、実再生インターバルINTactの演算を終了したことを示す終了フラグF2がオン(F2=1)にされてS160に進む。
【0042】
S160では、終了フラグF2のオンから所定の閾値時間が経過したか否かが判定され、S170では、実再生インターバルINTactの終了フラグF1がオン(F1=1)にされたか否かが判定される。S170で、終了フラグF1がオンでない場合(No)は、実再生インターバルINTactの演算後、閾値時間を経過しても推定再生インターバルINTestの演算が終了していない状態(図6(b)参照)のため、本制御はS200に進んでDPF52を故障と判定してリターンされる。
【0043】
一方、S170で、終了フラグF1がオンの場合(Yes)は、実再生インターバルINTact及び、推定再生インターバルINTest共に演算が終了しているので、S180でこれらの比較が行われる。
【0044】
S180で、実再生インターバルINTactと推定再生インターバルINTestとの差ΔINTが予め定めた上限閾値ΔTMAX下回る場合(Yes)は、S200に進んでDPF52を故障と判定してリターンされる。一方、差ΔINTが上限閾値ΔTMAX以上の場合(No)は、S210でDPF52を正常と判定する。そして、S220でカウントを1つ加算(n=n+1)し、次の演算を開始すべくS120に戻される。
【0045】
次に、図8に基づいて、S130で推定再生インターバルINTestの演算が終了(F1=1)と判定された場合のフローを説明する。
【0046】
S300では、終了フラグF1のオンから所定の閾値時間が経過したか否かが判定される。閾値時間が経過している場合(Yes)は、S310に進み、n回目(n=1)のセンサ再生が開始されたか否かが判定される。
【0047】
S310で、センサ再生が開始されていない場合(No)は、推定再生インターバルINTestの演算後、閾値時間が経過してもセンサ再生開始信号を受信していない状態(図6(a)参照)のため、本制御はS320に進み、DPF52を正常と判定する。そして、S330でカウントを1つ加算(n=n+1)し、次の演算を開始すべくS120に戻される。
【0048】
一方、S310でセンサ再生が開始されている場合(Yes)は、実再生インターバルINTactの演算が終了するので、S340で終了フラグF2がオン(F2=1)にされてS350に進む。
【0049】
S350では、実再生インターバルINTact及び、推定再生インターバルINTest共に演算が終了しているので、これらの比較が行われる。実再生インターバルINTactと推定再生インターバルINTestとの差ΔINTが予め定めた上限閾値ΔTMAX下回る場合(Yes)は、S370に進んでDPF52を故障と判定してリターンされる。一方、差ΔINTが上限閾値ΔTMAX以上の場合(No)は、S320に進んでDPF52を正常と判定する。そして、S330でカウントを1つ加算(n=n+1)し、次の演算を開始すべく本制御はS120に戻される。その後、上述の各ステップは、エンジン10のイグニッションキー操作:OFFまで繰り返し実行される。
【0050】
次に、本実施形態に係る診断装置による作用効果を説明する。
【0051】
従来、DPFの故障を診断する技術として、DPFの下流側に設けた抵抗型PMセンサのPM量検出値と閾値とを比較する手法が知られている。しかしながら、電極間に付着したPMの電気抵抗は、排気温度や排気流量の影響により変化するため、抵抗型PMセンサのPM量検出値に基づいた診断手法では、DPFの劣化を正確に判定できない課題がある。
【0052】
これに対し、本実施形態の診断装置では、抵抗型PMセンサ20のPM量検出値を用いることなく、抵抗型PMセンサ20のセンサ再生信号から演算される実再生インターバルINTactと、DPF52を正常と仮定したPMスリップ量から演算される推定再生インターバルINTestとに基づいて、DPF52の故障を判定している。したがって、本実施形態の診断装置によれば、排気温度や排気流量の影響を受けることなく、DPF52の故障を高精度に判定することが可能になる。
【0053】
また、本実施形態の診断装置では、推定再生インターバルの演算が終了してから所定時間が経過しても、次のセンサ再生開始信号が入力されない場合は、DPF52を正常と判定する。すなわち、DPF52が正常な場合は、実再生インターバルの演算終了を待つことなく、早期に判定できるように構成されている。したがって、本実施形態の診断装置によれば、診断時間の短縮化及び、診断回数の増加を効果的に図ることができる。
【0054】
また、本実施形態の診断装置では、実再生インターバルの演算が終了してから所定時間が経過しても、推定再生インターバルの演算が終了しない場合は、DPF52を故障と判定する。すなわち、DPF52の劣化が著しい場合は、推定再生インターバルの演算終了を待つことなく、故障を判定できるように構成されている。したがって、本実施形態の診断装置によれば、DPF52の故障を早期に検知することが可能になる。
【0055】
また、本実施形態の診断装置では、推定再生インターバルはDPF52を正常と仮定したPMスリップ量から演算され、このPMスリップ量は、エンジン10の吸排気状態量等を入力値として含むモデル式から演算される。したがって、本実施形態の診断装置によれば、実再生インターバルを閾値と単純に比較する構成に比べ、エンジン10の運転状態を考慮した高精度な診断を行うことができる。
【0056】
なお、本発明は、上述の実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、適宜変形して実施することが可能である。
【0057】
例えば、DPF52とDOC51とは別体に設けられるものとして説明したが、これらを一体化してもよい。また、エンジン10はディーゼルエンジンに限定されず、ガソリンエンジン等の他の内燃機関にも広く適用することが可能である。
【符号の説明】
【0058】
10 エンジン
20 抵抗型PMセンサ
40 ECU
41 実再生インターバル演算部
42 エンジン排出PM量演算部
43 PMスリップ量演算部
44 センサPM堆積量演算部
45 推定再生インターバル演算部
46 DPF故障正常判定部
51 DOC
52 DPF
53 排気管内噴射装置
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8