特許第6201583号(P6201583)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6201583圧電デバイスおよび圧電デバイスの製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6201583
(24)【登録日】2017年9月8日
(45)【発行日】2017年9月27日
(54)【発明の名称】圧電デバイスおよび圧電デバイスの製造方法
(51)【国際特許分類】
   H01L 41/193 20060101AFI20170914BHJP
   H01L 41/047 20060101ALI20170914BHJP
   H01L 41/33 20130101ALI20170914BHJP
   H01L 41/09 20060101ALI20170914BHJP
   H04R 17/00 20060101ALI20170914BHJP
   H01L 41/27 20130101ALI20170914BHJP
【FI】
   H01L41/193
   H01L41/047
   H01L41/33
   H01L41/09
   H04R17/00
   H01L41/27
【請求項の数】8
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2013-203090(P2013-203090)
(22)【出願日】2013年9月30日
(65)【公開番号】特開2015-70110(P2015-70110A)
(43)【公開日】2015年4月13日
【審査請求日】2016年6月1日
(73)【特許権者】
【識別番号】000006231
【氏名又は名称】株式会社村田製作所
(74)【代理人】
【識別番号】110000970
【氏名又は名称】特許業務法人 楓国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】冨永 亨
【審査官】 小山 満
(56)【参考文献】
【文献】 実開昭61−129363(JP,U)
【文献】 特開昭61−026206(JP,A)
【文献】 特開2008−096371(JP,A)
【文献】 国際公開第2013/111841(WO,A1)
【文献】 米国特許出願公開第2014/0331791(US,A1)
【文献】 特許第5765442(JP,B2)
【文献】 特開昭60−054486(JP,A)
【文献】 国際公開第2007/029275(WO,A1)
【文献】 特開2011−100861(JP,A)
【文献】 実開平02−075757(JP,U)
【文献】 特開2001−230462(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 41/00−41/47
H04R 17/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
互いに対向する第1主面と第2主面とを有し一方向に伸長する圧電性フィルムと、
該圧電性フィルムの前記第1主面に形成された第1電極膜および前記第2主面に形成された第2電極膜と、を備え、前記圧電性フィルムを前記伸長の方向の途中で該伸長の方向の一方の端部と他方の端部とが重ならないように、かつ第1電極膜同士が当接するように一回折り曲げて、該折り曲げ部が側面となる主体部と、
記主体部における前記第2電極膜が露出する側面に形成された第2補強電極と、を備え
前記第1電極膜は前記伸長の方向における一方の端部または他方の端部のいずれかで外部へ露出する、圧電デバイス。
【請求項2】
前記第2補強電極は、前記折り曲げ部に形成されている、
請求項1に記載の圧電デバイス。
【請求項3】
前記圧電性フィルムの前記伸長の方向の両端における外部に露出する面には、前記第2電極膜が存在しない電極非形成部が設けられている、
請求項1または2に記載の圧電デバイス。
【請求項4】
前記圧電性フィルムは、d31圧電定数を有する圧電材料からなる、
請求項1乃至請求項3に記載の圧電デバイス。
【請求項5】
前記圧電性フィルムは、ポリフッ化ビニルデンを材料に含む、
請求項4に記載の圧電デバイス。
【請求項6】
前記圧電性フィルムは、ポリ乳酸を材料に含む、
請求項4に記載の圧電デバイス。
【請求項7】
前記圧電性フィルムの前記伸長の方向の両端における外部に露出する面には、前記第1電極膜が形成されない電極非形成部を備える、
請求項1乃至請求項6のいずれかに記載の圧電デバイス。
【請求項8】
1枚の圧電性フィルムの第1主面に第1電極膜を形成し、第2主面に第2電極膜を形成する工程と、
前記第1電極膜および前記第2電極膜が形成された前記圧電性フィルムを、伸長の方向の途中で該伸長の方向における一方の端部と他方の端部とが重ならないように、かつ第1電極膜同士が当接するように一回折り曲げながら各層の主面が平行に、かつ前記第1電極膜が前記伸長の方向における一方の端部または他方の端部のいずれかで外部へ露出するように積層して層状にする工程と、
前記層状にされた圧電性フィルムをプレスして主体部を形成する工程と、
記主体部の前記第2電極膜が露出する側面に第2補強電極を形成する工程と、
を有する圧電デバイスの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、外部から加えられた応力を電気信号に変換したり、電気信号を外部への応力に変換する圧電デバイス、および当該圧電デバイスの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、外部からの振動や押し込み等の応力によって電気信号を発生したり、印加した電気信号によって振動等の外部への応力を発生する圧電デバイス、すなわち圧電効果を利用した圧電デバイスが各種考案されている。
【0003】
このような圧電デバイスとして、圧電効果の向上させるため、特許文献1、特許文献2には、複数の圧電性フィルムを積層した圧電積層体を用いることが記載されている。
【0004】
特許文献1、特許文献2に記載の圧電デバイスでは、複数枚の圧電性フィルムを積層した構造からなる。圧電性フィルムに応力が加わって生じる電気信号を出力するため、もしくは、圧電性フィルムを駆動するための電気信号を圧電性フィルムに印加するための電極は、積層された各圧電性フィルムの間に配置されている。
【0005】
すなわち、従来の特許文献1、特許文献2に記載された圧電デバイスは、圧電性フィルムと電極とが交互に積層された構成からなる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平5−308700号公報
【特許文献2】特開平2−197183号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、特許文献1、特許文献2に示す構造では、複数枚の圧電性フィルムと電極を所望の面積で積層していく構造であるため、積みズレ等の積層時の不具合が生じることがある。そして、積みズレ等の積層時の不具合が生じることで、圧電デバイスとしての圧電効果を向上できないだけでなく、低下させてしまうことがある。
【0008】
したがって、本発明の目的は、圧電効果の効率に優れ、容易に製造することができる圧電デバイスを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
この発明の圧電デバイスは、次の構成を特徴としている。圧電デバイスは、圧電性フィルムを用いた主体部を備える。圧電性フィルムは、互いに対向する第1主面と第2主面とを有し一方向に伸長する形状からなる。主体部は、圧電性フィルムと、該圧電性フィルムの第1主面に形成された第1電極膜および第2主面に形成された第2電極膜と、を備える。主体部は、圧電性フィルムを伸長の方向の途中で少なくとも一回折り曲げて、該折り曲げ部が側面となる形状である。圧電デバイスは、第1、第2補強電極の少なくとも一方を備える。第1補強電極は、主体部における第1電極膜が露出する側面に形成されており、第2補強電極は、主体部における第2電極膜が露出する側面に形成されている。
【0010】
また、この発明の圧電デバイスの製造方法では、次の各工程を有することを特徴としている。この発明の圧電デバイスの製造方法は、1枚の圧電性フィルムの第1主面に第1電極膜を形成し、第2主面に第2電極膜を形成する工程を有する。この発明の圧電デバイスの製造方法は、第1電極膜および第2電極膜が形成された圧電性フィルムを折り曲げながら各層の主面が平行になるように積層して層状にする工程を有する。この発明の圧電デバイスの製造方法は、層状にされた圧電性フィルムをプレスして主体部を形成する工程を有する。この発明の圧電デバイスの製造方法は、主体部の第1電極膜が露出する側面に第1補強電極を形成し、主体部の第2電極膜が露出する側面に第2補強電極を形成する工程を有する。
【0011】
この構成および製造方法では、第1、第2電極膜が形成された1枚の圧電性フィルムで複数層に圧電性フィルムが積層された圧電デバイスを形成できる。これにより、圧電効果の効率が高い圧電デバイスを容易に実現できる。また、第1、第2電極膜の折り曲げられる部分には第1、第2補強電極が形成されるので、折り曲げ部で第1、第2電極膜が破断してしまっても、各層の第1、第2電極膜間の接続を第1、第2補強電極で補うことができる。
【0012】
また、この発明の圧電デバイスでは、圧電性フィルムは、d31圧電定数を有する圧電材料であってもよい。この構成では、圧電性フィルムの具体的な物性例を示している。このような圧電材料を用いることで、第1、第2電極膜間に駆動信号を加えることにより、主面に平行な方向へ伸縮する圧電デバイスを実現できる。また、主面に平行な方向への伸縮を検出する圧電センサを実現できる。
【0013】
また、この発明の圧電デバイスでは、圧電性フィルムは、ポリフッ化ビニルデンを材料に含むことが好ましい。また、この発明の圧電デバイスでは、圧電性フィルムは、ポリ乳酸を材料に含むことが好ましい。
【0014】
これらの構成を用いることで、d31圧電定数が高い材料を用いることができ、より効率の良い圧電センサを実現できる。
【0015】
また、この発明の圧電デバイスでは、圧電性フィルムの伸長の方向の両端における外部に露出する面には、第1電極膜および第2電極膜が形成されない電極非形成部を備えることが好ましい。
【0016】
この構成では、圧電性フィルムの伸長方向の端部での第1電極膜と第2電極膜との距離を離間でき、第1電極膜と第2電極膜との間での短絡を、より確実に抑制できる。
【発明の効果】
【0017】
この発明によれば、圧電効果の効率に優れ、容易に製造することができる圧電デバイスを実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】本発明の第1の実施形態に係る圧電デバイスの平面図および側面断面図である。
図2】本発明の第1の実施形態に係る圧電デバイスの製造工程を示すフローチャートである。
図3】本発明の第1の実施形態に係る圧電デバイスの各製造工程での形状を示す図である。
図4】本発明の第2の実施形態に係る圧電デバイスの平面図および側面断面図である。
図5】本発明の第3の実施形態に係る圧電デバイスの側面断面図である。
図6】本発明の実施形態に係る圧電デバイスを用いたスピーカの外観斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
本発明の第1の実施形態に係る圧電デバイスについて、図を参照して説明する。図1(A)は本発明の第1の実施形態に係る圧電デバイスの平面図であり、図1(B)は圧電デバイスの側面断面図である。なお、本実施形態を含む各実施形態では、本発明の圧電デバイスの構造を分かりやすく図示するため、実際の厚みよりも厚みを誇張して図示している。
【0020】
圧電デバイス10は、主体部100を備える。主体部100は、1枚の電極付き圧電性フィルム20DPを折り曲げて積層した構造からなる。より具体的には、次の構成からなる。
【0021】
電極付き圧電性フィルム20DPは、圧電性フィルム20、第1電極膜31、および第2電極膜32を備える。圧電性フィルム20は略一定の幅を有し、当該幅方向に直交する方向を伸長方向とする矩形である。圧電性フィルム20の厚みは、例えば10μm〜100μm程度であることが好ましい。
【0022】
圧電性フィルム20は、d31を有する圧電材料によって形成されている。例えば、圧電性フィルム20は、ポリフッ化ビニルデン(PVDF)や、ポリ乳酸(PLA,PDLA,PLLA)を含む材料からなる。なお、圧電性フィルム20には、d31を利用可能な圧電材料であれば、他の材料であってもよいが、ポリフッ化ビニルデンを含む材料や、ポリ乳酸を含む材料とすることで、d31が20を超える値となり、d31が比較的高く、効率の良い圧電デバイスを実現できる。
【0023】
第1電極膜31は、圧電性フィルム20における厚み方向に直交する一方主面である第1主面の略全面に形成されている。第2電極膜32は、圧電性フィルム20における厚み方向に直交する他方主面である第2主面の略全面に形成されている。第1電極膜31および第2電極膜32は、導電性を有する膜であればよく、より好ましくは金属膜であるとよい。例えば、第1電極膜31および第2電極膜32は、アルミニウム等であるとよい。
【0024】
主体部100は、1枚の電極付き圧電性フィルム20DPを途中で折り曲げながら積層することによって形成されている。より具体的には、図1(B)に示すように、圧電性フィルム20DPは、主体部100の第1方向の両端面(主体部100の両側面に相当する。)に相当する位置で順次折り返されながら、各層となる電極付き圧電性フィルム20DPの主面が平行になるように積層されている。すなわち、電極付き圧電性フィルム20DPは、まず第1方向に沿って配置される。これにより、主体部100の層201が構成される。そして、すなわち、電極付き圧電性フィルム20DPは、主体部100の一方の側面となる第1方向の一方端で折り返されて、予め配置されている電極付き圧電性フィルム20Dの表面側に配置される。次に、電極付き圧電性フィルム20DPは、主体部100の長さ分で配置される。これにより、主体部100の層202が構成される。電極付き圧電性フィルム20DPは、主体部100の他方の側面となる第1方向の他方端で折り返され、予め配置されている電極付き圧電性フィルム20Dの表面側に配置される。次に、電極付き圧電性フィルム20DPは、主体部100の長さ分で配置される。これにより、主体部100の層203が構成される。そして、この折り返しによる積層を繰り返すことで、電極付き圧電性フィルム20DPが層状に配置された主体部100が形成される。図1(B)の例では、層201−207の7層からなる主体部100を示しているが、層数、すなわち折り返し数は、必要とする仕様に応じて適宜設定すればよい。
【0025】
このような構成では、積層方向に隣り合う電極付き圧電性フィルム20DPで、第1電極膜31同士が当接し、第2電極膜32同士が当接する。そして、第1電極膜31および第2電極膜32は、接続しない。また、第1電極膜31が露出する側面は、主体部100における第1方向の一方端側となり、第2電極膜32が露出する側面は、主体部100における第1方向の他方端側となる。すなわち、第1電極膜31と第2電極膜32は、主体部100の対向する各側面に露出する。これにより、第1電極膜31と第2電極膜32とのアイソレーションを、確実に確保することができる。
【0026】
主体部100には、第1補強電極41と第2補強電極42が形成されている。第1補強電極41は、主体部100における第1電極膜31が露出する側面に形成されている。第2補強電極42は、主体部100における第2電極膜32が露出する側面に形成されている。第1電極膜31および第2電極膜32は、他の実装型電子部品の外部電極を形成する材料と同じ材料を用いればよく、例えば銀を含む導電性ペーストを焼結したものを用いるとよい。また、銀をスパッタリングで形成したり、亜鉛やアルミニウムのメタリコンによって形成してもよい。
【0027】
このように、第1補強電極41を形成することで、主体部100の第1側面に露出する各層の第1電極膜31を接続することができる。すなわち、各層から露出する複数の第1電極膜31を一つの電極にまとめることができる。
【0028】
さらに、主体部100の第1側面に露出する各層の第1電極膜31を補強することができる。すなわち、主体部100の第1方向の一方端の側面で折り返す複数の第1電極膜31が、この折り返し構造によって破断したとしても、第1補強電極41によって全ての層の第1電極膜31を導通することができる。
【0029】
また、このように、第2補強電極42を形成することで、主体部100の第2側面に露出する各層の第2電極膜32を接続することができる。すなわち、各層から露出する複数の第2電極膜32を一つの電極にまとめることができる。
【0030】
さらに、主体部100の第2側面に露出する各層の第2電極膜32を補強することができる。すなわち、主体部100の第2側面で折り返す複数の第2電極膜32が、この折り返し構造によって破断したとしても、第2補強電極42によって全ての層の第2電極膜32を導通することができる。
【0031】
このような構成の圧電デバイス10は、第1補強電極41と第2補強電極42との間に駆動電圧を発生させる駆動信号を印加することで、主体部100の第1方向、すなわち折り返し部を両端とする方向に沿って伸縮する。これにより、圧電デバイス10を、圧電アクチュエータとして機能させることができる。この際、電極付き圧電性フィルム20DPが複数層に積層され、且つ各層の圧電性フィルム20の伸縮方向が一致するので、層数に応じて、駆動電圧に対する伸縮量を、より大きくすることができる。すなわち、より効率の良い圧電アクチュエータを実現できる。
【0032】
また、このような構成の圧電デバイス10は、外部から応力が加わって、主体部100の第1方向に沿って伸縮すると、第1電極膜31と第2補強電極32との間に、応力の大きさに応じた電荷が発生する。この電荷を第1補強電極41と第2補強電極42とによって出力することで、応力の大きさに応じた電圧レベルを有する検出信号を得ることができる。これにより、圧電デバイス10を、圧電アクチュエータとして機能させることができる。この際、電極付き圧電性フィルム20DPが複数層に積層され、且つ各層の圧電性フィルム20の伸縮による電界方向が一致するので、層数に応じて、応力の大きさに対する電圧レベルを、より大きくすることができる。すなわち、より効率の良い圧電センサを実現できる。
【0033】
以上のように、本実施形態の構成を用いることで、圧電効果の変換効率と信頼性に優れた圧電デバイスを、簡素な構成で容易に形成することができる。
【0034】
なお、主体部100の最下層および最上層を構成する電極付き圧電性フィルム20DPの長さは、主体部100の第1方向の長さ、すなわち第1補強電極41と第2補強電極42との間の長さよりも短くすることが好ましい。この構成を用いることで、電極付き圧電性フィルム20DPの伸長方向の両端が、第1補強電極41および第2補強電極42に接続しない。これにより、第1電極膜31と第2補強電極42との短絡、および、第2電極膜32と第1補強電極41との短絡を抑制できる。
【0035】
次に、本実施形態の圧電デバイスの製造方法について、説明する。図2は、本発明の本発明の第1の実施形態に係る圧電デバイスの製造工程を示すフローチャートである。図3は、本発明の第1の実施形態に係る圧電デバイスの各製造工程での形状を示す図である。
【0036】
まず、1枚の圧電性フィルム20を用意し、図3(A)に示すように、圧電性フィルム20の第1主面に第1電極膜31を形成し、第2主面に第2電極膜32を形成する(S101)。
【0037】
次に、図3(B)に示すように、金型51を用意し、電極付き圧電性フィルム20DPを折り曲げながら金型51内に配置する(S102)。この際、金型51の底面と電極付き圧電性フィルム20DPの主面が平行になるように、電極付き圧電性フィルム20DPを折り返しながら層状に配置する。
【0038】
次に、図3(C)に示すように、金型51に配置された層状の電極付き圧電性フィルム20DPに対してプレス部材52を当接させながら、層状の電極付き圧電性フィルム20DPを剛体プレスする(S103)。この際、例えば、圧電性フィルム20のポリ乳酸を含む材料を用いた場合、40℃〜70℃程度の熱を1分〜5分程度加えることが好ましい。なお、このような剛体を用いた熱プレスを用いず、静水圧プレスを用いてもよい。これにより、主体部100が形成される。
【0039】
次に、主体部100を金型51から取り出し、上述の各種方法を用いて、第1補強電極41と第2補強電極42とを形成する。
【0040】
このような工程を得ることで、圧電デバイス10が製造される。そして、このような製造方法により、圧電効果の変換効率と信頼性に優れた圧電デバイスを、容易な工程で製造することができる。
【0041】
次に、本発明の第2の実施形態に係る圧電デバイスについて、図を参照して説明する。図4(A)は本発明の第2の実施形態に係る圧電デバイスの平面図であり、図4(B)は圧電デバイスの側面断面図である。
【0042】
本実施形態の圧電デバイス10Aは、第1の実施形態に示した圧電デバイス10に対して、電極非形成部310,320を設けたものである。したがって、第1の実施形態に示した圧電デバイス10と異なる箇所のみを具体的に説明する。
【0043】
圧電デバイス10Aの主体部100Aの表面には、電極非形成部310が設けられている。言い換えれば、主体部100Aを構成する最上層の圧電性フィルム20の第1電極膜31が形成される側の第1主面には、第1電極膜31が無い領域(圧電性フィルム20が露出する領域)が存在する。この電極非形成部310は、電極付き圧電性フィルム20DPの伸長方向の一方端部を含むように設けられている。すなわち、第1電極膜31の端部が電極付き圧電性フィルム20DPの伸長方向の一方端部から特定の距離をおいて離間するように、電極非形成部310が設けられている。
【0044】
これにより、電極付き圧電性フィルム20DPの一方端部において、第1電極膜31と第2電極膜32とが近接することを防止できる。したがって、導電性異物の付着や湿気によって等によって、第1電極膜31と第2電極膜32が短絡することを、より確実に防止できる。
【0045】
圧電デバイス10Aの主体部100Aの裏面には、電極非形成部320が設けられている。言い換えれば、主体部100Aを構成する最下層の圧電性フィルム20の第2電極膜32が形成される側の第2主面には、第2電極膜32が無い領域(圧電性フィルム20が露出する領域)が存在する。この電極非形成部320は、電極付き圧電性フィルム20DPの伸長方向の他方端部を含むように設けられている。すなわち、第2電極膜32の端部が電極付き圧電性フィルム20DPの伸長方向の他方端部から特定の距離をおいて離間するように、電極非形成部320が設けられている。
【0046】
これにより、電極付き圧電性フィルム20DPの他方端部において、第1電極膜31と第2電極膜32とが近接することを防止できる。したがって、導電性異物の付着や湿気等によって、第1電極膜31と第2電極膜32が短絡することを、より確実に防止できる。
【0047】
この構成により、より信頼性に優れる圧電デバイス10Aを実現することができる。
【0048】
なお、電極非形成部310,320は、予め形成されていた第1電極膜31および第2電極膜32を除去することで実現できる。この場合、サンドブラスト等の物理的な除去方法に限らず、化学的な除去方法を用いてもよい。また、圧電性フィルム20に第1電極膜31および第2電極膜32を形成する時に、予め電極を形成しない領域をパターニング処理等により設けておいてもよい。
【0049】
次に、本発明の第3の実施形態に係る圧電デバイスについて、図を参照して説明する。図5は本発明の第3の実施形態に係る圧電デバイスの側面断面図である。
【0050】
本実施形態の圧電デバイス10Bは、折り返しが一度であり、主体部100Bが二層の構造からなる点およびこれに関連する箇所で、第1の実施形態に係る圧電デバイス10と異なる。したがって、第1の実施形態に係る圧電デバイス10と異なる箇所のみを具体的に説明する。
【0051】
圧電デバイス10Bの主体部100Bは、電極付き圧電性フィルム20DPBを一度折り返した構造からなる。この際、電極付き圧電性フィルム20DPBの伸長方向の一方の端部と他方の端部が重ならないように、電極付き圧電性フィルム20DPBは折り曲げられている。これにより、折り返しによって、二層の電極付き圧電性フィルム20DPBの内側に入り込む第1電極膜31を外部へ露出することができる。
【0052】
主体部100Bにおける折り返し部を有する側面には、第2補強電極42Bが形成されている。この構成により、第2電極膜32の折り返し部を補強することができる。すなわち、主体部100の第2側面で折り返す第2電極膜32が、この折り返し構造によって破断したとしても、第2補強電極42Bによって導通させることができる。
【0053】
これにより、信頼性が高く容易な構造の圧電デバイス10Bを実現することができ、当該圧電デバイス10Bを容易に製造することができる。
【0054】
さらに、本実施形態の構成では、電極付き圧電性フィルム20DPにおける伸長方向の両端に、第2電極膜32が存在しない電極非形成部321,322が設けられている。この構成により、上述の第2実施形態の圧電デバイス10Aと同様に、第1電極膜31と第2電極膜32との外的要因による短絡を防止できる。したがって、より信頼性に優れる圧電デバイス10Bを実現することができる。
【0055】
なお、上述の実施形態では、2層、7層からなる折り返し構造の主体部を用いた例を示したが、1層以外の他の層数であっても、上述の各実施形態の構成を適用して、信頼性に優れ、圧電効果の変換効率が良い圧電デバイスを実現することができる。
【0056】
このような圧電デバイスは、圧電アクチュエータとして用いる場合に、例えば、次に示す機器に応用することができる。図6は、本発明の実施形態に係る圧電デバイスを用いたスピーカの外観斜視図である。
【0057】
スピーカ90は、圧電デバイス10、エキサイタフィルム91、振動板92、および固定部材93を備える。
【0058】
エキサイタフィルム91は、平面視して矩形状からなる。エキサイタフィルム91は、ポリエチレンテレフタレート(PET)で構成されている。なお、エキサイタフィルム91は、ポリエチレンナノフタレート(PEN)、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)、ポリ塩化ビニル(PVC)等の他の材料を用いてもよく、機能的には絶縁性材料であり、振動板92の形状を十分に維持できる強度を有するものであればよい。
【0059】
エキサイタフィルム91の一方主面には、圧電デバイス10が略全面に亘る形状で配設されている。圧電デバイス10は、接着層を用いてエキサイタフィルム91に固定されている。この際、圧電デバイス10は、厚み方向がエキサイタフィルム91の平膜面に直交するように固定される。
【0060】
振動板92は、平面視して矩形状からなる。振動板92は、長手方向の長さがエキサイタフィルム91と略同じであり、短手方向の長さがエキサイタフィルム91よりも長い形状からなる。振動板92は、後述するエキサイタフィルム91の変位によって振動可能な弾性を有する材料からなる。
【0061】
振動板92は、短手方向の両端がエキサイタフィルム91の短手方向の両端にそれぞれ固定部材93を用いて固定されている。固定部材93は、長尺な棒状からなり、金属等の高強度な材質からなる。なお、振動板92は、エキサイタフィルム91における圧電デバイス10が装着された側に固定される。ただし、振動板92を、エキサイタフィルム91における圧電デバイス10が装着された側と反対側に固定してもよい。
【0062】
ここで、図6に示すように、振動板92は、エキサイタフィルム91の存在する側に対して反対の側(振動板92の前側)に湾曲して突出する形状となるように、エキサイタフィルム91へ固定されている。なお、図6は振動板92の湾曲状態を誇張して記載しており、実際には、振動板92の主面とエキサイタフィルム91の主面は、より平行に近い関係となる。
【0063】
このように振動板92に曲げ応力が加わった状態でエキサイタフィルム91へ固定すると、エキサイタフィルム91には、当該エキサイタフィルム91の主面(平膜面)に平行で、当該エキサイタフィルム91における振動板92が固定される両端辺に対して直交する方向(エキサイタフィルム91の平膜面における短手方向)に沿って引っ張り張力が係った状態となる。
【0064】
このような状態から圧電デバイス10に対して放音用駆動信号を印加することで、振動板92は主面(平板面)に直交する方向を振動方向として振動し、スピーカ90の正面方向へ、放音用駆動信号に応じた音が放音される。
【0065】
そして、上述の実施形態に示した圧電デバイス10を用いることで、放音用駆動信号に対するエキサイタフィルム91の変位量を大きくすることができる。したがって、効率良く放音するスピーカ90を形成できる。
【符号の説明】
【0066】
10,10A,10B:圧電デバイス
20:圧電性フィルム
20DP:電極付き圧電性フィルム
31:第1電極膜
32:第2電極膜
41:第1補強電極
42:第2補強電極
51:金型
52:プレス部材
90:スピーカ
91:エキサイタフィルム
92:振動板
93:固定部材
100:主体部
310,320,321,322:電極非形成部
図1
図2
図3
図4
図5
図6