特許第6201608号(P6201608)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6201608
(24)【登録日】2017年9月8日
(45)【発行日】2017年9月27日
(54)【発明の名称】スクライブ方法
(51)【国際特許分類】
   B28D 5/00 20060101AFI20170914BHJP
   C03B 33/037 20060101ALI20170914BHJP
【FI】
   B28D5/00 Z
   C03B33/037
【請求項の数】5
【全頁数】16
(21)【出願番号】特願2013-211114(P2013-211114)
(22)【出願日】2013年10月8日
(65)【公開番号】特開2015-74145(P2015-74145A)
(43)【公開日】2015年4月20日
【審査請求日】2016年8月29日
(73)【特許権者】
【識別番号】390000608
【氏名又は名称】三星ダイヤモンド工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088672
【弁理士】
【氏名又は名称】吉竹 英俊
(74)【代理人】
【識別番号】100088845
【弁理士】
【氏名又は名称】有田 貴弘
(72)【発明者】
【氏名】中野 忠信
【審査官】 塩治 雅也
(56)【参考文献】
【文献】 特開2000−264656(JP,A)
【文献】 米国特許第06460257(US,B1)
【文献】 特開2012−000793(JP,A)
【文献】 特開2013−079166(JP,A)
【文献】 特開2012−072002(JP,A)
【文献】 特開2003−212579(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2010/0154614(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B28D 5/00
C03B 33/037
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1および第2の辺によって構成された角を有する縁に囲まれた表面が設けられた基板を準備する工程と、
前記基板の前記表面をスクライブすることによって、前記第1の辺との間に前記基板の前記表面を部分的に挟むように第1のアシストラインを形成する工程と、
前記基板の前記表面上における、前記縁から離れかつ前記第1の辺と前記第1のアシストラインとの間の位置に、前記基板から離れていた刃先を押し付ける工程と、
前記基板の前記表面上に押し付けられた前記刃先を、前記第1のアシストラインと交差する第1の軌道で摺動させる工程とを備え、前記刃先が前記第1のアシストラインに交差することをきっかけとして第1のスクライブラインが形成し始められる、スクライブ方法。
【請求項2】
前記第1のアシストラインを形成する工程は、前記第2の辺から前記基板の前記表面をスクライブする工程を含む、請求項1に記載のスクライブ方法。
【請求項3】
前記第2の辺から前記基板の前記表面をスクライブする工程は、前記基板の前記表面上において刃先を摺動させる工程を含む、請求項2に記載のスクライブ方法。
【請求項4】
前記基板の前記表面上における、前記縁から離れかつ前記第2の辺と前記第1のスクライブラインとの間の位置に、前記基板から離れていた刃先を押し付ける工程と、
前記基板の前記表面上に押し付けられた前記刃先を、前記第1のスクライブラインと交差する第2の軌道で摺動させる工程とをさらに備え、前記刃先が前記第1のスクライブラインに交差することをきっかけとして第2のスクライブラインが形成し始められる、請求項1〜3のいずれか1項に記載のスクライブ方法。
【請求項5】
前記第1の辺から前記基板の前記表面をスクライブすることによって、前記第2の辺と前記第1のスクライブラインとに挟まれるように延びる第2のアシストラインを形成する工程と、
前記基板の前記表面上における、前記縁から離れかつ前記第2の辺と前記第2のアシストラインとの間の位置に、前記基板から離れていた刃先を押し付ける工程と、
前記基板の前記表面上に押し付けられた刃先を、前記第2のアシストラインおよび前記第1のスクライブラインに順に交差する第2の軌道で摺動させる工程とを備え、前記刃先が前記第2のアシストラインに交差することをきっかけとして第2のスクライブラインが形成し始められる、請求項1〜3のいずれか1項に記載のスクライブ方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、基板のスクライブ方法に関し、特に、刃先を用いたスクライブ方法に関する。
【背景技術】
【0002】
フラットディスプレイパネルまたは太陽電池パネルなどの電気機器の製造において、たとえば、ガラス板、半導体ウエハ、サファイアウエハ、またはセラミックス板など、脆性材料から作られた基板を切断することがしばしば必要となる。この際に、スクライブ装置により基板にスクライブがしばしば行われる。すなわち基板表面にスクライブラインが形成される。スクライブラインは、基板の厚さ方向に少なくとも部分的に進行したクラックが、基板の表面上においてライン状に延びているもののことをいう。クラックが厚さ方向に完全に進行している場合は、スクライブラインの形成のみでスクライブラインに沿って基板が完全に切断される。クラックが厚さ方向に部分的にしか進行していない場合は、スクライブラインの形成後に、ブレーク工程と称される応力付与がなされる。ブレーク工程によりクラックを厚さ方向に完全に進行させることで、スクライブラインに沿って基板が完全に切断される。
【0003】
スクライブラインは、基板の縁を起点とすると容易に形成することができる。なぜならば、基板の縁においては局所的な破壊が起こりやすく、この破壊を起点としてスクライブラインを延ばすことができるからである。しかしながら、基板上において縁から離れた位置からスクライブラインを形成し始めることが望まれる場合も多い。この場合、スクライブラインの起点が基板表面の平坦面上であることから、スクライブラインを形成し始める際に、刃先が基板上で滑ってしまいやすい。このためスクライブを形成し始めるためのきっかけとなる破壊(以下、起点クラックと称する)を発生させにくい。このため、起点クラックを形成する技術が検討されている。
【0004】
特開2000−264656号公報(特許文献1)によれば、ワーク面にスクライブラインを形成するスクライブ方法が開示されている。スクライブ装置は、カッタと、カッタに振動を付与する振動発生部材とを有するスクライブ本体を含む。この方法によれば、スクライブ本体を、ワークから上方に離した状態でワーク面に沿って相対移動させることにより、カッタがスクライブ開始点の真上に位置させられる。次に、スクライブ本体を下降させることにより、カッタの先端がスクライブ本体の自重をもってスクライブ開始点に当てられる。その後、スクライブ本体に衝撃を付与することで、ワーク面において縁から離れたスクライブ開始点に起点クラックが形成される。ワークに振動を与えることで、起点クラックをきっかけにしてスクライブラインが形成される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2000−264656号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記公報に記載のスクライブ装置によれば、起点クラックが、スクライブ本体(スクライブヘッド)に衝撃を付与することで形成される。しかしながら衝撃にのみ依存してスクライブラインの起点を得ようとすると、カッタに対して大きな衝撃力を加える必要がある。このためカッタの刃先へ大きなダメージが加わる。
【0007】
本発明は以上のような課題を解決するためになされたものであり、その目的は、刃先へのダメージを抑えつつ、スクライブラインの形成を基板の縁から離れた位置から開始することができるスクライブ方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明のスクライブ方法は、次の工程を有する。第1および第2の辺によって構成された角を有する縁に囲まれた表面が設けられた基板が準備される。基板の表面をスクライブすることによって、第1の辺との間に基板の表面を部分的に挟むように第1のアシストラインが形成される。基板の表面上における、縁から離れかつ第1の辺と第1のアシストラインとの間の位置に、基板から離れていた刃先が押し付けられる。基板の表面上に押し付けられた刃先が、第1のアシストラインと交差する第1の軌道で摺動させられる。刃先が第1のアシストラインに交差することをきっかけとして第1のスクライブラインが形成し始められる。
【0009】
このスクライブ方法によれば、摺動する刃先が、第1のアシストラインに交差することをきっかけとして、第1のスクライブラインを形成し始める。これにより、第1のスクライブラインの形成のきっかけを確保するために刃先に大きな衝撃を加える必要がなくなる。よって刃先へのダメージを抑えつつ、第1のスクライブラインの形成を基板の縁から離れた位置から開始することができる。
【0010】
好ましくは、第1のアシストラインが形成される際に、第2の辺から基板の表面がスクライブされる。これにより、第1のアシストラインの形成を、第2の辺をきっかけとして開始することができる。
【0011】
より好ましくは、第2の辺から基板の表面がスクライブされる際に、基板の表面上において刃先が摺動させられる。摺動する刃先は基板の表面に食い込むきっかけを一般に得にくいものの、基板の第2の辺上、すなわち縁上では、基板中に食い込みやすい。よって摺動する刃先を用いる場合であっても第1のアシストラインの形成を容易に開始することができる。
【0012】
上記スクライブ方法は、次の工程をさらに有してもよい。基板の表面上における、縁から離れかつ第2の辺と第1のスクライブラインとの間の位置に、基板から離れていた刃先が押し付けられる。基板の表面上に押し付けられた刃先が、第1のスクライブラインと交差する第2の軌道で摺動させられる。刃先が第1のスクライブラインに交差することをきっかけとして第2のスクライブラインが形成し始められる。これにより、第1のスクライブラインが、第2のスクライブラインの形成のきっかけを確保するアシストラインとして利用される。よって別途アシストラインが形成される場合に比して、工程を簡素化することができる。
【0013】
あるいは上記スクライブ方法は、次の工程をさらに有してもよい。第1の辺から基板の表面をスクライブすることによって、第2の辺と第1のスクライブラインとに挟まれるように延びる第2のアシストラインが形成される。基板の表面上における、縁から離れかつ第2の辺と第2のアシストラインとの間の位置に、基板から離れていた刃先が押し付けられる。基板の表面上に押し付けられた刃先が、第2のアシストラインおよび第1のスクライブラインに順に交差する第2の軌道で摺動させられる。刃先が第2のアシストラインに交差することをきっかけとして第2のスクライブラインが形成し始められる。これにより、第2のアシストラインを利用して形成し始められた第2のスクライブラインは、伸展することによって安定化した後に、第1のスクライブラインと交差する。よって、第1のスクライブラインの近傍で、第2のスクライブラインを安定的に形成することができる。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、上述したように、刃先へのダメージを抑えつつ、スクライブラインの形成を基板の縁から離れた位置から開始することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】本発明の実施の形態1におけるスクライブ方法を概略的に示すフロー図である。
図2】本発明の実施の形態1におけるスクライブ方法の第1工程を概略的に示す上面図である。
図3】本発明の実施の形態1におけるスクライブ方法の第2工程を概略的に示す上面図である。
図4】本発明の実施の形態1におけるスクライブ方法の第3工程を概略的に示す上面図である。
図5】本発明の実施の形態1におけるスクライブ方法の第4工程を概略的に示す上面図である。
図6】本発明の実施の形態1におけるスクライブ方法の第5工程を概略的に示す上面図である。
図7】本発明の実施の形態1におけるスクライブ方法の第6工程を概略的に示す上面図である。
図8】本発明の実施の形態1におけるスクライブ方法の第7工程を概略的に示す上面図である。
図9図2の工程を概略的に示す部分側面図である。
図10】本発明の実施の形態2におけるスクライブ方法の一工程を概略的に示す部分側面図である。
図11】本発明の実施の形態3におけるスクライブ方法の第1工程を概略的に示す上面図である。
図12】本発明の実施の形態3におけるスクライブ方法の第2工程を概略的に示す上面図である。
図13】本発明の実施の形態3におけるスクライブ方法の第3工程を概略的に示す上面図である。
図14】本発明の実施の形態3におけるスクライブ方法の第4工程を概略的に示す上面図である。
図15】本発明の実施の形態3におけるスクライブ方法の第5工程を概略的に示す上面図である。
図16】本発明の実施の形態3におけるスクライブ方法の第6工程を概略的に示す上面図である。
図17】本発明の実施の形態3におけるスクライブ方法の第7工程を概略的に示す上面図である。
図18】本発明の実施の形態4におけるスクライブ方法を概略的に示すフロー図である。
図19】本発明の実施の形態4におけるスクライブ方法の第1工程を概略的に示す上面図である。
図20】本発明の実施の形態4におけるスクライブ方法の第2工程を概略的に示す上面図である。
図21】本発明の実施の形態4におけるスクライブ方法の第3工程を概略的に示す上面図である。
図22】本発明の実施の形態4におけるスクライブ方法の第4工程を概略的に示す上面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、図面に基づいて本発明の実施の形態について説明する。なお、以下の図面において同一または相当する部分には同一の参照番号を付しその説明は繰返さない。
【0017】
(実施の形態1)
図1は、本実施の形態におけるスクライブ方法を概略的に示すフロー図である。図2図8は、このスクライブ方法の工程を順に示す上面図である。
【0018】
図2を参照して、ガラスから作られたマザー基板4(基板)が準備される(図1:ステップS10)。マザー基板4には、辺D1〜D4(第1〜第4の辺)を有する縁に囲まれた表面が設けられている。辺D1およびD2は、図中、左上の角を構成している。辺D2およびD3は、図中、右上の角を構成している。辺D3およびD4は、図中、右下の角を構成している。辺D4およびD1は、図中、左下の角を構成している。本実施の形態においては、マザー基板4の表面は、これら4つの角を有する長方形の縁に囲まれている。ここで長方形とは、正方形を含む概念である。
【0019】
マザー基板4の表面が、辺D1と平行な方向DR1に向かって辺D2からスクライブされる。具体的には、さらに図9を参照して、テーブル11上に支持されたマザー基板4の表面上において、カッタ120の刃先121(図9)が方向DR1に向かって摺動させられる。これにより、辺D1から離れかつ辺D2上に位置する起点PL1から方向DR1に向かってアシストラインAL1(第1のアシストライン)が形成される(図1:ステップS20)。アシストラインAL1は、辺D1との間にマザー基板4の表面を部分的に挟むように(図中、マザー基板4の左部分を挟むように)形成される。本実施の形態においては、アシストラインAL1は辺D1と平行に延び、辺D2およびD4の間をつなぐ。
【0020】
なお図9に示すように、カッタ120は、刃先121を保持するホルダ122を有してもよい。カッタ120はダイヤモンドポイントであることが好ましい。すなわち刃先121はダイヤモンドから作られていることが好ましい。ダイヤモンドは、天然のもしくは合成された単結晶体ダイヤモンド、多結晶体ダイヤモンド、またはダイヤモンド粒子を鉄族元素などの結合材によって結合させた焼結ダイヤモンドである。
【0021】
図3を参照して、マザー基板4から離れていた刃先121(図9)がマザー基板4の表面上の接触点PP1に押し付けられる(図1:ステップS30)。接触点PP1は、マザー基板4の縁から離れ、かつ辺D1とアシストラインAL1との間である。ここで「辺D1とアシストラインAL1との間」とは、辺D1およびアシストラインAL1に挟まれ、かつ辺D1およびアシストラインAL1の各々から離れた位置のことである。本実施の形態においては、この刃先121はアシストラインAL1の形成に用いたものと同一または同様のものである。次に、マザー基板4の表面上に押し付けられた刃先121が、アシストラインAL1と交差点PA1で交差して辺D3に至る軌道TJ1(第1の軌道)で、辺D2と平行な方向DR2に向かって摺動させられる(図1:ステップS40)。
【0022】
図4を参照して、刃先121がアシストラインAL1に交差することをきっかけとして、スクライブラインSL1(第1のスクライブライン)が形成し始められる。具体的には、接触点PP1から交差点PA1までの区間NL1においてマザー基板4の表面を滑っていた刃先121が、交差点PA1においてアシストラインAL1のクラックに引っ掛かる。これにより刃先121が交差点PA1を起点としてスクライブラインSL1を形成し始める。
【0023】
なお刃先121がマザー基板4の表面を滑る場合、マザー基板4の表面に傷が形成され得る。この傷は、前述したブレーク工程に利用するには浅すぎるものであり、本明細書における「スクライブライン」に相当するものではない。
【0024】
図5を参照して、スクライブラインSL1と辺D4との間に、スクライブラインSL1と並走するスクライブラインSL1a〜SL1dが形成される。スクライブラインSL1a〜SL1dの形成方法は、スクライブラインSL1の形成方法と同様である。
【0025】
図6を参照して、マザー基板4から離れていた刃先121(図9)がマザー基板4の表面上の接触点PP2に押し付けられる(図1:ステップS50)。接触点PP2は、マザー基板4の縁から離れ、かつ辺D2とスクライブラインSL1との間である。ここで「辺D2とスクライブラインSL1との間」とは、辺D2およびスクライブラインSL1に挟まれ、かつ辺D2およびスクライブラインSL1の各々から離れた位置のことである。本実施の形態においては、この刃先121はアシストラインAL1の形成に用いたものと同一または同様のものである。次に、マザー基板4の表面上に押し付けられた刃先121が、スクライブラインSL1と交差点PS2で交差する軌道TJ2(第2の軌道)で、辺D1と平行に摺動させられる(図1:ステップS60)。
【0026】
図7を参照して、刃先121がスクライブラインSL1に交差することをきっかけとして、スクライブラインSL2(第2のスクライブライン)が形成し始められる。具体的には、接触点PP2から交差点PS2までの区間NL2においてマザー基板4の表面を滑っていた刃先121が、交差点PS2においてスクライブラインSL1のクラックに引っ掛かることによって、交差点PS2を起点としてスクライブラインSL2を形成し始める。
【0027】
図8を参照して、スクライブラインSL2と辺D3との間に、スクライブラインSL2と並走するスクライブラインSL2aおよびSL2bが形成される。スクライブラインSL2aおよびSL2bの形成方法は、スクライブラインSL2の形成方法と同様である。
【0028】
以上により、辺D2に平行に並走するスクライブラインSL1およびSL1a〜SL1dと、辺D1に平行に並走するアシストラインAL1、スクライブラインSL2、SL2aおよびSL2bとによって、単位基板U1〜U12となる部分が区画される。次にマザー基板4がブレーク装置(図示せず)へと搬送される。そしてマザー基板4のブレーク工程が行われる。これにより、互いに分離された単位基板U1〜U12が得られる。
【0029】
本実施の形態によれば、摺動する刃先121(図9)が、アシストラインAL1(図4)に交差点PA1で交差することをきっかけとして、スクライブラインSL1を形成し始める。これにより、スクライブラインSL1の形成のきっかけを確保するために刃先121に大きな衝撃を加える必要がなくなる。よって刃先121へのダメージを抑えつつ、スクライブラインSL1の形成をマザー基板4の縁から離れた位置(交差点PA1)から開始することができる。
【0030】
またアシストラインAL1(図2)が形成される際に、辺D2上の起点PL1からマザー基板4の表面がスクライブされる。これにより、アシストラインAL1の形成を、辺D2をきっかけとして開始することができる。また辺D2からマザー基板4の表面がスクライブされる際に、マザー基板4の表面上において刃先121(図9)が摺動させられる。摺動する刃先121はマザー基板4の表面に食い込むきっかけを一般に得にくいものの、マザー基板4の辺D2上、すなわち縁上では、マザー基板4中に食い込みやすい。よって摺動する刃先121を用いる場合であってもアシストラインAL1の形成を容易に開始することができる。
【0031】
また刃先121がスクライブラインSL1(図7)に交差点PS2で交差することをきっかけとしてスクライブラインSL2が形成し始められる。これにより、スクライブラインSL1が、スクライブラインSL2の形成のきっかけを確保するアシストラインとして利用される。よって別途アシストラインが形成される場合に比して、工程を簡素化することができる。
【0032】
(実施の形態2)
図10を参照して、本実施の形態では、実施の形態1においてスクライブラインSL1を形成する際に(図3および図4)、スクライブヘッド30が用いられる。スクライブヘッド30は、スクライブヘッド30をマザー基板4に対して相対変位させる機構(図10において図示せず)とともに、スクライブ装置に組み込まれて用いられる。
【0033】
スクライブヘッド30は、ボディ部110と、カッタ120(図9)と、荷重部130とを有する。カッタ120はボディ部110に取り付けられている。カッタ120は、ボディ部110からの作用によって、マザー基板4の表面に力Fで押し付けられる。ボディ部110は支点AX周りに回動可能に支持されている。荷重部130は、マザー基板4の表面上へカッタ120が押し付けられるようにボディ部110に連続的な力LDを加え得るものである。荷重部130は、力LDを発生させるためのエアシリンダ131と、力を伝達するための押圧ピン132とを有する。
【0034】
エアシリンダ131によってボディ部110に連続的な力LDが加えられることで、マザー基板4の表面上へカッタ120の刃先121が力Fで押し付けられる。力Fが加えられた状態で、スクライブヘッド30を方向DR2に向かって移動させることでマザー基板4の表面上で刃先121が走行させられる。方向DR2は、支点AXから刃先121へ向かう方向に沿っている。よってマザー基板4の表面上における刃先121の走行は、刃先121の後側に支点AXが位置するように行われる。
【0035】
なお、上記以外の構成については、上述した実施の形態1の構成とほぼ同じであるため、同一または対応する要素について同一の符号を付し、その説明を繰り返さない。
【0036】
本実施の形態によれば、ボディ部110の回動運動を介して刃先121に荷重を伝達することができる。またマザー基板4の表面上で刃先121が走行する際に、支点AXが刃先121の後側に位置する。これにより、スクライブラインSL1の形成においてカッタ120がマザー基板4中へ食い込みやすくなる。よって、スクライブラインSL1を形成し始めるきっかけを交差点PA1(図4)でより確実に得ることができる。よってスクライブラインSL1をより確実に形成することができる。
【0037】
(実施の形態3)
図11図17は、本実施の形態におけるスクライブ方法の工程を順に示す上面図である。
【0038】
図11を参照して、マザー基板4が準備される(図1:ステップS10)。マザー基板4の表面が、辺D1と平行な方向DR1に向かって、辺D2から、終点PE1まで、刃先121(図9)によってスクライブされる。終点PE1はマザー基板4の表面の縁から離れている。これにより、辺D1から離れかつ辺D2上に位置する起点PL1から方向DR1に向かってアシストラインAL1v(第1のアシストライン)が形成される(図1:ステップS20)。アシストラインAL1は、辺D1との間にマザー基板4の表面を部分的に挟むように(図中、マザー基板4の左上部分を挟むように)形成される。本実施の形態においては、アシストラインAL1は辺D1と平行に延びている。
【0039】
図12を参照して、マザー基板4から離れていた刃先121(図9)がマザー基板4の表面上の接触点PP1に押し付けられる(図1:ステップS30)。接触点PP1は、マザー基板4の縁から離れ、かつ辺D1とアシストラインAL1vとの間である。ここで「辺D1とアシストラインAL1vとの間」とは、辺D1およびアシストラインAL1vに挟まれ、かつ辺D1およびアシストラインAL1vの各々から離れた位置のことである。本実施の形態においては、この刃先121はアシストラインAL1vの形成に用いたものと同一または同様のものである。次に、マザー基板4の表面上に押し付けられた刃先121が、アシストラインAL1vと交差点PA1で交差して終点PE2に至る軌道TJ1v(第1の軌道)で、辺D2と平行な方向DR2に向かって摺動させられる(図1:ステップS40)。終点PE2はマザー基板4の表面の縁から離れている。
【0040】
図13を参照して、刃先121がアシストラインAL1vに交差することをきっかけとして、スクライブラインSL1v(第1のスクライブライン)が形成し始められる。具体的には、接触点PP1から交差点PA1までの区間NL1においてマザー基板4の表面を滑っていた刃先121が、交差点PA1においてアシストラインAL1vのクラックに引っ掛かることによって、交差点PA1を起点としてスクライブラインSL1vを形成し始める。
【0041】
図14を参照して、スクライブラインSL1vと辺D4との間に、スクライブラインSL1vと並走するスクライブラインSL1va〜SL1vdが形成される。スクライブラインSL1va〜SL1vdの形成方法は、スクライブラインSL1vの形成方法と同様である。
【0042】
図15を参照して、マザー基板4から離れていた刃先121(図9)がマザー基板4の表面上の接触点PP2に押し付けられる(図1:ステップS50)。接触点PP2は、マザー基板4の縁から離れ、かつ辺D2とスクライブラインSL1vとの間である。ここで「辺D2とスクライブラインSL1vとの間」とは、辺D2およびスクライブラインSL1vに挟まれ、かつ辺D2およびスクライブラインSL1vの各々から離れた位置のことである。本実施の形態においては、この刃先121はアシストラインAL1vの形成に用いたものと同一または同様のものである。次に、マザー基板4の表面上に押し付けられた刃先121が、スクライブラインSL1vと交差点PS2で交差し、終点PE3に至る軌道TJ2v(第2の軌道)で、辺D1と平行に摺動させられる(図1:ステップS60)。終点PE3はマザー基板4の表面の縁から離れている。
【0043】
図16を参照して、刃先121がスクライブラインSL1vに交差することをきっかけとして、スクライブラインSL2v(第2のスクライブライン)が形成し始められる。具体的には、接触点PP2から交差点PS2までの区間NL2においてマザー基板4の表面を滑っていた刃先121が、交差点PS2においてスクライブラインSL1vのクラックに引っ掛かることによって、交差点PS2を起点としてスクライブラインSL2vを形成し始める。
【0044】
図17を参照して、スクライブラインSL2vと辺D3との間に、スクライブラインSL2vと並走するスクライブラインSL2vaおよびSL2vbが形成される。スクライブラインSL2vaおよびSL2vbの形成方法は、スクライブラインSL2vの形成方法と同様である。
【0045】
以上により、辺D2に平行に並走するスクライブラインSL1vおよびSL1va〜SL1vdと、辺D1に平行に並走するアシストラインAL1v、スクライブラインSL2v、SL2vaおよびSL2vbとによって、単位基板U1〜U12となる部分が区画される。次にマザー基板4がブレーク装置(図示せず)へと搬送される。そしてマザー基板4のブレーク工程が行われる。これにより、互いに分離された単位基板U1〜U12が得られる。
【0046】
なお、上記以外の構成については、上述した実施の形態1または2の構成とほぼ同じであるため、同一または対応する要素について同一の符号を付し、その説明を繰り返さない。
【0047】
本実施の形態によれば、スクライブが終了した時点で、マザー基板4の表面の縁は、図17に示すように、一続きにつながっている。具体的には、スクライブによって分けられていない領域が、縁に沿って辺D1から辺D4および辺D3を順に経由して辺D2へと連続的に延びている。これにより、スクライブ後ブレーク前のマザー基板4の搬送中に、マザー基板4が意図せずに複数の部分に分離してしまうことが抑制される。
【0048】
(実施の形態4)
図18は、本実施の形態におけるスクライブ方法を概略的に示すフロー図である。本実施の形態においては実施の形態1の図2図5と同様の工程(図1のステップS10〜S40と同様の工程)がまず行われる。これ以降の工程について、以下に説明する。
【0049】
図19を参照して、辺D1からマザー基板4の表面をスクライブすることによって、辺D2とスクライブラインSL1とに挟まれるように延びるアシストラインAL2(第2のアシストライン)が形成される(図18:ステップS52)。
【0050】
図20を参照して、マザー基板4から離れていた刃先121(図9)がマザー基板4の表面上の接触点PP2に押し付けられる(図18:ステップS54)。接触点PP2は、マザー基板4の縁から離れ、かつ辺D2とアシストラインAL2との間である。ここで「辺D2とアシストラインAL2との間」とは、辺D2およびアシストラインAL2に挟まれ、かつ辺D2およびアシストラインAL2の各々から離れた位置のことである。本実施の形態においては、この刃先121はアシストラインAL1の形成に用いたものと同一または同様のものである。次に、マザー基板4の表面上に押し付けられた刃先121が、アシストラインAL2およびスクライブラインSL1に順に交差する軌道TJ2(第2の軌道)で摺動させられる(図18:ステップS62)。
【0051】
図21を参照して、刃先121がアシストラインAL2に交差することをきっかけとしてスクライブラインSL2(第2のスクライブライン)が形成し始められる。具体的には、接触点PP2から交差点PA2までの区間NL2においてマザー基板4の表面を滑っていた刃先121が、交差点PA2においてアシストラインAL2のクラックに引っ掛かることによって、交差点PA2を起点としてスクライブラインSL2を形成し始める。
【0052】
図22を参照して、スクライブラインSL2と辺D3との間に、スクライブラインSL2と並走するスクライブラインSL2aおよびSL2bが形成される。スクライブラインSL2aおよびSL2bの形成方法は、スクライブラインSL2の形成方法と同様である。
【0053】
以上により、辺D2に平行に並走するスクライブラインSL1およびSL1a〜SL1dと、辺D1に平行に並走するアシストラインAL1、スクライブラインSL2、SL2aおよびSL2bとによって、単位基板U1〜U12となる部分が区画される。次にマザー基板4がブレーク装置(図示せず)へと搬送される。そしてマザー基板4のブレーク工程が行われる。これにより、互いに分離された単位基板U1〜U12が得られる。
【0054】
本実施の形態によれば、アシストラインAL2(図21)を利用して形成し始められたスクライブラインSL2は、伸展することによって安定化した後に、スクライブラインSL1と交差する。よって、スクライブラインSL1の近傍で、スクライブラインSL2を安定的に形成することができる。
【0055】
なお、本発明は、その発明の範囲内において、各実施の形態を自由に組み合わせたり、各実施の形態を適宜、変形、省略することが可能である。たとえば、上記各実施の形態においてはアシストラインAL1がマザー基板4の辺D2上の起点PL1(図2)から形成されるが、代わりに、辺D2から離れた起点から形成されてもよい。また図9に示すようにマザー基板4を静置しつつ刃先121を移動させることによってスクライブを行う代わりに、これと等価な相対移動がマザー基板4と刃先121との間で生じるように、刃先121を静止しつつマザー基板4を移動させたり、これら両方を移動させたりしてもよい。またマザー基板4はガラスから作られているが、代わりに、他の脆性材料から作られていてもよい。またアシストラインAL1の形成(図2)のためのスクライブは、マザー基板4の表面上における刃先121の摺動(図9)の代わりに、ホイール状の刃先の転動によって行われてもよい。アシストラインAL2(図19)についても同様である。
【符号の説明】
【0056】
4 マザー基板(基板)
11 テーブル
110 ボディ部
120 カッタ
121 刃先
122 ホルダ
130 荷重部
131 エアシリンダ
132 押圧ピン
30 スクライブヘッド
AL1,AL1v アシストライン(第1のアシストライン)
AL2 アシストライン(第2のアシストライン)
AX 支点
D1〜D4 辺(第1〜第4の辺)
SL1,SL1v スクライブライン(第1のスクライブライン)
SL1a〜SL1d,SL1va〜SL1vd スクライブライン
SL2,SL2v スクライブライン(第2のスクライブライン)
SL2a,SL2b,SL2va,SL2vb スクライブライン
TJ1,TJ1v 軌道(第1の軌道)
TJ2,TJ2v 軌道(第2の軌道)
U1〜U12 単位基板
図1
図2
図3
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図5
図6
図7
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図10
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図18
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図22